JP2011068959A - 超電導線材の製造方法及びcvd装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材導入領域においてテープ状基材を移動させながら加熱する第1工程と、成膜領域においてテープ状基材を移動させながら成膜温度に加熱するとともに、このテープ状基材表面にY系超電導層を成膜する第2工程と、を有する超電導線材の製造方法において、第1工程では、テープ状基材の表面温度が成膜温度よりも30℃を超えて高くならないように温度制御を行う。第2工程では、成膜されるY系超電導層内に含まれるBaとYの原子比をXBa/XY、CuとYの原子比をXCu/XY、CuとBaの原子比をXCu/XBaとしたときに、XBa/XY>1.0、XCu/XY<3.0、XCu/XBa>1.2となるように原料ガスを導入する。
【選択図】図3
Description
このCVD法は、反応室の構造や成膜時の基板温度、原料ガスの濃度、温度、供給量など様々なパラメータに非常に敏感である。そのため、長尺のテープ状基材表面への成膜においては、成膜条件の最適化が困難となっている。特に、テープ状基材を所定速度(1〜10m/h)で移動させながら超電導層を成膜させる場合には、基材表面温度が成膜温度で安定となるように最適化する必要がある。ここで、成膜温度とは超電導体の化合物が生成される温度であり、例えばYBCOの場合700〜800℃である。
図7に示すように、反応室は、気化器(図示略)から供給された原料ガスを噴出する原料ガス噴出部11、噴出された原料ガスが拡散するのを抑えるとともに反応室内を基材導入領域A1、成膜領域A2、基材導出領域A3に区画する遮蔽板12、反応室内を移動するテープ状基材50を加熱するサセプタ13を備えている。
このCVD装置では、サセプタ13がヒータ(図示略)により加熱され、サセプタ13からの伝熱および輻射熱によりテープ状基材50が成膜温度に加熱されるようになっている。すなわち、テープ状基材50を基材導入領域A1において予め成膜温度まで加熱しておき、成膜領域A2においてテープ状基材50の表面に原料ガスを反応させて超電導層を成膜する。超電導層が成膜されたテープ状基材50は基材導出領域A3を通過して反応室外に導出される。
テープ状基材50を十分に予熱するためには、基材導入領域A1を長くしたり、テープ状基材50の移動速度を遅くしたりする手法が考えられるが、装置の大型化又は生産性の低下に繋がるため望ましくない。
前記第1工程では、前記テープ状基材の導入出領域での表面温度が前記成膜温度よりも高く、かつ30℃を超えて高くならないように温度制御を行い、
前記第2工程では、成膜されるY系超電導層内に含まれるバリウムとイットリウムの原子比をXBa/XY、銅とイットリウムの原子比をXCu/XY、銅とバリウムの原子比をXCu/XBaとしたときに、XBa/XY>1.0、XCu/XY<3.0、XCu/XBa>1.2となるように原料ガスを導入することを特徴とする。
ここで、「原子比」とは2種の元素の原子数の比を意味し、Xに下付きで元素記号を付加したものの比で表している。
前記反応室は、
原料ガスを噴射する原料ガス噴出手段と、
前記原料ガス噴出手段から噴出された原料ガスが拡散するのを抑制するとともに、反応室内を基材導入領域と成膜領域とに区画する遮蔽手段と、
前記基材導入領域及び前記成膜領域を通過するテープ状基材を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段からの放射熱が拡散するのを抑制し、前記基材導入領域を通過するときのテープ状基材の表面温度が前記成膜領域を通過するときのテープ状基材の表面温度よりも高くなるように前記基材導入領域の温度を制御可能な予熱手段と、を有することを特徴とする。
前記予熱手段は、前記基材導入領域において前記サセプタに対向配置された保温板で構成されていることを特徴とする。
まず、本発明者等は、図7に示す基材導入領域A1においてテープ状基材50を十分に予熱すべく、基材導入領域A1の雰囲気温度を成膜領域の雰囲気温度よりも高くする手法を案出した。具体的には、図8に示すように、基材導入領域A1にサセプタ13に対向する保温板14を設けた構成とした。このような構成とすることで、基材導入領域A1ではサセプタ13と保温板14で挟まれた空間に熱が閉じ込められるために成膜領域A2よりも雰囲気温度が高くなる。
図8に示すように、上述した手法により、成膜領域A2において基材表面温度を所望の温度で安定させることができた。しかしながら、この手法により超電導層を成膜した超電導線材では、静止状態で超電導層を成膜した超電導線材に比較して、臨界電流特性が低下していた。
図9に示すように、BaCeO3、CuO、YCuOなどの不純物や、回転しているYBCO結晶が観察され、超電導層53内に不要な欠陥が生じていることが判明した。そして、中間層52と超電導層53の界面に形成されたBaCeO3の上に欠陥が生じていることから、テープ状基材50にBaCeO3が形成されなければ安定した組成の超電導層53を成膜できるという知見を得て、超電導層の成膜方法を改善すべくさらに検討を重ねた。
発明者等は、このことに着目してBaCeO3が生成される条件を調べたところ、基材導入領域又は基材導出領域におけるテープ状基材の表面温度と成膜領域における表面温度の差が大きいときにBaCeO3が生成されることを突き止めた。さらに、反応室内に導入する原料ガスの成分を調整し、Y系超電導層中のバリウム、イットリウム、銅の原子比を所定の範囲内にすることで、BaCeO3の生成を抑制できることを突き止めた。
そして、基材導入領域(又は基材導出領域)における温度制御に加えて、原料ガス成分の調整を最適化することで、安定した組成(すなわち不要な欠陥を含まない組成)の超電導層を成膜でき、さらには超電導線材において高い臨界電流特性を実現できることを確認し、本発明を完成した。
図1は、実施形態に係るCVD装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、CVD装置1は、反応室10、気化器20、原料溶液供給部30、基材搬送部40を備えて構成されている。
気化器20は、供給された原料溶液を噴霧して気化させ、原料ガスを生成する。生成された原料ガスは、キャリアガス(Ar)により反応室10に導入される。反応室10は、導入された原料ガスをテープ状基材50の表面に反応させ、超電導層を成膜する。基材搬送部40は、テープ状基材50を往復搬送可能に構成されており、反応室10内においてテープ状基材50を所定速度で搬送する。
図2では、テープ状基材50が左側から右側に搬送されているので、領域A1が基材導入側、領域A3が基材導出側となっている。基材搬送部40による搬送方向が反転すると、領域A3が基材導入側、領域A1が基材導出側となる。
本実施形態では、テープ状基材50の表面温度が基材導入領域A1及び基材導出領域A3において成膜温度よりも高く、かつ30℃を越えて高くならないように、また、成膜領域A2において成膜温度で安定するように、保温板14の大きさ、形状、材質、又はサセプタ13との間隔を設計している。
まず、基材導入領域A1においてテープ状基材50を移動させながら加熱する(第1工程)。そして、成膜領域A2においてテープ状基材50を移動させながら成膜温度に加熱するとともに、このテープ状基材50の表面に原料ガスを反応させることによりY系超電導層を成膜する(第2工程)。
つまり、本実施形態では、移動するテープ状基材50の表面温度が、図3の温度プロファイルを示すように、ヒータ設定温度や、保温板14の大きさ等が決定されている。図3に示す温度プロファイルに従うと、テープ状基材50の表面温度は基材導入領域A1に導入された後、成膜温度730℃より30℃高くなるまで徐々に加熱される。その後、成膜温度まで下降し、成膜領域A2では成膜温度が保持される。そして、基材導出領域A3では、基材導入領域A1と逆の挙動を示す。
さらに、XBa/XY>1.2、XCu/XY<2.8、XCu/XBa>1.5とすると、これらの不純物の生成をより抑制できるとともに、YBCO結晶の回転等の欠陥を抑制できるので、さらに望ましい。
実施例では、厚さ0.1mmのNi−W基板に厚さ数百nmのCeO2/YSZ/CeO2層を形成した幅1cmのテープ状基材50を用い、成膜領域A2における基材表面温度(すなわち成膜温度)がおよそ710℃、730℃、740℃、750℃となるように、ヒータ設定温度を900℃、920℃、930℃、940℃とした。また、基材導入領域A1における基材表面温度は、成膜領域A2における目標値(成膜温度)よりも30℃高くなるようにした。具体的には、テープ状基材50の移動速度を1m/h、保温板14の長さを25mm、保温板14とサセプタ13との間隔を5mmとした。なお、反応室10内の圧力は10torrとした。
上記した成膜条件のもとで、テープ状基材50を所定回数(例えば9回)往復させることにより、テープ状基材50の表面に膜厚0.8μmのY系超電導層を成膜した。そして、成膜したY系超電導層の上にAg安定化層を形成した後、酸素中において熱処理を施して実施例に係る超電導線材を作成した。
比較例では、実施例と同様のテープ状基材50を用い、成膜領域A2における基材表面温度(すなわち成膜温度)がおよそ700℃、710℃、730℃となるように、ヒータ設定温度を880℃、900℃、920℃とした。また、基材導入領域A1における基材表面温度は、成膜領域A2における目標値(成膜温度)よりも50℃高くなるようにした。具体的には、テープ状基材50の移動速度を1m/h、保温板14の長さを90mm、保温板14とサセプタ13との間隔を5mmとした。なお、反応室10内の圧力は10torrとした。
上記した成膜条件のもとで、テープ状基材50を所定回数(例えば9回)往復させることにより、テープ状基材50の表面に膜厚0.8μmのY系超電導層を成膜した。そして、成膜したY系超電導層の上にAg安定化層を形成した後、酸素中において熱処理を施して比較例に係る超電導線材を作成した。
また、実施例に係る超電導線材の超電導層の成膜状態をTEMにより観察したところ、BaCeO3などの不純物は観察されず、安定した組成となっていることが確認できた。
また、基材導入領域において成膜温度より高い温度で基材を加熱することによりテープ状基材50を十分に予熱するため、予熱長を長くしたり、テープ状線材50の移動速度を遅くしたりする必要はなく、CVD装置の小型化及び生産性の向上を図ることができる。
例えば、テープ状基材の移動速度を変更する場合には、それに応じてヒータ設定温度や保温板の大きさ等を変更すればよい。図6に示すように、一般に、ヒータ設定温度が同じであっても、テープ状基材の移動速度が速くなると、基材導入領域における基材表面温度は低くなり、これに伴い成膜領域における基材表面温度も低くなるためである。
また例えば、基材導入領域における温度制御を容易化するために、基材導入領域を成膜領域とは独立して加熱する補助ヒータを設けるようにしてもよい。
10 反応室
11 原料ガス噴出部
12 遮蔽板
13 サセプタ(加熱手段)
14 保温板(予熱手段)
20 気化器
30 原料溶液供給部
40 基材搬送部
50 テープ状基材
Claims (5)
- 基材導入領域においてテープ状基材を移動させながら加熱する第1工程と、前記基材導入領域の後段に設けられた成膜領域において前記テープ状基材を移動させながら成膜温度に加熱するとともに、このテープ状基材表面に原料ガスを反応させることによりY系超電導層を成膜する第2工程と、を有する超電導線材の製造方法において、
前記第1工程では、前記テープ状基材の表面温度が前記成膜温度よりも高く、かつ30℃を超えて高くならないように温度制御を行い、
前記第2工程では、成膜されるY系超電導層内に含まれるバリウムとイットリウムの原子比をXBa/XY、銅とイットリウムの原子比をXCu/XY、銅とバリウムの原子比をXCu/XBaとしたときに、XBa/XY>1.0、XCu/XY<3.0、XCu/XBa>1.2となるように原料ガスを導入することを特徴とする超電導線材の製造方法。 - 前記テープ状基材を往復移動させることにより前記Y系超電導層を積層形成する場合、前記成膜領域の後段に設けられた基材導出領域での表面温度が前記成膜温度よりも高く、かつ30℃を超えて高くならないように温度制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の製造方法。
- 原料溶液を供給する原料溶液供給部と、前記原料溶液供給部から供給された原料溶液を気化させて原料ガスを生成する気化器と、前記気化器で生成された原料ガスをテープ状基材表面に反応させて超電導層を成膜する反応室と、前記テープ状基材を連続的に移動させる基材搬送部と、を備えたCVD装置において、
前記反応室は、
原料ガスを噴射する原料ガス噴出手段と、
前記原料ガス噴出手段から噴出された原料ガスが拡散するのを抑制するとともに、反応室内を基材導入領域と成膜領域とに区画する遮蔽手段と、
前記基材導入領域及び前記成膜領域を通過するテープ状基材を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段からの放射熱が拡散するのを抑制し、前記基材導入領域を通過するときのテープ状基材の表面温度が前記成膜領域を通過するときのテープ状基材の表面温度よりも高くなるように前記基材導入領域の温度を制御可能な予熱手段と、を有することを特徴とするCVD装置。 - 前記加熱手段は、メインヒータと、前記基材導入領域から前記成膜領域に亘って配置され、前記メインヒータにより加熱されるサセプタとを備えて構成され、
前記予熱手段は、前記基材導入領域において前記サセプタに対向配置された保温板で構成されていることを特徴とする請求項3に記載のCVD装置。 - 前記予熱手段は、前記基材導入領域を前記成膜領域とは独立して加熱する補助ヒータを備えることを特徴とする請求項4に記載のCVD装置。
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