JP5684072B2 - Cvd装置及び超電導線材の製造方法 - Google Patents
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Description
この種のCVD法を利用するCVD装置(気相成長装置)として、従来、原料ガスを反応室内に噴出する原料ガス噴出部と、反応室内で長尺の超電導用基材(テープ状基材)を支持するサセプタと、このサセプタを加熱するヒータとを備え、当該サセプタからの伝熱により超電導用基材を加熱しつつ、この超電導用基材の表面に原料ガスを供給して超電導線材を製造するコールドウォール型(内熱型)のCVD装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記した構成では、成膜に寄与しない未反応の原料ガスは、超電導用基材の幅方向における外側のサセプタ上で分解して結晶化し、当該サセプタ上に堆積して堆積物(異常成長層)を形成する。この堆積物は、延長ノズルとサセプタの間における隙間の狭い部分に形成され易く、成膜時間が長くなるにつれて当該堆積物は拡大し、延長ノズルから上記隙間を通じて外側に排出される排気ガスの流れを妨げる傾向にある。
また、堆積物が超電導用基材上に進出することにより、超電導用基材の幅方向の端部付近の成膜を阻害、あるいは、当該超電導用基材表面の超電導層の異常成長を引き起こすおそれがある。
このため、超電導層の成膜が長時間に及んだ場合、上記した堆積物が拡大することにより、超電導用基材の表面において、超電導層の結晶異常が生じるようになり、製造した超電導線材の超電導特性が低下するといった問題がある。
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態にかかるCVD装置10の概略構成を示す図である。図1に示すように、CVD装置10は、長尺のテープ状に形成された超電導用基材(以下、テープ状基材Tという)を巻き取り走行させる基材搬送部11と、テープ状基材Tの幅方向の両側にそれぞれ配置される長尺のダミーテープSを巻き取り走行させるダミーテープ搬送部13と、超電導薄膜の原料を供給する原料溶液供給部15と、原料溶液を気化させる気化器17と、気化された原料ガス、テープ状基材T及びダミーテープSがそれぞれ供給され、テープ状基材Tの表面に薄膜を形成する成長チャンバ(反応室)19と、を備えて構成されている。この成長チャンバ19にはリールチャンバ21,21が連結され、これら成長チャンバ19及びリールチャンバ21,21内に上記したテープ状基材T及びダミーテープSが走行する閉空間が形成される。
気化器17は、原料溶液供給部15から供給された原料溶液を、キャリアガス供給部29から供給されるキャリアガス(例えばアルゴンAr)とともに噴霧して加熱することにより気化させる。この気化した原料ガスは、酸素供給部31から供給される酸素(O2)と混合された後に成長チャンバ19へと供給される。
テープ状基材Tは、幅10mm程度のテープ形状を有し、例えば、100μmの厚さの金属基板上に中間層を形成したものが用いられる。金属基板の材料としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Mo,Ta,Ag,Cu,Fe,Nb,Ni,W、Mn等の金属又はこれらの合金を用いることができる。この中間層は、超電導体の結晶粒を2軸配向して成膜させるためのものである。
テープ上基材Tは、低磁性の無配向金属基板を用いて、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法と呼ばれるイオンビームアシストを用いたスパッタ装置により、無配向金属基板上に単層あるいは多層の2軸配向した中間層を形成したものを用いることができ、2軸配向した中間層上に、更にスパッタ装置またはPLD(Pulse Laser Deposition)装置により、複数の中間層を形成したものでもよい。
また、テープ上基材Tとして、ニッケル(Ni)合金からなり、還元雰囲気で配向熱処理により、表面酸化膜の除去と同時に2軸配向を行った配向金属基板を用いて、中間層を配向金属基板上に形成したものを用いてもよい。
ダミーテープ用リール25,25は、一方向に回転駆動されるように構成され、ダミーテープSを、一方のダミーテープ用リール25から他方のダミーテープ用リール25に搬送する。これにより、原料ガスが結晶化し、ダミーテープS上に堆積した堆積物を、ダミーテープSとともにダミーテープ用リール25に巻き取ることで当該堆積物を成長チャンバ19の外部に効率よく排出することができる。また、ダミーテープ用リール25,25は、テープ状基材Tの巻き掛け方向における基材用リール23,23の外側に配置されている。ここで、テープ状基材Tの巻き掛け方向とは、基材用リール23,23に巻き掛けられるテープ状基材Tの長手方向をいう。この構成によれば、ダミーテープS及びダミーテープS上に堆積した堆積物は、テープ状基材Tが搬送される領域の外側でダミーテープ用リール25,25に巻き取られるため、この巻き取りの際に、堆積物が万一、ダミーテープS上から落下したとしても、この落下した物がテープ状基材Tの搬送領域に進入することはなく、テープ状基材Tの品質を確保することができる。
また、ダミーテープSは、図2に示すように、テープ状基材Tの幅方向における両縁部からそれぞれ所定間隔Pだけ離間して配置されている。テープ状基材T及びダミーテープSは、それぞれ走行時に幅方向に振れて(蛇行して)走行することがある。この場合、テープ状基材TとダミーテープSとが接触すると、テープ状基材Tの表面の成膜品質に影響を及ぼすおそれがあるため、所定間隔Pは、予想される幅方向のぶれ量よりも大きな値(本実施形態では1〜2mm)に設定されている。
図4は、成長チャンバ19の内部構造を示す側断面図であり、図5は図4のA−A断面の模式図である。成長チャンバ19は横長の直方体形状を有しているものとし、成長チャンバ19の短手方向(テープ状基材T及びダミーテープS,Sの走行方向に直交する方向)を幅方向という。
図4及び図5に示すように、成長チャンバ19の底壁19Aには開口部37が形成されており、この開口部37にサセプタ33が配設されている。サセプタ33は、走行するテープ状基材T及びダミーテープS,Sを支持するとともに、伝熱によりテープ状基材T及びダミーテープS,Sを加熱する熱伝導プレートである。サセプタ33の幅方向中央の領域がテープ状基材T及びダミーテープS,Sの走行領域となる。
サセプタ33は、図5に示すように、周縁部が成長チャンバ19の底壁19Aから所定の間隙をもって離間した状態で配設される。テープ状基材Tに超電導層を成膜する際、サセプタ33を700〜800℃で保持する必要があるが、成長チャンバ19の底壁19Aとサセプタ33が密接していると、サセプタ33から底壁19Aへの伝熱によりサセプタ33の高温保持が困難となるためである。
このように、本構成では、原料ガス噴出口41aから噴出された原料ガスをテープ状基材Tの表面に案内する延長ノズル43を設けることにより、テープ状基材Tの成膜に寄与する原料ガスの量を増加させることができ、原料収率の向上を図ることができる。さらに、本構成では、図4に示すように、延長ノズル43の2枚の第1遮蔽板43a,43aで挟まれた成長領域Lにおいて、テープ状基材Tに超電導層が成膜される。つまり、第1遮蔽板43a,43aで原料ガスの長手方向の拡散を抑制することにより、成長領域Lにおいて良質な超電導層が成膜することができる。
この堆積物は、時間が経過するにつれて成長する傾向にあり、上記した延長ノズル43とサセプタ33との所定間隔hに対する当該堆積物の高さの割合が増加すると、図6に示すように、製造した超電導線材の臨界電流Icの値が大きく低下し、超電導特性が悪化することが判明した。
これらダミーテープSは、図5に示すように、延長ノズル43の第2遮蔽板(炉壁)43bの真下に配置されている。第2遮蔽板43bの真下は、原料ガスが流れる経路の内、最も狭い部分であるため、原料ガスが通過する際に分解して堆積しやすいことが実験等により判明している。このため、本構成では、延長ノズル43の第2遮蔽板43bの下端部(先端)43b1がダミーテープSの真上に(ダミーテープSの幅内に対向して)配置されることにより、堆積物50をダミーテープS上に形成することができ、当該堆積物50を容易に成長チャンバ19から排出できる。
さらに、本構成では、ダミーテープSは、第2遮蔽板43bの外面43b2(端部)からテープ状基材Tと反対側に所定距離(本実施形態では3mm)はみ出して配置されている。この構成によれば、延長ノズル43内から排気部45に向かって原料ガスが流れる場合に、第2遮蔽板43bの外面43b2よりも外側に形成された堆積物50についてもダミーテープS上に堆積させることができる。
上述のように、ダミーテープS上の堆積物は、時間が経過するにつれて成長する傾向にある。このため、図6に示すように、延長ノズル43とサセプタ33との所定間隔hに対する堆積物50の高さの割合が閾値を超えると、この堆積物50がダミーテープS上だけでなくテープ状基材T上に堆積することにより、製造された超電導線材の臨界電流値Icが大きく低下する。
この臨界電流値Icが低下する時間tは、原料ガスの供給率や上記所定間隔hに依存して変化する値である。このため、本実施形態では、超電導層を成膜する条件から上記臨界電流値Icが低下する時間tを試験的に測定し、この時間tよりもダミーテープSが成長領域L(図4)に滞在する総時間が短くなるような走行速度に、当該ダミーテープSの走行速度が設定されている。この場合、走行速度を下限近くに設定すると、不安定要素が増すため、上記時間tに所定の安全率(例えば0.9)を乗じた値を使用するのがよい。
ここで、ダミーテープSの走行速度を速くすると、堆積量は低減できるものの、ダミーテープSの使用量が増大する。このため、ダミーテープSの走行速度は、成長領域L内に滞在する総時間が上記時間tよりも短くなる走行速度以上であって、テープ状基材Tの走行速度以下に設定される。
ダミーテープSは、上記した時間tに基づいて設定された走行速度で連続的に走行しても良いし、ダミーテープSを成長領域L内で停止しておき、上記した時間tが経過する前に、ダミーテープSを走行させて新たな部位を成長領域に滞在させても良い。
次に、第二実施形態にかかるCVD装置について説明する。
図7は、第二実施形態にかかるCVD装置100の概略構成を示す図である。上記した第一実施形態のCVD装置10と同一の構成を示すものは同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態のCVD装置100は、テープ状基材Tを巻き取り走行させる基材搬送部111を備え、この基材搬送部111は、テープ状基材Tが巻き掛けられる一対の基材用リール23,23と、これら基材用リール23,23間に配置されるターン用リール113,113とを備える。このターン用リール113は、成長チャンバ19内で複数回反転させるためのリールであり、一回の走行で成膜時間を長く確保することができるため、複数回の成膜処理を行うものに比べて容易に超電導層の成膜を行うことができる。
また、図8に示すように、テープ状基材Tをマルチターン方式とした場合でも、ダミーテープSは、テープ状基材Tの縁部から所定間隔Pだけ離間して配置されるように構成される。
この第2実施形態では、テープ状基材Tが複数回反転することにより、図9に示すように、延長ノズル43の第2遮蔽板43b,43b間の距離が拡大される。この場合であっても、ダミーテープSは、延長ノズル43の第2遮蔽板43bの真下に配置されている。このため、堆積物をダミーテープS上に形成することができ、当該堆積物を容易に成長チャンバ19から排出できる。
さらに、この第二実施形態でも、ダミーテープSは、第2遮蔽板43bの外面43b2(端部)からテープ状基材Tと反対側に所定距離(本実施形態では3mm)はみ出して配置されているため、延長ノズル43内から排気部45に向かって原料ガスが流れることにより、第2遮蔽板43bの外面43b2よりも外側に形成された堆積物についてもダミーテープS上に堆積させることができる。
例えば、本実施形態では、ダミーテープSは、ダミーテープ搬送部13により、成長チャンバ19内を走行する構成となっているが、堆積物が堆積したダミーテープSが除去されるものであれば、これに限るものではない。
また、本実施形態では、サセプタ33上に、テープ状基材TとダミーテープS,Sとを走行させ、このダミーテープS,Sの真上(上空)に、延長ノズル43の第2遮蔽板43bの下端部43b1を配置した構成について説明したが、これに限るものではなく、延長ノズル43の第2遮蔽板43bの先端が、ダミーテープS,Sの幅内に対向するのであれば、例えば、サセプタ33の下面に、テープ状基材TとダミーテープS,Sとを走行させ、このダミーテープS,Sの真下に、延長ノズルの第2遮蔽板の上端部を配置した構成としてもよい。
また、上記した第二実施形態では、テープ状基材Tをマルチターン方式としたCVD装置100について説明し、テープ状基材Tを反転させるターン用リール113を成長チャンバ19内に配置していたが、これに限るものではなく、ターン用リールをリールチャンバ21内に配置することもできる。
この構成によれば、すべてのリールがリールチャンバ21内に配置されるため、各リールのメンテナンス等の作業を容易に行うことができる。さらに、成長チャンバ19をコンパクトに形成することができるため、原料ガスの流れを安定化することができ、これに伴い超電導膜の安定した製造が期待できる。
11、111 基材搬送部
13 ダミーテープ搬送部
15 原料溶液供給部
17 気化器
19 成長チャンバ(反応室)
21 リールチャンバ
23 基材用リール
24 金属基板
25 ダミーテープ用リール
26 中間層
33 サセプタ
35 ヒータ
41 原料ガス噴出部
43 延長ノズル(原料ガス輸送路)
43a 第1遮蔽板
43b 第2遮蔽板(炉壁)
43b1 下端部(先端)
43b2 外面(端部)
113 ターン用リール
L 成長領域
P 所定間隔
S ダミーテープ
T テープ状基材
h 所定間隔
t 時間
Claims (9)
- 原料ガスを噴出する原料ガス噴出部と、
超電導用基材を支持するとともに伝熱により前記超電導用基材を加熱するサセプタと、
前記サセプタを加熱するヒータと、
前記原料ガス噴出部から噴出された前記原料ガスを前記超電導用基材の表面に案内する原料ガス輸送路と、を備え、
前記超電導用基材の幅方向における両側にダミーテープが配置されていることを特徴とするCVD装置。 - 前記原料ガス輸送路は、前記サセプタから所定間隔だけ離間して配設され、前記原料ガス輸送路の路壁の先端が前記ダミーテープの幅内に対向することを特徴とする請求項1に記載のCVD装置。
- 前記ダミーテープの幅方向において、前記原料ガス輸送路の路壁の端部から前記ダミーテープが前記超電導用基材と反対側にはみ出して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のCVD装置。
- 前記ダミーテープは、前記超電導用基材の幅方向における両縁部からそれぞれ所定間隔だけ離間して配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のCVD装置。
- 前記超電導用基材を一対のリールに巻き掛け、前記超電導用基材の巻き掛け方向において、前記リールの外側に配置される一対のダミーテープ用リールに前記ダミーテープを巻き掛けていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のCVD装置。
- 超電導用基材と、前記超電導用基材の幅方向における両側にダミーテープを配置する工程と、
前記超電導用基材の表面と前記ダミーテープの表面とに原料ガスを案内して、前記超電導用基材上に超電導層を形成する工程と、
前記ダミーテープを走行させて、前記ダミーテープ上の堆積物を排出する工程と、を備えたことを特徴とする超電導線材の製造方法。 - 前記ダミーテープは、金属基板と、前記金属基板上に形成された中間層とを有していることを特徴とする請求項6に記載の超電導線材の製造方法。
- 前記ダミーテープは、前記中間層上に超電導層を有していることを特徴とする請求項7に記載の超電導線材の製造方法。
- 前記ダミーテープは、前記超電導用基材の走行速度以下で走行することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の超電導線材の製造方法。
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