JP5739712B2 - 光学顕微鏡観察用試料の製造方法及び観察方法 - Google Patents
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Description
乱する薄膜を前記観察対象物の表面に形成する薄膜形成工程を、前記加熱工程の前又は後
に実施する。
複数種の構成材料を含む前記観察対象物の少なくとも1種の材料の屈折率又は反射率が変化するように変質する温度で前記観察対象物を加熱する加熱工程を実施し、前記加熱工程の前又は後において、少なくとも光を吸収又は散乱する薄膜を前記観察対象物の表面に形成する薄膜形成工程を前記加熱工程の前又は後に実施することにより、観察用試料を作製し、さらに、該観察用試料を光学顕微鏡によって観察する観察工程を実施することを特徴とする。
具体的には、前記光学顕微鏡観察用試料の製造方法では、前記観察対象物の表面を研磨する研磨工程と、少なくとも光を吸収又は散乱する薄膜を前記観察対象物の研磨された表面に形成する薄膜形成工程とを実施した後、前記観察対象物を構成する少なくとも1種の材料が変質する温度で前記観察対象物を加熱する加熱工程を実施することにより、前記観察用試料を製造することが好ましい。
前記観察対象物としては、セメントが水和反応したセメント水和物と骨材とが少なくとも構成材料として混在しているセメント硬化物が挙げられる。
該セメント硬化物の原料であるセメントとしては、例えば、JIS R5211〜5213により規定されるセメントが挙げられる。具体的には、高炉スラグを含む高炉セメント(JIS R5211)、シリカを含むシリカセメント(JIS R5212)、フライアッシュを含むフライアッシュセメント(JIS R5213)などが挙げられる。
また、前記セメント硬化物としては、セメント水和物と細骨材とが混在したモルタル、又は、セメント水和物と粗骨材と細骨材とが混在したコンクリート、セメント水和物とガラス繊維と細骨材とが混在したガラス繊維強化セメント(GRC)等が挙げられる。
さらに、前記観察対象物としては、具体的には例えば、粘板岩を薄い板状に加工したスレート、石膏ボード、ピータイル、疑灰岩等が挙げられる。
また、後述する観察方法においては、5000倍程度の倍率で観察することにより、セメント水和物の種類、即ち、原料として用いられたセメントの種類が確認され得る。
また、前記研磨工程では、必要に応じて、エッチングなどの化学的な研磨を行うことができる。
なお、前記研磨工程は、従来公知の方法により、一般的な装置を用いて実施することができる。また、算術平均粗さ(Ra)は、市販の表面粗さ計を用いて測定することができる。
該薄膜が光を吸収又は散乱できるため、光学顕微鏡観察において、試料表面にて正反射する光を抑制することができる。従って、光学顕微鏡による観察像において、観察を妨げる意図しない光が抑制され、観察対象物を構成する各材料をより確実に確認することができる。
前記薄膜は、少なくとも光を吸収又は散乱するものである。光の散乱としては、具体的には、例えば、光の反射又は屈折が挙げられる。また、前記薄膜は、さらに光を回折する性能を有していてもよい。
前記無機酸化物としては、二酸化ケイ素(SiO2)や二酸化チタン(TiO2)などを用いることができる。
また、前記薄膜としては、例えば、所定の屈折率を有する樹脂、微粒子が分散されて所定の屈折率を有するように調整された反射防止塗料などの塗料、又は、光学顕微鏡の技術分野において一般的に用いられている浸液、屈折率調整液、屈折液等の観察用液体を用いて形成したものを採用することができる。
なお、前記薄膜の厚みによって、観察される観察像の色が変わり得る。具体的には、光源として白色光を用いた場合、金で形成された薄膜の厚みが変わることにより、観察像全体の色調が、例えばオレンジ系〜黄系の色になり得る。
前記物理的蒸着としては、抵抗加熱蒸着や電子ビーム(EB)蒸着などの真空蒸着、イオン化蒸着、スパッタリングなどを採用することができる。前記物理的蒸着としては、より簡便に行うことができ、しかも観察対象物表面における凹凸を覆うように成膜できるという点で、抵抗加熱蒸着や電子ビーム(EB)蒸着などの真空蒸着が好ましい。
なお、前記薄膜形成工程では、電気鍍金や化学鍍金によっても薄膜を形成することができる。
具体的には、例えば、細骨材とガラス粒子とが混在した観察対象物に対して、二酸化ケイ素の薄膜を形成した後に金の薄膜を形成した観察用試料を作製した場合、光学顕微鏡を用いた観察において白色光を光源として用いることにより、より確実に細骨材を確認することができる。詳しくは、二酸化ケイ素及びガラスの屈折率が近似しているため、観察像において、ガラス粒子の形状が確認できなくなる。また、二酸化ケイ素の薄膜表面からの反射光は、外側に積層された金の薄膜によって吸収させることができる。従って、観察像において、ガラス粒子が確認できなくなる分、細骨材をより確実に確認することができる。
そして、前記加熱工程では、加熱により少なくとも1種の材料の屈折率又は反射率が変わるため、該材料の表面にて反射又は屈折した光によって観察像が加熱前とは異なるものになる。従って、加熱前には光学顕微鏡の観察像において他の材料と区別できず確認されなかった材料が確認されることとなる。
なお、前記光学顕微鏡観察用試料の製造方法においては、上述したように前記薄膜形成工程の後に、前記加熱工程を実施することができる。前記加熱工程において電子ビームによる加熱方法を採用する場合には、前記薄膜形成工程において導電性を有する金属や炭素の薄膜を形成することが好ましい。
製造された光学顕微鏡観察用試料は、その後、光学顕微鏡を用いた観察において使用される。
前記光学顕微鏡としては、具体的には、例えば、実体顕微鏡、偏光顕微鏡、金属顕微鏡、コンフォーカル(共焦点)顕微鏡、レーザー顕微鏡、CCDカメラ付き顕微鏡、C−MOSカメラ付き顕微鏡等が挙げられる。
前記観察工程においては、光源として可視光以外の紫外光又は赤外光を採用しても、上記のCCDカメラ付き顕微鏡を用いることなどにより、観察像を視覚的に認識することができる。
なお、前記観察工程においては、光学顕微鏡を一般的な方法で操作することができる。
また、一般の光学顕微鏡観察用試料の製造方法又は観察方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
観察対象物として、高炉スラグ、セメント水和物、細骨材、及び粗骨材を含むコンクリート(セメント硬化物)を用いた。
コンクリートを40mm×40mm×10mmの直方体状に切り出し、その1面を、平面研磨装置(マルトー社製 機器名「MG−403」カップ刃を改造したもの)及び回転式乾式鏡面研磨装置(ムサシノ電子社製 機器名「MA−300D」)を用いて、算術平均粗さ(Ra)が5μm未満となるように平滑に研磨することにより、研磨工程を行った。
次に、研磨面に対して、抵抗加熱方式の真空蒸着装置(日本電子社製 製品名「JEE−4X」)を用いて金を蒸着し、厚み100〜500オングストロームの範囲となるように薄膜を形成し、薄膜形成工程を行った。なお、真空度1×10-6torrの蒸着条件とし、45°傾斜させた被蒸着試料を回転させながら蒸着を行った。
続いて、EPMA装置(日本電子社製 製品名「JXA−8200」)を用いて、形成した薄膜及び該薄膜の内方側にある観察対象物に対して、加熱温度が300℃となるように電子線を照射し、加熱工程を行った。なお、電子線は、走査しながら照射し、電子線照射条件は、15kV、0.5A、照射時間50m秒、照射直径φ150μmとした。
このようにして、光学顕微鏡観察用試料を製造した。
作製例1の観察用試料において、加熱工程を実施しなかった部分を作製例2とした。
薄膜形成工程及び加熱工程のいずれも実施しなかった点以外は、作製例1と同様にして光学顕微鏡観察用試料を製造した。
作製例1の試料を光学顕微鏡(CCDカメラ付きデジタルマイクロスコープ キーエンス社製 製品名「VHX−500」)を用いて観察し、観察像を得た。なお、光源として白色光を用い、倍率を1000倍とした。
作製例2の観察用試料を観察した点以外は、実施例1と同様にして観察像を得た。
作製例3の観察用試料を等倍率にて観察した点以外は、実施例1と同様にして観察像を得た。
一方、図1における上方側の長方形範囲に示すように、実施例の観察用試料においては、黒系〜暗オレンジ系の色となった部分が、セメント水和物1であると確認できる。また、緑系の色となった部分が高炉スラグ3であると確認できる。従って、観察像において、セメント水和物1と高炉スラグ3とをそれぞれ確認することができる。なお、細骨材2と高炉スラグ3とは、形状の違いによってそれぞれ確認できる。
これに対し、図1の上記長方形範囲以外に示すように、加熱工程を実施しなかった観察用試料の観察像においては、黒系〜暗オレンジ系の色となった部分がセメント水和物1であると確認でき、また、骨材2及び高炉スラグ3の両者が同じオレンジ系の色となっており、両者は形状によってのみ確認することが可能である。
Claims (2)
- 光学顕微鏡によって観察対象物を観察するための観察用試料を製造する光学顕微鏡観察用試料の製造方法であって、
複数種の構成材料を含む前記観察対象物の少なくとも1種の材料の屈折率又は反射率が変化するように変質する温度で前記観察対象物を加熱する加熱工程を実施し、
前記加熱工程の前又は後において、少なくとも光を吸収又は散乱する薄膜を前記観察対象物の表面に形成する薄膜形成工程を実施することにより、前記観察用試料を製造する光学顕微鏡観察用試料の製造方法であって、
前記観察用試料はセメント硬化物であることを特徴とする光学顕微鏡観察用試料の製造方法。 - 光学顕微鏡によって観察対象物であるセメント硬化物を観察する観察方法であって、
複数種の構成材料を含む前記観察対象物の少なくとも1種の材料の屈折率又は反射率が変化するように変質する温度で前記観察対象物を加熱する加熱工程を実施し、
前記加熱工程の前又は後において、少なくとも光を吸収又は散乱する薄膜を前記観察対象物の表面に形成する薄膜形成工程を前記加熱工程の前又は後に実施することにより、観察用試料を作製し、さらに、該観察用試料を光学顕微鏡によって観察する観察工程を実施することを特徴とする観察方法。
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