この発明の一実施例であるライニング工法は、たとえば図1に示すような老朽化した既設管100内にコイル成形体12とライニング材14とを挿入して、既設管100内に更生管路10を形成するためのものである。
既設管100の用途および構成材料は種々のものが適用され得るが、たとえば、ガス、上下水道、通信ケーブル保護または電力ケーブル保護等の用途であってよいし、また、鉄筋コンクリート管、鋳鉄管、鋼管ならびに塩ビ管のような合成樹脂管等から構成される管路であってよい。
図1に示すように、この実施例では、既設管100は、直線状に配管されている部分すなわち直管部102と、曲線状にまたは屈曲して配管されている部分すなわち曲がり管部104と、地盤変動等によって既設管100の一部が変位し、そこに段差が形成されている段差部106とを含んでいる。
コイル成形体12は、十分な剛性を有する材料、たとえばアルミニウム合金、鋼またはステンレス鋼などの金属、合成樹脂、ならびにGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックを素材として構成され、この実施例では、コイル成形体12の素材として鋼が使用される。
図2に示すように、コイル成形体12は、断面略真円形状を有する線材16を巻芯(図示せず)に巻回することによって筒状に形成され、その呼び径は、既設管100の内径と略等しいサイズに設定され、たとえば450mmであり、その線径Rは、たとえば9mmである。
コイル成形体12は、その形状特性により、屈曲性を有している。さらに、コイル成形体12を巻回(されている)方向へ回転させたり、伸長方向に引っ張ったりすると、その回転力ないし引張力に応じてコイル成形体12が縮径されることとなる。このため、図3に示すように、既設管100への挿入時には、コイル成形体12が、既設管100の曲がり管部104や段差部106に滑らかに追従する。
図2に戻って、線材16の巻回ピッチP、つまり隣り合う線材16の中心間の距離は、線材16の線径Rと略等しい長さに設定されており、たとえば9mmである。つまり、この実施例では、コイル成形体12は、線材16を当該線材16の幅(つまり、コイル成形体12の軸方向における線材16の長さ)と実質的に等しいピッチで巻回することによって形成されており、隣り合う線材16どうしが隙間なく密着している。
さらに、コイル成形体12の軸方向の長さは、たとえば4−5mである。後に詳細を説明するように、この実施例では、コイル成形体12の既設管100への挿入時に、既設管100の管長に応じて、所要個数のコイル成形体12が軸方向に連結される。
ライニング材14は、この実施例では、図4に示すように、縮径加工により周方向の一部が押し込まれた断面略ハート形状を有する縮径管である。この略U字状の押し込まれた部分を押し込み部分18という。ライニング材14の構成材料は、合成樹脂(ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ナイロン、塩化ビニル等)や繊維強化プラスチックであるが、ここでは、ポリエチレンの実施例を示す。
ライニング材14は、所定の温度に加熱しかつ加圧されることにより円筒形に復元され、後に詳細を説明するように、コイル成形体12の内面に略密着してライニング管24を形成する。ライニング材14は、復元したときの外径がコイル成形体12の内径と略等しいサイズとなるように設定されている。
このライニング材14は、従来公知の方法(特許文献1等)によって製造することができるので、その製造方法の詳細な説明は省略する。簡単に言えば、所定の径で押出成形された直管に対して、軟化点以上融点以下の範囲における所定の温度(この実施例では、たとえば約100℃程度)に加熱して、押し板やローラ等を用いて縮径加工を施すことによって押し込み部分20を形成する。したがって、再び軟化点以上融点以下の温度に加熱し加圧することによって、押し込み部分20は外面側へ戻されて、所定形状(円筒形等)に復元する。
このようなコイル成形体12(更生用部材)とライニング材14とを使用して、たとえば図1に示すような老朽化した既設管100を更生するライニング工法の手順を説明する。
先ず、コイル成形体12の前方に挿入治具20を取り付ける。なお、この実施例における「前方」とは、コイル成形体12の挿入方向を意味し、「後方」とは、その反対方向を意味する。以下、同様である。
挿入治具20の一例を挙げると、図5に示すように、挿入治具20は、円錐形状の本体20aを含み、この本体20aの前方端には、既設管100の軸方向に延びる棒状の軸部20bが設けられる。たとえば、コイル成形体12と挿入治具20とは、挿入治具20に付与された回転力がコイル成形体12に伝わるのであれば、係止、係合、嵌合、ボルト締めなどの適宜な方法で取り付けることができる。このため、図5では、挿入治具22とコイル成形体12との連結機構について正確には図解していないことに留意されたい。
それから、挿入治具20を既設管100の端部開口である挿入口(図示せず)に挿入して、挿入治具20の軸部20bの前方端を、既設管100の端部開口である引出口(図示せず)まで到達させる。
次に、コイル成形体12にその巻回方向への回転力を付与することで、コイル成形体12を縮径させて、コイル成形体12を既設管100内に挿入する。
具体的には、既設管100の挿入口側でコイル成形体12の後方端部を回転しないように固定的に保持するとともに、既設管100の引出口側で挿入治具20の軸部20bをコイル成形体12の巻回方向に回転させる。すると、コイル成形体12が縮径するので、そのまま挿入治具20の棒部20bを牽引することによって、コイル成形体12を既設管100内に挿入する。
そして、コイル成形体12を後方端部を除いて既設管100内に挿入すると、その後方端部に別のコイル成形体12を連結する。
連結手段としての連結具22は、図6および図7に示すように、その両端に接続部22aを有するソケット形状に形成される。接続部22aは、たとえば受口構造をしており、コイル成形体12どうしを連結する場合には、その受口にコイル成形体12の線材16の端部をそれぞれ挿入して、それらを接合する。
これを繰り返すことによって、コイル成形体12の前方端部が既設管100の引出口に到達すると、コイル成形体12に付与している回転力を解放して、コイル成形体12をほぼ元の径に戻す。
続いて、ライニング材14を先に挿入されたコイル成形体12の内部に挿入する。具体的には、図示は省略するが、牽引ワイヤをコイル成形体12内に挿通して、この牽引ワイヤを既設管100の挿入口側のライニング材14に接続する。そして、牽引ワイヤをウインチで巻き取って、ライニング材14をその先端が既設管100の引出口に到達するまで挿入する。
次に、ライニング材14内に蒸気や温水を供給した後、所定圧力に加圧して、コイル成形体12内にライニング管24を形成する。具体的には、ライニング材14は、加熱されるとともに内圧がかけられることで、その断面形状が真円または真円に十分に近い略真円形に復元する。そして、復元したライニング材14の外周面の全体をコイル成形体12の内面の全体に密着させる。これによって、既設管100内にその全長に亘って更生管路10が形成されることとなる。
以上のように、このライニング工法では、既設管100の内面とライニング管24の外面との間にコイル成形体12が介在される。このため、コイル成形体12に埋設土圧に対する耐外圧強度をもたせて、ライニング材14の管壁の厚みを薄くすることで、ライニング材14を円筒形に復元させるための時間を短縮することができる。つまり、このライニング工法によれば、ライニング管24を形成するための時間を短縮することができる。また、ライニング材14の管壁の厚みを薄くすることで、その分だけライニング材14の重量が小さくなるため、ライニング材14の運搬および取扱いも容易となる。したがって、施工性に優れる。
さらに、コイル成形体12が既設管100の曲がり管部104や段差部106に滑らかに追従することで、ライニング材14を円筒形に復元した時に、既設管100の曲がり部104や段差部106でシワが生じにくい。したがって、ライニング管24の断面縮小も小さくなり、更生管路10の流量低下を抑制することができる。
さらにまた、この実施例では、既設管100の挿入口などからコイル成形体12を挿入することで、耐外圧強度をもたせたコイル成形体を既設管100内にその全長に亘って設置することができる。つまり、このライニング工法では、特許文献2のように作業者が管内に入って螺旋状に線材を配置する必要がなく、内部に作業者が入って作業できないサイズの管にも対応することができる。
さらにまた、この実施例では、既設管100への挿入前ないし挿入時に、コイル成形体12を縮径させるため、コイル成形体12が既設管100の曲がり管部104や段差部106をスムーズに通過することができる。つまり、この実施例によれば、コイル成形体12が既設管100に容易に挿入される。
なお、この実施例では、連結具18の接続部18aにコイル成形体12の線材16の端部を挿入して接合することによって、コイル成形体12どうしを軸方向に連結したが、これに限定される必要はなく、コイル成形体12どうしを回転力が伝わるように連結するのであれば、適宜の連結手段を適用することができる。
たとえば、連結具18の接続部18aとコイル成形体12の線材16との接合に、接着接合、融着接合、溶着接合、機械的接合等の適宜の接合手段を採用することができる。
また、図8に示すように、一方のコイル成形体12の線材16の後方側の端部と、他方のコイル成形体12の線材16の前方側の端部とを、スチールバンド等の連結具24で巻き付けて固定することによって、コイル成形体12どうしを軸方向に連結するようにしてもよい。
さらに、この実施例では、既設管100の管長に応じて、所要個数のコイル成形体12が軸方向に連結されたが、これに限定される必要はない。これは、あくまで施工前に工場等で製造された所定長さのコイル成形体12を、作業現場で既設管100の管長に対応するように連結しているのみであって、コイル成形体12の軸方向の長さが既設管100の管長よりも大きければ、複数のコイル成形体12を軸方向に連結する必要はなく、連結具18も不要である。
また、作業現場で線材16を巻回して、既設管100の管長に対応するコイル成形体12を製造しながら、既設管100に挿入するようにしてもよい。この場合にも、複数のコイル成形体12を軸方向に連結する必要はないので、連結具18は不要である。
さらにまた、この実施例では、コイル成形体12の線材16の巻回ピッチPが、線材16の線径Rと略等しい長さに設定されており、互いに隣接する線材16どうしが隙間なく密着していたが、これに限定される必要はない。図9に示すように、コイル成形体12の線材16の巻回ピッチPを、線材16の線径Rよりも大きく設定することもできる。なお、この場合には、コイル成形体12の線材16間に隙間が生じるため、線材16の線径Rをコイル成形体12が所定の耐外圧強度を確保できる程度の大きさに設定すると好適である。このように、コイル成形体12の線材16の巻回ピッチPを大きくすれば、線材16の巻き回し数を減らすことができるので、コイル成形体12を製造するときの作業性を向上させることができる。
さらに、この実施例では、コイル成形体12は、断面略真円形状を有する線材16を巻回することによって形成されたが、これに限定される必要はない。
たとえば、図示は省略するが、断面楕円形状を有する線材16を用いて、コイル成形体12を形成することもできる。この場合には、線材16の断面を横長楕円形状に設定すれば、線材16の巻き回し数が減ることで、コイル成形体12を製造するときの作業性を向上させることができ、線材16の断面が縦長楕円形状に設定すれば、コイル成形体12の耐外圧強度を向上させることができる。
また、図10に示すように、断面矩形状を有する線材16を用いて、コイル成形体12を形成することもできる。たとえば、コイル成形体12の呼び径が450mmの場合には、線材16の幅Wは、13mmであり、線材16の厚み(つまり、コイル成形体12の径方向における線材16の長さ)Dは、6.5mmである。この場合には、コイル成形体12の内面が平面状に形成されるので、コイル成形体12の内面とライニング管24の外面とがほぼ面接触することとなる。
さらに、図11に示すように、断面半円形状を有する線材16を、線材16の曲面部分が外面側になるように巻回することによって、コイル成形体12を形成することもできる。たとえば、コイル成形体12の呼び径が450mmの場合には、線材16の幅Wは、13mmであり、線材16の厚みDは、6.5mmである。この場合にも、コイル成形体12の内面が平面状に形成されるので、コイル成形体12の内面とライニング管24の外面とがほぼ面接触することとなる。さらに、線材16の曲面部分がコイル成形体12の外面側になるため、コイル成形体12を既設管100に挿入する時に、コイル成形体12と既設管路10の内面との接触面積を小さく抑えて、挿入抵抗を低減することができる。
さらにまた、図示は省略するが、断面馬蹄形状を有する線材16を、線材16の矩形部分が内面側になるように巻回することによって、コイル成形体12を形成することもできる。この場合にも、コイル成形体12の内面が平面状に形成されるので、コイル成形体12の内面とライニング管24の外面とがほぼ面接触することとなる。さらに、線材16の曲面部分がコイル成形体12の外面側になるため、コイル成形体12を既設管100に挿入する時に、コイル成形体12と既設管路10の内面との接触面積を小さく抑えて、挿入抵抗を低減することができる。
なお、上述したコイル成形体12の変形実施例においては、コイル成形体12の線材16の幅Wを大きく設定すれば、線材16を巻芯に巻き回しする回数が減るため、コイル成形体12を製造するときの作業性が向上し、また、コイル成形体12の線材16の厚みDを大きく設定すれば、コイル成形体12の耐外圧強度が向上することとなる。
さらにまた、この実施例では、コイル成形体12の呼び径を既設管100の内径と略等しく設定したが、これに限定される必要はない。
たとえば、コイル成形体12の呼び径を既設管100の内径よりも小さく設定してもよい。たとえば、既設管100よりも小径なコイル成形体12を用いる場合は、コイル成形体12を復元するときに、ライニング材14によってコイル成形体12に内圧をかけることで、コイル成形体12を拡径させて、既設管100の内面の全体に密着させる。こうすることにより、コイル成形体12を縮径させなくても既設管100内に容易に挿入することが可能になる。つまり、コイル成形体12を縮径させる作業、ならびに縮径させたコイル成形体12を復元する作業が不要となるので、作業性を向上させることができる。なお、この場合には、コイル成形体12内にライニング材14を予め挿入しておくことで、コイル成形体12とライニング材14とを同時に挿入するようにしてもよい。
また、既設管100よりも小径なコイル成形体12を用いる場合に、必ずしもライニング材14によってコイル成形体12に内圧をかけることで、コイル成形体12を拡径させる必要もなく、コイル成形体12にその巻回方向の反対方向への回転力を付与することで、コイル成形体12を拡径させるようにしてもよい。
さらに、既設管100よりも小径なコイル成形体12を用いる場合であっても、コイル成形体12を必要に応じて縮径させて既設管100内に挿入するようにしてもよい。
さらにまた、既設管よりも小径なコイル成形体12を用いる場合であっても、更生管路10に対して既設管100よりも小さい流量を確保すればよいのであれば、コイル成形体12を拡径させる必要もないので、既設管100よりも小径なコイル成形体12の中に、略円形等の直管などのコイル成形体12を拡径できないライニング材を挿入することで、更生管路10を形成するようにしてもよい。
また、コイル成形体12の呼び径を既設管100の内径よりもやや大きく設定してもよい。この場合には、やや強めの回転力を付与して縮径させたコイル成形体12を既設管100に挿入するとよい。すると、回転力から解放されることで元の径に戻ったコイル成形体12が既設管100の内面に密着するので、更生管路10の断面縮小をより小さくすることが可能である。
さらにまた、この実施例では、コイル成形体12の後方側の端部を回転しないように固定した状態で、挿入治具22の軸部22bをコイル成形体12の巻回方向と同方向に回転させることによって、コイル成形体12に回転力を付与したが、これに限定される必要はない。要は、コイル成形体12の長手方向を軸にして、コイル成形体12の一方側を自身の巻回方向と同方向に回転させるとともに、他方側を回転しないように固定するまたは反対方向に回転させるのであれば、コイル成形体12にその巻回方向と同方向に回転力を付与することができ、これによって、コイル成形体12が縮径されることとなる。
さらに、この実施例では、コイル成形体12にその巻回方向への回転力を付与することで、コイル成形体12を縮径させたが、これに限定される必要はない。たとえば、コイル成形体12にその巻回方向への回転力を付与する代わりに、あるいはそれに加えて、コイル成形体12にその伸長方向への引張力を付与することによって、コイル成形体12を縮径させてもよい。
たとえば、コイル成形体12にその伸長方向への引張力を付与するときには、コイル成形体12の後方側の端部が移動しないように固定した状態で、挿入治具22の軸部22bをコイル成形体12の挿入方向と同方向に引っ張るとよい。ただし、これに限定される必要はなく、コイル成形体12の長手方向を軸にして、コイル成形体12の一方側を軸方向に引っ張るとともに、他方側を移動しないように固定するまたは反対方向に引っ張るのであれば、コイル成形体12にその伸長方向への引張力を付与して、コイル成形体12を縮径させること可能である。
また、この実施例では、コイル成形体12を既設管100内に挿入する前にコイル成形体12を縮径させておき、その縮径させたコイル成形体12をそのまま既設管100内に挿入したが、これに限定される必要はない。
たとえば、コイル成形体12を縮径させずにそのまま既設管100内に挿入して、コイル成形体12が既設管100の曲がり管部104や段差部106を通過する時などに、必要に応じて、適宜コイル成形体12にその巻回方向への回転力を付与して、コイル成形体12を縮径させるようにしてもよい。こうすることにより、コイル成形体12が既設管100の曲がり部104や段差部106を通過し易くなる。
勿論、この場合にも、コイル成形体12にその巻回方向への回転力を付与する代わりに、あるいはそれに加えて、コイル成形体12にその伸長方向への引張力を付与することによって、コイル成形体12を縮径させてもよい。
さらに、既設管100内に挿入する前に、予めコイル成形体12を縮径させておき、その上でさらに、コイル成形体12が既設管100の曲がり管部104や段差部106を通過する時にも、必要に応じて、適宜コイル成形体12に巻回方向への回転力や伸長方向への引張力やそれらの両方を付与することによって、コイル成形体12を縮径させてもよい。
さらにまた、この実施例では、コイル成形体12の前方に挿入治具22を取り付け、この挿入治具22の棒部22bを牽引することによって、コイル成形体12を既設管100へ挿入したが、これに限定される必要はなく、本発明の技術的思想を実現できるものであれば、どのような挿入方法でもかまわない。たとえば、巻回方向への回転力を付与するまたは伸長方向への引張力を付与することで縮径させたコイル成形体12をそのまま既設管100に押し込むようにしてもよい。また、コイル成形体12に接続した牽引ワイヤをウインチ等で巻き取ることによって、コイル成形体12を既設管100に挿入するようにしてもよい。
図12−図17に示すこの発明の他の一実施例であるライニング工法は、拘束部材26を用いることで縮径させた状態を保持したコイル成形体12とライニング材14とを挿入して、既設管100内に更生管路10を形成する。以下、図1に示す実施例と共通する部分については同じ番号を付して、重複する説明は省略する。
図12に示すように、拘束部材26は、ポリエチレン等の合成樹脂製のシート28の周方向端部どうしを重ね合わせて、縫糸30で縫合する(縫い合わせる)ことによって筒形状にしたものである。
たとえば、シート28の周方向端部どうしは、縫糸を一方側から引っ張ると縫合が解けるが、その反対側から縫糸を引っ張っても縫合が解けないようにされた縫製方法(縫い方式)によって縫合される。
図13に示す具体例でいうと、拘束部材26の前方側(つまり、図13の図面右側)から縫糸30を引っ張ると、縫糸30が引き抜かれてシート28どうしの縫合が解けるが、拘束部材26の後方側(つまり、図13の図面左側)から縫糸30を引っ張っても、縫糸30を引き抜くことができないので、シート28どうしの縫合は解けない。
図13に示すように、拘束部材28の内部には、縮径させた状態のコイル成形体12が収容(封入)される。具体的には、巻回方向への回転力を付与することでコイル成形体12を既設管100よりも小径になるように縮径させる。そして、そのコイル成形体12を拘束部材26の中に収容することによって、コイル成形体12を縮径させた状態のまま保持している。なお、この実施例では、コイル成形体12は、その外径が既設管100の内径の90%程度になるように縮径されている。
さらに、図12および図13に示すように、縫糸30の前方側の端部は、拘束部材26の外側を通して、拘束部材26の後方側に延ばされる。そして、この延ばした部分が、詳細は後に説明するように、拘束部材26の縫合を解くための解き用糸32として利用される。
また、縫糸30の後方側の端部には、リード線34が接続される。リード線34は、拘束部材26の内部(つまり、コイル成形体12の内部)を通して、拘束部材26の前方側に延ばされる。リード線34の先端には、牽引ワイヤ38と接合するためのジョイント部36が設けられている。ただし、ジョイント部36の接続構造は、特に限定されず、この発明の要旨ではないため、図12および図14では詳細を図解していない。
図15−図18を参照して、このような拘束部材26の中にコイル成形体12を収容した拘束コイル成形体(更生用部材)40と、ライニング材14とを使用して、老朽化した既設管100を更生するライニング工法の手順を説明する。
先ず、拘束コイル成形体40を準備する。具体的には、コイル成形体12にその巻回方向への回転力を付与することで、コイル成形体12を既設管100よりも小径になるように縮径させるとともに、そのコイル成形体12を拘束部材26の中に収容する。
次に、拘束部材26のリード線34を、コイル成形体12の内部を通して、拘束部材26の前方側に引き出す。そして、そのリード線34のジョイント部36に、既設管100の引出口110側から挿入口108側に引き込んでおいた牽引ワイヤ38を接合する。
それから、拘束コイル成形体40を既設管100の挿入口108から少し挿入して、既設管100の引出口110側で牽引ワイヤ38をウインチ(図示せず)等で巻き取る。このとき、図15に示すように、拘束部材26の解き用糸32は、拘束部材26の外側を通して、拘束部材26の後方に引き出して、既設管100の挿入口108に残しておく。
そして、拘束コイル成形体40が既設管100の引出口110に到達した後、解き用糸32を拘束部材26の後方側、すなわち既設管100の挿入口108側に向けて引っ張る。
すると、図16(a)に示すように、シート28から縫糸30が順次引き抜かれて、シート28の周方向端部どうしの縫合が解けてゆく。シート28から縫糸30が全て引き抜かれると、拘束部材26は筒形状を保つことができなくなるので、縮径させたコイル成形体12が拘束部材26の拘束から解放される。
コイル成形体12が拘束部材26の拘束から解放されると、図16(b)に示すように、コイル成形体12はその復元力により拡径して元の径に戻り、コイル成形体12がシート28を介して既設管100の内面の全体に密着する。
その後、解き用糸32を既設管100の挿入口108側に向けて引っ張り続けることで、解き用糸32(縫糸30)に接続されたリード線34、およびリード線34のジョイント部36に接合された牽引ワイヤ38を既設管100の挿入口108側に引き戻すことができるので、リード線34のジョイント部36から牽引ワイヤ38を取り外して、その牽引ワイヤ38を次の拘束コイル成形体40のリード線34のジョイント部36に接合する。続いて、図16に示すように、新たに牽引ワイヤ38に接続した拘束コイル成形体40を、既設管100内に挿入する。
そして、既設管100の引出口110側で牽引ワイヤ38をウインチ(図示せず)等で巻き取ることによって、新たに牽引ワイヤ38に接続した拘束コイル成形体40(新しく挿入した拘束コイル成形体40)の前方側を、先に挿入しているコイル成形体12の後方側まで到達させる。
なお、図17においては、新しく挿入した拘束コイル成形体40の前方端が、先に挿入しているコイル成形体12の後方端に接触することで、新しく挿入した拘束コイル成形体40の位置決めを行うことが可能であるように見えるが、上述した図10や図11に示すコイル成形体12のように、線材16の厚み(つまり、コイル成形体12の径方向における線材16の長さ)が小さいコイル成形体12を使用する場合には、新しく挿入した拘束コイル成形体40が、先に挿入しているコイル成形体12の中に入ってしまうことも考えられる。よって、線材16の厚みが小さいコイル成形体12を使用する場合には、先に挿入しているコイル成形体12と、新しく挿入した拘束コイル成形体40との位置関係を、管内カメラ等によって適宜確認することが望ましい。
それから、新しく挿入した拘束コイル成形体40の前方側が、先に挿入しているコイル成形体12の後方側まで到達すると、上述したのと同じ要領で、コイル成形体12を拘束部材26の拘束から解放する。
ここで、コイル成形体12を拘束部材26の拘束から解放すると、コイル成形体12は拡径するが、軸方向の長さが短くなり、その分だけコイル成形体12どうしの間に隙間が生じることとなるので、次に、位置調整装置42を用いて、新しく挿入した拘束コイル成形体40の位置を調整する。
位置調整装置42の一例を挙げると、図17に示すように、位置調整装置42は、拡径部44、振動部46、および通気チューブ48を備えている。
拡径部44は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびエチレンプロピレンゴム(EPDM)等の合成ゴム、または天然ゴム等の弾性材からなり、中空ドーナツ形状または中空リング形状に形成される。拡径部44は、内部空間に通気部48から空気を注入されることによって膨らんで、既設管100の内面に密着する。
振動部46は、拡径部44の後方側に取り付けられる。振動部46は、拡径部44を振動させるためのものであり、たとえば圧縮空気で鋼製ボールを高速回転させることによって振動を発生させる方式のエアバイブレータ等が用いられる。ただし、これに限定される必要はない。
通気チューブ48は、拡径部44および振動部46に空気を供給するためのものであり、その先端部が拡径部44の内部空間および振動部46に気密的に接続される。また、通気チューブ48の後端部には、空気を供給することができるエアーポンプ(図示せず)が設けられている。
たとえば、位置調整装置42は、リード線34のジョイント部36などに繋げておき、拘束コイル成形体40の後方側を当該拘束コイル成形体40とともに移動させるようにする。それから、コイル成形体12を拘束部材26の拘束から解放した後で、拡径部44に空気を注入して膨らませるとともに、振動部46に空気を送り込んで振動させる。そして、図17(a)に示すように、牽引ワイヤ38をウインチ(図示せず)等で巻き取ることにより、新しく挿入したコイル成形体12の後方側に拡径部44を押し付ける。ただし、図17では、図面の簡素化のために、牽引ワイヤ38の図示を省略していることに留意されたい。すると、振動部46の振動が拡径部44からコイル成形体12に伝播することで、コイル成形体12と既設管100との摺動面の摩擦が低減されて、コイル成形体12を容易に移動できるようになる。続いて、そのまま牽引ワイヤ38をさらに巻き取ることにより、コイル成形体12を挿入方向に押し込んで、図17(b)に示すように、新しく挿入したコイル成形体12の前方側の端を、先に挿入しているコイル成形体12の後方側の端に密着または略密着させる。
それから、上述したのと同じ要領で、解き用糸32に接続されたリード線34、およびリード線34のジョイント部36に接合された牽引ワイヤ38を既設管100の挿入口108側に引き戻して、その牽引ワイヤ38をさらに次の拘束コイル成形体40の拘束部材26のリード線34のジョイント部36に接合する。
そして、これを繰り返すことによって、既設管100の全長に亘ってコイル成形体12を敷設する。
次に、コイル成形体12の内部にライニング材14を挿入する。具体的には、牽引ワイヤ38を既設管100の挿入口108側でライニング材14に接続して、その牽引ワイヤ38をウインチで巻き取り、ライニング材14をその先端が既設管100の引出口110に到達するまで挿入する。
続いて、ライニング材14内に蒸気や温水を供給した後、所定圧力に加圧して、コイル成形体12内にライニング管24を形成する。これによって、既設管100内にその全長に亘って更生管路10が形成される。
このように、この実施例においても、図1の実施例と同じように、既設管100の内面とライニング管24の外面との間にコイル成形体12が介在されるので、ライニング材14を円筒形に復元させるための時間を短縮できる。また、ライニング管24を形成するための時間も短縮することが可能である。したがって、施工性に優れる。
また、この実施例では、既設管100よりも小径になるように縮径させたコイル成形体12を拘束部材26の中に収容するようにしたため、コイル成形体12と既設管100とのクリアランスを十分確保できるので、コイル成形体12を既設管100へ挿入することが容易に行える。
そして、既設管100への挿入前ないし挿入時に、施工現場でコイル成形体12に巻回方向への回転力を付与して縮径させる必要がなくなるので、施工現場での作業時間を従来よりも短縮することができるし、労力を軽減することができる。
つまり、この実施例によれば、コイル成形体12を既設管100に容易に挿入でき、しかも施工現場での複雑な縮径作業が不要となるので、作業性を飛躍的に向上することができる。また、施工現場でコイル成形体12を縮径させる作業が不要になることで、作業員のスキルに依存せずに安定的に作業を行うことができるようになる。
さらに、この実施例では、コイル成形体12の既設管100への挿入時に、コイル成形体12と既設管100の内面との間に拘束部材26(シート28)が介在される。このため、コイル成形体12の挿入抵抗を軽減させることができる。しかも、シート28によってコイル成形体12と既設管100との直接的な接触を回避できるので、コイル成形体12の損傷を防止することも可能である。
さらにまた、コイル成形体12と既設管100の内面との間にシート28が介在されることにより、既設管100が破損しているときなどに、外からの侵入水をシート28によって止水することが可能である。したがって、ライニング材14を復元するときに、侵入水に起因した温度低下によってライニング材14の復元が不十分になってしまうこともない。
なお、この実施例においても、コイル成形体12にその巻回方向への回転力を付与する代わりに、あるいはそれに加えて、コイル成形体12にその伸長方向への引張力を付与することによって、コイル成形体12を縮径させるようにしてもよい。
また、この実施例においても、断面楕円形状を有する線材16、断面矩形状を有する線材16、断面半円形状を有する線材16、ないし断面馬蹄形状を有する線材16を巻回することによってコイル成形体12を形成するようにしてもよい。
さらに、図12に示す拘束部材26では、当該拘束部材26の径方向に重ね合わせたシート28の周方向端部どうしを縫糸30で縫合しているが、これに限定される必要はなく、拘束部材26の周方向に重ね合わせたシート28の周方向端部どうしを縫糸30で縫合するようにしてもよいし、また、拘束部材26の周方向に複数の縫合箇所を設けるようにしてもよい。
さらにまた、必ずしもシート28の周方向端部どうしを縫合して筒形状にした拘束部材26の中に縮径させたコイル成形体12を収容するとともに、縫糸30を引き抜くことによってこのコイル成形体12を拘束部材26の拘束から解放する必要もない。
たとえば、シート28の周方向端部どうしを融着ないし接着して筒形状にした拘束部材26の中に縮径させたコイル成形体12を収容するようにしてもよい。このような拘束部材26の拘束からコイル成形体12を解放するときには、図18に示すように、拘束部材26の後方側から軸方向に沿ってワイヤ50を延ばし、ワイヤ50が拘束部材26の外面から内面に亘るように拘束部材26の前方側に引っ掛けておく。そして、拘束コイル成形体40を既設管100に挿入した後、ワイヤ50の両端部を既設管100の挿入口108側に向けて引っ張ることによって、拘束部材26を軸方向の全長に亘って切断する。なお、この場合には、切断する線に沿って、予めシート28にミシン目や薄肉部等を形成しておくことが望ましい。
ただし、必ずしもシート28をその軸方向の全長に亘ってワイヤ50で切断する必要はなく、たとえば、シート28をその軸方向の全長に亘ってアイロン、電熱線等で加熱して溶解させるようにしてもよいし、また、温水、化学薬品等で化学的に溶解させるようにしてもよい。
また、図19に示すように、縮径させたコイル成形体12を、たとえば軟質合成樹脂等の柔軟性のある素材の薄膜52でインサート成形などによって被覆するようにしてもよい。たとえば、薄膜52による拘束からコイル成形体12を解放するときには、隣接する線材16間の隙間に合わせて切断線52a(図20の仮想線)を設定し、その切断線52aに沿って薄膜52を螺旋状に切断するとよい。この場合には、拘束部材26が可撓性を有することとなるので、コイル成形体12の長尺化を実現できる。したがって、施工性がより向上される。
さらにまた、必ずしも筒形状にした拘束部材26の中に縮径させたコイル成形体12を収容する必要はなく、紐や専用治具等でコイル成形体12を直接的に固定することによって、コイル成形体12を縮径させた状態のまま保持するようにしてもよい。
一例を挙げると、図20に示すように、2本の紐54a,54bが互い違いになるように、各紐54a,54bをコイル成形体12の軸方向の全長に亘って線材16の外側と内側とに交互に通し、それらの紐54a,54bの張力によってコイル成形体12を固定する。なお、この場合には、コイル成形体12の周方向に複数、たとえば3箇所以上の位置で2本の紐54a,54bによる固定を行うことが望ましい。
さらにまた、図17に示す実施例では、拡径部44に空気を注入して膨らませた後、振動部46の振動を伝播させた拡径部44によってコイル成形体12を押して移動させることで、コイル成形体12の位置を調整したが、これに限定される必要はなく、本発明の技術的思想を実現できるものであれば位置調整装置42はどのようなものでもかまわない。
たとえば、図示は省略するが、拡径部44の代わりに、既設管100の内径と略等しいサイズに設定された円板状の合成樹脂板を用いるようにしてもよい。また、拡径部44の代わりに、振動部46の後方に鉤状の係止部を取り付けて、この係止部にコイル成形体の後方端部を引っ掛けることによって、コイル成形体12を移動させるようにしてもよい。
また、位置調整装置42を、リード線34のジョイント部36などに繋げておくことで、拘束コイル成形体40の後方側を当該拘束コイル成形体40とともに移動させるようにしたが、これに限定される必要もなく、自走式ロボット(図示せず)などで既設管100の中に運び入れるようにしてもよい。
さらに、先に挿入しているコイル成形体12と、新しく挿入したコイル成形体12との隙間が、所定の耐外圧強度を確保できる程度の大きさであれば、コイル成形体12の位置を調整する必要はない。
さらにまた、このような位置調整装置42を、図1に示す実施例において用いることも可能である。こうすることにより、複数のコイル成形体12を軸方向に連結する必要がなくなるので、連結具18等が不要になる。
なお、上述した各実施例における「更生」とは、既設管100の補修作業や改築作業の全般を含む概念である。
また、上述した各実施例ではいずれも、既設管100内にその全長に亘って更生管路10を形成したが、これに限定される必要はなく、本発明のライニング工法によって既設管100を部分的に更生(補修)するようにしてもよい。たとえば、既設管100を部分的に更生する場合であれば、複数のコイル成形体12や複数の拘束コイル成形体40を使用する必要はなく、連結具18や位置調整装置42等が不要である。
さらに、上述した各実施例ではいずれも、既設管100内にコイル成形体12とライニング材14とを挿入することによって、既設管100内に更生管路10を形成したが、これに限定される必要はない。線材16を巻回することで筒状に形成したコイル成形体12は、あくまでライニング管14の耐外圧強度を補強するための強度補強体の一例であって、必ずしも強度補強体としてコイル成形体12を用いる必要はない。
たとえば、強度補強体の他の一例を挙げると、図21(a)に示す強度補強体56は、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックや硬質塩化ビニルなどの合成樹脂または金属等からなり、周方向の所定位置にスリットが設けられた円筒状に形成される。
この強度補強体56は、スリットを隔てて向かい合う周方向端部どうしを重ね合わせることによって縮径される。そして、そのようにして縮径させた強度補強体56を拘束部材26の中に収容(封入)することで、強度補強体56を縮径させた状態のまま保持できる。つまり、これによって、拘束強度補強体58(更生用部材)が形成される。
この場合にも、拘束強度補強体58を既設管100に挿入して、上述したのと同じ要領で、拘束部材26のシート28の周方向端部どうしの縫合を解くと、図21(b)に示すように、強度補強体56が拘束部材26の拘束から解放される。すると、強度補強体56はその復元力により拡径して元の円筒形状に戻り、強度補強体56がシート28を介して既設管100の内面の全体に密着する。
この実施例においても、コイル成形体12を既設管100に容易に挿入でき、しかも施工現場での複雑な縮径作業が不要となるので、作業性を飛躍的に向上することができる。
たとえば、「ライニング材」は、縮径加工により周方向の一部が押し込まれたまたは折畳まれて扁平化された縮径管に限らず、断面略円形等の直管をそのままの形状で縮径した縮径管でもよい。
さらにまた、ライニング管24は、必ずしも縮径管をコイル成形体12の内面に略密着するように復元したものである必要はない。本発明のライニング工法には、長尺の帯状部材を螺旋状に巻回したライニング管や、板状部材を周方向や長手方向に貼り付けたライニング管など、種々のライニング管を適用可能であり、さらには、樹脂材料以外のライニング管を適用するようにしてもよい。
さらに、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。