JP5155993B2 - 有機物顕在化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体実装基板等の被検査物の表面に付着する有機物の存在を顕在化させる方法に関する。
パワー素子等の半導体素子が実装される半導体実装基板としては、例えば、セラミックス基板の表面にアルミ板を接合して構成される半導体実装基板がある。このような半導体実装基板は、電極パターンを形成するためのエッチング処理やメッキ処理、および各処理工程における洗浄処理が施されており、パターン形成後の半導体実装基板の表面にはメッキ残渣成分や洗浄残渣成分等の有機物が残留している場合がある。
基板表面に有機物が残留していると、基板上へのワイヤーボンディングの接合強度が低下したり、基板表面にはんだ付けをした際にボイドが発生したりして、半導体実装基板の信頼性が低下する恐れがある。
従って、表面に有機物が残留している基板を識別して、基板の良否を判別することができれば、有機物が残留していない基板のみに半導体素子を実装して半導体実装基板の信頼性を保持することが可能となる。
被検査物表面に付着した異物を識別する方法としては、被検査物表面としての半導体ウエハの表面に薄膜を堆積させて付着異物を成長させた後に、ウエハ表面にレーザー光を照射して、成長した異物の部分での散乱光を受光することで異物の識別を行う方法がある(特許文献1参照)。
特開2001−28383号公報
しかし、前述のように、散乱光を受光して異物を識別するためには、薄膜の堆積により異物をある程度の大きさまで成長させる必要があり、堆積させる薄膜にはある程度の厚みが必要であった(例えば、特許文献1の場合、薄膜は850nmの厚みにまで堆積されている)。
従って、被検査物表面の異物を識別するためには、薄膜を堆積させる時間を多く必要とし、異物を識別させるための作業等が煩雑であった。
また、被検査物表面の異物を識別する際には、被検査物を不活性ガスが封入された特別な環境下に置く必要があるため、異物の存在を容易に確認することができなかった。
上記課題を解決する有機物顕在化方法は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載のごとく、有機物が付着した被検査物の表面に、1nm〜100nmの範囲の膜厚の金属薄膜を成膜し、金属薄膜が成膜された被検査物表面に光を照射し、前記被検査物表面にて反射された光を目視して、有機物の層と金属薄膜とが存在する多層の部分と、金属薄膜のみが存在する部分とで発現する干渉色の異なりにより生じる、両者間のコントラスト差を識別する。
これにより、被検査物に特別な処理を施したり、特別な環境に置いたりしなくても、光を照射するだけで目視にて有機物を識別することができ、有機物の存在を容易に確認することが可能である。
また、金属薄膜を厚く成膜する必要がなく、容易に短時間で有機物を顕在化させることができる。
本発明によれば、被検査物に特別な処理を施したり、特別な環境に置いたりしなくても、光を照射するだけで目視にて有機物を識別することができ、有機物の存在を容易に確認することが可能となる。
本発明の有機物顕在化方法により、表面に付着した有機物が識別される半導体実装基板を示す側面断面図である。 半導体素子が実装され放熱板が接合された半導体実装基板を示す側面断面図である。 有機物顕在化装置を示す概略図である。 有機物顕在化装置における電子の流れを示す概略図である。 基板表面とイオン源との角度を示す側面図である。 2次電子検出器とイオン源との角度を示す平面図である。 半導体実装基板表面の有機物を顕在化できる不揮発性ガスイオンのイオンエネルギーの範囲を示す図である。 半導体実装基板の有機物付着箇所におけるTOF−SIMS分析結果を示す図である。 半導体実装基板の有機物が付着していない箇所におけるTOF−SIMS分析結果を示す図である。 半導体実装基板の1次メーカーにおける出荷検査での良否判断の基準等と、実装メーカーにおける受け入れ検査での良否判断の基準等とを合わせるためのフローを示す図である。 有機物の顕在化方法の第二実施例に適用される、金属薄膜が成膜された半導体実装基板を示す側面断面図である。 半導体実装基板に金属薄膜を真空蒸着するための装置を示す概略図である。 金属薄膜が成膜された半導体実装基板の有機物を目視検査する様子を示す図である。
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
図1に示すように、本発明の有機物顕在化方法により、表面に付着した有機物が識別される半導体実装基板1(以降、単に「基板1」と記載する)は、例えば、AlN等のセラミックス板11の両面にアルミ板12を接合し、さらにアルミ板12の表面にNiメッキ層13を形成して構成されている。
このように構成される基板1上には、図2に示すように、半導体素子16がはんだ17を介して実装され、半導体素子16の実装面とは反対側の面ははんだ17を介して放熱板2と接合されている。また、基板1表面に形成される電極パターンや半導体素子16に形成される電極パターンは、ボンディングワイヤー18により、ケーシング4に形成されるパターン4aと接続されている。
基板1に前記電極パターンを形成するためには、エッチング処理やメッキ処理、および各処理工程における洗浄処理が行われるが、パターン形成後の基板1の表面にはメッキ残渣成分や洗浄残渣成分等の有機物14(図1参照)が残留する場合がある。
この、基板1の表面に残留している有機物14は、目視することはできず、電子顕微鏡により拡大しても確認することができない。
そこで、次のような方法により、基板1の表面に付着している有機物14を顕在化して、識別できるようにしている。
つまり、図3に示すように、被検査物としての基板1を収容する真空室71と、基板1の表面に電子線を照射する1次電子源72と、基板1の表面に不揮発性ガスイオンを照射するイオン源73と、電子線および不揮発性ガスイオンが照射された基板1の表面から発生する2次電子を検出する2次電子検出器74とを備えた有機物顕在化装置7を用いて基板1の表面に付着している有機物14の顕在化を行う。
有機物顕在化装置7においては、真空状態に保持した真空室71内に基板1を収容した状態で、1次電子源72から基板1の表面に対して電子線を照射するとともに、イオン源73から不揮発性ガスイオンを照射する。
そして、電子線および不揮発性ガスイオンが照射された基板1表面からは2次電子が発生するため、この発生した2次電子を2次電子検出器74により検出して、2次電子像として捉えることで、基板1表面に存在する有機物を識別することが可能となっている。
ここで、図4に示すように、有機物顕在化装置7においては、電子銃等の1次電子源72からの電子線を、単数または複数の電子レンズ79により収束させて基板1の表面に照射するように構成しており、基板1表面からの2次電子を検出した2次電子検出器74は検出信号を信号処理器75へ送出し、信号処理器75にて信号処理された2次電子が、表示器76により2次電子像として表示されることとなる。
また、図5に示すように、イオン源7は側面視において、基板1面に対して角度θ1傾斜して配置されており、図6に示すように、イオン源7と2次電子検出器74とは平面視において、角度θの角度を持って配置されている。イオン源7の基板1面に対する角度θ1は、例えば35°に設定されている。
一般的に、走査電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡では、被検査物に対して1次電子源72から電子線を照射して、発生した2次電子を2次電子検出器74により検出し、発生した2次電子の量を輝度の信号に変換することで、目的の2次電子像となるSEM像を得ているが、1次電子源72から電子線を照射するのみでは、被検査物表面に存在する有機物14は2次電子像には現れてこない。
これは、照射された1次電子が、基板1表面の有機物14に吸収、または下地である基板1に吸収されてしまって2次電子が生じにくくなっており、有機物14として画像を形成できないからである。
そこで、本有機物顕在化装置7では、基板1表面に対して電子線を照射するのに加えて、イオン源73からAr等の不揮発性ガスのイオンをも照射して、有機物14を2次電子像に顕在化させるようにしている。
これは、電子に比べて大きな質量を有するアルゴンイオン等の不揮発性ガスイオンが基板1表面の有機物14に照射されると2次電子が発生し、有機物14が存在している部分から発生する2次電子の量が、不揮発性ガスイオンを照射しない場合に比べて増加するため、有機物14を2次電子像として捉えることが可能となるものである。
ただし、図7に示すように、照射する不揮発性ガスイオンのイオンエネルギーが小さ過ぎれば(図7に示すeV1よりも小さければ)発生する2次電子の量が少なくて2次電子像として捉えることが困難となり、イオンエネルギーが大き過ぎれば(図7に示すeV2よりも大きければ)有機物14が分解して、基板1表面から離れてしまい顕在化させることができないので、照射する不揮発性ガスイオンのイオンエネルギーはある一定の範囲に設定する必要がある。つまり、イオンエネルギーeV1〜eV2の範囲が有機物14を顕在化できる範囲である。
本有機物顕在化装置7のイオン源73は、図7に実線で示す特性を示すため、照射する不揮発性ガスイオンのイオンエネルギーをeV1〜eV2の範囲内に設定することができ、具体的には、基板1表面に照射する不揮発性ガスイオンが有するイオンエネルギーは、10eV〜50eVの範囲内となるように設定している。
このように、基板1表面に照射する不揮発性ガスイオンのイオンエネルギーを設定することで、有機物14を確実に顕在化することが可能となっている。
一方、1次電子源72等の通常の電子銃は、図7に2点鎖線で示すような、全てのイオン電流範囲でeV2以上のイオンエネルギー値をとる特性を示すため、基板1上の有機物14が分解してしまって、顕在化することはできない。
なお、有機物顕在化装置7のイオン源73は、例えば、電子衝撃型のイオン化方式をとり、励起イオンとしてアルゴン等の不活性ガスを用い、フローティング方式によりイオン引出しを行い、フローティング電圧を−500Vとし、可能照射イオンエネルギーの範囲を0〜4000eVとし、最小イオンビーム径を200μm以下とし、イオンビーム照射幅を3mmとしたものを用いることができる。
以上のごとく、本有機物顕在化装置7では、1次電子源72からの電子線に加えて、イオン源73からの不揮発性ガスイオンを照射することで、基板1表面の有機物14を2次電子像として顕在化させるようにしている。
このように、有機物14を顕在化させることで、基板1へ半導体素子16を実装する前やワイヤーボンディングを行う前に、基板1に有機物14の汚れが有るか無いかの判断を行うことが、すなわち基板1の良品判断を行うことが可能となる。
また、有機物14を顕在化できない場合は、有機物14の成分分析を行おうとしても分析すべき箇所を特定することができず、基板1の多数箇所について成分分析を行う必要があるが、有機物14を顕在化させることで、有機物14の付着箇所を明確化することができ、成分の特定を効率的に行うことが可能となる。
つまり、顕在化させた有機物14が付着した一箇所について成分分析を行うとともに、有機物14が付着していない一箇所について成分分析を行い、両方の分析結果を比較することで、有機物14を特定することが可能となる。
例えば、ある有機物14についてTOF−SIMS分析を行ったところ、図8に示す有機物14の付着箇所についての成分分析結果と、図9に示す有機物14が付着していない正常箇所についての成分分析結果とが得られた。
両者を比較すると、有機物14付着箇所の分析結果における、ある質量の2次イオンの示すピークが、正常箇所に比べて高い値を示しており、その質量を有する物質が付着有機物14の構成物質であることが分かる。例えば、図8、図9の場合、イオン状態で質量A・B・C・D等を有する炭化水素にて付着有機物14が構成されている。これらの炭化水素は、基板1にメッキ処理や洗浄処理を施すときに使用される洗浄剤や油分の成分と類似しており、基板1表面に付着している有機物14が、メッキ残渣成分や洗浄残渣成分であると推測することができる。
基板1表面に付着している有機物14は、実際に分析を行ったところ、例えば、C8H9〜13のハイドロカーボン系の成分が検出された。
また、基板1は1次メーカーにて製造され、その後実装メーカーにて半導体素子16の実装等が行われるが、1次メーカーにおける出荷検査での良否判断の基準等と、実装メーカーにおける受け入れ検査での良否判断の基準等とを合わせておく必要が重要である。
例えば、図10に示すように、1次メーカーでは、2次メーカーからセラミックス板11やアルミ板12といった基材が納入されると(S01)、所定の寸法にカットした後貼り合わせる(S02、S03)。そして、エッチング処理、メッキ処理、および洗浄処理等を行って基板1を構成した後に(S04)、外観検査を行って(S05)、出荷する(S06)。
一方、1次メーカーからの基板1が納入された実装メーカーは(S11)、納入された基板1の外観検査を、例えば抜き取りで行う(S12)。外観検査では、製品の品質に影響するような汚れ(有機物14付着)の有無を判断し、そのような汚れが無ければ、そのまま基板1に半導体素子16の実装を行う等の製造を開始する(S14)。
逆に、検査の結果、製品の品質に影響するような汚れが有れば、汚れ部位の特定(S15)、および汚れ部位の定量測定(S16)を行い、これらの測定結果に基づいて基板1に関する汚れの有無の閾値を決定する(S17)。この決定した汚れの有無の閾値を1次メーカーにフィードバックし(S18)、1次メーカーでの外観検査工程(S05)での検査方法や検査レベル等を、実装メーカーが要求する(つまり実装メーカーの受け入れ検査にて行う)検査方法・レベル等と合わせる。
このように、1次メーカーと実装メーカーとの間で汚れの有無の閾値等を合わせる際に、基板1に付着する有機物14を顕在化することができれば、汚れ部位の特定(S15)や、汚れ部位の定量測定(S16)等を少ない工数で容易に行うことが可能となり、1次メーカーと実装メーカーとの間での基準合わせ等を迅速に行って、基板1の品質を向上することができる。
次に、有機物14の顕在化方法の第二実施例について説明する。
第二の実施例では、図11に示すように、基板1の表面に金属薄膜19を成膜し、金属薄膜19が成膜された基板1の表面に光を照射して、光の干渉により生じる、有機物14が存在している部分と存在していない部分とのコントラスト差を識別することにより、有機物14を顕在化するようにしている。
基板1の表面への金属薄膜19の成膜は、例えば図12に示すように、真空ポンプ52により真空引きした真空槽51内に基板1を設置するとともに、該基板1に対向させて蒸着材料53を配置して、基板1表面に蒸着材料53を真空蒸着させる。
蒸着材料53には、Ag、Au、およびCu等の金属材料が用いられ、成膜される金属薄膜19の厚みは、例えば1nm〜100nmの範囲内の厚みとされている。
図13に示すように、金属薄膜19が形成された基板1の表面に光を照射すると、基板1表面にて反射された光を目視することができるが、有機物14の層と金属薄膜19とが存在する多層の部分と、金属薄膜19のみが存在する部分とでは、発現する干渉色が異なり、両者間にはコントラスト差が生じるため、有機物14が存在している箇所を顕在化させることができ、他の部分に対して識別することができる。
特に、金属薄膜19を成膜した基板1は、その後に特別な処理を施したり、特別な環境に置いたりしなくても、光を照射するだけで目視にて有機物14を識別することができるので、有機物14の存在を容易に確認することが可能である。
このように、照射した光の干渉色の違いにより有機物14を顕在化させるためには、100nm以下程度の膜厚があれば良いので、金属薄膜19を厚く成膜する必要がなく、容易に短時間で有機物14を顕在化させることができる。
1 半導体実装基板
11 セラミックス板
12 アルミ板
13 Niメッキ層
14 有機物
16 半導体素子
19 金属薄膜
71 有機物顕在化装置
72 1次電子源
73 イオン源
74 2次電子検出器

Claims (1)

  1. 有機物が付着した被検査物の表面に、1nm〜100nmの範囲の膜厚の金属薄膜を成膜し、
    金属薄膜が成膜された被検査物表面に光を照射し、前記被検査物表面にて反射された光を目視して、
    有機物の層と金属薄膜とが存在する多層の部分と、金属薄膜のみが存在する部分とで発現する干渉色の異なりにより生じる、両者間のコントラスト差を識別する、
    ことを特徴とする有機物顕在化方法。
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