JP6674982B2 - はんだ組成物および電子基板 - Google Patents

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Description

本発明は、はんだ組成物および電子基板に関する。
はんだ組成物は、はんだ粉末にフラックス組成物(ロジン系樹脂、活性剤および溶剤など)を混練してペースト状にした混合物である(例えば、特許文献1)。このはんだ組成物においては、はんだ溶融性やはんだが濡れ広がりやすいという性質(はんだ濡れ広がり)などのはんだ付け性とともに、ボイドの抑制や印刷性などが要求されている。
また、はんだ組成物は、フラックス残さをそのまま残留させる、いわゆる無洗浄型のはんだ組成物が広く用いられている。さらに、はんだ組成物は、ガラスエポキシ基材、紙エポキシ基材、紙フェノール基材およびプラスチック基材などの各種基材を備えるプリント配線基板と、電子部品の接合に用いられている。
特許第5756067号公報
例えば、はんだ組成物を紙フェノール基材に使用した場合には、フラックス残さ中に泡が残ることが分かった。フラックス残さ中に泡が残ると、泡中に水分がたまったり、泡にクラックが生じたりして、絶縁信頼性が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、フラックス残さ中の泡を十分に抑制できるはんだ組成物、並びにそれを用いた電子基板を提供することを目的とする。
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のようなはんだ組成物および電子基板を提供するものである。
本発明のはんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤および(C)溶剤を含有するフラックス組成物と、(D)融点が200℃以上250℃以下であるはんだ粉末とを含有し、前記(A)成分が、(A1)軟化点が120℃以上であり、酸価が220mgKOH/g以上であるロジン系樹脂と、(A2)軟化点が100℃以下であり、酸価が20mgKOH/g以下であるロジン系樹脂と、を含有し、前記(B)成分が、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、およびアミン系活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、前記(C)成分が、(C1)融点が40℃以上であるヘキサンジオール系溶剤、および、(C2)20℃における粘度が10mPa・s以下であり、かつ沸点が270℃以上である溶剤を含有し、前記(A)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上60質量%以下であり、前記(A1)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、15質量%以上25質量%以下であり、前記(A2)成分に対する前記(A1)成分の質量比((A1)/(A2))が、1/3以上2/1以下であり、前記(B)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であり、前記(C)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上65質量%以下であり、前記(C1)成分に対する前記(C2)成分の質量比((C2)/(C1))は、1以上10以下であることを特徴とするものである。
本発明のはんだ組成物においては、前記(C1)成分が、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明のはんだ組成物においては、前記(C2)成分が、テトラエチレングリコールジメチルエーテルであることが好ましい。
本発明のはんだ組成物は、紙フェノール基材を備える電子基板と、電子部品との接続に用いることが好ましい。
本発明の電子基板は、前記はんだ組成物を用いたはんだ付け部を備えることを特徴とするものである。
本発明のはんだ組成物によれば、フラックス残さ中の泡を十分に抑制できる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、本発明のはんだ組成物においては、(C)溶剤として、(C1)融点が40℃以上であるヘキサンジオール系溶剤、および、(C2)20℃における粘度が10mPa・s以下であり、かつ沸点が270℃以上である溶剤を組み合わせて用いている。(C1)成分は、比較的に低沸点であるため、はんだが溶融する前やはんだ溶融時に揮発して気体となってしまうが、この気体が、フラックス残さ中の気体を外部に押し出す作用がある。そして、(C2)成分は、高沸点であるため、はんだ溶融時にもほとんど揮発しない。そのため、溶剤の気化による泡の発生を抑制できる。また、(C2)成分を含有するフラックス残さは、リフロー時にもある程度の流動性を有しているため、フラックス残さ中の気体が徐々に集まりながら外部に放出される。このようにして、フラックス残さ中の泡を十分に抑制できる。
本発明のはんだ組成物においては、(A)ロジン系樹脂として、(A1)軟化点が120℃以上であり、酸価が220mgKOH/g以上であるロジン系樹脂、および、(A2)軟化点が100℃以下であり、酸価が20mgKOH/g以下であるロジン系樹脂を併用し、かつ、(A1)成分の配合量を所定範囲に抑えている。本発明者らは、(C1)成分および(C2)成分を含む溶剤組成のはんだ組成物において、(A1)成分の配合量が多くなるほど、フラックス残さ中の泡が発生しやすいことを発見した。このメカニズムは、必ずしも明らかではないが、(A1)成分は酸価が高いため、カルボン酸成分が分解しやすく、カルボン酸成分のガスが発生して、フラックス残さ中の泡が発生しやすいものと本発明者らは推察する。本発明のはんだ組成物においては、(A1)成分の配合量を抑えているので、フラックス残さ中の泡の発生を抑制できる。また、(A)ロジン系樹脂として、(A1)成分の他に(A2)成分を併用することで、フラックス残さの流動性を向上させ、フラックス残さ中の泡を外部に放出しやすくしている。さらに、(A2)成分により、ロジン系樹脂として必要な物性(例えば、大気雰囲気下でリフロー工程を行う場合におけるはんだ溶融性など)を補っている。
以上のようにして、上記本発明の効果が達成されるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、フラックス残さ中の泡を十分に抑制できるはんだ組成物、並びにそれを用いた電子基板を提供できる。
本実施形態のはんだ組成物は、以下説明するフラックス組成物と、以下説明する(D)はんだ粉末とを含有するものである。
[フラックス組成物]
まず、本実施形態に用いるフラックス組成物について説明する。本実施形態に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物におけるはんだ粉末以外の成分であり、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤および(C)溶剤を含有するものである。
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンなどが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン(完全水添ロジン、部分水添ロジン、並びに、不飽和有機酸((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸など)の変性ロジンである不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物(「水添酸変性ロジン」ともいう))およびこれらの誘導体などが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態において、(A)成分は、(A1)軟化点が120℃以上であり、酸価が220mgKOH/g以上であるロジン系樹脂、および、(A2)軟化点が100℃以下であり、酸価が20mgKOH/g以下であるロジン系樹脂を含有することが必要である。なお、酸価(平均酸価)は、試料1gに含まれている遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムを求めることで測定できる。また、軟化点は、環球法により測定できる。
(A1)成分としては、(A)成分のうち、軟化点が120℃以上であり、かつ酸価が220mgKOH/g以上であるロジン系樹脂が挙げられる。また、フラックス組成物の流動性の観点から、(A1)成分の軟化点は、130℃以上であることが好ましい。また、活性作用の観点からは、(A1)成分の酸価は、230mgKOH/g以上であることが好ましい。なお、(A1)成分の軟化点および酸価の上限は、特に限定されない。例えば、(A1)成分の軟化点は、200℃以下であってもよい。また、(A1)成分の酸価は、500mgKOH/g以下であってもよい。
(A2)成分としては、(A)成分のうち、軟化点が100℃以下であり、酸価が20mgKOH/g以下であるロジン系樹脂が挙げられる。フラックス残さ中の泡の抑制の観点から、(A2)成分の軟化点は、90℃以下であることが好ましく、70℃以上90℃以下であることがより好ましい。また、フラックス残さ中の泡の抑制の観点から、(A2)成分の酸価は、15mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であることがより好ましい。
なお、(A)成分の軟化点を調整する手段としては、(i)ロジンの重合度合を調整すること(重合度合が高くなるほど、軟化点が高くなる傾向にある)、(ii)ロジンの変性方法を変更すること(例えば、アクリル酸やマレイン酸により変性することで、軟化点が高くなる傾向にある)、(iii)ロジンの分子量を調整すること(分子量が高くなるほど、軟化点が高くなる傾向にある)、(iv)ロジンに水素化反応を施すこと、または、(v)ロジンにエステル化反応またはエステル交換反応を施すことなどが挙げられる。
また、(A)成分の酸価を調整する手段としては、ロジンの変性方法を変更すること(例えば、アクリル酸やマレイン酸により変性することで、酸価が高くなる傾向にあり、エステル化することで、酸価が低くなる傾向にある)などが挙げられる。
本実施形態において、(A1)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、15質量%以上25質量%以下であることが必要である。配合量が15質量%未満である場合には、はんだ溶融性が不十分となる。他方、配合量が25質量%を超えると、フラックス残さ中の泡の発生を抑制できない。また、フラックス残さ中の泡の更なる抑制の観点から、(A1)成分の配合量は、15質量%以上22質量%以下であることが好ましく、17質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態において、(A2)成分の配合量は、はんだ溶融性および印刷性などのバランスの観点から、フラックス組成物100質量%に対して、15質量%以上30質量%以下であることが好ましく、17質量%以上28質量%以下であることがより好ましく、17質量%以上25質量%以下であることが特に好ましい。
本実施形態においては、フラックス残さ中の泡の更なる抑制の観点から、(A2)成分に対する(A1)成分の質量比(A1/A2)が、1/3以上2/1以下であることが好ましく、2/3以上3/2以下であることがより好ましく、3/4以上1/1以下であることが特に好ましい。
また、(A)成分は、必要に応じて、(A1)成分および(A2)成分以外のロジン系樹脂((A3)成分)を含有してもよい。このような場合、(A1)成分および(A2)成分の合計量の(A)成分に対する質量比率[{(A1)+(A2)}/(A)×100]は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、25質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上45質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付け性を向上でき、はんだボールを十分に抑制できる。また、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さ量を十分に抑制できる。
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、およびアミン系活性剤などが挙げられる。これらの活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、これらの中でも、環境対策の観点や、はんだ付け部分での腐食を抑制するという観点からは、有機酸、アミン系活性剤(ハロゲンを含有しないもの)を用いることが好ましく、有機酸を用いることがより好ましい。
有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、およびグリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、およびジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、およびピコリン酸などが挙げられる。
非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。このハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物のように塩素、臭素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、塩素、臭素およびフッ素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールやハロゲン化カルボキシル化合物のように水酸基やカルボキシル基などの極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、およびトリブロモネオペンチルアルコールなどの臭素化アルコール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、および1,4−ジクロロ−2−ブタノールなどの塩素化アルコール、3−フルオロカテコールなどのフッ素化アルコール、並びに、その他これらに類する化合物が挙げられる。ハロゲン化カルボキシル化合物としては、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、2−ヨードプロピオン酸、5−ヨードサリチル酸、および5−ヨードアントラニル酸などのヨウ化カルボキシル化合物、2−クロロ安息香酸、および3−クロロプロピオン酸などの塩化カルボキシル化合物、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモコハク酸、および2−ブロモ安息香酸などの臭素化カルボキシル化合物、並びに、その他これらに類する化合物が挙げられる。
アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、およびジエチルアミンなどのアミン、並びにアミノアルコールなどの有機酸塩または無機酸塩(塩酸、硫酸、および臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびバリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、およびセバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、並びに、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。(B)成分の配合量が前記下限未満では、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス組成物の絶縁性が低下する傾向にある。
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)溶剤は、(C1)融点が40℃以上であるヘキサンジオール系溶剤、および、(C2)20℃における粘度が10mPa・s以下であり、かつ沸点が270℃以上である溶剤を含有することが必要である。(C1)成分と(C2)成分とを組み合わせて用いることにより、フラックス残さ中の泡を抑制でき、さらに、ボイドも抑制できる。
なお、(C1)成分の融点の上限は、特に限定されない。例えば(C1)成分の融点は、100℃以下であってもよい。また、(C1)成分の沸点の下限は、特に限定されない。例えば、(C1)成分の沸点は、120℃以上であってもよい。なお、本明細書において、沸点とは、1013hPaにおける沸点のことをいう。
前記(C1)成分としては、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール(融点:86〜90℃、沸点:214℃)、1,6−ヘキサンジオール(融点:40〜44℃、沸点:250℃)および(2S,5S)−2,5−ヘキサンジオール(融点:52〜56℃、沸点:212〜215℃)などが挙げられる。これらの中でも、溶剤の融点の観点から、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、フラックス残さ中の泡の更なる抑制の観点から、(C2)成分の20℃における粘度は、8mPa・s以下であることがより好ましく、5mPa・s以下であることが特に好ましく、2mPa・s以下であることが最も好ましい。(C2)成分の20℃における粘度の下限は、特に限定されない。例えば、(C2)成分の20℃における粘度は、0.01mPa・s以上であってもよい。なお、溶剤の粘度は、ブルックフィールド式回転粘度計で測定できる。
さらに、フラックス残さ中の泡の更なる抑制の観点から、(C2)成分の沸点は、275℃以上300℃以下であることがより好ましい。
前記(C2)成分としては、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:275℃、粘度:3.8mPa・s)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点:274℃、粘度:8.4mPa・s)、およびマレイン酸ジブチル(沸点:281℃、粘度:5.0mPa・s)などが挙げられる。これらの中でも、溶剤の粘度の観点から、テトラエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、括弧内に記載の粘度は、20℃における粘度である。
前記(C2)成分の(C1)成分に対する質量比((C2)/(C1))は、フラックス残さ中の泡の抑制と印刷性とのバランスの観点から、1以上10以下であることが好ましく、3/2以上8以下であることがより好ましく、2以上6以下であることが特に好ましい。
前記(C)成分は、本発明の目的を達成できる範囲内において、(C1)成分および(C2)成分以外の溶剤((C3)成分)を含有していてもよい。(C3)成分により、はんだ組成物中の固形分を溶解または分散させることができる。そして、この(C3)成分は、20℃において液状であることが好ましい。
前記(C3)成分としては、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点:259℃、粘度:8.6mPa・s)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:230℃、粘度:6.6mPa・s)、α,β,γ−ターピネオール(沸点:217℃、粘度:67mPa・s)、ベンジルグリコール(沸点:256℃、粘度:12.6mPa・s)、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(沸点:272℃、粘度:10.4mPa・s)、トリプロピレングリコール(沸点:265℃、粘度:57.2mPa・s)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点:302℃、粘度:19.3mPa・s)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点:255℃、粘度:2.4mPa・s)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:242℃、粘度:1mPa・s)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点:231℃、粘度:7.4mPa・s)、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(沸点:229℃、粘度:7.6mPa・s)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点:220℃、粘度:2.8mPa・s)および2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(融点:127〜130℃、沸点:210℃)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、括弧内に記載の粘度は、20℃における粘度である。
(C3)成分を用いる場合、(C3)成分の(C)成分に対する質量比((C3)/(C))は、ボイドの抑制と印刷性とのバランスの観点から、1/15以上1/2以下であることが好ましく、1/10以上1/2以下であることがより好ましく、1/5以上1/3以下であることが特に好ましい。
(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上65質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。溶剤の配合量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。
本実施形態においては、印刷性などの観点から、さらにチクソ剤を含有していてもよい。本実施形態に用いるチクソ剤としては、硬化ひまし油、アミド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、およびガラスフリットなどが挙げられる。これらのチクソ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記チクソ剤を用いる場合、その配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。配合量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、ダレが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、チクソ性が高すぎて、印刷不良となりやすい傾向にある。
[他の成分]
本実施形態に用いるフラックス組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分およびチクソ剤の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、消泡剤、酸化防止剤、改質剤、つや消し剤、および発泡剤などが挙げられる。これらの添加剤の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
[はんだ組成物]
次に、本実施形態のはんだ組成物について説明する。本実施形態のはんだ組成物は、前述の本実施形態のフラックス組成物と、以下説明する(D)はんだ粉末とを含有するものである。
フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。フラックス組成物の配合量が5質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、フラックス組成物の配合量が35質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が65質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)はんだ粉末は、融点が200℃以上250℃以下であるはんだ粉末である。本実施形態においては、融点が200℃以上250℃以下のはんだ粉末を使用する前提で、前記(C1)成分および前記(C2)成分の沸点を規定している。
このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズ(Sn)を主成分とする合金が好ましい。また、この合金の第二元素としては、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)およびアンチモン(Sb)などが挙げられる。さらに、この合金には、必要に応じて他の元素(第三元素以降)を添加してもよい。他の元素としては、銅、銀、ビスマス、インジウム、アンチモン、およびアルミニウム(Al)などが挙げられる。
ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、300質量ppm以下であることが好ましい。
鉛フリーはんだ粉末におけるはんだ合金としては、具体的には、Sn−Ag系、およびSn−Ag−Cu系などが挙げられる。これらの中でも、はんだ接合の強度の観点から、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金が好ましく用いられている。そして、Sn−Ag−Cu系のはんだの融点は、通常200℃以上250℃以下(好ましくは、200℃以上240℃以下)である。なお、Sn−Ag−Cu系のはんだの中でも、銀含有量が低い系統のはんだの融点は、210℃以上250℃以下(好ましくは、220℃以上240℃以下)である。
(D)成分の平均粒子径は、通常1μm以上40μm以下であるが、はんだ付けパッドのピッチが狭い電子基板にも対応するという観点から、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、2μm以上30μm以下であることがさらにより好ましく、3μm以上20μm以下であることが特に好ましい。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
[はんだ組成物の製造方法]
本実施形態のはんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(D)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
[電子基板]
次に、本実施形態の電子基板について説明する。本実施形態の電子基板は、以上説明したはんだ組成物を用いたはんだ付け部を備えることを特徴とするものである。本発明の電子基板は、前記はんだ組成物を用いて電子部品を電子基板(プリント配線基板など)に実装することで製造できる。
前述した本実施形態のはんだ組成物は、フラックス残さ中の泡を十分に抑制できる。そして、特にフラックス残さ中の泡が発生しやすい紙フェノール基材を備える電子基板を用いる場合にも、フラックス残さ中の泡を十分に抑制できる。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、およびジェットディスペンサーなどが挙げられる。
また、前記塗布装置にて塗布したはんだ組成物上に電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品をプリント配線基板に実装するリフロー工程により、電子部品を電子基板に実装できる。
リフロー工程においては、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品およびプリント配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができる。その結果、前記電子部品を前記プリント配線基板に実装することができる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、プリヒート温度は、140℃以上200℃以下であることが好ましく、150℃以上160℃以下であることがより好ましい。プリヒート時間は、60秒間以上120秒間以下であることが好ましい。ピーク温度は、230℃以上270℃以下であることが好ましく、240℃以上255℃以下であることがより好ましい。また、220℃以上の温度の保持時間は、20秒間以上60秒間以下であることが好ましい。
また、本実施形態のはんだ組成物および電子基板は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記電子基板では、リフロー工程により、プリント配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、プリント配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、およびInGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、並びに、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO、およびエキシマーなど)が挙げられる。
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A1)成分)
ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン(軟化点:130℃、酸価:240mgKOH/g)、商品名「パインクリスタルKE−604」、荒川化学工業社製
((A2)成分)
ロジン系樹脂B:ロジンエステル(軟化点:80〜90℃、酸価:4〜12mgKOH/g)、商品名「ハリタック F85」、ハリマ化成社製
ロジン系樹脂C:ロジンエステル(軟化点:70〜80℃、酸価:10mgKOH/g以下)、商品名「スーパーエステルA−75」、荒川化学工業社製
((A3)成分)
ロジン系樹脂D:水添ロジン(軟化点:80℃、酸価:172mgKOH/g)、商品名「RHR−301」、丸善油化商事社製
((B)成分)
活性剤A:スベリン酸
活性剤B:ジブロモブテンジオール、エア・ブラウン社製
((C1)成分)
溶剤A:2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール(融点:86〜90℃、沸点:214℃)
溶剤B:1,6−ヘキサンジオール(融点:40〜44℃、沸点:250℃
((C2)成分)
溶剤C:テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:275℃、粘度:3.8mPa・s)、商品名「ハイソルブMTEM」、東邦化学社製
((C3)成分)
溶剤D:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点:259℃、粘度:8.6mPa・s)
((D)成分)
はんだ粉末:合金組成はSn−3.0Ag−0.5Cu、粒子径分布は20〜38μm、はんだ融点は217〜220℃
(他の成分)
チクソ剤:硬化ひまし油、商品名「ヒマコウ」、KFトレーディング社製
酸化防止剤:商品名「イルガノックス245」、BASF社製
[実施例1]
ロジン系樹脂A17質量%、ロジン系樹脂B17質量%、活性剤A2質量%、活性剤B2質量%、溶剤A10質量%、溶剤C26.5質量%、溶剤D15.5質量%、チクソ剤6質量%および酸化防止剤4質量%を容器に投入し、プラネタリーミキサーを用いて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物11質量%およびはんだ粉末89質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、プラネタリーミキサーにて混合することではんだ組成物を調製した。
[実施例2〜7]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
[比較例1〜6]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(ボイド、はんだ溶融性、フラックス残さ中の泡)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)ボイド
パワートランジスタ(大きさ:5.5mm×6.5mm、厚み:2.3mm、ランド:スズめっき、ランドの面積:30mm)およびQFN(大きさ:6mm×6mm、ランド:スズめっき、ランドの面積:36mm)を実装できる電極を有する基板上に、対応するパターンを有するメタルマスク(厚み:0.13mm)を用い、はんだ組成物を印刷した。その後、はんだ組成物上にパワートランジスタおよびQFNを搭載して、プリヒート150〜180℃を80秒間とピーク温度240℃で溶融時間を40秒間の条件でリフロー(大気中)を行い、試験基板を作製した。得られた試験基板におけるはんだ接合部を、X線検査装置(「NLX−5000」、NAGOYA ELECTRIC WORKS社製)を用いて観察した。そして、リフロー後のパワートランジスタおよびQFNでのボイド面積率[(ボイド面積/ランド面積)×100]を測定した。
そして、以下の基準に従って、ボイドを評価した。
○:ボイド面積率が、15%以下である。
×:ボイド面積率が、15%超20%以下である。
××:ボイド面積率が、20%超である。
(2)はんだ溶融性
直径が0.2mmφ、0.22mmφ、0.24mmφ、0.26mmφ、0.28mmφ、0.3mmφ、0.32mmφ、0.34mmφ、0.36mmφ、0.38mmφおよび0.4mmφの開穴が、それぞれ100個設けられ、厚みが0.13mmの版を用い、はんだ組成物を基板上に、印刷速度50mm/sec、印圧20Nの条件で印刷して、試験基板を得た。その後、得られた試験基板に対し、プリヒート150〜180℃を80秒間とピーク温度240℃で溶融時間を40秒間の条件でリフロー(大気中)を行った。そして、リフロー後の試験基板を目視にて観察し、以下の基準に従って、はんだ溶融性を評価した。
◎:直径が0.22mmφの印刷部分ではんだ溶融が確認された。
○:直径が0.22mmφの印刷部分ではんだ溶融はなかったが、直径が0.24mmφの印刷部分ではんだ溶融が確認された。
×:直径が0.26mmφ以下の印刷部分ではんだ溶融はなかったが、直径が0.28mmφの印刷部分ではんだ溶融が確認された。
(3)フラックス残さ中の泡
紙フェノール基材を備える試験基板(ピッチが0.8mmで、間隔が0.4mmのスリット部を有する)を準備し、この試験基板を、温度85℃、相対湿度85%に設定した恒温恒湿槽に投入し、12時間静置する吸湿処理を施した。そして、吸湿処理を施した試験基板の銅配線およびその周辺部に、スリット部に対応する開口部を有するメタルマスク(厚み:0.13mm)を用い、はんだ組成物を印刷した。その後、印刷後の試験基板に、プリヒート150〜180℃を80秒間とピーク温度240℃で溶融時間を40秒間の条件でリフロー(大気中)を行った。そして、リフロー後の試験基板のスリット部を拡大鏡にて観察し(観察範囲の大きさ:3mm×0.5mm)、以下の基準に従って、フラックス残さ中の泡を評価した。
◎:フラックス残さに泡がないか、或いは、150μm以下の泡があり、その数が2個以下である。
○:フラックス残さに150μm以下の泡があり、その数が3個以上5個以下である。
×:フラックス残さに150μm以下の泡があり、その数が6個以上である。
××:フラックス残さに150μm超の泡がある。
Figure 0006674982
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のはんだ組成物(実施例1〜7)は、ボイド、はんだ溶融性、およびフラックス残さ中の泡の結果が良好であることが確認された。従って、本発明のはんだ組成物は、フラックス残さ中の泡を十分に抑制できることが確認された。
本発明のはんだ組成物は、電子機器のプリント配線基板などの電子基板に電子部品を実装するための技術として好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. (A)ロジン系樹脂、(B)活性剤および(C)溶剤を含有するフラックス組成物と、(D)融点が200℃以上250℃以下であるはんだ粉末とを含有し、
    前記(A)成分が、(A1)軟化点が120℃以上であり、酸価が220mgKOH/g以上であるロジン系樹脂と、(A2)軟化点が100℃以下であり、酸価が20mgKOH/g以下であるロジン系樹脂と、を含有し、
    前記(B)成分が、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、およびアミン系活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、
    前記(C)成分が、(C1)融点が40℃以上であるヘキサンジオール系溶剤、および、(C2)20℃における粘度が10mPa・s以下であり、かつ沸点が270℃以上である溶剤を含有し、
    前記(A)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上60質量%以下であり、
    前記(A1)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、15質量%以上25質量%以下であり、
    前記(A2)成分に対する前記(A1)成分の質量比((A1)/(A2))が、1/3以上2/1以下であり、
    前記(B)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であり、
    前記(C)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上65質量%以下であり、
    前記(C1)成分に対する前記(C2)成分の質量比((C2)/(C1))は、1以上10以下である
    ことを特徴とするはんだ組成物。
  2. 請求項1に記載のはんだ組成物において、
    前記(C1)成分が、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジオールおよび1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種である
    ことを特徴とするはんだ組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載のはんだ組成物において、
    前記(C2)成分が、テトラエチレングリコールジメチルエーテルである
    ことを特徴とするはんだ組成物。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のはんだ組成物において、
    紙フェノール基材を備える電子基板と、電子部品との接続に用いる
    ことを特徴とするはんだ組成物。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のはんだ組成物を用いたはんだ付け部を備えることを特徴とする電子基板。
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