JP5854853B2 - Cvd装置 - Google Patents
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この種のCVD法を利用するCVD装置(気相成長装置)として、従来、原料ガスを反応室内に噴出する原料ガス噴出部と、反応室内で長尺の超電導用基材(テープ状基材)を支持するサセプタと、このサセプタを加熱するヒータとを備え、当該サセプタからの伝熱によりテープ状基材を加熱しつつ、このテープ状基材の表面に原料ガスを供給して超電導線材を製造するコールドウォール型(内熱型)のCVD装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記した構成では、成膜に寄与しない未反応の原料ガスは、テープ状基材の幅方向における外側のサセプタ上で分解して結晶化し、当該サセプタ上に堆積して堆積物(異常成長層)を形成する。この堆積物は、延長ノズルとサセプタの間における隙間の狭い部分に形成され易く、成膜時間が長くなるにつれて当該堆積物は拡大し、延長ノズルから上記隙間を通じて外側に排出される排気ガスの流れを妨げる傾向にある。
また、成長した堆積物がテープ状基材上に進出することにより、テープ状基材の幅方向の端部付近の成膜を阻害、あるいは、当該テープ状基材表面の超電導層の異常成長を引き起こすおそれがある。
このため、超電導層の成膜が長時間に及んだ場合、上記した堆積物が拡大することにより、テープ状基材の表面において、超電導層の結晶異常が生じるようになり、製造した超電導線材の超電導特性が低下するといった問題がある。
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態にかかるCVD装置10の概略構成を示す図であり、図2は、テープ状基材Tの配置構成を示す平面図である。
図1に示すように、CVD装置10は、長尺のテープ状に形成された超電導用基材(以下、テープ状基材Tという)を巻き取り走行させる基材搬送部11と、超電導薄膜の原料を供給する原料溶液供給部15と、原料溶液を気化させる気化器17と、気化された原料ガス、及び、テープ状基材Tがそれぞれ供給され、テープ状基材Tの表面に薄膜を形成する成長チャンバ(反応室)19とを備えて構成されている。この成長チャンバ19にはリールチャンバ21,21が連結され、これら成長チャンバ19及びリールチャンバ21,21内に上記したテープ状基材Tが走行する閉空間が形成される。
気化器17は、原料溶液供給部15から供給された原料溶液を、キャリアガス供給部29から供給されるキャリアガス(例えばアルゴンAr)とともに噴霧して加熱することにより気化させる。この気化した原料ガスは、酸素供給部31から供給される酸素(O2)と混合された後に成長チャンバ19へと供給される。
テープ状基材Tは、幅10mm程度のテープ形状を有し、例えば、100μmの厚さの金属基板上に中間層を形成したものが用いられる。金属基板の材料としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Mo,Ta,Ag,Cu,Fe,Nb,Ni,W,Mn,Cr等の金属又はこれらの合金を用いることができる。この中間層は、超電導体の結晶粒を2軸配向して成膜させるためのものである。
テープ状基材Tは、低磁性の無配向金属基板を用いて、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法と呼ばれるイオンビームアシストを用いたスパッタ装置により、無配向金属基板上に単層あるいは多層の2軸配向した中間層を形成したものを用いることができ、2軸配向した中間層上に、更にスパッタ装置またはPLD(Pulse Laser Deposition)装置により、複数の中間層を形成したものでもよい。
また、テープ状基材Tとして、ニッケル(Ni)合金からなり、還元雰囲気で配向熱処理により、表面酸化膜の除去と同時に2軸配向を行った配向金属基板を用いて、中間層を配向金属基板上に形成したものを用いてもよい。
図3は、成長チャンバ19の内部構造を示す側断面図であり、図4は図3のA−A断面の模式図である。成長チャンバ19は横長の直方体形状を有しているものとし、成長チャンバ19の短手方向(テープ状基材Tの走行方向に直交する方向)を幅方向という。
図3及び図4に示すように、成長チャンバ19の底壁19Aには開口部37が形成されており、この開口部37にサセプタ33が配設されている。サセプタ33は、図4に示すように、走行するテープ状基材Tを支持する支持部33Aを備え、この支持部33A上に位置するテープ状基材Tを伝熱により加熱する熱伝導プレートである。支持部33Aは、サセプタ33の幅方向略中央に形成され、この支持部33Aに相当する領域がテープ状基材Tの走行領域となる。
サセプタ33は、図3及び図4に示すように、周縁部が成長チャンバ19の底壁19Aから所定の間隙34をもって離間した状態で配設される。テープ状基材Tに超電導層を成膜する際、サセプタ33を700〜800℃で保持する必要があるが、成長チャンバ19の底壁19Aとサセプタ33が密接していると、サセプタ33から底壁19Aへの伝熱によりサセプタ33の高温保持が困難となるためである。
また、成長チャンバ19の底壁19Aとサセプタ33との間隙34からは不活性ガス(例えばN2)が導入される。この不活性ガスは、原料ガスが間隙34からヒータ35の設置空間に流入することにより、ヒータ35が劣化するのを防止するために導入される。つまり、成長チャンバ19は、間隙34を導入口とする不活性ガス導入部36(図4)を有している。
このように、本構成では、原料ガス噴出口41aから噴出された原料ガスをテープ状基材Tの表面に案内する延長ノズル43を設けることにより、テープ状基材Tの成膜に寄与する原料ガスの量を増加させることができ、原料収率の向上を図ることができる。さらに、本構成では、図3に示すように、延長ノズル43の2枚の第1遮蔽板43a,43aで挟まれた成長領域Lにおいて、テープ状基材Tに超電導層が成膜される。つまり、第1遮蔽板43a,43aで原料ガスの長手方向の拡散を抑制することにより、成長領域Lにおいて良質な超電導層が成膜することができる。
この堆積物は、時間が経過するにつれて成長する傾向にあり、上記した延長ノズル43とサセプタ33との所定間隔hに対する当該堆積物の高さの割合が増加すると、製造した超電導線材の臨界電流Icの値が大きく低下し、超電導特性が悪化することが判明した。
これら溝部38,38は、図5に示すように、断面矩形状であって、延長ノズル43の第2遮蔽板(路壁)43bの真下に形成されている。第2遮蔽板43bの真下は、原料ガスが流れる経路の内、最も狭い部分であるため、原料ガスが通過する際に分解して堆積しやすいことが実験等により判明している。このため、本構成では、延長ノズル43の第2遮蔽板43bの下端部(先端)43b1が溝部38の真上に(溝部38の幅内に対向して)形成されることにより、形成された堆積物50を溝部38内に収容することができる。これによれば、堆積物50がある程度成長したとしても、この堆積物50と第2遮蔽板43bの下端部43b1との間隔を確保することができ、当該堆積物50により上記間隔を通じて外側に排出される原料ガスの流れを阻害することが防止される。
さらに、溝部38内に堆積物50を堆積させることにより、この溝部38内の堆積物50がテープ状基材Tの上まで成長することを抑制できる。従って、堆積物50が超電導層の成膜を阻害することを防止でき、テープ状基材Tの表面への超電導層の成膜を安定して行うことができる。
さらに、サセプタ33は、テープ状基材Tを支持する支持部33Aの両側であって、延長ノズル43の第2遮蔽板43bの下端部43b1と対向する位置に、当該支持部33Aよりも高さの低い溝部38を備えるため、形成された堆積物50を溝部38内に収容することができる。これによれば、堆積物50がある程度成長したとしても、この堆積物50と第2遮蔽板43bの下端部43b1との間隔を確保することができ、当該堆積物50により上記間隔を通じて外側に排出される原料ガスの流れを阻害することが防止される。
また、溝部38内に堆積物50を堆積させることにより、この溝部38内の堆積物50がテープ状基材Tの上まで成長することを抑制できる。従って、堆積物50が超電導層の成膜を阻害することを防止でき、テープ状基材Tの表面への超電導層の成膜を安定して行うことができる。
次に、本実施形態の変形例について説明する。
[変形例1]
上記した実施形態では、溝部38は、断面矩形状に形成されていたが、これに限るものではなく、図6に示すように、上面側の幅W1を底面側の幅W3よりも大きく形成した断面略台形状の溝部38を形成しても良い。各溝部38は、底面から上面に向かって傾斜する傾斜面38A,38Aをそれぞれ備える。その他の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
この構成によれば、溝部38を延長ノズル43の第2遮蔽板43bの下端部43b1先端の厚みW2よりも簡単に幅広に形成することができるとともに、原料ガスが溝部38の各傾斜面38Aに沿って流れることにより、第2遮蔽板43bの下端部43b1とサセプタ33との隙間を流れる際の流通抵抗を低減することができる。
[変形例2]
また、上記した実施形態では、サセプタ33に溝部38を形成していたが、これに限るものではなく、図7に示すように、支持部33Aの幅方向両側に、この支持部33Aよりも高さの低い低部39を形成した構成としても良い。この低部39は、支持部33Aの幅方向両縁からサセプタ33の両縁まで略同一高さに形成されている。
この構成によれば、サセプタ33の上面に形成される凹凸を抑えることができるため、第2遮蔽板43bの下端部43b1とサセプタ33との隙間を原料ガスが流れる際の流通抵抗をより一層低減することができる。
図8は、第二実施形態にかかる成長チャンバの内部構造を示す部分断面図であって、図5に相当する図である。
この第二実施形態では、サセプタ33は、支持部33Aの幅方向両側に形成された溝部38に冷却材(低温部材)52が配置されている点で、上記した第一実施形態と構成を異にする。本実施形態では、冷却材52は支持部33Aよりも低温となる低温部55として機能する。また、その他の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
冷却材52は、サセプタ33を構成するステンレススチールに比べて、熱伝導率が小さく、放射率が大きな材料(例えば、石英、アルミナ等)で形成されるため、ヒータ35(図4)によって加熱されたサセプタ33の熱が冷却材52に伝達されにくく、かつ、冷却材52の放出されやすいため、この冷却材52をサセプタ33よりも低温に保つことが可能となる。
実験によれば、延長ノズル43の第2遮蔽板43bの下端部43b1に対向する溝部38に冷却材52を配置したことにより、この冷却材52の表面温度が、サセプタ33の支持部33Aの表面温度に比べて50℃以上低下することが判明した。
さらに、サセプタ33は、テープ状基材Tを支持する支持部33Aの両側であって、延長ノズル43の第2遮蔽板43bの下端部43b1と対向する位置に、当該支持部33Aよりも高さの低い溝部38を備え、この溝部38に当該支持部33Aよりも温度の低い冷却材52を配置したため、原料ガスが冷却材52の表面で熱分解することを抑制することができ、当該冷却材52の表面上への堆積物50の形成を抑制することができる。従って、冷却材52の上に堆積した堆積物がテープ状基材Tの上まで成長することを抑制することができるため、堆積物が超電導層の成膜を阻害することを防止でき、テープ状基材Tの表面への超電導層の成膜を安定して行うことができる。
[変形例3]
上記した実施形態では、溝部38に配置された冷却材52は、サセプタ33の支持部33Aと略同一の高さに形成されていたが、これに限るものではなく、図9に示すように、冷却材52の上面52Aを支持部33Aの上面から突出させて配置しても良い。
この構成では、冷却材52の上面52Aは、支持部33A上に位置するテープ状基材Tの表面高さよりも低い高さ位置に設定されている。これによれば、冷却材52がテープ状基材Tよりも高くなることが防止され、テープ状基材Tの表面から冷却材52の上面52Aに原料ガスをスムーズに流すことができ、第2遮蔽板43bの下端部43b1と冷却材52との隙間を流れる際の流通抵抗を低減することができる。
なお、この構成では、第2遮蔽板43bの下端部43b1と冷却材52との所定間隔hは、上記した実施形態と同程度に設定することが望ましい。
また、本実施形態では、溝部38は、断面矩形状に形成されていたが、これに限るものではなく、図10に示すように、上面側の幅W1を底面側の幅W3よりも大きく形成した断面略台形状の溝部38を形成し、この溝部38に略同形状をした冷却材52を配置する構成としても良い。
この構成では、上記した実施形態の構成に比べて、サセプタ33の表面における低温となる領域の面積を拡大することができるため、サセプタ33の表面上への堆積物の形成をより抑制することができる。
また、本実施形態では、サセプタ33に溝部38を形成していたが、これに限るものではなく、図11に示すように、支持部33Aの幅方向両側に、この支持部33Aよりも高さの低い低部39を形成し、この低部39に冷却材52を配置する構成としても良い。低部39は、支持部33Aの幅方向両縁からサセプタ33の両縁まで略同一高さに形成されている。
この構成によれば、冷却材52の形状を溝部38と合致させる必要はないため、この冷却材52の形状の自由度が向上し、冷却材52の成型を容易に行うことができる。なお、この構成では、上記した変形例3に示したように、テープ状基材Tの表面(上面)よりも低い範囲内で、冷却材52の上面52Aを支持部33Aの上面から突出させても良い。
図12は、第三実施形態にかかる成長チャンバの内部構造を示す部分断面図であって、図5に相当する図である。
上記した第二実施形態では、サセプタ33は、図12に示すように、支持部33Aの幅方向両側に、溝部38(低部39)を備え、この溝部38(低部39)に冷却材52を配置する構成としていたが、これに限るものではなく、サセプタ56は、テープ状基材Tを支持する支持部56Aの幅方向両側に冷却材52を配置した構成としても良い。
この冷却材52は、テープ状基材Tから所定間隔Pをあけて、支持部56Aと略同一の高さ位置に配置され、この冷却材52の厚みD1は、テープ状基材Tの厚みよりも小さく形成されている。本実施形態では、冷却材52が低温部として機能する。また、その他の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
さらに、本実施形態では、サセプタ56は、支持部56Aに溝部を設ける必要はなく、サセプタ56の構成を簡素化するとともに、冷却材52を簡単に配置することができる。
例えば、本実施形態では、成長チャンバ19内を一本のテープ状基材Tが往復する構成としたが、これに限るものではなく、当該テープ状基材Tを成長チャンバ19内で複数回反転させるマルチターン方式としても良い。この構成では、成長チャンバ19内で並設されるテープ状基材Tを支持する支持部の両側に低部もしくは低温部が形成される。
19 成長チャンバ(反応室)
33、56 サセプタ
33A、56A 支持部
35 ヒータ
36 不活性ガス導入部
38 溝部(低部)
39 低部
41 原料ガス噴出部
43 延長ノズル(原料ガス輸送路)
43b 第2遮蔽板(路壁)
50 堆積物
52 冷却材
52A 上面
55、57 低温部
T テープ状基材
Claims (8)
- 原料ガスを噴出する原料ガス噴出部と、
テープ状基材を支持するとともに伝熱により前記テープ状基材を加熱するサセプタと、
前記原料ガス噴出部から噴出された前記原料ガスを前記テープ状基材の表面に案内する原料ガス輸送路と、を備え、
前記サセプタは、前記テープ状基材を支持する支持部の前記テープ状基材の幅方向における両側であって、前記原料ガス輸送路の路壁の先端と対向する位置に、当該支持部よりも高さの低い低部を備えたことを特徴とするCVD装置。 - 前記低部は、前記原料ガス輸送路の路壁の先端の厚みよりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のCVD装置。
- 前記サセプタは、前記支持部の両側に前記テープ状基材に沿って延びる一対の溝部を備え、前記低部は、少なくとも前記溝部の底面を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のCVD装置。
- 前記低部には、前記サセプタよりも温度が低い低温部材が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のCVD装置。
- 原料ガスを噴出する原料ガス噴出部と、
テープ状基材を支持するとともに伝熱により前記テープ状基材を加熱するサセプタと、
前記原料ガス噴出部から噴出された前記原料ガスを前記テープ状基材の表面に案内する原料ガス輸送路と、を備え、
前記サセプタは、前記テープ状基材を支持する支持部の前記テープ状基材の幅方向における両側であって、前記原料ガス輸送路の路壁の先端と対向する位置に、当該支持部よりも温度の低い低温部を備えたことを特徴とするCVD装置。 - 前記低温部には、前記サセプタよりも温度が低い低温部材が配置されていることを特徴とする請求項5に記載のCVD装置。
- 前記低温部材は、前記サセプタを形成する材料よりも熱伝導率の小さな材料で形成されていることを特徴とする請求項4または6に記載のCVD装置。
- 前記低温部材の表面の高さ位置は、前記支持部上に支持される前記テープ状基材の表面の高さ位置よりも低いことを特徴とする請求項4、6、7のいずれかに記載のCVD装置。
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