JP3939486B2 - Cvd用液体原料供給装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学気相蒸着法(以下、CVD法という)によって酸化物超電導体などの酸化物材料を基材上に成膜する薄膜形成装置に備えられるCVD用液体原料供給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、臨界温度(Tc)が液体窒素温度(約77K)よりも高い酸化物超電導体として、Y-Ba-Cu-O系、Bi-Sr-Ca-Cu-O系、Tl-Ba-Ca-Cu-O系などの酸化物超電導体が発見されている。そして、これらの酸化物超電導体は、電力ケーブル、マグネット、エネルギー貯蔵、発電機、医療機器、電流リード等の分野に利用する目的で種々の研究が進められている。
上記の酸化物超電導体の製造方法の1つとして、化学気相蒸着法(CVD法)等の薄膜形成手段によって基材表面に酸化物超電導薄膜を成膜する方法が知られている。この種の薄膜形成手段により形成した酸化物超電導薄膜は、臨界電流密度(Jc)が大きく、優れた超電導特性を発揮することが知られている。またCVD法のなかでも金属錯体、金属アルコキシドなどの有機金属化合物を原料として行なうCVD法は、成膜速度が速く、短時間でより厚い膜を形成できる手段として注目されている。
【0003】
このようなCVD法による酸化物超電導体の製造方法において通常使用される原料化合物としては、酸化物超電導体を構成する各元素のβ−ジケトン化合物やシクロペンタジエニル化合物などが用いられ、例えば、Y-Ba-Cu-O系の酸 化物超電導体の製造用には、Y(thd)3、Ba(thd)2またはBa(thd)2・phen2、Cu(thd)2等の有機金属錯体原料(MO原料)などが 使用されている(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)。
これらの有機金属錯体原料は室温で固体の原料であり、200〜300℃に加熱することにより高い昇華特性を示すが、原料の純度や加熱時間に伴う仕込み原料の表面積変化等により昇華効率が大きく左右されるために組成制御が困難とされている。そこで、これらの固体の錯体原料は通常、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロパノール、トルエン、ジグリム(2,5,8-トリオキソノナン)等の有機溶媒に溶解し、液体原料として用いられていた。
【0004】
これらの液体原料は、図5に示すようなCVD用液体原料供給装置100により加熱気化され、キャリアガスとともに原料ガスとしてCVD反応装置に送り込まれ、CVD法によって反応チャンバ内に設置した基材の表面に反応生成物を堆積させることで目的のY-Ba-Cu-O系酸化物超電導体が得られる。
【0005】
図5には、従来のCVD用液体原料供給装置を示す。このCVD用液体原料供給装置100は、液体原料を気化器150内に噴霧する液体原料供給器130と、噴霧された液体原料を気化させ、原料ガスとするとともにこの原料ガスを図示しないCVD反応装置内に供給する気化器150とから概略構成される。
【0006】
液体原料供給器130は、本願発明者らにより特願平10−130828号により提案されているもので、内部に液体原料が供給される毛細管131aと、毛細管131aが着脱自在に挿入される毛細管挿入部131と、毛細管挿入部131の外周を取り囲んで設けられ、毛細管挿入部131との隙間に液体原料を霧化するためのアトマイズガスが供給される筒状で先窄まり状のアトマイズガス供給部132と、アトマイズガス供給部132の外周を取り囲んで設けられ、アトマイズガス供給部132との隙間に毛細管131aとアトマイズガス供給部132を冷却ならびにシールドするシールドガスが供給される筒状のシールドガス供給部133とから概略構成されるものである。
【0007】
この液体原料供給器130はガラス製であり、該供給器130を構成するアトマイズガス供給部132とシールドガス供給部133は互いに上端部で接合一体化されており、さらにこれらに毛細管供給部131が一体的に接合されている。
そして、この液体原料供給器130では、アトマイズガス供給部132の先端部と毛細管131aの先端部とからノズル137が構成されている。
【0008】
また、アトマイズガス供給部132の先端部はシールドガス供給部133の先端部及び毛細管挿入部131の先端部から僅かに突出している。また、毛細管131aの先端部はアトマイズガス供給部132の先端部より僅かに引っ込んでいる。
このように従来の液体原料供給器130では、毛細管131a、毛細管挿入部131、アトマイズガス供給部132及びシールドガス供給部133の各先端部が相互に近接している。
【0009】
また液体原料供給器130には、アトマイズガス供給部132にAr等のアトマイズガスを供給するアトマイズガス源136と、シールドガス供給部133にAr等のシールドガスを供給するシールドガス供給源139が接続されている。
更に毛細管131aには接続管141が取り付けられ、接続管141には加圧ポンプ135と液体原料用MFC141aが挿入されるとともに液体原料134が収納された収納容器142が取り付けられている。収納容器142には加圧源143が取り付けられており、この加圧源143からHeガス等を収納容器142内に供給して加圧することにより、液体原料134を接続管141を介して毛細管131aに一定の流量で連続供給できるように構成されている。
【0010】
また気化器150は、箱状の気化室151と、この気化室151の外周に配置されて気化室151内部を加熱する加熱ヒータ152とから概略構成される。また気化室151には液体原料導入部151aが突出して設けられている。
液体原料供給器130は、その先端部分が液体原料導入部151aに収納されるとともにOリング153によって気化室151を密閉状態とするように気化器150に接続されている。
【0011】
従来のCVD用液体原料供給装置100を備えた酸化物超電導体の製造装置を用いて長尺の酸化物超電導体を製造するには、液体原料を液体原料供給器130の毛細管131a内に送液し、毛細管131a内に送液された液体原料134を気化器150内に噴霧し、噴霧された液体原料134を気化器150内で気化させて原料ガスとし、この原料ガスを図示しないCVD反応装置に供給する。これとともにCVD反応装置内にテープ状の基材を走行させ、さらに該テープ状の基材を加熱して反応生成物を基材上に堆積させることにより長尺の酸化物超電導体が得られる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のCVD用液体原料供給装置100においては、原料ガスが気化室151内を対流して液体原料導入部151a近傍に到達し、アトマイズガス及びシールドガスによって原料ガスが冷却され、図5に示すように毛細管131aの先端部分に原料ガスの再析出物160が徐々に析出し、毛細管131aが目詰まりして液体原料の供給を長時間に渡って連続して行うことができなくなるという課題があった。
特に、従来の液体原料供給器130は、アトマイズガス供給部132及びシールドガス供給部133の各先端部が毛細管131aの先端部に近接しているために、長時間の使用により、これらのガスにより冷却されて析出した再析出物160が、毛細管131aの先端部分に付着することがあった。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、液体原料供給器の先端部分における再析出物の付着を防止して、長時間に渡って連続して原料ガスを供給することが可能なCVD用液体原料供給装置の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、液体原料供給器と、該液体原料供給器に接続されてこの液体原料供給器から供給された液体原料を気化する気化器とを具備してなるCVD用液体原料供給装置であって、前記液体原料供給器は、内部に液体原料が供給される毛細管と、該毛細管が挿入される毛細管挿入部と、該毛細管挿入部の外周を取り囲んで設けられ、前記毛細管及び前記毛細管挿入部を冷却するための冷却ガスが供給される筒状で先窄まり状の冷却ガス供給部と、該冷却ガス供給部の外周を取り囲んで設けられ、液体原料と混合されて原料ガスを構成するキャリアガスが前記冷却ガス供給部との隙間に供給される筒状のキャリアガス供給部とからなり前記気化器は、前記液体原料供給器に接続されて前記液体原料を気化する気化室と、前記気化器及び前記キャリアガス供給部を加熱するために該気化器の外周側及び前記液体原料供給器の外周側の一部に配設された加熱ヒータとを具備してなり前記毛細管が、着脱交換可能に前記毛細管挿入部に挿入されるとともに、その先端部が前記冷却ガス供給部の先端部及び前記キャリアガス供給部の先端部より前記気化器側に突出しており、また前記毛細管が、その先端部において原料ガスが再析出することなく、毛細管が再析出物によって目詰まりすることがないように、かつ、毛細管の先端部から前記気化室の底部に向けて液体原料が移動する間に気化するように、毛細管の先端部から気化室の底部までの間隔をあけて突出していることを特徴とするCVD用液体原料供給装置を上記課題の解決手段とした。
また、請求項2に記載の発明では、液体原料供給器と、該液体原料供給器に接続されてこの液体原料供給器から供給された液体原料を気化する気化器とを具備してなるCVD用液体原料供給装置であって、前記液体原料供給器は、内部に液体原料が供給される毛細管と、該毛細管が挿入される毛細管挿入部と、該毛細管挿入部の外周を取り囲んで設けられ、前記毛細管及び前記毛細管挿入部を冷却するための冷却ガスが供給される筒状で先窄まり状の冷却ガス供給部と、該冷却ガス供給部の外周を取り囲んで設けられ、液体原料と混合されて原料ガスを構成するキャリアガスが前記冷却ガス供給部との隙間に供給される筒状のキャリアガス供給部とからなり、前記気化器は、前記液体原料供給器に接続されて前記液体原料を気化する気化室と、前記気化器及び前記キャリアガス供給部を加熱するために該気化器の外周側及び前記液体原料供給器の外周側の一部に配設された加熱ヒータとを具備してなり、前記毛細管が、着脱交換可能に前記毛細管挿入部に挿入されるとともに、その先端部が前記冷却ガス供給部の先端部及び前記キャリアガス供給部の先端部より前記気化器側に20〜100mmの範囲で突出していることを特徴とするCVD用液体原料供給装置を上記課題の解決手段とした。
【0015】
また、前記毛細管の先端部は、上記の気化室内に位置していることが好ましい。
【0016】
更に、請求項3に記載の発明では、前記気化室が、前記液体原料が前記毛細管の先端部から該気化室の端部側に向けて移動する間に気化するように、前記毛細管の先端部から前記気化室の端部までの間隔をあけて構成されるとともに、前記気化室の端部に保熱部材が備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCVD用液体原料供給装置を上記課題の解決手段とした。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のCVD用液体原料供給装置の一実施形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明に係るCVD用液体原料供給装置を備えた酸化物超電導体の製造装置の一例を示すものである。
この酸化物超電導体の製造装置は、本発明に係るCVD用液体原料供給装置10と、CVD反応装置60とから概略構成されている。
【0018】
図2は本発明に係るCVD用液体原料供給装置10の要部を示すものである。
本発明のCVD用液体原料供給装置10は、図1及び図2に示すように、液体原料供給器30と原料供給装置40と気化器50とから概略構成されている。
この液体原料供給装置10は、液体原料を原料供給装置40から液体原料供給器30を介して気化器50に供給し、気化器50によりこの液体原料を気化して原料ガスを生成するというものである。生成された原料ガスはCVD反応装置60に供給されてCVD反応に供される。
【0019】
図3には本発明に係る液体原料供給器30の断面模式図を示し、図4には図3のA−A’線に沿う断面模式図を示す。
液体原料供給器30は、図1〜図3に示すように、内部に液体原料が供給される毛細管31aと、毛細管31aが挿入される毛細管挿入部31と、毛細管挿入部31の外周を取り囲んで設けられた筒状で先窄まり状の冷却ガス供給部32と、冷却ガス供給部32の外周を取り囲んで設けられた筒状のキャリアガス供給部33とから概略構成されたものである。
【0020】
毛細管31aは、原料供給装置40から送り込まれてくる液体原料34が内部に供給されるものである。毛細管31aの寸法の具体例としては、外径が375μm程度であり、内径が数10μm〜数百μm程度、より好ましい内径としては50μm〜150μm程度である。
【0021】
上述のような構成の毛細管31aは、着脱交換可能に毛細管挿入部31に挿入され、その先端部31cが毛細管挿入部31の先端部31bより気化器50側に突出している。
また毛細管131aの先端部31cは同時に、冷却ガス供給部32の先端部32a及びキャリアガス供給部33の先端部33aより気化器50側に突出している。
【0022】
毛細管挿入部31は、毛細管31aを冷却ガス供給部32内に案内するためのものである。毛細管挿入部31の先端部31bの内径は、毛細管31aの外径に近い値であることが好ましい。毛細管31aの外径が375μmの場合の毛細管挿入部31の寸法の具体例としては、内径380μm〜390μm程度、外径425〜475μm程度とされる。
このような毛細管挿入部31内に挿入された毛細管31aは、後述する原料供給装置40と接続されている。
【0023】
この毛細管31aの中央部には供給された液体原料34を一時的に貯留する液だまり(図示略)が設けられていることが好ましい。この液だまりの内径は、毛細管31aの上部の液体供給口31dや下部の先端部31cの内径よりも大きくなっており、原料供給装置40から送り込まれた液体原料34が溜まりつつ連続的に先端部31cに送り込まれるようになっている。このような液だまりが設けられていると、液体原料34中に気泡等が混入していても、気泡等は液だまりに溜った液体原料34の液面に浮き上がるため、先端部31cにまで達するのを防止できる。
【0024】
上述のような数10μm〜数百μm程度の内径を有する毛細管31a内に液体原料34を送液するためには、数10kg/cm2の送圧力が必要となるため、図1に示すように原料供給装置40から送り込まれてくる液体原料34を毛細管31a内に加圧送液するための加圧式液体ポンプ35が接続管35aを介して液体供給口31dに接続されていることが好ましい。このような加圧式液体ポンプ35が設けられていると、液体原料34を数100kg/cm2で加圧送液することができる。この加圧式液体ポンプ35には、後述する原料供給装置40が接続管41を介して接続される。
【0025】
冷却ガス供給部32は、毛細管31aと毛細管挿入部31を冷却するための冷却ガスが毛細管挿入部31との隙間に供給されるものである。冷却ガス供給部32の上部には、図1に示すように冷却ガス用MFC36aを介して冷却ガス供給源36が接続され、冷却ガス供給部32内に冷却ガスを供給できるように構成されている。ここで用いられる冷却ガスの具体例を明示するならば、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどである。
【0026】
キャリアガス供給部33は、液体原料34とともに原料ガスを構成するキャリアガスが冷却ガス供給部32との隙間に供給されるものである。
図3に示すようにキャリアガス供給部33の先端部33aは、冷却ガス供給部32の先端部32a側に向けて折曲する折曲部とされ、キャリアガス供給部33を先窄状にしてキャリアガスの流速を向上できるように構成されている。
また、図1に示すようにキャリアガス供給部33の上部には、キャリアガス用MFC39aを介してキャリアガス供給源39が接続され、キャリアガス供給部33内にキャリアガスを供給できるように構成されている。ここで用いられるキャリアガスの具体例を明示するならば、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどである。
【0027】
この液体原料供給器30は、ガラスなどからなるものであり、該供給器30を構成する冷却ガス供給部32とキャリアガス供給部33は互いに上端部で接合一体化されており、さらにこれらに毛細管挿入部31が一体的に接合されている。
【0028】
冷却ガス供給部32の先端部32a、キャリアガス供給部33の先端部33a及び毛細管挿入部31の先端部31bは、毛細管31aの長さ方向に対してほぼ同じ位置に位置している。
一方、毛細管31aの先端部31cは、冷却ガス供給部32の先端部32a及びキャリアガス供給部33の先端部33aよりも気化器50側に大きく突出しており、図3に示すその突出長さLは、例えば20〜100mmの範囲である。突出長さLは、後述する気化器50の構造との関係で最適な長さに適宜調整される。
【0029】
上述のような構成の液体原料供給器30では、液体原料34を液体供給口31dから毛細管31a内に一定流量で圧送すると、液体原料34は毛細管31aの先端部31cに達して液滴状の状態で気化器50に連続的に供給される。そして液滴状の液体原料34は気化器50内で加熱されて気化される。
また、これとともに冷却ガスを冷却ガス供給部33に一定流量で送り込むと、毛細管挿入部31及び毛細管31aが冷却されるので該毛細管31a内を流れる液体原料34も冷却され、液体原料34が途中で気化するのを防止できるようになっている。
さらにまた、キャリアガスをキャリアガス供給部33に一定流量で送り込むと、キャリアガスが気化器50内で液体原料34と混合し、原料ガスが生成する。
【0030】
そして、冷却ガス供給部32またはキャリアガス供給部33の各先端部32a、33aから吐出された冷却ガスまたはキャリアガスにより原料ガスが冷却され、再析出物が生成した場合でも、毛細管31aの先端部31cが、冷却ガス供給部32の先端部32a及びキャリアガス供給部33の先端部33aよりも気化器50側に大きく突出しているので、再析出物の付着面積が小さくなり、再析出物によって毛細管31aの先端部31cが目詰まりするおそれがない。
【0031】
また、毛細管31aには、液体原料用MFC41aを備えた接続管41と、加圧式液体ポンプ35を備えた接続管35aとを介して、原料供給装置40が接続されている。これら接続管35a、41は、内面がフッ素樹脂でコートされたパイプなどの耐薬品性に優れたものが使用される。
図1に示すように原料供給装置40は、収納容器42と、加圧源43を具備し、収納容器42の内部には液体原料34が収納されている。収納容器42は、ガラス瓶などの耐薬品性に優れたものが使用される。加圧源43は、収納容器42内にHeガス等を供給することにより収納容器42内を加圧して収納容器42内に満たされた液体原料34を接続管41に一定流量で排出できるようになっている。
【0032】
収納容器42に収納されている液体原料34は、成膜するべき目的化合物の構成金属元素の有機金属錯体、金属アルコキシドなどの金属有機化合物を、目的化合物の組成比となるように複数種混合して有機溶媒に溶解したものである。これらの金属有機化合物および有機溶媒の具体例を明示するならば、Y-Ba-Cu- O系酸化物超電導体を成膜する場合に用いられるY(thd)3、Ba(thd)2またはBa(thd)2・phen2、Cu(thd)2等(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)の有機金属錯体、および、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロパノール、トルエン、ジグリム(2,5,8-トリオキソノナン)などの有機溶媒である。
【0033】
液体原料供給器30の下方には気化器50が配設されている。
図1及び図2に示すように、気化器50は、箱状の気化室51と、気化器50の外周に配置されて気化室51内部を加熱する加熱ヒータ52とから概略構成されている。
気化室51には、液体原料導入部51aが液体原料供給器30側に突出して設けられている。そして液体原料供給器30は、その先端部分が液体原料導入部51aに収納されるとともにOリング53によって気化室51を密閉状態にして気化器50に接続されている。
そして上記の毛細管31aは、その先端部31cが気化室51内部に位置するように前記の突出長さLが設定されている。
【0034】
気化器50の外周には、気化室51内部を加熱する加熱ヒータ52が付設されていて、この加熱ヒータ52により毛細管31aの先端部31cから供給された液体原料34を所望の温度に加熱して気化させ、更にはキャリアガスと混合させて原料ガスが得られるようになっている。
また加熱ヒータ52は、気化室51のみならず、液体原料導入部51a及び液体原料供給器30の中央より下側を覆うようにも配設されていて、この加熱ヒータ52により、気化室51の内部とともに、液体原料導入部51a及び液体原料供給器30の一部の温度を高く保ち、液体原料導入部51a内部に対流する原料ガスを加熱して液体原料の再析出を防止できるように構成されている。
【0035】
また、加熱ヒータ52は、液体原料供給器30中央より下側を覆うように配設されているので、キャリアガス供給部33を加熱してキャリアガスを予熱することができ、これにより気化室51内部の原料ガスの温度を低下させることがなく、原料ガスの再析出をより効果的に防止できる。
また、予熱されたキャリアガスが液体原料導入部51aから気化室51内に供給されるので、液体原料導入部51a内部に対流してきた原料ガスを、再度気化室51に輸送することができる。
【0036】
また図1及び図2に示すように、気化室51内部は仕切板54により2分割され、2分割された気化室51の各部分は図2中下側の気化室底部(気化室端部)51bと仕切板54との間の隙間によって連通している。そして原料ガスは、仕切板54の図示左側の部分から気化室底部51b近傍を通過して仕切板54の図示右側の部分に移動し、更に気化室51に設けられた原料ガス導出口51cから気化器51外に輸送される。
気化器50は、輸送管53を介してCVD反応装置60に接続されており、原料ガス導出口51cから導出された原料ガスが、輸送管53を介してCVD反応装置60に供給されるように構成されている。
【0037】
毛細管31aの先端部31cから気化室51内に供給された液体原料34は、図1または図2中下方に移動しながら加熱されるとともにキャリアガスと混合されて原料ガスとなる。
このように本発明の液体原料供給装置10においては、液体原料34の霧化を伴わず、加熱及びキャリアガスとの混合のみにより原料ガスを生成するので、液体原料34の気化に際しては、液体原料34が原料ガスに気化されるまでの間に気化室51の内壁に衝突しないように気化室51を構成することが好ましい。
従って気化室51は、液滴状の液体原料34が毛細管31aの先端部31cから気化室底部51bに向けて移動する間に加熱されて気化するように、先端部31cから気化室底部51bまでの間隔を広くあけて構成されることが好ましい。
毛細管31aの先端部31cから気化室底部51bまでの距離は、液体原料34の種類、単位時間当たりの液体原料の供給量、気化室51の内容積、気化室51内の温度、圧力等に左右されるが、概ね30〜100cmの範囲とすることが好ましい。
【0038】
また、気化室底部51bには保熱部材55が備えられている。この保熱部材55は、熱容量の大きな材料であって液体原料34と反応をしないものであればどのようなものでも良く、特に金属製の厚板等が好ましく、ステンレス板、ハステロイ板、インコネル板等が好ましい。
この保熱部材55は、気化室51内で加熱ヒータの役割を果たし、例えば液体原料の一部が気化されずに液体状態のまま気化室底部51bに輸送されてきた場合に、この液体原料を再加熱して気化させ、これにより液体原料を効率よく気化させることができる。
【0039】
次にCVD反応装置60は、石英製の反応チャンバ61を有し、この反応チャンバ61は、横長の両端を閉じた筒型のもので、隔壁(図示略)によって図1の左側から順に基材導入部62と反応生成室63と基材導出部64に区画されている。更に、基材導入部62にはテープ状の基材65を導入するための導入孔が形成されるとともに、基材導出部64には基材65を導出するための導出孔が形成されており、また、導入孔と導出孔の周縁部には、図面では省略されているが基材65を通過させている状態で各孔の隙間を閉じて基材導入部62と基材導出部64を気密状態に保持する封止部材が設けられている。また、反応生成室63の天井部には、反応生成室63に連通する三角型のガス拡散部66が取り付けられている。
【0040】
一方、CVD反応装置60の外部には、基材導入部62の反応生成室63側方の部分から基材導出部64の反応生成室63側方の部分を覆う加熱ヒータ47が設けられ、基材導入部62が不活性ガス供給源68に、また、基材導出部64が酸素ガス供給源69にそれぞれ接続されている。また、ガス拡散部66には原料ガスの気化器50と接続された輸送管53が接続されている。この輸送管53の周囲には原料ガスが液体原料34となって析出するのを防止するための加熱手段(図示略)が設けられている。なお、輸送管53の途中部分には、酸素ガス供給源54が分岐接続され、輸送管53内に酸素ガスを供給できるように構成されている。
【0041】
また、上記CVD反応装置60の底部に排気管70が設けられており、真空ポンプ71を備えた圧力調整装置72に接続されていて、CVD反応装置60の内部のガスを排気できるようになっている。
更に、CVD反応装置60の基材導出部64の側方側には、CVD反応装置60内を通過する基材65を巻き取るためのテンションドラム73と巻取ドラム74とからなる基材搬送機構75が設けられている。また、基材導入部62の側部側には、基材65をCVD反応装置60に供給するためのテンションドラム76と送出ドラム77とからなる基材搬送機構78が設けられている。
【0042】
次に上記のように構成された液体原料供給装置10を備えた酸化物超電導体の製造装置を用いて、液体原料34を気化させた原料ガスを反応チャンバ61に送り、反応チャンバ61においてテープ状の基材65上に酸化物超電導薄膜を形成し、酸化物超電導体を製造する場合について説明する。
【0043】
図1に示す製造装置を用いて酸化物超電導体を製造するには、まず、テープ状の基材65と液体原料34を用意する。
この基材65は、長尺のものを用いることができるが、特に、熱膨張係数の低い耐熱性の金属テープの上面にセラミックス製の中間層を被覆してなるものが好ましい。上記耐熱性の金属テープの構成材料としては、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ(C276等)などの金属材料や合金が好ましい。また、上記金属テープ以外では、各種ガラステープあるいはマイカテープなどの各種セラミックスなどからなるテープを用いても良い。次に、上記中間層を構成する材料は、熱膨張係数が金属よりも酸化物超電導体の熱膨張係数に近い、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SrTiO3、MgO、Al23、LaAlO3、LaGaO3、YAlO3、ZrO2などのセラミックスが好ましく、これらの中でも できる限り結晶配向性の整ったものを用いることが好ましい。
【0044】
次に酸化物超電導体をCVD反応により生成させるための液体原料34は、成膜するべき目的化合物の構成金属元素の有機金属錯体、金属アルコキシドなどの金属有機化合物を、目的化合物の組成比となるように複数種混合し、THFなどの有機溶媒に溶解させたものを用いることができる。このような液体原料34を用意したならば、収納容器42に満たしておく。
【0045】
上記のテープ状の基材65を用意したならば、これを反応チャンバ61内に基材搬送機構78により基材導入部62から所定の移動速度で送り込むとともに基材搬送機構75の巻取ドラム74で巻き取り、更に反応生成室63内の基材65を加熱ヒータ47で所定の温度に加熱する。なお、基材65を送り込む前に、不活性ガス供給源68から不活性ガスをパージガスとして反応チャンバ61内に送り込み、同時に圧力調整装置72を作動させて反応チャンバ61の内部のガスを抜くことで反応チャンバ61内の空気等の不用ガスを排除して内部を洗浄しておくことが好ましい。
【0046】
基材65を反応チャンバ61内に送り込んだならば、酸素ガス供給源69から反応チャンバ61内に酸素ガスを送り、更に、加圧源43ならびにMFC41aにより収納容器42から液体原料34を接続管41を経て加圧式液体ポンプ35に送液し、加圧式液体ポンプ35により液体原料34を0.1〜1.0ml/分程度の速度で毛細管31a内に圧送し、これと同時に冷却ガスを冷却ガス供給部32に流量200〜300ccm程度で送り込むとともにキャリアガスをキャリアガス供給部33に流量200〜300cc程度で送り込む。また、同時に圧力調整装置72を作動させ反応チャンバ61の内部のガスを排気する。この際、冷却ガスの温度は室温程度になるように調節しておく。
また、気化室51の内部温度、液体原料導入部51aの内部温度及び液体原料供給器30の温度が、上記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるようにヒータ52により調節しておく。こうすることによりキャリアガスがヒータ52により予熱されるとともに気化室51内での原料ガスの再析出が防止される。
また、ここで用いる毛細管31aとしては、液体原料34の供給量に応じた内径を有するものを予め毛細管挿入部31に挿入しておく。また、液体原料34の供給量を変更する場合に備えて、内径が異なる数種類の毛細管31aを用意しておくことが好ましい。
【0047】
すると、液体原料34は毛細管31aの先端部31cから気化室51内に液滴状の状態で供給される、そして、気化器50の内部に供給された液滴状の液体原料34は、加熱ヒータ52により加熱されるとともにキャリアガスと混合されて気化して原料ガスとなり、この原料ガスは輸送管53を介してガス拡散部66に連続的に供給される。この時、輸送管53の内部温度が上記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるように上記加熱手段により調節しておく。また、この時、酸素ガス供給源54から酸素ガスを供給して原料ガス中に酸素を混合する操作も行う。
【0048】
次に、反応チャンバ61の内部においては、輸送管53の出口部分からガス拡散部66に出た原料ガスが、ガス拡散部66から拡散しながら反応生成室63側に移動し、反応生成室63の内部を通り、次いで基材65の近傍を移動してガス排気管70に引き込まれるように移動する。
従って、加熱された基材65の上面側で原料ガスを反応させて酸化物超電導薄膜を生成させることができる。
以上の成膜操作を所定時間継続して行なうことにより、基材65上に所望の厚さの膜質の安定した酸化物超電導薄膜を備えた酸化物超電導体80を得ることができる。
【0049】
また、液体原料34の供給量を変更する場合、先に取り付けた毛細管31aが変更後の供給量に応じた内径を有していないときには、先に取り付けられている毛細管31aを毛細管挿入部31から外し、変更後の供給量に応じた内径を有する毛細管31aを毛細管挿入部31に挿入することにより、毛細管31aを容易に交換することができる。このように毛細管31aを交換した後は、上述の方法と同様にして酸化物超電導薄膜を成膜することができる。
【0050】
上記の液体原料供給装置30にあっては、毛細管31aが着脱交換可能に取り付けられたことにより、液体原料34の供給量を変更する場合、変更後の供給量に応じて毛細管31aのみを交換するだけで済み、液体原料供給部の内径が異なる数種類の液体原料供給装置を用意する必要がなく、経済的である。
また、この液体原料供給装置30によれば、液体原料34の供給量の変更に応じて交換される部分が毛細管31aだけで済み、毛細管挿入部31aや冷却ガス供給部32やキャリアガス供給部33については同じものを使用できるので、液体原料供給装置ごと交換する場合に比べて、液体原料供給装置の個体差に起因する寸法差異を低減でき、あらゆる供給量に応じて良好な液体原料の供給状況および気化状況が再現性良く得られる。
従って、このような液体原料供給装置30が備えられた酸化物超電導体の製造装置によれば、良好な酸化物超電導薄膜を再現性良く製造できる。
上記実施形態においては、本発明のCVD用液体原料供給装置を酸化物超電導体の製造装置に備えた場合について説明したが、超電導体の製造装置に限らず、CVD法により薄膜を製造する薄膜製造装置に備えられていてもよい。
【0051】
またこの液体原料供給装置30によれば、毛細管31aの先端部31cが気化室51内部に位置しており、先端部31cが液体原料34を構成する原料のうち最も気化温度の高い原料の最適温度に維持されるので、先端部31cにおいて原料ガスが再析出することがなく、毛細管31aが再析出物により目詰まりすることがない。
また、原料ガスが冷却ガスあるいはキャリアガスにより冷却されて再析出物が析出した場合でも、毛細管31aの先端部31cが冷却ガス供給部32の先端部32a及びキャリアガス供給部33の先端部33aよりも気化器50側に大きく突出しているので、再析出物の付着面積が小さくなり、再析出量を低減することができる。
【0052】
また、加熱ヒータ52が、液体原料供給器30中央より下側を覆うように配設されているので、キャリアガス供給部33を加熱してキャリアガスを予熱することができ、これにより気化室51内部の原料ガスの温度を低下させることがなく、原料ガスの再析出をより効果的に防止できる。
また、予熱されたキャリアガスが液体原料導入部51aから気化室51内に供給されるので、液体原料導入部51a内部に対流してきた原料ガスを、再度気化室51に輸送することができる。
【0053】
また、気化室51は、毛細管31aの先端部31cから気化室底部51bに向けて液体原料34が移動する間に気化するように、先端部31cから気化室底部51bまでの間隔を広くあけて構成されるので、液体原料34が原料ガスに気化されるまでの間に気化室51の内壁に衝突する確率が小さくなり、効率よく原料ガスを生成することができる。
また、気化室底部51bには、熱容量が大きな保熱部材55が備えられているので、液体原料34の一部が気化されずに液体状態のまま気化室底部51bに輸送されてきた場合であっても、この液体原料を再加熱して気化させることができる。
【0054】
このように上記の液体原料供給装置30によれば、原料ガスの再析出を効果的に抑制できるので、液体原料の供給量が常に一定に保たれ、長時間に渡り原料ガスを連続して生成できる。
【0055】
【実施例】
(実施例1)
図2に示した液体原料供給装置が備えられた図1の酸化物超電導体の製造装置を用いてY-Ba-Cu-O系の酸化物超電導体を以下の ようにして作製した。
液体原料として、Y(thd)3、Ba(thd)2、Cu(thd)2をモル 比でY:Ba:Cu=1.0:2.7:3.0で混合したものをTHF溶液に溶解した液体原料を収納容器に貯留した。
この液体原料を加圧源ならびに液体微量MFCにより加圧式液体ポンプに供給し、さらに該加圧式液体ポンプから液体原料を供給速度0.3ml/分で毛細管に供給した。
これと同時に冷却ガスとしてArを冷却ガス供給部に流量200ccm程度で送り込むとともにキャリアガスとしてArをキャリアガス供給部に流量200ccm程度で送り込んだ。上記毛細管としては内径が40μm、外径375μmのものを用い、毛細管の先端部からキャリアガス供給部の先端部までの長さを50mmとした。また、加圧式液体ポンプによる加圧力は70kg/cm2とした。
更に、気化室内の温度及び液体原料導入部内の温度は230℃、圧力は5Torrとした。
【0056】
以上の操作により、液体原料を毛細管に良好に圧送することができ、また、毛細管に圧送された液体原料を液滴状の液体原料として気化器内に一定量連続的に供給することができ、さらにこの液体原料が気化して生成した原料ガス(CVDガス)も反応チャンバに一定量連続して供給することができた。このときの連続供給時間を測定した。
【0057】
また、反応チャンバ内の基材移動速度1.0m/時間、基材加熱温度800℃、リアクタ内圧力5Torr、酸素ガス供給源からの酸素ガス流量を50〜100ml/分に設定して、基材上に厚さ0.4〜0.5μmのY-Ba-Cu-O系の酸化物 超電導薄膜を連続的に形成し、酸化物超電導体を得た。ここでの基材としては、ハステロテープ上にイオンビームアシストスパッタリング法によりYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)面配向中間層を形成したもの(幅1cm×長さ〜30cm×厚さ0.02cm)を用いた。
【0058】
(比較例1)
図1及び図2に示す液体原料供給装置に代えて従来の液体原料供給装置が備えられた酸化物超電導体の製造装置を用いる以外は上記実施例1と同様にしてY-Ba-Cu-O系の酸化物超電導体を作製した。そして、実施例1と同様にして液体原料の連続供給時間を測定した。
【0059】
実施例1の本発明の液体原料供給装置の場合は、液体原料の気化による原料ガスの生成を10時間連続して行うことができた。この原料ガスの生成の間における再析出物の析出は一切認められなかった。
一方、比較例1の従来の液体原料供給装置の場合には、原料ガスの生成を連続して2時間行った時点で、液体原料供給器の先端に再析出物が付着し、毛細管が目詰まりして以後の原料ガスの生成を行うことが出来なくなった。
【0060】
また、実施例1ならびに比較例1で得られたテープ状の酸化物超電導体を、それぞれ酸化物超電導体の中央部分側に対し、スパッタ装置によりAgコーティングを施し、更に両端部側にそれぞれAgの電極を形成し、Agコーティング後に純酸素雰囲気中にて500℃で2時間熱処理を施して測定試料とした。
そして、これら試料を液体窒素で77Kに冷却し、外部磁場0T(テスラ)の条件で各試料の臨界電流密度(Jc)を測定したところ、実施例1で得られた酸 化物超電導体と比較例1で得られた酸化物超電導体は、共に、3.0×105A /cm2(77K、0T)を確保することができた。
従って、実施例1の液体原料供給装置により得られた酸化物超電導体は、従来の比較例1の液体原料供給装置により得られた酸化物超電導体と同等の臨界電流密度(Jc)を示し、液体原料供給装置の違いによる超電導特性の差は見られなかった。
【0061】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明のCVD用液体原料供給装置は、毛細管が着脱交換可能に取り付けられたことにより、液体原料の供給量を変更する場合、変更後の供給量に応じて毛細管のみを交換するだけで済み、毛細管の内径が異なる数種類の液体原料供給装置を用意する必要がなく、経済的である。
また、本発明のCVD用液体原料供給装置によれば、液体原料の供給量の変更に応じて交換される部分が毛細管だけで済み、毛細管挿入部や冷却ガス供給部やキャリアガス供給部については同じものを使用できるので、液体原料供給装置ごと交換する場合に比べて、液体原料供給装置の個体差に起因する寸法差異を低減でき、あらゆる供給量に応じて良好な液体原料の供給状況および気化状況が再現性良く得られる。
【0062】
また、上記毛細管は着脱交換可能に取り付けられているので、目的の液体供給量に応じた毛細管を任意に選ぶことができ、選択した毛細管に交換することにより、目的の液体供給量を迅速に得ることができる。また、上記毛細管は着脱交換可能であるので、送液する液体の種類に応じた毛細管を任意に選ぶことができ、従って、あらゆる種類の液体の供給に用いることができ、しかも毛細管は容易に交換できるので、あらゆる種類の液体を迅速に供給することができる。従って、本発明のCVD用液体原料供給装置が備えられた薄膜の製造装置によれば、良好な薄膜を再現性良く製造できる。
【0063】
そして本発明のCVD用液体原料供給装置は、液体原料供給器の毛細管の先端部が、冷却ガス供給部の先端部及びキャリアガス供給部の先端部よりも気化器側に大きく突出しているので、再析出物の付着面積が小さくなり、再析出量を低減することができる。
またこの液体原料供給装置によれば、毛細管の先端部が気化室内部に位置しており、この先端部が液体原料を構成する原料のうち最も気化温度の高い原料の最適温度に維持されるので、先端部において原料ガスが再析出することがなく、毛細管が再析出物により目詰まりすることがない。
【0064】
また加熱ヒータが、気化室のみならず、液体原料導入部及び液体原料供給器の一部を覆うように配設されているので、冷却ガス供給部の先端部やキャリアガス供給部の先端部付近に対流する原料ガスを加熱して液体原料の再析出を防止できる。
また、加熱ヒータは、液体原料供給器の中央より下側の外周を覆うように配設されているので、キャリアガスを予熱することができ、これにより対流によって液体原料導入部の内部に移動してくる原料ガスの再析出をより効果的に防止できる。
【0065】
また、気化室は、毛細管の先端部から気化室底部に向けて液体原料が移動する間に液体原料が気化するように、先端部から気化室底部までの間隔を広くあけて構成されるので、液体原料が原料ガスに気化されるまでの間に気化室の内壁に衝突する確率が小さくなり、効率よく原料ガスを生成できる。
また、気化室底部には、熱容量の大きな保熱部材が備えられているので、液体原料の一部が気化されずに液体状態のまま気化室底部に輸送されてきた場合であっても、この液体原料を再加熱して気化させることができ、これにより液体原料を効率よく気化できる。
【0066】
以上のように本発明の液体原料供給装置によれば、原料ガスの再析出を効果的に抑制できるので、液体原料の供給量が常に一定に保たれ、長時間に渡り原料ガスを連続して生成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るCVD用液体原料供給装置を備えた酸化物超電導体の製造装置の一例を示す構成図である。
【図2】 図1に示すCVD用液体原料供給装置の要部を示す構成図である。
【図3】 図1に示すCVD用液体原料供給装置に備えられた液体原料供給器を示す断面模式図である。
【図4】 図3の液体原料供給器のA−A線に沿う断面図である。
【図5】 従来のCVD用液体原料供給装置を示す構成図である。
【符号の説明】
10 CVD用液体原料供給装置
30 液体原料供給器
31 毛細管挿入部
31a 毛細管
31c 毛細管の先端部
32 冷却ガス供給部
33 キャリアガス供給部
34 液体原料
50 気化器
51 気化室
51b 気化室底部(気化室の端部)
52 加熱ヒータ
55 保熱部材

Claims (3)

  1. 液体原料供給器と、該液体原料供給器に接続されてこの液体原料供給器から供給された液体原料を気化する気化器とを具備してなるCVD用液体原料供給装置であって、
    前記液体原料供給器は、内部に液体原料が供給される毛細管と、該毛細管が挿入される毛細管挿入部と、該毛細管挿入部の外周を取り囲んで設けられ、前記毛細管及び前記毛細管挿入部を冷却するための冷却ガスが供給される筒状で先窄まり状の冷却ガス供給部と、該冷却ガス供給部の外周を取り囲んで設けられ、液体原料と混合されて原料ガスを構成するキャリアガスが前記冷却ガス供給部との隙間に供給される筒状のキャリアガス供給部とからなり
    前記気化器は、前記液体原料供給器に接続されて前記液体原料を気化する気化室と、前記気化器及び前記キャリアガス供給部を加熱するために該気化器の外周側及び前記液体原料供給器の外周側の一部に配設された加熱ヒータとを具備してなり
    前記毛細管が、着脱交換可能に前記毛細管挿入部に挿入されるとともに、その先端部が前記冷却ガス供給部の先端部及び前記キャリアガス供給部の先端部より前記気化器側に突出しており
    また前記毛細管が、その先端部において原料ガスが再析出することなく、毛細管が再析出物によって目詰まりすることがないように、かつ、毛細管の先端部から前記気化室の底部に向けて液体原料が移動する間に気化するように、毛細管の先端部から気化室の底部までの間隔をあけて突出していることを特徴とするCVD用液体原料供給装置。
  2. 液体原料供給器と、該液体原料供給器に接続されてこの液体原料供給器から供給された液体原料を気化する気化器とを具備してなるCVD用液体原料供給装置であって、
    前記液体原料供給器は、内部に液体原料が供給される毛細管と、該毛細管が挿入される毛細管挿入部と、該毛細管挿入部の外周を取り囲んで設けられ、前記毛細管及び前記毛細管挿入部を冷却するための冷却ガスが供給される筒状で先窄まり状の冷却ガス供給部と、該冷却ガス供給部の外周を取り囲んで設けられ、液体原料と混合されて原料ガスを構成するキャリアガスが前記冷却ガス供給部との隙間に供給される筒状のキャリアガス供給部とからなり
    前記気化器は、前記液体原料供給器に接続されて前記液体原料を気化する気化室と、前記気化器及び前記キャリアガス供給部を加熱するために該気化器の外周側及び前記液体原料供給器の外周側の一部に配設された加熱ヒータとを具備してなり、
    前記毛細管が、着脱交換可能に前記毛細管挿入部に挿入されるとともに、その先端部が前記冷却ガス供給部の先端部及び前記キャリアガス供給部の先端部より前記気化器側に20〜100mmの範囲で突出していることを特徴とするCVD用液体原料供給装置。
  3. 前記気化室は、前記液体原料が前記毛細管の先端部から該気化室の端部側に向けて移動する間に気化するように、前記毛細管の先端部から前記気化室の端部までの間隔をあけて構成されるとともに、前記気化室の端部に保熱部材が備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCVD用液体原料供給装置。
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