JP2013168397A - 液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの形成方法、およびインクジェット記録装置。 - Google Patents

液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの形成方法、およびインクジェット記録装置。 Download PDF

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Abstract

【課題】電気−機械変換素子品質を向上させた液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの形成方法、およびインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】振動板105を変形させることにより液室101内の液滴を液室101から吐出させる液滴吐出ヘッド2A,2Bであって、振動板105上に設けられた絶縁層12と、絶縁層12上に設けられた第1電極層15と、第1電極層15上に塗布されたゾルゲル層をレーザ照射により変化させて形成されてなる電気−機械変換膜30と、電気−機械変換膜30上に設けられた第2電極層16と、を備え、絶縁層12の熱伝導率は第1電極層15の熱伝導率よりも低く、絶縁層12の熱伝導率が第1電極層15から振動板105に向けて下がるように熱伝導率に傾斜をもたせる。
【選択図】図1

Description

本発明は、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの形成方法、およびインクジェット記録装置に関する。
画像記録装置あるいは画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置には、液体吐出ヘッドが組み込まれている。
液体吐出ヘッドは、インク滴を吐出するノズルと、ノズルが連通する加圧室と、加圧室内の圧力を加圧する電気−機械変換素子と、振動板と、エネルギー発生手段と、を備える。そして、エネルギー発生手段で発生したエネルギーで加圧室内インクを加圧しノズルからインク滴を吐出させる。
圧力室には、インク吐出を起こすために個別の電気−機械変換素子が配置されている。電気−機械変換素子は電気的入力を機械的な変形に変換するもので、その構造は電気的入力を実行する上部、下部の電極対とその間に電気−機械変換膜が挟まれた積層構造を有している。
電気−機械変換素子の形成方法として、まずドライエッチング法がある。例えば、下部電極上に真空成膜法により電気−機械変換膜を堆積し、さらに上部電極を堆積する。そして、下部電極、電気−機械変換膜、および上部電極に、ドライエッチング加工を施す。しかし、電気−機械変換膜がPZT膜の場合、そのドライエッチングは容易ではない。RIE(反応性イオンエッチング)でSi系デバイスは容易にエッチング加工できるものの、PZT等の金属複合酸化物はイオン種のプラズマエネルギーを高める必要がある。例えば、ICPプラズマ、ECRプラズマ、ヘリコンプラズマ等の特殊なプラズマ源が必要とされる。このため製造装置は高額になる。また、PZT膜では、下地電極膜との選択比を稼げない。特に大面積基板ではエッチング速度の不均一が生じる。
また、電気−機械変換素子の別の形成方法として、水熱合成法がある。水熱合成法では、基板上に形成されたTi電極上のみにPZT膜が成長する。但し、この方法で充分な耐圧を備えたPZT膜を得るには、PZT膜の膜厚を5μm以上にする必要がある。膜厚が5μm未満になると、絶縁破壊を起こし易くなるためである。また、水熱合成が強アルカリ性の水溶液下で合成されるため、基板であるシリコン材の保護が必須となる。
また、電気−機械変換素子のさらに別の形成方法として、真空蒸着法がある。真空蒸着法では、シャドウマスクを用いて、電気−機械変換膜のパターニングを行う。しかし、PZT成膜は通常、基板温度が500〜600℃で実行される。これは、圧電性出現のために高温化処理を行って複合酸化物を結晶化させるためである。一般的にシャドウマスクはステンレス製であり、シリコン基板とステンレス材の熱膨張差も大きい。このため、シャドウマスクを用いると、電気−機械変換膜の寸法を充分に制御できない。さらに、シャドウマスクの使い捨ては実用性には不向きである。また、シャドウマスクを用いると、MO−CVD法やスパッタリング法の場合、堆積膜の回り込みが大きくなる。
また、電気−機械変換素子のさらに別の形成方法として、AD法がある。AD法では、予めレジストパターンを形成し、レジスト膜から表出された部位にPZTを成膜する。但し、AD法でも、充分な耐圧を備えたPZT膜を得るには、膜厚を5μm以上にする必要がある。また、AD法では、レジスト膜上にもPZT膜が堆積する。このため、研磨処理により一部の堆積膜を除去した後、リフトオフ工程を伴う。また、大面積における均一研磨も煩雑である。さらにレジスト膜は耐熱性が充分ではない。このため、室温でAD法による成膜を実行し、ポストアニール処理を経た後に圧電性を示す膜に変換している。
また、電気−機械変換素子のさらに別の形成方法として、ゾルゲル法がある。ゾルゲル法では、下地基板の濡れ性を制御し、PZT前駆体であるゾルゲル溶液をインクジェット法で塗り分けをする。これにより、PZT膜のパターニングが可能になる(例えば、非特許文献1参照)。ゾルゲル溶液の乾燥、熱分解、結晶化には、一般にはホットプレート、電気炉などが用いられるが、最近ではレーザ加熱が行われている(例えば、特許文献1参照)。このレーザ加熱法では、金属微粒子にレーザ照射を行って、金属微粒子の焼成を行う。レーザ照射による前駆体加熱はエネルギー変換効率がよく、タクトタイムが早く、急加熱、急冷却が可能になる。
しかし、レーザ加熱法では、レーザ光が下部電極を加熱するほか、下部電極下の基板にも熱が拡散してしまう。このため、下部電極の温度が所望の温度まで上昇できずにゾルゲル液の加熱が不十分となってしまうと共に、下部電極からの伝熱によって基板が損傷してしまう可能性がある。よって、電気−機械変換素子の品質が悪化するという問題点があった。
本発明は以上の問題点を鑑みられたものであり、電気−機械変換素子品質を向上させた液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの形成方法、およびインクジェット記録装置を提供するものである。
上記課題を解決するために、振動板を変形させることにより液室内の液滴を前記液室から吐出させる液滴吐出ヘッドであって、前記振動板上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた第1電極層と、前記第1電極層上に塗布されたゾルゲル層をレーザ照射により変化させて形成されてなる電気−機械変換膜と、前記電気−機械変換膜上に設けられた第2電極層と、を備え、前記絶縁層の熱伝導率は前記第1電極層の熱伝導率よりも低く、前記絶縁層の熱伝導率が前記第1電極層から前記振動板に向けて下がるように該熱伝導率に傾斜をもたせたことを特徴とする液滴吐出ヘッドが提供される。
本発明によれば、電気−機械変換素子品質を向上させた液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの形成方法、およびインクジェット記録装置が実現する。
液体吐出ヘッドの断面模式図であり、(a)は、単一の液体吐出ヘッドの断面模式図であり、(b)は、複数個配置した液体吐出ヘッドの断面模式図である。 基板上へのPZT膜形成の一例を説明する断面模式図である。 薄膜形成方法を説明するための断面模式図である。 時間とガス流量比との関係を説明する図である。 薄膜形成方法を説明するための断面模式図である。 薄膜形成方法を説明するための断面模式図である。 積層体の温度勾配を説明する図であり、(a)は、絶縁層がSiO層の例であり、(b)は、絶縁層が実施例のSiON層の例である。 P−Eヒステリシス曲線の例を示す図である。 レーザ照射を説明する斜視模式図である。 インクジェット塗布装置を説明するための斜視図である。 インクジェット記録装置を説明する模式図であり、(a)は、インクジェット記録装置の斜視模式図、(b)は、インクジェット記録装置の機構部分の側面模式図である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1は、液体吐出ヘッドの断面模式図であり、(a)は、単一の液体吐出ヘッドの断面模式図であり、(b)は、複数個配置した液体吐出ヘッドの断面模式図である。
本発明に係る液滴吐出ヘッド2A,2Bは、振動板105を変形させることにより液室101内の液滴を液室から吐出させる液滴吐出ヘッドである。液体吐出ヘッド2A、2Bのそれぞれは、プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置もしくは画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置の液体吐出ヘッドである。
液滴吐出ヘッド2A,2Bは、振動板12上に設けられた絶縁層12と、絶縁層12上に設けられた第1電極層15と、第1電極層15上に塗布されたゾルゲル層をレーザ照射により変化させて形成されてなる電気−機械変換膜30と、電気−機械変換膜30上に設けられた第2電極層16と、を備える。
ノズル102は、液室(圧力室)101に連通し、ノズル102からインク滴が吐出する。電気−機械変換素子109は、下側から順に、電極層15(第1電極層)/電気−機械変換膜30/電極層16(第2電極層)の順で積層された積層構造を有する。電極層15は、下部電極であり、電気−機械変換膜30は、例えばPZT膜であり、電極層16は、上部電極である。電気−機械変換素子109は、液室101内に充填されるインクを加圧する圧電素子である。また、振動板105と電極層15との間には絶縁層12が介設されている。振動板105は、液室101に接している。また、電気−機械変換膜30の外周において、絶縁層12の表面が露出している。
絶縁層12の熱伝導率は第1電極層15の熱伝導率よりも低く、絶縁層12の熱伝導率は絶縁層12の厚さ方向で異なっている。例えば、絶縁層12の熱伝導率が電極層15から振動板105に向けて下がるように該熱伝導率に傾斜をもたせている。また、絶縁層12の組成がその膜厚方向で異なっている。絶縁層12の組成を変化させることにより、該熱伝導率に傾斜をもたせている。
絶縁層12は、半導体もしくは金属のいずれかと、酸素と、窒素と、を含む。振動板側の絶縁層12は、窒素を含まず酸素を含み、第1電極層15側の絶縁層は、酸素を含まず窒素を含む。絶縁層12の膜厚方向において、振動板105側から第1電極層15に向かって酸素が減少しつつ窒素が増加する。半導体はSiであり、金属はAlもしくはZrのいずれかである。振動板105側の絶縁層12の熱伝導率は、第1電極層15側の絶縁層12の熱伝導率の1/2以下である。
液体吐出ヘッド2Aでは、電極層15と電極層16とに電圧を印加して電気−機械変換素子109を振動させてエネルギーを発生させる。これにより、ノズル102からインクが噴出する。なお、符号103は、ノズル板を示し、符号104は、圧力室基板(シリコン基板)を示す。
上記のような圧力発生手段は、圧電素子などの電気機械変換素子を用いて液室101の壁面を形成している振動板105を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型と呼ばれる。ピエゾ型のものにはd33方向の変形を利用した縦振動型、d31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型、更には剪断変形を利用したシェアモード型等があるが、最近では半導体プロセスやMEMSの進歩により、シリコン基板に直接液室及びピエゾ素子を作り込んだ薄膜アクチュエータが考案されている。本発明はd31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型に関する。このほか、圧力発生手段には、吐出内に配設した発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰でバブルを発生させてインク滴を吐出させるバブル型(サーマル型)などがある。
液体吐出ヘッド2Aを形成するときは、圧力室基板104に液室101を形成するための裏面エッチングを施し、基板裏面に凹部、すなわち液室101を形成する。そして、ノズル102を有するノズル板103と、圧力室基板104と、を接合することで液体吐出ヘッド2Aが形成される。なお、図には液体供給手段、流路、流体抵抗が割愛されている。
また、振動板105は、厚さが数μmのシリコン酸化膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または、これらの膜を積層した積層膜でもよい。また、振動板105は、熱膨張差を考慮した酸化アルミニウム膜、ジルコニア膜などのセラミック膜(絶縁膜)でもよい。
液滴吐出ヘッド2Aは、振動板105上に絶縁層12を形成する工程と、絶縁層12上に第1電極層15を形成する工程と、第1電極層15上にゾルゲル層を形成し、ゾルゲル層をレーザ照射により変化させて電気−機械変換膜30を形成する工程と、によって形成される。ここで、熱伝導率が第1電極層15の熱伝導率よりも低く、熱伝導率が厚さ方向で異なる絶縁層12を形成する。
電極層(下部電極)15は、圧電素子に信号入力する際の共通電極として電気的接続をする。従って、その下にある振動板105は絶縁体、もしくは導体であれば絶縁処理を施して用いることになる。絶縁処理で形成されるシリコン系絶縁膜は熱酸化、CVDで形成され、金属酸化膜はスパッタリング法で形成される。
本発明によれば、電気−機械変換素子109が簡便な製造工程で形成できる。また、電気−機械変換膜30は、バルクセラミックスと同等の性能を持つ。
液滴吐出ヘッド2A、2Bによれば、下部電極下の絶縁層の基板側と下部電極側とで熱伝導率を変えることにより、電気−機械変換をレーザ照射によって形成する際の絶縁層への熱ダメージを軽減できる。また、絶縁層の基板側と下部電極側との間で簡便かつ高い制御性をもって熱伝導率を変えることができる。さらに、絶縁層中では、熱伝導率が連続的に変化している。このため、電気−機械変換膜をレーザ照射によって形成する際には、絶縁層12への熱衝撃が緩和される。
電気−機械変換膜30は金属複合酸化物であり、例えば、PZTが挙げられる。電気−機械変換膜30がPZTの場合、出発材料として、酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド化合物、およびチタンアルコキシド化合物を用い、共通溶媒としてメトキシエタノールを用いる。酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド化合物、およびチタンアルコキシド化合物をメトキシエタノールに溶解させた溶液をPZT前駆体溶液とする。このPZT前駆体溶液をゾルゲル液とも呼称する。
PZTはジルコン酸鉛(PbZnO)とチタン酸鉛(PbTiO)との固溶体である。PZTはジルコン酸鉛とチタン酸鉛との比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrOとPbTiOの比率が53:47の場合である。これを化学式で示すと、Pb(Zr0.53,Ti0.47)Oとなり、一般にPZT(53/47)と表記される。酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物の出発材料は、この化学式に従って秤量される。
金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、PZT前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミン等の安定化剤を添加してもよい。
基板表面の全面にPZT膜を形成する場合、スピンコートなどの溶液塗布法によりPZT前駆体溶液の塗膜を基板表面の全面に形成し、PZT前駆体溶液の溶媒を乾燥し、PZT前駆体中の有機成分を熱分解し、PZT前駆体を結晶化することにより基板表面の全面にPZT膜が形成される。但し、塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴い、PZT膜にクラックが発生する場合がある。これを回避するため、本発明では、一度のPZT成膜で、その膜厚が100nm以下になるようにPZT前駆体濃度、溶液量を調整している。このような膜厚制御をすることにより、クラックフリーなPZT膜が得られる。
PZT膜を液体噴射装置の圧電素子中の薄膜として用いる場合、PZT膜の膜厚は1μm〜5μmが要求される。従って、この膜厚が得られるために、100nm以下のPZT膜の成膜を数10回繰り返す。
なお、PZT以外の金属複合酸化物としては、チタン酸バリウムが挙げられる。この場合はバリウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、メトキシエタノールに溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することが可能である。
ゾルゲル法による基板上へのPZT膜の選択的形成の例を説明する。
図2は、基板上へのPZT膜形成の一例を説明する断面模式図である。
図2に示す工程では、基板に対するPZT前駆体溶液の濡れ性を制御して、基板上でPZT前駆体溶液の塗り分けをしている。
まず、図2(a)に示すように、基板10/絶縁層11/電極層15で構成された積層体を準備する。基板10は、例えばSi基板、振動板等である。絶縁層11は、断熱層としての機能を有する。絶縁層11は、CVD等で形成される。電極層15は、例えば、Pt層である。電極層15は、スパッタリング法、スピンコート法により形成される。
次に、図2(b)に示すように、PZT前駆体溶液を塗布する領域の外周部をフォトリソグラフィにより除去する。これにより、絶縁層11の一部が露出する。
次に、図2(c)に示すように、電極層15をSAM溶液に浸漬する(SAM処理)。SAM溶液とは、アルカンチオール(CH(CH−SH)を有機溶媒(アルコール、アセトン、トルエンなど)に溶解させた溶液である。アルカンチオールは、分子鎖長により電極層15との反応性や疎水(撥水)性が異なる。Rは6〜18のいずれかである。溶液の濃度は、数モル/リットル以下である。
この浸漬によって、アルカンチオール中のチオール基が白金等の金属に化学吸着する。これにより、電極層15の表面には、アルカンチオールが自己配列してSAM膜(自己組織化単分子膜)20が形成される。SAM膜20の表面はアルキル基が配置しているので疎水性になる。浸漬後、必要に応じて基板を洗浄、乾燥する。
次に、図2(d)に示すように、PZT前駆体溶液を塗布する領域外に、フォトリソグラフィによってマスクパターン90を形成する。
次に、図2(e)に示すように、PZT前駆体溶液を塗布する領域にプラズマ91を晒す。これにより、図2(f)に示すように、PZT前駆体溶液を塗布する領域からSAM膜が除去される。続いて、図2(g)に示すようにマスクパターン90を除去する。
次に、図2(h)に示すように、インクジェット方式によってSAM膜がない親液性の領域にPZT前駆溶液を塗布して、ゾルゲル層(PZT前駆体層)31を形成する。この段階でのゾルゲル層31とPZT前駆溶液との成分は同じである。ゾルゲル層31が形成される領域は、表面エネルギーのコントラストにより親液性の領域のみとなる。PZT前駆体溶液はインクジェットヘッドから塗出が可能なように、その粘度、表面張力が調整されている。
次に、図2(i)に示すように、電極層15の表面にレーザ光を照射する。電極層15の表面にレーザ光が照射されることにより、電極層15の表面に接するゾルゲル層31中の有機成分が熱分解し、PZT前駆体が結晶化する。これにより、電極層15の表面に電気−機械変換膜30が形成される。この状態を、図2(j)に示す。この電気−機械変換膜30がまさしくPZT膜である。この段階での電気−機械変換膜30の膜厚は、100nm以下である。レーザ光の波長は400nm以上である。レーザ光のスポット径は電気−機械変換膜30の幅と同等であることが好ましい。
レーザ光が照射される領域は、非照射領域から断熱されているため、効率よく電極層15が加熱される。そして、熱伝導によって電極層15に接するゾルゲル層31が乾燥、熱分解、結晶化される。また、電気−機械変換膜30が形成される電極層15と、電気−機械変換膜30が形成されない電極層15との間にはギャップがあるので、電気−機械変換膜30が形成されない電極層15は加熱されにくい。このため、電気−機械変換膜30が形成されない電極層15に吸着しているSAM膜20は除去されない。さらに、図2(c)〜図2(i)の工程を繰り返すことにより、1μm〜5μmのPZT膜を形成することができる。
以下、本発明の実施の形態に関して添付図面を参照して説明する。
(実施例1)
図3は、薄膜形成方法を説明するための断面模式図である。
図4は、時間とガス流量比との関係を説明する図である。
図3(a)に示すように、基板10上に絶縁層12を形成する。絶縁層12は、SiON(酸化窒化シリコン)層であり、反応性スパッタを用いて形成した。絶縁層12の材質は、SiONに限られるものではない。例えば、AlON(酸化窒化アルミニウム)、ZrON(酸化窒化ジルコニウム)、SiCN(炭化窒化シリコン)でもよい。
SiON層の形成では、タ-ゲット材としてSiを用い、Ar、O、Nガスをスパッタリング用ガスとして用いた。まず、基板10をスパッタ装置(図示しない)内に設置した後、スパッタの開始当初においては、図4に示すように、ArおよびOのガスをスパッタ装置内に流入した。そして、スパッタを開始してから終了させるまでの間にOガス流量を徐々に低下させ、逆にNガスの流量を徐々に上昇させた。スパッタの最後では、ArおよびNのガスをスパッタ装置内に流入した。こうすることにより、SiON層中のOとNとのそれぞれの割合に傾斜が生じることになる。例えば、基板10側は酸素リッチで窒素ポアになり、基板10と反対側のSiON層の表面側は窒素リッチで酸素ポアになる。
次に、図3(a)に示すように、絶縁層12上に電極層15をパターニングした。例えば、絶縁層12上にスパッタリング法によりPt膜を成膜した後、電気−機械変換膜が形成される領域の外周部におけるPt膜を部分的に除去した。この除去は、フォトリソグラフィおよびエッチングによった。これにより、絶縁層12の表面の一部を露出させた。電気−機械変換膜が形成される領域の電極層15を、他の電極層15から分離孤立させることにより、電気−機械変換膜が形成される領域の電極層15のみを効率よく加熱することができる。
次に、図3(b)に示すように、スピンコート法によりPZT前駆体溶液(ゾルゲル液)を塗布した。その後、塗布したPZT前駆体溶液を120℃で乾燥して、ゾルゲル層31を電極層15および表出させた絶縁層12上に形成した。
次に、図3(c)に示すように、電気−機械変換膜が形成される領域にある電極層15にレーザ光92を照射した。これにより、電極層15の上面に接するゾルゲル層31中の有機成分が熱分解し、PZT前駆体が結晶化する。その結果、電極層15の上面に電気−機械変換膜30が形成される。この状態を、図3(d)に示す。
次に、希塩酸で、ゾルゲル層31をウェットエッチングした。これにより、図3(e)に示すように、結晶化した電気−機械変換膜30が電極層15のみに形成された。さらに、図3(b)〜図3(e)の工程を繰り返すことにより、膜厚が5μmの電気−機械変換膜30を得た。
(実施例2)
図5および図6は、薄膜形成方法を説明するための断面模式図である。
図5には、基板の表面改質の方法が示されている。
まず、図5(a)に示すように、基板10上に絶縁層12を形成し、絶縁層12上に電極層15をパターニングした。絶縁層12の形成および絶縁層12のパターニングは、図3(a)を用いて説明した方法と同様の方法によった。すなわち、絶縁層12の組成には上述した傾斜をもたせ、電気−機械変換膜が形成される領域の外周部における電極層15を部分的に除去した。
次に、図5(b)に示すように、基板10をSAM溶液に浸漬した。これにより、電極層15上にSAM膜20が形成された。SAM溶液としては、CH(CH−SHの濃度が0.01モル/リットルの溶液(溶媒:イソプロピルアルコール)を用いた。アルカンチオールは金属表面に自己配列するので、SiON層が露出している部分には形成されない。
次に、図5(c)に示すように、SAM膜20上にマスクパターン90を形成した。マスクパターン90によって、電気−機械変換膜が形成される領域を開口させた。マスクパターン90の材質はレジストである。
次に、図5(d)に示すように、プラズマ91を基板10に晒した。プラズマ91は、例えば、酸素プラズマである。これにより、電気−機械変換膜が形成される領域のSAM膜が分解、除去される。なお、SAM膜の分解、除去は、プラズマ処理に代えて紫外線などのレーザ照射によってもよい。この状態を、図5(e)に示す。
次に、図5(f)に示すように、マスクパターン90を除去した。このときのSAM膜20の純水に対する接触角は92.2度(疎水性)を示し、SAM膜20が配置されていない電極層15(Pt層)の純水に対する接触角は5.4度(親液性)であった。
次に、PZT前駆体溶液をインクジェットヘッドで電気−機械変換膜が形成される領域に塗布した。PZT前駆体溶液は電極層14上のほか、SAM膜20が形成されていない絶縁層12上にまで広がった。これにより、電極層14の表面のほかSAM膜20が形成されていない絶縁層12上にもゾルゲル層31が形成された。この状態を、図6(a)に示す。
続いて、電気−機械変換膜が形成される領域にレーザ光92を照射した。これにより、電極層15の上面に接するゾルゲル層31中の有機成分が熱分解し、PZT前駆体が結晶化した。その結果、電極層15の表面に電気−機械変換膜30が形成された。この状態を、図6(b)に示す。
実施例2では、スポット径が30μm径のレーザビームを用い、レーザ光を電気−機械変換膜が形成される領域全域に走査した。レーザ光は、ゾルゲル層31に吸収されにくいように、その波長が選択されている。レーザ光のゾルゲル層31の透過率は、70%以上である。従って、レーザ光はゾルゲル層31に吸収されることなく、電極層15が選択的に加熱された。これにより、電極層15の上面に接するゾルゲル層31が熱硬化し、電極層15の表面に電気−機械変換膜30が形成された。
本発明では、絶縁層12の熱伝導率が電極層15の熱伝導率よりも低い。これにより、レーザ光を電極層15に照射する際には、島状の電極層15下に絶縁層12が存在して、いわゆる熱溜め効果が起きて電極層15が効率的に加熱される。仮に、この絶縁層12を設けないと、島状の電極層15のみを効率よく加熱できず、熱拡散によって隣接するSAM膜20までも加熱されることになる。
SAM膜20は200℃以上で熱ダメージを受けるものの、レーザ光を照射する部分は、電気−機械変換膜が形成される領域のみである。このため実施例のプロセスではSAM膜20がダメージを受けることはない。さらに、図5(b)〜図6(b)の工程を繰り返すことで、所望の領域に所望の膜厚の電気−機械変換膜30を形成することができる。
さらに、本発明では、絶縁層12の熱伝導率が電極層15から振動板105に向けて下がるように熱伝導率に傾斜をもたせている。本発明では、絶縁層12の組成を変化させることにより、該熱伝導率に傾斜をもたせている。例えば、実施例に係る積層体(基板10/絶縁層12/電極層15)中の絶縁層12は、OとNとの濃度に傾斜をもたせた層である。そして、絶縁層12は、基板10側がSiよりもSiOの組成がリッチであり、電極層15側がSiOよりもSiの組成がリッチである。このような絶縁層12を備えることにより以下の効果が得られる。
図7は、積層体の温度勾配を説明する図であり、(a)は、絶縁層がSiO層の例であり、(b)は、絶縁層が実施例のSiON層の例である。
図7の横軸は、積層体中の絶縁体付近の深さに対応している。左から右に向かい基板/SiO層もしくはSiON層/Pt層/PZT前駆体溶液に対応している。縦軸は、温度である。基板は、Si層、振動板が該当する。
図中のSiO層およびSiON層の膜厚は1μmであり、Pt層は0.2μmである。SiON層は、基板10側がSiよりもSiOの組成がリッチであり、電極層15側がSiOよりもSiの組成がリッチな層である。SiOの熱伝導率は、5〜7W/(M・℃)であり、Siは、50〜80W/(M・℃)である。また、Ptの熱伝導率は、約70W/(M・℃)である。
図7(a)の場合、Pt層の熱伝導率に対するSiO層の熱伝導率の比が1/10であるため、Pt層側がレーザ加熱されると、SiO層とPt層との界面近傍に急峻な温度勾配が生じる。このため、PZT前駆体を結晶化する際には、SiO層に過剰な応力が印加され、SiO層にクラックが生じる場合がある。SiO層にクラックが生じると、これに付随してPZT膜にもクラックが生じる場合もある。さらに、Pt層がSiO層から剥がれる場合もある。
これに対し、図7(b)の場合、SiON層は、基板10側がSiOリッチであり、電極層15側がSiリッチである。Ptの熱伝導率はSiの熱伝導率と同等である。このため、Pt層側がレーザ加熱されてもSiON層とPt層との界面では急峻な温度勾配が生じにくくなる。また、SiON層は、Pt層側から基板側に向かって熱伝導率が徐々に下がる構成になる(基板側とPt層側の熱伝導率の差は1/10程度)。このため、Pt層からSiON層を通して基板までの温度勾配が緩やかになる。
また、Siの線熱膨張係数は、2.6×10−6/℃〜3.5×10−6/℃であり、SiOの線熱膨張係数は、0.5×10−6/℃であり、Ptの線熱膨張係数は、9×10−6/℃である。仮にSiO層上にPt層を形成すると、Si層上にPt層を形成した場合より熱膨張係数の差が大きくなり、レーザ照射中または基板冷却中に絶縁層により大きい応力が印加されてしまう。
絶縁層12として、OとNとの濃度に傾斜をもたせたSiON層を使用した場合、SiON層にクラックが生じることはなかった。また、Pt層がSiON層から剥がれることもなかった。なお、SiONに代えて、AlON(酸化窒化アルミニウム)、ZrON(酸化窒化ジルコニウム)を用いてSiON層にクラックが生じることはなく、Pt層がSiON層から剥がれることもなかった。また、SiONは、安価な材料である。このため、絶縁層12を用いてもコスト高を招来しない。また、絶縁層12の熱伝導率が電極層15から振動板105に向けて上昇するように熱伝導率に傾斜をもたせると、図7(a)と同様に、Pt層とSiON層との界面近傍で急峻な温度勾配が形成されて好ましくない。
また、絶縁層12の熱伝導率に傾斜をもたせる例として、例えば、膜中の組成を同一として成膜時の基板の温度を低温としてポーラスな構造を持つ膜として、成膜時間と共に基板の温度を連続的に上昇させて膜の表面側ほど緻密にする方法がある。
(実施例3)
PZT前駆体溶液の出発材料としては、酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、ノルマルブトキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。PZT前駆体溶液では、PZTの化学量論組成に対し鉛量を10モル%過剰にした。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによるPZT膜の結晶性低下を防ぐためである。
イソプロポキシドチタン、ノルマルブトキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、酢酸鉛三水和物を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を作製した。PZT前駆体の濃度は0.1モル/リットルにした。
一度のPZT成膜で得られるPZT膜の膜厚は100nm以下が好ましい。100nmを超えると、PZT膜にクラックが生じる場合があるからである。このため、PZT前駆体の濃度は、成膜面積と前駆体塗布量との関係から適正化されている。
PZT前駆体溶液中の溶媒を乾燥するために120℃で加熱処理をした後、PZT前駆体中の有機物の熱分解を行って膜厚が90nmのゾルゲル層を得た。この加熱工程はレーザ加熱で行った。レーザは半導体レーザであり、その波長は980nmである。レーザ光のスポット径はPZT膜が形成される領域の幅よりも広い。
また、電極層15は、下層からLaNiO/PTで構成された2層構造であってもよい。波長980nmに対するLaNiOの光吸収率はおよそ60%であり、Ptの光吸収率はおよそ20%である。従って、レーザ照射によりLaNiOが効率よく加熱され、間接的にPZT前駆体が乾燥する。レーザ光を照射しない領域では、Pt層はほとんど温度上昇することがないため、Pt層上のSAM膜20は除去されない。
続けて、PZT前駆体膜の形成を繰り返して全体としての膜厚が180nmのPZT前駆体膜を得た。さらにPZT前駆体膜の形成を繰り返して540nmのPZT前駆体膜が得られた。このようにPZT前駆体膜の成膜を合計6回行った。その後、膜厚が540nmのPZT前駆体膜に対して結晶化のための加熱処理を行った。形成されたPZT膜にはクラックは生じなかった。さらに、6回のPZT前駆体膜の成膜を行い、結晶化のための加熱処理を行った。形成されたPZT膜にはクラックは生じなかった。
これら一連のPZT前駆体膜の繰り返し成膜によって、膜厚が1080nmのPZT膜が得られた。PZT前駆体膜の繰り返し成膜によって、電極層15上のSAM膜20は除去されることなく、PZT前駆体膜の繰り返し成膜を終了させるまでSAM膜20表面の水に対する接触角は90°以上を維持した。
次に、SAM膜20をホットプレート加熱により除去した。続いて、膜厚が1080nmのPZT膜に、上部電極(白金)を形成し、電極層15(下部電極)/PZT膜(1080nm)/上部電極を含む電気−機械変換素子を形成した。そして、この電気−機械変換素子の電気特性、電気−機械変換能(圧電定数)の評価を行った。
図8は、P−Eヒステリシス曲線の例を示す図である。
電気−機械変換膜30がPZT膜(膜厚:1080nm)であるときの分極量(Polarization)と膜への印加電界(Applied field)の関係は、図8のようなヒステリシスを持ったP−E曲線となった。図8から、残留分極(曲線と縦軸との交点)は19.3μC/cmであり、抗電界(曲線と横軸との交点)は36.5kV/cmであることが分かった。また、PZT膜の比誘電率は1220であり、誘電損失は0.02であった。形成したPZT膜は、通常のセラミック焼結体と同等の特性を有することが分かった。
また、PZT膜の電気−機械変換能は電界印加による変形量をレーザドップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。その圧電定数d31は120pm/Vとなり、こちらもセラミック焼結体と同等の値であった。これは液体吐出ヘッドとして十分設計できうる特性値である。
また、上部電極を形成せずに、PZT膜のさらなる厚膜化を試みた。すなわち、PZT前駆体膜の繰り返し成膜と、結晶化処理を行って5μmのPZT膜を得た。このPZT膜にはクラックは生じなかった。
一般には、ホットプレート、オーブンによってPZT前駆体の乾燥・熱分解・結晶化がなされる。実施例では、加熱処理のすべてをレーザで行った。これにより、照射された領域のゾルゲル層のみが加熱され、SAM膜にはレーザ光が照射されないことになり、1回SAM膜を形成すれば、ゾルゲル層の繰り返し成膜の最後までSAM膜は除去されることがない。これにより、大幅な工数削減を図ることができる。
(実施例4)
図9は、レーザ照射を説明する斜視模式図である。
レーザ源93から発せられるレーザスポットの形状をゾルゲル層31のパターンと同等の形状にすることにより、PZT結晶化の際の昇温レートが高まり、PZT膜の膜質が向上する。例えば、ゾルゲル層31の平面形状は、0.05mm×1mmとする。さらにレーザスポットをゾルゲル層31が配列する移動させながらシャッタ(図示しない)の開閉によってゾルゲル層31のパターンのみにレーザを照射する。これにより、PZT膜形成の高速処理が実現できた。
(実施例5)
図10は、インクジェット塗布装置を説明するための斜視図である。
インクジェット塗布装置3では、架台200の上に、Y軸駆動手段201が設置してありその上に基板202を搭載するステージ203がY軸方向に駆動できるように設置されている。なおステージ203には図示されていない真空、静電気などの吸着手段が付随しており基板202が固定されている。
また、X軸支持部材204にはX軸駆動手段205が取り付けられており、これにZ軸駆動手段211上に搭載されたヘッドベース206が取り付けられており、X軸方向に移動できるようになっている。ヘッドベース206の上にはインクを吐出させる液体吐出ヘッド2Aが搭載されている。この液体吐出ヘッド2Aには図示されていない各インクタンクから各々着色樹脂インク供給用パイプ210からインクが供給される。
そして、液体吐出ヘッド2Aから吐出されたインクを、レーザヘッド212を用いて加熱、結晶化できる。さらに、このレーザヘッド212はSAM膜の除去工程においても使用される。このとき、電極材料または前駆体インクの液滴の吐出量を調整することで所望の機能性薄膜の形状と膜厚とを得ることができる。
(実施例7)
図11は、インクジェット記録装置を説明する模式図であり、(a)は、インクジェット記録装置の斜視模式図、(b)は、インクジェット記録装置の機構部分の側面模式図である。
インクジェット記録装置4は、騒音が極めて小さくかつ高速印字が可能であり、更にはインクの自由度があり安価な普通紙を使用できるなど多くの利点があるために、プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置あるいは画像形成装置として広く展開されている。
インクジェット記録装置4は、液体吐出ヘッド2Aもしくは2Bを搭載している。インクジェット記録装置4は、記録装置本体810の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部820等を収納している。
記録装置本体810の下方部には前方側から多数枚の用紙830を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイ)840を抜き差し自在に装着することができる。また、用紙830を手差しで給紙するための手差しトレイ850を開倒することができる。記録装置本体810は、給紙カセット840あるいは手差しトレイ850から給送される用紙830を取り込み、印字機構部820によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ860に排紙する。
印字機構部820は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド910と従ガイドロッド920とでキャリッジ930を主走査方向に摺動自在に保持する。キャリッジ930は、記録ヘッド940を複数のインク滴吐出方向を下方に向けて装着している。複数のインク吐出口(ノズル)は、主走査方向と交差する方向に配列されている。なお、記録ヘッド940は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドからなる。キャリッジ930には記録ヘッド940に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ950が交換可能に装着されている。
インクカートリッジ950は、上方に大気と連通する大気口を有し、下方には液体吐出ヘッドへインクを供給する供給口を有し、内部にはインクが充填された多孔質体を有する。多孔質体の毛管力により液体吐出ヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、ここでは各色の記録ヘッド940を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の記録ヘッドとしてもよい。
キャリッジ930は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド910に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド920に摺動自在に載置している。キャリッジ930を主走査方向に移動走査する。例えば、主走査モータ970で回転駆動される駆動プーリ980と従動プーリ990との間にタイミングベルト1000を張装し、タイミングベルト1000をキャリッジ930に固定し、主走査モータ970の正逆回転によってキャリッジ930が往復駆動される。
一方、給紙カセット840にセットした用紙830をヘッド940の下方側に搬送するために、給紙カセット840から用紙830を分離給装する給紙ローラ1010およびフリクションパッド1020と、用紙830を案内するガイド部材1030と、給紙された用紙830を反転させて搬送する搬送ローラ1040と、この搬送ローラ1040の周面に押し付けられる搬送コロ1050および搬送ローラ1040からの用紙830の送り出し角度を規定する先端コロ1060とを設けている。搬送ローラ1040は副走査モータ1070によってギヤ列を介して回転駆動される。
また、記録装置本体810には、キャリッジ930の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ1040から送り出された用紙830を記録ヘッド940の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材1090が設けられている。この印写受け部材1090の用紙搬送方向下流側には、用紙830を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ1110、拍車1120を設け、さらに用紙830を排紙トレイ860に送り出す排紙ローラ1130および拍車1140と、排紙経路を形成するガイド部材1150、1160とを配設している。
記録時には、キャリッジ930を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド940を駆動することにより、停止している用紙830にインクを吐出して1行分を記録し、用紙830を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙830の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙830を排紙する。
また、キャリッジ930の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド940の吐出不良を回復するための回復装置1170を配置している。回復装置1170はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ930は印字待機中にはこの回復装置1170側に移動されてキャッピング手段でヘッド940をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド940の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、このインクジェット記録装置4においては、液体吐出ヘッド2Aもしくは2Bを搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではない。他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができる。いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
2A、2B 液体吐出ヘッド
3 インクジェット塗布装置
4 インクジェット記録装置
10 基板
11、12 絶縁層
15 電極層(第1電極層)
16 電極層(第2電極層)
20 SAM膜
30 電気−機械変換膜(PZT膜)
31 ゾルゲル層
90 マスクパターン
91 プラズマ
92 レーザ光
93 レーザ源
101 液室
102 ノズル
103 ノズル板
104 圧力室基板(シリコン基板)
105 振動板
109 電気−機械変換素子
A.Kumar andG.M.Whitesides,Appl.Phys.Lett.,63,2002(1993). 特許第4232753号明細書

Claims (8)

  1. 振動板を変形させることにより液室内の液滴を前記液室から吐出させる液滴吐出ヘッドであって、
    前記振動板上に設けられた絶縁層と、
    前記絶縁層上に設けられた第1電極層と、
    前記第1電極層上に塗布されたゾルゲル層をレーザ照射により変化させて形成されてなる電気−機械変換膜と、
    前記電気−機械変換膜上に設けられた第2電極層と、
    を備え、
    前記絶縁層の熱伝導率は前記第1電極層の熱伝導率よりも低く、
    前記絶縁層の熱伝導率が前記第1電極層から前記振動板に向けて下がるように該熱伝導率に傾斜をもたせたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記絶縁層の組成を変化させることにより、該熱伝導率に傾斜をもたせたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記電気−機械変換膜の外周において、前記絶縁層の表面が露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記絶縁層は、半導体もしくは金属のいずれかと、酸素と、窒素と、を含み、
    前記振動板側の絶縁層は、窒素を含まず酸素を含み、
    前記第1電極層側の絶縁層は、酸素を含まず窒素を含み、
    前記絶縁層の膜厚方向において、前記振動板側から前記第1電極層側に向かって酸素が減少しつつ窒素が増加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記半導体はSiであり、前記金属はAlもしくはZrのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 前記振動板側の絶縁層の熱伝導率は、前記第1電極層側の絶縁層の熱伝導率の1/2以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の液滴吐出ヘッド。
  7. 振動板を変形させることにより液室内の液滴を前記液室から吐出させる液滴吐出ヘッドの形成方法であって、
    前記振動板上に絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層上に第1電極層を形成する工程と、
    前記第1電極層上にゾルゲル層を形成し、前記ゾルゲル層をレーザ照射により変化させて電気−機械変換膜を形成する工程と、を有し、
    前記絶縁層を形成する工程においては、前記絶縁層の熱伝導率が前記第1電極層の熱伝導率よりも低く、前記絶縁層の熱伝導率が前記第1電極層から前記振動板に向けて下がるように該熱伝導率が傾斜をもつように形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの形成方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかの1項の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
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