JP4059383B2 - Cvd用液体原料及びcvd装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性体、半導体、強誘電体、超伝導体などに使用されるZnO等の金属酸化物薄膜の製法に用いられるCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長法)用液体原料及びこの原料を用いるCVD装置に関する
【0002】
【従来の技術】
従来、強誘電体を中心としたこの種の薄膜の原料又は製法として、特開平6−158328号公報や、特開平7−268634号公報などが既に提案されており、その中で主にテトラヒドロフラン(THF,C4H8O)を溶媒として用い、有機金属化合物を溶質として気化するCVD成膜法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際にこれらの公報例で示されたTHF溶液に複数の有機金属を混合した場合、材料によっては必要とする濃度に達する前に混合液中に沈殿を生じたり、市販のエステック社製の溶液気化システム(液体を加熱した多数の微小金属球に直接に接触させて、加熱気化する方法)により気化を行うと、僅か十数回のランニング試験で配管全体に目詰まりを起こして、システム全体が制御不能に陥るなど、生産上の重大な欠点があることを見出された。
【0004】
そして、その原因を究明した結果、これは混合溶液の溶媒の気化特性に問題があると考えられ、これを解決することが実生産ラインで使用する上での必須課題であるといえる。
【0005】
本発明は、従来のテトラヒドロフラン(THF)溶媒では不具合の多かった材料でも沈殿等の発生などの支障なく溶解することができ、かつ、配管中を目詰まりなく移送することができ、かつ、気化効率も問題なく溶液気化方式に適用し得るCVD用液体原料及びこの原料を用いるCVD装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
有機金属を溶解した溶媒が長期間の保存において変質せず、かつ、何ら沈殿物を生じないためには、まず、その溶媒の個々の溶質に対する溶解度が使用しようとする濃度よりも大きな値をもっており、飽和レベルに対して十分な余裕がなければならない。加えて、気化時に溶媒分子とともに溶質(有機金属)がガスとなって蒸発するためには、溶媒分子が有機金属に強く配位する必要があると思われる。配位する度合いは溶媒分子の極性の大きさに左右されると推定される。
【0009】
請求項1記載の発明は、2−テトラヒドロフルフリルアルコールからなる溶媒中に、少なくとも1種類以上の有機金属化合物を混合し、かつ、飽和状態以下で溶解して作られたCVD用液体原料である。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、THF誘導体である極性溶媒、例えば、2−メチルテトラヒドロフラン、2−テトラヒドロフルフリルアルコールなどを用いることによって、有機金属に対して、高い溶解度で、強く配位するCVD用の液体気化原料が実現できる。即ち、従来のTHF溶媒では不具合の多かった材料でも沈殿等の発生などの支障なく溶解することができ、かつ、配管中を目詰まりなく移送することができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のCVD用液体原料において、前記有機金属化合物は、少なくとも1種類以上の金属原子に、アセチルアセトナト、ジピバロイルメタナト、アルコキシド、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、ペンタフルオロプロパノイルピバロイルメタナト、シクロペンタジエニルからなる群より選ばれる配位子が1つ以上配位結合してなるものであることを特徴とする。
【0015】
請求項1記載のCVD用液体原料は、この請求項2記載の発明に定義された全ての有機金属化合物に対しても有効である。
【0016】
請求項3記載の発明のCVD装置は、成膜対象となる基板がセットされるチャンバと、請求項1又は2記載のCVD用液体原料を収納するタンクと、少なくとも1種類以上の成分元素を前記チャンバ内に供給するために前記タンク内に収納された前記CVD用液体原料を加熱部分に接触させて気化させ、搬送ガスとともに前記チャンバへ送り込む気化器と、を備える。
【0017】
従って、CVD法にこれらの液体気化原料を用いるCVD装置は利用可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に本実施の形態のCVD用液体原料を用いて金属酸化物薄膜をCVD法により成膜するためのCVD装置の概略構成を示す。
【0019】
まず、成膜対象面を上向きとして基板1がセットされるCVDチャンバ2が設けられている。このCVDチャンバ2は排気口3を介して排気可能である。また、CVDチャンバ2の上部には酸素ガスを導入するための酸素ガス配管5が混合器6、混合ガス配管7を介して連結されている。混合ガス配管7のCVDチャンバ2内における下端は基板1に対向するノズル8とされている。
【0020】
一方、CVD用液体原料9が収納される液体原料タンク10が設けられ、液体原料加圧ガス配管11により加圧ガスの液体原料タンク10内への導入が可能とされている。この液体原料タンク10内の液体原料(混合溶液)9は液体原料供給配管12を介して気化器13内に供給可能とされている。この気化器13内には微小金属球14が設けられており、供給された液体原料9の加熱蒸発及び気化が可能とされている。また、この気化器13内には供給配管15を介して不活性キャリアガスの導入が可能とされている。さらに、気化器13と混合器6とは加熱・気化させた液体原料の混合蒸気を含む不活性キャリアガスを混合器6内に送り込むための気化ガス送出配管16により連結されている。
【0021】
このような構成において、概略的には、少なくとも1種類以上の成分元素をCVDチャンバ2内に供給するために、液体原料9を気化器13において加熱部分(微小金属球14)に接触させて気化させ、搬送ガスとともにCVDチャンバ2へ送り込むことにより、CVDチャンバ2内で基板1上に成膜を行う。
【0022】
ここに、本実施の形態において用いる液体原料9について説明する。
【0023】
まず、一例として、Fe(acac)3;12gとSr(dpm)2;1gを100mlのTHF誘導体である2−メチルテトラヒドロフラン、及び、2−テトラヒドロフルフリルアルコールに各々溶かし、密閉容器で1日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月間放置した結果、何れも色変化・沈殿が発生せず、液体の変化はなかったものである。これに対して、THFのみの場合は1日も経たないで沈殿物を生じた。
【0024】
また、これによって作製した溶液のうち、各50mlをエステック社の気化器13に通し、200℃の温度で気化した後、各々の場合のエステック社の気化器13の重量変動を調べた結果、その残渣重量は2−メチルテトラヒドロフランを極性溶媒とした場合も、2−テトラヒドロフルフリルアルコールを極性溶媒とした場合も0.01mg以下(検出限界以下)に抑えることができたものである。さらに、CVDチャンバ2への配管16(気化器13以降の配管16は蒸気が液化することを防ぐため200℃以上に加熱されている)を調べたところ、一切の詰まり、配管16内壁への残渣の付着などは見られなかったものである。
【0025】
なお、この気化蒸気をアルゴンガス190ccmで希釈し、基板1直上で酸素ガス300ccmと混合し、雰囲気圧力を1Torrとしたところ、430℃基板温度にてSr:Fe:O=1:12:19の組成の薄膜を形成することができ、CVD用原料として利用できることを確認したものである。
【0026】
これらの結果から、より一般的には、液体原料9としては、少なくとも1種類以上の極性溶媒を含む溶媒中に、少なくとも1種類以上の有機金属化合物を混合し、かつ、飽和状態以下で溶解して作られたCVD用液体原料であって、極性溶媒が、テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)の誘導体を少なくとも1種類以上含み、かつ、テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)そのものを含まない溶媒であればよいといえる。
【0027】
より具体的には、
(1) テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)の誘導体は、下記の構造式
【化1】
において、官能基R1〜R4のうち1つ又は2つの官能基がアルキル基(炭素数1〜5の直鎖又は分岐した構造)であり、残りが水素であるテトラヒドロフランの誘導体であり、極性溶媒は、これらのうち少なくとも1種類以上が含有されている。
【0028】
(2) テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)の誘導体は、下記の構造式
【化2】
において、官能基R1〜R4のうち1つ又は2つの官能基が炭素鎖を含むアルコール基(−R5−OH、R5=炭素数1〜5の直鎖又は分岐した構造)であり、残りが水素であるテトラヒドロフランの誘導体であり、極性溶媒は、これらのうち少なくとも1種類以上が含有されている。
【0029】
(3) テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)の誘導体は、下記の構造式
【化3】
において、官能基R1〜R4のうち1つ又は2つの官能基が炭素鎖を含むエーテル基(−R6−O−R7、R6とR7の炭素数の総和が5以下の構造)であり、残りが水素であるテトラヒドロフランの誘導体であり、極性溶媒は、これらのうち少なくとも1種類以上が含有されている。
【0030】
(4) テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)の誘導体は、下記の構造式
【化4】
において、官能基R1〜R4の全てがアルキル基となっているテトラヒドロフランの誘導体であり、極性溶媒は、これらのうち少なくとも1種類以上が含有されている。
【0031】
(5) テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)の誘導体は、下記の4つの構造式
【化5】
において、同一部位に2種類の官能基R1,R1′を有しており、それらの官能基がアルキル基(炭素数1〜5の直鎖又は分岐した構造)、アルコール基(−R5−OH、R5=炭素数1〜5の直鎖又は分岐した構造)、エーテル基(−R6−O−R7、R6とR7の炭素数の総和が5以下の構造)の何れかであるテトラヒドロフランの誘導体であり、極性溶媒は、これらのうち少なくとも1種類以上が含有されている。
【0032】
の何れかであることが好ましい。
【0033】
また、有機金属化合物としては、少なくとも1種類以上の金属原子に、アセチルアセトナト、ジピバロイルメタナト、アルコキシド、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、ペンタフルオロプロパノイルヒバロイルメタナト、シクロペンタジエニルなどの配位子が1つ以上配位結合してなるものであることが好ましい。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも1種類以上の極性溶媒を含む溶媒中に、少なくとも1種類以上の有機金属化合物を混合し、かつ、飽和状態以下で溶解して作られたCVD用液体原料であって、極性溶媒が、テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)の誘導体を少なくとも1種類以上含み、かつ、テトラヒドロフラン(THF,C4H8O)そのものを含まない溶媒によるものとしたので、従来のTHF溶媒では不具合の多かった材料でも沈殿等の発生などの支障なく溶解することができ、かつ配管中を目詰まりなく移送することができ、また、気化器に残る残渣量を測定した結果、その量が全くなかったことから、気化効率も問題のない安定した溶液気化方式のCVD用原料が得られるという効果が確認されたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すCVD装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 基板
2 チャンバ
9 CVD用液体原料
10 タンク
13 気化器
Claims (3)
- 2−テトラヒドロフルフリルアルコールからなる溶媒中に、少なくとも1種類以上の有機金属化合物を混合し、かつ、飽和状態以下で溶解して作られたCVD用液体原料。
- 前記有機金属化合物は、少なくとも1種類以上の金属原子に、アセチルアセトナト、ジピバロイルメタナト、アルコキシド、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、ペンタフルオロプロパノイルピバロイルメタナト、シクロペンタジエニルからなる群より選ばれる配位子が1つ以上配位結合してなるものであることを特徴とする請求項1記載のCVD用液体原料。
- 成膜対象となる基板がセットされるチャンバと、
請求項1又は2記載のCVD用液体原料を収納するタンクと、
少なくとも1種類以上の成分元素を前記チャンバ内に供給するために前記タンク内に収納された前記CVD用液体原料を加熱部分に接触させて気化させ、搬送ガスとともに前記チャンバへ送り込む気化器と、
を備えるCVD装置。
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