以下に添付図面を参照して、本発明に係る紙葉類幅寄せ機構の好適な実施例を詳細に説明する。以下では、本発明に係る紙葉類幅寄せ機構が紙幣処理装置内で利用される場合について説明する。
図1は、本実施例にかかる紙幣処理装置1の内部構成を模式的に示す縦断面図である。紙幣処理装置1は最上部に操作表示部2を有し、主として前面上部の分類集積部100、前面下部の紙幣結束部200、背面の搬送部300から構成されている。
まず、分類集積部100について説明する。分類集積部100の前面のほぼ中央部に、処理すべき紙幣を受け入れる入金口101が設けられ、ここに投入された金種の混在する紙幣が繰り出しローラ102,103により繰り出され、搬送路104に沿って搬送される。
搬送路104の途中には識別部105が設けられ、ここで金種、正損、真偽、表裏等の識別を行う。識別部105は、同じ金種でデザインが相違する新旧券を識別することもできる。また識別部105は、搬送路104上を搬送されて識別部105を通過する紙幣をスキャンして紙幣画像を生成したり、紙幣の大きさや搬送路104上における紙幣の位置を認識したりする機能を有している。
具体的には、例えば識別部105が搬送路104の幅方向に配されたラインセンサを備え、このラインセンサによって通過する紙幣表面をスキャンして画像データを生成する。この画像データから、各種の情報を抽出して解析することによって、金種等の識別を行うとともに、紙幣の大きさ、搬送路104上の紙幣の位置、搬送状態等を特定することができる。
識別部105を通過した紙幣が搬送される搬送路104上に、本発明にかかる紙葉類幅寄せ機構10が設けられる。紙葉類幅寄せ機構10は、搬送される紙幣の位置を搬送方向と垂直な方向に幅寄せする機能を有する。紙葉類幅寄せ機構10は、紙幣処理装置1の搬送路104の一部を構成するように、内部に紙幣の幅寄せを行うための搬送路を有している。紙葉類幅寄せ機構10は、搬送路104上の紙幣位置に関する情報を識別部105から取得して、この情報に基づいて紙幣の幅寄せを行う。なお、幅寄せが必要な紙幣のみを幅寄せし、幅寄せが不要な紙幣はそのまま搬送する。幅寄せが必要な紙幣とは、識別部105による識別結果に基づいて集積部111〜115に搬送されて集積される紙幣であり、かつ搬送路104上の位置が搬送方向と垂直な方向にずれており、所定位置に移動させる幅寄せが必要な紙幣である。
紙葉類幅寄せ機構10は、識別部105から取得した情報を利用するため、幅寄せに必要な情報を検出するための専用のセンサ等を別途設ける必要がない。また紙葉類幅寄せ機構10は、識別部105の直後に設けられているため、直前に通過した識別部105からの情報に基づいて正確に紙幣の幅寄せを行うことができる。さらに全ての紙幣が通過する識別部105の直後に設けられているため、複数の集積部がある場合でも1つの紙葉類幅寄せ機構10によって全ての紙幣の幅寄せを行うことができる。紙幣の幅寄せの方法詳細については後述する。
搬送路104は表裏反転部107の先で分岐されており、識別部105による識別の結果に基づいて、損券、偽券等はリジェクト紙幣としてリジェクト紙幣集積部106に集積される。一方、正券で真券のものは、表裏反転部107において、識別部105による表裏判定結果に応じ、すべての紙幣の表裏面が一致するようにされ、さらに判定された金種等に基づいて結束対象紙幣を収納する集積部111〜115のいずれかに集積される。これらの各集積部111〜115はそれぞれ集積用のステージ111a〜115aを有しており、これらは図示しない駆動手段で昇降可能とされている。
図1においては、各集積部111〜115は集積可能な状態として図示されている。すなわち、上側約2/3に設けられた壁部材111b〜115bの下端位置にステージ111a〜115aが位置しているため、搬送された紙幣は壁部材111b〜115bに当たって停止し、集積される。この際、紙幣の飛び出しを防止し、安定な集積を可能とするために、集積量に応じて回動可能な押さえ板111c〜115cが設けられている。なお、ステージ111a〜115a及び壁部材111b〜115bには後述する搬送部のハンドが自由に通過できる切り欠きが形成されている。一方、結束対象外の紙幣はさらに搬送され、外部集積部121及び122に集積される。これらの集積部111〜115、及び外部集積部121及び122に対して、集積すべき対象を種々設定することができる。
操作表示部2の下には結束対象となったものの、結束可能枚数に達しなかった端数紙幣を返却するための端数紙幣返却部130が設けられており、端数紙幣返却トレイ131の下面に設けられた突き当て部材132の先端部132aが背面より押されることにより、端数返却トレイ131が前進し、前面に設けられたシャッタ133が開いて一点鎖線で示された位置まで進み、端数紙幣を取り出すことができる。
次に、紙幣結束部200について説明する。分類集積部100の下に設けられた紙幣結束部200は、所定枚数(通常100枚)に達した分類・集積後の紙幣に紙の帯を巻回させ帯封を行う部分である。
集積部111〜115において集積枚数が所定枚数に達した紙幣は、後述する搬送部300によりセット部201に移送されて挟持される。挟持された紙幣の所定箇所に帯封テープを巻回させるための回転機構202が設けられている。帯封テープ集積部203から取り出された帯封テープ204の先端がテープ止め205によって止められる。そして、回転機構202によって、挟持した紙幣の周囲で、このテープ止め205を回転させて紙幣を結束するようになっている。結束後、テープの先端を切断するためのカッタ206と、その先端部を熱接着するためのヒータ207も設けられている。
帯封された結束紙幣はベルト式の搬送機構208で結束紙幣投出口209に投出される。結束紙幣投出口209に搬送される途中には、金種、日時、連続番号等を帯封の上に印字する印字部210と、処理を行った金融機関印を押印する押印部211とが設けられている。
背面に設けられた搬送部300は、集積部111〜115と紙幣結束部200または端数紙幣返却部130との間で結束対象紙幣または端数紙幣を搬送するものである。
次に搬送部300について説明する。搬送部300は、装置の下端から上端に到る垂直に設置されたガイド軸301、このガイド軸301に係合しつつ上下移動の可能な昇降ユニット310、この昇降ユニット310を昇降させるための駆動ベルト302を備える。
昇降ユニット310はベルト機構311による前進後退可能なブロック312を有しており、このブロック312には固定の下ハンド313と、ベルト316により軸315に沿って上下移動する上ハンド314を有している。ハンド313及び314は、集積部111〜115に集積された結束対象紙幣あるいは端数紙幣を挟んで取り出し、紙幣結束部200あるいは端数紙幣返却部131に移送するためのものである。
次に、本発明に係る紙葉類幅寄せ機構10について説明する。図2(A)は紙葉類幅寄せ機構10の構成概略を示す上面図、同図(B)は側方から見た装置断面を示す模式図、同図(C)はローラ及びベルトの回転方向を説明する模式図である。同図に示すように、紙葉類幅寄せ機構10を紙幣処理装置1内部で利用する際の装置上方向をZ方向、紙葉類幅寄せ機構10内で紙幣が搬送される方向をX方向、各ローラの軸方向をY方向として説明する。
図2に示すように、紙葉類幅寄せ機構10は、上側クラウンローラ12A(入口側第1ローラ)及び12B(入口側第3ローラ)と、下側クラウンローラ13A(入口側第2ローラ)及び13B(入口側第4ローラ)と、上側ピンチローラ40及び下側ピンチローラ41と、偏位ローラ11と、偏位ローラ支持台20と、偏位ローラ支持台20と一体に設けられたラックギア22と、ラックギア22と噛み合うピニオンギア23と、上側フラットローラ14(出口側第1ローラ及び出口側第3ローラ)及び下側フラットローラ15(出口側第2ローラ及び出口側第4ローラ)と、上側搬送ベルト42A(第1搬送ベルト)及び42B(第3搬送ベルト)と、下側搬送ベルト43A(第2搬送ベルト)及び43B(第4搬送ベルト)と、進入検知センサS1と、を枠体50内部に備えている。なお、以下では、同一の構造及び機能を有する構成部品については同じ数字の後に異なるアルファベットを付して記載し、これらの構成部品全てを指す場合にはアルファベットのみを省略して記載する。
枠体50は、各構成部品11〜43を固定又は回転可能に支持しており、枠体50と各構成部品11〜43によって紙葉類幅寄せ機構10がユニット化されている。紙葉類幅寄せ機構10をユニットとして紙幣処理装置1内部へ組み込むことによって、紙幣処理装置1内部で紙幣の幅寄せを行うことができる。また例えば処理対象とする全紙幣が同じ幅を有しているため幅寄せする必要がない場合には、紙葉類幅寄せ機構10をユニットごと取り外すことにより、紙幣処理装置1の重量やコストを抑制することができる。ただし、紙葉類幅寄せ機構10は、ユニット構造に限定されるものではなく、専用の枠体50を有さず、各構成部品11〜43が紙幣処理装置1の内部に組み込まれて装置の一部を構成していてもよい。
本実施例では、紙幣処理装置1の搬送路104から紙葉類幅寄せ機構10の入口側にあるローラ(12及び13)迄の距離、及び出口側にあるローラ(14及び15)から紙幣処理装置1の搬送路104迄の距離が短いため、紙幣処理装置1の搬送路104と入口側及び出口側の各ローラ(12及び13、又は14及び15)との間で直接紙幣を受け渡すようになっている。しかし、これに限定されず、枠体50に、紙幣処理装置1の搬送路104との間で紙幣を受け渡すためのガイドを備えていてもよい。紙幣が紙葉類幅寄せ機構10の備える上側クラウンローラ12及び下側クラウンローラ13の間に入り、上側フラットローラ14及び下側フラットローラ15の間から出て行くように紙幣をガイドし、円滑な紙幣搬送が行われるように機能するものであれば、ガイドの構造、材質及び取り付け状態等は特に限定されない。
上側クラウンローラ12及び下側クラウンローラ13は、上下に対向して設けられた一対のローラである。回転軸を介して枠体50に取り付けられ、枠50又は回転軸に対して回転可能に設けられている。クラウンローラ12及び13は、軸方向(Y方向)の両端から中央部へ至るにつれてX軸方向断面の直径が徐々に大きくなる樽形形状を有している。上下に設けられた平行な各軸上で、対向する2つのクラウンローラ(12A及び13Aと、12B及び13B)が回転する。上側クラウンローラ12Aと下側クラウンローラ13Aとが対向し、上側クラウンローラ12Bと下側クラウンローラ13Bとが対向する位置関係にある。
上側フラットローラ14及び下側フラットローラ15は、上下に対向して設けられた一対のローラである。回転軸を介して枠体50に取り付けられ、枠50又は回転軸に対して回転可能に設けられている。図2(A)に示すように、フラットローラ14及び15は、そのY軸方向下端が、Y軸方向下方にあるクラウンローラ12B及び13Bよりさらに下側の位置にあり、Y軸方向上端が、Y軸方向上方にあるクラウンローラ12A及び13Aよりさらに上側の位置にある。フラットローラ14及び15は、X軸方向断面が同一の円形となる円筒形状を有している。フラットローラ14及び15の位置及び長さは、後述する2組の搬送ベルト(42A及び42Bと、43A及び43B)が移動したときに、搬送ベルト42及び43がフラットローラ14及び15から外れることがないように設定される。詳細については後述する。
上側フラットローラ14と、上側クラウンローラ12A及び12Bとの間には、2本の上側搬送ベルト42A及び42Bが各々巻回されている。また下側フラットローラ15と、下側クラウンローラ13A及び13Bとの間には、2本の下側搬送ベルト43A及び43Bが各々巻回されている。上側搬送ベルト42及び下側搬送ベルト43は、伸縮性を有する無端平ベルトである。例えば約6%の伸縮性を有するゴム製の無端平ベルトで、その長さは、巻回された2つのローラ間で伸びて張力を生ずるように設定される。そのため、クラウンローラ12及び13の回転面は樽形の曲面を構成しているが、搬送ベルト42及び43は、巻回されたときの張力によってローラの表面に密着する。またフラットローラ14及び15側でも、同様にローラ表面と搬送ベルト42及び43が密着した状態となる。この張力と、搬送ベルト(42及び43)と各ローラ表面との間の摩擦力とによって、搬送ベルト42及び43は、各ローラの回転に伴って、滑りを生ずることなく回転する。紙葉類幅寄せ機構10では、上側搬送ベルト42と下側搬送ベルト43との間に紙幣を挟持して、X軸方向に入口側から出口側へ紙幣を搬送する。
下側搬送ベルト43を構成する無端平ベルトの内側で、下側フラットローラ15と、下側クラウンローラ13A及び13Bとの間に、偏位ローラ11が設けられている。偏位ローラ11は、回転軸を介して偏位ローラ支持台20に取り付けられ、偏位ローラ支持台20又は回転軸に対して回転可能に設けられている。偏位ローラ11は、図2(A)に示す初期位置にあるときに、そのY軸方向下端が、Y軸方向下方にあるクラウンローラ12B及び13Bよりさらに下側の位置にあり、Y軸方向上端が、Y軸方向上方にあるクラウンローラ12A及び13Aの上端よりさらに上側の位置にあるローラで、X軸方向断面が同一の円形となる円筒形状を有している。
なお、初期位置とは、電源投入時の装置の初期化処理実行直後の位置を言う。紙幣の幅寄せを行わず、紙幣処理装置1の搬送路104上の紙幣位置を維持したまま紙幣を搬送するときの偏位ローラ11の位置である。紙幣の幅寄せを行う場合に、紙幣が搬送されてくる度に毎回偏位ローラ11を初期位置に戻す必要はない。紙幣の幅寄せを行った後、初期位置に戻すことなく、次の紙幣の幅寄せ量に合わせて偏位ローラ11の回転移動を制御する。具体的には、例えば、偏位ローラ11が初期位置から時計回りに回転移動した位置で紙幣の幅寄せを行った後、偏位ローラ11を時計回りにさらに回転移動させて次の紙幣を処理する必要がある場合に、偏位ローラ11を初期位置に戻すことなく、そこからさらに時計回りに回転移動させて次の紙幣の幅寄せを行う。紙幣が搬送されてくる度に初期位置へ戻すことなく、次の紙幣に応じた位置へ偏位ローラ11の回転移動を制御することによって処理時間を短縮し、高速に搬送される紙幣の処理に対応することができる。偏位ローラ11の回転移動制御、及び紙幣の幅寄せ方法の詳細については後述する。
偏位ローラ11の直径、及び偏位ローラ11を軸支する位置は、上側搬送ベルト42と下側搬送ベルト43との位置関係に基づいて設定される。具体的には、偏位ローラ11が図2(A)の初期位置にあるときに、同図(B)及び(C)に示したように、偏位ローラ11の外周面によって、上側搬送ベルト42及び下側搬送ベルト43の紙幣を挟持して搬送する部分領域の略中央を、各ベルトが水平となる位置よりも上側(Z軸方向)に押し上げ、かつ押し上げられた上側搬送ベルト42が内周側で接触しないように設定される。
図2(C)は、紙葉類幅寄せ機構10を側方(Y軸マイナス方向)から見たときの上側搬送ベルト42及び下側搬送ベルト43について、その回転方向を説明する図である。ベルトの回転方向を理解しやすいよう模式的に示している。図示しないモータによって上側フラットローラ14を時計回りに回転させると、張力及び摩擦力によって巻回された上側搬送ベルト42が回転し、上側クラウンローラ12も時計回りに回転する。そして、上側搬送ベルト42の回転に伴って下側搬送ベルト43が反時計回りに回転する。下側搬送ベルト43が回転すると、張力及び摩擦力によって、下側クラウンローラ13、下側フラットローラ15及び偏位ローラ11が反時計回りに回転する。図示したように、上側搬送ベルト42は、回転によって、ローラ12及び14の上側では左から右(X軸マイナス方向
)へと移動するのに対し、下側では右から左(X軸方向)へ移動する。このように上側搬送ベルト42はローラ(12及び14)の上下で移動する方向が逆になるため、偏位ローラ11によって押し上げられたときに、上下の内周面が接触して摩耗しないように各構成部品の形状や位置関係が設定される。下側搬送ベルト43については、偏位ローラ11の上下両方で右から左(X軸方向)及び左から右(X軸マイナス方向)へ偏位ローラ11の回転方向へベルトが移動するため、偏位ローラ11下方にある内周面が偏位ローラ11と接触しても構わない。
上側クラウンローラ12、下側クラウンローラ13、上側フラットローラ14、下側フラットローラ15及び偏位ローラ11の少なくともいずれか一つを、モータによって図2(C)に図示した方向に回転させると、他のローラ及び上側搬送ベルト42及び下側搬送ベルト43を同図に図示した方向に回転させることができる。各ローラ及び搬送ベルトの材質は特に限定されないが、ローラとベルトの間で滑りが生じないように、摩擦力を考慮した材質が用いられる。上側クラウンローラ12から上側フラットローラ14迄の距離と、下側クラウンローラ13から下側フラットローラ15迄の距離は、偏位ローラ11によって押し上げられて図2(C)に図示した状態にあるときに、上側搬送ベルト42及び下側搬送ベルト43に張力が生ずるように設定される。材質を決定する際には、ベルトとローラ間の摩擦力に加えて張力も考慮される。また上側クラウンローラ12及び上側フラットローラ14と、下側クラウンローラ13及び下側フラットローラ15との位置関係は、図2(C)に示した矢印401の方向に挿入された紙幣が、上側搬送ベルト42及び下側搬送ベルト43の間に挟持されて確実に搬送されるように、紙幣を挟持する部分領域で上下のベルトが密着するように設定される。
なお図2(C)では、搬送ベルト42及び43を模式的に示したが、実際には同図(B)に示すように、各搬送ベルト42及び32は、その一部で、平ベルトの幅方向が垂直(Z軸方向)になるようにねじれた状態にある。具体的には、上側搬送ベルト42は、上側クラウンローラ12の上方近傍に設けられた一対の上側ピンチローラ40によって、ベルト42の幅方向が垂直(Z軸方向)になるよう、搬送方向(X軸方向)に対して略90度回転した状態で支持される。これにより、ベルト42の内周面が装置側方(Y軸マイナス方向)から見える状態になっている。下側搬送ベルト43も同様に、下側クラウンローラ13の下方近傍に設けられた一対のピンチローラ41によって、搬送方向(X軸方向)に対して90度回転した状態で支持されている。後述するように、偏位ローラ11がピニオンギア23及びラックギア22によって回転移動すると、各搬送ベルト42及び43は、フラットローラ14及び15の表面上をY軸方向(又はY軸マイナス方向)に移動する。このとき搬送ベルト42及び43が、クラウンローラ12及び13側でも同様に移動してローラから外れないよう、搬送ベルト42及び43の位置がピンチローラ40及び41によって規制されている。ピンチローラ40及び41の位置は、図2(A)に示すように偏位ローラ11の回転軸方向がY軸方向と一致する初期位置にある状態で、各ローラ及びベルトが同図(C)に示す方向に回転したときの状態に基づいて設定される。
ピンチローラ40及び41は、枠体50に固定された軸16及び17上で、Z軸回りに回転可能に設けられたローラである。ピンチローラは対向する一対の回転可能なローラから構成され、ローラはその間をベルトが通るようベルトの厚さより僅かに広い幅で離間されている。ピンチローラ40及び41の回転軸(Z軸)方向の長さは、搬送ベルト42及び43の幅より長く設定されている。搬送ベルト42及び43の位置を規制する方法は、ローラから外れないように機能すれば特に限定されず、このピンチローラ40及び41を利用する他、例えばU字形のピンガイド等、各種のガイドを利用することができる。ただし、ガイドが固定されている場合、紙幣を高速に搬送する搬送ベルト42及び43がピンガイドとの接触部分で摩耗しやすいため、Z軸回りに回転可能なピンチローラ40及び41の利用が好ましい。
偏位ローラ11が回転移動すると各搬送ベルト42及び43には、Y軸方向(又はY軸マイナス方向)へ移動させようとする力が作用する。各搬送ベルト42及び43は、幅方向に広い表面(又は裏面)と、厚さ方向に薄い側面から構成される平ベルトで、幅方向がY軸方向となるようにローラに巻回される。この状態のまま、側面を規制するよりも、図2(B)に示すようにベルトの一部をねじるように回転させて面積の大きい表面又は裏面を規制する方法が望ましい。平ベルトを側面からガイドで規制した場合、大きな力が作用したときに、ベルトの一部がガイドに乗り上げて幅方向に折れ曲がることがある。その状態のまま回転を続けるとベルトが外れたり、回転を続けることができても耐久性に影響する可能性がある。これに対し、平ベルトを搬送方向に対して略90度回転させた状態で、ベルトにかかる力の方向(Y軸方向)を平ベルトの厚さ方向と一致するようにすれば、大きな力が作用しても問題なくベルトの移動を規制することができる。
偏位ローラ11を軸支する偏位ローラ支持台20は、軸21によって枠体50に対して回動可能に設けられ、その一部にラックギア22を有している。このラックギア22が枠体50に回転可能に軸支されたピニオンギア23と噛み合った状態にある。ピニオンギア23は、図示しないモータ等の駆動装置によって回転制御されている。ピニオンギア23が上面(Z軸方向)から見て時計回りに回転すると、これに伴って偏位ローラ支持台20が軸21を中心に時計回りに回転移動する。またピニオンギア23が、反時計回りに回転すると、偏位ローラ支持台20も反時計回りに回転して初期位置に戻る。
偏位ローラ11が回転移動するときの角度は、偏位ローラ支持台20に固定された軸21の回転角度、又は偏位ローラ支持台20を回転させるピニオンギア23等のギアの回転角度に基づいて検知する。角度の検知には、例えばポテンショメータを利用する。紙幣の幅寄せに必要な偏位ローラ11の回転角度は、偏位ローラ11とベルト43間の摩擦係数μ及びベルトの弾性係数Kや、図2(C)に示した偏位ローラ11の径、偏位ローラ11が搬送ベルト43を押し上げる押し上げ角θ1及びθ2、搬送ベルト43の回転速度V等に依存する。予め、偏位ローラ11の回転角度に対応するポテンショメータの出力電圧(V)と、紙幣が幅寄せされる幅寄せ量(mm)との関係を実験的に求めて、表1のようなテーブルを作成しておく。そして、紙幣を幅寄せするときは、必要な幅寄せ量に対応する電圧がポテンショメータから出力されるように、偏位ローラ11の回転移動を制御する。
偏位ローラ11の回転移動を制御することができれば、その方法は特に限定されない。例えば、ピニオンギア23及びラックギア22の代わりに平歯車やかさ歯車を利用してもよいし、偏位ローラ支持台20に固定された軸21を直接回転させてもよい。駆動源としてDCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ等を利用することができる。また回転角度の検出についてもロータリーエンコーダ等の従来技術を利用することができる。またギア及びモータを利用して回転移動を制御する他、油圧や空気圧によって偏位ローラ支持台20に接続されたアクチュエータ等を制御する方法であってもよい。
進入検知センサS1は、紙葉類幅寄せ機構10に進入する紙幣を検知する機能を有する。例えば、進入検知センサS1として一対の投受光素子を利用し、投受光する光を遮光する紙幣の進入を検知する。偏位ローラ11の回転移動制御は、幅寄せの対象となる紙幣を進入検知センサS1によって検知した後、所定タイミングで行われる。詳細については後述する。
次に上記構成を有する紙葉類幅寄せ機構10の動作を説明する。上側搬送ベルト42と下側搬送ベルト43の動作は同じであるため、以下では上側搬送ベルト42のみを利用して説明する。
図3は、偏位ローラ11を図2(A)に示す初期位置から時計回りに回転移動させたときの上側搬送ベルト42の状態を示している。同図では、各部の動作を理解しやすいように、上側搬送ベルト42に関する構成部品のみを示している。
図2(A)に示す上側フラットローラ14、偏位ローラ11、及び上側クラウンローラ12の各回転軸が平行な初期位置から、偏位ローラ11の回転軸をXY平面内で回転移動させる制御を行う。モータ等の駆動装置によってピニオンギア23を時計回りに回転させるとラックギア22の位置が変化して偏位ローラ支持台20が軸21を中心に回転し、図3に示す状態となる。
即ち、偏位ローラ支持台20の動作を制御することによって、偏位ローラ11の軸方向を、搬送方向(X軸方向に)に垂直な方向(Y軸方向)から、この方向(Y軸方向)と角度を成す方向に回転移動させる。搬送ベルト42及び43は、搬送方向(X軸方向に)に垂直な方向(Y軸方向)から所定角度回転した直線上を下方から偏位ローラ11の外周によって押し上げられた状態となる。
上側フラットローラ14は、図3に示すように、左側から右側方向(X軸マイナス向)に白矢印で示す方向に回転し、これに伴って上側搬送ベルト42及び上側クラウンローラ12も白矢印で示す方向に回転する。これに対して上側クラウンローラ12及び上側フラットローラ14に巻回された上側搬送ベルト42は、ローラ12及び14の下側、即ち紙幣を挟持して搬送する部分領域では、右側から左側方向(X軸方向)へ黒矢印で示す方向に移動する。以下では、説明を簡単にするため、上側搬送ベルト42について、Y軸方向から見たときに、ローラ12及び14の上側で白矢印方向に移動する部分をベルト上部52と記載し、ローラ12及び14の下側で黒矢印方向に移動する部分をベルト下部51と記載する。ベルト下部51は偏位ローラ11によって下方から押し上げられた状態にある。
偏位ローラ11が、他のローラ12及び14の回転軸に対して角度を成した回転軸周りに回転すると、下から(Z軸方向。図3紙面裏面から表面)押し上げられて偏位ローラ11に接触した状態で回転するベルト下部51は、偏位ローラ11上をY軸方向へ移動する。上側クラウンローラ12から偏位ローラ11に至る領域では、黒矢印で示すベルト下部51の移動方向と、偏位ローラ11の回転軸方向とが略垂直な方向となって安定する。
偏位ローラ11の回転移動によって、ベルト下部51全体をY軸方向へ移動させる力が作用する。しかし、上側ピンチローラ40による位置の規制と、巻回されたベルトの位置をローラ中央に維持しようとする上側クラウンローラ12Aの性質とによって、上側クラウンローラ12A側ではベルト下部51の位置は変化しない。そのため、上側クラウンローラ12から偏位ローラ11に至る領域では、ベルト下部51の偏位ローラ11側だけがY軸方向に移動し、X軸方向と角度を成した状態で安定する。
これに対し、偏位ローラ11から上側フラットローラ14に至る領域では、偏位ローラ11上と同様に、ベルト下部51が上側フラットローラ14上を移動する。具体的には、上側フラットローラ14上では、黒矢印で示す移動方向がフラットローラ14の回転軸方向(Y軸方向)と略垂直となるように、ベルト下部51がY軸方向に移動する。その結果、ベルト下部51は、上側クラウンローラ12から偏位ローラ11に至る領域ではX軸方向と角度を成し、偏位ローラ11上で屈曲した後、偏位ローラ11から上側フラットローラ14に至る領域ではX軸方向と略平行な状態となる。搬送ベルト42は、このような形状を維持したまま安定して回転する。
このとき、ベルト下部51の移動に伴い、ベルト上部52にもY軸方向へ移動させようとする力が作用する。しかし、上側ピンチローラ40によってY軸方向の位置を規制されているため、上側ピンチローラ40の位置ではベルト上部52の位置は変化しない。またベルト上部52は偏位ローラ11とは接触していないので、ベルト下部51のように途中で屈曲することもなく、上側フラットローラ14上でY軸方向に移動したベルト下部51の位置からピンチローラ40の間で、X軸方向と角度を成す直線状になる。その結果、搬送ベルト42は、図3に示す形状となって安定して回転する。
樽形形状のクラウンローラは、張力を有する状態でベルトを巻回して回転させると、ベルトの幅方向中央と、クラウンローラの軸方向中央の最も径の大きい位置が一致した状態でベルトを回転させる性質がある。そのため、ベルト下部51の位置を規制せず、ベルト上部52の位置のみを上側ピンチローラ40によって規制するだけで、Y軸方向への力が作用しても、上側搬送ベルト42はローラから外れることなく安定して回転を続けることができる。また上側クラウンローラ12のY軸方向の幅を、ベルト幅より僅かに広くするだけでよい。また図2(B)に示すように、ローラに対して紙幣を挟持して搬送する側では、ベルトの位置を規制するピンチローラ等を設ける必要がないため、部品点数やコストの増加を抑制することができる。
上側クラウンローラ12A及び12Bの各々に巻回された2本の上側搬送ベルト42A及び42Bは、偏位ローラ11の回転移動に伴って同じように移動して、図3に示す状態で安定して回転する。その結果、上側クラウンローラ12A及び12Bから偏位ローラ11に至る領域と、偏位ローラ11から上側フラットローラ14に至る領域との各々で、2本のベルトの下部51A及び51Bが平行になる。即ち、偏位ローラ11上の屈曲点の前後で各々平行な状態となる。また2本のベルトの上部52A及び52Bも同様に平行な位置関係となる。
下側搬送ベルト43でも上記説明と同様にベルトが移動するが、図2(B)から分かるように、上側搬送ベルト42とは上下方向に反転した状態となる。即ち、偏位ローラ11の下側で移動する部分が、図3に示すベルト上部52と同様の状態となる。また偏位ローラ11と接触して回転し紙幣を挟持して搬送する部分が、図3に示すベルト下部51と同様の状態となる。その結果、上側搬送ベルト42と下側搬送ベルト43の位置は略重なってZ軸方向からは下側搬送ベルト43が見えない状態となる。
偏位ローラ11が回転移動すると、ベルトの各部が移動して、上側のローラ12及び14に巻回された上側搬送ベルト42のベルト下部51と、下側のローラ13及び15に巻回された下側搬送ベルト43のベルト上部とが、図3の黒矢印で示すように移動しながら回転する。紙幣は、上側搬送ベルト42のベルト下部51と、下側搬送ベルト43のベルト上部とによって挟持されて搬送されるので、図3の黒矢印が紙幣の搬送方向と一致する。即ち、偏位ローラ11を回転制御することによって、上側クラウンローラ12から偏位ローラ11に至る領域で、黒矢印のように紙幣を搬送方向(X軸方向)と垂直な方向(Y軸方向)へ移動させることができる。
次に、紙幣の幅寄せを行う方法について説明する。図4は、偏位ローラ11が図3に示す状態にある場合に、搬送される紙幣のY軸方向の位置が変化する様子を示す模式図である。上記説明の通り、下側搬送ベルト43は、上側搬送ベルト42と同様に移動して位置が重なるため、上側搬送ベルト42の下にあってZ軸方向からは見えない状態となる。そのため、図4においても、図3と同様に上側搬送ベルト42に関する構成部品のみを示している。
紙葉類幅寄せ機構10に進入した紙幣が進入検知センサS1によって検知されると、所定タイミングで偏位ローラ11の回転移動が制御される。進入検知センサS1によって紙幣が検知されたときには、前段の識別部105によって取得された情報に基づいて必要な幅寄せ量が決定されているため、偏位ローラ11の回転移動制御を行うことができる。進入検知センサS1によって検知された紙幣は、その後、紙幣処理装置1の搬送路104から、上側クラウンローラ12と下側クラウンローラ13との間に進入して、上側搬送ベルト42と下側搬送ベルト43との間に挟持され、紙葉類幅寄せ機構10内を搬送される。
図4(A)に示すように、矢印402の方向(X軸方向)に搬送されてきた紙幣91Aの先端がピンチローラ40及び41の位置に達すると、同図(B)に示す矢印403方向への搬送が開始される。矢印403は、上側クラウンローラ12から偏位ローラ11に至る領域で搬送ベルトが移動する方向、即ちベルト上に示した黒矢印の方向である。
図4(B)に示すように、先端が偏位ローラ11の位置に達した紙幣91Bは、偏位ローラ11の外周に沿った2組の搬送ベルト(42A及び43Aと、42B及び43B)に挟持されて搬送される。紙幣91Bは、その搬送方向後端が偏位ローラ11を通過するまで矢印403の方向へ搬送される。そして紙幣後端が偏位ローラ11を通過すると、同図(C)に示すように、再び矢印402方向へ搬送される。上側フラットローラ14及び下側フラットローラ15の間を通過した紙幣91Cは、紙幣処理装置1の搬送路104に送り出され、その後、表裏反転部107を経て、集積部111〜115のいずれかへ搬送され集積される。
このように紙幣91を、紙幣処理装置1の搬送方向(X軸方向)に対して角度を成して搬送することにより、紙幣91の位置を搬送方向に垂直な方向(Y軸方向)に移動させて、その位置を調整することができる。紙幣処理装置1の搬送路104と同様に、上側搬送ベルト42と下側搬送ベルト43との間に紙幣を挟持して強制的に移動させるため、紙幣が新しい場合でも、使い古されて柔らかくなっている場合でも、確実に移動させることができる。また紙幣を挟持する全てのベルト(42A、42B、43 A及び43B)が、同期した状態で回転しているため紙幣に皺や折れを生じさせることがない。
また、別々に設けられた2組のベルト(42A及び43Aと、42B及び43B)は、その一部が屈曲した場合でも各領域で平行な位置関係を維持し、同期して回転するため、図9に示したように幅寄せの途中で紙幣が回転することがなく、図4に示したように紙幣のY軸方向の位置のみが調整される。そのため幅寄せを原因とする紙幣の斜行が起こらず、斜行を修正する処理や機構を必要としない。搬送される紙幣の姿勢を保ったまま、ベルトによって挟持して強制的に幅寄せを行うため、紙幣の傷み具合等の影響を受けることがなく、紙幣に皺や折れを生じさせることもなく、所望の調整量で確実に紙幣の幅寄せを行うことができる。
予め偏位ローラ11の回転移動量と、搬送される紙幣のY軸方向の移動量(幅寄せ量)との関係を把握しておけば、偏位ローラ11を制御することによって紙幣91の幅寄せを行うことができる。具体的には、偏位ローラ11の回転移動量と、紙幣の移動量との関係を上記表1のようにテーブル化しておき、このテーブルを利用して紙幣の位置調整を行う。例えば、識別部105によって取得された紙幣91の位置情報に基づいて、その紙幣に必要な幅寄せ量を決定する。幅寄せ量が決定されると、予め作成したテーブルを参照し、その幅寄せ量を実現するための偏位ローラ11の回転移動量が決定される。そして、決定した偏位ローラ11の回転移動量に基づいてピニオンギア23の回転を制御して偏位ローラ支持台20を回転することによって偏位ローラ11の回転軸を所定量だけ回転移動させて、紙幣を幅寄せする。
識別部105は、処理対象と成る紙幣のうち最も幅の広い紙幣の全体をスキャンできるように設けられている。そのため、紙幣端部を揃えたい幅の狭い紙幣が搬送されてきた場合は、幅の広い紙幣に対する位置関係を認識し、紙幣の位置を揃えるために必要な幅寄せ量を決定する。識別部105によって取得した情報を利用するため、紙葉類幅寄せ機構10用に専用のセンサ等を設ける必要がない。
なお、幅寄せが必要な場合には、進入検知センサS1によって幅寄せが必要な紙幣の進入を検知した後、所定タイミングで偏位ローラ11の回転移動を制御する。また、幅寄せが不要な場合は、同様に所定タイミングで、Y軸方向の紙幣の位置が変わらないように偏位ローラ11の位置を初期位置(軸方向がY軸方向と一致する位置)に戻すよう制御する。このように、幅寄せが不要な紙幣を含む全ての紙幣について、予め設定された所定タイミングで、偏位ローラ支持台20を紙幣の幅寄せ量に応じて制御して偏位ローラ11を回転移動させることにより、必要に応じて紙幣を幅寄せすることができる。
図5は、紙葉類幅寄せ機構10によって紙幣の幅寄せを行う例を示した模式図である。幅の広い紙幣90Aと、幅の狭い紙幣91Aとが、紙葉類幅寄せ機構10内で幅寄せされた後、紙葉類幅寄せ機構10から紙幣処理装置1の搬送路104上に送り出される。幅の狭い紙幣91の幅寄せを行って、同図(A)に示すように、幅の広い紙幣90Cと幅の狭い紙幣91Cの左右いずれかの端部が揃うように幅寄せする他、同図(B)に示すように、中央位置が揃うように位置調整することもできる。また処理対象紙幣のうち幅の広い紙幣90の幅が搬送路104の幅に比べて狭い場合には、同図(C)に示すように、幅の広い紙幣90と幅の狭い紙幣91の両方で幅寄せを行って、端部を揃えたり中央部を揃えたりすることもできる。ベルトによって紙幣を挟持しながら幅寄せを行うため、幅寄せ量を細かく制御することができる。
なお、紙葉類幅寄せ機構10で利用する紙幣の幅寄せ量に関する情報は、識別部105から取得する方法に限定されず、例えば専用のセンサが紙幣処理装置1の搬送路104上に設けられてもよい。また受けた紙幣の位置を認識するセンサが紙葉類幅寄せ機構10内に設けられてもよい。ラインセンサや投受光素子によって、搬送方向(X軸方向)に対して垂直な方向(Y軸方向)の紙幣端部の位置を、少なくともいずれか一方の端部で検知することができれば幅寄せ量を決定することができる。
具体的には、紙幣全面について位置を認識する必要はなく、例えば紙幣を搬送路104の右側へ幅寄せしたい場合は、紙幣右端部の搬送路上での位置を検知することができれば、幅寄せ量を決定することができる。即ち、幅寄せする方向の搬送路104端部から、紙幣の幅寄せする方向の端部までの距離を求めることができれば、紙幣寸法等の情報が不明であっても、幅寄せ量を決定して幅寄せを行うことができる。
また、偏位ローラ11を、図2(A)に示す初期位置から図3に示すように時計回りに回転移動させる例を示したが、これに限定されず、例えば図6に示すように、偏位ローラ11を反時計回りに回転移動させて利用してもよい。この場合には、搬送される紙幣は、図4で説明したのとは反対方向(Y軸マイナス方向)に移動する。
偏位ローラ11が時計回りに回転移動する場合には、図3を参照して説明した通り、搬送ベルト42及び43はY軸方向に移動する。そのため、上側フラットローラ14及び下側フラットローラ15のY軸方向下端は、図2(A)に示す初期位置でベルトが回転する位置より僅かに下に位置していればよい。しかし、図6に示すように、偏位ローラ11が反時計回りに回転移動する場合には、搬送ベルト42及び43は、Y軸マイナス方向にも移動する。そのため、上側フラットローラ14及び下側フラットローラ15のY軸方向下端は、移動した際に搬送ベルト42及び43が回転する位置より下に位置するように設定する。
また、偏位ローラ11が、図7(A)に示すように、偏位ローラ11の略中央にある軸21を中心に回転する他、回転中心21が同図(B)のように偏位ローラ11の略中央より上(又は下)にあってもよいし、同図(C)のように偏位ローラ11の外側にあってもよい。また偏位ローラ11の回転移動についても、図2及び図3で説明した通り初期位置から時計回りにのみ回転移動するものであってもよいし、時計回り及び反時計回りの両方に回転移動するものであってもよい。偏位ローラ11を回転移動する際の中心位置や、回転移動の方向は、紙幣処理装置1の搬送路104と、搬送路104上に繰り出されて搬送される紙葉類との位置関係によって適宜設定される。ただし、同じ角度αを成すときの距離がL1<L2<L3の関係があることから分かるように、装置の小型化のためには上記実施例の通り、偏位ローラ11の略中央位置に回転移動の中心を設定し、初期位置から時計回り又は反時計回りのいずれか一方にのみ回転移動する構成であることが望ましい。
本発明にかかる紙葉類幅寄せ機構10は、紙幣を挟持して搬送するベルト(42及び43)の一部を上方向に押し上げる(又は下方向に押し下げる)ように偏位ローラ11を設けて、偏位ローラ11の回転軸が搬送方向垂直な方向と角度を成すように回転移動させると紙幣を挟持して搬送するベルト(42及び43)が偏位ローラ11上を偏位ローラの回転軸方向に移動することを利用し、偏位ローラ11を軸支する偏位ローラ支持台20を制御することによって搬送方向に垂直な方向へ紙幣を幅寄せすることを特徴とする。これを実現することができれば、紙葉類幅寄せ機構10の構成及び動作は、上記各図に示したものに限定されない。
例えば、搬送ベルトの本数や、各ローラの個数も特に限定されず、図8(A)に示すように、2つの偏位ローラ511A及び511Bと、2つのフラットローラ514A及び514Bとを備え、2つの偏位ローラ511A及び511Bを、独立した偏位ローラ支持台520A及び520Bによって制御してもよい。また、同図(B)に示すように、クラウンローラ612及びフラットローラ614に1本の搬送ベルト642のみが巻回された構成であってもよい。複数の搬送ベルトを利用する場合の搬送路幅方向のベルト位置を含め、各部の構成及び動作は、紙幣処理装置1の搬送路104と、搬送路104上を搬送される紙葉類との位置関係によって適宜設定される。
なお、図8では、図3及び図4と同様に、構成を理解しやすいよう上側搬送ベルト542及び642に関する構成部品のみを示しているが、実際にはこれに対応する下側搬送ベルトとその構成部品等が存在する。図8(A)の場合には、上側クラウンローラ12A(入口側第1ローラ)及び12B(入口側第3ローラ)と、下側クラウンローラ13A(入口側第2ローラ)及び13B(入口側第4ローラ)と、上側フラットローラ514A(出口側第1ローラ)及び514B(出口側第3ローラ)に加え、さらに独立した下側フラットローラ(出口側第2ローラ及び出口側第4ローラ)が存在する。
また、上側搬送ベルト42と下側搬送ベルト43の間に紙幣を挟持して搬送することができれば、上側と下側で対向するローラの径や、各ローラの回転軸の位置関係は、特に限定されない。例えば、図2に示す上側クラウンローラ12と下側ローラ13の径が同じであってもよいし、上側クラウンローラ12の回転軸と下側クラウンローラ13の回転軸がX軸上で同じ位置上にあっても構わない。上側フラットローラ14と下側フラットローラ15についても同様に、その径や回転軸の位置関係は限定されない。
上述してきたように、本発明によれば、偏位ローラ11を制御することによって、紙幣を搬送方向と垂直な方向に移動させる幅寄せを行うことができる。紙幣を搬送ベルト42及び43の間に挟持した状態で幅寄せするため、紙幣の材質、傷み具合等の影響を受けることなく確実に紙幣を幅寄せすることができる。また搬送ベルトを複数利用する場合も各搬送ベルトが平行な状態となり、挟持された紙幣を搬送方向に搬送しつつ、その姿勢を保ったまま搬送方向と垂直な方向へ移動させることができる。そのため紙幣が回転して斜行状態になることがなく、斜行を修正する動作や機構は不要である。また全ての搬送ベルトが同期して回転するため紙幣の一部の領域に他の領域と異なる方向や大きさの力が急激に作用するようなことがなく、紙幣に皺や折れが生じることがない。そのため、新券や使い古された紙幣を含む全ての紙幣を、皺や折れを生じさせることなく、確実に幅寄せすることができる。
また紙幣を搬送する搬送ベルト42及び43の適切な位置に、偏位ローラ11及び偏位ローラ支持台20を設けて、偏位ローラ支持台20の回転動作を制御するだけで紙幣の位置を確実に調整することができるため、装置の大型化やコスト増を回避することができる。例えば従来の紙幣処理装置の搬送路に偏位ローラ11及び偏位ローラ支持台20を設けて制御すれば紙幣の幅寄せを実現し、上述した効果を得ることができる。
本発明に係る紙葉類幅寄せ機構10は、上記紙幣処理装置1に利用する他、小切手処理装置、バーコードチケット処理装置、帳票処理装置等の様々な紙葉類を処理対象とする装置に利用することができる。