JP5468857B2 - 超電導線材の製造方法及びcvd装置 - Google Patents

超電導線材の製造方法及びcvd装置 Download PDF

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Description

本発明は、長尺のテープ状基材を連続的に移動させながらこのテープ状基材表面にイットリウム系超電導層を成膜する超電導線材の製造方法及びCVD装置に関する。
従来、液体窒素温度(77K)以上で超電導を示す高温超電導体の一種として、RE系超電導体(RE:希土類元素)が知られている。特に、化学式YBa2Cu37-yで表されるイットリウム系超電導体(以下、Y系超電導体又はYBCO)が代表的である。このようなY系超電導線材の製造工程において、超伝導層の成膜には化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)が利用されている(例えば、特許文献1)。
このCVD法は、反応室の構造や成膜時の基板温度、原料ガスの濃度、温度、供給量など様々なパラメータに非常に敏感である。そのため、長尺のテープ状基材表面への成膜においては、成膜条件の最適化が困難となっている。特に、テープ状基材を所定速度(1〜10m/h)で移動させながら超電導層を成膜させる場合には、基材表面温度が成膜温度で安定となるように最適化する必要がある。ここで、成膜温度とは超電導体の化合物が生成される温度であり、例えばYBCOの場合700〜800℃である。
図7は、従来のCVD装置の反応室の構造及びテープ状基材が反応室内を通過するときの基材表面温度のプロファイルの一例を示す図である。図7には、テープ状基材の表面温度が800℃となるようにヒータ出力を制御する場合について示している。
図7に示すように、反応室は、気化器(図示略)から供給された原料ガスを噴出する原料ガス噴出部11、噴出された原料ガスが拡散するのを抑えるとともに反応室内を基材導入領域A1、成膜領域A2、基材導出領域A3に区画する遮蔽板12、反応室内を移動するテープ状基材50を加熱するサセプタ13を備えている。
このCVD装置では、サセプタ13がヒータ(図示略)により加熱され、サセプタ13からの伝熱および輻射熱によりテープ状基材50が成膜温度に加熱されるようになっている。すなわち、テープ状基材50を基材導入領域A1において予め成膜温度まで加熱しておき、成膜領域A2においてテープ状基材50の表面に原料ガスを反応させて超電導層を成膜する。超電導層が成膜されたテープ状基材50は基材導出領域A3を通過して反応室外に導出される。
なお、図7に示すような長尺のテープ状基材に成膜するためのCVD装置10では、テープ状基材50を所定回数だけ往復させて、超電導薄膜を積層形成することで所定膜厚の超電導層を成膜する。そのため、基材導入領域A1と基材導出領域A3が成膜領域A2を挟んで対称に形成されている。図7では、テープ状基材50が左側から右側に移動しているので、領域A1が基材導入側、領域A3が基材導出側となっているが、テープ状基材50が右側から左側に移動するときは領域A3が基材導入側、領域A1が基材導出側となる。
特許第3808250号公報
図7に示す従来のCVD装置10では、ヒータ出力を制御するためのヒータ設定温度を所望の温度(例えば成膜温度)で一定としても、テープ状基材50が移動しているために基材表面温度は周囲の雰囲気温度に影響を受け非定常状態となってしまう。例えば、図7に示すように、成膜領域A2における基材表面温度がサセプタ表面温度(ここでは800℃)より低温となる現象が生じる。これは、基材導入領域A1においてテープ状基材50が十分に予熱されていないためと推測される。
テープ状基材50を十分に予熱するためには、基材導入領域A1を長くしたり、テープ状基材50の移動速度を遅くしたりする手法が考えられるが、装置の大型化又は生産性の低下に繋がるため望ましくない。
本発明は、長尺のテープ状基材に対して安定した組成のY系超電導層を形成できるとともに、装置の小型化と生産性の向上を図ることができる超電導線材の製造方法及びCVD装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたもので、基材導入領域においてテープ状基材を移動させながら加熱する第1工程と、前記基材導入領域の後段に設けられた成膜領域において前記テープ状基材を移動させながら成膜温度に加熱するとともに、このテープ状基材表面に原料ガスを反応させることによりY系超電導層を成膜する第2工程と、を有する超電導線材の製造方法において、
前記第1工程では、前記テープ状基材の導入出領域での表面温度が前記成膜温度よりも高く、かつ30℃を超えて高くならないように温度制御を行い、
前記第2工程では、成膜されるY系超電導層内に含まれるバリウムとイットリウムの原子比をXBa/X、銅とイットリウムの原子比をXCu/X、銅とバリウムの原子比をXCu/XBaとしたときに、XBa/X>1.0、XCu/X<3.0、XCu/XBa>1.2となるように原料ガスを導入することを特徴とする。
ここで、「原子比」とは2種の元素の原子数の比を意味し、Xに下付きで元素記号を付加したものの比で表している。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超電導線材の製造方法において、前記テープ状基材を往復移動させることにより前記Y系超電導層を積層形成する場合、前記成膜領域の後段に設けられた基材導出領域での表面温度が前記成膜温度よりも高く、かつ30℃を超えて高くならないように温度制御を行うことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、原料溶液を供給する原料溶液供給部と、前記原料溶液供給部から供給された原料溶液を気化させて原料ガスを生成する気化器と、前記気化器で生成された原料ガスをテープ状基材表面に反応させて超電導層を成膜する反応室と、前記テープ状基材を連続的に移動させる基材搬送部と、を備えたCVD装置において、
前記反応室は、
原料ガスを噴射する原料ガス噴出手段と、
前記原料ガス噴出手段から噴出された原料ガスが拡散するのを抑制するとともに、反応室内を基材導入領域と成膜領域とに区画する遮蔽手段と、
前記基材導入領域及び前記成膜領域を通過するテープ状基材を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段からの放射熱が拡散するのを抑制し、前記基材導入領域を通過するときのテープ状基材の表面温度が前記成膜領域を通過するときのテープ状基材の表面温度よりも高く、かつ30℃を越えて高くならないように前記基材導入領域の温度を制御可能な予熱手段と、を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のCVD装置において、前記加熱手段は、メインヒータと、前記基材導入領域から前記成膜領域に亘って配置され、前記メインヒータにより加熱されるサセプタとを備えて構成され、
前記予熱手段は、前記基材導入領域において前記サセプタに対向配置された保温板で構成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のCVD装置において、前記予熱手段は、前記基材導入領域を前記成膜領域とは独立して加熱する補助ヒータを備えることを特徴とする。
以下、本発明を完成するに至った経緯について説明する。
まず、本発明者等は、図7に示す基材導入領域A1においてテープ状基材50を十分に予熱すべく、基材導入領域A1の雰囲気温度を成膜領域の雰囲気温度よりも高くする手法を案出した。具体的には、図8に示すように、基材導入領域A1にサセプタ13に対向する保温板14を設けた構成とした。このような構成とすることで、基材導入領域A1ではサセプタ13と保温板14で挟まれた空間に熱が閉じ込められるために成膜領域A2よりも雰囲気温度が高くなる。
図8に示すように、上述した手法により、成膜領域A2において基材表面温度を所望の温度で安定させることができた。しかしながら、この手法により超電導層を成膜した超電導線材では、静止状態で超電導層を成膜した超電導線材に比較して、臨界電流特性が低下していた。
そこで、成膜された超電導層を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により観察し、臨界電流特性が低下する原因を調査した。TEMによる観察結果を図9に模式的に示す。図9には、Ni−W基板51にCeO2/YSZ/CeO2からなる中間層52を成膜したものをテープ状基材50とし、この表面(CeO2表面)にYBCOからなる超電導層53を成膜した場合について示している。なお、YSZはイットリア安定化ジルコニアのことである。
図9に示すように、BaCeO、CuO、YCuOなどの不純物や、回転しているYBCO結晶が観察され、超電導層53内に不要な欠陥が生じていることが判明した。そして、中間層52と超電導層53の界面に形成されたBaCeOの上に欠陥が生じていることから、テープ状基材50にBaCeOが形成されなければ安定した組成の超電導層53を成膜できるという知見を得て、超電導層の成膜方法を改善すべくさらに検討を重ねた。
ところで、従来利用していた超電導層の成膜方法においては、テープ状基材を往復させるために、成膜領域で形成された超電導層は、成膜直後又は次層を成膜する際に、基材導出領域又は基材導入領域において成膜温度よりも高温に晒される(基材表面温度が高温になる)こととなる。例えば、図8に示す例では、基材導入領域A1又は基材導出領域A3におけるテープ状基材50の表面温度と成膜領域A2における表面温度の差は50℃となっていた。
発明者等は、このことに着目してBaCeOが生成される条件を調べたところ、基材導入領域又は基材導出領域におけるテープ状基材の表面温度と成膜領域における表面温度の差が大きいときにBaCeOが生成されることを突き止めた。さらに、反応室内に導入する原料ガスの成分を調整し、Y系超電導層中のバリウム、イットリウム、銅の原子比を所定の範囲内にすることで、BaCeOの生成を抑制できることを突き止めた。
そして、基材導入領域(又は基材導出領域)における温度制御に加えて、原料ガス成分の調整を最適化することで、安定した組成(すなわち不要な欠陥を含まない組成)の超電導層を成膜でき、さらには超電導線材において高い臨界電流特性を実現できることを確認し、本発明を完成した。
本発明によれば、長尺のテープ状基材に対して安定した組成のY系超電導層を形成できるので、高い臨界電流特性を有する超電導線材を製造することができる。また、基材導入領域において成膜温度より高い温度で基材を加熱することにより基材表面温度を安定させるので、CVD装置の小型化と生産性の向上を図ることができる。
実施形態に係るCVD装置の概略構成を示す図である。 反応室の具体的な構造を示す図である。 反応室内を通過するときの基材表面温度のプロファイルの一例を示す図である。 Y系超電導層の理想的な成分組成を説明するための図である。 実施例及び比較例に係る超電導線材について、4端子法により臨界電流値を測定した結果を示す図である。 テープ状基材の移動速度を変更したときの反応室内における基材表面温度の変化を示す図である。 従来のCVD装置の反応室の構造及びテープ状基材が反応室内を通過するときの基材表面温度のプロファイルの一例を示す図である。 改良したCVD装置の反応室の構造及びテープ状基材が反応室内を通過するときの基材表面温度のプロファイルの一例を示す図である。 TEMによる超電導層の観察結果を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本実施形態では、テープ状基材としてNi−W基板にCeO2/YSZ/CeO2からなる中間層を成膜したものを用いる。
図1は、実施形態に係るCVD装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、CVD装置1は、反応室10、気化器20、原料溶液供給部30、基材搬送部40を備えて構成されている。
すなわち、原料溶液供給部30は、原料溶液及び溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)を適切な割合で混合して気化器20に供給する。原料溶液としては、例えばTHFの溶媒に、有機金属のβ−ジケトン錯体(例えばジピバロイルメタン(DPM:dipivaloylmethane))を溶解したものが用いられる。Y系超電導層を成膜する場合、THFにY(DPM)3を溶解させたY(DPM)3/THF、THFにBa(DPM)2を溶解させた原料溶液Ba(DPM)2/THF、THFにCu(DPM)2を溶解させたCu(DPM)2/THFが原料溶液として用いられる。
気化器20は、供給された原料溶液を噴霧して気化させ、原料ガスを生成する。生成された原料ガスは、キャリアガス(Ar)により反応室10に導入される。反応室10は、導入された原料ガスをテープ状基材50の表面に反応させ、超電導層を成膜する。基材搬送部40は、テープ状基材50を往復搬送可能に構成されており、反応室10内においてテープ状基材50を所定速度で搬送する。
本実施形態では、反応室10を図2に示す構成としている。すなわち、反応室10は、気化器20から供給された原料ガスを噴出する原料ガス噴出部11、原料ガス噴出部11から噴出された原料ガスが拡散するのを抑制するとともに反応室10内を基材導入領域A1、成膜領域A2、基材導出領域A3に区画する遮蔽板12、反応室10内を通過するテープ状基材50を加熱するサセプタ13、サセプタ13から放射された輻射熱を基材導入領域A1又は基材導出領域A3に閉じ込める保温板14を備えている。なお、図2では保温板14が遮蔽板12の下端部に接合された形態を示しているが、保温板14と遮蔽板12は接触している必要はなく、基材導入領域A1及び基材導出領域A3においてサセプタ13に対向配置されていればよい。
図2では、テープ状基材50が左側から右側に搬送されているので、領域A1が基材導入側、領域A3が基材導出側となっている。基材搬送部40による搬送方向が反転すると、領域A3が基材導入側、領域A1が基材導出側となる。
反応室10では、サセプタ13がメインヒータ(図示略)により加熱され、サセプタ13によりテープ状基材50を加熱する構造となっている。このとき、サセプタ中央近傍に設けられた熱電対により測定された温度がヒータ設定温度となるように、ヒータの出力は制御される。超電導層を成膜する場合は、成膜領域A2において、テープ状基材50の表面がY系超電導体の成膜温度となるようにヒータ設定温度を決定することとなる。つまり、ヒータ設定温度は、基材導入領域A1におけるテープ状基材50の加熱状態や、移動速度などを考慮して決定する必要がある。
一方、反応室10において、基材導入領域A1及び基材導出領域A3には、サセプタ13から放射された輻射熱がこもるので、成膜領域A2よりも雰囲気温度が高くなる。すなわち、テープ状基材50は、基材導入領域A1及び基材導出領域A3において、成膜領域A2よりも高温で加熱されることとなる。
本実施形態では、テープ状基材50の表面温度が基材導入領域A1及び基材導出領域A3において成膜温度よりも高く、かつ30℃を越えて高くならないように、また、成膜領域A2において成膜温度で安定するように、保温板14の大きさ、形状、材質、又はサセプタ13との間隔を設計している。
以下に、図1,2に示すCVD装置1を用いてY系超電導層を成膜する方法について説明する。
まず、基材導入領域A1においてテープ状基材50を移動させながら加熱する(第1工程)。そして、成膜領域A2においてテープ状基材50を移動させながら成膜温度に加熱するとともに、このテープ状基材50の表面に原料ガスを反応させることによりY系超電導層を成膜する(第2工程)。
ここで、第1工程では、テープ状基材50の表面温度が成膜温度よりも30℃を超えて高くならないように温度制御を行う。テープ状基材50の表面温度が成膜温度よりも30℃以上高くなると、不要な不純物が生成されやすくなり、成膜した超電導層の組成が不安定となるためである。
つまり、本実施形態では、移動するテープ状基材50の表面温度が、図3の温度プロファイルを示すように、ヒータ設定温度や、保温板14の大きさ等が決定されている。図3に示す温度プロファイルに従うと、テープ状基材50の表面温度は基材導入領域A1に導入された後、成膜温度730℃より30℃高くなるまで徐々に加熱される。その後、成膜温度まで下降し、成膜領域A2では成膜温度が保持される。そして、基材導出領域A3では、基材導入領域A1と逆の挙動を示す。
また、第2工程では、成膜されるY系超電導層内に含まれるバリウムとイットリウムの原子比(原子の数の比)XBa/X、銅とイットリウムの原子比XCu/X、銅とバリウムの原子比XCu/XBaが、XBa/X>1.0、XCu/X<3.0、XCu/XBa>1.2となるように、すなわち、図4の斜線領域となるように原料ガスを導入するのが望ましい。これは、XBa/X>1.0でないとY211(YBaCuO)が生成されやすく、XCu/X<3.0でないとCuOが生成されやすく、XCu/XBa>1.2でないとBaCeOが生成されやすくなり、これらの不純物の生成が超電導の臨界電流値を低下させる原因となるからである。
さらに、XBa/X>1.2、XCu/X<2.8、XCu/XBa>1.5とすると、これらの不純物の生成をより抑制できるとともに、YBCO結晶の回転等の欠陥を抑制できるので、さらに望ましい。
[実施例]
実施例では、厚さ0.1mmのNi−W基板に厚さ数百nmのCeO2/YSZ/CeO2層を形成した幅1cmのテープ状基材50を用い、成膜領域A2における基材表面温度(すなわち成膜温度)がおよそ710℃、730℃、740℃、750℃となるように、ヒータ設定温度を900℃、920℃、930℃、940℃とした。また、基材導入領域A1における基材表面温度は、成膜領域A2における目標値(成膜温度)よりも30℃高くなるようにした。具体的には、テープ状基材50の移動速度を1m/h、保温板14の長さを25mm、保温板14とサセプタ13との間隔を5mmとした。なお、反応室10内の圧力は10torrとした。
上記した成膜条件のもとで、テープ状基材50を所定回数(例えば9回)往復させることにより、テープ状基材50の表面に膜厚0.8μmのY系超電導層を成膜した。そして、成膜したY系超電導層の上にAg安定化層を形成した後、酸素中において熱処理を施して実施例に係る超電導線材を作成した。
[比較例]
比較例では、実施例と同様のテープ状基材50を用い、成膜領域A2における基材表面温度(すなわち成膜温度)がおよそ700℃、710℃、730℃となるように、ヒータ設定温度を880℃、900℃、920℃とした。また、基材導入領域A1における基材表面温度は、成膜領域A2における目標値(成膜温度)よりも50℃高くなるようにした。具体的には、テープ状基材50の移動速度を1m/h、保温板14の長さを90mm、保温板14とサセプタ13との間隔を5mmとした。なお、反応室10内の圧力は10torrとした。
上記した成膜条件のもとで、テープ状基材50を所定回数(例えば9回)往復させることにより、テープ状基材50の表面に膜厚0.8μmのY系超電導層を成膜した。そして、成膜したY系超電導層の上にAg安定化層を形成した後、酸素中において熱処理を施して比較例に係る超電導線材を作成した。
実施例及び比較例に係る超電導線材について、77K,0T(テスラ)の環境下で、4端子法により臨界電流値を測定した。測定結果を図5に示す。図5に示すように、実施例に係る超電導線材については、高い臨界電流特性が得られた。特に、ヒータ設定温度を920℃(成膜温度730℃)とした場合には臨界電流値が85Aとなり、静止状態で超電導層を成膜した超電導線材と同等の臨界電流特性を実現できた。
また、実施例に係る超電導線材の超電導層の成膜状態をTEMにより観察したところ、BaCeOなどの不純物は観察されず、安定した組成となっていることが確認できた。
このように、基材導入領域A1において、テープ状基材50の表面温度が成膜温度よりも30℃を超えて高くならないように予熱温度を制御することで、テープ状基材50の表面にBaCeOなどの不純物が生成されるのを防止できる。したがって、長尺のテープ状基材に対して安定した組成のY系超電導層を形成できるので、高い臨界電流特性を有する超電導線材を製造することができる。
また、基材導入領域において成膜温度より高い温度で基材を加熱することによりテープ状基材50を十分に予熱するため、予熱長を長くしたり、テープ状線材50の移動速度を遅くしたりする必要はなく、CVD装置の小型化及び生産性の向上を図ることができる。
また、成膜されるY系超電導層内に含まれるバリウムとイットリウムの原子比XBa/X、銅とイットリウムの原子比XCu/X、銅とバリウムの原子比XCu/XBaが、XBa/X>1.0、XCu/X<3.0、XCu/XBa>1.2となるように原料ガスを導入することで、Y211、CuO又はBaCeOの生成を効果的に抑制できるので、不要な化合物が超電導層内に生成されるのを効果的に防止できる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、テープ状基材の移動速度を変更する場合には、それに応じてヒータ設定温度や保温板の大きさ等を変更すればよい。図6に示すように、一般に、ヒータ設定温度が同じであっても、テープ状基材の移動速度が速くなると、基材導入領域における基材表面温度は低くなり、これに伴い成膜領域における基材表面温度も低くなるためである。
また例えば、基材導入領域における温度制御を容易化するために、基材導入領域を成膜領域とは独立して加熱する補助ヒータを設けるようにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 CVD装置
10 反応室
11 原料ガス噴出部
12 遮蔽板
13 サセプタ(加熱手段)
14 保温板(予熱手段)
20 気化器
30 原料溶液供給部
40 基材搬送部
50 テープ状基材

Claims (5)

  1. 基材導入領域においてテープ状基材を移動させながら加熱する第1工程と、前記基材導入領域の後段に設けられた成膜領域において前記テープ状基材を移動させながら成膜温度に加熱するとともに、このテープ状基材表面に原料ガスを反応させることによりY系超電導層を成膜する第2工程と、を有する超電導線材の製造方法において、
    前記第1工程では、前記テープ状基材の表面温度が前記成膜温度よりも高く、かつ30℃を超えて高くならないように温度制御を行い、
    前記第2工程では、成膜されるY系超電導層内に含まれるバリウムとイットリウムの原子比をXBa/X、銅とイットリウムの原子比をXCu/X、銅とバリウムの原子比をXCu/XBaとしたときに、XBa/X>1.0、XCu/X<3.0、XCu/XBa>1.2となるように原料ガスを導入することを特徴とする超電導線材の製造方法。
  2. 前記テープ状基材を往復移動させることにより前記Y系超電導層を積層形成する場合、前記成膜領域の後段に設けられた基材導出領域での表面温度が前記成膜温度よりも高く、かつ30℃を超えて高くならないように温度制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の製造方法。
  3. 原料溶液を供給する原料溶液供給部と、前記原料溶液供給部から供給された原料溶液を気化させて原料ガスを生成する気化器と、前記気化器で生成された原料ガスをテープ状基材表面に反応させて超電導層を成膜する反応室と、前記テープ状基材を連続的に移動させる基材搬送部と、を備えたCVD装置において、
    前記反応室は、
    原料ガスを噴射する原料ガス噴出手段と、
    前記原料ガス噴出手段から噴出された原料ガスが拡散するのを抑制するとともに、反応室内を基材導入領域と成膜領域とに区画する遮蔽手段と、
    前記基材導入領域及び前記成膜領域を通過するテープ状基材を加熱する加熱手段と、
    前記加熱手段からの放射熱が拡散するのを抑制し、前記基材導入領域を通過するときのテープ状基材の表面温度が前記成膜領域を通過するときのテープ状基材の表面温度よりも高く、かつ30℃を越えて高くならないように前記基材導入領域の温度を制御可能な予熱手段と、を有することを特徴とするCVD装置。
  4. 前記加熱手段は、メインヒータと、前記基材導入領域から前記成膜領域に亘って配置され、前記メインヒータにより加熱されるサセプタとを備えて構成され、
    前記予熱手段は、前記基材導入領域において前記サセプタに対向配置された保温板で構成されていることを特徴とする請求項3に記載のCVD装置。
  5. 前記予熱手段は、前記基材導入領域を前記成膜領域とは独立して加熱する補助ヒータを備えることを特徴とする請求項4に記載のCVD装置。
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