JP2003092036A - 酸化物超電導体テープ線材の製造方法と酸化物超電導体テープ線材 - Google Patents
酸化物超電導体テープ線材の製造方法と酸化物超電導体テープ線材Info
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Abstract
した圧延集合組織を形成したAg層を有する酸化物超電
導体形成用基材のAg上に、酸化物超電導体層をCVD
法により形成させる場合に、優れた強度と10万A/c
m2以上の高Jc特性を具備した酸化物超電導体を得る
ための酸化物超電導体テープ線材の製造方法ならびに酸
化物超電導体テープ線材を提供することを目的とする。 【解決手段】 テープ状の酸化物超電導体形成用基材の
Ag上に酸化物超電導体を形成するに当たり、前記Ag
上に直接形成する酸化物超電導体層のCu組成を、その
上に形成する酸化物超電導体層のCu組成割合よりも過
剰となるように供給して形成することによって、目的と
する酸化物超電導体を提供する。
Description
ル、超電導マグネット、超電導エネルギー貯蔵、超電導
発電装置、医療用MRI装置、超電導電流リード等の分
野において利用できる、気相法による酸化物超電導体テ
ープ線材の製造方法ならびに酸化物超電導体テープ線材
に関するものである。
ザー蒸着法、CVD法やスパッタ法などの気相法により
金属テープなどの長尺の基材上に連続的に酸化物系超電
導層を形成する成膜法が知られている。このような気相
法により製造された酸化物超電導テープ線材の構造とし
ては、図7に示すようにAg(銀)からなる基材1の上
面にYBaCuO系の酸化物超電導層2が形成され、更
にこの酸化物超電導層2上にAgからなる表面保護層3
が形成されたものが知られている。このような気相法に
より作製した酸化物超電導テープ線材において、優れた
超電導特性を得るためには、Ag基材1上に作製した酸
化物超電導層2の2軸配向(面内配向)を実現すること
が重要である。そのためには、基材1の格子定数を、酸
化物超電導層2の格子定数に近づけることと、基材1の
表面を構成する結晶粒が、疑似単結晶的に揃っているこ
とが好ましい。
に、図6に示すようにハステロイテープなどの金属製の
母材4の上面に、スパッタ装置を用いてYSZ(イット
リア安定化ジルコニウム)などの多結晶中間層5を形成
し、この多結晶中間層5上にYBaCuO系などの酸化
物超電導層2を形成し、更にこの上にAgの安定化層6
を形成することにより、超電導性の優れた酸化物超電導
テープ線材を製造する試みなどが種々行われている。ま
た、圧延、熱処理により集合組織を形成したAg基材
や、圧延、熱処理により集合組織を形成し、さらに酸化
物中間層を形成したNi基材なども検討されている。
導層との反応性が小さく、基材上に直接酸化物超電導層
を形成することができる唯一の金属材料であり、さらに
は非磁性、低抵抗であるという特徴も有していることか
ら、基材自身が安定化層としても機能するコンパクトな
線材構造を実現することもできる。
形成したテープ状のAg基材1としては、基材表面に
(100)面を、長手方向に<001>を優先的に配向
させた立方体集合組織を有するAg{100}<001
>、あるいは、基材表面に(110)面を、長手方向に
<110>を優先的に配向させた立方体集合組織を有す
るAg{110}<110>などが開発されており、こ
れらのうちでも、YBaCuO系の酸化物超電導層との
格子のマッチングを考慮すると、Ag{110}<11
0>の配向Ag基材が有望である。
示すような多結晶中間層5上に酸化物超電導層2を形成
した酸化物超電導テープ線材では、この多結晶中間層5
の作用により、酸化物超電導層2が形成される表面の平
滑性や面内配向性が優れており、良好に面内配向した酸
化物超電導層2を得ることができ、最近では100万A
/cm2以上の高Jcが得られることが確認されてい
る。また、金属テープとしてハステロイを用いているた
め、十分な強度を備えた線材を製造することができる。
しかしながら、この多結晶中間層5を備えた基材は、そ
の成膜にイオンビームスパッタ法という高度で高価な技
術を用いる必要があり、まだ今のところ、1m/h程度
までの基材の生産速度しか得られておらず、製造コスト
が極めて高いという問題点を有している。
g基材1では、基材の生産性を高くでき、製造コストも
比較的安価であり有望であるが、この配向Ag基材を用
いて10万A/cm2以上の高Jcを得られたという報
告はほとんど成されておらず、超電導特性の不足が問題
とされていた。これは、Ag基材上に形成する酸化物超
電導層を構成する元素の内、Cu元素が前記Ag基材中
に拡散反応を起こし、得られた酸化物超電導層の組成が
目的とする組成になっていないためであると考えられて
いる。さらに、Ag基材を用いる場合には、Ag自体が
非常に柔らかい金属である上、酸化物超電導体の生成時
に高温に加熱されることでさらに軟化するため、Ag基
材を用いた酸化物超電導体テープ線材などへ応用するた
めには、強度の問題を解決することも必要である。
たものであって、Ag基材あるいは他の金属母材の一面
にAg層を形成した酸化物超電導体成形用基材を用い、
そのAg上に酸化物超電導体層をCVD法により形成さ
せる場合に、優れた強度と10万A/cm2以上の高J
c特性を具備した酸化物超電導体を得るための、酸化物
超電導体テープ線材の製造方法と前述の特性を具備した
酸化物超電導体テープ線材を提供することを目的とす
る。
の、本発明の酸化物超電導体テープ線材の製造方法は、
CVD法によってCuを含有する酸化物超電導体を多層
に基材上に生成させるに当たり、テープ状のAg基材1
あるいは他の金属母材4の少なくとも一面に形成された
圧延集合組織を有するAg層7とを備えた酸化物超電導
体成形用基材を用い、少なくとも前記Ag上に直接形成
される前記酸化物超電導体層2の生成に用いる酸化物超
電導体の原料溶液中のCu原料を過剰に供給して製造す
るようにしたことを特徴とする。
は、CVD法によって生成される多層のCuを含有する
酸化物超電導体であって、Ag基材あるいは他の金属母
材の少なくとも一面に形成された圧延集合組織を有する
Ag層を備えた酸化物超電導体形成用基材の、Ag直上
に形成される前記酸化物超電導体層のCu含有量が、そ
の他の酸化物超電導体層のCu含有量よりも高い濃度と
したことを特徴とする。
材1上に、例えばYBaCuO系超電導体層2を多層に
形成した場合に、10万A/cm2以上の高いJc値が
得られない原因について確認実験を行った結果、Ag基
材上に直接形成される前記酸化物超電導体層中のCu元
素が、Ag基材中に拡散を生じて、得られるYBaCu
O超電導体中のCu元素が不足している為である事を見
出したことによる。
2(A)(B)に示されるような酸化物超電導体層2を
得るために、Ag基材1あるいはAg層7上に直接形成
される酸化物超電導体2aを生成する為、CVD反応生
成室から供給される原料溶液のガス中のCu原料ガス濃
度を他の反応生成室中のCu原料ガス濃度よりも過剰と
なるように供給して、まずAg基材1上あるいは酸化物
超電導体形成用基材のAg層7上に酸化物超電導体層を
形成し、続いて順次その上に第2の酸化物超電導体層2
b、第3の酸化物超電導体層2cを順次形成する。
にYBaCuO系酸化物超電導体層2を形成した後、こ
の層をエッチングによって除去し、前記Ag基材中のY
(イットリウム)、Ba(バリウム)、Cu(銅)各元
素の量を分析した。結果は、表1に記載されるように、
多量のCu元素が確認された。(2回測定した結果であ
る)これは、酸化物超電導体生成用の原料中のCu元素
がAg基材中に拡散されたためであると考えられる。よ
って、このような現象を生じないようにするためには、
Ag基材界面でのCu元素の拡散を抑制する必要があ
る。
為に、以下の確認実験を行った。すなわち、異なる3種
類の製造条件で生成させたYBaCuO系酸化物超電導
体の各構成元素の割合を測定した。これは図3に示すよ
うな3個の反応生成室9A、9B、9Cを有するCVD
製造装置8を用いて、図4に示す原料溶液を供給する装
置から、それぞれ表2に示す組成割合の前記YBaCu
O酸化物超電導体の原料溶液のガス(各元素の組成割合
は、原料溶液のモル比で表した)をAgテープ基材T上
に供給して、前記YBaCuO酸化物超電導体層を形成
させた。すなわち実験例1の場合は、反応生成室9A、
9B、9C全てからから、Y、Ba、Cu各元素の組成
割合を1:1.9:2.5となるように全て同組成の原
料溶液のガスを供給した。実験例2の場合は、反応生成
室9A、9B、9C全てからY、Ba、Cu各元素の原
料ガス割合を1:1.9:2.7となるようにして、前
記と同様に供給した。また実験例3では、Ag基材上に
直接酸化物超電導体層を形成する反応生成室7Aから
は、Y、Ba、Cuの各元素の原料溶液のガス割合を、
1:1.9:2.7となるように調整して、Cu元素が
過剰となる様供給し(第1層目を構成)、他の反応生成
室7Bおよび7Cからは、Cu原料溶液のガスを過剰と
しないY:Ba:Cuが1:1.9:2.5の原料溶液
のガスを供給し(第2層目、第3層目を構成)、前記Y
BaCuO酸化物超電導体層を生成させた。なお、実験
の条件を纏めて示すと、以下の表2に記載するとおりで
ある。更に、表2には記載を略したが、実験例4とし
て、Ag基材上に直接酸化物超電導体層を形成する反応
生成室7Aからは、Y、Ba、Cuの各元素の原料溶液
のガス割合を、1:1.9:2.9となるように調整し
て、Cu元素が更に過剰となる様供給し(第1層目を構
成)、他の反応生成室7Bおよび7Cからは、Cu原料
溶液のガスを過剰としないY:Ba:Cuが1:1.
9:2.5の原料溶液のガスを供給し(第2層目、第3
層目を構成)、前記YBaCuO酸化物超電導体層を生
成させる実験も行った。
の場合は、生成されたYBaCuO系酸化物超電導体の
Y、Ba、Cu各元素の組成は、1:2:2.8となっ
ており、Ag基材にCu元素が拡散する為、得られた前
記YBaCuO酸化物超電導体中のCu元素が不足して
いることが判る。この酸化物超電導体のJc(臨界電流
密度)は、4.1万A/cm2であった。また実験例2の
場合は、得られたYBaCuO系酸化物超電導体のY、
Ba、Cu各元素の組成は、1:2:3.2となってお
り、Cu元素が過剰になっている。これは特に、第3層
目(最表面層)では過剰に供給したCu元素がAg基材
中に拡散することがないので、前記YBaCuO酸化物
超電導体の表面ほどCuOとして析出しているものと考
えられる。そしてこのYBaCuO酸化物超電導体のJ
cも9.8万A/cm2で、10万A/cm2以上のもの
とはならなかった。
に直接形成される超電導体層(第1層目)を、反応生成
室9Aから供給するY、Ba、Cu各元素の組成割合を
1:1.9:2.7のようにCu元素が過剰となるよう
な原料溶液のガスを供給して形成したので、Cu元素が
Ag基材中に拡散しても十分それを補充する量となって
いる為、得られた前記酸化物超電導体は、Y:Ba:C
uの組成割合が、1:2:3となっていた。また、第2
層目(反応生成室9Bから供給)及び第3層目(反応生
成室9Cから供給)となる酸化物超電導層の組成割合
を、通常YBaCuO酸化物超電導体の形成に好ましい
とされるY:Ba:Cuの組成割合である1:1.9:
2.5としたので、前記YBaCuO酸化物超電導体の
各元素の組成割合はY:Ba:Cuが1:2:3となっ
ていた。そしてこの酸化物超電導体のJc値は、11万
A/cm2を示し、想定した超電導特性を有する前記酸
化物超電導体が得られた。また、実験例4の場合に得ら
れた酸化物超電導体のJc値は、11万A/cm 2を示
し、想定した超電導特性を有する酸化物超電導体が得ら
れた。この例の酸化物超電導体の第3層と第2層を一部
研磨して除去し、第1層目の酸化物超電導体部分を露出
させてから酸化物超電導体の組成を測定した結果、各元
素の組成割合はY:Ba:Cuが1:2:3.1となっ
ていて、第1層目の酸化物超電導体の組成比においてC
uの割合が高いことが判明した。
9C)を3個直列に配置した場合の製法について述べた
が、前記反応生成室を1個配置して製造することも可能
である。すなわち、最初の酸化物超電導体層の形成を、
Cu原料溶液のガス濃度を過剰なものとして供給してA
g基材上全てに酸化物超電導体層を形成させた後、この
Ag基材を逆送りする等して前記超電導体層上に、通常
の原料溶液濃度(例えば、Y:Ba:Cuがモル比で
1:1.9:2.5)の原料溶液のガスを供給して超電
導体層(第2層目)を形成する。ついでまた、Ag基材
を逆送りしながら、同様の組成の原料溶液のガスを供給
して前記第2層目の超電導体層上に、第3層目の酸化物
超電導体層を形成するものである。このような製造方法
でも、十分に高Jc(10万A/cm2以上)の酸化物
超電導体テープ線材を得ることができる。また、反応生
成室が2個の場合も同様の効果のものが得られるし、
(反応生成室が4個以上の場合も同様である。)更に逆
に、1個の反応生成室を備えた製造装置と2個以上の反
応生成室を備えた製造装置を用い、1個の反応生成室を
備えた製造装置でAg上にCuを多く含む酸化物超電導
層を生成し、次いで2個以上の反応生成室を備えた製造
装置でCuを規定量含む酸化物超電導層を積層するなど
の方法を行って多層構造の酸化物超電導層を備えた酸化
物超電導体を製造しても良いのは勿論である。
成時のCu元素の過剰供給割合については、前記酸化物
超電導体の通常好ましいとされる組成元素割合である、
Y:Ba:Cuが1:1.9:2.5に対して、1〜2
0%程度高めのCu濃度とすることが好ましい。このよ
うな範囲で、製造条件である温度、製造速度等を考慮し
て定めれば良い。また、このような範囲とする理由は、
1%未満であるとCu元素の過剰供給効果が小さくな
り、20%を超えるとCu元素がYBaCuO系酸化物
超電導体の膜中でCu-Oの粗大な異相を形成し易くな
るからである。
ープ線材の製造方法は、少なくともAg基材上に直接形
成されるYBaCuO系酸化物超電導体の生成を(図2
(A)の2a)、YBaCuO超電導体の原料溶液組成
の内、Cu原料濃度を過剰に供給することによって生成
すれば、その後に形成されるYBaCuO系酸化物超電
導体層の各元素の組成割合が、目的とする規定のYBa
CuO系酸化物超電導体組成割合とすることが可能とな
る。これは、原料溶液中のCu元素を過剰にしておくこ
とによって、YBaCuO酸化物超電導体の生成時にた
とえ前記原料溶液中のCu元素がAg中に拡散しても、
予めCuを過剰としておくので、減少した分を十分補っ
て酸化物超電導体の組成が乱れたり、結晶の連続性が損
なわれること無く、高Jc値を有する超電導特性に優れ
た酸化物超電導体テープ線材を製造することができる。
電導体テープ線材は、Ag上に直接生成する酸化物超電
導層をCu原料組成を過剰に供給することによって生成
させるため、前記基材のAg中にCu元素が拡散して
も、目的とする組成の酸化物超電導体層が得られるとと
もに、その上に順次生成する酸化物超電導体層も、目的
とする組成の酸化物超電導体を有するテープ線材とする
ことができる。なお、前記Ag直上に形成する酸化物超
電導層を生成するCu原料組成をその後に形成する酸化
物超電導層を生成するCu原料組成よりも1〜20%の
範囲で高い濃度とすることによって、Ag直上の酸化物
超電導体層のみならず、酸化物超電導体層全体を目的と
する組成に形成可能となる。そして、前記Cu原料組成
の高めの濃度が1%未満であると、Cu元素が、基材で
あるAg中に拡散してしまい、Cu元素が不足すること
となり、また、20%を超えるとCu元素が過剰とな
り、酸化物超電導体層中にCuOなどの異相として生成
され、目的とする酸化物超電導体が得られないという問
題が生じる。また、Cu原料組成を1〜20%過剰とし
て酸化物超電導体を生成することで、Ag上に19%以
下の濃度でCu含有量の高い酸化物超電導層を得ること
ができる。ここで19%以下とは、Cu過剰量が0%よ
りも高く、19%以下の範囲であることを意味する。
g基材(図2(A)の1)に変えて、他の金属母材上に
圧延集合組織を有するAg層を備えた2重構造の酸化物
超電導体形成用基材(図2(B))を用いた場合には、
Ag基材に比して大幅に強度を向上させた酸化物超電導
体テープ線材が得られることになる。その場合前記の2
層構造の基材は、Ag層の膜厚が、10μm以上100
μm以下の範囲とされた構成とすることが好ましい。A
g層の膜厚が、10μm未満であると、金属母材の構成
元素がAg層を通して酸化物超電導体層へ拡散するため
好ましくない。また、100μmを越える場合には、A
gの使用量が多く、基材のコストが高くなるため好まし
くない。
イ(NiCrMo合金)、Ni、インコネル、ステンレ
ス鋼などの高温強度に優れる材料から構成されることが
好ましい。この金属母材としては、これらの金属材料を
用いることで、Ag層を集合組織化するための熱処理
や、酸化物超電導体層を生成するために高温に加熱され
た場合に、金属母材の軟化や、金属母材の構成元素の拡
散が起こりにくくなる。従って、Ag層にあっては良好
な集合組織を形成、維持することができ、酸化物超電導
体層も良好な結晶配向性、結晶連続性を実現することが
できるので、良好な超電導特性を備えた酸化物超電導体
テープ線材を作製することができる。また、この金属母
材の厚さは、目的に応じて適宜変更すればよいが、50
μm〜200μm程度とするのがよい。
に、バリア層が備えられた構成とすることもできる。こ
のような構成とすることで、金属母材を構成する元素
が、Ag層や酸化物超電導体層へ拡散するのを抑制する
ことができるので、Ag層の集合組織や酸化物超電導体
層の結晶組織を良好に保つことができ、Ag層上に形成
される酸化物超電導体層の結晶配向性や結晶連続性を良
好なものとすることが可能である。さらに、上記バリア
層を備えた酸化物超電導体テープ線材においては、前記
Ag層の厚さが、5μm以上10μm以下とされた構成
とすることができる。すなわち、上記バリア層により金
属母材を構成する元素がAg層やこのAg層上に形成さ
れる酸化物超電導層に拡散するのを防止することができ
る。従って本構成によれば、Ag層を薄くしても良好な
結晶連続性を備えた酸化物超電導体層を形成することが
でき、特に高Jc値を有する超電導特性に優れた酸化物
超電導体テープ線材を提供することができる。また、こ
のバリア層を備えた酸化物超電導体テープ線材におい
て、Ag層の膜厚が、5μm未満であると、バリア層へ
Ag層(Ag箔)を貼り合わせるのが困難であり実用的
でない。また、10μmを越える場合には、基材コスト
の増加につながるため好ましくない。
体テープ線材の製造方法について、図1を参照して以下
に詳細に説明する。この図1に示すCVD製造装置8
は、本発明に係る酸化物超電導体テープ線材の製造装置
の一例を示すもので、基本的に略同等の構造を有する3
個の反応生成室9A、9B、9Cを備えたもので、前記
反応生成室内においてテープ状の基材TのAg上に、酸
化物超電導体層を連続して積層形成できるようになって
いる。
の両端を閉じた筒型の石英製のリアクタ10を有してい
る。このリアクタ10は、図5に示すように隔壁11
A、12Aによって図5の左側から順に基材導入部13
と反応生成室9A、9B、9Cと、基材導出部14に区
画されており、隔壁11Aと隔壁12Aの間に設けられ
た複数の隔壁15(図面では4枚の隔壁)によって、上
記反応生成室9A、9B、9Cが分割(図面では3分
割)されて、それぞれが互いに略同等の構造とされると
ともに、隣り合う反応生成室9A、9Bと9B、9Cの
間(隣り合う隔壁16、16で)には、2つの境界室1
6が区画されている。従って、このリアクタ10には、
反応生成室9A、9B、9Cが後述する基材搬送領域R
に送り込まれるテープ状の基材Tの移動方向に直列に複
数(図面では3つの反応生成室)が設けられていること
になる。尚、リアクタ10を構成する材料は、石英に限
らずステンレス鋼などの耐食性に優れた金属であっても
良い。
部中央には、図5と図6に示すように、長尺のテープ状
の基材Tが通過可能な通過孔17がそれぞれ形成されて
いて、前記リアクタ10の内部には、その中心部を横切
る形で基材搬送領域Rが形成されている。さらに、基材
導入部13にはテープ状の基材Tを導入するための導入
孔が形成されるとともに、基材導出部14には基材Tを
導出するための導出孔が形成されている。また、導入孔
と導出孔の周縁部には、基材Tを通過させている状態で
各孔の隙間を閉じて基材導入部13と基材導出部14を
気密状態に保持するための封止機構(図示略)が設けら
れている。
は、図5に示すように略角錐台型のガス拡散部18が取
り付けられている。これらのガス拡散部18は、リアク
タ10に取り付けられたガス拡散部材19と、このガス
拡散部材の天井壁20に接続され、拡散層または酸化物
超電導体の原料ガスをガス拡散部材19に供給するガス
導入管21と、ガス導入管21の先端部に設けられたス
リットノズル(図示略)を具備して構成されている。ま
た、ガス拡散部材19の底面は、細長い長方形状の開口
部22とされ、この開口部を介してガス拡散部材19が
各反応生成室9A、9B、9Cに連通されている。
6の天井部には、遮断ガス供給手段23が供給管24、
24を介して接続され、前記遮断ガス供給手段23は、
境界室16の両側の反応生成室9A、9Bと9B、9C
どうしを遮断するための遮断ガスを供給し、供給管24
は、遮断ガス噴出部を介して境界室16に接続されてい
る。この遮断ガスとして例えばアルゴンガスが選択され
る。特に最近では、各反応生成室9A、9B、9C内の
圧力、ガス拡散の状態を同時に保つことで遮断ガスを導
入しなくとも、問題ないことを本発明者が確認してお
り、遮断ガス供給手段23を略して構成しても良い。
境界室16、16の下方には、図6に示すように基材搬
送領域Rの長さ方向に沿って各反応生成室9A、9B、
9C及び境界室16、16を貫通するように排気室25
が設けられている。そして、この排気室の上部には、図
5に示すように、基材搬送領域Rに通されたテープ状の
基材Tの長さ方向に沿って細長い長方形状のガス排気孔
26、26が各反応生成室9A、9B、9C及び境界室
16、16を貫通するようにそれぞれ基材Tの両側に形
成されており、このガス排気孔26、26には、隔壁1
1、12、15の基材搬送領域Rの両側か端部が貫通状
態とされている。また、排気室25の下部には複数本
(図面では7本)の排気管27がそれぞれ接続されてお
り、これらの排気管27は、図1に示す真空ポンプ28
を備えた圧力調整装置29に接続されている。
25と、排気孔30を有する複数本の排気管27と、バ
ルブ31と、真空ポンプ28と、圧力調整装置29によ
ってガス排気手段32が構成されている。このような構
成のガス排気手段32は、CVD反応装置の内部の原料
ガスや酸素ガスや不活性ガス、及び遮断ガスなどのガス
を速やかに排気できるようになっている。
に加熱ヒータ33が設けられている。図1に示す例で
は、3つの反応生成室9A、9B、9Cに亘って連続す
る加熱ヒータ33としたが、この加熱ヒータを、CVD
反応装置の各反応生成室9A、9B、9Cに対して独立
の構造とすることも可能である。更に、リアクタ10の
基材導入部13が不活性ガス供給源34に、また、基材
導出部14が酸素ガス供給源35にそれぞれ接続されて
いる。
された各原料ガス導入管36は、ガスミキサ37を介し
て、酸化物超電導体の原料ガス供給手段38の原料ガス
の気化器(原料ガスの供給源)に接続されている。
8は、図4に示す原液供給装置39と液体原料供給装置
40と、原料溶液の気化器(原料ガス供給源)41とを
備えて概略構成されている。前記気化器41には、後述
の液体原料供給装置40の先端部(図示下部)が収納さ
れている。また、前記気化器の外周部にはヒータ42が
付設されていて、このヒータ42により液体原料供給装
置40から供給された原料溶液43を所望の温度に加熱
して気化させることにより原料ガスが得られるようにな
っている。また、気化器41の内底部には保熱部材44
が設置されている。この保熱部材は、熱容量の大きい材
料であって液体原料43と反応しないものであれば、ど
のような材料であっても良く、特に金属製の厚板が好ま
しく、その構成材料としてはステンレス鋼、ハステロ
イ、インコネルなどが好ましい。
すように、管状の原料溶液供給部45と、この供給部の
外周を取り囲んで設けられた筒状のキャリアガス供給部
46とから概略構成された2重構造のものである。原料
溶液供給部45は、後述する原液供給装置39から送り
込まれてくる原料溶液43を気化器41の内部に供給す
るものである。キャリアガス供給部46は、原料溶液供
給部45との隙間に前述の原料溶液43を噴出するため
のキャリアガスを流すためのものである。そして、キャ
リアガス供給部46の上部には、キャリアガス用MFC
(流量調整器)47を介してキャリアガス供給源48が
接続され、キャリアガス供給部46内(原料溶液供給部
45との隙間)にアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガ
スなどのキャリアガスを供給できるように構成されてい
る。
り縦方向に2分割されており、分割された領域が仕切板
49の下側において連通され、この仕切板の下側の連通
部分を原料ガスが通過して先のガス導入管36が接続さ
れた接続部50に流動できるように構成されている。
液43を原料溶液供給部45内に一定流量で送り込むと
ともにキャリアガスをキャリアガス供給部46に一定流
量で送り込むと、原料溶液43は原料溶液供給部45の
先端部に達するが、この先端部外周側のキャリアガス供
給部46の先端からキャリアガスが流れてくるので、先
端部51から吹き出される際、原料溶液43は上記キャ
リアガスとともに気化器41の内部に導入され、この気
化器の内部をその底部に到るまで移動しながら加熱、気
化され、原料ガスとされる。また、気化器41の底部に
設置された保熱部材44に到り、この保熱部材により更
に気化が成されて原料溶液が完全に気化されて原料ガス
とされる。尚、本実施形態の構造では、原料溶液を原料
溶液供給部45の先端部51から霧化するのではなく、
加熱とキャリアガスとの混合のみにより原料ガスとする
ので、液体原料の気化に関しては、液体原料が原料ガス
に気化されるまでの間に気化器41内部の内壁に衝突し
ない構成とすることが好ましい。
液供給部45には、原液供給装置39が加圧式液体ポン
プ52を備えた接続管53を介して接続されている。原
液供給装置39は、収納容器54と、パージガス源55
を備え、収納容器54の内部には原料溶液43が収納さ
れている。この原料溶液は、加圧式液体ポンプ52によ
り吸引され、その流量を調節されて原料溶液供給部45
へ輸送される。
の基材導入部13の側部側(前段側)には、テープ状の
基材TをCVD反応装置に供給するためのテンションド
ラム56と送出ドラム57とからなる基材搬送機構58
が設けられている。このテンションドラム56と送出ド
ラム57は正逆回転自在に構成されている。また、リア
クタ10の基材導出部14の側部側(後段側)には、リ
アクタ10内の基材搬送領域Rを通過するテープ状の基
材Tを巻き取るためのテンションドラム59と、巻取ド
ラム60とからなる基材搬送機構61が設けられてい
る。このテンションドラム59と、巻取ドラム60も正
逆回転自在に構成されている。
いて酸化物超電導体テープ線材を製造するには、まず、
テープ状の酸化物超電導体形成用基材Tと、酸化物超電
導体の原料溶液を用意する。そしてこの基材Tとして
は、図2(A)、(B)に示す構成のものや前記基材に
ついて詳述したような基材を用いることが好ましい。
り生成させるための原料溶液は、酸化物超電導体を構成
する金属錯体を溶媒中に分散させたものが好ましい。具
体的には、Y1Ba2Cu3O7-xなる組成のY系の酸化物
超電導体層を形成する場合は、Ba−ビス−2,2,6,6−
テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン−ビス−1,10−フ
ェナントロリン(Ba(thd)2・phen2)と、Y
(thd)2と、Cu(thd)2などの金属錯体を使用
することができ(phen=フェナントロリン)、他に
はY-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナ
ート(Y(DPM)3)と、Ba(DPM)2、Cu(D
PM)2などの金属錯体を用いることができる。
に、La2-xBaxCuO4なる組成式で代表されるLa
系、Bi2Sr2Can-1CunO2n+2(nは自然数)なる
組成式で代表されるBi系、Tl2Ba2Can-1CunO
2n+2(nは自然数)なる組成式で代表されるTl系のも
のなど、目的の組成に応じた金属錯塩を用いて上述のC
VD法を実施すればよい。
層を製造する場合には、必要な組成系に応じて、トリフ
ェニルビスマス(III)、ビス(ジピバロイメタナト)
ストロンチウム(II)、ビス(ジピバロイメタナト)カ
ルシウム(II)、トリス(ジピバロイメタナト)ランタ
ン(III)等の金属錯塩を適宜用いてそれぞれの系の酸
化物超電導体層の製造に供することができる。
液供給装置39の収納容器54に原料溶液43として上
記各原料溶液を収納し、液体原料供給装置40に接続し
ておく。そして、テープ状の酸化物超電導体形成用基材
Tを用意したならば、これを酸化物超電導体テープ線材
の製造装置内の基材搬送領域Rに基材搬送機構58によ
り基材導入部34から所定の移動速度で送り込むととも
に基材搬送機構の巻き取りドラム60で巻き取る。ま
た、反応生成室9A、9B、9C内の基材Tを加熱ヒー
タ33で所定の温度に加熱する。次いで、テープ状の基
材Tをリアクタ10内に送り込んだならば、原料ガス供
給手段38に備えられた加圧式液体ポンプ52により収
納容器54から原料溶液43を、それぞれ送り込む反応
生成室9A、9B、9Cごとの原料組成濃度に調節され
状態で、流量0.1〜10ccm程度で原料溶液供給部
45内に送液し、これと同時にキャリアガスをキャリア
ガス供給部46に流量200〜550ccm程度で送り
込む。また、気化器41には、原料溶液43の気化温度
以上に加熱しておく。
3が気化器41内に連続的に供給され、ヒータ42によ
り加熱、気化されて原料ガスとなり、この原料ガスがガ
ス導入管36を介して各ガス拡散部18に連続的に供給
される。次に、反応生成室9A、9B、9Cに移動した
原料ガスは、上方から下方へ移動し、加熱された基材T
上において反応して反応生成物が堆積し、酸化物超電導
体層が順次Ag層上、前記酸化物超電導体層上に順次形
成される。この際、制御手段62は、各反応生成室ごと
にガス分圧を独立に制御して所定のガス分圧を維持する
ように原料ガス供給手段38をそれぞれ制御する。この
際、制御手段61は、テープ状の基材Tの移動方向の反
応生成室9A、9B、9Cのガス分圧よりも、テープ状
の基材Tの移動方向下流側の反応生成室9A、9B、9
Cのガス分圧が高くなるように原料ガス供給手段38b
をそれぞれ制御することが好ましい。そして、これらの
酸化物超電導体層が形成された基材Tは、巻取ドラム6
0に巻き取られる。尚、酸化物超電導体層の形成後は、
必要に応じて酸化物超電導体層の結晶構造を整えるため
の熱処理を施しても良い。
体層上にさらに銀などからなる安定化層(保護層として
も作用する)をスパッタ法や蒸着法などにより形成する
と、安定化層を備えた酸化物超電導体と同等のものを得
ることができる。また、この安定化層は、図1に示す製
造装置の反応生成室9A、9B、9Cの1個または複数
個、さらには専用の保護層形成室を配置して、気相法等
により形成することもできる。このような構成とすれ
ば、安定化層(保護層を含む)を備えた酸化物超電導体
を上記製造装置において連続して製造することができ
る。
酸化物超電導体テープ線材を製造するならば、酸化物超
電導体層を1回の基材Tの移動により製造することがで
き、しかもAg層直上の酸化物超電導体層が、Cu元素
の拡散によってもなお組成範囲が適正に制御されたもの
となっているので、その上に生成される超電導体層のみ
ならず全体の超電導体層も、優れた超電導特性を有する
ものとなる。また、基材Tの搬送速度を適切な範囲とし
て適切な厚さの酸化物超電導体層が積層することが可能
なので、より優れた超電導特性を備えた酸化物超電導体
となる。
き取りドラム60との間において基材Tを繰り返し往復
移動し、4層、あるいは6層などの積層数の酸化物超電
導層を積層して酸化物超電導導体を製造しても良い。ま
た、上記の例では、3個の反応生成室を配置して酸化物
超電導層を形成する場合について説明したが、1個の反
応生成室によって製造することも可能であるし、2個ま
たは多数配置したものでも良い。
て述べる。図2(B)に記載されるAg層7は、圧延集
合組織を有するAgからなるものが好ましい。このAg
層の圧延集合組織としては、基材表面に{100}面
を、長手方向に<001>を優先的に配向させた立方体
集合組織を有する{100}<001>集合組織、基材
表面に{110}面を、長手方向に<110>を優先的
に配向させた立方体集合組織を有する{110}<11
0>集合組織、基材表面に{110}面を、長手方向に
<001>を優先的に配向させた立方体集合組織を有す
る{110}<001>集合組織のいずれかとすること
が好ましい。当然に、図2(A)に記載されるAg基材
1の表面も、このような処理を施されたものが好まし
い。このように集合組織を有する配向Ag層を形成した
基材を用いることで、特にYBaCuO系の酸化物超電
導体層を形成する際に、基材表面の結晶の格子定数と、
酸化物超電導体層の格子定数とを近づけることができる
ので、形成される酸化物超電導体層の結晶性を向上さ
せ、優れた超電導特性を備えたものとすることができ
る。
延が施されたAg箔を金属母材1またはバリア層13に
貼り合わせた後に、熱処理を施して集合組織化したもの
であっても良く、圧延を施したAg箔に予め熱処理を施
して圧延集合組織をAg箔中に形成し、この圧延集合組
織を有するAg箔を金属母材1またはバリア層13に貼
り合わせて形成しても良い。
い基材におけるAg層7の膜厚は、10μm〜100μ
mの範囲とされる。Ag層の厚さが10μm未満である
と、金属母材1の構成元素がAg層を通過して、Ag層
上に形成される酸化物超電導体層へ拡散するので好まし
くない。また、100μmを越える場合には、Agの使
用量が多くなり、基材としてのコストが高くなり好まし
くない。
このバリア層によって金属母材の元素の拡散を抑制する
ことができるので、Ag層の膜厚をより薄く形成するこ
とができる。従って、Ag層の厚さは5μm以上10μ
m以下とされる。これは、Ag層の厚さが、5μm未満
であると、Ag層をバリア層に貼り合わせるのが困難で
あり実用上好ましくない。また、10μmを越える場合
には、基材コストの増加につながるので好ましくない。
素が、上記圧延集合組織を形成するための熱処理やAg
箔を金属母材に貼り合わせるための加熱によってAg層
へ拡散し、Ag層の結晶配向性を損なうのを防ぐために
設けられている。このようなバリア層を構成する材料と
しては、Pt、Au、Cu等の金属や、MgO、YSZ
(イットリア安定化ジルコニア)、CeO2等の酸化物
を用いることができる。
る材料により適宜最適な厚さとすればよいが、金属材料
を用いる場合には、0.2〜5μm程度が好ましく、酸
化物材料を用いる場合には、0.1〜0.2μmとする
ことが好ましい。金属材料で構成されたバリア層が、
0.2μm未満では、金属母材の元素の拡散を抑制する
効果が十分に得られず、5μmを越える場合には、バリ
ア層が内部応力で剥離しやすくなる。また、酸化物材料
で構成されたバリア層においても、厚さが0.1μm未
満では金属母材の元素の拡散を抑制する効果が十分でな
く、0.2μmを越えると、バリア層の形成に要する時
間が増えてコスト高となるほか、基材を曲げたとき等に
応力でバリア層に割れが発生するおそれがある。
材によれば、ハステロイなどの高強度金属からなる金属
母材4上に、Ag層7がそれぞれ形成されているので、
従来のAg基材の問題点であった基材強度を大きく向上
させることができ、テープ線材などへの応用を容易にす
ることができる。また、Ag1、7の表層は、圧延集合
組織を有する構造とされているので、このAg層上に形
成される酸化物超電導体層との格子のマッチングが良好
なものとなり、優れた超電導特性を備えた酸化物超電導
体を構成することができる。また、本発明に係る基材を
用いるならば、Ag1、7上に直接酸化物超電導体層を
成膜することができるので、酸化物超電導体の構造を簡
素なものとし、より製造が容易になるという利点も有し
ている。
はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例
では、テープ状のハステロイを金属母材として用い、こ
の金属母材上に、{110}<110>集合組織が形成
されたAg箔を貼り合わせたAg層を有する基材を用い
て、酸化物超電導体テープ線材を作製した。また、この
例では、W10mm×L50mm×t0.09mmの金属
母材に、厚さ50μmのAg箔を貼り合わせた基材を用
いた。尚、本例ではAg箔として集合組織を形成済みの
ものを用いたが、Agの圧延箔を金属母材と貼り合わ
せ、これに熱処理を施して集合組織を形成してもよい。
トリウム系の酸化物超電導体層を形成するために、Ag
層上に直接形成(第1層目)する反応生成室(図1の7
A)に供給するCVD用の原料溶液として、Ba-ビス-
2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン-ビス-1,10-
フェナントロリン(Ba(thd)2(phen)2)
と、Y(thd)2と、Cu(thd)2を用いた。これ
らの各々をY:Ba:Cu=1.0:1.9:2.7の
モル比で混合し、テトラヒドロフラン(THF)の溶媒
中に7.0重量%になるように添加したものを酸化物超
電導層の液体原料(原料溶液)とした。また、拡散層の
液体原料として、Cu(thd)2をTHFの溶媒中に
7.0%Wtになるように添加したものを用意した。
の7B)および第3層目となる反応生成室(図1の7
C)用のCVD用原料溶液として、前記材料の各く組成
をY:Ba:Cu=1.0:1.9:2.5の組成比
(原料溶液としてのモル比)の原料溶液を、上記と同様
に準備した。
動させる必要長さの基材の移動を終了した後、第1層目
の原料溶液を加圧式液体ポンプにより(0.27ml/
分)の流速で、液体原料供給装置の原料溶液供給部に連
続的に供給し、これと同時にキャリアガスとしてArを
キャリアガス供給部に流量(300cc/m)程度で送
り込んだ。以上の操作により一定量のミスト状の液体原
料を気化器内に連続的に供給し、更にこの液体原料が気
化した原料ガスをガス導入管を経てCVD反応装置のガ
ス拡散部材に一定量連続的に供給して、第1層目の酸化
物超電導体層を生成させた。この時の気化器及び輸送管
の温度は(230)℃とした。
上に順次第2層目の原料ガス、第3層目の原料ガスを積
層して酸化物超電導体層を形成した。前記Ag基材のリ
アクタ内の基材移動速度を3.0m/h、基材加熱温度
を780℃、リアクタ内圧力を5.0Torr(5.0
×133Pa)、設定酸素分圧値を1.43〜1.53
Torr(1.43×133〜1.53×133Pa)
に設定して、移動する基材上にYBaCuO系の酸化物
超電導体層を連続的に形成し、所定長さの基材の移動が
終了するまで成膜を行った。
YBaCuO酸化物超電導体層について、超電導特性の
評価を行った。結果はYBaCuO超電導体テープ線材
として、Jcが13万A/cm2であった。また、この
ときのYBaCuO超電導体の各元素の組成比は、Y1
Ba2Cu3O7-δであり、酸化物超電導体テープ線材と
しての強度と併せて満足できるものといえる。
れば、Agテープ基材や他の金属母材少なくとも一面側
に形成された圧延集合組織を有するAg層とを備えた酸
化物超電導体形成用基材を用いて酸化物超電導層をCV
D法によって製造できるので、他の気相法に比して安価
な装置で、製造速度も比較的早くまた強度の問題も解決
できる等、Ag材料の利点を生かした酸化物超電導体テ
ープ線材を提供することができる。
の製造方法は、前記Ag層上に直接形成される酸化物超
電導体層は、その上に順次形成する酸化物超電導層のC
u組成よりも過剰に供給しながら酸化物超電導体生成す
るので、たとえAg中にCu元素が拡散しても、過剰に
供給したCu元素によって不足分を十分に補充されるの
で、生成された酸化物超電導体は、高Jc、特に10万
A/cm2以上の超電導特性を有する酸化物超電導体テ
ープ線材が得られる。
2個配置したCVD製造装置を用いて、本発明の酸化物
超電導体テープ線材を製造すれば、連続製造が可能とな
る。また、テープ基材の移動速度も自由に変えることが
可能なので、目的とする酸化物超電導体を種々の製造条
件を選択して、製造することもできる。
プ線材は、酸化物超電導体形成用基材であるAg基材や
強度等に優れた金属母材上に圧延集合組織を有するAg
層を形成した前記基材を用い、このAg直上にはCu含
有量の高い酸化物超電導体層が形成されているので、そ
の上に順次形成される酸化物超電導体層も、目的とする
組成の酸化物超電導体の生成が可能となる。このため得
られた酸化物超電導体テープ線材は、高Jcの超電導特
性を有し、強度等も優れた酸化物超電導テープ線材とし
て、用いることができる。
線材の製造装置の全体構成を示す図である。
材の断面構造例を示す図であり、図1(A)は、Ag基
材上に直接構成された例を示し、図1(B)は、金属母
材上のAg層の上に形成した例を示す。
アクタの概略構造例を示す断面構成図である。
料ガス供給装置の概略構造例を示す構成図である。
アクタの構造例を示す斜視構成図である。
概略断面図である。
す概略断面図である。
剰に供給して生成した酸化物超電導体層、1…Ag基
材、9A、9B、9C・・・反応生成室、10・・・リ
アクタ、T・・・酸化物超電導体形成用基材、13・・
・基材導入部、14・・・基材ド導出部、19・・・ガ
ス拡散部、33・・・ヒータ、38・・・原料ガス供給
手段、R・・・基材搬送領域、58、61・・・基材搬
送機構、62・・・制御手段。
Claims (10)
- 【請求項1】 Ag基材あるいは他の金属母材の少なく
とも一面に形成された圧延集合組織を有するAg層を備
えた酸化物超電導体形成用基材のAg上に、CVD法に
より順次Cuを含む酸化物超電導体を多層に生成するに
当たり、前記Ag上に直接前記酸化物超電導体を生成す
る為の反応生成室の原料溶液の組成を、Cu組成が前記
酸化物超電導体組成よりも過剰となるように供給しなが
らCuを含む酸化物超電導体を生成することを特徴とす
る酸化物超電導体テープ線材の製造方法。 - 【請求項2】 前記反応生成室を少なくとも2個直列に
配置し、前記Ag上に直接前記超電導体を生成する為の
前記反応生成室の前記原料溶液の組成を、Cu組成が前
記酸化物超電導体の組成割合よりも過剰になるように供
給し、残りの反応生成室中の原料溶液組成は、Ag直上
に生成する反応生成室のCu組成ではない、規定の酸化
物超電導体組成を得ることが可能なCu組成とすること
を特徴とする請求項1記載の酸化物超電導体テープ線材
の製造方法。 - 【請求項3】 前記Ag上に直接酸化物超電導体層を生
成させるための前記反応生成室中のCu組成を、その他
の反応生成室中のCu組成よりも1〜20%高い濃度と
しておくことを特徴とする請求項1または2に記載の酸
化物超電導体テープ線材の製造方法。 - 【請求項4】 前記酸化物超電導体層が、YBaCuO
系酸化物超電導体であることを特徴とする請求項1〜3
のいずれかに記載の酸化物超電導体テープ線材の製造方
法。 - 【請求項5】 前記Ag基材は表面の組織(110)配
向が圧延集合組織を有することを特徴とする請求項1〜
4記載のいずれかに記載の酸化物超電導体テープ線材の
製造方法。 - 【請求項6】 前記酸化物超電導体成形用基材のAg層
の厚さが、10μm以上100μm以下の範囲とされた
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化
物超電導体テープ線材の製造方法。 - 【請求項7】 前記酸化物超電導体成形用基材の前記A
g層と、前記金属母材との間に、バリア層が備えられた
ことを特徴とする請求項1〜4並びに6のいずれかに記
載の酸化物超電導体テープ線材の製造方法。 - 【請求項8】 前記酸化物超電導体層上に貴金属材料か
らなる保護層を形成したことを特徴とする請求項1〜7
のいずれかに記載の酸化物超電導体テープ線材の製造方
法。 - 【請求項9】 Ag基材あるいは他の金属母材の少なく
とも一面に形成された圧延集合組織を有するAg層を備
えた酸化物超電導体形成用基材のAg上に、CVD法に
より順次Cuを含む酸化物超電導体を多層に生成してな
る酸化物超電導体であって、前記多層の酸化物超電導体
の内、Ag直上の前記酸化物超電導体層のCu含有量
が、その他の前記酸化物超電導体層のCu含有量よりも
高い濃度であることを特徴とするCuを含む酸化物超電
導体テープ線材。 - 【請求項10】 前記Ag直上の酸化物超電導体層のC
u含有量が、その他の前記酸化物超電導体層のCu含有
量よりも19%以下高い濃度であることを特徴とする請
求項9に記載のCuを含む酸化物超電導体テープ線材。
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