JP5731555B2 - フラックスおよびソルダペースト - Google Patents
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Description
ここで,ソルダペーストの特性を発現させるためにフラックスに添加される材料の一つである増粘剤(チクソ剤,ゲル化剤)としては,従来ワックスや脂肪酸アミドが使用されてきた。しかし,これらはソルダペーストに対する増粘剤としては機能するものの,フラックスに対するそれとしてはその効果が不充分であり,ソルダペーストをスクリーン印刷した際にフラックスがにじみ出すことが多い。一方で1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトールに代表されるゲル化剤は,フラックスに対する増粘効果は満足できる結果が得られるものの(特許文献1参照),ソルダペーストとしては溶融性,ボイドの悪化といった不具合を引き起こすという結果が得られていた。
なお、本発明のソルダペースト用フラックスには,上記成分に加え(e)その他添加剤を含有していてもよい。
さらに,このようなフラックスを用いた本発明のスクリーン印刷用ソルダペーストは,スクリーン印刷に適した粘度,チクソ指数をもち,かつ印刷時のフラックスのにじみ出しによるブリッジの発生や印刷形状の悪化を抑えることができる。これにより良好かつ安定した印刷性を保持することが可能となる。
本発明のソルダペースト用フラックスは,(a)ロジン系樹脂,(b)溶剤,(c)活性剤,(d)増粘剤を含有するものである。
本発明のフラックスに用いるロジン系樹脂(a)としては,例えばガムロジン,ウッドロジン,トール油ロジン,不均化ロジン,重合ロジン,水素添加ロジンおよびこれらの誘導体等のロジン類,ならびにこれらの編成物であるロジン系変性樹脂が挙げられる。このようなロジン系変性樹脂としては,例えばディールス・アルダー反応の反応成分となり得る上記のロジン類の不飽和有機酸変性樹脂((メタ)アクリル酸等の脂肪族の不飽和一塩基酸;フマル酸,マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸等の脂肪族不飽和二塩基酸;桂皮酸等の芳香族環を有する不飽和カルボン酸等の変性樹脂)およびこれらの変性物等のアビエチン酸や,その変性物を主成分とするものが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく,2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のフラックスに用いる溶剤(b)としては,例えばヘキシルジグリコール,(2−エチルヘキシル)ジグリコール,フェニルグリコール,ブチルカルビトール,オクタンジオール,αテルピネオール,βテルピネオール,テトラエチレングリコールジメチルエーテル,トリメリト酸トリス(2−エチルヘキシル),セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。
本発明のフラックスに用いる活性剤(c)として,カルボン酸類を用いることが出来る。このようなカルボン酸類としては例えばモノカルボン酸,ジカルボン酸等の他に,その他の有機酸が挙げられる。これらのカルボン酸類は1種を単独で用いてもよく,2種以上を混合して用いてもよい。
モノカルボン酸としては,プロピオン酸,酪酸,吉草酸,カプロン酸,エナント酸,カプリン酸,ラウリル酸,ミリスチン酸,ペンタデシル酸,パルミチン酸,マルガリン酸,ステアリン酸,ツベルクロステアリン酸,アラキジン酸,ベヘン酸,リグノセリン酸,グリコール酸等が挙げられる。ジカルボン酸としては,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,フマル酸,マレイン酸,酒石酸,ジグリコール酸等が挙げられる。
非解離性のハロゲン化化合物(非解離型活性剤)としてはハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。ハロゲン化化合物としては,塩素化物,臭素化物,フッ化物のように塩素,臭素,フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよく,この3つの元素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は,水性溶媒に対する溶解性を向上させるために,例えばハロゲン化アルコールのように水酸基等の極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては,例えば2,3−ジブロモプロパノール,2,3−ジブロモブタンジオール,1,4−ジブロモ−2−ブタノール,トリブロモネオペンチルアルコール等の臭素化アルコール;1,3−ジクロロ−2−プロパノール,1,4−ジクロロ−2−ブタノール等の塩素化アルコール;3−フルオロカテコール等のフッ素化アルコール;その他のこれらに類する化合物が挙げられる。
前記活性剤(c)として非解離型活性剤を配合する場合,その配合量は,フラックス100wt%に対して,0.5wt%以上5wt%以下であることが好ましく,1wt%以上3wt%以下であることがより好ましい。
本発明のフラックスは,増粘剤(d)として糖の脂肪酸エステルを含有する。このような糖の脂肪酸エステルは,増粘剤(d)の一部として,またはその全部として配合することができる。
前記糖の脂肪酸エステルの糖としては,デキストリンおよびイヌリンの少なくとも1種類が用いられる。また前記糖の脂肪酸エステルの脂肪酸としては,パルミチン酸,ステアリン酸,2−エチルヘキサン酸およびミリスチン酸の少なくとも1種類が用いられる。
前記糖の脂肪酸エステルの配合量は,フラックス100wt%に対して0.1%以上5wt%以下であることが好ましく,0.5wt%以上2wt%以下であることが特に好ましい。
前記糖の脂肪酸エステルと他の増粘剤とを併用する場合の増粘剤(d)の配合量の総量はフラックス100wt%に対して3wt%以上10wt%以下であることが好ましく,5wt%以上8wt%以下であることがより好ましい。
本発明のフラックスには,前記ロジン系樹脂(a),溶剤(b),活性剤(c),増粘剤(d)に加え,必要に応じて添加剤(e)を加えることが出来る。このような添加剤(e)の例としては,酸化防止剤,消泡剤,界面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤(e)の配合量は,フラックス100wt%に対して3wt%以上20wt%以下であることが好ましく,5wt%以上15wt%以下であることがより好ましい。
本発明のフラックスを製造するには,例えば前記(a)ロジン系樹脂,(c)活性剤,(d)増粘剤,および必要に応じて(e)添加剤を(b)溶剤に溶解すればよい。
本発明のスクリーン印刷用ソルダペーストに用いるはんだ粉末(f)は,有鉛/無鉛いずれのはんだ粉末であってもよい。即ち,本発明のフラックスは使用するはんだ粉末(f)の成分を問わず,ソルダペーストの印刷時のフラックスのにじみ出しを抑制すると共にソルダペーストとしての良好な特性を発揮させることができる。
本発明のソルダペーストを製造するには,例えば前記フラックスと前記はんだ粉末(f)とを上記所定の割合で配合し,撹拌混合すればよい。
(1)フラックスの調製
以下,その配合としてフラックス製造量を100%とした場合の重量%で記載する。ロジン系樹脂(a)として25wt%の水添酸変性ロジンおよび10wt%の完全水添ロジン,溶剤(b)として30wt%のヘキシルジグリコールおよび10wt%のα−テルピネオールを容器に仕込み,これらを加熱溶解させた。次いでこれに増粘剤(d)として硬化ヒマシ油5wt%,ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド2wt%およびレオパールTL2 1wt%(千葉製粉株式会社製パルミチン酸デキストリン化合物)を加え溶解させ,その後,これに活性剤(c)および添加剤(e)を加え溶解させた後に冷却して本発明のフラックスを得た。
ソルダペースト製造量に対して90.2wt%のSn/Pb(63wt%/37wt%)はんだ粉末(f)(粒径3〜10μm)および(1)項で調整したフラックス9.8wt%をとり,これらを17℃に冷却しつつ60分間撹拌混練して本発明のソルダペーストを得た。このソルダペーストの粘度は270Pa・s,チクソ指数は0.67であった。
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして,本発明のソルダペーストを得た。
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして,比較例のソルダペーストを得た。
実施例1〜7,および比較例1〜6のソルダペーストについて印刷性,溶融性,洗浄性およびボイドを評価した。各項目の評価内容は以下のとおりである。
印刷性評価基板としてFC−CSPダミー基板(100mm×300mm×0.21mm / SRO80μm)を使用した。印刷装置としてPanasonic Factory Solutions社製SP−60と株式会社ボンマーク製アディティブ加工ステンシル(30μmt/MMO110μm/ピッチサイズ150μm)を使用し,各ソルダペーストを硬度90,印刷角度60℃のウレタンスキージで各基板に印刷した。印刷性評価は各基板上に印刷したソルダペーストおよびにじみ出したフラックスの形状を顕微鏡を用いて観察し,以下の基準に従い行った。その結果を表2に示す。
×:ソルダペーストがブリッジしている
△:ソルダペーストはブリッジしていないが,フラックスがにじみ出してブリッジしており,かつ印刷されたソルダペーストが円筒状になっていない
○:ソルダペーストはブリッジしていないが,フラックスがにじみ出してブリッジしているまたは印刷されたソルダペーストが円筒状になっていない
◎:フラックスのにじみ出しによるブリッジがなく,かつ印刷されたソルダペーストが円筒状になっている
株式会社プロセス・ラボ・ミクロン製アディティブ加工ステンシル(50μmt/MMO100μm/ピッチサイズ400μm)を使用し,ステンシルスキージを用いて各ソルダペーストを手刷りでFR4基板(Cu−OSP処理SRO100μm)に印刷した。この各基板を株式会社タムラ製作所製TNP25−538EM型リフローオーブン窒素雰囲気(酸素濃度100ppm)下,図1に示す熱プロファイルで加熱溶融させ,各基板を室温まで冷却後,顕微鏡でその溶融状態を観察し,以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
×:未溶融またはミッシングバンプが出ている
△:バンプは形成されているが異形バンプが発生している
○:バンプは形成されているがソルダボール(洗浄して落ちるもの)が発生している
◎:バンプが形成されており,ソルダボールの発生もない
洗浄液として株式会社花王製クリンスルー750Kを使用し,これを300ccビーカーに250〜300cc入れ,撹拌装置つきホットプレート上でこれを撹拌しながら所定の温度に加温した。撹拌にはテフロンコーティングされた磁性撹拌子を用いた。上記溶融性試験後の各基板を洗浄液の入ったビーカーに吊るし,所定の時間と回転数で洗浄した。洗浄後,各基板を純水でリンスし金属顕微鏡を用いてリフロー残さの洗浄残り有無を観察し,以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
×:洗浄時間180秒でも洗浄できない
△:同条件で洗浄できる
○:洗浄時間120秒で洗浄できる
◎:洗浄時間60秒で洗浄できる
X線検査装置として名古屋電機工業株式会社製NLX−5000を使用した。洗浄性評価後の各基板を用いてそのボイドを測定し,装置の標準アプリケーションを用いて各バンプの総ボイド面積率を算出した。評価には各基板の総ボイド面積率の最大値を用い,以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
○:総ボイド面積率が3.0%以上5.0%未満 (良好)
△:総ボイド面積率が5.0%以上7.0%未満 (使用可能)
×:総ボイド面積率が7.0%以上 (不良)
*2 Pinova, Inc製 完全水添ロジン
*3 日本テルペン化学株式会社製 α-テルピネオール
*4 Unidym製 ダイマー酸
*5 日本化成株式会社製 ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド
*6 千葉製粉株式会社製 パルミチン酸デキストリン化合物
*7 千葉製粉株式会社製 (パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン化合物
*8 千葉製粉株式会社製 ステアリン酸イヌリン
*9 日本化成株式会社製 エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド
*10 Elementis plc製 ポリアマイドワックス
*11 日本化成株式会社製 メチレンビスステアリン酸アマイド
*12 新日本理化株式会社製 1,3:24−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトール(ジベンジリデンソルビトール)
*13 新日本理化株式会社製 1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール
*14 BASFジャパン製 ヒンダードフェノール
Claims (5)
- (a)ロジン系樹脂と,(b)溶剤と,(c)活性剤と,(d)増粘剤とを含有するフラックスであって,前記増粘剤(d)としてデキストリンおよびイヌリンの少なくとも一方の脂肪酸エステルを含有することを特徴とするソルダペースト用フラックス。
- 請求項1に記載のソルダペースト用フラックスにおいて,前記溶剤(b)としてαテルピネオールおよびβテルピネオールの少なくとも一方を含有することを特徴とするソルダペースト用フラックス。
- 前記デキストリンおよびイヌリンの少なくとも一方の脂肪酸エステルの配合量は,前記フラックス100wt%に対して0.1wt%以上5.0wt%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のソルダペースト用フラックス。
- 前記デキストリンおよびイヌリンの少なくとも一方の脂肪酸エステルの脂肪酸は,パルミチン酸,2−エチルヘキサン酸,ミリスチン酸およびステアリン酸の少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のソルダペースト用フラックス。
- 請求項1から請求項4までのいずれかに記載のソルダペースト用フラックスとはんだ粉末とを混合して得られることを特徴とするスクリーン印刷用ソルダペースト。
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