JP4236807B2 - 酸化物超電導体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学気相堆積法(CVD法)によって酸化物超電導体などの酸化物材料を基材上に成膜するために用いられるCVD用液体原料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、臨界温度(Tc)が液体窒素温度(77K)より高い酸化物超電導体として、Y−Ba−Cu−O系、Bi−Sr−Ca−Cu−O系、Tl−Ba−Ca−Cu−O系などの酸化物超電導体が発見されている。そしてこれらの酸化物超電導体は、電力ケーブル、マグネット、エネルギー貯蔵、発電機、医療機器、電流リード等の分野に利用する目的で種々の研究が進められている。
【0003】
上記の酸化物超伝導体の製造方法の1つとして、CVD法等の薄膜形成手段によって機材表面に酸化物超電導薄膜を成膜する方法が知られている。この種の薄膜形成手段により形成した酸化物超電導薄膜は、臨界電流密度(Jc)が大きく、優れた超電導特性を発揮することが知られている。
また、CVD法の中でも金属アルコキシドなどの有機金属錯体を原料として行うCVD法は、成膜速度が速いため、酸化物超電導薄膜の量産手法として注目されている。
【0004】
このようなCVD法による酸化物超電導体の製造方法において、一般的に使用される原料化合物としては、酸化物超電導体を構成する元素のβ−ジケトン化合物、シクロペンタジエニル化合物等が用いられ、例えば、Y−Ba−Cu−O系の酸化物超電導体の製造にはY(thd)3、Ba(thd)2またはBa(thd)2・phen2、Cu(thd)2等の有機物錯体原料などが使用されている。*(thd=2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、phen=フェナントロリン)
【0005】
これらの有機物錯体原料は室温では固体であり、200〜300℃に加熱することにより、高い昇華特性を示すが、原料の純度や加熱時間による仕込み原料の表面積変化等により昇華効率が大きく左右されるため、組成制御が困難であるとされている。
そこで、これら固体の有機物錯体原料は、テトラヒドロフラン(THF)、イソプロパノール、トルエン、ジグリム(2,5,8-トリオキソノナン)等の有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒に溶解し、液体原料として用いられていた。
特に、THFを溶媒とした液体原料を用いると、比較的高い臨界電流密度(Jc)を示す酸化物超電導体を作製できることが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のようなTHF溶媒に有機金属錯体を溶解した液体原料においては、数日間の貯蔵後、溶液中に経時的に微細な白色沈殿物が析出することが明らかになった。
この白色沈殿物は、Baを含むことが判明しており、THFに溶解させたBa(thd)2錯体が、THFに不溶な成分へと変成したものであると推測され、THFに含まれる微量の水分による加水分解、あるいは、THFが酸素と反応して生成する過酸化物との反応が原因であると考えられる。
【0007】
ここで、上記の液体原料を気化させてCVD反応装置へ供給するための液体原料供給装置の一例を図6に示す。
図6に示す液体原料供給装置100は、液体原料を気化器150内に供給する液体原料供給器130と、供給された液体原料を気化させて原料ガスにすると共に、この原料ガスを図示しないCVD反応装置内に供給する気化器150とから構成される。
【0008】
図6に示す液体原料供給器130は、本願発明者らにより、特願2000−132800号において提案されているもので、内部に液体原料が供給される毛細管131aと、毛細管131aが着脱自在に挿入される毛細管挿入部131と、冷却ガス供給部132と、キャリアガス供給部133とから概略構成されるものである。
【0009】
液体原料供給器130には、MFC(マスフローコントローラ)136aを介して冷却ガス供給部132に冷却ガスを供給する冷却ガス源136と、MFC139aを介してキャリアガス供給部133にキャリアガスを供給するキャリアガス供給源139が接続されている。
さらに、毛細管131aには接続管141が取り付けられ、接続管141には加圧ポンプ135と液体原料用MFC141aが挿入されるとともに液体原料134が収納された収納容器142が取り付けられている。
収納容器142には、加圧源143が取り付けられており、この加圧源143からHeガス等を収納容器142内に供給して加圧することにより、液体原料134を接続管141を介して毛細管131aに一定の流量で連続供給できるように構成されている。
【0010】
また、気化器150は、箱状の気化室151と、この気化室151の外周に配置されて気化室151内部を加熱する加熱ヒータ152とから概略構成される。
また、気化室151には液体原料導入部151aが気化室151上方に突出して設けられ、この液体原料供給部151aに前記液体原料供給器130が収納、固定されている。
【0011】
上記の液体原料供給装置100を備えた酸化物超電導体の製造装置を用いて長尺の酸化物超電導体を製造するには、液体原料134を液体原料供給器130の毛細管131a内に圧送し、毛細管131aの先端部131cから気化器150内に供給された液滴状の液体原料134を気化器150内で気化させ、キャリアガス供給部133から流れ込むキャリアガスと混合させて原料ガスとし、この原料ガスを原料ガス導出部151cから図示しないCVD反応装置に供給する。
これとともにCVD反応装置内にテープ状の基材を走行させ、さらにこのテープ状の基材を加熱して反応生成物を基材上に堆積させることにより、長尺の酸化物超電導体が得られるようになっている。
【0012】
上記のような液体原料供給装置100において、液体原料134中に溶質が変成して生成された析出物が生じると、THFに有機金属錯体を溶解した溶液中での各元素の組成比が、原料仕込み時とは異なる組成比になってしまうために、基材上に堆積させたCVD反応生成物質の組成が設計とは異なるものとなってしまうため、目的の特性が得られなくなる。
従って、この変成物質が析出した液体原料は、CVD反応に使用することができなくなるので、調製後一定期間の過ぎた液体原料は廃棄するよりなく、また、頻繁に液体原料の調製が必要になるといった問題がある。
【0013】
さらに、このような沈殿物は、前記液体ポンプ135内部に滞留して液体ポンプ135の動作不良の原因となったり、あるいは液体原料供給器130の毛細管131aの導入部131dや先端部132a、あるいは毛細管131aの内部を閉塞して液送が停止してしまうといった問題もある。
このために、たびたび液体ポンプ135を解体して洗浄したり、毛細管131aを取り替えるといった作業が必要であった。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、CVD用液体原料における変成物質の析出を防止し、長時間に渡り一定の組成比を保持することができるCVD用液体原料と、それを用いた酸化物超電導体の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、CVD用液体原料の溶媒として、エチレングリコールジメチルエーテル、またはメチル−t−ブチルエーテル、あるいは、これらの混合物を用いることを前記課題の解決手段とするに至った。
【0016】
すなわち、本発明のCVD用液体原料は、有機金属錯体を溶媒に溶解してなるCVD用液体原料において、前記有機金属錯体が、RE Ba Cu なる組成(ただし、REはY、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの中から選択される1種または2種以上を示す)で示される酸化物超電導体を形成する金属元素の有機錯体であり、前記溶媒が、エチレングリコールジメチルエーテルとメチル−t−ブチルエーテルを、2:3〜3:2の体積比で混合したものであることを特徴とする。
【0017】
また、上記のCVD用液体原料が、前記有機金属錯体を前記溶媒に溶解して液体原料を作製する工程と、該液体原料を気化器によって気化させて原料ガスを生成する工程と、該原料ガスをCVD反応を行う反応生成室に導入して、基材上に酸化物超電導体を形成する工程とを含む酸化物超電導体の製造方法に用いられるものであることを特徴とする請求項1に記載のCVD用液体原料。
【0018】
発明の酸化物超電導体の製造方法は、有機金属錯体を溶媒に溶解させて液体原料を作製する工程と、該液体原料を気化供給装置によって気化させて原料ガスを生成する工程と、該原料ガスをCVD反応装置に導入して基材上に酸化物超電導体を形成する工程とを含む酸化物超電導体の製造方法であって、
前記有機金属錯体を溶解させる溶媒が、エチレングリコールジメチルエーテルとメチル−t−ブチルエーテルを、2:3〜3:2の体積比で混合したものであり、前記有機金属錯体が、REBaCuなる組成(ただし、REはY、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの中から選択される1種または2種以上を示す)で示される酸化物超電導体を形成する金属元素の有機錯体であり、前記基材が、 { 100 }< 001 > 集合組織を有する銀からなるものであることを特徴とする。
【0019】
上記の酸化物超電導体の製造方法においては、前記基材として、Ag{100}<001>集合組織を有するものを用いることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
(CVD用液体原料)
本発明のCVD用液体原料は、目的化合物を構成する金属元素の有機金属錯体を、目的化合物の組成比となるように数種混合したものを溶質とし、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルのいずれか、もしくはこれらの混合物を溶媒として、混合したものである。
上記有機金属錯体には、金属のアルコキシド、アセチルアセトナト、ジピバロイルメタナト、シクロペンタジエニル、またはそれらの誘導体などを用いることができる。
【0024】
上記有機金属錯体を、RE1Ba2Cu3xなる組成(ただし、REはY、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの中から選択される1種または2種以上を示す)で示される酸化物超電導体を形成する金属の有機錯体で構成するならば、酸化物超電導体を製造するためのCVD用液体原料となる。
例えば、Y−Ba−Cu−O系の酸化物超伝導体を製造する場合においては、Y(thd)3、Ba(thd)2またはBa(thd)2・phen2、Cu(thd)2、あるいはY(DPM)3、Ba(DPM)2、Cu(DPM)2などの有機金属錯体を上記の溶媒に溶解して酸化物超電導体製造用の液体原料を調製する。
また、上記以外の酸化物超電導体を製造する場合は、目的とする組成系に応じて、Bi(C653、Sr(DPM)2、Ca(DPM)2、La(DPM)3などの有機金属錯体を用いてそれぞれの酸化物超電導体用の液体原料とすることができる。
【0025】
本発明のCVD用液体原料は、上記のエチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルのいずれか、もしくはこれらの混合物を溶媒として用いているために、先に述べたTHFを溶媒とした場合のような変性物質の析出が起こらない。
【0026】
その理由は、以下のようなものであると推測できる。
元来、Ba(thd)2、Ba(DPM)2などの有機バリウム錯体は、空気中の水分、あるいは炭酸ガスにより容易に劣化するため、その取り扱い、保存方法に関しては、細心の注意が必要である。これは、金属バリウムが六配位であるのに対し、有機バリウム錯体が四配位であることによる空軌道のためであると考えられる。
このような有機バリウム錯体をTHFに溶解して液体原料とする場合、芳香族エーテルの一種であるTHFは、五角形の環状構造を成しているが空気中の酸素や光に影響されて過酸化物を形成しやすい。このような過酸化物は化学的に活性であり、Ba系原料と反応して析出物を生成すると考えられる。
これに対し、先に記載の本発明が採用した溶媒に溶解させると、下記に示す溶媒中の官能基の寄与により、上記の空軌道に対して、水分あるいは炭酸ガスが作用するのを防ぐことができるものと考えられる。
【0027】
【化1】
Figure 0004236807
【0028】
従って、本発明のCVD用液体原料は、調製後長期間に渡って仕込み時の組成比を維持することができ、数日間に渡る連続成膜を行う場合であっても、液体原料をまとめて調製しておくことが可能であるため、効率的である。
また、本発明のCVD用液体原料においては、変性物質の析出がないために、液体原料を調製後長期間保存した場合でも、先に記載の課題のような不具合が発生しないので、液体ポンプの解体清掃や毛細管の交換が不要になり、メンテナンスに掛かるコストや手間を大幅に低減することができる。
【0029】
(酸化物超電導体の製造方法)
次に、本発明のCVD用液体原料を用いた酸化物超電導体の製造方法について説明する。
まず、本発明のCVD用液体原料を用いて酸化物超電導体を製造することができる酸化物超電導体の製造装置について図面を参照して説明する。
図1は、上記の製造装置の一例を模式的に示した構成図であり、この酸化物超電導体の製造装置は、液体原料供給装置10とCVD反応装置60から概略構成されている。
【0030】
液体原料供給装置10は、図1に示すように、液体原料供給器30と原料供給装置40と気化器50とから概略構成されている。
この液体原料供給装置10は、目的とする化合物の元素を含む液体原料を原料供給装置40から液体原料供給器30を介して気化器50に供給し、この気化器50により液体原料を気化して原料ガスを生成するものである。生成された原料ガスはCVD反応装置60に供給されてCVD反応に供される。
【0031】
前記液体原料供給器30は、図1に示すように、内部に液体原料が供給される毛細管31aと、毛細管31aが着脱交換可能に挿入される筒状の冷却ガス供給部32と、冷却ガス供給部32の外周を取り囲んで設けられた外装部33とから概略構成される。
【0032】
前記毛細管31aは、原料供給装置40から圧送されてくる液体原料34が内部に供給されるものである。毛細管31aは、外径が375μm(10-6m)程度であり、内径が数十〜数百μm(10-6m)程度である。
上記構成の毛細管31aは着脱交換可能に冷却ガス供給部32に挿入され、その先端部31cは、前記冷却ガス供給部の先端部32aよりもやや気化器50側に突出されている。
【0033】
上述の数10〜数百μm(10-6m)程度の内径を有する毛細管31a内に、液体原料34を圧送するためには、数10kg/cm2程度の液送圧力が必要であるため、図1に示すように原料供給装置40から接続管41を介して送り込まれてくる液体原料34を毛細管31a内に圧送するための加圧式液体ポンプ35が接続管35aを介して液体供給部31dに接続されている。
【0034】
冷却ガス供給部32は、内部に毛細管31aが挿入されて、毛細管31aとの隙間に冷却ガスが供給されるものである。
冷却ガス供給部32の上部には、図1に示す冷却ガス用MFC36aを介して冷却ガス供給源36が接続され、冷却ガス供給部32へ冷却ガスを供給する構成となっている。
【0035】
液体原料供給器30は、ガラス等からなる毛細管31aを除いて、全てステンレス鋼等の金属部品により構成することができ、該液体原料供給器30を構成するキャリアガス供給部32と該キャリアガス供給部32を支持する外装部33は上端部で接合一体化されている。
【0036】
毛細管31aの先端部31cおよびキャリアガス供給部32の先端部32aは、液体原料供給器30の外装部33の先端部33aよりも、気化器50への挿入方向に対して大きく突出された構造であり、その突出長さは、気化器50の液体原料導入部51aに設けられた伝熱部56の長さに合わせて最適な長さに調整される。
さらに、毛細管31aの先端部31cは冷却ガス供給部32の先端部32aよりも気化器50側へ1〜10mm程度突出されている。
【0037】
上記構成の液体原料供給器30において、液体原料34を液体供給部31dから毛細管31a内に一定流量にて圧送すると、液体原料34は毛細管31aの先端部31cに達して液滴状になり気化器50に連続的に供給され、気化器50内に供給された液滴状の液体原料34は気化器50内で加熱されて気化する。
また、上記液体原料34の圧送と同時に冷却ガスを冷却ガス供給部32に一定流量で流すと、毛細管31aはこの冷却ガスにより冷却されるので、気化器50の加熱ヒータ52による過熱を防いで、毛細管31a内で液体原料34が気化するのを防止することができる。
この冷却ガスは冷却ガス供給部32内で毛細管31aを冷却した後、冷却ガス供給部の先端部32aから気化器50内に放出されて、液体原料34が気化されたガスと混合されて原料ガスを構成する。
【0038】
また、前記毛細管31aには、液体原料用MFC41aを備えた接続管41と、加圧式液体ポンプ35を備えた接続管35aとを介して、原料供給器40が接続されている。
図1に示すように原料供給器40は、収納容器42と、加圧源43を具備し、収納容器42内部には液体原料34が収納される。原料供給器40は、加圧源43により収納容器42内にヘリウムガス等を供給して、収納容器42内を加圧し、収納容器42内の液体原料34を接続管41へ圧送する。
【0039】
液体原料供給装置10において、液体原料供給器30の下方には気化器50が配設されている。
図1に示す気化器50は、箱状の気化室51と、気化器50の外周に配置されて気化室51を加熱する加熱ヒータ52とから概略構成されている。
気化室51には、液体原料導入部51aが液体原料供給器30側に突出して設けられており、この液体原料導入部51aはステンレス鋼等の保熱部材からなる筒状の伝熱部56を備えている。
液体原料供給器30は、その供給ガス供給部を該伝熱部56に収納されて、Oリング53によって気化室51を密閉状態にして気化器50に接続される。
【0040】
気化器50の外周には、気化室51内部を加熱するための加熱ヒータ52が配設されていて、この加熱ヒータにより毛細管31aの先端部31cから供給された液体原料34を所望の温度に加熱して気化させ、さらに冷却ガス供給部32の先端部32aと毛細管31aの先端部31cの隙間から気化室51に流れ込む冷却ガスと混合させて原料ガスを得る。
【0041】
また、加熱ヒータ52は、液体原料導入部51aに設けられた伝熱部56を介して冷却ガス供給部32を加熱し、気化室51内に流れ込む冷却ガスの温度を上昇させて、冷却ガス供給部32に対流する原料ガスからの再析出を防止するとともに、毛細管31aの温度もある程度上昇させるため、毛細管31aとその先端部31cにおける温度の低下を防止し、毛細管31aの先端部31cにおける液体原料の再析出を効果的に防止できるようになっている。
上記伝熱部56は冷却ガス供給部32に概ね密着するように設けられているため、冷却ガス供給部32は加熱されて高温になるが、毛細管31aとの隙間には冷却ガスが導入されているため、毛細管31aは、冷却ガス供給部32よりも低温に保たれ、毛細管31a内部の液体原料34は気化しない。
【0042】
また、図1に示すように、気化室51内部は仕切板54を挟んで領域51dと領域51eの2つの領域に分割され、分割された気化室51の各部は気化室51の底部51bと仕切板54との隙間により連通している。
毛細管31aから供給された液体原料34が気化したガスと冷却ガスとから生成された原料ガスは、領域51dから、仕切板54の下側の隙間を通過して領域51eに移動し、さらに領域51eに対応する気化室51の上端部に設けられた原料ガス導出口51cから気化器51外へ輸送される。
原料ガス導出口51cから導出された原料ガスは、輸送管53を介して気化器50に接続されたCVD反応装置60に供給される。
【0043】
CVD反応装置60は、石英製の反応チャンバ61を有する。この反応チャンバ61は、横長の両端を封止した筒状であり、隔壁(図示せず)によって基材が導入される側から順に基材導入部62と、反応生成室63と、基材導出部64とに区画されている。
基材導入部62にはテープ状の基材65を導入するための導入孔が形成されるとともに、基材導出部64には基材65を導出するための導出孔が設けられており、導入孔と導出孔の周縁部には、基材65を通過させている状態で各孔の隙間を閉じて基材導入部62と基材導出部64を密閉する封止部材(図示せず)が設けられている。
また、反応生成室63の天井部には、反応生成室63に連通するピラミッド型のガス拡散部66が取り付けられている。
【0044】
CVD反応装置60の外部には、基材導入部62の反応生成室63側方の部分から、基材導出部64の反応生成室63側方の部分までを覆う加熱ヒータ47が設けられ、基材導入部62が不活性ガス供給源68に、また、基材導出部64が酸素ガス供給源69にそれぞれ接続されている。
また、ガス拡散部66には原料供給装置10の気化器50と接続された輸送管53が接続されている。
この輸送管53の周囲には原料ガスが液体原料34となって析出するのを防止するための加熱手段(図示せず)が設けられている。
尚、輸送管53の途中には、酸素ガス供給源54が分岐接続され、輸送管53に酸素ガスを供給できる構成となっている。
【0045】
また、上記CVD反応装置60の底部には排気管70が設けられており、真空ポンプ71を備えた圧力調整装置72に接続されていて、CVD反応装置60の内部のガスを排気できるようになっている。
さらに、CVD反応装置60の基材導出部64の側方側には、CVD反応装置60内を通過する基材65を巻き取るためのテンションドラム73と巻き取りドラム74とからなる基材搬送機構75が設けられている。
また、基材導入部62の側方側には、基材65をCVD反応装置60に供給するためのテンションドラム76と送出ドラム77とからなる基材搬送機構78が設けられている。
【0046】
次に、上記構成の酸化物超電導体の製造装置を用いた、本発明の酸化物超電導体の製造方法について説明する。
図1に示す製造装置を用いて酸化物超電導体を製造するには、まずテープ状の基材65と液体原料34を用意する。
この基材65は、長尺のものを用いることができるが、熱膨張係数の低い耐熱性の金属テープ、あるいはその上面にセラミックス製の中間層を被覆してなるものが好ましい。
上記耐熱性の金属テープの構成材料としては、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ(C276等)などの金属材料、合金が好ましい。
特に、{100}<001>集合組織を有する銀からなる金属テープを用いる場合には、該金属テープ上に形成する酸化物超電導体の配向を制御することができるため、より好ましい。
また、上記金属テープ以外では、ガラステープ、マイカテープ或いはセラミックス製のテープを用いてもよい。
【0047】
次に、上記中間層を構成する材料は、熱膨張係数が金属よりも酸化物超電導体に近い、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SrTiO3、MgO、Al23、LaAlO3、LaGaO3、YAlO3、ZrO2等のセラミックスが好ましく、これらの中でも、できる限り結晶配向性の整ったものがより好ましい。
【0048】
次に、先に記載のように、酸化物超電導体の構成金属元素の有機金属錯体を目的の組成比となるように数種混合したものを、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルのいずれか、もしくはこれらの混合物に混合、溶解して液体原料を作製する。
【0049】
上記有機金属錯体は、上記溶媒に可溶なものであれば、目的化合物を構成する金属元素のアルコキシド、アセチルアセトナト、ジピバロイルメタナト、シクロペンタジエニル、またはそれらの誘導体などを用いることができる。
また、液体原料の濃度、混合溶媒の混合比等は目的とする化合物の種類により適宜変更し、最適な条件としておく。
例えば、Y−Ba−Cu−O系酸化物超電導体を製造する場合には、濃度は5〜20重量%が好ましく、6〜10重量%であればより好ましい。
また、上記エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルの混合比は、その体積比にして、好ましくは2:3〜3:2であり、より好ましくは1:1の混合比である。
【0050】
上記のテープ状の基材65を用意したならば、これを反応チャンバ61内に基材搬送機構78により基材導入部62から所定の移動速度で送り込むとともに基材搬送機構75の巻取ドラム74で巻き取り、更に反応生成室63内の基材65を加熱ヒータ47で所定の温度に加熱する。
基材65の移動速度、および加熱ヒータ47の設定温度は、目的とする酸化物超電導体の組成系にもよるが、それぞれ1〜5m/時間、600〜800℃程度であるのが好ましい。
なお、基材65を送り込む前に、不活性ガス供給源68から不活性ガスをパージガスとして反応チャンバ61内に送り込み、同時に圧力調整装置72を作動させて反応チャンバ61の内部を排気することで反応チャンバ61内の水分等の不用ガスを排除して内部を洗浄しておくことが好ましい。
【0051】
基材65を反応チャンバ61内に送り込んだならば、酸素ガス供給源69から反応チャンバ61内に酸素ガスを導入し、および接続管41を経て加圧式液体ポンプ35に送液する。
続いて、加圧式液体ポンプ35に更に、加圧源43により収納容器42から液体原料34を圧送し、MFC41aより液体原料34を0.1〜1.0ml/分程度の速度で毛細管31a内に圧送し、これと同時に冷却ガスを冷却ガス供給部32に流量300〜600ccm(ml/分)程度で送り込む。
同時に圧力調整装置72を作動させ、反応チャンバ61の内部のガスを排気する。この際、冷却ガスの温度は室温程度になるように調節しておく。
また、気化室51の内部温度、液体原料導入部51aの内部温度及び液体原料供給器30の温度が、上記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるようにヒータ52により調節しておく。こうすることにより冷却ガス供給部32がヒータ52により予熱されるとともに気化室51内での原料ガスの再析出が防止される。
【0052】
すると、液体原料34は毛細管31aの先端部31cから気化室51内に液滴状となって供給される、そして、気化器50の内部に供給された液滴状の液体原料34は、加熱ヒータ52により加熱されるとともにキャリアガスと混合されて気化して原料ガスとなり、この原料ガスは輸送管53を介してCVD反応装置60のガス拡散部66に連続的に供給される。
この時、輸送管53の内部温度が上記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるように上記加熱手段により調節しておく。同時に、酸素ガス供給源54から酸素ガスを供給して原料ガス中に酸素ガスを混合する操作も行う。
【0053】
次に、反応チャンバ61の内部においては、輸送管53の出口部分からガス拡散部66に放出された原料ガスが、ガス拡散部66から拡散しながら反応生成室63側に移動し、反応生成室63の内部を通り、次いで基材65の近傍を移動してガス排気管70に引き込まれるように移動する。
従って、加熱された基材65の上面側で原料ガスを反応させて酸化物超電導薄膜を生成させることができる。
以上の成膜操作を所定時間継続して行なうことにより、基材65上に所望の厚さの膜質の安定した酸化物超電導薄膜を備えた酸化物超電導体80を得ることができる。
【0054】
上記本発明の酸化物超電導体の製造方法によれば、液体原料として上記CVD用液体原料を用いているために、THFを溶媒として用いた場合のように液体原料中に変性物質が析出しないので、成膜中の液体原料の組成比を、仕込み時の組成比のまま長時間維持することができる。
そのために、長時間成膜する場合でも、一定の組成の酸化物超電導体を安定して製造することができる。
【0055】
また、液体原料内に不要な固体が析出しないため、液体ポンプ35の解体清掃、毛細管31aの交換が不要になり、メンテナンスなしに成膜を続けて行うことができる。
【0056】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。
(液体原料の調製)
まず、Ba−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン−ビス−1,10−フェナントロリン(Ba(thd)2・phen2)と、Y(thd)2と、Cu(thd)2を、Y:Ba:Cu=1.0:2.7:3.0のモル比で混合したものを、エチレングリコールジメチルエーテルに7.5重量%となるように添加して液体原料Aを作製した。
【0057】
次に、メチル−t−ブチルエーテルに、上記と同等の有機金属錯体をY:Ba:Cu=1.0:2.7:3.0のモル比で混合したものを7.5重量%となるように添加して液体原料Bを作製した。
【0058】
次に、エチレングリコールジメチルエーテルとメチル−t−ブチルエーテルを1:1の体積比で混合したものに、上記と同等の有機金属錯体をY:Ba:Cu=1.0:2.7:3.0のモル比で混合したものを7.5重量%となるように溶解して液体原料Cを作製した。
【0059】
次に、THFに、上記と同等の有機金属錯体をY:Ba:Cu=1.0:2.7:3.0のモル比で混合したものを7.5重量%となるように添加して液体原料Dを作製した。
【0060】
上記の液体原料A〜Dを、別々のガラス製の容器に満たし、容器内に窒素ガスを充填して密閉した状態で30日間、常温にて貯蔵した後、各々の液体原料を目視観察した。
その結果、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、あるいはその混合物を溶媒として用いた液体原料A〜Cには、変性物質の析出は認められなかったが、THFを溶媒とした液体原料Dには、白色の変性物質が析出していた。
【0061】
(酸化物超電導体の作製)
(実施例1)
内径40μm(10-6m)の毛細管が取り付けられた、図1に示す構成の酸化物超電導体の製造装置を用い、幅3mm、長さ100cm、厚さ0.05mmのAgテープ基材(Ag組織は{100}<001>集合組織)を用い、該基材の移動速度を3.0m/時間、反応生成室の温度を700℃に設定し、反応生成室に供給される原料ガスの溶液として上記液体原料Aを用いた。
【0062】
次に、液体原料Aを液体ポンプの圧力35kg/cm2、供給速度0.3ml/分で圧送し、反応生成室の反応圧力を5.0Torr(=5×133Pa)、酸素分圧1.25Torr(=1.25×133Pa)として、ガス供給部から基材テープ上に原料ガスを吹き付け、基材上にY1Ba2Cu3xなる組成の酸化物超電導体を成膜した。
【0063】
(実施例2)
次に、液体原料として上記液体原料Bを用い、上記実施例1と同等の銀基材を用いて、該銀基材上にY1Ba2Cu3xなる組成の酸化物超電導体を成膜した。
基材 Ag{100}<001>
基材移動速度 3.0m/時間
反応室温度 700℃
原料仕込み組成比 1.0:2.7:3.0
液体原料濃度 7.5重量%
反応圧力 5.0Torr(=5×133Pa)
酸素分圧 1.25Torr(=1.25×133Pa)
【0064】
(実施例3)
次に、液体原料として上記液体原料Cを用い、上記実施例1、2と同等の銀基材を用いて、該銀基材上にY1Ba2Cu3xなる組成の酸化物超電導体を成膜した。
基材 Ag{100}<001>
基材移動速度 3.0m/時間
反応室温度 700℃
原料仕込み組成比 1.0:2.7:3.0
液体原料濃度 7.5重量%
反応圧力 5.0Torr(=5×133Pa)
酸素分圧 1.25Torr(=1.25×133Pa)
【0065】
(比較例1)
次に、比較例1として、液体原料として上記液体原料Dを用い、上記実施例1〜3と同等の銀基材を用いて、該銀基材上にY1Ba2Cu3xなる組成の酸化物超電導体を成膜した。
基材 Ag{100}<001>
基材移動速度 3.0m/時間
反応室温度 700℃
原料仕込み組成比 1.0:2.7:3.0
液体原料濃度 7.5重量%
反応圧力 5.0Torr(=5×133Pa)
酸素分圧 1.25Torr(=1.25×133Pa)
【0066】
上記実施例1〜3および比較例1において製造されたY1Ba2Cu3x膜のX線極点分析結果を図2〜図5に示す。
図4に示す実施例3のX線極点分析図から、実施例3において製造されたY1Ba2Cu3x膜はY1Ba2Cu3x(103)極点が、4回対称性を示している。
これに対し、図2、3、5に示すX線極点分析図から、実施例1、2、比較例1において製造されたY1Ba2Cu3x膜は8回対称性を示している。
以上より、実施例3において製造されたY1Ba2Cu3x膜は、配向性の点において特に優れた特性を有することが判明した。
また、実施例1、2のY1Ba2Cu3x膜と比較例1のY1Ba2Cu3x膜は配向性の点で同等である。
【0067】
次に、実施例1〜3、比較例1で製造した酸化物超電導体の臨界電流密度(Jc)を4端子法により測定した結果を以下に示す。
実施例3の酸化物超電導体の臨界電流密度が特に大きく、実施例3の酸化物超電導体は、超電導特性においても優れたものであることが確認された。
【0068】
Figure 0004236807
【0069】
(実施例4〜6)
次に、基材として無配向のAgテープ基材を用いた以外は、上記実施例1〜3と同様の条件で、基材上に酸化物超電導体を成膜した。
(原料)
実施例4 液体原料A
実施例5 液体原料B
実施例6 液体原料C
(以下共通の条件)
基材 Ag(無配向)
基材移動速度 3.0m/時間
反応室温度 700℃
原料仕込み組成比 1.0:2.7:3.0
液体原料濃度 7.5重量%
反応圧力 5.0Torr(=5×133Pa)
酸素分圧 1.25Torr(=1.25×133Pa)
【0070】
(比較例2)
次に、基材として無配向のAgテープ基材を用いた以外は、上記比較例1と同様の条件にて、基材上に酸化物超電導体を成膜した。
原料 液体原料D
基材 Ag(無配向)
基材移動速度 3.0m/時間
反応室温度 700℃
原料仕込組成比 1.0:2.7:3.0
液体原料濃度 7.5重量%
反応圧力 5.0Torr(=5×133Pa)
酸素分圧 1.25Torr(=1.25×133Pa)
【0071】
上記実施例4〜6、および比較例2で成膜した酸化物超電導体の臨界電流密度を4端子法により測定した結果を以下に示す。
この結果から、基材として無配向のAgテープ基材を用いた場合には、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、あるいはこれらの混合物を液体原料の溶媒として用いて作製された酸化物超電導体と、THFを液体原料の溶媒として用いて作製された酸化物超電導体の超電導特性は同等であることが確認できた。
【0072】
Figure 0004236807
【0073】
上記実施例1、2、4、5と、比較例1、2の比較から、液体原料の溶媒として、エチレングリコールジメチルエーテル単体、あるいはメチル−t−ブチルエーテル単体を用いる場合には、作製された酸化物超電導体の超電導特性は、従来のTHFを液体原料の溶媒として作製された酸化物超電導体と同等であり、また、液体原料調整後の貯蔵性においては、THFよりも優れた特性を有するため、THFとの置き換えが可能であることが確認できた。
【0074】
さらに、実施例3の結果から、エチレングリコールジメチルエーテルと、メチル−t−ブチルエーテルの混合溶媒を液体原料の溶媒として用いると、作製された酸化物超電導体が、X線極点分析において、4回対称性を示すという、これまでにない結果が得られている。
通常は、Agの格子定数は、a=4.09Åであり、Y1Ba2Cu3xの格子定数はa=3.92Åであるので、Ag上にY1Ba2Cu3xを成膜した場合には、2軸配向ではなく4軸配向となり、X線極点分析においては8回対称性を示す。
これは、THF、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルの化学物性を考慮すると、原料の気化温度が230℃であるのに対して、エチレングリコールジメチルエーテルのみが、202℃の発火点(THFは302℃、メチル−t−ブチルエーテルは460℃)を有しており、自然発火する可能性がある。このような発火点の違いが上記の結晶配向に影響を与えているためであると考えられる。
【0075】
(実施例7〜11)
前記実施例3の結果を踏まえて、エチレングリコールジエチルエーテルと、メチル−t−ブチルエーテルの混合比を体積比3:7〜7:3の範囲で変化させて液体原料を調製し、この液体原料により酸化物超電導体を作製した。尚、作製条件は上記の溶媒の混合比を変化させた以外は実施例3と同等の条件とした。
溶媒混合比
(実施例7) 3:7
(実施例8) 2:3
(実施例3) 1:1
(実施例9) 3:2
(実施例10)7:3
(以下共通条件)
基材 Ag{100}<001>
基材移動速度 3.0m/時間
反応室温度 700℃
原料仕込組成比 1.0:2.7:3.0
液体原料濃度 7.5重量%
反応圧力 5.0Torr(=5×133Pa)
酸素分圧 1.25Torr(=1.25×133Pa)
【0076】
上記実施例7〜10にて作製された酸化物超電導体の10mm部を切り出して、4端子法により臨界電流密度を測定した結果を以下に示す。尚、比較のために、実施例3の結果も併記する。
下記に示すように、溶媒の混合比が体積比2:3〜3:2の範囲で高い臨界電流密度を示しており、混合比が3:7、7:3の実施例7、10はやや低い臨界電流密度を示している。
特に、混合比が1:1の実施例3において最も高い臨界電流密度を達成しているので、この混合比がもっとも好ましいことが判明した。
【0077】
Figure 0004236807
【0078】
【発明の効果】
次に、本発明の酸化物超電導体の製造方法によれば、有機金属錯体を溶解するための溶媒としてエチレングリコールジメチルエーテルとメチル−t−ブチルエーテルを2:3〜3:2の体積比で混合したものを用い、有機金属錯体としてRE Ba Cu なる組成(ただし、REはY、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの中から選択される1種または2種以上を示す)で示される酸化物超電導体を形成する金属元素の有機錯体としたことにより酸化物超電導体の形成を行うため、液体原料の長時間に渡る連続供給が可能であり、長時間に渡り安定した品質の酸化物超電導体を製造することができる。
【0079】
また、本発明の酸化物超電導導体の製造方法に用いるCVD用液体原料は、経時的に変成物質が析出することが無いために、液体ポンプの解体清掃や、毛細管の交換といったメンテナンス作業が不要になるので、これらに要するコストや手間を大幅に低減することができる。
【0081】
また、本発明では、酸化物超電導体が形成される基材として、{100}<001>集合組織を有する金属銀テープを用い、CVD用液体原料の溶媒としてエチレングリコールジメチルエーテルとメチル−t−ブチルエーテルの混合溶媒を用いるので、高い臨界電流密度を有する酸化物超電導体を製造することができる。さらに、エチレングリコールジメチルエーテルと、メチル−t−ブチルエーテルを2:3〜3:2の体積比で混合した溶媒、特に1:1の体積比で混合した溶媒を液体原料に用いるので、より高い臨界電流密度を有する酸化物超電導体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る酸化物超電導体の製造装置の一例を模式的に示した構成図である。
【図2】 図2は、本発明の実施例1のX線極点分析図である。
【図3】 図3は、本発明の実施例2のX線極点分析図である。
【図4】 図4は、本発明の実施例3のX線極点分析図である。
【図5】 図5は、比較例1のX線極点分析図である。
【図6】 図6は、CVD用液体原料供給装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 CVD用液体原料供給装置
30 液体原料供給器
31 毛細管挿入部
31a 毛細管
31c 毛細管の先端部
32 冷却ガス供給部
34 液体原料
50 気化器
51 気化室
52 加熱ヒータ
60 CVD反応装置
63 反応生成室
65 基材

Claims (1)

  1. 有機金属錯体を溶媒に溶解して液体原料を作製する工程と、該液体原料を気化器によって気化させて原料ガスを生成する工程と、該原料ガスをCVD反応を行う反応生成室に導入して、基材上に酸化物超電導体を形成する工程とを含む酸化物超電導体の製造方法であって、
    前記有機金属錯体を溶解させる溶媒が、エチレングリコールジメチルエーテルとメチル−t−ブチルエーテルを、2:3〜3:2の体積比で混合したものであり、前記有機金属錯体が、REBaCuなる組成(ただし、REはY、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの中から選択される1種または2種以上を示す)で示される酸化物超電導体を形成する金属元素の有機錯体であり、
    前記基材が、 { 100 }< 001 > 集合組織を有する銀からなるものであることを特徴とする酸化物超電導体の製造方法。
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