JP6062275B2 - Cvd装置及び超電導薄膜の成膜方法 - Google Patents
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しかし、遮蔽ガスは遮蔽板に沿って、該遮蔽板とサセプタとの隙間を遮蔽するように流れるため、この遮蔽ガスによって成膜領域の温度が変動することにより、例えば異相が発生する等、適正な成膜が行われず、超電導特性が低下するおそれがあるという問題があった。
本発明は、遮蔽ガスによる成膜領域の温度変動を抑え、テープ状基材の表面への超電導薄膜の成膜を安定して行うことができるCVD装置及び超電導薄膜の成膜方法を提供することを目的とする。
この構成において、遮蔽ガス噴出部は、サセプタに対して略直角に遮蔽ガスを噴出する構成とすることが望ましい。ここで、略直角とは、サセプタに対し垂直、或いは、遮蔽板の面内で僅かに傾いた角度であることを示し、遮蔽ガスによってサセプタと遮蔽板との隙間を遮蔽することができる角度である。
図1は、本実施形態のCVD装置の概略構成を示す図である。
本実施形態のCVD装置1は、長尺のテープ状に形成された超電導用基材(以下、テープ状基材50という)を巻き取り走行させる基材搬送部40と、超電導薄膜の原料を供給する原料溶液供給部30と、原料溶液を気化させる気化器20と、気化された原料ガス、及び、テープ状基材50がそれぞれ供給され、テープ状基材50の表面に超電導薄膜を形成する反応室10と、遮蔽ガスを反応室10へ供給する遮蔽ガス供給部60等を備えている。
気化器20は、原料溶液供給部30から供給された原料溶液をキャリアガスとしてのArとともに噴霧させたのちに加熱して気化させる。その後、気化した原料ガスをO2と混合して、反応室10へと供給する。
反応室10は、内部を走行するテープ状基材50の表面に気化器20から供給された原料ガスを吹き付けて、テープ状基材50の表面に成膜を行う。反応室10の内部の構成に関しては、後に詳述する。
テープ状基材50は、幅10mm程度のテープ形状を有し、例えば、0.1mmの厚さの金属基板上に超電導体の結晶粒を二軸配向して成膜させるための中間層が設けられたものが用いられる。
反応室10は、図1に示すように、テープ状基材50を支持するとともに伝熱により加熱する金属(例えばステンレススチール)製のサセプタ13と、このサセプタ13を加熱するヒータ15とを備えている。すなわち、CVD装置1は、コールドウォール(内熱)型のCVD装置である。
図2は、反応室10の内部構造を示す平面図、図3は、反応室10の基材走行方向に沿った断面構造を模式的に示す図である。反応室10は横長の直方体形状を有しているものとし、反応室10の短手方向(テープ状基材50の走行方向に直交する方向)を幅方向という。図2及び図3に示すように、反応室10の底壁17には、テープ状基材50の走行方向に延びるサセプタ13が設けられている。サセプタ13は、走行するテープ状基材50を加熱する熱伝導プレートであり、テープ状基材50の表面を反応室10内で適切な温度に保つように、サセプタ13の下面に配置されるヒータ15(図1)により所定の温度(例えば700〜800℃)に加熱される。テープ状基材50は、サセプタ13の幅方向の略中央部にテープ状基材50の走行領域が形成される。
本実施形態では、第1遮蔽板12、12は、図3に示すように、上端から下端まで貫通した中空構造となっており、遮蔽ガス供給部60から供給された遮蔽ガスを第1遮蔽板12の上端から導入して下端の吹き出し口12aからテープ状基材50へと吹き出すようになっている。すなわち、本実施形態では、遮蔽ガス噴出部25は、第1遮蔽板12と一体に形成されている。
吹き出し口12aは、図2に示すように、遮蔽ガスがサセプタ13の横幅に広がって噴出されるように、横幅に対して縦幅(テープ状基材50の走行方向の厚み)が比較的薄い矩形状に設定され、この矩形状に設定された吹き出し口12aから、第1遮蔽板12の真下の領域に遮蔽ガスをカーテン状に吹きつけることが可能となっている。
第1遮蔽板12の下端面の吹き出し口12aから吹き出した遮蔽ガスは、テープ状基材50の上から第1遮蔽板12の下部をテープ状基材50の走行方向とほぼ垂直に排気口24aへと向かい排出される。この遮蔽ガスの流れによって、原料ガスが成膜領域A2の両端部及び基材導入領域A1又は基材導出領域A3へ侵入することを防ぐことができる。また、キャリアガスと遮蔽ガスに同一種のArを利用することによって、異なる気体の間での相互作用などを考慮する必要がなくなり、簡便な構成とすることができる。
遮蔽ガスは、通常、常温(例えば25℃)で噴出されるため、テープ状基材50の表面温度(例えば700〜800℃)に比べると著しく低い。このため、遮蔽ガスによって、基材導入領域A1から成膜領域A2へ進入するテープ状基材50の表面温度が変動することにより、例えば異相が発生する等、適正な成膜が行われず、超電導線材の超電導特性が低下するおそれがあるという問題があった。
この遮蔽ガス温度調整部70は、図3に示すように、遮蔽ガス供給部60から延びる供給管71と、この供給管71と第1遮蔽板12の上端面の遮蔽ガス導入口12bとの間に配置され、遮蔽ガスを加熱するヒータ72と、遮蔽ガスの吹き出し口12a近傍に配置されて、吹き出し口12aにおける遮蔽ガスの温度を計測する温度センサ73と、この温度センサ73の検出温度に基づいて、上記ヒータ72を制御する制御部(不図示)を備える。
本実施形態では、基材搬送部40が、テープ状基材50を反応室10内に往復搬送することで、テープ状基材50の表面に超電導薄膜を成膜する構成であるため、テープ状基材50の走行方向によって、基材導入領域A1と基材導出領域A3との位置が切り替わるようになっている。このため、両方の第1遮蔽板12に、遮蔽ガス噴出部25及び遮蔽ガス温度調整部70を備える構成としている。テープ状基材50の走行方向が一方に決まっている場合には、遮蔽ガス噴出部25及び遮蔽ガス温度調整部70は、基材導入領域A1と成膜領域A2とを区画する第1遮蔽板12に設ければ良い。
上述のように、遮蔽ガス温度調整部70によって、遮蔽ガスを加熱することにより、成膜領域A2へ進入するテープ状基材50の表面温度の変動を抑えることができることが判明した。さらに調査を進めることにより、遮蔽ガスの温度条件と成膜された超電導線材の超電導特性との関係が判明した。
実施例1では、厚さ100μmのハステロイ板上に、厚さ数百nmのGZO/IBAD−MgO/CeO2を積層した幅10mmのテープ状基材50を用いて、このテープ状基材50を上述したCVD装置1内を走行させながら成膜を行った。この場合の反応圧力は10Torrに設定され、テープ状基材50を54m/hの速度で11回移動させることにより、テープ状基材50の表面に約1μmのY系超電導層を成長させた。
成膜したY系超電導層の上にAg安定化層を形成した後、酸素中において熱処理を施して実施例1に係る超電導線材を作成した。
また、実施例1では、成膜時に、遮蔽ガス噴出部25(第1遮蔽板12)の吹き出し口12aから250℃に加熱されたアルゴンガス(遮蔽ガス)を600sccmの流量で、テープ状基材50の表面に対して垂直方向より吹き出している。
実施例2では、アルゴンガスの加熱温度を210℃とした点で実施例1と異なり、その他の条件は、実施例1と同一である。
実施例3では、アルゴンガスの加熱温度を280℃とした点で実施例1と異なり、その他の条件は、実施例1と同一である。
実施例4では、アルゴンガスの加熱温度を190℃とした点で実施例1と異なり、その他の条件は、実施例1と同一である。
実施例5では、アルゴンガスの加熱温度を300℃とした点で実施例1と異なり、その他の条件は、実施例1と同一である。
比較例1では、成膜時に、遮蔽ガス噴出部25(第1遮蔽板12)の吹き出し口12aからアルゴンガスの吹き出しを行っていない点で実施例1と異なり、その他の条件は、実施例1と同一である。
比較例2では、アルゴンガスの加熱をしていない(常温)とした点で実施例1と異なり、その他の条件は、実施例1と同一である。
比較例3では、アルゴンガスの加熱をしていない(常温)とした点、及び、アルゴンガスの吹き出し流量を1000sccmとした点で実施例1と異なり、その他の条件は、実施例1と同一である。
表1に示すように実施例1〜3では、臨界電流値は290A、280A、270Aと高い値を示す。これに対して、アルゴンガスを用いない比較例1では臨界電流値は190Aと低い値となり、またアルゴンガスの加熱を行わない比較例2、3では、600sccmの場合の臨界電流値は200A、1000sccmの場合の臨界電流値は150Aとなりそれぞれ実施例1〜3より低い値となった。
このため、遮蔽ガスとしてのアルゴンガスを成膜時に吹き出すことに十分な効果があることが判明した。
アルゴンガスの温度が200℃未満の場合は、アルゴンガスにより成膜領域A2へ進入するテープ状基材50の表面温度が低下するため、この成膜領域A2内での原料ガスの温度が低下することにより、成膜(a軸配向)に悪影響を及ぼすことが判明している。また、アルゴンガスの温度が300℃以上の場合は、原料ガスが分解してしまうため、臨界電流値が低下し、超電導特性が低下する。このため、アルゴンガスの温度を200℃以上300℃未満としたことにより、超電導薄膜の成膜時における原料ガスの分解や、成膜への悪影響を抑えることができ、超電導特性を向上させることができる。
例えば、本実施形態では、反応室10内を一本のテープ状基材50が往復する構成としたが、これに限るものではなく、当該テープ状基材50を反応室10内で複数回反転させるマルチターン方式としても良い。この構成では、図4に示すように、テープ状基材50の幅方向における遮蔽ガス噴出部25の吹き出し口12aの長さは、すべてのテープ状基材50に対して遮蔽ガスを噴出させるのに十分な長さとなっている。すなわちテープ状基材50の幅方向の吹き出し口12aの長さx、テープ状基材50の幅をw、成膜するテープ状基材50の本数をn、テープ状基材50の間隔をdとしたとき、x>w×n+d×(n−1)の関係を満たしている。
この構成によれば、成膜領域A2へ進入する複数のテープ状基材50の各表面温度の変動を抑えることにより、マルチターン方式で搬送されるテープ状基材50の表面への超電導薄膜の成膜を安定して行うことができ、超電導特性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1遮蔽板12の内部を中空に形成し、この中空部を遮蔽ガス噴出部として第1遮蔽板12と一体に形成しているが、例えば、薄い第1遮蔽板12と平行に遮蔽ガスの供給管を別に設けることも可能である。また、吹き出し口12aが第1遮蔽板12の近傍で、該第1遮蔽板12とサセプタ13との隙間よりも上方にあり、遮蔽ガスが第1遮蔽板12に沿って流れるようにしても良い。
また、第1遮蔽板12は、テープ状基材50の通過部分のみトンネル状に開口し、その下端から遮蔽ガスを吹き出すとともに、テープ状基材50の走行路の両脇部分では、下端をサセプタ13及び反応室10の底壁17と接続して通気を行わない構造としても良い。
その他、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であり、CVD装置の形状、各部の配置など、その細部は、特許請求の範囲で示した発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
10 反応室
12 第1遮蔽板(遮蔽板)
12a 吹き出し口(開口部)
12b 遮蔽ガス導入口
13 サセプタ
14 第2遮蔽板
15 ヒータ
20 気化器
21 原料ガス噴出部
23 延長ノズル(原料ガス輸送路)
25 遮蔽ガス噴出部
30 原料溶液供給部
40 基材搬送部
50 テープ状基材
60 遮蔽ガス供給部
70 遮蔽ガス温度調整部
71 供給管
72 ヒータ
73 温度センサ
h 間隔
A1 基材導入領域(予熱領域)
A2 成長領域
A3 基材導出領域(予熱領域)
Claims (9)
- 原料ガスを噴出する原料ガス噴出部と、テープ状基材を加熱するサセプタとを有する反応室を備え、この反応室内で前記サセプタの直上を走行する前記テープ状基材の表面に、前記原料ガスを供給し化学反応させることにより、前記テープ状基材の表面に超電導薄膜を成膜するCVD装置であって、
前記反応室は、該反応室内を前記テープ状基材の走行方向に、前記原料ガスが供給される成膜領域と、この成膜領域よりも上流側又は下流側の予熱領域とに区分けする遮蔽板を備えると共に、前記サセプタに向けて遮蔽ガスを噴出し、当該サセプタと前記遮蔽板との隙間を通じて、前記成膜領域から前記予熱領域への前記原料ガスの拡散を抑える遮蔽ガス噴出部と、前記遮蔽ガスの温度を調整する遮蔽ガス温度調整部とを備えることを特徴とするCVD装置。 - 前記遮蔽ガス温度調整部は、前記遮蔽ガスを前記原料ガスよりも高い温度に調整することを特徴とする請求項1に記載のCVD装置。
- 前記遮蔽板は、その下端部が前記サセプタから所定間隔だけ離間して配置され、前記遮蔽ガス噴出部の開口部は、前記遮蔽板の下端部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のCVD装置。
- 前記遮蔽ガス噴出部は、前記テープ状基材の幅方向における開口部の開口距離をx、前記テープ状基材の幅をw、前記サセプタの直上を走行するテープ状基材の本数をn、前記テープ状基材の間隔をdとしたとき、前記開口距離xは、x>w×n+d×(n−1)を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のCVD装置。
- 前記サセプタの上面から前記遮蔽ガス噴出部の開口部の下端までの距離をhとしたとき、この距離hは、2mm<h<10mmの範囲に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のCVD装置。
- 前記反応室は、前記遮蔽板が一側壁を形成し、前記原料ガス噴出部から噴出された前記原料ガスを前記テープ状基材の表面に案内する原料ガス輸送路を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のCVD装置。
- 前記原料ガス輸送路は、前記サセプタの幅よりも狭い開口端を有し、前記サセプタの幅方向中央に形成される前記テープ状基材の走行領域に沿って配設されていることを特徴とする請求項6に記載のCVD装置。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載のCVD装置を用いた超電導薄膜の成膜方法において、
前記遮蔽ガスの温度を200℃以上300℃未満とすることを特徴とする超電導薄膜の成膜方法。 - 前記テープ状基材に対する前記遮蔽ガスの到達速度を、前記原料ガスの到達速度以上とすることを特徴とする請求項8に記載の超電導薄膜の成膜方法。
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