JP2001319535A - 酸化物超電導導体の製造装置及び酸化物超電導導体の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導導体の製造装置及び酸化物超電導導体の製造方法

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JP2001319535A
JP2001319535A JP2000134846A JP2000134846A JP2001319535A JP 2001319535 A JP2001319535 A JP 2001319535A JP 2000134846 A JP2000134846 A JP 2000134846A JP 2000134846 A JP2000134846 A JP 2000134846A JP 2001319535 A JP2001319535 A JP 2001319535A
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oxide superconductor
reaction generation
film
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JP2000134846A
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Kazunori Onabe
和憲 尾鍋
Takashi Saito
隆 斉藤
Shigeo Nagaya
重夫 長屋
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Fujikura Ltd
Chubu Electric Power Co Inc
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Fujikura Ltd
Chubu Electric Power Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 臨界電流が高い長尺の酸化物超電導導体を製
造できる酸化物超電導導体の製造装置および上記のよう
な臨界電流が高い長尺の酸化物超電導導体を製造できる
酸化物超電導導体の製造方法の提供。 【解決手段】 リアクタ31に反応生成室35がテープ
状の基材Tの移動方向に直列に複数設けられており、さ
らにこれら反応生成室35の間に境界室38が設けら
れ、境界室38に、遮断ガス供給手段38Bにより遮断
ガスを供給する構造とされ、さらに、上記複数設けられ
た反応生成室35は、ガス拡散部40を介して酸化物超
電導体の原料ガス導入管53と安定化膜の原料ガス導入
管53が交互に接続された酸化物超電導導体の製造装
置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超電導電力ケーブ
ル、超電導マグネット、超電導エネルギー貯蔵装置、超
電導発電装置、医療用MRI装置、超電導電流リード等
の分野で利用できる酸化物超電導導体の製造装置および
これを用いた酸化物超電導導体の製造方法に係り、基材
の両面にそれぞれ酸化物超電導薄膜と安定化層を交互に
多層積層できる酸化物超電導導体の製造装置およびこの
製造装置を用いた酸化物超電導導体の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来の酸化物超電導導体の製造方法とし
ては、酸化物超電導粉末または熱処理によって酸化物超
電導体となる粉末を円柱状にプレスし、これを銀管中に
挿入し伸線・圧延工程と、熱処理工程を行って線材化す
るパウダーインチューブ法(PIT法)などの固相法の
他に、レーザー蒸着法、スパッタ法などの物理的気相堆
積法(PVD法)や、化学気相成長法(CVD法)など
の気相法により金属テープなどの長尺の基材上に連続的
に酸化物系超電導層を形成する成膜法が知られている。
【0003】レーザー蒸着法やCVD法等の気相法によ
り製造された酸化物超電導導体の構造としては、図10
に示すように金属性基材191の片面にY−Ba−Cu
−O系の酸化物超電導層193が形成され、さらにこの
酸化物超電導層193上にAgからなる表面保護層19
5が形成されたものが一般的である。また、上記のよう
にレーザ蒸着法やCVD法等の気相法により酸化物超電
導層を形成する場合においては、図10に示すように金
属製基材191上に酸化物超電導層193を直接形成す
ると、基材191自体が多結晶体でその結晶構造も酸化
物超電導層193を構成する酸化物超電導体と大きく異
なるために結晶配向性の良好な酸化物超電導層が形成で
きないという問題があり、これを改善するために図11
に示すようにハステロイテープなどの基材191の片面
に、スパッタ装置を用いてYSZ(イットリア安定化ジ
ルコニア)などの多結晶中間層192を形成し、この多
結晶中間層92上にY−Ba−Cu−O系の酸化物超電
導層193を形成し、さらにこの上にAg安定化層19
4を形成することにより、超電導特性の優れた酸化物超
電導導体を製造する試みが種々行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところがレーザー蒸着
法やCVD法等の気相法により作製した酸化物超電導導
体においては、PIT法等の固相法により作製した酸化
物超電導導体に比べて高い臨界電流密度(Jc)が得ら
れるものの、臨界電流(Ic)が小さいという問題があ
った。それは、レーザー蒸着法やCVD法等の気相法に
より作製した酸化物超電導導体は、酸化物超電導層の結
晶配向性が良好である反面、酸化物超電導層の厚膜化が
困難であることに起因するものである。従って、長尺の
酸化物超電導導体の実用化には、高臨界電流化が重要で
あり、特に、超電導マグネット等に応用するには少なく
とも数十Aレベルの臨界電流が要求されるが、レーザー
蒸着法やCVD法等の気相法を用いる従来の酸化物超電
導導体の製造方法により作製された酸化物超電導導体は
上記のように臨界電流が小さいため、超電導マグネット
等に応用するのが困難であった。
【0005】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
で、臨界電流が高い長尺の酸化物超電導導体を製造でき
る酸化物超電導導体の製造装置および上記のような臨界
電流が高い長尺の酸化物超電導導体を製造できる酸化物
超電導導体の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、移動中のテー
プ状の基材の両面に酸化物超電導体の原料ガスとAg安
定化膜の原料ガスを交互に化学反応させて酸化物超電導
薄膜とAg安定化膜を交互に成膜するCVD反応を行う
リアクタと、上記リアクタに酸化物超電導体の原料ガス
を供給する酸化物超電導体の原料ガス供給手段と、上記
リアクタに安定化膜の原料ガスを供給する安定化膜の原
料ガス供給手段と、上記リアクタ内のガスを排気するガ
ス排気手段とが備えられてなり、上記酸化物超電導体の
原料ガス供給手段は、酸化物超電導体の原料ガス供給源
と、酸化物超電導体の原料ガス導入管と、酸素ガスを供
給する酸素ガス供給手段とを具備し上記安定化膜の原料
ガス供給手段は、安定化膜の原料ガス供給源と、安定化
膜の原料ガス導入管とを具備し、上記リアクタは、基材
導入部と反応生成室と基材導出部とにそれぞれ隔壁を介
して区画され、上記反応生成室がテープ状の基材の移動
方向に直列に複数設けれられて、これら反応生成室の間
に境界室が設けられ、上記各隔壁に基材通過孔が形成さ
れ、上記リアクタの内部に基材導入部と複数の反応生成
室とこれら反応生成室間の境界室と基材導出部とを通過
する基材搬送領域が形成され、上記複数設けられた反応
生成室にそれぞれガス拡散部が設けられ、上記境界室に
両側の反応生成室どうしを遮断するための遮断ガスを供
給する遮断ガス供給手段が接続されてなり、上記複数設
けられた反応生成室には、上記ガス拡散部を介して上記
酸化物超電導体の原料ガス導入管と上記安定化膜の原料
ガス導入管が交互に接続されたこと特徴とする酸化物超
電導導体の製造装置を上記課題の解決手段とした。
【0007】上記の構成の本発明の酸化物超電導導体の
製造装置においては、上記各原料ガス導入管の先端部に
横段面の形状が長方形状のスリットを有するスリットノ
ズルが設けられ、上記スリットノズルのスリットはその
長辺が上記リアクタ内を移動中のテープ状の基材の長手
方向に対して交差する方向に設けられていることが好ま
しい。上記のいずれかの構成の本発明の酸化物超電導導
体の製造装置においては、上記ガス拡散部は、上記反応
生成室内に送り込まれたテープ状の基材の長手方向に沿
って設けられた対向する一対の側壁と、上記テープ状の
基材の長手方向と交差する方向に設けられ、上記一対の
側壁を相互に接続する前面壁及び後面壁を有し、上記前
面壁と後面壁の間隔は上記反応生成室に近づくにつれて
広くなっており、上記一対の側壁の間隔は上記前面壁と
後面壁の間隔よりも狭い一定の大きさになっていること
が好ましい。
【0008】また、本発明は、上記のいずれかの構成の
本発明の酸化物超電導導体の製造装置を用い、上記遮断
ガス供給手段により、上記境界室に両側の反応生成室ど
うしを遮断するための遮断ガスを供給し、上記複数設け
られた反応生成室をそれぞれ独立した雰囲気にし、上記
複数設けられた反応生成室のうち上記酸化物超電導体の
原料ガス導入管と接続された反応生成室内には上記酸化
物超電導体の原料ガス導入管から酸化物超電導体の原料
ガスを上記ガス拡散部を経て供給するとともに上記安定
化膜の原料ガス導入管と接続された反応生成室内には安
定化膜の原料ガス導入管から安定化膜の原料ガスを上記
ガス拡散部を経て供給し、更にテープ状の基材を加熱し
ながらこれの両面の成膜面が上記の各原料ガス導入管か
らの原料ガスの流れに対して平行になるようにリアクタ
内部の基材搬送領域に送り込んで上記複数の反応生成室
内を順次通過させ、上記酸化物超電導体の原料ガス導入
管と接続された反応生成室内では上記テープ状の基材の
両面に酸化物超電導体の原料ガスを化学反応させ、上記
安定化膜の原料ガス導入管と接続された反応生成室内で
は上記テープ状の基材の両面にAg安定化膜の原料ガス
を化学反応させて、上記テープ状の基材の両面に酸化物
超電導薄膜とAg安定化膜を交互に成膜することを特徴
とする酸化物超電導導体の製造方法を上記課題の解決手
段とした。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る酸化物超電導
導体の製造装置およびこれを用いた酸化物超電導導体の
製造方法の実施形態例を図面に基づいて説明する。図1
乃至図8は本発明に係る酸化物超電導導体の製造装置の
実施形態例を示すもので、この例の製造装置には、略同
等の構造を有する3つのCVDユニットA,B,Cが組
み込まれ、各CVDユニットA,B,Cには、図1に示
すようなCVD反応装置30が組み込まれ、各CVD反
応装置30の反応生成室35内においてテープ状の基材
の両面に酸化物超電導薄膜又はAg安定化膜が形成され
るようになっている。この実施形態の酸化物超電導導体
の製造装置は、横長の両端を閉じた筒型の石英製のリア
クタ31を有している。このリアクタ31は、隔壁3
2、33によって図2の左側から順に基材導入部34と
反応生成室35と基材導出部36に区画されているとと
もに、複数の隔壁37(図面では4枚の隔壁)によっ
て、上記反応生成室35が複数に分割(図面では3分
割)されて、それぞれが前述のCVDユニットA,B,
Cにそれぞれ備えられたCVD反応装置30の一部分を
構成するとともに、隣合う反応生成室35,35の間
(隣合う隔壁37,37の間)には、境界室38が区画
されている。従って、このリアクタ31には、反応生成
室35が後述する基材搬送領域Rに送り込まれるテープ
状の基材Tの移動方向に直列に複数(図面では3つの反
応生成室)が設けられたことになる。なお、リアクタ3
1を構成する材料は、石英に限らずステンレス鋼などの
耐食性に優れた金属であっても良い。
【0010】上記隔壁32,33,37の下部中央に
は、図2ないし図4に示すように、長尺のテープ状の基
材Tが通過可能な通過孔39がそれぞれ形成されてい
て、リアクタ31の内部には、その中心部を横切る形で
基材搬送領域Rが形成されている。さらに、基材導入部
34にはテープ状の基材Tを導入するための導入孔が形
成されるとともに、基材導出部36には基材Tを導出す
るための導出孔が形成され、導入孔と導出孔の周縁部に
は、基材Tを通過させている状態で各孔の隙間を閉じて
基材導入部34と基材導出部36を気密状態に保持する
封止機構(図示略)が設けられている。
【0011】各反応生成室35の天井部には、図2に示
すように略角錐台型のガス拡散部40が取り付けられて
いる。このガス拡散部40は、リアクタ31の長手方向
に沿って設けられた(リアクタ内31内に送り込まれた
テープ状の基材Tの長手方向に沿って設けられた)対向
する一対の台形型の側壁41、41と、リアクタ31の
長手方向と直交する方向に設けられ(リアクタ内31内
に送り込まれたテープ状の基材Tの長手方向と直交する
方向に設けられ)、上記一対の側壁41、41を相互に
接続する前面壁42および後面壁43と、天井壁44と
からなるガス拡散部材45を主体として構成されてい
る。各天井壁44には、後述する酸化物超電導体の原料
ガス供給源または安定化膜の原料ガス供給源250と接
続された原料ガス導入管53を具備して構成されてい
る。
【0012】また、原料ガス導入管53の先端部には、
スリットノズル53aが設けられている。一対の側壁4
1,41の間隔は、スリットノズル53aのスリット5
4aの短辺 54bと同じ大きさであり、かつ前面壁4
2と後面壁43の間隔は反応生成室35に近づくにつれ
て広くなっている。また、ガス拡散部材45の底面は、
細長い長方形状の開口部46とされ、この開口部46を
介してガス拡散部材45が反応生成室35に連通されて
いる。スリットノズル53aは、図8に示すように横断
面の形状が長方形状のスリット54aを有しており、ス
リット54aの長辺54cがリアクタ31内を移動中の
テープ状の基材Tの長手方向に対して直交する方向に設
けられている。スリット54aの長辺54cの大きさ
は、原料ガス導入管53の内径と同じ程度の大きさであ
る。
【0013】また、境界室38の天井部には、遮断ガス
供給手段38Bが供給管38Aを介して接続され、遮断
ガス供給手段38Bが、境界室の38の両側の反応生成
室35,35どうしを遮断するための遮断ガスを供給
し、供給管38Aの接続部分が、遮断ガス噴出部38C
を介して接続され、遮断ガスとしてたとえばアルゴンガ
スが選択される。
【0014】一方、各反応生成室35および境界室38
の下方には、図4に示すように基材搬送領域Rの長さ方
向に沿って各反応生成室35および境界室38を貫通す
るように排気室70が設けられている。この排気室70
の上部には、図5に示すように、基材搬送領域Rに通さ
れたテープ状の基材Tの長さ方向に沿って細長い長方形
状のガス排気孔70a、70aが各反応生成室35およ
び境界室38を貫通するようにそれぞれ形成されてお
り、このガス排気孔70a,70aには、隔壁32,3
3,37の基材搬送領域Rの両側下端部が貫通状態とさ
れている。また、排気室70の下部には複数本(図面で
は10本)の排気管70bの一端がそれぞれ接続されて
おり、一方、これら複数本の排気管70bの他端は真空
ポンプ71を備えた圧力調整装置72に接続されてい
る。
【0015】また、図4ないし図5に示すようにこれら
複数本の排気管70bのうちの複数本(図面では4本)
の排気管70bの排気口70c,70eは、基材搬送領
域Rに通されたテープ状の基材Tの長さ方向に沿って設
けられており、これら排気口70c,70eのうち排気
口70cは排気室70における基材搬送領域Rに通され
たテープ状の基材Tの長さ方向の隔壁32の上流および
隔壁33の下流側に位置され、排気口70eは境界室3
8の両側の隔壁37,37に亘って位置するように基材
搬送領域Rに通されたテープ状の基材Tの長さ方向に延
長されている。また、上記複数本の排気管70bのうち
残り(図面では6本)の排気管70bの排気口70f
は、基材搬送領域Rに通されたテープ状の基材Tの幅方
向に沿って設けられている。上記複数本の排気管70b
には、ガスの排気量を調整するためのバルブ(流量調整
機構)70dがそれぞれ設けられている。従って、ガス
排気孔70a,70aが形成された排気室70と、排気
口70c,70e,70fを有する複数本の排気管70
b・・・と、バルブ70dと、真空ポンプ71と、圧力調
整装置72によってガス排気手段80が構成される。こ
のような構成のガス排気手段80は、CVD反応装置3
0の内部の原料ガスや酸素ガスや不活性ガス、および遮
断ガスなどのガスをガス排気孔70a,70aから排気
室70、各排気口70c,70e,70f、複数本の排
気管70bを経て排気できるようになっている。
【0016】リアクタ31の外部には、図1に示すよう
に、基材導入部34の反応生成室35側の部分から基材
導出部36の反応生成室35側の部分までを覆う加熱ヒ
ータ47が設けられている。図1に示す例では、3つの
反応生成室35に亘って連続状態の加熱ヒータ47とし
たが、該加熱ヒータ47を、各CVD反応装置30の反
応生成室35に対して独立の構造とすることも可能であ
る。さらに、リアクタ31の基材導入部34が不活性ガ
ス供給源51Aに、また、基材導出部36が酸素ガス供
給源51Bにそれぞれ接続されている。また、CVDユ
ニットA,Cに備えられている各ガス拡散部40の天井
壁44に接続された各原料ガス導入管53は、図1,図
6に示すように、後述のガスミキサ48を介して、後述
する酸化物超電導体の原料ガス供給手段50aの原料ガ
スの気化器(原料ガスの供給源)250に接続されてい
る。また、CVDユニットA,Cの間に設けられたCV
DユニットBに備えられているガス拡散部40の天井壁
44に接続された各原料ガス導入管53は、図1に示す
ように、後述のガスミキサ48を介して、後述する安定
化膜の原料ガス供給手段50bの原料ガスの気化器(原
料ガスの供給源)250に接続されている。
【0017】酸化物超電導体の原料ガス供給手段50a
は、図6に示すように、原液供給装置120と、液体原
料供給装置230と、原料溶液気化装置(原料ガス供給
源)250から概略構成されている。液体原料供給装置
230は、筒状の原料溶液供給部102と、該供給部1
02の外周を取り囲んで設けられた筒状で先細り状のア
トマイズガス供給部103と、該アトマイズガス供給部
103の先端部を除いた外周を取り囲んで設けられた筒
状のシールドガス供給部104とから概略構成された3
重構造のものである。
【0018】原料溶液供給部102は、図6に示すよう
に、後述する原液供給装置120から送り込まれてくる
酸化物超電導体の液体原料111が内部に供給されるも
のであり、中央部には供給された液体原料111を一時
的に貯留する液だまり105が設けられている。この液
だまり105の内径は、原料溶液供給部102の上部や
下部の毛細管102aの内径よりも大きくなっており、
原液供給装置120から送り込まれた液体原料111が
たまりつつ連続的に先端に送り込まれる。また、液だま
り105の上部には分岐管105aが設けられ、該分岐
管105aには、充填ガス用MFC(流量調整器)10
5cを介して充填ガス供給源105bが接続され、液だ
まり105内に充填ガスを供給する。ここで、液だまり
105内にアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなど
の充填ガスを供給することで、液だまり105内の圧力
はほぼ大気圧に近い状態に保たれるようになっている。
【0019】アトマイズガス供給部103は、図6に示
すように、原料溶液供給部102との隙間に前述の液体
原料111を霧化するためのアトマイズガスが供給され
るものである。ここで用いられるアトマイズガスは、例
えばアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどであ
る。さらに、アトマイズガス供給部103の上部には、
アトマイズガス用MFC103bを介してアトマイズガ
ス供給源103aが接続され、アトマイズガス供給部1
03内にアトマイズガスを供給可能とされている。そし
て、この例の液体原料供給装置230では、アトマイズ
ガス供給部103の先端部と原料溶液供給部102の先
端部とからノズル106が構成されている。
【0020】シールドガス供給部104は、図6に示す
ように、アトマイズガス供給部103との隙間にシール
ドガスを供給するものであり、このシールドガスの供給
により上記アトマイズガス供給部103を冷却するとと
もにノズル106をシールドするためのものである。こ
こで、シールドガスとしては、アルゴンガス、ヘリウム
ガス、窒素ガスなどが適用される。また、シールドガス
供給部104の中央部より下方の部分には、外方に突出
するテーパ部107が設けられており、また、シールド
ガス供給部104の上部には、シールドガス用MFC1
04bを介してシールドガス供給源104aが接続され
て、シールドガス供給部104内にシールドガスを供給
できるように構成されている。
【0021】上記構成の液体原料供給装置230におい
ては、アトマイズガスをアトマイズガス供給部103に
一定流量で送りこむとともに液体原料111を原料溶液
供給部102内に一定流量で送り込むと、液体原料11
1は液だまり105にたまりつつ原料溶液供給部102
の先端に達し、かつ、該先端の外側のアトマイズガス供
給部103の先端からアトマイズガスが流れてくること
により、ノズル106の先端部分において、液体原料1
11は噴出時に上記アトマイズガスにより直ちに霧化さ
れ、一定量のミスト状の液体原料111が、気化器本体
251内に連続的に供給できる。ノズル106の先端部
分である気化器本体251内は、数Torr〜数10T
orr程度に減圧されており、液だまり105には分岐
管105aから充填ガスが供給されているので、この液
だまり105内の圧力はほぼ大気圧に近い状態に保た
れ、液体原料111が液だまり105内や毛細管102
a内で気化するのを防止できる。また、ノズル106の
外側で、かつ上方のシールドガス供給部104の先端か
らシールドガスが流れてくることにより、該シールドガ
スによりノズル106の周囲がシールドされ、気化器本
体251内で液体原料111が気化した原料ガスがノズ
ル106に付着して固体原料となって再析出するのを防
止できる。
【0022】このような液体原料供給装置230の原料
溶液供給部102には、図6に示すように、液体原料用
MFC121aを備えた接続管121を介して原液供給
装置120が接続されている。この接続管121は、内
面がフッ素樹脂でコートされたパイプなどの耐薬品性に
優れたものが使用される。原液供給装置120は、収納
容器122と、加圧源123を具備し、収納容器122
の内部には液体原料111が収納されている。収納容器
122は、ガラス瓶などの耐薬品性に優れたものが使用
される。上記加圧源123は、収納容器122内にHe
ガスなどを供給することにより収納容器122内を加圧
して、収納容器122内の液体原料111を接続管12
1に一定流量で排出可能とする。
【0023】一方、原料溶液供給装置230の下方には
原料溶液気化装置250が配設されている。この原料溶
液気化装置250は、図6に示すように、容器状の気化
器本体251を備ている。この気化器本体251の上部
には取り付け口252が形成されており、この取り付け
口252から原料溶液供給装置230の中央部から先端
部のノズル106にかけて気化器本体251内に収納さ
れて、原料溶液供給装置230の吹き出し口237aか
らミスト状の原料溶液111が気化器本体251内に噴
霧されるようになっている。
【0024】この気化器本体251の外部には、図6に
示すように、気化器本体251の内部を加熱するための
第一の加熱手段としてヒータ253が付設されている。
また、気化器本体251内に配設された原料溶液供給装
置230の吹き出し口237aの前方で、気化器本体2
51の中央には、第二の加熱手段254が配設されてい
る。第二の加熱手段254は、吹き出し口237aから
噴霧されたミスト状の原料溶液111を気化させるため
のものであり、熱容量の大きい多数の塊254aの集合
体からなり、その材質としては、原料溶液111に対し
て不活性であり、しかも酸化や熱に対して安定な金属や
セラミックスなどが用いられ、例えば、ステンレス鋼
球、ハステロイ球、Ag球、Au球、アルミナ球を用い
ることができるが、この中でも低コストの点からステン
レス鋼球を用いるのが好ましい。塊254aの形状とし
ては、特に限定されず、球状以外に、四角ブロック状や
柱状、錐状などであってもよい。塊254aの大きさ
は、球状である場合、径1〜5mm程度とされる。
【0025】この第二の加熱手段254は、熱容量が大
きいものであるので、前述のヒータ253により気化器
本体251内が原料溶液111の気化温度以上の一定温
度に加熱されると、該第二の加熱手段254も原料溶液
111の気化温度以上の一定温度に加熱されるので、原
料溶液供給装置230の吹き出し口237aからミスト
状の原料溶液111を噴霧されると、ミスト状の原料溶
液111が第二の加熱手段253に接触して直ちに気化
し、原料ガスが得られる。このような第二の加熱手段2
54が、気化器本体51内に配設されていないと、気化
器本体251内に供給するミスト状の原料溶液111の
供給速度を速くした場合、原料溶液111を十分に気化
させることができず、気化効率をあまり向上させること
ができないだけでなく、長時間に渡って良好な酸化物超
電導薄膜を成膜することが困難である。
【0026】上記多数の塊254aは、受け皿255に
収容されている。この受け皿255は、原料溶液111
がこれら多数の塊254aに接触して得られた原料ガス
が透過し、効率よくCVD反応装置30に供給できるよ
うにするために、網目状であることが好ましい。この受
け皿255の材質としては、原料溶液111に対して不
活性であり、しかも酸化や熱に対して安定な金属が用い
られる。
【0027】また、気化器本体251の取り付け口25
2には、図6に示すように、気化器本体251内に配設
された原料溶液供給装置230の吹き出し口237aに
原料ガスが到達するのを防止するカバー256が設けら
れている。このカバー256は、外方に広がる先端部を
有した管状のものであり、気化器本体251内に配設さ
れた原料溶液供給装置230の中央部および先端部の周
囲を取り囲んでいる。このカバー256の材質として
は、原料溶液111に対して不活性であり、しかも酸化
や熱に対して安定な金属が用いられる。本実施形態で
は、気化器本体251から原料ガスをCVD反応装置3
0に取り出す取り出し口が小さいため、気化器本体25
1内では図6の矢印で示すような原料ガス等の循環渦が
形成されていると考えられるが、前述のようなカバー2
56が設けられていないと、原料ガスの循環渦が吹き出
し口237aに付着して固体原料となって再析出してし
まう恐れがある。
【0028】このような原料溶液気化装置250は、原
料ガス導入管53を介してCVD反応装置30に接続さ
れている。この原料ガス導入管53の周囲には、図6に
示すように、原料ガスが原料溶液となって析出するのを
防止するためのヒータ257aが設けられている。な
お、原料ガス供給管53の途中部分には、ガスミキサ4
8が設けられており、さらにこのガスミキサ48の上流
部分(ガスミキサ48の気化器本体251側)には、酸
素ガスの流量調整機構54を介して酸素ガス供給源52
が分岐して接続され、原料ガス導入管53に酸素ガスを
供給するとともにこの酸素ガスと酸化物超電導体の原料
ガスを混合できるように構成されている。この際、ガス
ミキサ48および酸素ガス供給源52は、原料ガス導入
管53のできるだけ下流に接続されることが望ましい。
【0029】ガスミキサ48は、図7に示すように、石
英からなる原料ガス導入管53と略同径の管体とされ、
該ガスミキサ48が、ガスの流通する流路の内側にその
全周に亘って原料ガスや酸素ガス等のガスを混合するた
めの突出部48aを複数有し、また、ガスミキサ48の
周囲には、該ガスミキサ48の内部を加熱するための加
熱手段としての加熱ヒータ48bが付設されている。こ
の突出部48aは、図7(a)に示すように、矢印Gで
示すガス流れ方向に対して、上流から下流に向けて湾曲
した状態で管内壁に固定される平板形状とされるか、ま
たは、図7(b)に示すように、矢印Gで示すガス流れ
方向に対して、流線型とされるいわゆるドロップ形状と
することが可能である。なお、ガスミキサ48を構成す
る材料は、石英に限らずステンレス鋼(SUS30
4),インコネル,ハステロイなどの原料ガス等との反
応性の低い材質であっても良い。
【0030】安定化膜の原料ガス供給手段50bは、原
料ガス導入管53の途中部分に酸素ガス供給源52と接
続された酸素ガスの流量調整機構54が接続されておら
ず、かつ、原液供給装置120の収納容器122に満た
される液体原料111が安定化膜の液体原料である以外
は、図6に示した酸化物超電導体の原料ガス供給手段5
0aと同様の構成である。
【0031】さらに、CVD反応装置30の基材導出部
36の側方側には、CVD反応装置30内の基材搬送領
域Rを通過するテープ状の基材Tを巻き取るためのテン
ションドラム73と巻取ドラム74とからなる基材搬送
機構75が設けられている。ここでの巻取ドラム74に
は、両面に酸化物超電導薄膜とAg安定化膜が交互に成
膜されたテープ状の基材Tの側面が隣接するように巻回
されるようになっている。また、基材導入部34の側方
側には、テープ状の基材TをCVD反応装置30に供給
するためのテンションドラム76と送出ドラム77とか
らなる基材搬送機構78が設けられている。ここでの送
り出しドラム77には、テープ状の基材Tの側面が隣接
するように巻回されており、この送り出しドラム77か
らテンションドラム76を経てテープ状の基材Tを基材
搬送領域Rに送り込んだときに、基材Tの両面の成膜面
が各スリットノズル53aからの原料ガスの流れに対し
て平行とすることができるようになっている。なお、こ
こでは巻取ドラム74、送り出しドラム77に、テープ
状の基材Tがその側面が隣接するように巻回される場合
について説明したが、テープ状の基材Tは各反応生成室
35内においてスリットノズル53aからの原料ガスの
流れに対して平行であればよいため、送り出しドラム7
7や巻取ドラム74にテープ状の基材Tをその成膜面が
隣接するように巻回する場合は、送り出しドラム77と
リアクタ間および巻取ドラム74とリアクタ31間に、
それぞれ、複数のコロを設けておき、これら複数のコロ
により基材Tの向きを徐々に変更するようにしてもよ
い。
【0032】また、リアクタ31の基材搬送領域R内に
は原料ガスや酸素ガスなどのガスの流れを測定する流量
計(図示略)が取り付けられ、さらに該流量計および上
記バルブ70dに制御手段82が電気的に接続されてい
る。この制御手段82は、上記流量計の計測結果に基づ
いて各バルブ70dを調整し、リアクタ31内を移動中
のテープ状の基材Tの長さ方向及び基材Tの長さ方向と
交差する方向への酸化物超電導体の原料ガス、酸素ガ
ス、安定化膜の原料ガスなどのガスの流れ状態を制御で
きる。また、この制御手段82は、遮断ガス供給手段3
8Bに接続され、該境界室38に供給される遮断ガスの
流れ状態を制御できるようになっている。さらに、上記
制御手段82は酸素ガス流量調整機構54に電気的に接
続されることにより、上記基材搬送領域R内の流量計の
計測結果に基づいて酸素ガス流量調整機構54を作動調
整し、原料ガス導入管53を介してCVD反応装置30
へ送る酸素ガス量も調整できるようになっている。この
酸化物超電導導体の製造装置においては、CVDユニッ
トA,B,Cごとに独立して原料ガス,酸素ガス等のガ
ス量および流れ状態を制御できることがことが好まし
い。
【0033】次に上記のように構成されたCVD反応装
置30を備えたCVDユニットA,B,Cを有する酸化
物超電導導体の製造装置を用いてテープ状の基材T上に
酸化物超電導薄膜を形成し、酸化物超電導導体を製造す
る場合について説明する。図1乃至図8に示す製造装置
を用いて酸化物超電導体を製造するには、まず、テープ
状の基材Tと酸化物超電導体の原料溶液と安定化膜の原
料溶液を用意する。この基材Tは、熱膨張係数の低い耐
熱性の長尺の金属テープを用いることができる。上記耐
熱性の金属テープの構成材料としては、銀、白金、ステ
ンレス鋼、銅、ハステロイ(C276等)などの金属材
料や合金が好ましい。また、上記金属テープ以外では、
各種ガラステープあるいはマイカテープなどの各種セラ
ミックスなどからなるテープを用いても良い。このよう
な基材Tの厚みとしては、50〜200μm程度のもの
が好適に用いられる。また、基材Tとしては、特に、熱
膨張係数の低い耐熱性の金属テープの上面にセラミック
ス製の中間層を被覆してなるものが好ましい。上記中間
層を構成する材料としては、熱膨張係数が金属よりも酸
化物超電導体の熱膨張係数に近い、YSZ(イットリウ
ム安定化ジルコニア)、SrTiO3、MgO、Al2
3、LaAlO3、LaGaO3、YAlO3、ZrO2
どのセラミックスが好ましく、これらの中でもできる限
り結晶配向性の整ったものを用いることが好ましい。
【0034】次に酸化物超電導体をCVD反応により生
成させるための液体原料(原料溶液)としては、酸化物
超電導体を構成する各元素の金属錯体を溶媒中に分散さ
せたものが好ましい。具体的には、Y1Ba2Cu37-x
なる組成で広く知られるY系の酸化物超電導薄膜を形成
する場合の各元素の金属錯体としては、Ba-ビス-2,2,
6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン-ビス-1,10-フェ
ナントロリン(Ba(thd)2(phen)2)と、Y
(thd)2 と、Cu(thd)2などを使用すること
ができ、他にはY-ビス-2,2,6,6-テト ラメチル-3,5-ヘ
プタンジオナート(Y(DPM)3)と、Ba(DP
M)2と、 Cu(DPM)2などを用いることができ
る。これらの各元素の金属錯体を分散させる溶媒として
は、テトラヒドロフラン(THF)を挙げることができ
る。上記のような液体原料を、CVDユニットAおよび
Cに備えられる各酸化物超電導体の原料ガス供給手段5
0aの収納容器122に液体原料111として満たして
おく。
【0035】なお、酸化物超電導薄膜には、Y系の他
に、La2-xBaxCuO4の組成で代表されるLa系、
Bi2Sr2Can-1Cun2n+2(nは自然数)の組成で
代表されるBi系、Tl2Ba2Can-1Cun2n+2(n
は自然数)の組成で代表されるTl系のものなど多種類
の超電導薄膜が知られているので、目的の組成に応じた
金属錯塩を用いてCVD法を実施すれば良い。ここで例
えば、Y系以外の酸化物超電導薄膜を製造する場合に
は、必要な組成系に応じて、トリフェニルビスマス(I
II)、ビス(ジピバロイメタナト)ストロンチウム
(II)、ビス(ジピバロイメタナト)カルシウム(I
I)、トリス(ジピバロイメタナト)ランタン(II
I)、などの金属錯塩を適宜用いてそれぞれの系の酸化
物超電導薄膜の製造に供することができる。
【0036】一方、Ag安定化膜をCVD反応により生
成させるための液体原料(原料溶液)としては、Ag
(DPM)原料をテトラヒドロフラン等の溶媒に溶解し
たものを挙げることができる。このような液体原料をC
VDユニットBに備えられる安定化膜の原料ガス供給手
段50bの収納容器122に液体原料111として満た
しておく。
【0037】一方、上記のようなテープ状の基材Tを用
意したならば、これを酸化物超電導導体の製造装置内の
基材搬送領域Rに基材搬送機構78により基材導入部3
4から所定の移動速度で送り込むとともに基材搬送機構
68の巻取ドラム74で巻き取る。ここで基材Tを基材
搬送領域Rに送り込む際、基材Tの両面の成膜面が各ス
リットノズル53aからの原料ガスの流れに対して平行
になるように送り込む。そして、更に各反応生成室35
内の基材Tを加熱ヒータ47で所定の温度に加熱すると
ともに、加熱ヒータ48bにより各ガスミキサ48を所
定の温度に加熱する。なお、基材Tを送り込む前に、不
活性ガス供給源51Aから不活性ガスをパージガスとし
て3つのCVD反応装置30内に順次送り込むととも
に、各境界室38内に遮断ガス噴出部38aを介して遮
断ガスを送り込み、同時に各CVD反応装置30の内部
のガスを圧力調整装置72でガス排気孔70a、70a
から排気室70、排気口70c,70e,70f、排気
管70bを経て抜くことで各CVD反応装置30内の空
気等の不用ガスを排除して内部を洗浄しておくことが好
ましい。
【0038】リアクタ31内の基材搬送領域Rに基材T
を送り込んだならば、酸素ガス供給源51BからCVD
ユニットAとCの各CVD反応装置30の内部に酸素ガ
スを送り、さらに、各原料ガス供給手段50a、50
b、50aにおいて、それぞれ、加圧源123ならびに
MFC121aにより収納容器122から液体原料11
1を流量0.1〜1.0ccm程度で原料溶液供給部1
02内に送液し、これと同時にアトマイズガスをアトマ
イズガス供給部103に流量200〜300ccm程度
で送り込むとともにシールドガスをシールドガス供給部
104に流量200〜300ccm程度で送り込む。こ
の際、シールドガスの温度は、室温程度になるように調
節しておく。また、CVDユニットA、Cに備えられる
各原料溶液気化装置250の気化器本体251の内部温
度が上記酸化物超電導体の原料のうちの最も気化温度の
高い原料の気化に適した200〜300℃程度の範囲内
の一定温度になるようにヒータ253により調節するこ
とにより、第二の加熱手段54も最も気化温度の高い原
料の気化に適した200〜300℃程度の範囲内の一定
温度に加熱する。CVDユニットA、B、Cに備えられ
る各収納容器122から液体原料111を原料溶液供給
部102に送ると同時に各CVD反応装置30の内部の
ガスを圧力調整装置72でガス排気孔70a、70aか
ら排気室70、排気口70c、排気管70bを経て排気
する。
【0039】すると、各液体原料供給装置230におい
て、原料溶液111は液だまり105に溜まりつつ原料
溶液供給部102の先端に達し、この後、吹き出し口2
37aから吹き出る際、アトマイズガス供給部103か
ら流れてくるアトマイズガスにより直ちに霧化されるの
で、一定流量のミスト状の原料溶液111が気化器本体
251内に連続的に供給される。そして、各吹き出し口
237aから気化器本体251内に噴霧されたミスト状
の原料溶液111は第二の加熱手段254に接触して直
ちに気化し、原料ガスが得られる。ここで得られる原料
ガスは、各酸化物超電導体の原料ガス供給手段50aに
おいては、酸化物超電導体の原料ガスであり、安定化膜
の原料ガス供給手段50bにおいては、安定化膜の原料
ガスである。さらに各原料ガスは原料ガス供給管53を
介してガス拡散部40に連続的に供給される。この時、
CVDユニットA、B、Cにおいては、各原料ガス供給
管53の内部温度が上記原料のうちの最も気化温度の高
い原料の最適温度になるようにヒータ257aにより調
節しておくとともにガスミキサ48を同様に上記原料の
うちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるように
加熱ヒータ48bにより調節しておく。
【0040】そして、以上の操作によりCVDユニット
A、Cにおいては液滴状の原料をキャリアガス中に含ま
せた酸化物超電導体の原料ガスを生成させることがで
き、一方、CVDユニットBにおいては液滴状の原料を
キャリアガス中に含ませた安定化膜の原料ガスを生成さ
せることができ、CVDユニットA、Cにおいては各気
化器本体251から酸化物超電導体の原料ガスが原料ガ
ス導入管53を経てスリットノズル53aからガス拡散
部40に噴出され、CVDユニットBにおいては気化器
本体251から安定化銀の原料ガスが原料ガス導入管5
3を経てスリットノズル53aからガス拡散部40に噴
出される。また、これと同時にCVDユニットA、Cに
おいては酸素ガス供給手段52から酸素ガスを供給して
酸化物超電導体の原料ガス中に酸素を混合する操作も行
う。この際、上述の酸化物超電導体の原料ガスと酸素ガ
スは、原料ガス導入管53の途中のガスミキサ48内部
において、その突起部48aによって攪拌されて均一に
混合した状態とされるとともに、直ちに原料ガス導入管
53先端部のスリットノズル53aから、ガス拡散部4
0に噴出される。
【0041】次に、各CVD反応装置30の内部におい
ては、原料ガス導入管53の先端のスリットノズル53
aからガス拡散部40に送り込まれた原料ガスは、ガス
拡散部材45内で、基材搬送領域Rに送り込まれたテー
プ状の基材Tの長さ方向と平行な方向に拡散しながら
(ガス拡散部材45の前面壁42と後面壁43に沿って
拡散しながら)反応生成室35側に移動する。また、こ
のとき、基材搬送領域Rに送り込まれたテープ状の基材
Tの長さ方向と直交する方向への原料ガスの拡散は抑制
されている。
【0042】次に、各反応生成室35側に移動した原料
ガスは、反応生成室35の下方に移動する。このときテ
ープ状の基材Tは、上述したように両面の成膜面がスリ
ットノズル53aからの上記原料ガスの流れに対して平
行になるように、リアクタ31の基材搬送領域R内に送
り込まれているので、加熱された基材Tの両面側で上記
原料ガスが反応して反応生成物を成膜面に堆積するの
で、テープ状の基材Tが3つの反応生成室35を順次通
過することにより、図9に示すような基材Tの両面に酸
化物超電導薄膜86とAg安定化膜87が交互に形成さ
れた酸化物超電導導体T1 が得られる。すなわち、CV
DユニットAの反応生成室35内では、基材Tの両面に
酸化物超電導薄膜86が形成され、次に、CVDユニッ
トBの反応生成室35内では、基材Tの両面の酸化物超
電導薄膜86上にそれぞれAg安定化膜87が形成さ
れ、次に、CVDユニットCの反応生成室35内では、
基材Tの両面のAg安定化膜87上にそれぞれ酸化物超
電導薄膜86が形成される。なお、反応に寄与しない残
りの原料ガス等はガス排気孔70a、70aから排気室
70に引き込まれ、排気口70c,70e,70f、排
気管70bを経て排気排気される。
【0043】基材Tの両面に反応生成物を堆積させると
きに、制御手段82により、ガス排気手段80に設けら
れた圧力調整装置72でガス排気孔70a、70aから
排気室70、排気口70c,70e,70f、排気管7
0bを経て排気するとともに各バルブ70dを調整して
各排気管70b内のガス流れを調整することにより、基
材搬送領域Rを移動中のテープ状の基材Tの長さ方向及
び幅方向への原料ガスの流れ状態を制御しながらCVD
反応を行う。同時に、遮断ガス供給手段38Bにより境
界室38に遮断ガスを供給して、ガス排気孔70a、7
0aから排気室70、排気口70e,70f、排気管7
0bを経て排気することにより反応生成室35,35ど
うしの反応ガスの流通を遮断して各反応生成室35内に
おけるガス分圧等のガス状態の独立を維持する。
【0044】また、各CVD反応装置30内で反応が進
行する間に、基材搬送領域Rを移動中のテープ状の基材
Tの長さ方向及び幅方向への原料ガスや酸素ガスなどの
ガスの流れ状態が変化して酸化物超電導薄膜や安定化膜
に悪影響を与える恐れがでることがあるので、リアクタ
31の基材搬送領域R内に設けられた流量計でガスの流
量変化を測定し、この測定結果に基づいて制御手段82
により各バルブ70dや酸素ガス供給手段52から供給
する酸素ガス量を調整し、ガス流れ状態が常に好ましい
流れ状態になるように制御し、これによってテープ状の
基材Tの長さ方向および幅方向に対し厚さの分布や組成
が均一な酸化物超電導薄膜86と安定化膜87を交互に
形成することができる。
【0045】また、各CVD反応装置30内で反応が進
行する間に、各反応生成室35の内部などにおいて堆積
物が増加し、この堆積物が加熱により分解反応を起こし
てガスを放出すると、特に、CVDユニットA、Cの各
反応生成室35内の酸素ガス分圧が目的の分圧と異なる
ようになることがある。このような場合は、CVDユニ
ットA、Cにおいて、排気管70bを介して排出される
排気ガス中の酸素濃度が変わるので、この酸素濃度変化
を排気管70bの途中に設けられた酸素濃度計測装置
(図示略)で検出し、酸素濃度が低下した場合は、不足
分に応じて所定の割合で制御手段82が、CVDユニッ
トA、Cの各CVD反応装置30に送る酸素ガス量を増
加させ、酸素濃度が増加した場合は、増加分に応じて所
定の割合で制御手段82が各CVD反応装置30に送る
酸素ガス量を減少させる。このような制御手段82の作
用により各反応生成室35内の酸素ガス分圧を常に一定
に維持することができ、これにより、常に一定の酸素分
圧でCVD反応を起こすことができるようになる。従っ
て、テープ状の基材Tの両面に均一の酸化物超電導薄膜
86を成膜できるようになる。
【0046】さらに、制御手段82は、CVDユニット
A,B,Cごとにガス分圧を独立に制御して、各反応生
成室35内において所定のガス分圧を維持するように原
料ガス供給手段50a、50b、50aを制御する。こ
の際、制御手段82は、テープ状の基材Tの移動方向の
反応生成室35のガス分圧よりも、テープ状の基材Tの
移動方向下流の反応生成室35のガス分圧が高くなるよ
うに原料ガス供給手段50a、50b、50aを制御す
ることが好ましい。なお、酸化物超電導薄膜86の成膜
後は、必要に応じて酸化物超電導薄膜の結晶構造を整え
るための熱処理を施してもよい。
【0047】最後に、上述のようにして形成した酸化物
超電導導体T1の両面上にさらに銀等からなる保護膜8
8をスパッタ法や蒸着法等により形成すると、図9に示
すような酸化物超電導導体T2 が得られる。ここでのA
gからなる保護膜88は、CVD法でも成膜することが
でき、その場合、図1乃至図8に示した酸化物超電導導
体の製造装置にさらにCVDユニット(CVDユニット
Dとする)を設けた製造装置を用い、リアクタが4つの
反応生成室を有するようにし、上記CVDユニットDの
反応生成室に保護膜形成用の原料ガスを供給するように
すれば酸化物超電導薄膜86、Ag安定化膜87、酸化
物超電導薄膜86の成膜にひき続いて保護膜88を成膜
することができる。ここで得られた酸化物超電導導体T
2の各酸化物超電導薄膜86の厚みは、1〜5μm、A
g安定化膜87の厚みは1〜5μm程度とされる。
【0048】本実施形態の酸化物超電導体の製造装置に
あっては、リアクタ31に反応生成室35がテープ状の
基材Tの移動方向に直列に複数設けられており、さらに
反応生成室35,35の間に境界室38が設けられ、境
界室38に、遮断ガス供給手段38Bにより遮断ガスを
供給する構造とされ、さらに、複数設けられた反応生成
室35には、ガス拡散部40を介して酸化物超電導体の
原料ガス導入管53と安定化膜の原料ガス導入管53が
交互に接続されたことにより、反応生成室35,35ど
うしを遮断して、各反応生成室35の内部の反応ガス濃
度,酸素分圧等の薄膜形成条件を独立に設定することが
でき、テープ状の基材Tの両面にCVD反応により酸化
物超電導薄膜86とAg安定化膜87を交互に連続的に
成膜することができる。
【0049】また、ガス排気手段80において、ガス排
気口70eが境界室38下方に位置して設けられている
ため、遮断ガスを排出することができ、ガス排気口70
e、70fが反応生成室35の下方に位置して設けられ
ているため、反応生成室35,35内の未反応ガス等を
外に排出し、反応後の残余ガスを基材Tに長い時間触れ
させることなく成膜処理できる。また、本実施形態の酸
化物超電導導体の製造装置によれば、図9に示すような
に、テープ状の基材Tの両面に酸化物超電導薄膜86と
Ag安定化膜87と交互に多層形成された酸化物超電導
導体を製造できるので、従来の酸化物超電導導体の製造
装置を用いて製造した酸化物超電導導体のようにテープ
状の基材の片面のみに酸化物超電導薄膜が形成されたも
のと比べて、約4倍の臨界電流を示すことができる酸化
物超電導導体を製造できる。この酸化物超電導導体は、
酸化物超電導薄膜の多層化により、臨界電流を十分大き
くできるので、超電導マグネット等の高臨界電流化が要
求される用途に好適に用いることができる。
【0050】また、実施形態の酸化物超電導導体の製造
方法によれば、実施形態の酸化物超電導導体の製造装置
を用い、複数設けられた反応生成室35のうち酸化物超
電導体の原料ガス供給手段50aと接続された反応生成
室35内には酸化物超電導体の原料ガス供給導入管53
から酸化物超電導体の原料ガスをガス拡散部40を経て
供給するとともに安定化膜の原料ガス供給手段50bと
接続された反応生成室35内には安定化膜の原料ガス導
入管53から安定化膜の原料ガスをガス拡散部40を経
て供給し、更にテープ状の基材Tを加熱しながらこれの
両面の成膜面が上記の各原料ガス導入管53からの原料
ガスの流れに対して平行になるようにリアクタ31内部
の基材搬送領域Rに送り込んで複数の反応生成室35内
を順次通過させ、酸化物超電導体の原料ガス供給手段5
0aと接続された反応生成室内ではテープ状の基材Tの
両面に酸化物超電導体の原料ガスを化学反応させ、安定
化膜の原料ガス供給手段50bと接続された反応生成室
35内ではテープ状の基材Tの両面にAg安定化膜の原
料ガスを化学反応させることにより、テープ状の基材T
の両面に酸化物超電導薄膜86とAg安定化膜87を交
互に成膜することができる。このようにして得られた酸
化物超電導導体は、酸化物超電導薄膜86を多層(4
層)有しており、従来の酸化物超電導導体の製造方法に
より製造された酸化物超電導導体のようにテープ状の基
材の片面のみに酸化物超電導薄膜が形成されたものと比
べて、約4倍の臨界電流を示すことができる。実施形態
の酸化物超電導導体の製造方法により製造された酸化物
超電導導体は、酸化物超電導薄膜の多層化により、臨界
電流を十分大きくできるので、超電導マグネット等の高
臨界電流化が要求される用途に好適に用いることができ
る。
【0051】なお、本実施形態の酸化物超電導導体の製
造装置および製造方法においては、原料溶液気化装置2
50の気化器本体251内に第二の加熱手段254を設
けた場合について説明したが、原料ガスをガス導入管5
3を経てガス拡散部40に供給できれば、第二の加熱手
段254は必ずしも設けられていなくてもよい。また、
液体原料供給装置230も図6に示したタイプのものに
限定されず、液体原料供給装置230は気化器本体25
1に液体原料111を液滴状あるいは霧状に供給できる
ものであれば他の構成のものであってもよい。また、本
実施形態の酸化物超電導導体の製造装置および製造方法
においては、反応生成室35を3つ設けた場合について
説明したが、必ずしもこれに限られず、反応生成室35
を2つ、あるいは4つ以上設けてもよく、反応生成室3
5を2つ設けた場合には、基材の両面に1層の酸化物超
電導薄膜と1層のAg安定化膜を形成でき、反応生成室
35を5つ設けた場合には、基材の両面に3層の酸化物
超電導薄膜と2層のAg安定化膜を形成できる。また、
本実施形態の酸化物超電導導体の製造装置および製造方
法においては、横長型のリアクタを用い、水平位置に反
応生成室を接続する構成の装置を用いる場合について説
明したが、リアクタ内を移動中のテープ状の基材のガス
の流れ状態を制御できれば、リアクタは横型に限らす縦
型であっても良いし、また、原料ガスを流す方向は上下
方向に限らす左右方向や斜めの方向でも良く、基材の搬
送方向も左右方向あるいは上下方向のいずれでも良いの
は勿論である。また、リアクタ自体の形状も筒型のもの
に限らず、ボックス型や容器型、球形連続型などのいず
れの形状でも差し支えないのは勿論である。
【0052】
【実施例】以下、本発明を、実施例および比較例によ
り、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみ
に限定されるものではない。 (実施例)Y1Ba2Cu37-xなる組成で知られるY系
の酸化物超電導薄膜を形成するために、CVD用の原料
溶液としてBa-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプ
タンジオン-ビス-1,10-フェナントロリン(Ba(th
d)2(phen)2)と、Y(thd)2と、Cu(t
hd)2を用いた。これらの各々をY:Ba:Cu=
1.0:2.7:3.0のモル比で混合し、テトラヒド
ロフラン(THF)の溶媒中に3.0重量%になるよう
に添加したものを酸化物超電導体の液体原料(原料溶
液)とした。この酸化物超電導導体の液体原料を図1乃
至図8に示す酸化物超電導導体の製造装置のCVDユニ
ットA、Cにそれぞれ備えられた原液供給装置120の
収納容器122に満たした。一方、Ag安定化膜をCV
D反応により成膜するためにAg(DPM)原料をTH
F溶媒に溶解したしたものを安定化膜の液体原料(原料
溶液)とした。この酸化物超電導導体の液体原料を図1
乃至図8に示す酸化物超電導導体の製造装置のCVDユ
ニットBに備えられた原液供給装置120の収納容器1
22に満たした。テープ状の基材としては、長さ100
mm、幅10mm、厚さ0.2mmのAgテープを用い
た。
【0053】次に、図1〜図7に示ように構造の石英製
のリアクタ31に3つの反応生成室35を有するように
CVDユニットA,B,Cを酸化物超電導体の製造装置
に組み込んだ装置を用い、各遮断ガス供給手段38Bに
より各境界室38に遮断ガスを供給することにより3つ
の反応生成室をそれぞれ独立した雰囲気状態とした。つ
いで、3つの反応生成室のうちCVDユニットA,Cに
備えられた各反応生成室35内には収納容器122に満
たされた上記酸化物超電導体の液体原料を加圧式ポンプ
により液体原料供給装置230の原料溶液供給部102
に0.2ml/分で送り込み、気化器本体521内部へ
霧化供給して酸化物超電導体の原料ガスを得、さらにこ
の酸化物超電導体の原料ガスを酸化物超電導体の原料ガ
ス導入管53からガス拡散部40を経て反応生成室35
に供給した。一方、3つの反応生成室のうちCVDユニ
ットBに備えられた反応生成室35内には収納容器12
2に満たされた上記安定化膜の液体原料を加圧式ポンプ
により液体原料供給装置230の原料溶液供給部102
に0.2ml/分で送り込み、気化器本体521内部へ
霧化供給して安定化膜の原料ガスを得、さらにこの安定
化膜の原料ガスを安定化膜の原料ガス導入管53からガ
ス拡散部40を経て反応生成室35に供給した。
【0054】そして、さらに加熱ヒータ47でAgテー
プを約800℃に加熱しながらこれの両面の成膜面が各
原料ガス導入管53からの原料ガスの流れに対して平行
になるようにリアクタ31内部の基材搬送領域Rに1m
/時間で送り込んで3つの反応生成室35内を順次通過
させ、CVDユニットA、Cに備えられた各反応生成室
35(上記酸化物超電導体の原料ガス導入管53と接続
された各反応生成室35)内ではAgテープの両面に上
記酸化物超電導体の原料ガスを化学反応させ、CVDユ
ニットBに備えられた反応生成室35(安定化膜の原料
ガス導入管53と接続された反応生成室35)内では上
記Agの両面にAg安定化膜の原料ガスを化学反応させ
て、Agテープの両面にY1Ba2Cu37-xなる組成の
酸化物超電導薄膜とAg安定化膜を交互に成膜し、図9
に示すような酸化物超電導導体T 1 を得た。ここで得ら
れた酸化物超電導導体T1 の各酸化物超電導薄膜の厚み
は、1.0μm、各安定化膜の厚みは1.0μmであっ
た。なお、成膜中は、以下の条件によりCVDユニット
AとCの各反応生成室35内の酸素分圧を酸素濃度計測
装置で一定になるように独立に制御するとともにリアク
タ31内のガスをガス排気手段80の排気口70cから
排気し、各バルブ70dを調整して基材搬送領域Rを移
動中のAgテープの長さ方向及び幅方向への原料ガスの
流れ状態を制御した。
【0055】 CVDユニットA、Cの各気化器本体251内の温度;
230℃ CVDユニットBの気化器本体251内の温度;230
℃ リアクタ31内の圧力;665Pa(5Toor) CVDユニットA、Cの各酸素ガス供給源52からの 酸素ガス流量;45〜55ccm CVDユニットAの反応生成室35内の酸素分圧;1.
5Torr CVDユニットBの反応生成室35内のガス分圧;1.
6Torr CVDユニットCの反応生成室35内の酸素分圧;1.
7Torr
【0056】(比較例1)CVDユニットB、Cが設け
られていない以外、すなわち、反応生成室が1つしか設
けられていない以外は実施例で用いたもと同様の酸化物
超電導導体の製造装置を用い、かつ、この酸化物超電導
導体の製造装置のリアクタ31内の基材搬送領域RにA
gテープを送り込む際に、このAgテープの片方の面
(成膜面)が原料ガス導入管53からの原料ガスの流れ
に対して直角になるように送り込んだ以外は実施例と同
様の条件とし、かつ、CVDユニットAの反応生成室3
5内の酸素分圧のみを以下の条件に設定してAgテープ
の片面に膜厚1.0μmのY1Ba2Cu37-xなる組成
の酸化物超電導導体薄膜を形成し、酸化物超電導導体を
得た。 CVDユニットAの酸素分圧;1.5Torr
【0057】上記実施例で得られた酸化物超電導導体
と、比較例で得られた酸化物超電導導体において、酸化
物超電導薄膜の表面(実施例の酸化物超電導導体につい
ては、両面の酸化物超電導薄膜の表面)に厚さ10μm
のAg保護層(Agの電極としての機能も兼ねる)をス
パッタ形成後に、純酸素雰囲気中にて500℃で2時間
熱処理を施して測定資料とし、以下の条件で測定実験を
行った。 外部磁場:0T 温度:77K
【0058】実施例および比較例で得られた酸化物超電
導導体の臨界電流値(Ic)を測定した結果を以下に示
す。 Ic(A) 実施例 7.5 比較例 2.0
【0059】上記の結果からリアクタに3つの反応生成
室を設けた装置を用い、これら3つの反応生成室内にそ
れぞれ原料ガスを供給し、Agテープを上記3つの反応
生成室内を順次通すことにより、Agテープの両面に酸
化物超電導薄膜とAg安定化層を交互に多層形成したも
の(実施例で得られた酸化物超電導導体)は、1つの反
応生成室を備えた装置を用いてAgテープの片面に酸化
物超電導薄膜を1層形成したもの(比較例で得られた酸
化物超電導導体)に比べて3.75倍の臨界電流値Ic
が得られていることがわかる。以上のことから、複数の
反応生成室を直列に設け、基材の両面に酸化物超電導薄
膜とAg安定膜を連続してCVD反応を行うことで、1
つの反応生成室のみのの装置を用いて製造時に比べて、
臨界電流を大幅に向上した酸化物超電導導体を製造でき
ることがわかる。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように本発明の酸化物超電
導体の製造装置にあっては、リアクタに反応生成室がテ
ープ状の基材の移動方向に直列に複数設けられており、
さらにこれら反応生成室の間に境界室が設けられ、上記
境界室に、遮断ガス供給手段により遮断ガスを供給する
構造とされ、さらに、上記複数設けられた反応生成室
は、ガス拡散部を介して酸化物超電導体の原料ガス導入
管と安定化膜の原料ガス導入管が交互に接続されたこと
により、テープ状の基材Tの両面にCVD反応により酸
化物超電導薄膜とAg安定化膜を交互に連続的に成膜す
ることができる。また、上記リアクタ内のガスを排気す
るガス排気手段が設けられたことにより、反応生成室内
の未反応ガス等を外に排出し、反応後の残余ガスを上記
基材に長い時間触れさせることなく成膜処理でき、ま
た、境界室に供給された遮断ガスを排出することができ
る。また、本発明の酸化物超電導導体の製造装置によれ
ば、テープ状の基材の両面に酸化物超電導薄膜とAg安
定化膜とが交互に多層形成された酸化物超電導導体を製
造できるので、従来の酸化物超電導導体の製造装置を用
いて製造した酸化物超電導導体のようにテープ状の基材
の片面のみに酸化物超電導薄膜が形成されたものと比べ
て、約2倍以上の臨界電流を示すことができる酸化物超
電導導体を製造できる。この酸化物超電導導体は、酸化
物超電導薄膜の多層化により、臨界電流を十分大きくで
きるので、超電導マグネット等の高臨界電流化が要求さ
れる用途に好適に用いることができる。
【0061】また、本発明の酸化物超電導導体の製造方
法によれば、本発明の酸化物超電導導体の製造装置を用
い、複数設けられた反応生成室のうち酸化物超電導体の
原料ガス供給手段と接続された反応生成室内には酸化物
超電導体の原料ガス供給導入管から酸化物超電導体の原
料ガスをガス拡散部を経て供給するとともに安定化膜の
原料ガス供給手段と接続された反応生成室内には安定化
膜の原料ガス導入管から安定化膜の原料ガスをガス拡散
部を経て供給し、更にテープ状の基材を加熱しながらこ
れの両面の成膜面が上記の各原料ガス導入管からの原料
ガスの流れに対して平行になるようにリアクタ内部の基
材搬送領域に送り込んで上記複数の反応生成室内を順次
通過させ、酸化物超電導体の原料ガス導入管と接続され
た反応生成室内ではテープ状の基材の両面に酸化物超電
導体の原料ガスを化学反応させ、安定化膜の原料ガス導
入管と接続された反応生成室内ではテープ状の基材の両
面にAg安定化膜の原料ガスを化学反応させることによ
り、テープ状の基材Tの両面に酸化物超電導薄膜とAg
安定化膜を交互に多層成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の酸化物超電導導体の製造
装置の全体構成を示す図である。
【図2】 図1の酸化物超電導導体の製造装置に備えら
れたリアクタの構造例を示す斜視図である。
【図3】 図2に示すリアクタの詳細構造を示す側断面
図である。
【図4】 図2に示すリアクタの詳細構造を示す正断面
図である。
【図5】 図2に示すリアクタの詳細構造を示す平面図
である。
【図6】 図1の酸化物超電導導体の製造装置に備えら
れた酸化物超電導導体の原料ガス供給手段および反応生
成室を示す図である。
【図7】 図1に示す酸化物超電導導体の製造装置に備
えられたガスミキサを示す断面図である。
【図8】 図4に示す原料ガス導入管の先端に設けられ
たスリットノズルのI−I線断面図である。
【図9】 本発明の実施形態の酸化物超電導導体の製造
装置および製造方法により製造された酸化物超電導導体
の例を示す断面図である。
【図10】 従来の酸化物超電導導体の製造方法により
製造された酸化物超電導導体の例を示す断面図である。
【図11】 従来の酸化物超電導導体の製造方法により
製造された酸化物超電導導体のその他の例を示す断面図
である。
【符号の説明】
A,B,C…CVDユニット、T…基材、30…CVD
反応装置、31…リアクタ、32,33,37・・・隔
壁、34・・・基材導入部、35・・・反応生成室、36・・・
基材導出部、38…境界室、38B…遮断ガス供給手
段、39・・・基材通過孔、40・・・ガス拡散部、41・・・
側壁、42・・・前面壁、43・・・後面壁、50a,50b
…原料ガス供給手段、53・・・原料ガス導入管、53a・
・・スリットノズル、54a・・・スリット、54c・・・長
辺、80・・・ガス排気手段、R・・・基材搬送領域、T1
2…酸化物超電導導体。
フロントページの続き (72)発明者 斉藤 隆 東京都江東区木場1丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 長屋 重夫 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番地 の1 中部電力株式会社電力技術研究所内 Fターム(参考) 5G321 AA01 BA01 BA03 CA18 CA21 CA24 CA41 DB40

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 移動中のテープ状の基材の両面に酸化物
    超電導体の原料ガスとAg安定化膜の原料ガスを交互に
    化学反応させて酸化物超電導薄膜とAg安定化膜を交互
    に成膜するCVD反応を行うリアクタと、前記リアクタ
    に酸化物超電導体の原料ガスを供給する酸化物超電導体
    の原料ガス供給手段と、前記リアクタに安定化膜の原料
    ガスを供給する安定化膜の原料ガス供給手段と、前記リ
    アクタ内のガスを排気するガス排気手段とが備えられて
    なり、 前記酸化物超電導体の原料ガス供給手段は、酸化物超電
    導体の原料ガス供給源と、酸化物超電導体の原料ガス導
    入管と、酸素ガスを供給する酸素ガス供給手段とを具備
    し前記安定化膜の原料ガス供給手段は、安定化膜の原料
    ガス供給源と、安定化膜の原料ガス導入管とを具備し、 前記リアクタは、基材導入部と反応生成室と基材導出部
    とにそれぞれ隔壁を介して区画され、前記反応生成室が
    テープ状の基材の移動方向に直列に複数設けれられて、
    これら反応生成室の間に境界室が設けられ、前記各隔壁
    に基材通過孔が形成され、前記リアクタの内部に基材導
    入部と複数の反応生成室とこれら反応生成室間の境界室
    と基材導出部とを通過する基材搬送領域が形成され、前
    記複数設けられた反応生成室にそれぞれガス拡散部が設
    けられ、前記境界室に両側の反応生成室どうしを遮断す
    るための遮断ガスを供給する遮断ガス供給手段が接続さ
    れてなり、 前記複数設けられた反応生成室には、前記ガス拡散部を
    介して前記酸化物超電導体の原料ガス導入管と前記安定
    化膜の原料ガス導入管が交互に接続されていることを特
    徴とする酸化物超電導導体の製造装置。
  2. 【請求項2】 前記各原料ガス導入管の先端部に横段面
    の形状が長方形状のスリットを有するスリットノズルが
    設けられ、前記スリットノズルのスリットはその長辺が
    前記リアクタ内を移動中のテープ状の基材の長手方向に
    対して交差する方向に設けられたことを特徴とする請求
    項1に記載の酸化物超電導導体の製造装置。
  3. 【請求項3】 前記ガス拡散部は、前記反応生成室内に
    送り込まれたテープ状の基材の長手方向に沿って設けら
    れた対向する一対の側壁と、前記テープ状の基材の長手
    方向と交差する方向に設けられ、前記一対の側壁を相互
    に接続する前面壁及び後面壁を有し、前記前面壁と後面
    壁の間隔は前記反応生成室に近づくにつれて広くなって
    おり、前記一対の側壁の間隔は前記前面壁と後面壁の間
    隔よりも狭い一定の大きさになっていることを特徴とす
    る請求項1又は2に記載の酸化物超電導導体の製造装
    置。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化
    物超電導導体の製造装置を用い、前記遮断ガス供給手段
    により、前記境界室に両側の反応生成室どうしを遮断す
    るための遮断ガスを供給し、前記複数設けられた反応生
    成室をそれぞれ独立した雰囲気にし、前記複数設けられ
    た反応生成室のうち前記酸化物超電導体の原料ガス導入
    管と接続された反応生成室内には前記酸化物超電導体の
    原料ガス導入管から酸化物超電導体の原料ガスを前記ガ
    ス拡散部を経て供給するとともに前記安定化膜の原料ガ
    ス導入管と接続された反応生成室内には安定化膜の原料
    ガス導入管から安定化膜の原料ガスを前記ガス拡散部を
    経て供給し、更にテープ状の基材を加熱しながらこれの
    両面の成膜面が前記の各原料ガス導入管からの原料ガス
    の流れに対して平行になるようにリアクタ内部の基材搬
    送領域に送り込んで前記複数の反応生成室内を順次通過
    させ、前記酸化物超電導体の原料ガス導入管と接続され
    た反応生成室内では前記テープ状の基材の両面に酸化物
    超電導体の原料ガスを化学反応させ、前記安定化膜の原
    料ガス導入管と接続された反応生成室内では前記テープ
    状の基材の両面にAg安定化膜の原料ガスを化学反応さ
    せて、前記テープ状の基材の両面に酸化物超電導薄膜と
    Ag安定化膜を交互に成膜することを特徴とする酸化物
    超電導導体の製造方法。
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