JP5708864B2 - ワークの研磨装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ワークの研磨装置に関し、特に、高い平坦度が要求される半導体ウェーハなどの円形状ワークの研磨量を正確に制御することのできる、ワークの研磨装置に関する。
研磨に供するワークの典型例であるシリコンウェーハなどの半導体ウェーハの製造において、より高精度なウェーハの平坦度品質や表面粗さ品質を得るために、表裏面を同時に研磨する両面研磨工程が一般的に採用されている。半導体ウェーハに要求される形状(主に全面及び外周の平坦度合)は、その用途等によって様々であり、それぞれの要求に応じて、ウェーハの研磨量の目標を決定し、その研磨量を正確に制御することが必要である。
特に近年、半導体素子の微細化と、半導体ウェーハの大口径化により、露光時における半導体ウェーハの平坦度要求が厳しくなってきているという背景から、ウェーハの研磨量を適切に制御する手法が強く希求されている。
これに対し、例えば特許文献1には、研磨中における両面研磨装置の定盤駆動トルクの低下量から、ウェーハの研磨量を制御する方法が記載されている。
特開2002―254299号公報
しかし、特許文献1に記載の方法では、定盤トルクの変化に対する応答性が悪く、トルクの変化量とウェーハの研磨量との相関をとることが困難である。また、ウェーハを保持する部材(キャリアプレート)と定盤とが接触した場合に、大きなトルク変動として研磨終了時点を判断するものであるため、キャリアプレートと定盤とが接触しない状態での研磨量の検出は行えないという問題がある。
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、ウェーハを両面研磨するに当たり、研磨量を正確に制御することのできるウェーハの研磨装置を提供することを目的とする。
発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意究明を重ねた。
その結果、両面研磨装置においてウェーハを保持するキャリアプレートの温度がウェーハの研磨量の正確な指標となることを新たに見出し、キャリアプレートの温度を計測することにより、目標とする研磨量を達成するための研磨量の制御を正確に行うことができることの新規知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものであり、その要旨構成は、以下の通りである。
(1) 研磨に供するワークを保持する1つ以上の保持孔が形成され、該保持孔の少なくとも1つが偏心して配置される、回転可能なキャリアプレートと、前記キャリアプレートを載置する下定盤及び、該下定盤と対をなす上定盤とを備えた、ワークの両面を研磨する装置において、
前記キャリアプレートの温度を測定する手段と、
測定した前記キャリアプレートの温度変化から算出される位相の変化に基づき、ワークの研磨量を制御する制御手段と、をさらに備えていることを特徴とする、ワークの研磨装置。
ここで、「キャリアプレートの温度変化から算出される位相」とは、ワークの両面研磨時におけるキャリアプレートの回転に同期した、キャリアプレートの温度の振動成分の位相を意味する。キャリアプレートの温度の振動成分、及び当該振動成分の位相の算出方法としては、後述のFFT(高速フーリエ変換)やモデル化による最小二乗法による算出方法などがあるが、特に、これらに限定されない。
(2) 研磨に供するワークを保持する1つ以上の保持孔が形成され、該保持孔の少なくとも1つが偏心して配置される、回転可能なキャリアプレートと、前記キャリアプレートを載置する下定盤及び、該下定盤と対をなす上定盤とを備えた、ワークの両面を研磨する装置において、
前記キャリアプレートの温度を測定する手段と、
測定した前記キャリアプレートの温度変化から算出される振幅の変化に基づき、ワークの研磨量を制御する制御手段と、をさらに備えていることを特徴とする、ワークの研磨装置。
ここで、「キャリアプレートの温度変化から算出される振幅」とは、ワークの両面研磨時におけるキャリアプレートの回転に同期した、キャリアプレートの温度の振動成分の振幅を意味する。キャリアプレートの温度の振動成分、及び当該振動成分の振幅の算出方法としては、後述のFFT(高速フーリエ変換)やモデル化による最小二乗法による算出方法などがあるが、特に、これらに限定されない。
(3) 研磨に供するワークを保持する1つ以上の保持孔が形成され、該保持孔の少なくとも1つが偏心して配置される、回転可能なキャリアプレートと、前記キャリアプレートを載置する下定盤及び、該下定盤と対をなす上定盤とを備えた、ワークの両面を研磨する装置において、
前記キャリアプレートの温度を測定する手段と、
測定した前記キャリアプレートの温度変化から算出される、位相の変化と振幅の変化との双方に基づき、ワークの研磨量を制御する制御手段と、をさらに備えていることを特徴とする、ワークの研磨装置。
(4) 前記キャリアプレートの外縁部が、前記上下定盤の外縁より径方向外方に突出した、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のワークの研磨装置。
(5) 前記温度を測定する手段は、光学的計測手段である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のワークの研磨装置。
本発明によれば、ウェーハの両面研磨において研磨量を正確に制御して、要求に応じた形状を有する、高い平坦度の半導体ウェーハを製造することができる。
また、研磨量の正確な制御によって、研磨不足による再研磨の必要がなくなり、ウェーハ製造工程における生産性が向上する。
さらに、所期した磨耗量を超えることもなくなるため、ウェーハ不良の発生やキャリアプレートの磨耗を防止することもできる。
試作した両面研磨装置の概略斜視図である。 研磨時間と両面研磨装置の構成部材等の温度との関係を示す図である。 (a)キャリアプレートの外縁部の温度状態を模式的に示す図である。(b)キャリアプレートと上下定盤との接触状態を模式的に示す図である。(c)キャリアプレートの部位のウェーハからの距離と、キャリアプレートにかかる圧力との関係を示す図である。 (a)キャリアプレートの外縁部の温度状態を模式的に示す図である。(b)キャリアプレートと上下定盤との接触状態を模式的に示す図である。(c)キャリアプレートの部位のウェーハからの距離と、キャリアプレートにかかる圧力との関係を示す図である。 (a)キャリアプレートの温度の振幅の周期性を示す図である。(b)研磨時間とキャリアプレートの温度の振幅のピーク値との関係を示す図である。 (a)本発明の一実施形態に係るウェーハの両面研磨装置の概略斜視図である。(b)(c)は、(a)の両面研磨装置を用いてキャリアプレートの外縁部の温度を測定する様子を示す図である。 研磨時間とキャリアプレートの温度との関係を示す図である。 図7の一部を拡大して示した図である。 研磨時間とキャリアプレートの温度の位相及び振幅との関係を示す図である。 研磨時間とキャリアプレートの温度の位相との関係を示す図である。 研磨終了時における、キャリアプレートの温度の位相とウェーハの厚さ及びSFQRとの関係を示す図である。 研磨時間とキャリアプレートの温度の振幅との関係を示す図である。 研磨終了時における、キャリアプレートの温度の振幅とウェーハの厚さ及びSFQRとの関係を示す図である。 研磨時間と研磨終了時のキャリアプレートの温度の振幅との関係を示す図である。 キャリアプレートの保持孔がキャリアプレートと同心円状に設けられている様子を示す上面図である。 研磨時間とキャリアプレートの温度の振幅との関係を示す図である。 キャリアプレートの温度の周期性を示す図である。
以下、本発明を導くに至った経緯について説明する。
発明者らは、上述した従前のトルク変化に基づくウェーハの研磨量の制御が不十分であることから、これに代わる手段について鋭意模索した。その結果、研磨末期における状態変化がスラリー温度において顕著であることから、ウェーハの研磨量の指標として、研磨装置の各部及び供給材(スラリー)等の研磨中の何某かの温度変化が適合する可能性に着目した。
そこで、まず、発明者らは、研磨装置の各部及び供給材の温度を測定するために、図1に示す研磨装置を試作した。
図1に示すように、この両面研磨装置は、ウェーハ1を保持する保持孔2を有する、1枚又は複数枚の、図示例で5枚のキャリアプレート3と、これらキャリアプレート3を載置する下定盤4と、下定盤4と対をなす上定盤5とを備えている。
上下定盤4、5の対向面には、それぞれ研磨パッド6が貼布されている。
また、キャリアプレート3は、回転可能である。図示例では、サンギア7とインターナルギア8とによって、各キャリアプレート3を回転させることができる。
キャリアプレート3は、保持孔2を1つ以上、図示例では1つ有しており、当該保持孔2は、キャリアプレート3の中心に対して偏心している。
さらに、この研磨装置は、キャリアプレート3の温度を測定する温度計測手段9を備えている。
まず、発明者らは、図1に示す装置でウェーハの両面研磨を行い、研磨中の研磨スラリーの温度を測定して、研磨量との相関を調査したところ、所期した程の相関が得られるまでには至らなかった。すなわち、研磨スラリーの温度は、排出される経路によって影響を受けるため、信頼性や再現性がよくないことがわかった。
次に、発明者らは、研磨スラリーの温度変化が、そもそも研磨装置の構成部材の温度変化によるものであることに着目した。そこで、研磨装置の構成部材として、キャリアプレート3、上定盤5、上下定盤の周囲に配設した排水槽の温度を測定し、研磨時間との関係を評価した。なお、温度計測手段9としては、NEC三栄社製サーモトレーサを用い、波長8〜14μm、サンプリング周期10sとし、各構成部材を一方向から計測した。
各構成部材の研磨時間による温度変化を図2に示す。
図2に示すように、キャリアプレートは、排水槽や上定盤と比較して、研磨中の温度がより高くなることが判明した。特に、キャリアプレートの温度は、研磨初期において、キャリアプレートの回転と同期した、顕著な周期性を有することが特徴であり、また研磨時間の経過につれ温度が高くなること、研磨スラリーと異なり温度が外因による影響を受けにくいことの知見も得た。
発明者らは、上記のキャリアプレートの温度変化について、その原因を究明したところ以下の知見を得たので、図3、4を参照して説明する。
図3は、研磨初期での、(a)キャリアプレート3の外縁部3aの温度分布の様子、(b)ウェーハ1及びキャリアプレート3と、研磨パッド6との接触状態、(c)キャリアプレートの部位にかかる圧力をウェーハからの距離との関係で示した図である。
ここで、外縁部3aとは、キャリアプレートの外縁端部から径方向内側に30mmまでの領域をいう。
図3(a)に示すように、ウェーハ1は、キャリアプレート3の保持孔2に保持されており、ウェーハ1の中心は、キャリアプレート3の中心に対して偏心している。
ここで、図3(b)に示すように、研磨初期においては、ウェーハ1の厚さはキャリアプレート3の厚さよりも厚いため、研磨パッド6の弾性により、研磨パッド6とキャリアプレート3の一部の外縁部3aが強く接触する。特に、図3(c)に示すように、キャリアプレート3が研磨パッド6から受ける圧力は、ウェーハ1からの距離が離れるほど大きくなる。このため、当該接触部分付近の部位と研磨パッド6との摺動による摩擦熱により、図3(a)に示すように、当該接触部位が他の部分と比較して高温になる。
一方、図4(b)に示すように、研磨が進行し、ウェーハ1の厚さとキャリアプレート3の厚さが等しくなると、研磨パッド6がキャリアプレート3に均一に接触するため、図4(a)(c)に示すように、キャリアプレート3の外縁部3aは、周方向に研磨パッド6から受ける圧力差がなく、この圧力差によっては周方向の温度差が生じなくなる。
しかし、図3(b)に示す状態においては、ウェーハ1がキャリアプレート3より厚いため、隙間Gが生じるのに対し、研磨が進行して、図4(b)に示す状態になると、ウェーハ1とキャリアプレート3の厚さが等しくなるため、この隙間がなくなる。
従って、ウェーハ1が有する熱がキャリアプレート3へ伝導しやすくなり、この熱によるキャリアプレート3の昇温が無視できなくなる。
そして、キャリアプレート3の部分のうち、ウェーハ1からの距離が近い部分ほど、温度が高くなる。
つまり、図4(b)に示す状態以降の研磨段階では、キャリアプレート3と研磨パッド6との接触状態が均一になる一方で、ウェーハ1から熱の伝導が無視できなくなるため、キャリアプレートの周方向の温度差は、図3(b)に示す状態から反転することとなる。すなわち、キャリアプレート3の部分のうち、研磨初期において、相対的に他の部分より高温であった部分3aは、図4(b)に示す状態以降では、他の部分より相対的には低温となり、一方で、研磨初期において、他の部分より相対的に低温であった部分は、図4(b)に示す状態以降では、他の部分より相対的に高温となるのである。
以上の知見を下に、上記の周期性について考察する。
キャリアプレートの温度を、例えば一方向から光学的手段によって測定すると、キャリアプレート3の回転と共に、キャリアプレート3の温度を周方向に測定することになる。
従って、研磨初期においては、キャリアプレート3の回転の周期と同期した、キャリアプレート3の周期的温度変化があらわれることになる。この周期性は、図2に示すように、研磨が進行するにつれて小さくなり、ウェーハ1の厚さがキャリアプレート3の厚さに近づくにつれて、温度変化の周期性が消失する。
その後、研磨が進行するに従い、上述したように、ウェーハ1からキャリアプレート3への熱の伝達が無視できなくなるため、キャリアプレート3の部分のうち、ウェーハからの距離が近い部分が、研磨初期とは反対に、より高温となり、キャリアプレートの温度変化の周期性が再びあらわれ始める。
このような、キャリアプレートの高温箇所の反転は、周方向に測定したキャリアプレートの温度を、直流成分と振動成分とに分解した際に、当該振動成分の位相が反転することを意味する。
従って、発明者らは、キャリアプレートの温度、特に、周方向に測定したキャリアプレートの温度の振動成分の位相が、ウェーハの研磨状態を示す良い指標となるという知見を得たものである。
発明者らは、上記の周期性についてさらに別の観点から検討を行った。
図5(a)は、図2に示したキャリアプレートの温度変化について、その周期に関する特性を明らかにすべく、研磨時間(10〜45min)を8つの時間領域(A〜H)に等分して、各時間領域A〜Hにおいて、フーリエ変換によりキャリアプレートの温度の振動成分の振幅を求め、振幅を周期軸領域で表示したグラフを、上記時間領域ごとに示した図である。
図5(a)に示すように、各時間領域で、キャリアプレートの回転の周期の値T0の付近において振幅のピーク値を有する。
図5(b)は、各時間領域の振幅のピーク値をプロットした図である。図5(b)に示すように、振幅のピーク値は、研磨時間の増大に伴い、ほぼ線形に減衰していくことがわかった。
なお、図5(a)(b)において、縦軸の振幅は、時間領域A(8〜10min)における振幅のピーク値を100(%)としたときの相対値で示している。
従って、発明者らは、周方向に測定したキャリアプレートの温度の振幅も、ウェーハの研磨状態を示す良い指標となるという知見を得たものである。
以上のことから、発明者らは、研磨中のキャリアプレートの温度は、他の構成部材より高く、キャリアプレートの温度は、キャリアプレートと研磨パッドとの接触状態、換言すると、ウェーハの厚さを示す良い指標となることを知見した。
従って、キャリアプレートの温度を測定することにより、測定したキャリアプレートの温度と研磨量とを対応付けて、研磨量を正確に制御し、目標とするウェーハの厚さを達成できることをここに見出したのである。
先に説明したように、特に、キャリアプレートの温度の位相や振幅を把握することにより、研磨量を制御することが有効である。
図6(a)は、本発明の一実施形態に係る、ウェーハの両面研磨装置を示す概略斜視図である。
図6(a)に示すように、本発明の両面研磨装置は、上述の、図1に示した、キャリアプレート3の温度を測定する温度計測手段9を備えた両面研磨装置の構成に加え、測定した温度に応じてウェーハの研磨量を制御する制御手段10も備えている。
また、本発明の両面研磨装置は、1つ以上、図示例では1つの保持孔を有するキャリアプレート3を備えている。キャリアプレートに設けた保持孔2は、キャリアプレート3の中心に対して偏心している。
なお、ここでいう偏心しているとは、保持孔の少なくとも1つの中心がキャリアプレートの中心に対して離間していることをいう。具体的には、キャリアプレートが保持孔を2つ以上有している場合は、それらの配置によらずに必ず偏心し、保持孔を1つのみ有する場合は、保持孔がキャリアプレートと同心円状に配置されていなければよい。
両面研磨を行うに当たり、保持孔2にウェーハ1を保持し、研磨スラリーを供給しながら、上定盤5と下定盤4との間でキャリアプレートを回転させることにより、ウェーハ1と上下定盤4、5とを相対的に摺動させ、ウェーハ1の表裏面を同時に研磨する。
なお、図1に示すように、上下定盤4、5も回転させることができ、この場合、上下定盤4、5は互いに反対方向に回転させる。
ここで、両面研磨を行うに当たっては、ウェーハ1の研磨中において、温度計測手段9によりキャリアプレート3の温度を測定し、測定されたキャリアプレート3の温度に基づき、制御手段10によってウェーハ1の研磨量を制御することが肝要である。
これにより、温度計測手段9によってキャリアプレート3の温度を測定し、測定されたキャリアプレート3の温度を研磨量と対応させ、制御手段10によってウェーハ1の研磨量を任意の目標の研磨量に制御することができる。
具体的には、上述のように、キャリアプレートの温度の位相を求め、例えば、位相の変化とウェーハの研磨量とを対応させて、研磨終了時点を判断し、研磨量の制御を行うことができる。
図7は、図1に示す装置でウェーハの両面研磨を行い、研磨中のキャリアプレートの温度を測定した結果を示す図である。図8の実線のグラフは、図7の研磨時間500〜600(s)の区間について拡大して示した図である。なお、図7、図8に示す温度測定結果は、温度計測手段9として、キーエンス社製FT−H30の温度センサを用い、波長8〜14μm、サンプリング周期500msとしたときのものである。
図7、図8に示すように、キャリアプレートの温度は、キャリアプレートの回転と同期した振動成分を有する。
そこで、上記振動成分の位相を求めることにより研磨状態を検出することができる。
上記振動成分の位相は、特には限定しないが、例えば、キャリアプレートの温度(図8の実線のグラフ)を、以下の式のようにモデル化(図8の破線のグラフに近似)し、最小二乗法により、パラメータA、B、C、Dを算出することにより求めることができる。なお、下記の式1においては、右辺の第1項及び第2項が振動成分であり、第3項及び第4項が直流成分である。
(式1)
T=Asin(αt)+Bcos(αt)+Ct+D
(式2)
α=(2π/60)×r
ただし、rはキャリアプレートの回転速度であり、振幅は (A2+B2)1/2、位相θはsin-1θ=B/(A2+B2)1/2もしくはcos-1θ=A/(A2+B2)1/2で算出される。
また、例えば、FFT(高速フーリエ変換)等の手法によっても振幅および位相を算出することができる。
上述のようにしてキャリアプレートの振動成分の位相を求めることにより、キャリアプレートの厚みに対するウェーハの厚みを検出することができる。例えば、ウェーハの厚さとキャリアプレートの厚さとが等しくなる時点の位相が研磨開始時の位相から90度(π/2)変化する時点であった場合、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さより厚い時点を研磨終了時における研磨量の目標とする場合は、上記位相変化が90度(π/2)となる前に研磨を終了する。一方で、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さより薄くなるまで研磨する場合には、上記位相変化が90度(π/2)となった時点の後、さらに、目標の研磨量に相当する研磨時間を設定し、設定した研磨時間分だけ研磨を続行すればよい。
次に、キャリアプレートの温度の振幅を算出することにより、ウェーハの研磨量を制御する方法について説明する。
具体的には、上述のように、キャリアプレートの温度の振幅を求め、例えば、この振幅の変化を研磨量と対応させて、研磨終了時点を判断し、研磨量の制御を行うことができる。
キャリアプレートの温度の振幅は、上述のように、例えば、モデル化した式のパラメータを最小二乗法により算出することにより求めることもできるし、あるいは、例えばFFT(高速フーリエ変換)により求めることもできるが、これらの方法には限られない。
この場合、例えば、キャリアプレート3の温度の振幅が極小値になる時点を、ウェーハの厚さとキャリアプレートの厚さが等しくなる時点であると定義することにより、上述の振幅の線形な減衰関係を用いて、研磨量を正確に制御することができる。
すなわち、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さより厚い時点を研磨終了時における研磨量の目標とする場合は、上記振幅が極小値となる前に研磨を終了することができる。一方で、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さより薄くなるまで研磨する場合には、振幅が極小値となった後、さらに目標の研磨量に相当する研磨時間を設定し、設定した研磨時間分だけ研磨を続行することができる。
ここで、ウェーハの研磨量の指標としてキャリアプレートの温度の位相や振幅を用いる場合には、位相のみを用いても良いし、振幅のみを用いても良いし、あるいは、位相と振幅との双方を用いても良い。
図9は、図7に示すキャリアプレートの温度の振動成分の振幅及び位相を、最小二乗法により求め、研磨時間との関係を示した図である。
なお、振幅は研磨開始時における振幅を1としたときの相対値で示している。
図9に示すように、位相(破線)は、ウェーハの厚さとキャリアプレートの厚さとがほぼ等しくなる時点で、位相の反転が生じるため、この付近での変化が大きい。一方で、振幅(実線)は、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さに近づくにつれて漸減していく。
このため、研磨終了時点での目標研磨量を、ウェーハの厚さとキャリアプレートの厚さとが等しくなる時点に設定する場合には、指標として振幅を用いることが好ましい。
また、研磨終了時点での目標研磨量を、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さより薄くなる時点に設定する場合には、指標として位相を用いることが好ましい。
さらに、位相と振幅との双方を指標として用い、例えば、目標とする研磨量に対応する位相の変化の基準と振幅の変化の基準とを設定し、双方の基準を満たした時点で研磨を終了することができる。これにより、研磨不足を回避して再研磨にかかるコストや時間を削減することができる。あるいは、位相と振幅との双方を指標として用い、例えば、目標とする研磨量に対応する位相の変化の基準と振幅の変化の基準とを設定しつつも、一方の基準を満たした時点で研磨を終了することにより、過研磨をより一層防止することができる。
ここで、温度計測手段9としては、例えば、赤外線センサなどの光学的手段を用いることができる。
キャリアプレート3の温度の測定は、例えば、図1に示す場合のように、温度計測手段9をキャリアプレート3と同程度の高さに設置してキャリアプレート3の側面部を計測するほか、図6(a)(b)(c)に示すように、温度計測手段9を上定盤の上方に配置し、キャリアプレート3の外縁部3aを上下定盤の外縁より径方向外方に突出させて研磨を行い、突出させたキャリアプレートの外縁部3aの温度を温度計測手段9により測定することもできる。これにより、上下定盤からの輻射熱の外乱を受けることなく、キャリアプレートの温度を正確に測定することができる。
また、振幅及びそのピーク値の算出は、温度計測手段9によって計測された温度から制御手段10にて処理することにより行っても良いし、温度計測手段9内に算出手段を設けることにより行っても良い。さらに、温度計測手段9と制御手段10との間に、他の算出手段を介在させて行うこともできる。
一方で、温度の測定対象であるキャリアプレートは、例えば、ステンレス鋼(SUS)、あるいはエポキシ、フェノール、ポリイミドなどの樹脂にガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維を複合した繊維強化プラスチックなど、任意の材質のものを用いることができ、耐摩耗性を向上させるように、これら材質の表面にダイヤモンドライクカーボンを塗布したものも用いることができる。
ここで、測定したキャリアプレート3の温度と研磨量とを対応付ける別の方法としては、キャリアプレート3の自転の周期毎にキャリアプレート3の温度の平均をとることもできる。
すなわち、キャリアプレート3の自転周期毎の温度の平均をとれば、キャリアプレート3の温度が単調に増加するため、キャリアプレート3の温度の増加を研磨量の増加と対応付けておくことで、正確に研磨終了時点を検出することができ、ウェーハの研磨量を正確に制御することができる。
このとき、例えば、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さと等しくなる時点を、キャリアプレートの温度の単位時間当たりの増加率が一定以下となった時点であると定義して、キャリアプレートの温度を研磨量と対応付けることができる。
この場合も、キャリアプレートの温度を測定し、測定した温度を指標とすることにより、所望の研磨量を達成することができる。
なお、キャリアプレートの自転周期毎のキャリアプレートの温度の平均値の代わりに、例えば、キャリアプレートの自転周期毎のキャリアプレートの温度の最大値をとり、この最大値を研磨量の指標とすることもできる。
《実施例1》
本発明の効果を確かめるため、研磨時間を変えて、キャリアプレートの温度の位相と、ウェーハの厚さ及び形状との関係について評価する試験を行った。
研磨時間は、29〜32分間の間で研磨時間を変更した5水準とした。
試験は、研磨に供するウェーハとして、直径300mm、結晶方位(100)、p型のシリコンウェーハを使用した。
キャリアプレートは、初期の厚さ745μmのエポキシ樹脂にガラス繊維を複合したガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)のプレートを用いた。
ここで、ウェーハの中心は、キャリアプレートの中心と、30mm偏心させた。
図6(a)に示す構成の装置を用い、研磨パッドは、ニッタ・ハース社製発泡ウレタン研磨布MHN15、研磨スラリーは、ニッタ・ハース社製Nalco2350を用いた。上下定盤を互いに逆方向に回転させ、キャリアプレートを上定盤と同方向に回転させて、キャリアプレート内に装填したウェーハ表面を研磨した。
温度センサとしては、キーエンス社製FT−H30を用い、波長8〜14μm、サンプリング周期500msとした。
図10に、研磨時間を変更した各水準毎の研磨終了時におけるキャリアプレートの位相の結果を示す。なお、図10において、縦軸の研磨終了時の位相は、研磨時間が100秒における位相を0としたときの相対値で示している。
また、図11に、研磨終了時における、位相変化とウェーハの厚さとの関係、および位相とウェーハ外周部近傍のSFQR(Site Front least sQuares Range)との関係を示す。
ここで、SFQRは、SEMI規格に係る、ウェーハの外周部の平坦度を示す指標である。このSFQRは、具体的には、ウェーハから所定寸法の矩形状のサンプルを複数取得し、取得した各サンプルについて最小二乗法により求められた基準面からの最大変位量の絶対値の和を算出することにより求めるものである。
なお、図11において、縦軸のSFQR及び横軸の研磨終了時の位相は、研磨時間が30.5分の場合の研磨終了時における、SFQRを100、研磨開始時から100秒後の位相を0としたときの相対値で示している。SFQRは、値が小さい方が平坦度が良好であることを意味する。
図10に示すように、研磨時間の増加に伴い、研磨終了時の位相が低下し、研磨開始時からの位相変化量がπ/2以上となる。これはウェーハの厚みがキャリアプレートの厚みに近づくにつれて、温度変化の周期性が消失し、その後、上述した高温部分の反転により位相が反転することを意味するものである。
さらに、図11に示すように、研磨終了時の位相が変化するにつれ、SFQRが減少し、ウェーハ外縁部の平坦性が改善されることがわかる。
従って、キャリアプレートの温度を測定し、キャリアプレートの温度の位相を研磨量と対応付けることができ、この対応関係を用いて研磨終了時を判定することで、ウェーハを所望の平坦度にするための研磨量を正確に制御できることがわかる。
《実施例2》
研磨時間を「30、35、40、45、50(min)」の5水準に変更した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
図12に、研磨時間を変更した各水準毎の研磨終了時におけるキャリアプレートの振幅の結果を示す。なお、図12において、縦軸の研磨終了時の振幅は、研磨時間が30minの場合の研磨終了時における振幅を100としたときの相対値で示している。
また、図13に、研磨終了時における、振幅とウェーハの厚さとの関係、および振幅とウェーハ外周部近傍での上記SFQRとの関係を示す。
なお、図13において、縦軸のSFQR及び横軸の研磨終了時の振幅は、研磨時間が30minの場合の研磨終了時における、SFQR及び研磨終了時の振幅をそれぞれ100としたときの相対値で示している。従って、SFQRは、値が小さい方が平坦度が高いことを意味する。
図12に示すように、研磨時間の増加に伴い、研磨終了時の振幅が低下する。これはウェーハの厚みがキャリアプレートの厚みに近づくにつれて、温度変化の周期性が消失することを意味するものである。
さらに、図13に示すように、研磨終了時の振幅が小さくなると、SFQRが減少し、ウェーハ外縁部の平坦性が改善されることがわかる。
従って、キャリアプレートの温度を測定し、キャリアプレートの温度の振幅を研磨量と対応付けることができ、この対応関係を用いて研磨終了時を判定することで、ウェーハを所望の平坦度にするための研磨量を正確に制御できることがわかる。
《実施例3》
本発明の効果がキャリアプレートの材質によらずに有効であることを確かめるため、材質の異なる3種類のキャリアプレートを用いて、研磨時間とキャリアプレートの温度の振幅との関係を評価する試験を行った。
3種類の材質は、キャリアプレートをGFRP製としたもの、GFRP製のキャリアプレートにダイヤモンドライクカーボンを塗布したもの、SUS製のキャリアプレートにダイヤモンドライクカーボンを塗布したものとした。
試験は、(1)GFRP製のキャリアプレートの初期の厚さは745μmで、研磨時間は30分、(2)GFRP製のキャリアプレートにダイヤモンドライクカーボンを塗布したキャリアプレートの初期の厚さは746μmで、研磨時間は32分、(3) SUS製のキャリアプレートにダイヤモンドライクカーボンを塗布したキャリアプレートの初期の厚さは754μmで、研磨時間は34分として行った。
その他の条件は実施例2と同様である。
図14に、評価結果を示す。
図14に示すように、キャリアプレートの材質によらずに、研磨の進行と共に振幅は減少し、ほぼ線形な相関関係があることがわかる。
従って、任意の材質のキャリアプレートに対して、キャリアプレートの温度を測定し、測定した温度に基づいて、ウェーハの研磨量を正確に制御することができることがわかる。
《実施例4》
比較例として、図15に示すような、保持孔2がキャリアプレート3と同心円状に設けられているキャリアプレート3を用い、研磨中のキャリアプレート3の温度を測定して、キャリアプレート3の温度の振幅の周期性及び研磨時間による推移について評価する試験を行った。
キャリアプレートはGFRP製で、初期の厚さが745μmのものを用い、研磨時間を30(min)とした。その他の条件は、実施例2と同様である。
図16は、研磨時間とキャリアプレートの温度の振幅のピーク値との関係を示す図である。
また、図17は、キャリアプレートの温度の周期性を示す図である。
図16、17に示すように、保持孔がキャリアプレートの中心に対して偏心していない場合は、振幅のピーク値が研磨時間の経過によって変化せず、温度に周期性が見られないのに対し、保持孔がキャリアプレートの中心に対して偏心している場合は、温度に周期性があり、振幅が研磨時間と共にほぼ線形に減少することがわかる。
1 ワーク(ウェーハ)
2 保持孔
3 キャリアプレート
4 下定盤
5 上定盤
6 研磨パッド
7 サンギア
8 インターナルギア
9 温度測定手段
10 研磨量制御手段
G 隙間

Claims (5)

  1. 研磨に供するワークを保持する1つ以上の保持孔が形成され、該保持孔の少なくとも1つが偏心して配置される、回転可能なキャリアプレートと、前記キャリアプレートを載置する下定盤及び、該下定盤と対をなす上定盤とを備えた、ワークの両面を研磨する装置において、
    前記キャリアプレートの温度を測定する手段と、
    測定した前記キャリアプレートの温度変化から算出される位相の変化に基づき、ワークの研磨量を制御する制御手段と、をさらに備えていることを特徴とする、ワークの研磨装置。
  2. 研磨に供するワークを保持する1つ以上の保持孔が形成され、該保持孔の少なくとも1つが偏心して配置される、回転可能なキャリアプレートと、前記キャリアプレートを載置する下定盤及び、該下定盤と対をなす上定盤とを備えた、ワークの両面を研磨する装置において、
    前記キャリアプレートの温度を測定する手段と、
    測定した前記キャリアプレートの温度変化から算出される振幅の変化に基づき、ワークの研磨量を制御する制御手段と、をさらに備えていることを特徴とする、ワークの研磨装置。
  3. 研磨に供するワークを保持する1つ以上の保持孔が形成され、該保持孔の少なくとも1つが偏心して配置される、回転可能なキャリアプレートと、前記キャリアプレートを載置する下定盤及び、該下定盤と対をなす上定盤とを備えた、ワークの両面を研磨する装置において、
    前記キャリアプレートの温度を測定する手段と、
    測定した前記キャリアプレートの温度変化から算出される、位相の変化と振幅の変化との双方に基づき、ワークの研磨量を制御する制御手段と、をさらに備えていることを特徴とする、ワークの研磨装置。
  4. 前記キャリアプレートの外縁部が、前記上下定盤の外縁より径方向外方に突出した、請求項1〜3のいずれか一項に記載のワークの研磨装置。
  5. 前記温度を測定する手段は、光学的計測手段である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のワークの研磨装置。
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