JP2004360058A - Cvd用原料溶液及びこれを用いた薄膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化学的気相成長(CVD)法により薄膜作製の際に用いられる原料とその気化方法に関する。詳しくは溶液気化CVD法において、使用する溶媒を少なくすることができ、かつ気化器での詰まりをなくして長時間連続運転を可能にする原料溶液及び薄膜作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にCVD法による薄膜作製における原料蒸気の供給は、GaAs薄膜におけるトリメチルガリウムやSiO2薄膜におけるテトラエトキシシランのように原料に常温で液体の材料を用い、それに原料蒸気を成膜室まで同伴させるためのキャリアガスをバブリングさせる方法により行われている。バブリング法の場合、原料蒸気は温度のみに依存する飽和蒸気圧で発生するので、蒸気供給を安定に行うことができる。
【0003】ところで、近年研究が盛んに行われている、酸化物超伝導体、強誘電体などの複合酸化物の薄膜作製には、原料としてβ−ジケトンの一種であるジピバロイルメタン(H−DPM)を配位子とする金属錯体(DPM錯体)が広く用いられている。
【0004】その理由として、DPM錯体は一般に熱安定性が高く、酸素存在化においてもある程度の温度までは反応しないため酸化物薄膜の作製に適していることと、近年研究されている酸化物超伝導体や強誘電体にはYBa2Cu3Oy、Bi2Sr2Ca2Cu3Oy、SrBi2Ta2O9等のようにアルカリ土類金属が含まれており、アルカリ土類金属の金属有機化合物の中にはDPM錯体以外にCVD原料として使用できるだけの気化性と熱安定性、酸素存在下での安定性を満たす物質が存在しなかったことが挙げられる。
【0005】しかし、DPM錯体は一般に融点が高く、バブリング法による原料気化を行うことが不可能であり、昇華によって原料蒸気を発生させ(昇華法)なければならない。そのため飽和蒸気を得ることが難しく、原料容器内の原料の充填量によって、または使用中の原料残量の減少によって、蒸気の発生量が変化し、一定の蒸発量の維持が不可欠である複合酸化物の成膜を再現良く行うことができなかった。
【0006】そこで、固体原料をテトラヒドロフラン、酢酸ブチル、トルエンなどの有機溶媒に一定濃度で溶解し、それを液体流量計によって流量制御しながら高温の気化器内に送り込み、全量を気化させることによって一定の原料蒸発量を得ることのできる溶液気化CVD法が開発された。現在、複合酸化物薄膜の作製は特開平07−268634、特開平11−323558等に示されるように溶液気化CVD法が主流になっている。
【0007】用いられる原料溶液の濃度は、成膜速度や得られる膜の特性から一般に濃い方が望ましいが、溶解度などの制約から一般的には0.1〜0.3mol/l程度の濃度のものが成膜に使用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら通常使用されているDPM錯体は、各種溶媒に対する溶解性の低いものが多い。原料濃度が薄くなり溶媒の割合が大きくなると、溶媒中の水分などの影響による原料溶液そのものの経時劣化や、成膜速度及び膜表面状態への影響、溶媒の分解により生ずるカーボンの膜中への取り込みなどが懸念される。また、溶媒の気化や分解に熱エネルギーが消費され、原料の金属有機化合物の気化のためにより多くのエネルギー供給が必要となり、装置のランニングコストが上昇する。
【0009】溶媒にほとんどのDPM錯体の溶解性が高いテトラヒドロフランを用いると、濃度を高くすることはできるが、テトラヒドロフランはその沸点が低いために、気化器内で溶媒だけが急速に気化し、結局溶解していた金属有機化合物が析出することになって、気化器に詰まりを生じてしまうという問題がある。
【0010】そこで、溶解性が高く、多くの金属と安定な化合物を作る有機配位子を持つ金属有機化合物を使用することが考えられるが、これまで十分な検討がなされた例はなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは斯かる課題を解決すべく、昇華法またはバブリング法によりCVD原料として使用できることが特許2799763、特許2802676、特許2977484、特開平07−210205、特開平07−226085、特開平09−228049によって示されているDPM以外のいくつかのβ−ジケトンを配位子に用いた金属錯体を合成し、溶媒への溶解性を調査した結果、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオン(H−TMOD)を配位子とした錯体(TMOD錯体)が、下記
【表1】に示したように、DPM錯体よりも有機溶媒への溶解性が高く、かつほとんどの金属でDPM錯体と同様な熱安定性を持つことから、溶液気化CVD法に用いる金属錯体として適していることがわかった。
【0012】
【表1】
以上のように、TMOD錯体はDPM錯体よりも高い溶解性を示した。また、Ti(Oi−Pr)2(DPM)2のようなアルコキシドの一部がβ−ジケトンで置換されたような錯体についても、同様な効果が確認された。
【0013】該TMOD錯体を用いて様々な溶液気化CVD用原料溶液を調製したところ、DPM錯体よりも高濃度のものが得られた。さらに該TMOD錯体の溶液を気化器に導入したところ、DPM錯体の溶液と比較して、飽和濃度に近い濃度まで詰まりを生ずることなく気化させることができることがわかった。
【0014】その理由として、TMOD錯体はDPM錯体に比較すると融点が非常に低いことから、気化器内に導入された際に溶媒が先に気化してしまっても、その時の温度が融点以上あるために流れることができる、と考えられる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるTMOD錯体は、金属とH−TMODの反応、金属塩とH−TMODの反応、金属アルコキシドとH−TMODの置換反応などによって容易に合成することができる。中心金属の種類は特に限定されないが、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト、銅、チタン、鉛などに特に効果がある。
【0016】次にTMOD錯体を例えば酢酸ブチル、トルエン、オクタン、エチルシクロヘキサンなどの溶媒に溶解して、種々の複合酸化物薄膜作製用の原料カクテルを調製する。これを原料容器に充填し、CVD装置の原料供給系に接続し、流量制御しながら、原料溶液を減圧加熱された気化器内に導入して、溶媒ごと溶質のTMOD錯体を気化させて使用する。
【0017】溶液気化CVD用の気化器には様々な形があるが、本発明の溶液の効果は、気化器の形には特に制限を受けない。例えば図1に示したようなMOCVD装置において、例えば酸化物薄膜を作製する場合は以下のような手順で原料溶液の気化及び成膜がなされる。
【0018】原料容器にTMOD錯体を含む溶液を充填して溶液気化CVD装置に取り付け、気化器温度を例えば150〜300℃に設定する。原料溶液供給流量を液体マスフローコントローラーにより例えば0.1〜1ml/minに制御して、ヘリウムガスの加圧により原料容器から気化器まで、原料溶液を移送させる。原料溶液は気化器に供給された全量が気化し、反応室へアルゴンなどの不活性ガスをキャリアガスに用いて送り出される。この時、気化器内の圧力は例えば1〜500torrとなっている。
【0019】こうして気化器から送り出された気体状のTMOD錯体及びアルゴンガスは、反応室の手前で酸素などの酸化ガスと混合され、加熱された基板上で熱分解、酸化により基板上に金属酸化物薄膜が形成される。TMOD錯体の分解によって生成した有機物や溶媒は反応室外へ排気される。
【0020】以後、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0021】
【実施例1】(Zr(TMOD)4溶液の調製とZrO2薄膜の作製)Zr(TMOD)417.61g(0.01mol)と酢酸ブチルを混合して200mlとし、0.1mol/lの濃度のZr(TMOD)4溶液を調製した。この溶液から70mlを取り出し、同量の酢酸ブチルで希釈した0.05mol/lのZr(TMOD)4溶液も調製した。比較のためZr(DPM)316.53g(0.02mol)と酢酸ブチルを混合して200mlとし、0.1mol/lの濃度のZr(DPM)4溶液を調製し、この溶液から70mlを取り出して同量の酢酸ブチルで希釈した0.05mol/lのZr(DPM)4溶液も調製した。
【0022】これらの溶液を0.3ml/minで300℃に加熱した気化器に導入し、Arキャリアガス200ml/minによって気化器内で気化した金属有機化合物及び溶媒を反応管へと送り出した。また酸化ガスとして酸素を200ml/minで導入し、反応室の圧力を10torr、基板温度650℃としてSi基板上にZrO2薄膜の作製を行った。
【0023】まず、5分間の成膜を行い、次に原料溶液の気化のみ25分間を行い、さらに5分間成膜、25分間気化のみという繰り返しを10回おこなって得られた膜の膜厚を
【表2】に示した。膜厚は蛍光x線分析により測定した。
【0024】
【表2】
その結果、0.1mol/lのZr(DPM)4溶液は気化開始後7分で気化器に詰まりが生じて、溶液が流れなくなってしまった。0.1mol/lのZr(TMOD)4溶液は10回の成膜の間、120nm程度の膜厚で安定にZrO2薄膜を作製できた。
【0025】また、0.05mol/lの溶液ではZr(TMOD)4溶液、Zr(DPM)4溶液とも10回の成膜の間、ほぼ一定の膜厚で安定にZrO2薄膜を作製できたが、同モル数のZr錯体を導入しているにもかかわらず、Zr(TMOD)4の方が膜厚が厚く成膜できたのは、Zr(TMOD)4の方がZr(DPM)4より酸化分解しやすいためと考えられる。
【0026】さらに、0.1mol/lと0.05mol/lのZr(TMOD)4溶液を比較すると、0.1mol/lは0.05mol/lの2倍のモル数のZr錯体を導入しているにもかかわらず、膜厚が2倍以上になっている。これは導入される溶媒の量が減ったため、基板上での反応に使用されるエネルギーのうち、溶媒に奪われる量が減ってZr錯体の分解、酸化の効率が上昇したためと考えられる。
【0027】
【実施例2】(YBa2Cu3Oy用原料溶液の調製と成膜)Y(TMOD)3102.1g(0.15mol)、Ba(TMOD)279.79g(0.15mol)、Cu(TMOD)268.72g(0.15mol)をそれぞれ酢酸ブチルに溶解して1Lとし濃度0.15mol/lの溶液とした。比較のためY(DPM)395.81g(0.15mol)、Ba(DPM)275.58g(0.15mol)を酢酸ブチルに溶解して1Lに、Cu(DPM)2は溶解度が低くて0.15mol/lの濃度で調製できないため、43.01g(0.10mol)及21.50g(0.05mol)のCu(DPM)2を酢酸ブチルに溶解してそれぞれ1Lにしたものを調製した。
【0028】これらの溶液を
【図2】に示したような1つの原料溶液に対し、1つの気化器を使用する形の溶液気化CVD装置を用い、様々な原料溶液の組み合わせで
【実施例1】と同様な繰り返し成膜試験を行った。基板には3cm角のMgO(100)を用い、基板温度800℃、反応圧力6torrとし、各気化器のArキャリアガスをそれぞれ200ml/min、酸化ガスとして酸素を400ml/min導入した。気化器の温度はYとCuが250℃、Baは300℃とした。またY、Ba、Cuの各原料溶液の供給速度がそれぞれ0.3mmol/min、0.6mmol/min、0.9mmol/min(供給モル比=1:2:3)となるように原料溶液の供給流量を設定した。になるように流量を調整した。得られた膜は酸に溶解してICP発光分光によりY、Ba、Cu各元素の堆積速度を求めた。
【表3】に実施した原料溶液の組み合わせとその結果を示した。
【0029】
【表3】
DPM錯体だけで成膜したもののうち0.1mol/lのCu(DPM)2溶液を使用した場合(
【表3】中の番号2)は、気化開始後40分ほどでCu用の気化器が詰まりを生じてしまったが、それ以外の組み合わせでは10回の成膜が安定して行われた。DPM錯体だけで成膜したもののうち0.05mol/lのCu(DPM)2溶液を使用した場合(
【表3】中の番号3)は安定な成膜が行われたものの、各金属の基板への堆積量はTMOD錯体だけで成膜した場合よりも少なくなった。またCu原料溶液だけをTMOD錯体にした場合(
【表3】中の番号4)は、TMOD錯体だけで成膜した場合とほぼ同様な堆積量となった。
【0030】
【発明の効果】以上のように、溶液気化CVDによる薄膜作製において、原料溶液としてTMOD錯体の溶液を用いれば、高濃度の原料溶液を、長時間連続して気化させることができ、目的の薄膜を連続して再現よく作製することが可能である。また、溶媒の使用量を減らすことができ、気化に必要なエネルギーを減らすことができることから薄膜の製造単価を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶液気化CVD装置の一例を示した図である。
【図2】1つの原料溶液につき1つの気化器を用いて気化させる形式の溶液気化CVD装置の一例を示した図である。
【発明の属する技術分野】本発明は、化学的気相成長(CVD)法により薄膜作製の際に用いられる原料とその気化方法に関する。詳しくは溶液気化CVD法において、使用する溶媒を少なくすることができ、かつ気化器での詰まりをなくして長時間連続運転を可能にする原料溶液及び薄膜作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にCVD法による薄膜作製における原料蒸気の供給は、GaAs薄膜におけるトリメチルガリウムやSiO2薄膜におけるテトラエトキシシランのように原料に常温で液体の材料を用い、それに原料蒸気を成膜室まで同伴させるためのキャリアガスをバブリングさせる方法により行われている。バブリング法の場合、原料蒸気は温度のみに依存する飽和蒸気圧で発生するので、蒸気供給を安定に行うことができる。
【0003】ところで、近年研究が盛んに行われている、酸化物超伝導体、強誘電体などの複合酸化物の薄膜作製には、原料としてβ−ジケトンの一種であるジピバロイルメタン(H−DPM)を配位子とする金属錯体(DPM錯体)が広く用いられている。
【0004】その理由として、DPM錯体は一般に熱安定性が高く、酸素存在化においてもある程度の温度までは反応しないため酸化物薄膜の作製に適していることと、近年研究されている酸化物超伝導体や強誘電体にはYBa2Cu3Oy、Bi2Sr2Ca2Cu3Oy、SrBi2Ta2O9等のようにアルカリ土類金属が含まれており、アルカリ土類金属の金属有機化合物の中にはDPM錯体以外にCVD原料として使用できるだけの気化性と熱安定性、酸素存在下での安定性を満たす物質が存在しなかったことが挙げられる。
【0005】しかし、DPM錯体は一般に融点が高く、バブリング法による原料気化を行うことが不可能であり、昇華によって原料蒸気を発生させ(昇華法)なければならない。そのため飽和蒸気を得ることが難しく、原料容器内の原料の充填量によって、または使用中の原料残量の減少によって、蒸気の発生量が変化し、一定の蒸発量の維持が不可欠である複合酸化物の成膜を再現良く行うことができなかった。
【0006】そこで、固体原料をテトラヒドロフラン、酢酸ブチル、トルエンなどの有機溶媒に一定濃度で溶解し、それを液体流量計によって流量制御しながら高温の気化器内に送り込み、全量を気化させることによって一定の原料蒸発量を得ることのできる溶液気化CVD法が開発された。現在、複合酸化物薄膜の作製は特開平07−268634、特開平11−323558等に示されるように溶液気化CVD法が主流になっている。
【0007】用いられる原料溶液の濃度は、成膜速度や得られる膜の特性から一般に濃い方が望ましいが、溶解度などの制約から一般的には0.1〜0.3mol/l程度の濃度のものが成膜に使用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら通常使用されているDPM錯体は、各種溶媒に対する溶解性の低いものが多い。原料濃度が薄くなり溶媒の割合が大きくなると、溶媒中の水分などの影響による原料溶液そのものの経時劣化や、成膜速度及び膜表面状態への影響、溶媒の分解により生ずるカーボンの膜中への取り込みなどが懸念される。また、溶媒の気化や分解に熱エネルギーが消費され、原料の金属有機化合物の気化のためにより多くのエネルギー供給が必要となり、装置のランニングコストが上昇する。
【0009】溶媒にほとんどのDPM錯体の溶解性が高いテトラヒドロフランを用いると、濃度を高くすることはできるが、テトラヒドロフランはその沸点が低いために、気化器内で溶媒だけが急速に気化し、結局溶解していた金属有機化合物が析出することになって、気化器に詰まりを生じてしまうという問題がある。
【0010】そこで、溶解性が高く、多くの金属と安定な化合物を作る有機配位子を持つ金属有機化合物を使用することが考えられるが、これまで十分な検討がなされた例はなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは斯かる課題を解決すべく、昇華法またはバブリング法によりCVD原料として使用できることが特許2799763、特許2802676、特許2977484、特開平07−210205、特開平07−226085、特開平09−228049によって示されているDPM以外のいくつかのβ−ジケトンを配位子に用いた金属錯体を合成し、溶媒への溶解性を調査した結果、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオン(H−TMOD)を配位子とした錯体(TMOD錯体)が、下記
【表1】に示したように、DPM錯体よりも有機溶媒への溶解性が高く、かつほとんどの金属でDPM錯体と同様な熱安定性を持つことから、溶液気化CVD法に用いる金属錯体として適していることがわかった。
【0012】
【表1】
以上のように、TMOD錯体はDPM錯体よりも高い溶解性を示した。また、Ti(Oi−Pr)2(DPM)2のようなアルコキシドの一部がβ−ジケトンで置換されたような錯体についても、同様な効果が確認された。
【0013】該TMOD錯体を用いて様々な溶液気化CVD用原料溶液を調製したところ、DPM錯体よりも高濃度のものが得られた。さらに該TMOD錯体の溶液を気化器に導入したところ、DPM錯体の溶液と比較して、飽和濃度に近い濃度まで詰まりを生ずることなく気化させることができることがわかった。
【0014】その理由として、TMOD錯体はDPM錯体に比較すると融点が非常に低いことから、気化器内に導入された際に溶媒が先に気化してしまっても、その時の温度が融点以上あるために流れることができる、と考えられる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるTMOD錯体は、金属とH−TMODの反応、金属塩とH−TMODの反応、金属アルコキシドとH−TMODの置換反応などによって容易に合成することができる。中心金属の種類は特に限定されないが、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト、銅、チタン、鉛などに特に効果がある。
【0016】次にTMOD錯体を例えば酢酸ブチル、トルエン、オクタン、エチルシクロヘキサンなどの溶媒に溶解して、種々の複合酸化物薄膜作製用の原料カクテルを調製する。これを原料容器に充填し、CVD装置の原料供給系に接続し、流量制御しながら、原料溶液を減圧加熱された気化器内に導入して、溶媒ごと溶質のTMOD錯体を気化させて使用する。
【0017】溶液気化CVD用の気化器には様々な形があるが、本発明の溶液の効果は、気化器の形には特に制限を受けない。例えば図1に示したようなMOCVD装置において、例えば酸化物薄膜を作製する場合は以下のような手順で原料溶液の気化及び成膜がなされる。
【0018】原料容器にTMOD錯体を含む溶液を充填して溶液気化CVD装置に取り付け、気化器温度を例えば150〜300℃に設定する。原料溶液供給流量を液体マスフローコントローラーにより例えば0.1〜1ml/minに制御して、ヘリウムガスの加圧により原料容器から気化器まで、原料溶液を移送させる。原料溶液は気化器に供給された全量が気化し、反応室へアルゴンなどの不活性ガスをキャリアガスに用いて送り出される。この時、気化器内の圧力は例えば1〜500torrとなっている。
【0019】こうして気化器から送り出された気体状のTMOD錯体及びアルゴンガスは、反応室の手前で酸素などの酸化ガスと混合され、加熱された基板上で熱分解、酸化により基板上に金属酸化物薄膜が形成される。TMOD錯体の分解によって生成した有機物や溶媒は反応室外へ排気される。
【0020】以後、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0021】
【実施例1】(Zr(TMOD)4溶液の調製とZrO2薄膜の作製)Zr(TMOD)417.61g(0.01mol)と酢酸ブチルを混合して200mlとし、0.1mol/lの濃度のZr(TMOD)4溶液を調製した。この溶液から70mlを取り出し、同量の酢酸ブチルで希釈した0.05mol/lのZr(TMOD)4溶液も調製した。比較のためZr(DPM)316.53g(0.02mol)と酢酸ブチルを混合して200mlとし、0.1mol/lの濃度のZr(DPM)4溶液を調製し、この溶液から70mlを取り出して同量の酢酸ブチルで希釈した0.05mol/lのZr(DPM)4溶液も調製した。
【0022】これらの溶液を0.3ml/minで300℃に加熱した気化器に導入し、Arキャリアガス200ml/minによって気化器内で気化した金属有機化合物及び溶媒を反応管へと送り出した。また酸化ガスとして酸素を200ml/minで導入し、反応室の圧力を10torr、基板温度650℃としてSi基板上にZrO2薄膜の作製を行った。
【0023】まず、5分間の成膜を行い、次に原料溶液の気化のみ25分間を行い、さらに5分間成膜、25分間気化のみという繰り返しを10回おこなって得られた膜の膜厚を
【表2】に示した。膜厚は蛍光x線分析により測定した。
【0024】
【表2】
その結果、0.1mol/lのZr(DPM)4溶液は気化開始後7分で気化器に詰まりが生じて、溶液が流れなくなってしまった。0.1mol/lのZr(TMOD)4溶液は10回の成膜の間、120nm程度の膜厚で安定にZrO2薄膜を作製できた。
【0025】また、0.05mol/lの溶液ではZr(TMOD)4溶液、Zr(DPM)4溶液とも10回の成膜の間、ほぼ一定の膜厚で安定にZrO2薄膜を作製できたが、同モル数のZr錯体を導入しているにもかかわらず、Zr(TMOD)4の方が膜厚が厚く成膜できたのは、Zr(TMOD)4の方がZr(DPM)4より酸化分解しやすいためと考えられる。
【0026】さらに、0.1mol/lと0.05mol/lのZr(TMOD)4溶液を比較すると、0.1mol/lは0.05mol/lの2倍のモル数のZr錯体を導入しているにもかかわらず、膜厚が2倍以上になっている。これは導入される溶媒の量が減ったため、基板上での反応に使用されるエネルギーのうち、溶媒に奪われる量が減ってZr錯体の分解、酸化の効率が上昇したためと考えられる。
【0027】
【実施例2】(YBa2Cu3Oy用原料溶液の調製と成膜)Y(TMOD)3102.1g(0.15mol)、Ba(TMOD)279.79g(0.15mol)、Cu(TMOD)268.72g(0.15mol)をそれぞれ酢酸ブチルに溶解して1Lとし濃度0.15mol/lの溶液とした。比較のためY(DPM)395.81g(0.15mol)、Ba(DPM)275.58g(0.15mol)を酢酸ブチルに溶解して1Lに、Cu(DPM)2は溶解度が低くて0.15mol/lの濃度で調製できないため、43.01g(0.10mol)及21.50g(0.05mol)のCu(DPM)2を酢酸ブチルに溶解してそれぞれ1Lにしたものを調製した。
【0028】これらの溶液を
【図2】に示したような1つの原料溶液に対し、1つの気化器を使用する形の溶液気化CVD装置を用い、様々な原料溶液の組み合わせで
【実施例1】と同様な繰り返し成膜試験を行った。基板には3cm角のMgO(100)を用い、基板温度800℃、反応圧力6torrとし、各気化器のArキャリアガスをそれぞれ200ml/min、酸化ガスとして酸素を400ml/min導入した。気化器の温度はYとCuが250℃、Baは300℃とした。またY、Ba、Cuの各原料溶液の供給速度がそれぞれ0.3mmol/min、0.6mmol/min、0.9mmol/min(供給モル比=1:2:3)となるように原料溶液の供給流量を設定した。になるように流量を調整した。得られた膜は酸に溶解してICP発光分光によりY、Ba、Cu各元素の堆積速度を求めた。
【表3】に実施した原料溶液の組み合わせとその結果を示した。
【0029】
【表3】
DPM錯体だけで成膜したもののうち0.1mol/lのCu(DPM)2溶液を使用した場合(
【表3】中の番号2)は、気化開始後40分ほどでCu用の気化器が詰まりを生じてしまったが、それ以外の組み合わせでは10回の成膜が安定して行われた。DPM錯体だけで成膜したもののうち0.05mol/lのCu(DPM)2溶液を使用した場合(
【表3】中の番号3)は安定な成膜が行われたものの、各金属の基板への堆積量はTMOD錯体だけで成膜した場合よりも少なくなった。またCu原料溶液だけをTMOD錯体にした場合(
【表3】中の番号4)は、TMOD錯体だけで成膜した場合とほぼ同様な堆積量となった。
【0030】
【発明の効果】以上のように、溶液気化CVDによる薄膜作製において、原料溶液としてTMOD錯体の溶液を用いれば、高濃度の原料溶液を、長時間連続して気化させることができ、目的の薄膜を連続して再現よく作製することが可能である。また、溶媒の使用量を減らすことができ、気化に必要なエネルギーを減らすことができることから薄膜の製造単価を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶液気化CVD装置の一例を示した図である。
【図2】1つの原料溶液につき1つの気化器を用いて気化させる形式の溶液気化CVD装置の一例を示した図である。
Claims (2)
Priority Applications (3)
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JP2003191457A JP2004360058A (ja) | 2003-05-30 | 2003-05-30 | Cvd用原料溶液及びこれを用いた薄膜の製造方法 |
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