JP5724490B2 - 圧電アクチュエータおよびその作製方法、液体吐出ヘッドおよび記録装置 - Google Patents
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Description
出願人は先に「基板上に1以上の連通溝を有する隔壁を設けて複数の圧電素子形成領域を画成し、インクジェット方式により共通電極材料前駆体液を、圧電素子形成領域及び連通溝に塗布・焼成して共通電極を形成し、インクジェット方式により圧電体ゾルゲル液を、圧電素子形成領域に塗布・焼成して圧電材料層を形成し、さらに、インクジェット方式により個別電極材料前駆体液を、圧電素子形成領域に塗布・焼成して個別電極を形成する作製方法」を提案した(特許文献1)。
「圧電膜化工程」は、塗布された前駆液を圧電膜に変質させる工程である。
以下に挙げる実施の形態1、2、3のうち、実施の形態1は、第1電極膜形成工程、単分子膜形成工程、パターニング工程、塗布工程、圧電膜化工程および第2電極膜形成工程の各工程を説明するための図であり、実施の形態2、3が、発明の実施の形態である。
図1以下を参照して、実施の形態1を説明する。
図1は「単分子膜形成工程」と「パターニング工程」を説明するための図である。
図1(a)は、Si基板1の表面に「第1電極膜形成工程」により第1電極膜1Aを均一に形成された状態を示している。
そうすると、基板1の表面に形成された白金膜(第1電極膜)1Aの表面が露出する。
白金膜の「露出した部分の形状」は、圧電膜の矩形形状に合同な形状である。
さらに、酸素プラズマ照射の際に「マスク」として用いられたフォトレジスト3を除去する。図1(d)の左図はこの状態を示し、符号1A1で示す領域で白金膜1Aの表面が露出している。白金膜1Aの露出した領域1A1の形状は「矩形状」であり、その長手方向は、図1(d)左図において図面に直交する方向である。
図1(e)は、露出した白金膜1A1の表面に前駆液6が塗布された状態を示す。接触角のコントラスト(親液性と疎液性の差)により、前駆液6は親液部である白金膜1A1にのみに広がり矩形状のパターンを形成する。
第1過熱工程で熱処理されると、塗布された前駆液6は乾燥して「厚み」を減じ、膜状になる。この膜状のものを、便宜上以下においては「前駆膜」と称する。
説明中の実施の形態では、熱分解処理後の矩形状の「前駆膜6A」は、長手方向の中心部で膜厚:90nmであった。
洗浄後、上記と同様の浸漬処理によりSAM膜2を再度形成する。
SAM膜2は、第1電極膜である白金膜1Aとアルカンチオール分子との組み合わせで形成されるものであり、前駆膜6A上には形成されない。従って、繰り返し工程における2度目以降の単分子膜形成工程では、SAM膜2は「自動的に矩形形状をパターニングされた状態」で形成される。このように自動的にパターニングされたSAM膜の状態を図2(b)に示している。
圧電膜6Dの厚さは、長手方向の中央部から長手方向の両端部の極く近傍に至るまで、同じ厚さ(180nm)であり、第2電極膜1Bの長手方向の両端部1B1、1B2における圧電膜6Dの厚さ(「端部膜厚」と呼ぶ。)も180nmであった。
図2(d)の状態から、上記の繰り返し工程を更に4回繰り返して、膜厚:540nmの圧電膜を形成した。なお、結晶化工程は、全部で6層の前駆膜を形成した後、一括して行った。
7層の圧電膜を、図の如く下から第1層L1、第2層L3・・・第7層L7とする。図の左右方向が長手方向であり、第i層(i=1〜7)の長手方向の長さをXiとすると、上記の如く、
Xi+1=0.8Xi
である。
圧電膜の電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。
図4に、「P−Eヒステリシス曲線」を示す。横軸は「印加電界」、縦軸は「分極率」を示す。
図3のような、圧電膜の長さが上層ほど短くなるようにすると、長手方向中心部の変形が、端部からの拘束を軽減されるため中心部変形量を大きくすることができる。
具体的には、実効膜厚は198nmであり、成膜膜厚に対する実効膜厚は99.4%であった。
比較のために、スピンコートやスパッタで成膜したPZTの圧電膜を用意した。この場合は、レジストパターニングのドライエッチングの際に、オーバーエッチングが発生し、圧電膜端部にテーパが生じる。これらのテーパは50〜70°程度の高いテーパを有するため上記「低いテーパを有するPZT圧電膜」の場合と同条件で成膜した保護膜の実効膜厚は68.4nmで、成膜膜厚に対する実行膜厚は34.2%であった。
実施の形態2と同様の工程で、第1層を形成し、第1層の上にさらに6層の圧電膜を形成した。このとき形成した6層の圧電膜は、図7に示すように、第1層L1の上の第2層L21〜第7層L27の層の長さ(図の左右方向の長さ)が、1層あがるたびに「直下の層の長さ」を片側10%ずつ短くなるようにし、圧電膜厚が、長手方向両端部側から中央部に向かって減少し、両端部で1080nm、中央部で最小膜厚:540nmとなるようにした。
また、長手方向の中心部膜厚:TCと端部膜厚:Teの倍率R(=TC/Te)が「0.33<R<0.67」の範囲とすることにより、図5の「点線」のように、セラミック焼結体に比べて10%の中心部変形量の向上が認められた。
図5から明らかなように、セラミック焼結体や実施の形態2に示した「1.25<R<3.0」の範囲の圧電アクチュエータでは、長手方向の変形量が山形(実線と破線)になるが、実施の形態3の圧電アクチュエータでは点線で示すように変形量が「長手方向に水平」を保つ。このような変形量分布は「液体吐出ヘッドとして安定した振動モード」を実現でき、液体吐出ヘッドの圧電アクチュエータとして十分設計できうる特性値である。
図10は、インクジェット塗布装置を説明するための斜視図である。
同図において、架台200上に、Y軸駆動手段201が設置され、その上に基板202(塗布対象)を搭載するステージ203がY軸方向に駆動可能に設置されている。ステージ203には図示されない「真空、静電気などを利用する吸着手段」が設けられており、基板202を固定する。
ヘッドベース206の上には「塗布液を吐出」させる液体吐出ヘッド208が搭載されている。液体吐出ヘッド208には、図示されない「液タンク」から供給用パイプ210を介して塗布液が供給される。
上記X、Y、Z駆動手段205、201、211により、塗布対象(塗布液が前駆液であるときには、SAM膜をパターニングされて露出した第1電極膜表面、塗布液が白金液である場合には圧電膜表面)に対する位置調整を行い、液体吐出ヘッド208から塗布液を吐出して塗布を行なう。
図11において、圧力室21は、ノズル板10、圧力室基板20、振動板30により4方を囲繞され、図面に直交する方向の両端部は板部材で閉ざされ、一方の板部材を貫通する導液管により塗布液を導入できるようになっている。圧力室基板20および振動板30は「Siの板」である。図12に示すように、圧力室基板20は、隣接する圧力室を隔てる隔壁となっている。
図13は斜視図的説明図、図14は機構部の側面説明図である。
インクジェットプリンタは、記録装置本体81の内部に「主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド」、この記録ヘッドへ「吐出液であるインク」を供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部82等を収納している。
本体81の下方部には、多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着でき、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。
給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
キャリッジ93には、ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95が交換可能に装着される。
インクカートリッジ95は、上方には「大気と連通する大気口」、下方には「インクジェットヘッドへインクを供給する供給口」を有し、内部には「インクが充填された多孔質体」を有し、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクの圧力を「わずかな負圧」に維持している。
記録ヘッドとして、ここでは各色のヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
キャリッジ93は、後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置されており、キャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定し、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
給紙カセット84にセットされた用紙83をヘッド94の下方側に搬送するため、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの「用紙83の送り出し角度」を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112が設けられ、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114、排紙経路を形成するガイド部材115、116を配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させつつ、画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動して、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
キャリッジ93の移動方向右端側の「記録領域を外れた位置」に、ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。
回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。
キャリッジ93は、印字待機中には回復装置117側に移動されてキャッピング手段でヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。
記録途中などに「記録と関係しないインク」を吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等がクリーニング手段により除去され、吐出不良が解消される。吸引されたインクは、本体下部に設置された図示されない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、このインクジェット記録装置においては、本発明を実施したインクジェットヘッドを搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
2 SAM膜
3 フォトレジスト
1A 第1電極膜
1A1 SAM膜をパターニングされて第1電極膜が露出した部分
6 PZT結晶となるべき前駆液
6A 前駆液に乾燥・熱分解工程を施した後の前駆膜
Claims (7)
- 電圧の印加により変形可能な圧電膜を有する圧電アクチュエータを作製する方法であって、
前記圧電アクチュエータを形成する基板上に、第1電極となる第1電極膜を形成する第1電極膜形成工程と、
前記第1電極膜形成工程により形成された前記第1電極膜上の所望のエリアに、自己組織化による単分子膜を形成する単分子膜形成工程と、
該単分子膜形成工程により形成された前記単分子膜を矩形状にパターニングし、前記第1電極膜を前記矩形状に露出させるパターニング工程と、
該パターニング工程により前記矩形状に露出した前記第1電極膜部分に、前記圧電膜となる圧電膜材料の前駆液をインクジェット方式で塗布する塗布工程と、
該塗布工程により塗布された前記前駆液を圧電膜に変質させる圧電膜化工程と、
該圧電膜化工程により圧電膜化された前記圧電膜の上に第2電極となる第2電極膜を形成する第2電極膜形成工程と、
を備え、
前記圧電膜材料の前駆液に対して、前記第1電極膜が親液性で、前記単分子膜が疎液性であり、
前記圧電膜化工程が、
前記塗布工程により塗布された前記前駆液を乾燥し、熱分解する乾燥・熱分解工程と、該乾燥・熱分解工程により熱分解された前記圧電膜材料を結晶化させる結晶化工程を有し、
複数回の前記単分子膜形成工程と、
複数回の前記塗布工程と、
複数回の前記乾燥・熱分解工程と、
1回以上の前記結晶化工程と、を行なって、複数の前記圧電膜を階層的に積層して形成し、
階層的に積層される複数の前記圧電膜の、長手方向の大きさが、上層の圧電膜ほど小さくなるように、インクジェット方式による複数回の前記塗布工程を制御することを特徴とする圧電アクチュエータ作製方法。 - 請求項1記載の圧電アクチュエータ作製方法において、
前記圧電アクチュエータを形成する基板がSi基板であり、
前記第1電極膜、前記第2電極膜の材料が、白金族元素もしくはその酸化物であり、
前記単分子膜の材料がアルカンチオール材料であり、
前記圧電膜の前駆液が、金属の複合酸化物の前駆液であることを特徴とする圧電アクチュエータ作製方法。 - 請求項2記載の圧電アクチュエータ作製方法において、
前記第1電極膜の材料が白金族金属であり、
前記圧電膜材料の前駆液がPZT前駆体溶液であることを特徴とする圧電アクチュエータ作製方法。 - 請求項1〜3の任意の1に記載の圧電アクチュエータ作製方法において、
前記第2電極膜を、前記圧電膜上にインクジェット方式で形成することを特徴とする圧電アクチュエータ作製方法。 - 請求項1〜4の任意の1に記載の圧電アクチュエータ作製方法により前記基板上に作成された圧電アクチュエータ。
- 請求項5記載の圧電アクチュエータを用いた液体吐出ヘッド。
- 請求項6に記載の液体吐出ヘッドを備えた記録装置。
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