JP5686573B2 - 角目組織経編地と、それを使用した剥落防止用ネット - Google Patents

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Description

本発明は、多方面に使用可能な経編地と、その応用経編地に関し、詳しくは、外力に対しての形状変化に強く、丈夫で形態安定性の高い角目組織経編地を提供すると共に、この角目組織経編地を使用した、橋梁や陸橋等の建造物における部材が経年脆化や衝撃等により剥離落下する危険を回避するために用いる、剥落防止用ネットに関する。
落石の防止や、建設現場での器物の落下、更には作業者の落下事故を防ぐために様々な安全ネットが使用されている。
これらの安全ネットにはその性能、機能面で、強度、耐久性、取り扱いの利便性、敷設の利便性等が求められると共に、落下対象物に見合った性能、機能が求められている。
加えて安全ネットの製造に関しての利便性や経済性、更に、昨今では環境に優しい素材や景観を損ねない外観等も求められている。
そして、安全ネットには、建設現場で塗料の飛散防止や小物道具の落下防止のために主に足場に敷設されるような、ネット目が小さく比較的強度を必要としないものをはじめ、道路沿いに設けられる落石防止ネットのように数トンの落石を受け止めるための極めて丈夫なものまでが求められている。
以上のような要求に対して、これらを総合的に満足させる素材としては経編地が多く使用されている。
中でもラッシェル地が主流となっていて、このラッシェル地を素材とした安全ネットが多く開発され使用されている。
その特徴は、ネット目の形状や寸法の設定が比較的容易に行え、強度等の性能も得やすいこと、更には生産性が非常に良いことなどの利点による。
具体的には、建設現場で足場等に取り付けられ、塗料の飛散防止や小物道具の落下防止のために用いられる比較的、強度を要しないラッシェル地として、ネット目の小さいマーキゼット組織を用いたものが挙げられる。
マーキゼット組織は、主にカーテンのようなインテリア用のラッシェル地に用いられる組織で一辺が約1〜5mmの略正方形の角目組織である。
また、落石防止ネットや作業者の落下防止のための安全ネットのように高強度を要するラッシェル地としては、主に菱目のネット組織を用いたものがある。
これは、本編地を横方向に拡張すると菱形の編目となるもので安全ネットには多用されている。
このように、安全ネットの分野ではラッシェル地が主流となっていて多くの提案もなされている。例えば、特許文献1では、組織構造の提案がなされている。
これは作業者の墜落に耐え得る部分とボルト等の小さな落下物にも対応可能な部分を同時に併せ持つ構造のラッシェル地の提案である。
また、特許文献2ではラッシェル地とその張設工法について提案されている。
これらは、いずれも菱目のネット組織のラッシェル地についての提案となっている。
特許第2709397号公報 特許第4376607号公報
上記、説明したように、安全ネットの分野ではラッシェル地が主流となっていて、一定の評価を得ている。
つまり、高強度を必要とする安全ネットとしては菱目のネット組織のラッシェル地(以後、これを単に菱目ネットと言う)が、塗料の飛散防止や小物の器物落下防止等には角目であるマーキゼット組織のラッシェル地(以後、これを単にマーキゼットと言う)が主流となっていた。
ところが、菱目ネットにもマーキゼットにも安全ネットとしての問題点があり、これらの解決が待ち望まれていた。
例えば、菱目ネット1は、図7の組織図(理解を容易にするために一部を太線としている)に示すように2系列の基本組織11、12でネット目が形成され、これに挿入糸Sが挿入されて強度を得た構造の菱目ネット1が主流となっている。
菱目ネット1は、隣接する2系列の基本組織11、12が一定の間隔をもって互いに右、左と交叉編成をして形成する交叉連結部2で連結されてネット目を形成することから、編地を横方向に拡張した際、図8の実態模式図に示すようにネット目は菱形の菱目3となる。
このように形成される菱目ネット1は、編地自体は丈夫なものとなり、大きな強度を必要とする安全ネットとして用いることができる。
ところが、菱目ネット1には、その組織構造上、横方向に引かなければ菱目3が現れない問題がある。
つまり、通常は、図7のように縦方向にスリット状のスリット目4があるのみでマーキゼットのような整然とした角目が最初から表出することはない。
このように菱目ネット1はその菱目3を表出させるためには横方向の引張力が必要となり、このことが編地自体の不安定性をもたらし、縫製時の加工に不便で、設置した際に下方に垂れ下がる等の問題を生ずる。
この問題を解決するために図9の実態模式図に示すように、菱目ネット1を横方向に引張して、これを熱セットして、略正方形状の菱目3を得て、その後、バイアスカット線5に従い、バイアスカット(カット線を太線で示す)を施し、マーキゼットのような角目の編地を得る手段がある。
このような菱目ネット1の使用方法は、上記した特許文献2に示されている。
この手法においては、熱セットはかなり高い温度で行う必要があり、編成糸の強度の低下をもたらす恐れがあること、更にはバイアスカットするのでカットロス部6が生じて経済的でないこと、また、安全ネットにはその両サイドに補強用のロープを通す必要があるが、バイアスカットした菱目ネット1には、その両サイドにロープを通す場合、手作業で行う必要があることなどの多くの問題があった。
以上のような菱目ネット1の欠点を解消するために、角目が整然と配列され、形態的にも安定したマーキゼットに高強度の編成糸を用い、角目を大きなものにして菱目ネットの代替品として採用することも試みられたが、マーキゼットには、その組織構造上、決定的な問題があった。マーキゼット7は、図10の組織図(一部を太線で示す)に示すように、縦軸T、横軸Yがはっきりと直交した状態に形成される。
それは、縦軸Tは鎖編Cと、その鎖編Cに挿入される挿入糸S(本従来例では2系列の挿入糸S1、S2を使用)の挿入部SSとによって形成され、横軸Yは鎖編Cを連結する挿入糸S(挿入糸S1、S2)の掛渡し部SBによって形成されることによる。
このことから、マーキゼット7は、編み上がり時点で、略正方形の角目71が整然と配列された安定した編地に形成され、柔軟で薄手であることから嵩張らず、現場での敷設やかたづけにも便利である利点を有する。
また、縦軸T、横軸Yが直交した状態であり、それが目印となって裁断や縫製加工に極めて便利である。
そして、マーキゼット7の縦軸Tは、1本の鎖編Cを軸に形成されているので、縦方向の引張力に耐え得る構造を有し、鎖編Cに強い糸を用いれば大きな強度を得ることができる。
ところが、横軸Yは外観上は1本のラインに見えるが実際は連続したものではなく、挿入糸Sの掛渡し部SBの集合で形成されている。
よって、横方向の引張力に対しては強度を発揮し得ない弱点がある。
横方向への強度を上げるために挿入糸Sに高強度の編成糸を用いても、図11の拡大実態模式図(わかりやすくするために挿入糸Sについては挿入糸S1のみを示す)に示すように、挿入糸S1は、鎖編CのニードルループNLとシンカーループSLの間をかいくぐるように挿入されているだけであり、この挿入糸S1に引張力が働くと挿入糸S1はずるずると引き出されてしまう、ずれ現象をきたす。
このことは挿入糸S2も同様である。
挿入糸S1にずれ現象が生ずると、整然と配列されている略正方形の角目71は変形し、大きな目の部分や小さな目の部分が生ずる。
つまり、マーキゼット7は編み上がりの状態では整然とした角目71を有する編地であるが、一旦、外力が加わると簡単に変形してしまう欠点がある。
このことは変形して大きくなった角目71から落下物がすり抜けてしまう等の危険性が生じ致命的な問題となる。
加えて、挿入糸Sのずれ現象は、挿入糸Sと鎖編Cとの摩擦を生じ、その摩擦熱により互いの編成糸が切断してしまう大きな問題を有していた。
これらの問題を防止するためにマーキゼット7に樹脂加工を施す手段も講じられたが、樹脂加工により角目が詰まる、或いは編地の柔軟度が阻害されたり製造コストがかかるなどの問題がありマーキゼット7の欠点を解消する効果的手段とはなり得なかった。
このようにマーキゼット7には、略正方形の角目71が整然と配列された安定した編地であり、現場での敷設やかたづけにも便利で、しかも裁断や縫製加工に極めて便利である長所を有するものの、組織構造的な弱点があり、例え、編成糸に強度のある素材を用いても、高強度を必要とする安全ネット等には使用し得ない問題があり、菱目ネット1の代替品とはなり得なかったのである。
以上のように、菱目ネット1、マーキゼット7のいずれにも組織構造的欠陥があり、これらの問題の解決が待たれていた。
本発明は、以上のような諸事情を背景になされたものである。
すなわち、本発明の目的は、互いに隣接する基本組織11、12同士を一定の間隔で互いに交叉編成した交叉連結部2で連結される堅固な組織構造で高強度を発揮し得る菱目ネット1の長所と、縦軸T、横軸Yが直交した状態で角目71が整然と配列され、裁断や縫製加工に極めて便利なマーキゼット7の長所とを併せ持つ、高強度で形態安定性の高い角目組織経編地Wを提供することである。
そして、更なる目的は、上記角目組織経編地Wの利点を生かした剥落防止用ネットMを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、鋭意、研究した結果、従来のマーキゼットの欠点を根本的に解消した、丈夫で、角目変形のない安定した角目組織経編地Wを開発するとともに、その角目組織経編地Wを応用した剥落防止用ネットMを完成させたものである。
即ち、本発明は、(1)、一定の間隔に配列された鎖編と、該鎖編を連結する連結編とで構成され、連結編が、鎖編に編込まれる一定長の編込み部と鎖編間に掛け渡される掛渡し部とで構成され、編込み部と掛渡し部とが交互に折り返して繰り返し形成され、鎖編と、連結編の編込み部と掛渡し部とで角目を形成しており、3本以上の鎖編間に掛け渡されている連結編の掛渡し部が、鎖編、並びに連結編の編込み部のニードルループとシンカーループとの間に挿通されており、鎖編間に掛け渡される掛渡し部が、2本以上である角目組織経編地に存する。
即ち、本発明は、()、鎖編と編込み部で構成される縦軸に挿入糸が挿入されている上記1記載の角目組織経編地に存する。
即ち、本発明は、()、上記1記載の角目組織経編地で形成された剥落防止用ネットに存する。
即ち、本発明は、()、所用位置の鎖編間の2本以上の掛渡し部間に補強用ひも体が縦方向に挿通されている上記(3)記載の剥落防止用ネットに存する。
即ち、本発明は、()、所用位置の複数本の鎖編間に、補強糸が掛け渡されている上記(3)記載の剥落防止用ネットに存する。
即ち、本発明は、()、補強糸が角目組織経編地の両サイドの複数本の鎖編間に掛け渡されていて耳部を形成している上記4又は5記載の剥落防止用ネットに存する。
本発明の角目組織経編地は、編込み部と掛渡し部とで構成される連結編の編込み部が、配列された鎖編にニードルループを形成して編み込まれているので、本角目組織経編地に外力が加わり、掛渡し部に引張力がかかっても、その引張力が編込み部のニードルループに伝達され、その結果、ニードルループはきっちりと締まった状態となり、鎖編に食い込み、掛渡し部のずれ現象が発生することが全くなく、角目形状は確実に保たれることとなり、このような角目組織経編地を用いた剥落防止用ネットにおいては、安全ネットとしての効果を確実に発揮する。
そして、本発明の角目組織経編地は、編込み部と掛渡し部とで構成される連結編は、鎖編が存在しなくても、連結編自体で角目組織を形成できる組織構造となっていて、加えて鎖編が存在するので、両者の相乗効果により、極めて堅固な組織構造となり、このような組織構造の角目組織経編地を用いた剥落防止用ネットは従来にない強度を発揮する。
そして、本発明の角目組織経編地の連結編の掛渡し部が複数本の鎖編、例えば3本の鎖編に渡って掛け渡される場合には、2本の鎖編間に存在する掛渡し部が必ず2本となり、掛渡し部の強度が増すのに加えて、2系列以上の連結編が対向するように使用されている場合には、掛渡し部の本数増加に加えて、一層、安定した堅固な角目組織経編地となり、剥落防止用ネット等の安全ネットの利用範囲が格段に広がる。
そして、本発明の角目組織経編地の鎖編と編込み部で構成される縦軸に、挿入糸が挿入されている場合には、更に高強度の剥落防止用ネット等が得られる。
そして、本発明の角目組織経編地は、任意の位置の鎖編間に存在する2本以上の掛渡し部の間に補強用ひも体を縦方向に挿通することできる組織構造となっていて、高い強度を得ることができる。
しかも、補強用ひも体の挿通がラッシェル機での編成時に可能であるので、後に手作業で補強用ひも体を挿通する面倒もなく、極めて生産性が良い利点がある。
そして、こうして得られる補強用ひも体を有する剥落防止用ネットは、その設置の際に補強用ひも体の箇所で堅固な取り付けが可能となり、剥落防止用ネットとしての効果を充分に発揮できる。
そして、本発明の剥落防止用安全ネッの両サイドの2本以上の鎖編間に補強糸が掛け渡されている場合には、その部分が耳部となって熱セット等の加工や裁断に効力を発揮する。
また、剥落防止用ネットの複数箇所に補強糸を掛け渡した部分を形成すれば、編地全体の強度が向上するばかりでなく、必要に応じてその箇所を縦方向に切断しても、補強糸が耳部となって加工や裁断、取り付けに便利な剥落防止用ネットが得られる。
更に、補強糸と補強用ひも体を併用すれば、一層の強度向上と利便性が得られる。
図1は、角目組織経編地Wの組織図(一部を太線で示す)である。 図2は、連結編R1で形成される角目編地W1の実態模式図(一部を太線で示す)である。 図3は、連結編R2で形成される角目編地W2の実態模式図(一部を太線で示す)である。 図4は、連結編R1と連結編R2を同時編成して得られる角目編地W3の組織図(一部を太線で示す)である。 図5は、角目組織経編地Wの所用箇所に、補強用ひも体Hを挿通、並びに補強糸Gを掛け渡して耳部Eを形成した剥落防止用ネットMの実態模式図である。 図6は、剥落防止用ネットMを編成するラッシェル機のオサと編針の部分説明図である。 図7は、挿入糸Sを挿入した菱目ネット1の組織図である。 図8は、菱目ネット1を横方向に引いて菱目3を表出した菱目ネット1の実態模式図である。 図9は、菱目ネット1を横方向に引いて菱目3を表出した菱目ネット1をバイアスカットする説明図である。 図10は、マーキゼット7の組織図(一部を太線で示す)である。 図11は、マーキゼット7における鎖編Cと挿入糸S1の実態模式図(一部を太線で示す)である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態における角目組織経編地Wは、2.5ゲージのラッシェル機によって編成される。
2.5ゲージとは、1インチ間に存在する編針Nの本数である。本角目組織経編地Wは、図1(理解を容易にするために一部を太線で示す)の組織図に示すように、鎖編Cと、連結編Rと、挿入糸Sとを組織の主要素として編成される。
鎖編C(1−0/0−1)は、略1cmの間隔を持って配列される。
連結編Rには、連結編R1(1−0/0−1/1−0/0−1/1−0/1−2/2−1/1−2/2−1/1−2)と連結編R2(3−2/2−3/3−2/2−3/3−2/0−1/1−0/0−1/1−0/0−1)の2系列を使用している。
挿入Sは(0−0/1−1)で挿入される。
使用素材については、鎖編Cに560dt/48fのポリエステル、連結編R1、R2に1670dt/120fのポリエステル、挿入糸Sに560dt/48fのポリエステルを用いている。
連結編R1は、図1に示すとおり、5コースの編込み部Fと、隣接する2本の鎖編C間に掛け渡される掛渡し部Bとで構成される。
図1の組織図から連結編R1のみを抜き出した図2の実態模式図(理解を容易にするために一部を太線で示す)に示すように、連結編R1のみで1枚の角目編地W1が構成されている。
連結編R1のそれぞれの編込み部Fは連続した縦軸Tを形成する。
そして、掛渡し部Bはその集合体として横軸Yを形成している。
編込み部Fと掛渡し部Bとは、略90度の角度で交互に折り返しながら、これを繰り返し、角目形状の編地を形成している。
ここで、編込み部Fの編込みの意味は、開き目、或いは閉じ目のニードルループNLを形成していることを言い、図2に示すように、前記5コースの編込み部Fとは5個のニードルループNLを形成している部分の意味となる。
編込み部Fに対する用語は、図11に示す挿入部SSである。挿入部SSは単にS字カーブを描いているだけでニードルループNLは形成されていない。
連結編R2についても、図1から連結編R2のみを抜き出した図3の実態模式図(理解を容易にするために一部を太線で示す)に示すように、連結編R2のみで1枚の角目編地W2を構成している。
連結編R1と同様に、連結編R2の編込み部Fは、連続した縦軸Tを形成し、掛渡し部Bはその集合体として横軸Yを形成している。
編込み部Fと掛渡し部Bとが、略90度の角度で交互に折り返しながら角目形状の編地を形成していることも連結編R1と同様であるが、連結編R2は、中に1本の鎖編Cを挟んで3本の鎖編Cに渡っているので、2本の鎖編C間においては掛渡し部が重なり、2本の掛渡し部Bが存在することとなる。
そして、連結編R1と連結編R2は同時に編成されるので、図4の組織図(連結編R1を太線で示す)に示すように、連結編R1と連結編R2とで1枚の角目編地W3が構成される。
連結編R1と連結編R2のそれぞれの編込み部Fは同時に1本の縦軸Tを形成している。
また連結編R1と連結編R2とは、それぞれの掛渡し部Bが対向して編成されている。
つまり、連結編R1の掛渡し部Bが左側から右側に向かって掛け渡される場合には、連結編R2の掛渡し部Bは、右側から左側に向かって掛け渡される。
この結果、連結編R1と連結編R2の掛渡し部B同士はX字状に交叉して、釣り合いの取れた集合体としての横軸Yが構成される。
そして、2系列の連結編R1、R2で形成される編地W3の縦軸Tに鎖編Cが同時に編み込まれると共に挿入糸Sが挿入されて、図1に示す縦軸Tと横軸Yとで構成される角目組織経編地Wが形成される。
本角目組織経編地Wの特徴は、前記したように連結編R1と連結編R2はそれぞれが、個別に編地を形成しているところにある。
つまり、鎖編Cが無くても角目編地W1、W2による角目編地W3が構成される。
言い換えれば、本角目組織経編地Wは、連結編R1、R2で構成される角目編地W3の縦軸Tを、更に鎖編Cと挿入Sとにより補強した縦軸Tを有する角目組織経編地Wとなっていて、極めて堅固な構成となる。
これは、先に説明したマーキゼットが、鎖編Cが存在しなければ、挿入糸Sがばらばらになり編地が存在しえないのに比べて大きな違いとなる。
上記構成の角目組織経編地Wに、縦方向の引張力がかかった場合には、鎖編Cと、挿入糸Sと、連結編R1、並びに連結編R2の編込み部Fとで構成される縦軸Tで充分に対抗できる。
また、横方向からの引張力がかかった場合には、横軸Yを構成する、それぞれの掛渡し部Bが、その両端に連なる編込み部Fによりしっかりと鎖編Cに固定されていて引き出されることが無く、掛渡し部Bの長さは一定に保たれ、角目が変形することがない。
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、第1の実施の形態で示した角目組織経編地Wに、図5(本図は、第3、第4の実施の形態をも示す(一部省略している))の実態模式図に示すように、その縦方向に補強用ひも体Hを挿通して編地自体の強度を高めると共に、設置の際に補強用ひも体Hの箇所で堅固な取り付けが可能な剥落防止用ネットMを示す。
補強用ひも体Hは、角目組織経編地Wの両サイドに挿通されることを基本とするが、必要に応じて、編地幅の所用箇所に挿通可能である。
補強用ひも体Hには、6mmφのロープを使用している。
素材はポリエステルを使用しているが、種々の合成樹脂や天然素材系等の使用も可能である。
補強用ひも体Hの挿通は、連結編R1の掛渡し部Bと連結編R2の掛渡し部Bとの間に挿通される。
補強用ひも体Hの挿通は手作業によらず、ラッシェル機により編成時に行える。
この際の編成には、図6のオサLと編針Nの部分説明図(一部省略)に示すように、5枚のオサL1〜L5を用いる(オサL6は第3の実施の形態の編成に用いるので記載する)。
オサL1で鎖編Cを編成し、オサL2で連結編R1を編成、オサL3により補強用ひも体Hを挿通し、オサL4で連結編R2を編成、そしてオサL5で挿入糸Sを挿入する。
オサL3は、オサL2とオサL4の間に位置するので、編成原理上、必然的に補強用ひも体Hは、連結編R1の掛渡し部Bと、連結編R2の掛渡し部Bの間に挿通、保持されることとなる。
このようにして、ラッシェル機上で補強用ひも体Hは角目組織経編地Wに挿通され、数本の巻き取りローラで巻き取られる(図示しない)。
巻き取りの際、補強用ひも体Hは厚みを有しているので、角目組織経編地Wの他の部分に比較して厚くなり、そのアンバランスから、そのままでは巻き取りが不可能となる。
そこで、本実施の形態では、巻き取りローラの補強用ひも体Hが通過する部分を凹状に細くしている。
このことで、角目組織経編地Wの他の部分との厚みの差が無くなり、巻き取りの問題が解消される。
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、図5の実態模式図に示すように角目組織経編地Wの両サイドの所用本数の鎖編C間に補強糸Gを掛け渡した剥落防止用ネットMを示す(図5では、片側のみを示す)。
補強糸Gは、オサL6により、挿入組織(0−0/3−3)で1コースごとに折り返して挿入される。
本実施の形態では3本の鎖編Cに渡って挿入されるが、必要に応じて鎖編Cが4本でもそれ以上でも良い。
両サイドの補強糸Gは、耳部Eとなって、熱セット等の加工や裁断に効力を発揮する。また、剥落防止用ネットMの所用の複数箇所に補強糸Gを掛け渡した部分を形成すれば、編地全体の強度が向上するばかりでなく、必要に応じてその箇所を縦方向に切断しても、補強糸Gが耳部Eとなって加工や裁断、取り付けに便利な剥落防止用ネットMが得られる。
図5では、補強用ひも体Hも記載しているが、使用する素材や用途によっては補強糸Gのみでも良い。
(第4の実施の形態)
本実施の形態では、図5の実態模式図(一部省略)に示すように、第2の実施の形態で示した補強用ひも体Hと第3の実施の形態で示した補強糸Gの両者を擁した剥落防止用ネットMを示す。
必要に応じて剥落防止用ネットMの所用箇所に補強用ひも体Hと補強糸Gを適宜、配置できるので、強度の向上や加工、取り付けに更なる利便性を発揮する。
以上、本発明をその実施の形態を例に説明したが、本発明は要旨の変更のない限り、実施の形態のみに限定されるものではなく多様な変形例が可能である。
例えば、連結編Rにおける編込み部Fの編み込みコース数は5コースに限定されるものではなく、それ以上、或いはそれ以下であっても当然良い。
また、掛渡し部Bが掛け渡される鎖編Cの本数も4本以上とすることも可能である。
更に、補強糸Gの組織は(0−0/3−3)に限らず、鎖編C間に掛け渡される組織であればその他の組織も当然採用可能である。
また、補強用ひも体Hは、補強糸Gが掛け渡された同一箇所に挿通することも可能である。
そして、角目組織経編地Wにおける鎖編Cや挿入糸Sについて、縦軸Tを更に補強する意味でその本数を増やし、1本の縦軸Tに2本以上の鎖編Cや挿入糸Sを加えることも可能である。
そして、角目組織経編地Wや剥落防止用ネットMの組織構成に関しても、本発明の組織を基本にして、これに別の組織を組み合わせること等も当然可能である。
本発明の角目組織経編地Wは、極めて堅固な角目組織を採用しているので、剥落防止用ネットMとして機能を発揮するが、その他、例えば、のりや牡蠣などの養殖用ネット、或いは道路沿いの安全ネット、防風、防砂、防雪等のネット、更には野球やテニス等のスポーツに使用されるネット類、そして、FRPのような複合材料の強化芯地として、更には運搬用袋体等のキャリヤー用等にも充分採用可能である。
1・・・菱目ネット
11、12・・・基本組織
2・・・交叉連結部
3・・・菱目
4・・・スリット目
5・・・バイアスカット線
6・・・カットロス部
7・・・マーキゼット
71・・・角目
B・・・掛渡し部
C・・・鎖編
E・・・耳部
F・・・編込み部
G・・・補強糸
H・・・補強用ひも体
L1〜L6・・・オサ
M・・・剥落防止用ネット
N・・・編針
NL・・・ニードルループ
R・・・連結編
R1、R2・・・2系列の連結編
S・・・挿入糸
S1、S2・・・2系列の挿入糸
SB・・・マーキゼット組織の掛渡し部
SS・・・マーキゼット組織の挿入部
SL・・・シンカーループ
T・・・縦軸
W・・・角目組織経編地
W1、W1、W3・・・角目編地
Y・・・横軸

Claims (6)

  1. 一定の間隔に配列された鎖編と、該鎖編を連結する連結編とで構成され、連結編が、鎖編に編込まれる一定長の編込み部と鎖編間に掛け渡される掛渡し部とで構成され、編込み部と掛渡し部とが交互に折り返して繰り返し形成され、鎖編と、連結編の編込み部と掛渡し部とで角目を形成しており、
    3本以上の鎖編間に掛け渡されている連結編の掛渡し部が、鎖編、並びに連結編の編込み部のニードルループとシンカーループとの間に挿通されており、
    鎖編間に掛け渡される掛渡し部が、2本以上であることを特徴とする角目組織経編地。
  2. 鎖編と編込み部で構成される縦軸に挿入糸が挿入されていることを特徴とする請求項1記載の角目組織経編地。
  3. 請求項1記載の角目組織経編地で形成されたことを特徴とする剥落防止用ネット。
  4. 所用位置の鎖編間の2本以上の掛渡し部間に補強用ひも体が縦方向に挿通されていることを特徴とする請求項3記載の剥落防止用ネット。
  5. 所用位置の複数本の鎖編間に、補強糸が掛け渡されていることを特徴とする請求項3記載の剥落防止用ネットに存する。
  6. 補強糸が角目組織経編地の両サイドの複数本の鎖編間に掛け渡されていて耳部を形成していることを特徴とする請求項4又は5記載の剥落防止用ネット。
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