JP6171372B2 - 電気機械変換膜の製造方法、電気機械変換素子の製造方法 - Google Patents

電気機械変換膜の製造方法、電気機械変換素子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6171372B2
JP6171372B2 JP2013020997A JP2013020997A JP6171372B2 JP 6171372 B2 JP6171372 B2 JP 6171372B2 JP 2013020997 A JP2013020997 A JP 2013020997A JP 2013020997 A JP2013020997 A JP 2013020997A JP 6171372 B2 JP6171372 B2 JP 6171372B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
electromechanical conversion
ink
conversion film
lower electrode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013020997A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014154610A (ja
Inventor
亮 田代
亮 田代
上田 恵司
恵司 上田
町田 治
治 町田
八木 雅広
雅広 八木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP2013020997A priority Critical patent/JP6171372B2/ja
Publication of JP2014154610A publication Critical patent/JP2014154610A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6171372B2 publication Critical patent/JP6171372B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)

Description

本発明は、電気機械変換膜の製造方法、及び電気機械変換素子の製造方法に関する。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置及び液滴吐出ヘッドに関して、インク滴を吐出するノズルと、ノズルが連通する圧力室と、圧力室内のインクを加圧する圧電素子等の電気機械変換素子とを有するものが知られている。
電気機械変換素子は、例えば、下部電極上に電気機械変換膜及び上部電極を積層した構造を有する。薄膜である電気機械変換膜は、例えば、スパッタリング法、MOCVD法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法等により製造できる。
ここで、一例としてゾルゲル法を用いた電気機械変換膜の製造方法について説明する。まず、下部電極上に疎水性膜のパターンを形成する(工程1)。下部電極上の疎水性膜のパターンが形成されていない部分は親水性である。次に、下部電極上の親水性部分(疎水性膜のパターンが形成されていない部分)のみに電気機械変換膜の前駆体塗膜を形成し熱処理を行う(工程2)。この熱処理により、疎水性膜のパターンは消失する。
電気機械変換膜の前駆体塗膜は薄いため、1回の処理では所定の膜厚に形成することはできない。そこで、工程1及び工程2を必要回数繰り返すことにより、電気機械変換膜の前駆体塗膜を積層し、所定の膜厚の電気機械変換膜を製造する。なお、特許文献1において、電気機械変換膜の製造に用いるゾルゲル液(前駆体溶液)の好適な組成が示されている。
しかしながら、好適な組成のゾルゲル液を用いることにより、ゾルゲル液の吐出安定性を大幅に向上させる効果が得られるものの、ゾルゲル液の組成の調整だけでは、成膜された電気機械変換膜の形状(膜厚分布)が不均一になることを発明者らは見出した。具体的には、従来の方法で成膜された電気機械変換膜の長手方向の膜厚分布は、端部が盛り上がり中央付近が薄くなった所謂コーヒーステイン形状になることを発明者らは見出した。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、膜厚分布が均一な電気機械変換膜製造方法等を提供することを課題とする。
電気機械変換膜の製造方法は、基板上に形成された成膜対象物の表面に、複数の溶媒を含む前駆体溶液を吐出し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記基板を加熱し、前記複数の溶媒を蒸発させて前記塗膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた前記塗膜を加熱し、前記塗膜を結晶化させて電気機械変換膜とする結晶化工程と、を有し、前記前駆体溶液の濃度は、0.18〜0.31mol/lであり、前記複数の溶媒には、沸点の差が135℃以上である溶媒が含まれており、前記乾燥工程における前記基板の昇温速度は、60℃/分未満であることを要件とする。
本発明によれば、膜厚分布が均一な電気機械変換膜製造方法等を提供できる。
電気機械変換素子を用いた液滴吐出ヘッドを例示する断面図(その1)である。 電気機械変換素子を用いた液滴吐出ヘッドを例示する断面図(その2)である。 第1の実施の形態に係る薄膜製造装置を例示する斜視図である。 第1の実施の形態に係る薄膜製造工程を例示する図(その1)である。 第1の実施の形態に係る薄膜製造工程を例示する図(その2)である。 第1の実施の形態に係る薄膜製造工程を例示する図(その3)である。 第1の実施の形態に係る薄膜製造工程を例示する図(その4)である。 機能性インクを塗布する部分のパターン形状を例示する図である。 従来の製造方法で図8に示すパターンに塗布された機能性インクの形状を例示する図である。 第1の実施の形態に係る製造方法で図8に示すパターンに塗布された機能性インクの形状を例示する図である。 インクジェット記録装置を例示する斜視図である。 インクジェット記録装置の機構部を例示する側面図である。 SAM膜形成部位において水の接触角を測定した写真である。 SAM膜除去部位において水の接触角を測定した写真である。 実施例2で作製した電気機械変換素子のP−Eヒステリシス曲線を示すグラフである。 実施例2で作製した電気機械変換膜の短手方向の断面の膜厚分布を例示する図(その1)である。 実施例2で作製した電気機械変換膜の短手方向の断面の膜厚分布を例示する図(その2)である。
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1の実施の形態〉
[薄膜]
まず、第1の実施の形態に係る薄膜製造装置及び薄膜製造方法で製造される薄膜の一例として、電気機械変換素子を構成する電気機械変換膜について説明する。なお、第1の実施の形態に係る薄膜製造装置及び薄膜製造方法で製造可能な薄膜が電気機械変換膜に限定されないことは言うまでもない。
電気機械変換素子は、例えば、インクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドの構成部品として用いられる。図1は、電気機械変換素子を用いた液滴吐出ヘッドを例示する断面図である。
図1を参照するに、液滴吐出ヘッド1は、ノズル板10と、圧力室基板20と、振動板30と、電気機械変換素子40とを有する。ノズル板10には、インク滴を吐出するノズル11が形成されている。ノズル板10、圧力室基板20、及び振動板30により、ノズル11に連通する圧力室21(インク流路、加圧液室、加圧室、吐出室、液室等と称される場合もある)が形成されている。振動板30は、インク流路の壁面の一部を形成している。
電気機械変換素子40は、密着層41と、下部電極42と、電気機械変換膜43と、上部電極44とを含んで構成され、圧力室21内のインクを加圧する機能を有する。換言すれば、上部電極44は下部電極42に対向して配置され、電気機械変換膜43は下部電極42及び上部電極44に挟持されている。密着層41は、例えばTi、TiO、TiN、Ta、Ta、Ta等からなる層であり、下部電極42と振動板30との密着性を向上する機能を有する。但し、密着層41は、電気機械変換素子40の必須の構成要素ではない。
電気機械変換素子40において、下部電極42と上部電極44との間に電圧が印加されると、電気機械変換膜43が機械的に変位する。電気機械変換膜43の機械的変位にともなって、振動板30が例えば横方向(d31方向)に変形変位し、圧力室21内のインクを加圧する。これにより、ノズル11からインク滴を吐出させることができる。
なお、図2に示すように、液滴吐出ヘッド1を複数個並設し、液滴吐出ヘッド2を構成することもできる。
電気機械変換膜43の前駆体溶液の主成分は、金属アルコキシド化合物、金属アセテート化合物、又は金属アセチルアセテート化合物を含むと好適である。金属アルコキシド化合物の一例としては、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシドやチタンテトライソプロポキシド等を挙げることができる。金属アセテート化合物の一例としては、酢酸鉛三水和物等を挙げることができる。金属アセチルアセテート化合物の一例としては、鉛アセチルアセテート等を挙げることができる。
電気機械変換膜43の材料としては、例えば、PZTを用いることができる。PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体である。例えば、PbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53、Ti0.47)O、一般にはPZT(53/47)と示されるPZT等を使用することができる。PbZrOとPbTiOの比率によって、PZTの特性が異なる。
電気機械変換膜43としてPZTを使用する場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物を使用し、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ、PZT前駆体溶液を作製する。酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物の混合量は、所望のPZTの組成(PbZrOとPbTiOの比率)に応じて、当業者が適宜選択できるものである。ここで、共通溶媒とは、主溶媒とも称されるものであり、必ず使用される溶媒である。
なお、金属アルコキシド化合物は、大気中の水分により容易に分解する。そのため、PZT前駆体溶液に、安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミン等を添加してもよい。
電気機械変換膜43の材料として、例えば、チタン酸バリウム等を用いても構わない。この場合は、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することが可能である。
これら材料は一般式ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x、Ba)(Zr、Ti)O、(Pb1−x、Sr)(Zr、Ti)O、と表され、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
下部電極42の材料としては、高い耐熱性を有し、下記に示すアルカンチオールとの反応により、SAM膜を形成する金属等を用いることができる。具体的には、低い反応性を有するルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)等の白金族金属を用いることができる。又、白金族元素の酸化物、白金族金属を含む合金材料、又はこれら数種の積層膜等を用いてもよい。
又、これらの金属層を作製した後に、導電性酸化物層を積層して使用することも可能である。導電性酸化物としては、具体的には、化学式ABOで記述され、A=Sr、Ba、Ca、La、 B=Ru、Co、Ni、を主成分とする複合酸化物があり、SrRuOやCaRuO、これらの固溶体である(Sr1−x Ca)Oを挙げられる。又、この他に、LaNiOやSrCoO、更にはこれらの固溶体である(La, Sr)(Ni1−y Co)O (y=1でも良い)が挙げられる。それ以外の酸化物材料として、IrO、RuOも挙げられる。
下部電極42は、例えば、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜法等の方法により作製することができる。下部電極42は、電気機械変換素子40に信号入力する際の共通電極として電気的接続をするので、その下部にある振動板30は絶縁体又は表面が絶縁処理された導体を用いることができる。上部電極44は、例えば、インクジェット方式等の方法により作製することができる。
振動板30の具体的な材料としては、例えば、シリコンを用いることができる。又、振動板30の表面を絶縁処理する具体的な材料としては、例えば、厚さ約数百nm〜数μm程度のシリコン酸化膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜又はこれらの膜を積層した膜等を用いることができる。又、熱膨張差を考慮し、酸化アルミニウム膜、ジルコニア膜等のセラミック膜を用いてもよい。振動板30の表面を絶縁処理するシリコン系絶縁膜は、CVD法やシリコンの熱酸化処理等により形成できる。又、振動板30の表面を絶縁処理する酸化アルミニウム膜等の金属酸化膜は、スパッタリング法等により形成できる。
[薄膜製造装置]
次に、第1の実施の形態に係る薄膜製造装置の構造について説明する。図3は、第1の実施の形態に係る薄膜製造装置を例示する斜視図である。図3を参照するに、薄膜製造装置3において、架台60上にはY軸駆動手段61が設置されている。Y軸駆動手段61上には、基板5を搭載するステージ62が、Y軸方向に駆動可能なように設置されている。
なお、ステージ62には通常、真空又は静電気等を利用した図示しない吸着手段が付随されており、これにより基板5を固定することができる。又、ステージ62にZ軸を中心に回転する図示しない駆動手段を搭載し、後述するインクジェットヘッド67及びレーザ装置71と、基板5との相対的な傾きを補正できる構成としても良い。
又、架台60上には、X軸駆動手段63を支持するためのX軸支持部材64が設置されている。X軸駆動手段63には、Z軸駆動手段65が設置され、Z軸駆動手段65上にはヘッドベース66が取り付けられ、X軸及びZ軸方向に移動できるようにされている。
Z軸駆動手段65は、後述するインクジェットヘッド67と基板5との距離を制御することができる。ヘッドベース66の上には、機能性インク(例えば、PZT前駆体溶液)を吐出させるインクジェットヘッド67が搭載されている。インクジェットヘッド67には、各インクタンク68から図示しないインク供給用パイプを介して機能性インクが供給される。
X軸駆動手段63には、他のZ軸駆動手段69が取り付けられ、Z軸駆動手段69にはレーザ支持部材70が取り付けられている。レーザ支持部材70には、レーザ装置71が取り付けられている。Z軸駆動手段69は、レーザ装置71と、基板5との距離を制御することができる。
なお、図3は、ステージ62がY方向の1軸の自由度を有し、インクジェットヘッド67及びレーザ装置71がX方向の1軸の自由度を有する構成を示しているが、この形態には限定されない。例えば、ステージ62がX及びY方向の2軸の自由度を有し、インクジェットヘッド67及びレーザ装置71を固定する構成であっても良い。又、ステージ62がY方向の1軸の自由度を有し、インクジェットヘッド67及びレーザ装置71をY軸方向に一列に並べる構成であっても良い。
又、基板5を固定し、インクジェットヘッド67及びレーザ装置71がX及びY方向の2軸の自由度を有する構成であっても良い。又、X軸及びY軸は、X軸及びY軸ベクトルにより、1平面を表現できれば直交する必要はなく、例えば、X軸ベクトルとY軸ベクトルは30度、45度、60度の角度を有しても良い。
薄膜製造装置3は、図示しない装置制御部を有し、インクジェットヘッド67の機能性インクの吐出条件及びレーザ装置71のレーザ照射条件を制御することができる。又、装置制御部は図示しない記録部を有し、機能性インクの結晶状態やレーザの最適な照射条件等を記録部に記録することができる。
[薄膜製造方法]
次に、第1の実施の形態に係る薄膜製造方法について説明する。薄膜アクチュエータとして使用する電気機械変換膜は、金属複合酸化物膜によって形成できる。そして、ゾルゲル法は適切な電気機械変換能力を有する金属複合酸化物膜を製造する方法として、非常に有効な方法である。
ゾルゲル法は、金属の有機又は無機化合物を溶液中で加水分解し、続いて重縮合反応を進ませて重合体を形成し、これを加熱することで金属複合酸化物(セラミック)を作製する手法である。重合度が低い場合は、重合体は「ゾル」と呼ばれる液体の状態であるが、これを更に適切な溶媒で希釈して「前駆体」を作製する。この「前駆体」溶液を一般的に「ゾルゲル液」と呼び、本実施の形態においても「ゾルゲル液」と称する場合がある。
ゾルゲル法にて金属複合酸化物膜を作製する場合、上述したゾルゲル液をディッピング或いはスピンコートにより基板上に塗布、これを加熱することで基板上に金属複合酸化物膜を得ることができる。又、この金属複合酸化物膜に電気機械変換膜としての機能を与えて活用しようとする場合、優れた電気機械変換特性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(以下PZTと称する)を金属複合酸化物として選択することができる。以下、薄膜として図1に示す電気機械変換膜43を製造する例を具体的に示す。
〔SAM膜のパターニング〕
まず、図4に示すように、下部電極42の表面に所定パターンのSAM(Self Assembled Monolayer)膜50を形成する。具体的には、図4(a)に示す工程では、例えば、基板(図示せず)上に形成された下部電極42を準備する。下部電極42としては、例えば、白金(Pt)を用いることができる。なお、下部電極42は、本発明に係る基板上に形成された成膜対象物の代表的な一例である。
次に、図4(b)に示す工程では、下部電極42の表面の全領域をチオール化合物等(例えば、アルカンチオール)からなるSAM材料で浸漬処理する。これにより、下部電極42の表面には、SAM材料が反応しSAM膜50が付着し、下部電極42表面を撥水化することができる。アルカンチオールは、分子鎖長により反応性や疎水(撥水)性が異なるが、通常、炭素数6〜18の分子を、アルコール、アセトン又はトルエン等の有機溶媒に溶解させて作製する。通常、アルカンチオールの濃度は数モル/リットル程度である。所定時間後に下部電極42を取り出し、余剰な分子を溶媒で置換洗浄し、乾燥する。
次に、図4(c)に示す工程では、公知のフォトリソグラフィ法により、下部電極42の表面に形成されたSAM膜50上に、開口部51xを有するフォトレジスト51を形成する。次に、図4(d)に示す工程では、ドライエッチング等により開口部51x内に露出するSAM膜50を除去し、更にフォトレジスト51を除去する。これにより、下部電極42の表面に所定パターンのSAM膜50が形成される。
下部電極42の表面のSAM膜50が形成されている領域は、疎水性領域(撥液性領域)となる。一方、SAM膜50が除去されて下部電極42の表面が露出している領域は、親水性領域(親液性領域)となる。この表面エネルギーのコントラストを利用して、下記で詳述するPZT前駆体溶液の塗り分けが可能となる。
なお、図4(a)に示す工程の後、図5(a)に示す工程のように下部電極42の表面にフォトレジスト53を形成し、図5(b)に示す工程のようにSAM処理を行い、図5(c)に示す工程のようにフォトレジスト53を除去してもよい。これにより、図4(d)に示す工程と同様に、下部電極42の表面に所定パターンのSAM膜50が形成される。
又、図4(b)に示す工程の後、図6(a)に示す工程のように開口部54xを有するフォトマスク54を介して紫外線や酸素プラズマ等を下部電極42表面に照射し、図6(b)に示す工程のように露光部(開口部54x内)のSAM膜50を除去してもよい。これにより、図4(d)に示す工程と同様に、下部電極42の表面に所定パターンのSAM膜50が形成される。
〔電気機械変換膜の形成〕
次に、図7に示すように、下部電極42の表面に電気機械変換膜43を形成する。具体的には、図7(a)に示す工程では、薄膜製造装置3のステージ62上に、表面に所定パターンのSAM膜50が形成された下部電極42(図3の基板5に相当)を載置する。そして、周知のアライメント装置(CCDカメラやCMOSカメラ等)等を用いて、下部電極42の位置や傾き等をアライメントする。
そして、インクジェットヘッド67をX軸に駆動させ、下部電極42が載置されたステージ62をY軸に駆動させて、ステージ62上にインクジェットヘッド67を配置する。そして、インクジェットヘッド67から下部電極42の表面のSAM膜50が存在しない領域(親水性の領域)に機能性インク43aを吐出させる。この際、表面エネルギーのコントラストにより、機能性インク43aはSAM膜50が存在しない領域(親水性の領域)のみに濡れ広がる。
このように、表面エネルギーのコントラストを利用して機能性インク43aをSAM膜50が存在しない領域(親水性の領域)のみに形成する。これにより、塗布する溶液の使用量をスピンコート法等のプロセスよりも減らすことができると共に、工程を簡略化することが可能となる。なお、機能性インク43aとしては、例えば、PZT前駆体溶液を用いることができる。
次に、図7(b)に示す工程(乾燥工程)では、表面に機能性インク43a及びSAM膜50が形成された下部電極42をホットプレート(図示せず)上に載置し、例えば、100〜300℃程度に加熱する。これにより、溶媒が蒸発し、機能性インク43aは、熱分解された機能性インク43bとなる。
次に、図7(c)に示す工程(結晶化工程)では、表面に熱分解された機能性インク43b及びSAM膜50が形成された下部電極42を、例えば、オーブン(図示せず)や図3に示す薄膜製造装置3のレーザ装置71を用いて、700℃程度に加熱する。これにより、機能性インク43bは、結晶化して機能性インク43c(例えば、PZT薄膜)となる。なお、SAM膜50は、500℃程度以上の温度になると消失する性質を有するため、機能性インク43bと同時に加熱され、この工程で消失する。
図7(c)に示す工程で結晶化した機能性インク43c(例えば、PZT薄膜)の膜厚は、数10nm程度(100nm以下)である。これは、塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには、一度の工程で得られる結晶化膜の膜厚を100nm以下にする必要があり、そのような膜厚の結晶化膜が得られるように、前駆体濃度が調整されているからである。
しかし、液滴吐出ヘッドの電気機械変換素子として用いる場合、結晶化膜(PZT薄膜)の膜厚として1〜2μm程度が要求される。そこで、図7(c)に示す工程の後、再度SAM膜を形成してから、図7(a)〜図7(c)に示す工程を必要数繰り返す。これにより、機能性インク43cが積層され、下部電極42上に任意のパターンと厚さ(例えば、1〜2μm程度)の結晶化した機能性インク膜、すなわち電気機械変換膜43が作製される。
なお、2層目からは、SAM処理のパターニング工程を省略することができる。アルカンチオールは金属にのみ吸着するため、基板を液に浸漬すると、機能性インク43c(例えば、PZT薄膜)には吸着せず、下部電極42(例えば、白金)にのみ吸着するからである。
ところで、図7(b)に示す乾燥工程で作製される機能性インクは、通常(従来)、図9に示す機能性インク430bのような不均一な形状となる。図9に示す機能性インク430bは、図8に示すパターン500にインクジェット法によって数十滴の機能性インク(例えば、PZTインク)を塗布し、ホットプレートで溶媒の沸点よりも高い温度まで加熱し、溶媒を蒸発させて作製したものである(比較例)。図8に示すパターン500は、1mm×50μmのパターンであり、SAM膜が存在しない領域である。
なお、図8は平面図、図9は平面図(上側)及び長手方向の断面図(下側)である。図9に示す機能性インク430bにおいて、長手方向(1mm)の膜厚分布は、端部が盛り上がり中央付近が薄くなった所謂コーヒーステイン形状となっている。
発明者らは、乾燥工程で作製される機能性インクの形状が、機能性インクの前駆体濃度、機能性インクに含まれる溶媒の沸点の差、乾燥工程における基板の昇温速度に依存することを見出した。
より詳しくは、下記条件1)〜3)を満足することにより、図10に示すような、コーヒーステインを生じない均一な膜厚の機能性インク43bが得られることを見出した。条件1)は、機能性インクの前駆体濃度が0.18〜0.31mol/l(モル/リットル)であること。条件2)は、沸点の差が135℃以上である溶媒が機能性インクに含まれていること(つまり、3以上の溶剤が機能性インクに含まれている場合には、そのうち沸点が最大のものと最小のものとの差が135℃以上であること)。そして、条件3)は、乾燥工程における基板の昇温速度が60℃/分未満であることである。なお、この場合、結晶化した機能性インク43cも、機能性インク43bと同様に、図10に示すような、コーヒーステインを生じない均一な膜厚の機能性インクとなる。
図10に示す機能性インク43bは、条件1)〜3)により、パターン500にインクジェット法によって数十滴の機能性インク(例えば、PZTインク)を塗布し、ホットプレートで溶媒の沸点よりも高い温度まで加熱し、溶媒を蒸発させて作製したものである。なお、図10(a)は平面図(上側)及び長手方向の断面図(下側)、図10(b)は部分平面図(上側)及び短手方向の断面図(下側)である。
このように、第1の実施の形態によれば、条件1)〜3)により、乾燥工程において(結晶化工程においても同様)、コーヒーステインを生じない均一な膜厚の機能性インク膜を得ることができる。なお、この条件の導出に関する検討内容については、実施例1において後述する。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、薄膜製造装置3で製造した液滴吐出ヘッド2(図2参照)を搭載したインクジェット記録装置の例を示す。図11は、インクジェット記録装置を例示する斜視図である。図12は、インクジェット記録装置の機構部を例示する側面図である。
図11及び図12を参照するに、インクジェット記録装置4は、記録装置本体81の内部に、キャリッジ93、インクジェット記録ヘッド94、インクジェット記録ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される印字機構部82等を収納する。キャリッジ93は、主走査方向に移動可能とされている。インクジェット記録ヘッド94は、キャリッジ93に搭載されており、液滴吐出ヘッド2の一実施形態である。
記録装置本体81の下方部には、多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84(或いは給紙トレイでもよい)を抜き差し自在に装着することができる。又、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持する。キャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド94を装着している。インクジェット記録ヘッド94は、複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。又、キャリッジ93は、インクジェット記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する図示しない大気口、下方にはインクジェット記録ヘッド94へインクを供給する図示しない供給口を、内部にはインクが充填された図示しない多孔質体を有している。多孔質体の毛管力によりインクジェット記録ヘッド94へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。又、インクジェット記録ヘッド94としてここでは各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドを用いてもよい。
キャリッジ93は、用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。タイミングベルト100は、キャリッジ93に固定されている。
又、インクジェット記録装置4は、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101、フリクションパッド102、用紙83を案内するガイド部材103、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104を備えている。又、インクジェット記録装置4は、搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105、搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106を備えている。これにより、給紙カセット84にセットした用紙83を、インクジェット記録ヘッド94の下方側に搬送される。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
用紙ガイド部材である印写受け部材109は、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83をインクジェット記録ヘッド94の下方側で案内する。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設けている。更に、用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
画像記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じてインクジェット記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、インクジェット記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を有する。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有する。キャリッジ93は、印字待機中に回復装置117側に移動されてキャッピング手段でインクジェット記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。又、記録途中等に、記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でインクジェット記録ヘッド94の吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。又、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。更に、吸引されたインクは、本体下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、インクジェット記録装置4は、薄膜製造装置3で製造した液滴吐出ヘッド2の一実施形態であるインクジェット記録ヘッド94を搭載している。これにより、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られるため、画像品質を向上できる。
[実施例1]
実施例1では、コーヒーステインのない薄膜(図10参照)を製造するための条件の検討を行った。具体的には、条件を変えながら、第1の実施の形態で示した薄膜製造方法に基づいて電気機械変換膜を作製した。
電気機械変換膜の作製に使用したゾルゲル液は、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。出発材料は、Pb(Zr0.53,Ti0.47)O、一般にPZT(53/47)と示される化学両論組成に対し鉛量を10モル%過剰にした量で秤量した。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応(上述した「重縮合反応」)を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合した。これにより、PZT前駆体溶液、すなわちゾルゲル液が合成された。
このゾルゲル液をベースとし、ベースゾルゲル液に対する相溶性と粘度や表面張力等とを考慮して選択した1又は複数の有機溶媒と共通溶媒であるメトキシエタノールとを加えて混合し、粘度、表面張力、及び蒸発速度の異なるゾルゲル液を調整した。粘度、表面張力、乾燥速度、溶媒沸点差の調整のために採用する有機溶媒は、ジオール系、アミン系、ケトン系、ジケトン系の何れかを含むことが好ましい。本実施例で採用した有機溶媒は、表1に示す通りである。
表1に示す有機溶媒を組み合わせつつ、PZT濃度を所定濃度に合わせながら調合した。調合は、密栓した室温下の三角フラスコ内で20分間撹拌して行った。そして、表2に示す条件を組み合わせつつ、第1の実施の形態で示した薄膜製造方法に基づいて電気機械変換膜(PZT薄膜)を作製した。なお、表2において、『30→60』は、30℃/minで150℃まで昇温後、150℃以上は60℃/minで使用した溶媒の最大沸点以上の温度まで昇温させたことを示している(全体としてみれば、昇温速度は60℃/min未満となる)。その他の場合には、表2に示す一定の昇温速度で、使用した溶媒の最大沸点以上の温度まで昇温させたことを示している。
表2に示す条件を組み合わせつつ作製した電気機械変換膜(PZT薄膜)のコーヒーステインの有無について表3に示す。なお、図7(a)に示す工程において、インクジェットヘッド67から吐出されるインクは、1滴あたり約8plとなっており、インクがパターン内に均一に塗布されるためには、20〜40滴吐出する必要がある。このとき、インクの前駆体濃度が0.3mol/lであると、溶媒乾燥後の膜厚が略100nmとなる。又、表3において、同一条件で複数回の実験を行った場合も含まれている。
表3において、○は中央−端部>0の場合(コーヒーステインができない場合)を示し、△は中央−端部<−10%の場合(端部の膜厚が中央の膜厚の1.1倍未満の場合)を示している。又、×は中央−端部≧−10%の場合(端部の膜厚が中央の膜厚の1.1倍以上の場合)を示している。
なお、端部の膜厚が中央の膜厚の1.1倍未満の場合は、若干のコーヒーステインができている状態であるが、この程度であれば問題ないと考えられる。そのため、本実施例では、表3内の○及び△を問題なしと判断し、×はコーヒーステインができるため問題有りと判断した。
表3に示すように(表3内の○及び△より)、沸点差が135℃、前駆体濃度が0.18〜0.31mol/l、昇温速度が30℃/min〜30→60℃/minの条件の場合に、コーヒーステインができないことがわかる。但し、ここでいう『コーヒーステインができない』には、上記の若干のコーヒーステインができている状態も含む。
なお、塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、前駆体濃度が0.31mol/lよりも大きなインクを用いるとクラックを生じるおそれがあり好ましくない。又、インクに用いる溶媒の沸点差が大きいほどコーヒーステインが生じ難いことがわかっている。コーヒーステインが生じ難い理由は、溶媒の沸点差が小さいと、一方向の対流のみが生じやすく溶質が外側に移動するため、コーヒーステインが発生するが、沸点差が大きいほどランダムな対流が発生しすくなり、溶質が一方向に移動し難くなるためである。溶媒の沸点差が大きいほど良い点と、表3の結果とを加味すると、沸点差が135℃以上あることが好ましいといえる。
このように、ゾルゲル液に含まれる有機溶媒の沸点差を135℃以上、前駆体濃度を0.18〜0.31mol/l、昇温速度を60℃/min未満とすることにより、図10に示す断面形状の薄膜が作製できることがわかった。但し、これらの条件は、それぞれ交互作用を持っており、例えば前駆体濃度の低いインクを用いる場合には、基板の昇温速度をより遅くするか、有機溶媒の最大沸点差を135℃よりも大きくするとよい。これらの条件を適切に組み合わせることにより、図10で示した断面形状の膜が作製できる。
[実施例2]
実施例2では、シリコンウェハに熱酸化膜(膜厚1μm)を形成し、密着層としてチタン膜(膜厚50nm)をスパッタ成膜した。引続き下部電極として白金膜(膜厚200nm)をスパッタ成膜した。
次いで、アルカンチオールにCH(CH−SHを用い、濃度0.01モル/l(溶媒:イソプロピルアルコール)溶液に浸漬させ、SAM処理を行った。その後、イソプロピルアルコールで洗浄・乾燥後、パターニングの工程に移る。
SAM膜処理後、SAM膜形成部位(SAM膜上)において水の接触角を測定したところ、SAM膜上での水の接触角は92.2°であった(図13参照)。一方、SAM処理前の白金スパッタ膜上において水の接触角を測定したところ、白金スパッタ膜上での水の接触角は5°以下(完全濡れ)であった。この結果から、SAM膜処理が適切になされたことがわかる。
次に、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィ法でレジストパターンを形成した後、酸素プラズマ処理を行い露出部のSAM膜を除去した。処理後の残渣レジストはアセトンにて溶解除去し、同様の接触角評価を行ったところ、SAM膜除去部位において水の接触角は5°以下(完全濡れ)であり(図14参照)、レジストでカバーされていた部位のそれは92.4°の値を示した。この結果から、SAM膜のパターン化が適切になされたことが確認できる。
他方式のパターニングとして、同様のレジストワークによりあらかじめレジストパターンを形成し、同様のSAM膜処理を実施後、アセトンにてレジストを除去し、接触角を測定した。レジストカバーされた白金膜上の接触角は5°以下(完全濡れ)、他の部位のそれは92.0°となり、SAM膜のパターン化が適切になされたことを確認した。
もう1つの他方式として、シャドウマスクを用いた紫外線照射を行った。具体的には、エキシマランプによる波長176nmの真空紫外光を用いて10分間照射した。照射部の接触角は5°以下(完全濡れ)、未照射部のそれは92.2°でありSAM膜のパターン化が適切になされたことを確認した。
次に、実施例1で示した条件を満たす前駆体塗布液(有機溶媒の沸点差を135℃以上、前駆体濃度を0.18〜0.31mol/l)を用いて、電気機械変換膜としてPZT(53/47)を成膜した。具体的には、この前駆体溶液を先のパターン化SAM膜上にインクジェット法で塗布した(図7(a)参照)。インクジェット法によりSAM膜上には液滴を吐出せず親水部のみ吐出することで接触角のコントラストにより親水部上にのみ塗膜ができた。
この塗膜をホットプレートで溶媒の最大沸点よりも高い温度まで加熱し、溶媒を蒸発させ、熱分解された塗膜を得た(図7(b)参照)。この時の昇温速度は60℃/min未満とした。続いて、オーブン(図示せず)や図3に示す薄膜製造装置3のレーザ装置71を用いて、熱分解された塗膜を加熱し、熱分解された塗膜を結晶化した(図7(c)参照)。その結果、熱分解工程及び結晶化工程において、図10に示すような形状の塗膜が得られた。なお、昇温速度を60℃/min未満に調整できれば、ホットプレートに代えてレーザ装置等を用いてもよい。
2層目からは、SAM処理のパターニング工程を省略することができる。アルカンチオールは金属にのみ吸着するため、基板を液に浸漬すると、PZTが塗布された部分には吸着せず、白金上にのみSAMが存在することになる。インクジェット法により、繰り返し同じ場所に液滴を吐出し、溶媒乾燥・結晶化することで重ね塗りを行うことができた。
インクジェット法により、繰り返し同じ場所に液滴を吐出し、溶媒乾燥・結晶化する工程を15回繰り返して重ね塗りをし、1μmの電気機械変換膜を得た。このとき作製された電気機械変換膜にはクラック等の不良は生じなかった。
インクジェット法により、繰り返し同じ場所に液滴を吐出し、溶媒乾燥・結晶化する工程を更に15回繰り返したが(計30回)、電気機械変換膜にクラック等の不良は生じなかった。電気機械変換膜の膜厚は2μmに達した。
このパターン化された電気機械変換膜に上部電極(白金)を成膜して電気機械変換素子を作製し、電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。図15は、本実施例で作製した電気機械変換素子のP−Eヒステリシス曲線を示すグラフである。電気機械変換膜の比誘電率は1220、誘電損失は0.02、残留分極は19.3uC/cm、抗電界は36.5kV/cmであり、通常のセラミック焼結体と同等の特性を持つことがわかった。
電気機械変換素子の電気−機械変換能は、電界印加による変形量をレーザドップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。その圧電定数d31は、−120pm/Vとなり、こちらもセラミック焼結体と同等の値であった。これは液滴吐出ヘッドとして十分設計できうる特性値である。
なお、白金やSrRuOやLaNiOな等の酸化物を溶媒に溶かし、インクジェット法で塗布、レーザ照射することで電気機械変換膜と同様に電極膜も形成することができる。
[実施例3]
実施例3は、実施例2で作製した薄膜の短手方向の断面形状について解析を行った。図16は、実施例2で得られた電気機械変換膜の短手方向の断面の膜厚を表面粗さ計で計測した片側半分の結果を例示する図である。なお、ここで計測した電気機械変換膜は、実施例2において、15回繰り返して重ね塗りをした際に得られた電気機械変換膜(PZT薄膜)である。
図16に示すように、PZT薄膜の膜厚は、PZT薄膜の中心で最も厚く、端部に向かい一様に減少している。中央部の最大膜厚は1.0μmであった。すなわち、PZT薄膜の膜厚分布形状は、略メニスカス凸レンズ状となっている。
図16に示した膜厚分布の多項式近似を実施したところ、図17並びに式(1)及び(2)に示す高次関数である4次関数の近似式と非常に良い一致を示した。図17に示す膜厚分布の一例としては、PZT薄膜の短手(副走査)方向(X軸の+−の両方向)の幅は50μmであり、Xの有効範囲(PZT薄膜形成部)は、−25≦X≦+25μmとなる。
但し、式(1)において、XはPZT薄膜の断面中央を0としたPZT薄膜の各端部に向かう正負の位置座標を表わし、YはX位置座標におけるPZT薄膜の膜厚を表わす(図17参照)。係数A〜Eは膜厚が変ると変動する係数である。
Y=−AX+BX−CX+DX+E・・・式(1)
上記式(1)を求めるために、上述した膜厚計測を多数回行い、図7に示した膜厚分布の多項式近似を多数回実施し、係数A〜Eの間にある特定の関係を見出した。その結果をまとめると、次のとおりである。式(1)において、前記断面中央の膜厚E(X=0のとき)である係数Eの範囲が0.5〜5.0(μm)にあるとき、係数A、係数B、係数C、係数Dが、式(2)の係数数値をそれぞれ0.9〜1.1倍にした範囲内に存在する特定の関係にある。
Y=−3×1018+1014−3×10+4520X+0.996・・・式(2)
なお、式(1)及び(2)は、見方を変えると、PZT薄膜の外周表面形状を近似的に表しているものとも表現できる。
このように、実施例3により、実施例2において、理想的なPZT薄膜の膜厚分布形状及び外周表面形状が得られたことが確認された。なお、高次関数に代えて、周期関数(三角関数等)で近似することもできる。
以上、好ましい実施の形態及び実施例について詳説したが、上述した実施の形態及び実施例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
1、2 液滴吐出ヘッド
3 薄膜製造装置
4 インクジェット記録装置
5 基板
10 ノズル板
11 ノズル
20 圧力室基板
21 圧力室
30 振動板
40 電気機械変換素子
41 密着層
42 下部電極
43 電気機械変換膜
43a、43b、43c 機能性インク
44 上部電極
50 SAM膜
51、53 フォトレジスト
51x、54x 開口部
54 フォトマスク
60 架台
61 Y軸駆動手段
62 ステージ
63 X軸駆動手段
64 X軸支持部材
65、69 Z軸駆動手段
66 ヘッドベース
67 インクジェットヘッド
68 インクタンク
70 レーザ支持部材
71 レーザ装置
81 記録装置本体
82 印字機構部
83 用紙
84 給紙カセット(或いは給紙トレイ)
85 手差しトレイ
86 排紙トレイ
91 主ガイドロッド
92 従ガイドロッド
93 キャリッジ
94 インクジェット記録ヘッド
95 インクカートリッジ
97 主走査モータ
98 駆動プーリ
99 従動プーリ
100 タイミングベルト
101 給紙ローラ
102 フリクションパッド
103 ガイド部材
104 搬送ローラ
105 搬送コロ
106 先端コロ
107 副走査モータ
109 印写受け部材
111 搬送コロ
112 拍車
113 排紙ローラ
114 拍車
115、116 ガイド部材
117 回復装置
特開2011−155204号公報

Claims (9)

  1. 基板上に形成された成膜対象物の表面に、複数の溶媒を含む前駆体溶液を吐出し、塗膜を形成する塗膜形成工程と、
    前記基板を加熱し、前記複数の溶媒を蒸発させて前記塗膜を乾燥させる乾燥工程と、
    乾燥させた前記塗膜を加熱し、前記塗膜を結晶化させて電気機械変換膜とする結晶化工程と、を有し、
    前記前駆体溶液の濃度は、0.18〜0.31mol/lであり、
    前記複数の溶媒には、沸点の差が135℃以上である溶媒が含まれており、
    前記乾燥工程における前記基板の昇温速度は、60℃/分未満である電気機械変換膜の製造方法。
  2. 前記前駆体溶液の主成分は、金属アルコキシド化合物、金属アセテート化合物、又は金属アセチルアセテート化合物である請求項1記載の電気機械変換膜の製造方法。
  3. 前記複数の溶媒は、ジオール系、アミン系、ケトン系、ジケトン系の何れかを含む請求項1又は2記載の電気機械変換膜の製造方法。
  4. 前記乾燥工程の後の前記塗膜の短手方向の断面形状は、高次関数又は周期関数で表現できる請求項1乃至3の何れか一項記載の電気機械変換膜の製造方法。
  5. 前記塗膜形成工程は、前記成膜対象物の表面に撥液性領域と親液性領域を形成する領域形成工程と、
    前記親液性領域に前記前駆体溶液を吐出する吐出工程と、を有する請求項1乃至4の何れか一項記載の電気機械変換膜の製造方法。
  6. 前記領域形成工程は、前記成膜対象物の表面の全領域にチオール化合物を形成する工程と、フォトリソグラフィ及びエッチングにより前記チオール化合物の一部を除去し、前記チオール化合物が除去された領域を前記親液性領域とする工程と、を有する請求項5記載の電気機械変換膜の製造方法。
  7. 下部電極と、
    前記下部電極に対向して配置された上部電極と、
    前記下部電極及び前記上部電極に挟持された電気機械変換膜と、を有する電気機械変換素子の製造方法であって
    前記電気機械変換膜は、請求項1乃至6の何れか一項記載の電気機械変換膜の製造方法により製造する電気機械変換素子の製造方法
  8. 前記上部電極は、インクジェット方式で形成する請求項記載の電気機械変換素子の製造方法
  9. 前記上部電極及び前記下部電極は、各々、白金族金属、白金族金属の酸化物、又はこれら数種の積層膜を含む請求項又は記載の電気機械変換素子の製造方法
JP2013020997A 2013-02-06 2013-02-06 電気機械変換膜の製造方法、電気機械変換素子の製造方法 Active JP6171372B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013020997A JP6171372B2 (ja) 2013-02-06 2013-02-06 電気機械変換膜の製造方法、電気機械変換素子の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013020997A JP6171372B2 (ja) 2013-02-06 2013-02-06 電気機械変換膜の製造方法、電気機械変換素子の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014154610A JP2014154610A (ja) 2014-08-25
JP6171372B2 true JP6171372B2 (ja) 2017-08-02

Family

ID=51576209

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013020997A Active JP6171372B2 (ja) 2013-02-06 2013-02-06 電気機械変換膜の製造方法、電気機械変換素子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6171372B2 (ja)

Family Cites Families (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003311196A (ja) * 2002-04-19 2003-11-05 Seiko Epson Corp 膜パターンの形成方法、膜パターン形成装置、導電膜配線、電気光学装置、電子機器、非接触型カード媒体、圧電体素子、並びにインクジェット式記録ヘッド
JP3955001B2 (ja) * 2002-09-20 2007-08-08 キヤノン株式会社 圧電体膜形成用組成物、圧電体膜の製造方法
JP4803401B2 (ja) * 2004-05-31 2011-10-26 セイコーエプソン株式会社 強誘電体膜の製造方法
JP4269172B2 (ja) * 2004-12-24 2009-05-27 セイコーエプソン株式会社 インクジェット塗布用インクおよびその製造方法、ならびに強誘電体膜の製造方法
JP2006228447A (ja) * 2005-02-15 2006-08-31 Hitachi Cable Ltd 強誘電体薄膜の製造方法
JP2006278986A (ja) * 2005-03-30 2006-10-12 Seiko Epson Corp 誘電体薄膜の形成方法及びそれを用いて製造された誘電体膜を備えた圧電体装置
JP2010087118A (ja) * 2008-09-30 2010-04-15 Seiko Epson Corp 薄膜パターンの形成方法、並びに、圧電素子および表示素子の製造方法
JP5585209B2 (ja) * 2009-05-28 2014-09-10 株式会社リコー 電気機械変換素子の製造方法、該製造方法により製造した電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP5724168B2 (ja) * 2009-10-21 2015-05-27 株式会社リコー 電気−機械変換素子とその製造方法、及び電気−機械変換素子を有する液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置
JP5526810B2 (ja) * 2010-01-28 2014-06-18 株式会社リコー ゾルゲル液、電気−機械変換素子、液体吐出ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2012033779A (ja) * 2010-07-30 2012-02-16 Ricoh Co Ltd 薄膜形成装置、薄膜形成方法、液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2012169401A (ja) * 2011-02-14 2012-09-06 Seiko Epson Corp 圧電セラミックス膜形成用組成物、圧電素子の製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法
JP5865601B2 (ja) * 2011-04-28 2016-02-17 株式会社リコー 強誘電体膜の製造方法及び強誘電体膜の製造装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014154610A (ja) 2014-08-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9401471B2 (en) Electromechanical transducing device and manufacturing method thereof, and liquid droplet discharging head and liquid droplet discharging apparatus
JP6182968B2 (ja) 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、画像形成装置及び電気機械変換素子の製造方法
US8770725B2 (en) Method of manufacturing electromechanical transducer element, electromechanical transducer element, discharging head, and inkjet recording device
JP2013225671A (ja) 薄膜製造装置、電気−機械変換素子、液体吐出ヘッド、画像形成装置および薄膜製造方法
JP5884272B2 (ja) 薄膜製造方法
JP6142690B2 (ja) 機能性インク、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、及びインクジェット記録装置
JP6015108B2 (ja) 薄膜製造装置、及び薄膜製造方法
JP5696408B2 (ja) 電気機械変換素子の製造方法
JP5696409B2 (ja) 電気機械変換素子の製造方法
JP5720879B2 (ja) 電気−機械変換膜とその作製方法、電気−機械変換素子、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
JP5871117B2 (ja) 電気−機械変換素子、電気−機械変換素子を具備した液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを具備したインクジェットプリンタ及び電気−機械変換素子の製造方法
JP5736819B2 (ja) 電気機械変換膜の作製方法及び電気機械変換素子の作製方法
JP6171372B2 (ja) 電気機械変換膜の製造方法、電気機械変換素子の製造方法
JP5919814B2 (ja) 電気機械変換素子の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法
JP5891782B2 (ja) 薄膜製造装置、薄膜製造方法、液滴吐出ヘッド、及びインクジェット記録装置
JP6102099B2 (ja) 電気機械変換素子及びその製造方法、並びに液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP5741102B2 (ja) 電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置
JP2015005568A (ja) 前駆体ゾルゲル溶液、電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、及びインクジェット記録装置
JP5857548B2 (ja) 薄膜製造方法、電気機械変換素子の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法
JP6028419B2 (ja) 電気機械変換素子及びその製造方法、並びに液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置
JP2012186278A (ja) 電気機械変換膜の製造方法及び電気機械変換膜
JP2014060193A (ja) 電気機械変換素子、液滴吐出ヘッド、画像形成装置及び電気機械変換素子の製造方法
JP2013146657A (ja) 膜パターンの製造方法、電気−機械変換膜、電気−機械変換素子、液体吐出ヘッドおよび画像形成装置
JP5862286B2 (ja) 薄膜製造装置、薄膜製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法
JP5891820B2 (ja) 薄膜形成方法、電気−機械変換素子の製造方法、および液体吐出ヘッドの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160114

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161122

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170606

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170619

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6171372

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151