JP5839980B2 - 薄膜形成方法及びcvd装置 - Google Patents
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Description
この種のCVD装置では、気化器には原料供給ノズルを通じて原料溶液が供給されており、成膜時間が長時間に及んだ場合、原料供給ノズルの先端が時間経過とともに原料溶液によって汚れ、この汚れによって気化器への原料溶液の供給量が変動する。このため、気化された原料ガスの供給量が変動することにより、成膜組成や結晶性、膜厚等に影響を及ぼし、長時間の安定した超電導層の成膜が困難となっていた。
また、複数の気化器と、これら気化器が接続されるガス混合部とを備え、各気化器にそれぞれ異なる1種類の原料溶液を供給し、各気化器で気化された原料ガスをガス混合部により混合するとともに、各原料配管、および気化器とガス混合部までの配管長を全て等長とすることで成膜層の切り替えをスムーズに行うことができるCVD装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、特許文献2に記載した技術は、複数種の膜を連統で成膜を行う目的で、各層を形成する原料の切り替えの逡巡性を追求するためのものである。従って、気化器が複数ある場合においても、各気化器からそれぞれ異なる原料を気化させて混合する方法では、各気化器からガス混合部への供給量に変動が生じると長時間の成膜での安定性を図ることは困難である。また、それを補うために、気化器の数を増やすという方法も考えられるが、超電導層を成膜する場合、最低でも気化器の数が6本以上となり、装置が非常に高額になるという問題がある。
図1は、CVD装置10の概略構成を示す図である。図1に示すように、CVD装置10は、長尺のテープ状に形成された被成膜基材としての超電導用基材(以下、テープ状基材Tという)を巻き取り走行させる基材搬送部11と、超電導薄膜の原料を供給する原料溶液供給部15と、原料溶液を気化させる気化器17と、気化された原料ガス、及び、テープ状基材Tがそれぞれ供給され、テープ状基材Tの表面に薄膜を形成する成長チャンバ(反応室)19とを備えて構成されている。この成長チャンバ19にはリールチャンバ21,21が連結され、これら成長チャンバ19及びリールチャンバ21,21内に上記のテープ状基材Tが走行する閉空間が形成される。
本実施形態では、CVD装置10は、これら原料溶液供給部15、気化器17、キャリアガス供給部29及び酸素供給部31を複数組(3組)備えており、各組の原料溶液供給部15には、それぞれ同一の元素(本実施形態では、Y,Ba,Cu)を含有した原料溶液が収容されている。また、3つの気化器17は、テープ状基材Tの走行方向に並設されており、各原料溶液供給部15から供給された原料溶液は、それぞれ各気化器17にて気化されて混合された後に成長チャンバ19内に供給される。
なお、本実施形態では、すべての気化器17に同一の元素を含有した原料溶液が供給される構成としているが、少なくとも2つの気化器17にそれぞれ同一の元素を1種以上含有した原料溶液を導入するものであればよい。
テープ状基材Tは、幅10mm程度のテープ形状を有し、例えば、100μmの厚さの金属基板上に中間層を形成したものが用いられる。金属基板の材料としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Mo,Ta,Ag,Cu,Fe,Nb,Ni,W、Mnなどの金属又はこれらの合金を用いることができる。また、中間層は、超電導体の結晶粒を2軸配向して成膜させるためのものである。
また、テープ状基材Tとして、ニッケル(Ni)合金からなり、還元雰囲気で配向熱処理により、表面酸化膜の除去と同時に少なくとも表面部分において2軸配向を行った配向金属基板を用いて、中間層を配向金属基板上に形成したものを用いてもよい。
図2は、成長チャンバ19の内部構造を示す側断面図である。成長チャンバ19は横長の直方体形状を有しているものとし、成長チャンバ19の短手方向(テープ状基材Tの走行方向に直交する方向)を幅方向という。
図2及び図3に示すように、成長チャンバ19の底壁19Aには開口部37が形成されており、この開口部37にサセプタ33が配設されている。サセプタ33は、走行するテープ状基材Tを支持するとともに、伝熱によりテープ状基材Tを加熱する熱伝導プレートである。サセプタ33の幅方向中央の領域がテープ状基材Tの走行領域となる。
サセプタ33は、図3に示すように、周縁部が成長チャンバ19の底壁19Aから所定の間隙をもって離間した状態で配設される。テープ状基材Tに超電導層を成膜する際、サセプタ33を700〜800℃程度で保持する必要があるが、成長チャンバ19の底壁19Aとサセプタ33が密接していると、サセプタ33から底壁19Aへの伝熱によりサセプタ33の高温保持が困難となるためである。
これら気化器17、連結管18及び原料ガス噴出部41には、不図示のヒータが配置されて230〜290℃程度の温度に維持されている。
このように、本構成では、原料ガス噴出口41aから噴出された原料ガスをテープ状基材Tの表面に案内する延長ノズル43を設けることにより、テープ状基材Tの成膜に寄与する原料ガスの量を増加させることができ、原料収率の向上を図ることができる。さらに、本構成では、図2に示すように、延長ノズル43の2枚の第1遮蔽板43a,43aで挟まれた成長領域Lにおいて、テープ状基材Tに超電導層が成膜される。つまり、第1遮蔽板43a,43aで原料ガスの長手方向の拡散を抑制することにより、成長領域Lにおいて良質な超電導層が成膜することができる。
原料ガス噴出部41は、上述のように、各気化器17からそれぞれ導入された原料ガスを、原料ガス噴出口41aを通じてテープ状基材Tの表面に噴出する。このため、例えば、一の気化器17内で原料供給ノズル17Aに詰まり等が生じて、この気化器17からの原料ガスの供給量が変動した場合には、テープ状基材Tに形成される薄膜(例えば超電導層)の組成や結晶性、膜厚等に影響を及ぼし、長時間の安定した超電導層の成膜が困難となる。
このため、本構成では、すべての原料溶液供給部15に同一の元素を1以上含有する原料溶液が収容されているとともに、原料ガス噴出部41は、図4に示すように、各気化器17から導入される原料ガスを混合して混合原料ガスを生成する原料ガス混合部50と、この混合原料ガスを原料ガス噴出口41aに導く原料ガス導入部55とを一体に備える。原料ガス混合部50は、各連結管18の下方であってテープ状基材Tの走行方向に沿って延在する凹部51と、この凹部51の略中央に設けられ原料ガス導入部55に連通する連通孔52と、上記凹部51の上記連結管18の下方にそれぞれに配置される邪魔板53とを備える。各連結管18を通じて気化器17から導入された原料ガスは、それぞれ邪魔板53に吹き付けられることで凹部51内に拡散して混合される。
この図6に示すように、成膜時間が短い(1時間以内)では、本実施形態でも従来例(従来技術)でも臨界電流(Ic)の最小値/最大値は、10%以下となっているため、超電導特性のばらつきが小さく、安定した品質の超電導線材を製造することができる。
しかし、成膜時間が長く(15〜20時間)となると、従来例の構成では、臨界電流(Ic)の最小値/最大値の値が60〜70%となり、超電導特性に大きなばらつきを生じ、安定した品質の超電導線材を製造することが困難となっていることがわかる。
これに対して、本実施形態では、成膜時間が長くなった場合であっても、臨界電流(Ic)の最小値/最大値の値が15%以下と、成膜時間が短いときとの変動を小さく抑えることができ、超電導特性のばらつきが小さく、安定した品質の超電導線材を製造することができる。
例えば、本実施形態では、原料ガス噴出部41は、原料ガス混合部50、原料ガス導入部55、及び、原料ガス噴出口41aを一体に備える構成について説明したが、図7に示すように、各連結管18を1つにまとめて接続する集合管150を備え、この集合管150と原料ガス噴出部241とを接続管151を介して接続しても良い。この接続管151は、原料ガス噴出部241の略中央部に接続され、上記した連結管18からずらした位置に設けられている。
また、原料ガス噴出部241は、横長の直方体形状をなしており、その下面には、多数の細孔(例えばφ1.5mm)が形成された原料ガス噴出口241aが配設されている。また、原料ガス噴出部241は、集合管150にて混合された混合原料ガスを原料ガス噴出口241aに導く原料ガス導入部155と、原料ガス噴出部241の略中央に設けられて原料ガス導入部155及び接続管151を連通する連通孔152とを備える。
15 原料溶液供給部
17 気化器
17A 原料供給ノズル
18 連結管
19 成長チャンバ
29 キャリアガス供給部
31 酸素供給部
33 サセプタ
35 ヒータ
41、241 原料ガス噴出部
41a、241a 原料ガス噴出口
43 延長ノズル
50 原料ガス混合部
51 凹部
52、152 連通孔
53 邪魔板
55、155 原料ガス導入部
150 集合管(原料ガス混合部)
151 接続管
152 連通孔
T テープ状基材
Claims (4)
- 複数の気化器のうち、少なくとも2つの前記気化器にそれぞれ、同一の元素を1以上含有した原料溶液を導入する工程と、
前記気化器において前記原料溶液を気化させて原料ガスを生成する工程と、
生成された前記原料ガスを混合し、混合原料ガスを生成する工程と、
前記混合原料ガスを基材に噴出する工程と、を備え、
前記同一の元素は、RE(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLaから選択される1以上の元素)、Ba、Cu、W、Sn、Hf、Zr、Nb、Ta、Ti、及び、Irから選択される1以上の元素であって、
前記混合原料ガスが、少なくともRE、Ba、Cuを含有することを特徴とする薄膜形成方法。 - 前記気化器には、前記同一の元素として、それぞれ少なくともRE、Ba、Cuを含有する原料溶液が導入されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
- 原料溶液を気化させる気化器と、前記気化器で気化された原料ガスを被成膜基材に向けて噴出する原料ガス噴出部とを備えたCVD装置であって、
前記気化器を複数有し、少なくとも2つの前記気化器には同一の元素を1以上含有する原料溶液が導入されており、
複数の前記気化器から噴出される原料ガスを混合する原料ガス混合部と、
前記原料ガス混合部で混合された原料ガスを前記原料ガス噴出部のガス噴出口に導く原料ガス導入部と、を備え、
前記同一の元素は、RE(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLaから選択される1以上の元素)、Ba、Cu、W、Sn、Hf、Zr、Nb、Ta、Ti、及び、Irから選択される1以上の元素であって、
前記混合原料ガスが、少なくともRE、Ba、Cuを含有することを特徴とするCVD装置。 - 前記原料ガス噴出部は、前記原料ガス混合部、前記原料ガス導入部、及び、ガス噴出口を一体に備えることを特徴とする請求項3に記載のCVD装置。
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