以下、本発明に係る流体噴射装置の実施形態について、図を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る流体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、プリンタ1と称す)を例示する。図1は、本発明の実施形態に係るプリンタの概略構成を示す一部分解図である。
プリンタ1は、サブタンク2及び記録ヘッド3を搭載したキャリッジ4と、プリンタ本体5とから概略構成される。プリンタ本体5には、キャリッジ4を往復移動させるキャリッジ移動機構65(図7参照)と、不図示の記録紙(ターゲット)を搬送する紙送り機構66(図7参照)と、記録ヘッド(噴射ヘッド)3のクリーニング処理に用いられるキャッピング機構14と、記録ヘッド3のワイピング処理に用いられるワイピング部材WPと、記録ヘッド3に供給するインクを貯留したインクカートリッジ6とが設けられている。
また、プリンタ1は、記録ヘッド3から吐出されるインク滴Dを検出可能なインク滴センサ(流体検出手段)7を備えている(図4,7参照)。このインク滴センサ(流体検出手段)7は、記録ヘッド3のノズルから吐出されるインク滴Dを帯電させ、この帯電したインク滴Dが飛翔する際の静電誘導に基づく電圧変化を検出信号として出力することで、ノズルのインク吐出状態を把握可能とするように構成されたものである。なお、このインク滴センサ7の詳細については、後述する。
上記キャリッジ移動機構65は、図1に示される、プリンタ本体5の幅方向に架設されたガイド軸8と、パルスモータ9と、パルスモータ9の回転軸に接続されてこのパルスモータ9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジ4に接続されたタイミングベルト12と、から構成されている。
そして、パルスモータ9を駆動することで、キャリッジ4がガイド軸8に沿って主走査方向に往復移動するように構成されている。また、上記紙送り機構66は、紙送りモータやこの紙送りモータによって回転駆動される紙送りローラ(いずれ不図示)等から構成され、記録紙を記録(印字・印刷)動作に連動させてプラテン上に順次送り出すようになっている。
図2は、プリンタにおける記録ヘッドの構成を説明する断面図であり、図3は、記録ヘッドの構成を説明する要部断面図である。また、図4は記録ヘッド3の周辺における要部構成を示す模式図である。
図2に示されるように、本実施形態における記録ヘッド3は、導入針ユニット17、ヘッドケース18、流路ユニット19及びアクチュエータユニット20を主な構成要素としている。
導入針ユニット17の上面にはフィルタ21を介在させた状態で2本のインク導入針22が横並びで取り付けられている。これらのインク導入針22には、サブタンク2がそれぞれ装着される。また、導入針ユニット17の内部には、各インク導入針22に対応したインク導入路23が形成されている。
このインク導入路23の上端はフィルタ21を介してインク導入針22に連通し、下端はパッキン24を介してヘッドケース18内部に形成されたケース流路25と連通する。
なお、本実施形態は、4種類のインクを使用する構成であるため、サブタンク2を4つ配設しているが、本発明は5種類以上のインクを使用する構成にも当然に適用されるものである。
サブタンク2は、ポリプロピレン等の樹脂製材料によって成型されている。このサブタンク2には、インク室27となる凹部が形成され、この凹部の開口面に透明な弾性シート26を貼設してインク室27が区画されている。
また、サブタンク2の下部にはインク導入針22が挿入される針接続部28が下方に向けて突設されている。サブタンク2におけるインク室27は、底の浅いすり鉢形状をしており、その側面における上下中央よりも少し下の位置には、針接続部28との間を連通する接続流路29の上流側開口が臨んでおり、この上流側開口にはインクLを濾過するタンク部フィルタ30が取り付けられている。針接続部28の内部空間にはインク導入針22が液密に嵌入されるシール部材31が嵌め込まれている。
このサブタンク2には、図4に示されるようにインク室27に連通する連通溝部32′を有する延出部32が形成されており、この延出部32の上面にはインク流入口33が突設されている。このインク流入口33には、インクカートリッジ6に貯留されたインクLを供給するインク供給チューブ34が接続される。従って、インク供給チューブ34を通ってきたインクLは、このインク流入口33から連通溝部32′を通ってインク室27に流入するようになっている。本実施形態に係るプリンタ1は、4つのインクカートリッジ6を備えており、それぞれが対応するサブタンク2に上記インク供給チューブ34を介して接続されている。インクカートリッジ6の各々には、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの四色のインクが貯留されている。
図2に示した上記弾性シート26は、インク室27を収縮させる方向と膨張させる方向とに変形可能である。そして、この弾性シート26の変形によるダンパ機能によって、インクLの圧力変動が吸収される。すなわち、弾性シート26の作用によってサブタンク2が圧力ダンパとして機能する。従って、インクLは、サブタンク2内で圧力変動が吸収された状態で記録ヘッド3側に供給されるようになっている。
ヘッドケース18は、合成樹脂製の中空箱体状部材であり、下端面に流路ユニット19を接合し、内部に形成された収容空部37内にアクチュエータユニット20を収容し、流路ユニット19側とは反対側の上端面にパッキン24を介在した状態で導入針ユニット17を取り付けるようになっている。
このヘッドケース18の内部には、高さ方向を貫通してケース流路25が設けられている。このケース流路25の上端は、パッキン24を介して導入針ユニット17のインク導入路23と連通するようになっている。
また、ケース流路25の下端は、流路ユニット19内の共通インク室44に連通するようになっている。したがって、インク導入針22から導入されたインクLは、インク導入路23及びケース流路25を通じて共通インク室44側に供給される。
図3に示されるように、ヘッドケース18の収容空部37内に収容されるアクチュエータユニット20は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子38と、この圧電振動子38が接合される固定板39と、プリンタ本体側からの駆動信号を圧電振動子38に供給する配線部材としてのフレキシブルケーブル40とから構成される。各圧電振動子38は、固定端部側が固定板39上に接合され、自由端部側が固定板39の先端面よりも外側に突出している。即ち、各圧電振動子38は、所謂片持ち梁の状態で固定板39上に取り付けられている。
また、各圧電振動子38を支持する固定板39は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。そして、アクチュエータユニット20は、固定板39の背面を、収容空部37を区画するケース内壁面に接着することで収容空部37内に収納・固定されている。
流路ユニット19は、振動板(封止板)41、流路基板42及びノズル基板43からなる流路ユニット構成部材を積層した状態で接着剤で接合して一体化することにより作製されており、共通インク室44からインク供給口45及び圧力室46を通りノズル47に至るまでの一連のインク流路(液体流路)を形成する部材である。圧力室46は、ノズル47の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。
また、共通インク室44は、ケース流路25と連通し、インク導入針22側からのインクLが導入される室である。
そして、この共通インク室44に導入されたインクLは、インク供給口45を通じて各圧力室46に分配供給される。
流路ユニット19の底部に配置されるノズル基板43は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズル47を列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板43は、ステンレス鋼の板材によって作製され、本実施形態においてはノズル47の列(即ち、ノズル列)が、各サブタンク2に対応して2列ずつ、合計8列並設されている。そして、1つのノズル列は、例えば、180個のノズル47によって構成される。ノズル基板43と振動板41との間に配置される流路基板42は、インク流路となる流路部、具体的には、共通インク室44、インク供給口45及び圧力室46となる空部が区画形成された板状の部材である。
本実施形態において、流路基板42は、結晶性を有する基材であるシリコンウェハを異方性エッチング処理することによって作製されている。振動板41は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板41の圧力室46に対応する部分には、エッチングなどによって支持板を環状に除去することで、圧電振動子38の先端面が接合される島部48が形成されており、この部分はダイヤフラム部として機能する。即ち、この振動板41は、圧電振動子38の作動に応じて島部48の周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されている。また、振動板41は、流路基板42の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部49としても機能する。このコンプライアンス部49に相当する部分についてはダイヤフラム部と同様にエッチングなどにより支持板を除去して弾性フィルムだけにしている。
そして、上記の記録ヘッド3において、フレキシブルケーブル40を通じて駆動信号が圧電振動子38に供給されると、この圧電振動子38が素子長手方向に伸縮し、これに伴い島部48が圧力室46に近接する方向或いは離隔する方向に移動する。これにより、圧力室46の容積が変化し、圧力室46内のインクLに圧力変動が生じる。この圧力変動によってノズル47からインク滴Dが吐出される。
インクカートリッジ6は、図4に示したように、中空箱形状に形成されたケース部材51と、可塑性材料によって形成されたインクパック52とから構成されており、ケース部材51内の収容室にインクパック52を収容している。
このインクカートリッジ6は、インク供給チューブ34の一端部と連通しており、記録ヘッド3のノズル開口面43aとの水頭差によってインクパック52内のインクLを記録ヘッド3側に供給するように構成されている。具体的には、インクカートリッジ6と記録ヘッド3との重量方向の相対的な位置関係がノズル47のメニスカスに対して極僅かに負圧がかかるような状態に設定されている。
そして、圧電振動子38を駆動することによる圧力変化によって、圧力室46にインクLを供給すると共に、上述したように圧力室46内からインク滴Dを吐出させるようになっている。
上記キャッピング機構(吸引部)14は、図4に示されるようにキャップ部材15、吸引ポンプ16等から構成される。キャップ部材15は、ゴム等の弾性材をトレイ形状に成型した部材によって構成してあり、ホームポジションに配設されている。なお、キャップ部材15は記録ヘッド3のノズル形成領域を覆った状態でノズル基板43に当接するようになっている。このホームポジションとは、キャリッジ4の移動範囲内であって記録領域よりも外側の端部領域に設定され、記録ヘッド3に対してクリーニング処理を行う際にキャリッジ4が位置する場所である。
記録ヘッド3のクリーニング処理時においては、キャリッジ4がホームポジションに位置し、キャップ部材15が記録ヘッド3のノズル基板43の表面(即ち、ノズル開口面43a)に当接して封止した状態で処理を行う。本実施形態中において、クリーニング処理とは、記録ヘッド3の各ノズル47からインクを強制的に排出させることでヘッドの吐出特性を維持あるいは回復させる所謂吸引処理を含んでいる。
具体的に説明すると、クリーニング処理(吸引処理)時には、封止状態で吸引ポンプ16を作動させることでキャップ部材15の内部(封止空部)を減圧し、記録ヘッド3内のインクLがノズル47からインク滴として強制的に排出される。このとき、記録ヘッド3の全てのノズル47からインク滴が排出されるようになっている。
クリーニング処理は、各ノズル47におけるインクの噴射状況を検出する検出ステップと、この検出結果に基づき、記録ヘッド3のクリーニング時における吸引パラメータ(吸引動作のパラメータ)を決定するパラメータ決定ステップと、この処理パラメータに基づいて記録ヘッド3に対してクリーニング(吸引動作)を行うクリーニングステップと、を含んでいる。
ところで、本実施形態に係るプリンタ1は、複数の印刷モードに基づいた処理が可能となっている。印刷モードは、カラー印刷モード、及びモノクロ印刷モードを含む。
カラー印刷モードは、上述のように4色のインクを使用することでカラー印刷を行うモードである。また、モノクロ印刷モードは、ブラックのインクのみを使用することで印刷を行うモードである。
上記検出ステップ及び上記パラメータ決定ステップでは、上記インク滴センサ7が用いられる。プリンタ1は、上記検出ステップにより吐出不良のノズル(以下、不良ノズルと称す場合もある)を検出した場合、後述するフローに示されるようにクリーニング処理を行う構成となっている。なお、検出ステップ及びパラメータ決定ステップは、後述するモード選択手段として機能する制御装置58(図7参照)により選択された印刷モードに応じて、例えば検出ステップを行う頻度、及び検出ステップを行う対象ノズルを変化させるようになっている。
例えば文書作成等のビジネス用途に利用する場合、本実施形態に係るプリンタ1はモノクロ印刷モードによる印刷を行うようになっている。具体的には、ユーザが不図示のドライバユーティリティ画面からモノクロ印刷モードを設定することで制御装置58がモノクロ印刷モードを選択した状態とされる。
モノクロ印刷モードが選択されている場合、インク滴センサ7は、カラーインクに対応するノズル列(すなわち、カラー印刷モード時に使用されるノズル47)に対する検出を実行しないようになっている。
これにより、モノクロ印刷モードにおいて使用されないカラーインクに対応するノズル47に目詰まりが検出され、ブラックのインクに対応するノズル47に目詰まりが生じていない場合において、クリーニングが実行されてしまうことでカラーインクが無駄に消費されてしまうといった不具合が防止されるようになっている。さらに、インク滴センサ7による検出ステップの時間を短縮することができるようになっている。
また、本実施形態に係るプリンタ1は、所定のタイミングでクリーニング処理を行うことで印字品質の向上を図っている(オートクリーニング処理)。なお、所定のタイミングとしては、例えばプリンタ1の電源ON時、印刷処理開始前、予め設定された時間が経過した際、インクの初期充填時、或いはインクカートリッジ6の交換後等が挙げられる。ここで、本実施形態におけるクリーニング処理は、上述したような所定のタイミングで自動的に実行されるオートクリーニング処理に加えて、ユーザの指示に基づいて実行されるマニュアルクリーニング処理を含むものである。
(インク滴センサ7)
図4に示される上記インク滴センサ7は、記録ヘッド3のノズル開口面43aと所定ギャップを介して対向するように配置され、ノズル47から吐出されたインクが供給される検出部78を有し、ノズル47から吐出されたインクに応じた検出波形を出力することで各ノズル47におけるインクの吐出状況を検出可能とする検出装置76と、検出装置76から出力された検出波形に基づいて、インクの重量に関する情報を取得する処理装置82とを備える。上記処理装置82は、検出装置76の検出結果に基づき、詳細については後述するようにクリーニング処理のパラメータを決定する機能を有している。
上記検出装置76は、検出部78と記録ヘッド3のノズル開口面43aとの間に電圧を印加する電圧印加器75と、検出部78の電圧を検出する電圧検出器81とを備えている。なお、本実施形態においては、検出装置76の検出部78は、上述したようにホームポジションに配置されている上記キャップ部材15の内側に設けられている。
上記キャップ部材15は、上面が開放されたトレイ状の部材であり、エラストマー等の弾性部材により作製されている。このキャップ部材15の内側には、インク吸収体77と電極部材79とが配設されている。電極部材79は、例えばステンレス鋼等の金属のメッシュ部材で形成されている。検出部78は、電極部材79の上面によって形成されている。検出部78は、キャップ部材15の上端面よりも低い位置に配置されている。
インク吸収体77は、インクLを保持可能(吸収可能)なスポンジ状部材、あるいは多孔部材等で形成されている。本実施形態においては、インク吸収体77は、フェルトなどの不織布で形成されている。例えば非記録中には、インク吸収体77に吸収されたインクが、ノズル開口面43aとキャップ部材15とが当接することによって形成された空間内を保湿し、ノズル47内のインクの乾燥を抑制可能となっている。
検出部78上に着弾したインク滴Dは、格子状の電極部材79の隙間を通過して下側に配置されたインク吸収体77に保持(吸収)されるようになっている。なお、インク滴Dが通過できれば、電極部材79はメッシュ部材でなくてもよい。また、インク吸収体77が無い場合には、電極部材79は、キャップ部材15の底面から延びるように設けられたリブに保持される。上述のように、キャップ部材15の底には、不図示のチューブが接続されており、インク吸収体77のインク滴Dはチューブを介して、吸引ポンプ16によって吸引され外部に排出されるようになっている。
電圧印加器75は、記録ヘッド3のノズル基板43の噴射面(ノズル開口面43a)と電極部材79の検出部(上面)78との間に電圧を印加可能な電子回路を含む。本実施形態においては、電圧印加器75は、電極部材79が正極、ノズル基板43が負極となるように、直流電源と抵抗素子とを介して、電極部材79とノズル基板43とを電気的に接続する。
上述のように、ノズル基板43はステンレス鋼等の板材で形成されており、電極部材79はステンレス鋼等の金属で形成されており、ノズル基板43及び電極部材79のそれぞれは導電性を有する。すなわち、電圧印加器75は、ノズル開口面43aと検出部78との間に電圧を印加可能となっている。
電圧検出器81は、電極部材79の電圧信号を積分して出力する積分回路、この積分回路から出力された信号を反転増幅して出力する反転増幅回路、及びこの反転増幅回路から出力された信号をA/D変換して出力するA/D変換回路等を含む。
本実施形態においては、検出装置76は、ノズル開口面43aと検出部78との間に電界を与えて、ノズル47から検出部78にインクが移動するときの静電誘導に基づく電圧値の時間的変化を検出波形として処理装置82に出力する。処理装置82は、検出装置76の出力を演算処理可能であり、検出装置76から出力された検出波形に基づいて、インクの重量に関する情報を取得可能となっている。
ここで、インク滴センサ7の原理、すなわち静電誘導によって誘導電圧が生じる原理について図面を参照しながら説明する。図5は、静電誘導によって誘導電圧が生じる原理を説明する模式図であり、同図(a)はインク滴Dが吐出された直後の状態を示し、同図(b)はインク滴Dがキャップ部材15の検査領域74に着弾した状態を示している。図6は、インク滴センサ7から出力される検出信号(インク1滴分)の波形の一例を示す図である。ノズル基板43と電極部材79との間に電圧が印加した状態で、吐出パルスDPを用いて圧電振動子38を駆動させて、任意の一つノズル47からインク滴Dを吐出させる。
この際、ノズル基板43は負極となっているため、図5(a)に示すように、ノズル基板43の一部の負電荷がインク滴Dに移動し、吐出されたインク滴Dは負に帯電する。そして、このインク滴Dがキャップ部材15の検出部78に対して近づくに連れ、静電誘導によって電極部材79の表面では正電荷が増加する。
これにより、ノズル基板43と電極部材79との間の電圧は、静電誘導によって生じる誘導電圧により、インク滴Dを吐出しない状態における当初の電圧値よりも高くなる。
その後、図5(b)に示すように、インク滴Dが電極部材79に着弾すると、インク滴Dの負電荷により電極部材79の正電荷が中和される。このため、ノズル基板43と電極部材79との間の電圧は当初の電圧値を下回る。
そして、その後に、ノズル基板43と電極部材79との間の電圧は当初の電圧値に戻る。
したがって、図6に示すように、インク滴センサ7から出力される検出波形は、一旦電圧が上昇した後に、当初の電圧値を下回るまで下降し、その後当初の電圧値に戻る波形となる。
このようにして、インク滴センサ7により各ノズル47からインク滴Dを吐出した際の電圧変化が検出される。
ところが、例えばインク滴Dが増粘している場合、同一の吐出パルスDPを用いたとしても、吐出量(液量)が正常時に比べて減少する。このため、図6において、実線で示すように、インク滴センサ7から出力される検出信号(検出波形Z)の振幅Aは、正常時の検出信号(理想波形Z0:図6の破線)の振幅A0に比べて小さくなる(振幅差ΔA)。
また、吐出パルスDPを印加してからインク滴Dがノズル基板43から離間するまでの時間も、正常時に比べて遅くなる(電圧上昇するタイミングが時間差ΔTだけずれる。)。
したがって、インク滴センサ7から出力される検出波形Zの振幅Aや電圧上昇のタイミングを理想波形Z0のそれらと比較(ΔA,ΔTを検出)することで、記録ヘッド3の各ノズル47内におけるインクLの増粘状態を求めることができる。さらにインクが増粘した状態では、ノズル47からインクを良好に吐出することができないため、不良ノズルとなる。その状態ではインクが吐出されないので波形は検出されない。すなわち、インク滴センサ7は上述したように各ノズル47におけるインクの噴射状況(不良ノズルであるか否かを判定)を検出可能となっている。また、インク滴センサ7は、上記検出後、処理装置82が吸引パラメータを決定するようになっている。本実施形態では、クリーニング処理としての吸引動作時における上記吸引ポンプ16の駆動条件を吸引パラメータとしている。
以上の構成により、プリンタ1は、インク滴センサ7の検出装置76及び処理装置82により決定された吸引パラメータが記憶装置60に保持されるようになっている。よって、プリンタ1は記憶装置60から呼び出した吸引パラメータに基づいて(すなわち、インク滴センサ7の検出結果に基づいて)、吸引ポンプ16を駆動させることで記録ヘッド3に対してクリーニングを実行するようになっている。よって、プリンタ1は、記録ヘッド3の各ノズル47内から増粘したインクLや気泡を吸引することでキャップ部材15内に強制的に排出し、記録ヘッド3の噴射特性を回復することができる。
このようなインク滴センサ7を用いることで、ノズル47毎にインクが良好に吐出できるか否かのインク吐出状況を正確に把握することが可能となる。よって、精度の高い検出結果に基づいてクリーニング時の処理パラメータを決定することができ、クリーニング時に噴射ノズルから必要以上に流体が吸引されてしまうといった不具合を防止できる。
なお、上述の説明では、インク滴センサ7により増粘インクを検出する例について説明したがこれに限定されない。例えば、気泡を含んだインクをノズル47から吐出する場合、通常のインクを吐出する場合と異なる波形が出力される。よって、インク滴センサ7は気泡を含んだインクが吐出されるノズル47についても不良ノズルとして検出可能となる。また、増粘状態が悪くノズル47内にインクが詰まってしまい、検査時にノズル47からインクが吐出されないような場合には波形が検出されない。よって、インク滴センサ7はこのような吐出不良のノズル47も検知することができる。
図7はプリンタ1の電気的な構成を示すブロック図、図8は吐出パルスの構成を説明する図である。本実施形態におけるプリンタ1は、プリンタ1全体の動作を制御する制御装置58を備えている。この制御装置58には、プリンタ1の動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、プリンタ1の動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60と、時間の計測を実行可能な計測装置61とが接続されている。
また、制御装置58は、上述したカラー印刷モード及びモノクロ印刷モードのうちいずれかを選択するモード選択手段として機能する。制御装置58は、例えばユーザによる設定を反映させた印刷モードを選択できるようになっている。
また、制御装置58には、上述した紙送り機構66、キャリッジ移動機構65、キャッピング機構14、及びインク滴センサ7(電圧検出器81、処理装置82)等が接続されている。
また、プリンタ1は、圧電振動子38に入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。この駆動信号発生器62は、制御装置58に接続されている。
駆動信号発生器62には、記録ヘッド3の圧電振動子38に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて、例えば、図8に示す吐出パルスDPを含む駆動信号を発生する。
図8において、吐出パルスDPは、基準電位VMから最高電位VHまで所定の勾配で電位を上昇させる第1充電要素PE1と、最高電位VHを一定時間維持する第1ホールド要素PE2と、最高電位VHから最低電位VLまで所定の勾配で電位を降下させる放電要素PE3と、最低電位VLを短い時間維持する第2ホールド要素PE4と、最低電位VLから基準電位VMまで電位を復帰させる第2充電要素PE5とを含む。ノズル47から噴射されるインクの滴の量が設計値と一致するように、吐出パルスDPのうち、最高電位VHと最低電位VLとの電位差である駆動電圧VDが設定される。なお、図8に示す吐出パルスDPは一例であり、種々の波形のものを用いることができる。
駆動信号発生器62より吐出パルスDPが圧電振動子38に入力されると、ノズル47よりインクの滴が吐出される。第1充電要素PE1が供給されると、圧電振動子38が収縮して圧力室46が膨張する。この圧力室46の膨張状態が短時間維持された後、放電要素PE3が供給されて圧電振動子38が急激に伸長する。これに伴って、圧力室46の容積が基準容積(圧電振動子38に基準電位VEを印加したときの圧力室46の容積)以下に収縮し、ノズル47に露出したメニスカスが外側に向けて急激に加圧される。これにより、所定量のインクの滴がノズル47から吐出される。その後、第2ホールド要素PE4、及び第2充電要素PE5が圧電振動子38に順次供給され、インクの滴の吐出に伴うメニスカスの振動を短時間で収束させるように、圧力室46が基準容積に復帰する。
続いて、図9〜図12に示すフローを参照しながら本実施形態に係るプリンタ1のクリーニング方法について説明する。なお、本実施形態のプリンタ1のクリーニング方法は、クリーニング処理が複数回実行されることを前提とするものである。
以下、クリーニング処理について具体的に説明する。
まず、インク滴センサ7が用いられるクリーニング処理の準備工程について図9を参照にしながら説明する。この準備工程では、昇降機構(不図示)によってキャップ部材15が下降して、記録ヘッド3がキャップ部材15の上方に位置付けられ、記録ヘッド3のノズル開口面43aと電極部材79とが非接触状態で対向させ、これによりインク滴センサ7が待機状態とされる(ステップS1)。なお、インク滴センサ7を駆動させない場合(利用しない場合)、通常印字処理状態に戻る(ステップS2)。
続いて、制御装置58は前回のクリーニング(CL)からの経過時間を検出する(ステップS3)。このとき、前回のクリーニング処理から1時間(1h)以上経過している場合、オートクリーニングカウンタ(以下、ACLカウンタと称す)をリセットし、0(ゼロ)にする(ステップS4)。ここで、ACLカウンタとは、インク滴センサ7に基づいて実行されたクリーニング回数に対応するものである。
ここで、ACLカウンタが3以上とされた場合、エラー判定とすることなく、処理を中断し、印字可能な状態に戻す(ステップS6)。このように本実施形態では、所定時間内(1時間以内)にインク滴センサ7の検出に基づいて行われるオートクリーニングの連続回数を3回に制限している。このように一時間以内にオートクリーニングが3回連続して実行される場合、ノズル47内の気泡が原因である可能性が考えられる。そこで、記録ヘッド3を放置することでノズル47内の気泡を安定させ、記録ヘッド3の吐出特性を回復させることが可能となる。このように、所定時間内におけるオートクリーニングの連続回数を制限することで、インク滴センサ7による検査時にインクが無駄に消費されるのを防止している。一方、ACLカウンタが3よりも小さい場合、印字開始前フラッシング(予備フラッシング処理)を行う(ステップS5、ステップS7)。
印字開始前フラッシングは、インク滴センサ7による検査ステップに先立ち、例えばノズル47内から増粘したインクを吐出することで、後に実行される検査を良好に行えるようにしている。このフラッシング動作において、制御装置58にエラーが出力された場合、処理を中断し、印字可能な状態に戻す(ステップS9)。一方、制御装置58にエラーが出力されない場合、不図示のサーミスタにより記録ヘッド3の温度検出を行い、温度データを記憶装置60に記憶する(ステップS10)。ここで、記録ヘッド3の温度は、ノズル47から吐出されるインクの粘度に影響を及ぼす。そのため、インクの粘度に応じて後述する吸引パラメータを変化させるために用いられる。具体的に本実施形態では、上述のように記憶装置60に記憶されたヘッド温度に基づいて、吸引動作時における吸引ポンプ16の吸引力が微調整される。
ここで、クリーニング処理がインクの初期充填時から呼ばれたものである場合、全ノズルを対象としてインク滴センサ7による検査を行う(ステップS11)。
次に制御装置58によりモノクロ印刷モードが選択されている場合(ステップS12のYES)、図11に示すフローに基づく検出ステップを行う。一方、モノクロ印刷モードが選択されていない場合(すなわち、カラー印刷モードが選択されている場合)、図10に示すように全ノズルを対象としてインク滴センサ7による検査を行う(ステップS12のNO)。
続いて、インク滴センサ7における検査工程について図10、11に示すフローを参照して説明する。図10に示されるフローは、クリーニング処理のうち、カラー印刷モードが選択された場合における検出ステップ、及びクリーニング処理がインクの初期充填時から呼ばれた場合における検出ステップに対応するものである。
また、図11に示されるフローは、クリーニング処理のうち、モノクロ印刷モードが選択された場合における検出ステップに対応するものである。
先に図10に示される検出ステップについて説明する。まず、ノズル列カウンタ(=1)をセットする(ステップS13)。このノズル列カウンタは、記録ヘッド3のノズル列に対応するものであって、後述するようにノズル列毎の検査が終了するに従いインクリメント(+1ずつ加算)される。
次に、電圧印加器75によって、ノズル基板43と電極部材79との間に電圧を印加する。すなわち、インク滴センサ7をON状態とする(ステップS14)。このとき、例えば電圧が良好に印加されず、エラーが出力された場合(ステップS15のYES)、上記ノズル基板43及び電極部材79間への電圧印加を中止し(ステップS16)、印字可能な状態に戻す(ステップS17)。
一方、良好に電圧が印加された場合、インク滴センサ7により全ノズル列の各ノズル47に対してそれぞれ検査を行う(ステップS18)。なお、検査は、図5を参照して説明したようにして実行される。ここで、検査が中断された場合には、上記ステップS16、ステップS17へと進み、上記ノズル基板43及び電極部材79間への電圧印加を中止し、印字可能な状態に戻す。また、各ノズル列に対する検査が終了した後、上述したノズル列カウンタがノズル列分(8列)に対応しているか否か判定する。ここで、ノズル列カウンタが8未満の場合、ノズル列カウンタをインクリメントし(ステップS21)、ステップS18に戻り、他のノズル列に対して同様に検査を行う。そして、全てのノズル列に対して検査が終了するまで、上記ステップS18〜ステップS21までのフローを繰り返す。全てのノズル列に対して検査が終了した後、ノズル基板43と電極部材79との間への電圧印加を中止する(ステップS22)。以上のフローにより、ノズル基板43に形成された全てのノズル47における検出ステップが終了する。このとき、インク滴センサ7の記憶装置60には不良ノズルの数、及び位置等のデータが記録される。
続いて、モノクロ印刷モードが選択されている場合の検出ステップについて図11を参照しつつ説明する。モノクロ印刷モードが選択されている場合、ノズル列カウンタ(=4)をセットする(ステップS22)。なお、記録ヘッド3は、全ノズル列(合計8列)のうち、ブラックインクに対応するノズル列を合計で2列有している。
このノズル列カウンタ(=4)とは、記録ヘッド3の全ノズル列(合計8列)のうち、ブラックインクに対応するノズル列の一方に対する検出を行う場合を意味する。
次に、電圧印加器75によって、ノズル基板43と電極部材79との間に電圧を印加する。すなわち、インク滴センサ7をON状態とする(ステップS23)。このとき、例えば電圧が良好に印加されず、エラーが出力された場合(ステップS24のYES)、上記ノズル基板43及び電極部材79間への電圧印加を中止し(ステップS25)、印字可能な状態に戻す(ステップS26)。
一方、良好に電圧が印加された場合、インク滴センサ7によりブラックインクに対応するノズル列の各ノズル47に対してそれぞれ検査を行う(ステップS27)。なお、検査は、図5を参照して説明したようにして実行される。ここで、検査が中断された場合には、上記ステップS25、ステップS26へと進み、上記ノズル基板43及び電極部材79間への電圧印加を中止し、インク吐出状態に戻る。また、ブラックインクに対応するノズル列の一方に対する検出が終了した後、ノズル列カウンタの数値を確認する(ステップS29)。そして、ノズル列カウンタの数値が5で無い場合、すなわちブラックインクに対応する全ノズル列(2列)に対する検出が終了していない場合、ノズル列カウンタをインクリメントし、ノズル列カウンタを5とする(ステップS31)。そして、再びステップS27に戻り、ブラックインクに対応するノズル列のもう一方に対して同様の検査を行う。このようにして、ブラックインクに対応する全ノズル列(合計2列)に対してのみインク滴センサ7による検査を行う。所定のノズル列に対する検査が終了した後、ノズル基板43と電極部材79との間への電圧印加を中止する(ステップS30)。
以上のフローにより、ノズル基板43に形成されたノズル列のうち、ブラックインクに対応する全ノズル列(合計)の各ノズル47における検出ステップが終了する。このとき、インク滴センサ7の記憶装置60には、ブラックインクに対応する全ノズル列における不良ノズルの数、及び位置等のデータが記録される。
続いて、上記インク滴センサ7による検出結果に基づき、クリーニング処理のパラメータを決定するパラメータ決定ステップ、及びこのパラメータに基づいてクリーニング処理を実行するクリーニングステップについて図12に示すフローを参照して説明する。上記検出ステップが終了した後、まずインク滴センサ7のタイマーをリセットすると共に、タイマーをスタート(START)する。
スタート後、センサ検出回数カウンタをインクリメントする(ステップS32)。このセンサ検出回数カウンタは、上記インク滴センサ7の起動回数を管理するためのものであり、上記検出ステップを行う毎に値が1ずつ加算される。本実施形態ではオートクリーニング(ACL)機能を用いる(ON状態)ため、次のフローに進む。なお、オートクリーニング(ACL)機能を用いない場合には、処理を終了して印字可能状態に戻る(ステップS33、ステップS34)。続いて、当該オートクリーニング処理が電源ON時に行われるものでない場合には吸引パラメータの設定を行う(ステップ62のNO)。具体的に、本実施形態では吸引パラメータとして、吸引動作時の強さを抜けノズル(不良ノズル)の数に応じて決定する(ステップS35)。図12に示すように、本実施形態におけるオートクリーニング処理では、制御装置58は、(1)空ワイピング動作(ステップS40)、(2)吸引動作(第一吸引動作:ステップS52)の2種類の処理を選択して行わせる。
(1)空ワイピング動作
空ワイピング動作は、ノズル47が形成された面をワイピング部材WPによって払拭するワイピング動作と、各ノズル47とキャップ部材15とを対向させた状態でノズル47からキャップ部材15へ向けてインク滴を予備吐出させるフラッシング動作と、を組み合わせた一連の動作である。したがって、空ワイピング動作においては、ノズル47の吸引は行われない。つまり空ワイピング動作は、当該ノズル47の吸引を行う動作に比べて、インクの消費量が少なくなる。以下、当該空ワイピング動作を行う場合について説明する。
例えば、ステップS35で抜けノズルが0〜2個の場合において、抜けノズルが隣接する2ノズルの場合には、ACLカウンタが0である場合において、空ワイピングパラメータが設定される(ステップS36〜ステップS38)。抜けノズルが3〜5個の場合においても、同様である(ステップS35、ステップS37、ステップS38)。この場合、ACLカウンタが3以上では無い(ACLカウンタが0である)ため、空ワイピング処理が行われる(ステップS39のNO、ステップS40)。
また、抜けノズルが隣接しない2個の場合、及び抜けノズルが1個の場合(ステップS41のYES)において、例えば初期充填動作(例:カートリッジを初めて装着する時の動作)の直後である場合や、休止動作モード(例:印字動作終了時の動作)を行う場合、ドット抜け非許容モード(例:印字品質を高めに設定する場合のモード)である場合など、所定の動作を行う場合(ステップS42のYES)においても、空ワイピングパラメータがセットされる(ステップS38)。但し、ステップS42のYESを介した処理を行う場合、ACLカウンタが3以上ではない場合(ACLカウンタが例えば0、1、2の場合)に限り、空ワイピングが行われる(ステップS39のNO、ステップS40)。
空ワイピングが行われた後、ACLカウンタを+1だけインクリメントし(ステップS43)、多ノズル抜けフラグ(図13参照)がONになっている場合には当該フラグをOFFにした後、図9に示されるようにステップS61を経由してステップS10に戻る。このようにクリーニング終了後30秒経過してからステップS10に移行することで、クリーニング成功率を大きく向上させることができ、具体的には90%以上の確率でクリーニング動作を実行することができる。
なお、例えば不良ノズルが無い場合(ステップS41のNO)、ACLカウンタが3以上である場合(ステップS39のYES)、抜けノズルが1個又は隣接しない2個の場合であって所定動作に該当しない場合(ステップS42のNO)には、空ワイピングが行われない。この場合においては、ACLカウンタがインクリメントされること無く、多ノズル抜けフラグをOFFにした後(ステップS45)、印字可能な状態に戻す(ステップS80)。
(2)吸引動作
次に、ノズル47の吸引動作を行う場合について説明する。本実施形態では、例えば一般的な強さの吸引力(第一吸引力)で吸引ポンプ16を駆動させる場合の吸引動作と、当該第一吸引力よりも強い第二吸引力で吸引ポンプ16を駆動させる場合の吸引動作とを行う。第二吸引力による吸引動作は、例えばチョーク吸引に対応する。チョーク吸引とは、インク流路の上流側の弁を閉じた状態(チョーク状態)とし、ノズル側から吸引ポンプにより吸引する。そして、記録ヘッド3内を負圧にして気泡を膨張させ、この状態で、弁を開いて気泡を排出させるものである。これにより強力な吸引を行うことができる。なお、第一吸引力での吸引動作よりも、第二吸引力での吸引動作の方が、インクの消費量が多くなる。
例えば、ステップS35で抜けノズルが0〜2個の場合であって抜けノズルが隣接する2ノズルの場合(ステップS36のYES)や、抜けノズルが3〜5この場合には、ACLカウンタが0では無い場合(ステップS37のNO)において、第一吸引パラメータCL1が設定される(ステップS46)。この第一吸引パラメータCL1は、第一吸引力で吸引ポンプ16を駆動させるものである。
抜けノズルが6〜30個の場合においても、第一吸引パラメータCL1が設定される(ステップS46)。更に、抜けノズルが31個以上の場合においては、多ノズル抜けフラグがONになっていない場合、又は、前回第二吸引力で吸引ポンプ16を駆動させてからの経過時間が2880時間を経過していない場合に(ステップS53のNO)、第一吸引パラメータCL1が設定される(ステップS46)。
また、例えば抜けノズルが31個以上の場合において、多ノズル抜けフラグがONになっている場合で、なおかつ前回第二吸引力で吸引ポンプ16を駆動させてからの経過時間が2880時間を経過している場合に(ステップS53のYES)には、第二吸引パラメータCL2が設定される(ステップS54)。
吸引パラメータとしてCL1もしくはCL2が設定された後、ACLカウンタが+1だけインクリメントされる(ステップS47)。このようにACLカウンタがインクリメントされた後に、ACLカウンタの値が3以上であるか否かの判定を行う(ステップS48)。
ACLカウンタが3以上の場合(ステップS48のYES)、ACLカウンタの値が判定される(ステップS55)。ACLカウンタの値が4の場合、ACL失敗カウンタをインクリメント(ステップS56)し、その結果を記憶装置60内に保持する。ACL失敗カウンタの値が15以上であれば、エラー表示をする(ステップS59)。
ACLカウンタの値が3の場合、当該エラーが解除された場合、又は、失敗カウンタの値が15以上でない場合には、処理を中断し、印字可能な状態に戻す(ステップS81、ステップS58)。
また、ステップS48において、ACLカウンタの値が3未満である場合(ステップS48のNO)には、吸引前判定を行う。吸引前判定は、上記吸引パラメータに基づいて吸引処理を実行するに際し、当該吸引動作に必要なインク量がインクカートリッジ6内に残っているか否かについて判定を行っている(ステップS49)。この吸引前判定においてエラーが出力された場合、クリーニング動作を中止する(ステップS50、ステップS51)。エラーが出力される例としては、キャップ部材15内に回収されるインクの廃液が容量オーバー、インクカートリッジ6の不良、インクが終了している等が挙げられる。
一方、上記判定でエラーが出力されなかった場合、記録ヘッド3に対して吸引処理を実行する(ステップS50、ステップS52)。このとき、制御装置58は、記憶装置60内に保持されている吸引パラメータCL1、CL2に基づいて、吸引ポンプ16の吸引力を設定し、吸引動作を実行する。
吸引動作が行われた後、ACLカウンタを+1だけインクリメントし(ステップS43)、多ノズル抜けフラグ(図13参照)がONになっている場合には当該フラグをOFFにした後、図9に示されるようにステップS10に戻る。このように、吸引動作を行うことにより、ACLカウンタが+2増加する(ステップS47、ステップS43)。
以上、空ワイピング動作及び吸引動作について説明したが、本実施形態においては、これらの各クリーニング処理において、上記クリーニングステップの後、検出ステップを再度行い、該検出結果に応じてパラメータ決定ステップ及びクリーニングステップが繰り返されるようになっている。具体的には、クリーニング後に上記検査ステップを実行し、不良ノズルが検出されなかった場合、クリーニング処理が終了となる。クリーニング処理が失敗した場合、上記検出ステップ、パラメータ決定ステップ、及びクリーニングステップが順に繰り返される。これにより、クリーニングにおける失敗の可否を判定することで信頼性を向上している。
例えば、空ワイピング動作については、ノズル抜けが回復しない場合は最大3回繰り返されることになる。空ワイピング動作が3回繰り返される場合の例として、例えば、1ノズルのみ又は隣接しない2ノズルが抜けている場合であって、ステップS42のYESを介する場合が挙げられる。このような場合としては、例えば休止動作に入る際のクリーニングを行う場合などが挙げられる。休止動作に入る際のクリーニングは、印字終了時に行うものであるため、ユーザの作業を妨げることなく行うことができる。
また、空ワイピング動作の後に吸引動作が行われる場合もある。例えば、1回目の検出結果において3〜5ノズルの抜けがあった場合、1回目においてはACLカウンタが0であるため、ステップS37においてYESのルートを辿ることになる。この場合、空ワイピングが行われ、空ワイピング後にはACLカウンタがステップS43においてインクリメントされる。この後、2回目の検出結果において、3〜5ノズルの抜けがあった場合、ACLカウンタの値が1であるため、ステップS37においてはNOのルートを辿ることになる。この場合、ステップS47においてACLカウンタがインクリメントされるが、当該ACLカウンタの値はこの段階では2であるため、ステップS48におけるACLカウンタの判定ではNOのルートを辿ることになる。このため、吸引処理が行われる。このように、空ワイピングでノズル抜けが回復しない場合に吸引動作を行うことにより、効率的にノズル抜けを回復することができる。
なお、吸引動作を1回行った後、ACLカウンタの値が2以上となっている。この状態で再度ステップS32から当該図12に示すフローに入った場合には、例えば吸引パラメータが設定される場合(ステップS46、ステップS54)であっても、その後ステップS47においてACLカウンタがインクリメントされることになる。このインクリメントにより、ACLカウンタの値が3以上となるため、ステップS48のACLカウンタの判定においてステップS55以下のフローを辿ることになる。このため、本実施形態では、吸引動作が2回以上行われることは無い。また、空ワイピング動作を2回行った後においても同様のルートを辿るため、この場合においても吸引が行われることは無い。つまり、吸引動作は1回に限定されるため、インクの消費量を抑えることが出来る。
また、本実施形態では、例えば電源ONの直後に行われるオートクリーニング処理である場合には、図13におけるフローを辿ることになる(ステップ62のYES)。図13に示すように、電源ON時のオートクリーニング処理においては、まず吸引パラメータの決定が行われる(ステップS63)。
ステップS63において、抜けノズルが0〜2個の場合であって隣接する2ノズルが抜けている場合(ステップS64のYES)、抜けノズルが3〜5ノズルである場合、隣接しない2ノズル若しくは1ノズルの抜けがある場合であって初期充填直後の動作などの所定から呼ばれた動作である場合(ステップS68のYES)には、空ワイピングのパラメータがセットされ、空ワイピング動作が行われる(ステップS69、ステップS70)。そして空ワイピング動作終了後は、印字可能な状態に戻す。
ステップS63において、抜けノズルが6〜30個であった場合、第一吸引量での吸引動作が行われるように吸引パラメータがセットされ(ステップS71)、吸引前判定によってエラー判定がない場合(ステップS72、ステップS73のYES)には、第一吸引量での吸引動作が行われる(ステップS74)。吸引動作の後、印字可能な状態に戻る(ステップS78)。エラー判定があった場合、吸引動作が行われることなくエラー状態に落とす(ステップS75)。
ステップS63において、抜けノズルが31個以上であった場合、多ノズル抜けフラグをONにし、時間情報が取得できる印字開始前までクリーニングを保留する。印字開始前の状態において多ノズル抜けフラグがONの場合は、再びオートクリーニング処理を実行させる。このとき前回の第二吸引量での吸引動作からの経過時間を算出し、2880時間以上経過している場合のみ第二吸引量での吸引動作を行う。これは多ノズル抜けの原因がヘッド流路の上流側での気泡成長によるものと判断し、その気泡を排出する目的で吸引量の多い第二吸引量での吸引を行うものである。
一方、前回の第二吸引量での吸引動作からの経過時間が2880時間未満である場合は、第一吸引量での吸引動作を行う。これは多ノズル抜けの原因がヘッド流路の上流側での気泡成長によるものではなく、外部からの衝撃などによる外乱によるものと判断し、吸引量の少ない第一吸引量での吸引を行うものである。
このように、電源ON時であって、かつ、抜けノズルが31個以上である場合にのみ多ノズル抜けフラグがONになり、印字開始前の状態において前回の第二吸引量での吸引動作からの経過時間に応じて吸引量が選択されるため、第二吸引量での吸引動作は限定的に行われることになる。このため、インクの消費量が抑えられることになる。
ところで、本実施形態に係るプリンタ1は、ユーザによる所望のタイミングでマニュアルクリーニングが実行可能となって(第二吸引動作)おり、その場合、上記のフローチャートとは別に、マニュアルクリーニング動作を行う。
例えば、本実施形態ではユーザがマニュアルクリーニングを選択した場合、上記ステップに関係なく、強制的にクリーニングを実行するようにする。この動作により、上述したような細りやアライメント不良に起因する印字不良を解消できるようにしている。
また、マニュアルクリーニングにおいては、クリーニング吸引力の異なる4種類のクリーニングモードがあり、連続でマニュアルクリーニングが実施された場合は、段階的に吸引力を変化させつつ吸引を行うことにより、確実にノズル47の噴射特性を回復させることができるようになっている。
以上のように、本実施形態によれば、インク滴センサ7の検出結果に応じて複数のノズル47を吸引する第一吸引動作を吸引部に行わせる際、吸引部に第一吸引動作を2回以上行わせないようにすることとしたので、インクの消費を抑制することができる。一方で、検出とは独立して複数のノズルを吸引する第二吸引動作を行わせることとしたので、所期の噴射状態を確保することができる。
なお、上記実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。
上記実施形態では、液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(記録装置)に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。
例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置であってもよい。
そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置において、噴射される液体(液状体、流状体)が、例えば乾燥等により増粘し吐出不良を引き起こす可能性があれば、本発明を適用することができる。