JP5694935B2 - ガラスを得るための方法及び得られたガラス - Google Patents

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Description

本発明は、ガラスを得るための方法、及びこの方法により得ることのできるガラス組成物に関する。本発明は詳細には、特に平板ガラスの形をしている、目的物の製造用に意図されたソーダー石灰−シリカガラスに関し、前記組成物は可視光線及び赤外線の高い透過特性を前記目的物に付与する。本発明はまた、前記組成物を選るのを可能にする方法にも関する。
限定するものではないが、本発明はより詳細には、板ガラスの分野、特に溶融金属(特に錫)の浴上に溶融ガラスを注ぎ込むことからなるフロート法によって得ることのできるガラスの分野での利用に関連して説明される。
当該技術の一部の分野では、使用するガラスが可視光及び/又は赤外線について極めて高い透過率、特に90%より高い透過率を有することが不可欠である。これは、例えば、ガラスが光電池又は太陽電池を被覆する基材の形で使用される利用分野においてあてはまる。実際、この場合には、電池の量子効率が可視光線又は赤外線の透過率の極めてわずかな低下によっても大きく影響される可能性がある。
可視光又は赤外線範囲における透過率は一般に、特定のスペクトル分布を考慮に入れ且つ必要に応じて人間の目の感受性を考慮に入れて各波長についての透過率を、スペクトルの特定部分にわたり組み入れて透過係数の形で表現される。可視光範囲内でのガラスの透過率を定量化するためには、ISO標準規格9050:2003に準じて、ひいてはISO/CIE標準規格10526により規定されているD65光源及びISO/CIE規格10527により規定されているC.I.E.1931測色標準観測者を考慮に入れて、3.2mm又は4mmのガラス厚に基づき380〜780nmで計算される光透過係数が、こうして定義され、光透過率と呼ばれて、多くの場合「TL」と略称される。太陽可視光及び赤外線(「近赤外線」とも呼ばれる)を包含する範囲内でガラスの透過率を定量化するためには、ISO標準規格9050に準じそしてガラス厚を3.2mm又は4mmまで低下させて計算されるエネルギー透過係数が定義され、「エネルギー透過率」と呼ばれて、「TE」と略称される。ISO標準規格9050によると、計算のために用いられる波長範囲は300nmから2500nmに達する。しかしながら、以下では、一部の値は、計算を400〜1100nmの波長に限定しながら示される。
90%を超えるTL及びTEの値に達するためには、全酸化鉄含有量を最大限低下させることが知られている。ガラス製造において用いられる大部分の天然原料(砂、長石、石灰石、ドロマイトなど)中に不純物として存在する酸化鉄は、可視光線及び近紫外線範囲の両方で吸収し(第二鉄イオンFe3+による吸収)、そして特に可視光線及び近赤外線で吸収する(第一鉄イオンFe2+による吸収)。通常の天然原料の場合、酸化鉄重量含有量はおよそ0.1%(1000ppm)である。しかしながら、透過率を90%超とするためには、酸化鉄含有量を0.02%又は200ppm未満、更には0.01%(100ppm)未満にまで低減することが求められ、これは特に純粋な原料を選択し最終製品のコストを増大させることを必要とする。
ガラスの透過率を更に一層増大させる目的で、第一鉄含有量を低減して第二鉄含有量を増大させること、したがってガラス中に存在する鉄を酸化させることも公知である。このようにして、FeO重量含有量(第一鉄)と全酸化鉄重量含有量(Fe23の形で表わされる)との比として定義される「レドックス」が可能なかぎり小さい、理想的にはゼロか又は事実上ゼロであるガラスが目標とされる。この数字は0〜0.9の間で変動することができ、レドックスが0は完全に酸化されたガラスに相当する。
およそ1000ppm以上の通常の酸化鉄含有量のガラスは、本来およそ0.25のレドックスを有する。一方で、特に200ppm未満、あるいは更には150ppmといった少量の酸化鉄を含有するガラスは、0.4超、あるいは更には0.5超の高いレドックスを有するという自然な傾向をもつ。この傾向は恐らくは、酸化鉄含有量に応じた鉄の酸化還元平衡の変位に起因する。
酸化鉄を可能なかぎり多く酸化するため、さまざまな解決法が提案されてきており、これらは、0.2未満の非常に低いレドックスを得るのに貢献する。例えば米国特許第6844280号明細書から、ガラスに酸化セリウム(CeO2)を添加することが公知である。しかしながら、酸化セリウムは高価であり、ガラスの透過率が紫外線の吸収後に著しく下降する「ソラリゼーション」と呼ばれるプロセスの原因となり得る。従来ガラス清澄剤として使用され鉄を酸化する特殊な特性を有する酸化物である酸化アンチモン(Sb23)又は酸化ヒ素(As23)を添加することも公知である。Sb23の使用については、例えば、米国特許出願公開第2006/249199号明細書又は仏国特許出願第2317242号明細書に記載されている。しかしながら、これらの酸化物は、フロートガラス法に適合しないものであることがわかっている。錫浴を酸化しないために必要な還元条件下では、これらの酸化物の一部が揮発し、その後、板ガラスが形成されるにつれてその上に凝縮し、望ましくない曇りを生じさせると考えられる。酸化バナジウム及び酸化マンガンも同様に鉄を酸化する目的で提案されてきた。
化学的手段によるガラスの酸化は、高いコストがかかり、及び/又はフロートガラス法に適合しないものである。その上、非常に酸化されたガラスの生産は、炉の寿命を著しく短縮することが明らかになっている。非常に酸化されたガラス浴(ひいては赤外線の透過率が高いもの)の非常に高い放射伝導度は、はるかに高い炉床温度を生じさせる。その結果、炉床を構成する耐火物の腐食が増大し、炉の寿命が短くなる。
本発明の目的は、化学的酸化手段を用いることなく中間のレドックスを有する超透明なガラスを得ることができるようにするより低コストの方法を提供することにある。目的はまた、低い酸化鉄含有量及び中間のレドックスを有する板ガラスを提供することにもある。
このために、本発明が対象とするものは、ガラスを得るための連続的方法であって、
・複数のバーナーがそれに沿って配置されている炉の上流側で原料を投入する工程、
・溶融ガラスの塊を得る工程、
・次に前記溶融ガラスの塊を炉の更に下流側に位置するゾーンに導く工程であって、このゾーンの領域内に配置された少なくとも1つのバーナーに化学量論量を超える量の酸化剤を供給する工程、
・次に下記の成分を下記の重量範囲内の量で含む化学組成を有する板ガラスを形成する工程、
SiO2 60〜75%
Al23 0〜10%
23 0〜5%、好ましくは0
CaO 5〜15%
MgO 0〜10%
Na2O 5〜20%
2O 0〜10%
BaO 0〜5%、好ましくは0
SO3 0.1〜0.4%
Fe23(全鉄分) 0〜0.015%
レドックス 0.1〜0.3
を含む方法である。
本明細書全体において、百分率は重量百分率である。
溶融炉は一般に、耐火物、一般には酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化クロムなどのセラミクス、又は酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化ケイ素の固溶体で構成されている。炉は一般に、炉の側壁を形成する垂直材により支持されているアーチ、前方壁と後方壁、及び炉床を有する。連続溶融法においては、原料を投入するためのゾーンに対応する炉の上流側部分を識別でき、そして次に更に下流側のゾーン、すなわち、原料が溶融ガラスへと変えられる融解ゾーン、次に溶融ガラスの浴から気体混入物が除去される清澄ゾーン、次いでガラスが徐々に成形温度まで冷却される冷却ゾーン、そして最終的にガラスがその成形温度に保持されるゾーンであって、成形ゾーンの手前の、熱的条件調節ゾーンを識別することができる。成形ゾーンは炉の一体部分ではない。
バーナーは、燃料(一般的には天然ガス又はプロパンなどの気体燃料、又は燃料油などの液体燃料)の少なくとも1つのインジェクタと、酸化剤(一般的には空気又は酸素)用の少なくとも1つのインジェクタの、任意の組合せを意味するものと理解され、この組合せは燃料と酸化剤での燃焼によって火炎を発生させることができるように配置される。
発明者らは、炉の下流側部分において酸化剤が化学量論を超えている燃焼によって、以前は得ることのできなかったガラスであって、酸化鉄が少なく中間的レドックスを有するガラスを得ることが可能となることを実証した。炉内では、自由表面積に対してガラス体積が大きいことを考慮に入れると、ガラス表面の領域により多くの酸素を含んだ雰囲気を維持することによってガラス浴を酸化させることは不可能であると普通に考えられることから、この結果はきわめて意外であった。
炉は、その側壁領域に配置された複数のオーバーヘッドバーナーを有するのが好ましく、前記バーナーの各々は炉の軸線に対して横断方向に火炎を発生させることができる。ここで、「オーバーヘッドバーナー」とは、溶融ガラス浴より上に位置し輻射によりガラス浴を加熱することのできる火炎を発生させるバーナーを意味するものと理解される。同様に、炉がその他のタイプのバーナーを有すること、特に伝導によりガラス浴を加熱できるバーナー、例えばアーチに位置し及び/又は前方壁もしくは後方壁に位置してその火炎がガラス浴に影響を与えるバーナー、更には、火炎をガラス浴の内部で発生させるという意味において、浸漬型バーナーを有することも可能である。
オーバーヘッドバーナーは好ましくは、上流側から下流側に規則的に配置され、及び/又は互いに向き合ったバーナー対の形で配置され、各対のバーナーは、既定の時間に一方の側壁の領域に配置されたバーナーのみが火炎を発生させるように交互に作動する。
このタイプの炉は、時として「横断方向バーナー炉」と呼ばれる。バーナー対の作動を交互にさせることで、燃焼ガス及び酸化剤を強制的に通過させる再生器を使用することが可能になる。耐火性部品の積重体で構成することにより、再生器は燃焼ガスが放出した熱を貯蔵し、この熱を酸化剤ガスに戻すことができる。交互に作動する第1の段階において、作動していないバーナー(これらのバーナーは第1の壁の領域に配置されている)の領域内に位置している再生器が、第1の壁に対面する第2の壁の領域に位置しているバーナーによって発生された火炎により放出されるエネルギーを貯蔵する。交互に作動する第2段階では、第2の壁の領域に配置されたバーナーが作動を停止する一方、第1の壁の領域に配置されたバーナーが作動する。再生器内に入ってくる燃焼ガス(この場合一般的には空気)は、次いで予熱されて、これによって実質的なエネルギーの節約が可能になる。
溶融を最適化するため、炉は、好ましくは6〜8対のバーナーを有し、最も下流側に位置する2対又は3対のバーナーあるいは更に下流側に位置する最後のオーバーヘッドバーナー対のみに、化学量論量を超える量の酸化剤が供給される。より上流側に位置するその他のバーナーには好ましくは、化学量論量又は化学量論量より少ない量の酸化剤が供給される。
好ましくは、炉は、上流側から下流側に向かって、ガラス溶融ゾーンそして次に清澄ゾーンを画定する第1のチャンバ、そして次に溶融ガラスのための冷却ゾーンを画定する第2のチャンバを有し、全てのバーナーは第1のチャンバの領域内に配置される。一般に、制限部分と呼ばれより狭い横断面を有するチャンバの形をした移行ゾーンが、前述の2つのチャンバを分離している。
清澄というのは、特に一部の原料の脱炭酸ガス反応のために、ガラス塊に取り込まれている気体混入物を除去することを意味するものと理解される。上述のタイプの炉においては、清澄ゾーンは炉の第1チャンバの下流側に位置する。
化学量論量を超える量の酸化剤が供給されるバーナーは、この場合好ましくは、ガラス清澄ゾーンの領域内に位置する。実際、ガラスの酸化が最も効果的であるのは、この清澄ゾーンである。
バーナーには、好ましくは空気と燃料が供給される。酸素も、また任意のタイプの酸素富化空気も、使用してよい。酸素は使用コストがより高いが、再生器を使用しないで済ませるのを可能にする。
燃料は、好ましくは天然ガス又は燃料油又はそれらの任意の混合物から選択される。燃料油を使用することが、より有利なレドックスを得ることができるようにするため、好ましい。
化学量論量を超える量の酸化剤は好ましくは、酸素対燃料のモル比が、1.05以上、特に1.1以上、及び/又は1.5以下、特に1.3以下となるようなものである。
ガラス浴上の酸素分圧は、好ましくは4〜7%である。4%より低い場合、レドックスを制御することが困難であり、7%を超えると、エネルギー消費量の問題が発生する。酸素分圧でのレドックスの制御は、以下の化学反応にしたがってなされる。
2+4Fe2+ → 2O2-+4Fe3+
炉内部の熱対流現象は、ガラスが循環する2つの帯(又は流れ)を作り出し、溶融ゾーンの領域内の第1の帯は原料導入用ゾーンからホットポイントまで達して、ここで高温のガラス表面は原料導入用ゾーンまで移動し、第2の循環帯はホットポイントから炉の出口まで達して、清澄ゾーン及び冷却ゾーンの領域内に延在し、ここで表面ガラスの一部がホットポイントへ戻るために炉床へ潜り込む。これらの帯の存在は、ガラスの化学的均一性に大きく貢献する。高い収量を確保するためには、各帯の長さを厳密に制御することが必要である。一般に、鉄含有量が少ないガラスを融解させる場合、標準的な鉄含有量の溶融ガラスの場合と比べて炉床温度は上昇する。このため、第1の帯は短くなり、第2の帯が伸びて、これによりガラス中の残留SO3の量に付随する泡立ちの問題がひき起こされかねない。
意外にも、標準的な鉄含有量の溶融ガラスの場合よりも高い、高酸素分圧を保つことにより、第2の循環帯の伸長を抑えて、増大した生産安定性及びより良好な収量を得ることが可能となる。
板ガラスは好ましくは、錫浴上に浮かばせることによって形成される。引き抜き法、引落し法、ローリング法、フルコール法などのその他のタイプの形成方法を使用してもよい。
炉内に投入される原料は、好ましくは粉末固体材料である。砂、炭酸ナトリウム、石灰石、ドロマイト及び長石を、特に挙げることができる。しかしながら、ドロマイトは多くの場合不純物として酸化鉄を含み、したがって本発明の枠内では好ましくは用いられない。
硫黄(SO3)は、好ましくは硫酸ナトリウム又は硫酸カルシウム(石こうと呼ばれる)として添加される。融解を加速するために、硫酸塩と一緒にコークスなどの還元剤を添加することが好ましい。添加される硫酸塩の量は、SO3の重量百分率として表して、好ましくは0.2〜0.6%、特に0.3〜0.5%、更には0.4〜0.5%である。コークスの量は、有利には0〜1000ppm、更には50〜120ppm(1ppm=0.0001%)、特に60〜80ppmである。鉄の酸化を促進するために、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩を導入することも可能である。
好ましくは、板ガラスは、下記の成分を下記の重量範囲内の量で含む化学組成を有する。
SiO2 60〜75%
Al23 0〜10%
23 0〜5%、好ましくは0
CaO 5〜15%
MgO 0〜10%
Na2O 5〜20%
2O 0〜10%
BaO 0〜5%、好ましくは0
SO3 >0.2〜0.4%
Fe23(全鉄分) 0〜0.015%
レドックス 0.2〜0.30
本発明の対象はまた、下記の成分を下記の重量範囲内の量で含む化学組成を有する板ガラスでもある。
SiO2 60〜75%
Al23 0〜10%
23 0〜5%、好ましくは0
CaO 5〜15%
MgO 0〜10%
Na2O 5〜20%
2O 0〜10%
BaO 0〜5%、好ましくは0
SO3 0.1〜0.4%
Fe23(全鉄分) 0〜0.02%
レドックス 0.15〜0.3
本発明による方法は、実際に、このような板ガラスを得るために特に適合しており、発明者らの知るかぎり、公知の方法ではこのような製品を得ることはできない。
このレドックス範囲は、炉の寿命を長く保つ一方で、非常に満足のいく光学特性を得ることを可能にする。
ガラス組成中に存在する鉄は、原料から不純物として、又はガラスを着色するために意図的に行なわれる添加の結果として、もたらされることがある。鉄はガラスの構造中に第二鉄イオン(Fe3+)及び第一鉄イオン(Fe2+)の形で存在することが知られている。Fe3+イオンの存在はガラスに非常に薄い黄色の着色を付与し、紫外線の吸収を可能にする。Fe2+イオンの存在はより顕著な青緑色の着色を与え、赤外線の吸収を誘発する。その2つの形態の鉄の含有量を増加させると、可視スペクトルの端部における放射線の吸収が増強されるが、この効果は光透過率の損失をもたらす。
本発明において、Fe23含有量(全鉄分)は好ましくは、ガラスの光学透過率を増大させるように、0.015%未満、更には0.012%以下、特に0.010%以下である。Fe23含有量は、好ましくは、ガラスのコストを増加させないように、0.005%以上、特に0.008%以上である。
レドックスは、好ましくは0.15以上、特に0.2〜0.30、とりわけ0.25〜0.30である。非常に低いレドックスは、実際のところ炉の寿命の短縮を助長する。
実際の形態を問わず、含有量がSO3として表わされる硫黄が組成中の存在することは、一般に、清澄剤として硫酸塩を使用することの結果である。硫酸塩、特にナトリウムの硫酸塩又はカルシウムの硫酸塩(石こう)が、原料と共に、一般にはコークスなどの還元剤と一緒に、添加される。ガラス浴内でこれらの硫酸塩が分解することにより、ガラスを清澄すること、すなわち気体混入物を除去することが可能となる。硫酸塩を添加すると、溶融を著しく加速することができ、すなわちより溶解しにくい材料(一般には砂)がガラス浴中で完全に溶解するのに必要な時間を短縮することができる、ということも観察された。したがって、非常に大きい溶融速度で最低コストでガラスを得るためには、SO3含有量は0.2%超であるのが好ましい。一方で、0.4%を超えると、有意の着色効果をもつ硫化物が現れる危険があり、また気泡あるいは更には泡立ちが生じる危険がある。ガラス中のSO3含有量は好ましくは0.25%以上、及び/又は0.35%以下、特に0.30%である。
本発明によるガラスにおいて、シリカSiO2は一般に以下の理由で狭い限界内に保たれる。75%を超えると、ガラスの粘度及びその失透する能力が大幅に増大し、このため溶融して溶融錫の浴上へ流し込むことが困難になる。60%未満、特に64%未満では、ガラスの加水分解耐性が急速に減少する。好ましい含有量は65〜75%、特に71〜73%である。
アルミナAl23は、ガラスの加水分解耐性に特に重要な役割を果たす。その含有量は好ましくは0〜5%、特に0〜3%である。本発明によるガラスを高温多湿環境で用いようとする場合、アルミナ含有量は好ましくは1%以上、更には2%以上である。0.5〜1.5%の含有量が最適である。
アルカリ金属酸化物のNa2OとK2Oは、ガラスの融解を促進し、高温でのその粘度を標準的ガラスのそれに近いものに保つために調整することを可能にする。K2Oは最高10%まで使用してよく、これは、この割合を超えると組成物のコスト上昇という問題が提起されるからである。更に、K2Oの割合を増加させることは本質的にNa2Oを犠牲にして初めてなされるものであり、これは粘度の上昇の一因となる。重量百分率で表わしたNa2OとK2Oの含有量の合計は、好ましくは10%以上であり、有利には20%未満である。これらの含有量の合計が20%を超える場合、又はNa2Oの含有量が18%を超える場合、加水分解耐性は大幅に減少する。本発明によるガラスは好ましくは、高コストを理由として、酸化リチウムLi2Oを含まない。10〜15%、特に13.5〜14.5%のNa2O含有量が好ましい。K2O含有量は通常0〜5%、好ましくは1%未満、更には0.5%未満である。
アルカリ土類酸化物は、ガラスの粘度を加工条件に適合させることを可能にする。
7〜12%、特に7〜10%、更には8〜9%のCaO含有量が好ましい。
MgOは、最高約10%まで使用してよく、それを除外した分は、少なくとも部分的には、Na2O及び/又はSiO2含有量の増加により補償することができる。好ましくは、MgO含有量は5%未満である。低いMgO含有量は更に、ガラスを溶融するのに必要な原料の数の削減を可能にする。MgO含有量は好ましくは1〜5%、特に2〜5%である。意外にも、エネルギー透過の最高の結果は、1〜5%、特に2.5〜4.5%のMgO含有量について得られた。発明者らは、ガラスのレドックスに対するMgO含有量の意外な効果を実証することができ、MgOによりCaOを徐々に置換すると前記レドックスを低下させる効果、ひいてはエネルギー透過率を増大させる効果が得られた。CaO含有量の低下は更に、ガラスが失透する危険性を低減するのを可能にし、形成のマージンを広げるのを可能にして形成をより安定したものにすることができる。
BaOは、ガラスの粘度に対する影響がCaOやMgOよりはるかに小さく、その含有量は本質的に、MgO、そして特にCaOの、アルカリ金属酸化物を犠牲にすることになる。BaOを増加させることは、低温でのガラスの粘度の上昇を助長する。好ましくは、本発明によるガラスはBaOを含まず、酸化ストロンチウム(SrO)も含まない。これらの元素はコストが高い。
本発明によるガラスは好ましくは、0〜0.1%、特に0.01%〜0.05%のTiO2含有量を有する。
本発明による好ましい組成を下記に示す。
SiO2 60〜75%
Al23 0〜10%
23 0〜5%、好ましくは0
CaO 5〜15%
MgO 0〜10%
Na2O 5〜20%
2O 0〜10%
BaO 0〜5%、好ましくは0
SO3 >0.2〜0.4%
Fe23(全鉄分) 0〜0.015%
レドックス 0.2〜0.30
本発明によるその他の好ましい組成を下記に示す。
SiO2 65〜75%
Al23 0〜3%
CaO 7〜12%
MgO 2〜5%
Na2O 10〜15%
2O 0〜5%
SO3 0.1〜0.3%
Fe23(全鉄分) 0〜0.015%未満
レドックス 0.1〜0.3
好ましくは、このような組成を有する板ガラスは、4mmの厚みについて、91%以上の光透過率、300nmから2500nmに及ぶ波長範囲にわたって90.2%以上のエネルギー透過率、そして太陽電池の量子効率が最大となる範囲に対応する400から1100nmに及ぶ波長範囲にわたって90.5%以上のエネルギー透過率を有する。
本発明によるその他の好ましい組成を下記に示す。
SiO2 65〜75%
Al23 0〜5%
CaO 7〜12%
MgO 1〜5%
Na2O 10〜15%
2O 0〜5%
SO3 0.2〜0.4%
Fe23(全鉄分) 0〜0.015%未満
レドックス 0.1〜0.3
好ましくは、このような組成を有する板ガラスは、4mmの厚みについて、91.2%以上の光透過率、300nmから2500nmに及ぶ波長範囲にわたって90.0%以上のエネルギー透過率、そして400nmから1100nmに及ぶ波長範囲にわたって90.5%以上のエネルギー透過率を有する。
前記ガラス組成物は、特に原料中に含まれている不可避的な不純物とは別に、小さな割合(最高1%)のその他の成分、例えばガラスの溶融又は清澄を助ける作用物質(Clなど)、又は更に炉を建設する役目を果たす耐火物の溶解に由来する元素(例えばZrO2)、を含んでもよい。すでに述べた理由から、本発明による組成物は、Sb23、As23又はCeO2などの酸化物を含まないことが好ましい。
本発明による組成物は、すでに言及したもの以外の可視光線又は赤外線(特に380〜1000nmの波長について)を吸収する作用物質を含まないことが好ましい。特に、本発明による組成物は、次に挙げる作用物質、すなわち、CoO、CuO、Cr23、NiO、MnO2及びV25などの遷移元素の酸化物、CeO2、La23、Nd23又はEr23などの希土類の酸化物、あるいは更に、Se、Ag及びCuなどの元素状態の着色剤、を含有しない。その他の作用物質の中で、元素Sc、Y、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb及びLuの酸化物は、排除するのが好ましい。これらの作用物質には、きわめて多くの場合、時としてほぼ数ppm以下(1ppm=0.0001%)の非常に低い濃度で現われる、望ましくない非常に強力な着色作用がある。したがって、それらの存在は、ガラスの透過率を非常に大きく低下させる。
本発明による板ガラスは好ましくは、3.2mmの厚みについては、少なくとも90%、特に90.5%、あるいは更には91.0%の、光透過率TLを有する。4mmの厚みについての光透過率は、好ましくは91%以上、特に91.2%以上である。有利には、本発明による板ガラスは、やはり3.2mmの厚みについて、最大で91%のエネルギー透過率TEを有する。4mmの厚みについては、エネルギー透過率は好ましくは90.2%以上である。同じ厚みについて、400nmから1100nmに達する波長範囲について計算されたエネルギー透過率は、好ましくは90.5%以上である。
本発明の目的は、最終的には、光電池、太陽電池、太陽エネルギーを集めるための平面又は放物面鏡において、あるいは更にLCD(液晶スクリーン)タイプの表示スクリーンのバックライト用ディフューザーのために、本発明による板ガラスを使用することである。本発明による板ガラスはまた、内装用途(間仕切り、備え付け家具など)用として、又は家庭用電気製品(冷蔵庫の貯蔵棚など)で、又は建物建築又は自動車の分野におけるグレージング)のために、利用してもよい。それらはまた、有機エレクトロルミネッセントダイオードに基づくスクリーン又はフラットランプにおいて利用してもよい。
一般に、本発明の目的は、本発明による板ガラスを少なくとも1枚含む、光電池、太陽電池、太陽エネルギーを集めるための平面又は放物面鏡、LCDタイプの表示スクリーンのバックライト用ディフューザー、有機エレクトロルミネッセントダイオードに基づくスクリーン又はフラットランプでもある。
本発明による板ガラスは有利には、少なくとも1つの薄い透明な導電性層及び/又は反射防止コーティングで被覆されていてよく、好ましくは第1の面が薄い透明な導電性層そして第2の面が反射防止コーティングによって被覆されていてよい。用途に応じて、その他の層又は多重層が板ガラスの面の1つに被着されていてもよい。光触媒層、自己クリーニング層又は汚染防止層が存在してもよい。熱的機能を有する層又は多重層、特に太陽光遮蔽層又は低放射率層、例えば誘電層により保護された銀層を含む多重層、が存在してもよい。更に、ミラー層、特に銀ベースのミラー層、又はラッカー又はエナメルなどの装飾層が存在してもよい。
本発明による板ガラスは、単一のグレージングに取り込まれてもよく、気体が充填された空間を提供する複数の板ガラスを含み得るという意味で、多重グレージング(特に二重又は三重グレージング)に取り込まれてもよい。グレージングはまた、積層及び/又は強化及び/又は硬化及び/又は湾曲されていてもよい。
光電池分野の用途の場合には、電池のエネルギー収量を最大限にするために、以下のようないくつかの改善を、追加的に又は代替的に施してもよい。
・基材を、例えばSnO2:F、SnO2:Sb、ZnO:Al、又はZnO:Gaをベースとする、少なくとも1つの薄い透明な導電性層で有利に被覆してもよい。これらの層は、化学気相成長(CVD)又は陰極スプレー被着、特に磁場により支援されるもの(マグネトロン法)、などのさまざまな被着方法により基材上に被着することができる。CVD法では、ハロゲン化物又は有機金属前駆体を気化させ、キャリアガスにより高温ガラスの表面へ輸送して、そこでそれらを熱の作用下で分解して薄層を形成する。CVD法の利点は、板ガラスを製造する方法を実施する際に、とくにこれがフロート法からなる場合に、それを実施することが可能であるという点にある。こうして、板ガラスが錫浴上にあるとき、錫浴を離れるとき、又は徐冷炉内にあるときに、すなわち機械的応力を除去するために板ガラスを徐冷している時点で、層を被着することが可能になる。それを透明な導電性層でコーティングし、次にはこの導電性層自体を、非晶質又は多結晶シリコンベースの半導体、黄銅鉱(特にCIS−CuInSe2タイプ、又はCIGS−CuInGaSe2タイプ)、又はCdTeでコーティングして、光電池を形成することができる。これは特に、非晶質シリコン、CIS又はCdTeをベースとする薄い第2の被膜で構成することができる。この場合、CVD法の別の利点は、より大きい粗度が得られ、それが光捕捉現象を生じさせ、そしてそれが半導体により吸収される光子の量を増加させる、という点にある。
・基材の少なくとも1つの面を反射防止コーティングで被覆してもよい。このコーティングは、1層(例えば低屈折率の多孔質シリカをベースとするもの)又は複数の層を含むことができる。後者の場合、高屈折率と低屈折率の層が交互になっていて低屈折率層で終えている誘電材料をベースとする多重層が好ましい。それは特に、国際公開第01/94989号パンフレット又は国際公開第2007/077373号パンフレットに記載された多重層で構成することができる。反射防止層はまた、最終層として、国際公開第2005/110937号パンフレットで教示された、光触媒酸化チタンをベースとする自己クリーニング汚染防止層を含んでいてもよい。経時的に長持ちする少ない反射も得ることができる。光電池分野の用途においては、反射防止層を外側面上に、すなわち大気と接触する面に被着させる一方で、導電性透明層を内側面、つまり半導体側に被着させる。
・基材に表面構造を持たせてもよく、例えば国際公開第03/046617号パンフレット、国際公開第2006/134300号パンフレット、国際公開第2006/134301号パンフレット、又は国際公開第2007/015017号パンフレットに記載されているように、表面模様(特にピラミッド形)を持たせてもよい。これらの表面構造加工の効果は一般に、ガラスをロール成形することによって得られる。
光電池又は太陽電池の分野では、本発明による板ガラスは好ましくは当該電池のための保護カバーを構成する。板ガラスは、任意のタイプの技術において、すなわち単結晶又は多結晶シリコンウェハー、非晶質シリコン、CdTe又はCIS(セレン化インジウム銅、CuInSe2)又はCIGS(CuInGaSe2)の薄層、において利用してもよい。
本発明を、以下の非限定的な例により説明する。
粉末原料(主として砂、炭酸ナトリウム、石灰石及びドロマイト)を、7対のバーナーを含む横断方向バーナーと再生器を備えた炉に投入した。原料の純度は、酸化鉄含有量(Fe23)がわずか0.0115%であるようなものであった。使用した清澄系は、硫酸ナトリウム/コークスの組み合わせであった。バーナーは、燃料として燃料油を用い、酸化剤として空気を用いた。ガラス浴を得、これを次に、通常「フロート法」の名で知られる方法にしたがって3.85mmの板ガラスを得るために、溶融錫の浴の上に流し込んだ。
比較例によると、7対のオーバーヘッドバーナーに化学量論混合物を供給した。得られたレドックスは0.42であり、硫酸塩含有量は0.25%SO3であった。ISO標準規格9050にしたがって計算したエネルギー透過率(TE)は、3.85mmの厚みについて、90.0%であった。
本発明による例においては、最も下流側に位置する3対のバーナーに化学量論量を超える量の酸化剤を供給して、O2/燃料のモル比が1.1となるようにした。得られた板ガラスのレドックスは0.27まで低下し、それとともにエネルギー透過率は90.7%に上昇し、あるいは更にエネルギー透過率が90.9%の場合については0.25にまで低下した。ホットスポットの領域の炉床温度は1350℃未満にとどまり、これが炉の寿命に影響を及ぼすことはなかった。
試験した組成を下記の表1に提示する。濃度は重量百分率で表わされている。光学特性は、3.85mmの厚みについて以下の通りである。
・エネルギー透過率(TE): ISO標準規格9050:2003にしたがって計算したもの。
・全光透過率(TL): ISO標準規格9050:2003の意義の範囲内において380nmと780mmの間で計算され、その際にISO/CIE標準規格10526で規定された通りのD65光源とISO/CIE標準規格10527により規定された通りのC.I.E.1931測色標準観測者を考慮に入れたもの。
Figure 0005694935
例C1は、従来の製造方法によって得た、したがって超化学量論酸素で運転していないバーナーを用いて得た、比較例である。
下記の表2は、レドックスに対するMgO含有量の作用を説明するものである。
Figure 0005694935

Claims (11)

  1. ガラスを得るための連続的方法であって、
    ・複数のバーナーがそれに沿って配置されている炉の上流側で原料を投入する工程、
    ・溶融ガラスの塊を得る工程、
    ・次に前記溶融ガラスの塊を炉の更に下流側に位置するゾーンに導く工程であって、このゾーンの領域内に配置された少なくとも1つのバーナーに化学量論量を超える量の酸化剤を供給する工程、
    ・次に下記の成分を下記の重量範囲内の量で含む化学組成を有する板ガラスを形成する工程、
    SiO2 60〜75%
    Al23 0〜10%
    23 0〜5%
    CaO 5〜15%
    MgO 0〜10%
    Na2O 5〜20%
    2O 0〜10%
    BaO 0〜5%
    SO3 0.1〜0.4%
    Fe23(全鉄分) 0〜0.015%
    レドックス 0.1〜0.3
    を含む、ガラスを得るための連続的方法。
  2. 前記炉が、当該炉の側壁の領域に配置された複数のオーバーヘッドバーナーを有し、前記バーナーの各々が前記炉の軸線に対して横断方向に火炎を発生させることができる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記オーバーヘッドバーナーが上流側から下流側に規則的に配置され、且つ互いに向き合ったバーナー対の形で配列されていて、各対のバーナーは、所定の時間に前記側壁のうちの一方のもの領域に配置されたバーナーのみが火炎を発生させるように交互に作動する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記炉が6〜8対のバーナーを有し、最も下流側に位置する2対又は3対のバーナーあるいは最も下流側に位置する最後のバーナー対のみに、化学量論量を超える量の酸化剤を供給する、請求項3に記載の方法。
  5. 前記炉が、上流側から下流側に向かって、ガラス溶融ゾーンを確定しそして次に清澄ゾーンを画定する第1のチャンバ、そして次に溶融ガラスのための冷却ゾーンを画定する第2のチャンバを有し、全てのバーナーを第1のチャンバの領域内に配置する、請求項1〜4の一つに記載の方法。
  6. 化学量論量を超える量の酸化剤が供給される前記バーナーが前記ガラス清澄ゾーンの領域内に位置している、請求項5に記載の方法。
  7. 前記バーナーに空気と燃料とを供給する、請求項1〜6の一つに記載の方法。
  8. 前記燃料を天然ガス及び燃料油又はそれらの混合物から選択する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記化学量論量を超える量の酸化剤が、酸素対燃料のモル比が1.05〜1.5であるようなものである、請求項1〜8の一つに記載の方法。
  10. 前記板ガラスを錫浴上に浮かばせることにより形成する、請求項1〜9の一つに記載の方法。
  11. 前記ガラス浴の上の酸素分圧が4〜7%である、請求項1〜10の一つに記載の方法。
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