JP4234424B2 - 前駆体溶液およびその使用方法 - Google Patents

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Description

【0001】
(発明の背景)
本発明は前駆体溶液およびその前駆体溶液の使用方法に関する。
多層の製品は様々な用途で使用され得る。例えば、酸化物超電導体等の超電導体は多層製品で形成され得る。通常、このような超電導体は超電導体材料からなる層、および一般的に基板と呼ばれる、多層製品の機械的強度を向上させ得る層からなる。
【0002】
一般に、多層超電導体の強度を増大させる以外に、前記基板は他の特性も示すべきである。例えば超電導体の使用温度では、基板が強磁性にならないように、基板は低いキュリー温度を有するべきである。さらに、基板内の化学種は、超電導材料の層に拡散し得なく、また基板の熱膨張係数は超電導材料とほぼ同じであるべきである。さらに、基板が酸化物超電導体のために使用される場合、その基板材料は酸化に対して比較的耐性があるべきである。
【0003】
イットリウム−バリウム−銅−酸化物(YBCO)等の材料では、その超電導状態において輸送電流を大きくするその材料の能力は、材料の結晶学的配向に依存する。例えば、その材料の面が2軸テクスチャの場合、このような材料は比較的大きな臨界電流密度(Jc)を示し得る。
【0004】
本明細書では、「2軸テクスチャ」は、結晶粒が、平面方向には密な整列をしている面を表す。2軸テクスチャ面の1つのタイプは立方体テクスチャ面であり、その面では結晶粒は、その表面に垂直な方向にも密な整列をしている。立方体テクスチャ面の例には、(100)[001]および(100)[011]面が含まれ、2軸テクスチャ面の例は(113)[211]面である。
【0005】
ある特定の多層超電導体では、超電導体材料の層はエピタキシャル層である。本明細書では、「エピタキシャル層」は、その結晶学的配向が、エピタキシャル層の上に成膜される材料層の結晶学的配向と直接合致する材料層を表す。例えば、ある基板上に成膜されたエピタキシャル超電導体材料層を有する多層超電導体では、超電導体材料層の結晶学的配向はその基板の結晶学的配向と直接合致する。したがって、基板の前記の特性に加えて、基板はまた2軸テクスチャ面あるいは立方体テクスチャ面を有することが望ましい。
【0006】
いくつかの基板においては、前記の特徴の全てを示すことは容易でないので、基板と超電導体層の間に、1つ以上の、一般に緩衝層(buffer layer)と呼ばれる介在層(intermediate layer)を配置し得る。(複数の)緩衝層は基板より酸化に対する耐性があり得るし、基板と超電導体層との間の化学種の拡散を減少させ得る。さらに、(複数の)緩衝層は超電導体材料と良く整合する熱膨張係数を有し得る。
【0007】
通常、緩衝層はエピタキシャル層であるため、その結晶学的配向は、緩衝層がその上に成膜される表面の結晶学的配向と直接合致する。例えば、基板、エピタキシャル緩衝層および超電導体材料のエピタキシャル層を有する多層超電導体においては、緩衝層の面の結晶学的配向は基板表面の結晶学的配向に直接合致し、また超電導体材料層の結晶学的配向は緩衝層の面の結晶学的配向に直接合致する。したがって、緩衝層を有する多層超電導体により示される超電導特性は緩衝層表面の結晶学的配向に依存し得る。
【0008】
ある特定の超電導体前駆体溶液は、超電導体中間体(例えば、金属オキシハライド(oxyhalide)中間体)を生成するのに比較的長時間を必要とする。いくつかの例では、この時間を減らすべく、超電導体材料を生成させるためにさらに処理をすると、臨界電流密度が比較的小さい超電導体材料層となるような欠陥密度を有する中間体となり得る。
【0009】
(発明の概要)
本発明は、1つには、適当な希土類金属塩、適当なアルカリ土金属塩、適当な遷移金属塩、1種以上の適当な溶剤、および場合によれば水、を含む前駆体溶液を選択することにより、ある特定の希土類−アルカリ土類−遷移金属酸化物(例えば、YBaCu7−xのようなYBCO化合物)の生成の際、欠陥発生の低減または防止を実現させることに関する。このような前駆体溶液は、比較的高品質(例えば、低欠陥密度)で、比較的厚い(例えば、少なくとも約1ミクロンの厚さ)希土類−アルカリ土類−遷移金属酸化物の中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を、比較的短時間(例えば、約5時間以内)に生成させるために使用され得る。次に、この中間体は、欠陥密度が小さく、かつ/またはかなりの臨界電流密度(例えば、少なくとも約0.5×10アンペア/cm)を有する、希土類−アルカリ土類−遷移金属酸化物(例えば、YBaCu7−xのようなYBCO化合物)を生成させるために、更に処理される。
【0010】
例示的および非限定的な溶剤のリストには、水、アルコール(例えば、メタノール、2−メトキシエタノール、ブタノール、イソプロパノール)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1−メチル−2−ピロリジノンおよびピリジンが含まれる。これらの溶剤の2種以上の組合せを使用することも可能である。
【0011】
前駆体溶液の成分は、希土類−アルカリ土類−遷移金属酸化物の中間体を生成するための前駆体溶液処理の際、次の条件の少なくとも1つ、好ましくは殆ど全てが満たされるように選択されるべきである。
【0012】
1つの条件は、中間体(例えば、金属オキシハライド)生成のために前駆体溶液を処理しているときに起こるアルカリ土類炭酸塩(例えば、BaCO)の生成を、最少にするということである。生成するアルカリ土類炭酸塩の量はX線回折による検出不可能であることが望ましい。理論に拘束されようとは思わないが、アルカリ土類炭酸塩(例えば、BaCO)は希土類−アルカリ土類−遷移金属酸化物(例えば、YBaCu7−x)の生成温度を超える温度で熱的に安定であり得るので、生成する希土類−アルカリ土類−遷移金属酸化物の量を減少させてしまう。従って、アルカリ土類炭酸塩の形成は望ましくないと考えられる。ある実施形態では、前駆体溶液に含まれるアルカリ土類金属塩は、(複数の)アルカリ土類酸化物(例えば、BaO)を生成するのではなく、少量のアルカリ土類化合物(例えば、BaF、BaCl、BaBr、および/またはBaIのような(複数の)アルカリ土類ハライド)を選択して、アルカリ土類炭酸塩を優先的に生成する。このアルカリ土類化合物(例えば、アルカリ土類ハライド)は、後に(複数の)アルカリ土類酸化物が(複数の)希土類酸化物(例えば、Y)および(複数の)遷移金属酸化物(例えば、CuO)と速やかに反応して、希土類金属−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物(例えば、(YBaCu7−x)のようなYBCO化合物)を生成しようとするとき、適当な(複数の)アルカリ土類酸化物(例えば、BaO)に転化されることもまた可能である。
【0013】
別の条件は、希土類−アルカリ土類−遷移金属酸化物中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)の生成中に起こる欠陥形成を最少にすることである。本明細書では、「欠陥」は、目視(あるいは光学的)検査で検出可能な亀裂あるいは泡(blister)を表す。
【0014】
さらなる条件は、希土類金属−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物中間体には、中間体膜の厚さの約10分の1より大きいサイズの組成上の相分離が全くないということである。このような中間体をさらに処理することにより、殆ど均質な希土類金属−アルカリ土類金属−遷移金属酸(例えば、殆ど123相であるYBaCu7−x)を得ることが可能である。
【0015】
別の条件は、前駆体の中間体(例えば、金属オキシハライド)への転化中、個別の遷移金属分子(例えば、銅分子)の間で起こる架橋を最少化することである。理論に拘束されようとは思わないが、中間体(例えば、金属オキシハライド)を生成させるために前駆体溶液を処理しているとき、いくつかの遷移金属塩は、個別の銅分子が架橋した状態になる化学反応を受け得ると考えられる。このような架橋分子は欠陥を比較的よく形成しやすい性質を持つと考えられる。理論に拘束されようとは思わないが、この架橋は、遷移金属(例えば、銅)の8面体サイトに配位した水が処理中に(例えば、いくつかの遷移金属塩では約200℃から約220℃の範囲の温度で)外れて、1つの遷移金属分子の遷移金属原子上に結合サイトが空き、別の遷移金属分子の原子(例えば、酸素あるいはフッ素)と相互作用するときに起こり得ると考えられる。いくつかの実施形態では、処理中の架橋を立体的および/または化学的に防止する遷移金属塩(例えば、銅塩)を選択することにより(例えば、遷移金属塩に比較的大きな有機の基あるいは塩素、臭素もしくはヨウ素などの比較的大きな原子を使用することにより、あるいは遷移金属塩に水素などの比較的電気的に陽性の原子を使用することにより)、このような架橋した個別の遷移金属分子の生成を減らし得ると考えられる。
【0016】
別の条件は、希土類金属塩は、他の化合物とは対照的に、処理中にその塩が(複数の)希土類金属酸化物(例えば、Y)に転化されるように選択されるべきであるということである。
【0017】
1つの態様において、本発明は、層の表面上に前駆体溶液を塗布して前駆体の膜を形成することを含む方法を特徴とする。この前駆体膜は希土類金属塩、アルカリ土類金属塩および遷移金属のカルボン酸塩(例えば、遷移金属のプロピオン酸塩)を含む。例えば、遷移金属塩はCu(OCCであり得る。この方法はまた、前駆体膜を処理して、希土類金属−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物からなる中間体の層を形成することを含む。
【0018】
別の態様において、本発明は、層の表面上に前駆体溶液を塗布して前駆体の膜を形成することを含む方法を特徴とする。この前駆体膜は希土類金属塩、アルカリ土類金属塩および銅のカルボン酸塩(例えば、Cu(OCC)を含む。この方法はまた、前駆体膜を処理して、希土類金属−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物からなる中間体の層を生成させることを含む。
【0019】
さらなる態様において、本発明は層の表面上に前駆体溶液を塗布して前駆体の膜を形成することを含む方法を特徴とする。この前駆体膜は希土類金属塩、アルカリ土類金属塩および遷移金属のカルボン酸塩(例えば、遷移金属のプロピオン酸塩)を含む。例えば、遷移金属塩はCu(OCCであり得る。この方法はまた、前駆体膜を処理して、希土類金属−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物からなる中間体の層を生成させることを含む。
【0020】
一般に、前駆体膜は、材料層の表面上に前駆体溶液を塗布することにより、さらに処理する、あるいはせずに(例えば、前駆体膜は前駆体溶液と同一の化学成分で形成され得る)形成することが可能である。例えば、希土類金属塩、アルカリ土類金属塩および遷移金属塩を含む前駆体膜は、例えば、ディップ・コーティング、スピン・コーティング、スロット・コーティングあるいはウェブ・コーティングにより材料層の表面上に塗布され得る。いくつかの実施形態では、前駆体溶液を材料層上に塗布する方法(例えば、スピン・コーティング)は、さらなる処理をすることなく、前駆体溶液を前駆体膜に転換することが(例えば、前駆体溶液から少なくとも部分的に(複数の)溶剤を除去することにより)可能である。
【0021】
別の態様において、本発明は、希土類金属塩、アルカリ土類金属塩および銅のカルボン酸塩(例えば、Cu(OCC)を含む組成物を特徴とする。
【0022】
1つの態様において、本発明は、前駆体溶液を層の表面上に塗布して前駆体膜を形成することを含む方法を特徴とする。この前駆体膜は希土類金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩およびルイス塩基を含む。この方法はまた、前駆体膜を処理して、希土類金属−アルカリ土類金属−遷移金属酸化物からなる中間体を生成させることを含む。
【0023】
別の態様において、本発明は、ルイス塩基、希土類金属塩、アルカリ土類金属塩および遷移金属塩を含む組成物を特徴とする。
超電導体中間体は、例えば、1種以上の金属オキシハライド化合物で部分的に、あるいは完全に形成され得る。
【0024】
本発明は、超電導体を、テープもしくはウェハ等の比較的大きな表面積を有する形態で製造する場合、特に利点があり得る。
いくつかの実施形態では、超電導体材料は、好ましくはYBCO(例えば、YBaCu7−x)で形成される。
【0025】
超電導体材料の臨界電流は、少なくとも約200アンペア/cm幅(例えば、少なくとも約300アンペア/cm幅、少なくとも約500アンペア/cm幅)であり得る。
【0026】
特に別の仕方で定義されるのでなければ、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明に属する当業者により一般に理解されているものと同一の意味を有する。本発明の実施に、本明細書に記載されるものに類似の、あるいは等価な方法および材料を使用することが可能であるが、適切な方法および材料が以下に記載される。紛争の場合は、定義を含めた本明細書に支配される。さらに、材料、方法および実施例は例示であって、限定を意図するものではない。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、好ましい実施形態の説明、図および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、前駆体溶液およびその前駆体溶液を使用する方法に関する。
前駆体溶液は希土類金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、および1種または複数の溶剤を含む。任意選択で、前駆体溶液は水を含み得る。いくつかの実施形態において、前駆体溶液は1種以上のルイス塩基を含み得る。
【0028】
希土類金属は、イットリウム、ランタン、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウムもしくはルテチウムであり得る。一般に、希土類金属塩は、前駆体溶液に含まれる(複数の)溶剤に溶解し、また処理されて中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を生成するとき、(複数の)希土類酸化物(例えば、Y)を生成する何らかの希土類金属塩であり得る。このような塩は、例えば、式M(OC−(CH−CXX’X”)(OC−(CH−CX’’’X’’’’X’’’’’)(OC−(CH−CX’’’’’’X’’’’’’’X’’’’’’’’)あるいはM(OR)を有し得る。Mは希土類金属である。n、mおよびpはそれぞれ、少なくとも1であるが、その塩が(複数の)溶剤に溶解しなくなる数よりは小さい(例えば、1から10)。X、X’、X”、X’’’、X’’’’、X’’’’’、X’’’’’’、X’’’’’’’およびX’’’’’’’’の各々は、H、F、Cl、BrもしくはIである。Rは炭素含有基であり、これはハロゲン化されている(例えば、CHCF)ことも、されていないこともある。このような塩の例には、非ハロゲン化カルボン酸塩、ハロゲン化酢酸塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリヨード酢酸塩)、ハロゲン化アルコキシド、および非ハロゲン化アルコキシドが含まれる。このような非ハロゲン化カルボン酸塩には、非ハロゲン化アクテテート(actetate)(例えば、M(OC−CH)が含まれる。
【0029】
通常、アルカリ土類金属は、バリウム、ストロンチウムもしくはカルシウムである。一般に、アルカリ土類金属塩は、前駆体溶液に含まれる(複数の)溶剤に溶解し、また処理されて中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を生成するとき、(複数の)アルカリ土類酸化物(例えば、BaO)を生成する前に、(複数の)アルカリ土類ハライド化合物(例えば、BaF、BaCl、BaBr、BaI)を生成する何らかのアルカリ土類金属塩であり得る。このような塩は、例えば、式M’(OC−(CH−CXX’X”)(OC−(CH−CX’’’X’’’’X’’’’’)あるいはM’(OR)を有し得る。M’はアルカリ土類金属である。nおよびmはそれぞれ、少なくとも1であるが、その塩が(複数の)溶剤に溶解しなくなる数よりは小さい(例えば、1から10)。X、X’、X”、X’’’、X’’’’およびX’’’’’の各々は、H、F、Cl、BrもしくはIである。Rはハロゲン化あるいは非ハロゲン化炭素含有基であり得る。このような塩の例には、ハロゲン化酢酸塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリヨード酢酸塩)が含まれる。
【0030】
通常、遷移金属は銅である。遷移金属塩は、前駆体溶液に含まれる(複数の)溶剤に溶解すべきである。前駆体の中間体(例えば、金属オキシハライド)への転化中に、別々の遷移金属分子(例えば、銅分子)の間で起こる架橋は最少であることが好ましい。このような遷移金属塩は、例えば、式M”(CXX’X”−CO(CH)CO−CX’’’X’’’’X’’’’’)(CX’’’’’’X’’’’’’’X’’’’’’’’−CO(CH)COCX’’’’’’’’’X’’’’’’’’’’X’’’’’’’’’’’)、M”(OC−(CH−CXX’X”)(OC−(CH−CX’’’X’’’’X’’’’’)あるいはM”(OR)を有し得る。M”は遷移金属である。aおよびbはそれぞれ、少なくとも1であるが、その塩が(複数の)溶剤に溶解しなくなる数よりは小さい(例えば、1から5)。一般に、nおよびmはそれぞれ、少なくとも1であるが、その塩が(複数の)溶剤に溶解しなくなる数よりは小さい(例えば、1から10)。X、X’、X”、X’’’、X’’’’、X’’’’’、X’’’’’’、X’’’’’’’、X’’’’’’’’、X’’’’’’’’’、X’’’’’’’’’’およびX’’’’’’’’’’’の各々は、H、F、Cl、BrもしくはIである。Rは炭素含有基であり、これはハロゲン化されていることも(例えば、CHCF)、されていないこともあり得る。このような塩には、例えば、非ハロゲン化アクテテート(例えば、M”(OC−CH)、ハロゲン化酢酸塩、ハロゲン化アルコキシド、および非ハロゲン化アルコキシドが含まれる。このような塩の例には、トリクロロ酢酸銅、トリブロモ酢酸銅、トリヨード酢酸銅、Cu(CHCOCHCOCF、Cu(OOCC15、Cu(CFCOCHCOF、Cu(CHCOCHCOCH、Cu(CHCHCOCHCOCH、CuO(CN)およびCuBa(O−CHCFが含まれる。ある特定の実施形態では、遷移金属塩は、遷移金属のプロピオン酸塩(例えば遷移金属の非ハロゲン化プロピオン酸塩)のような、カルボン酸塩(例えば、非ハロゲン化カルボン酸塩)である。遷移金属の非ハロゲン化プロピオン酸塩の例は、Cu(OCCである。いくつかの実施形態では、遷移金属塩は、硫酸銅、硝酸銅、ヨウ化銅および/または銅オキシレート(oxylate)などの単塩(simple salt)である。いくつかの実施形態では、nおよび/またはmは、値が0であり得る。ある特定の実施形態では、aおよび/またはbは、値が0であり得る。
【0031】
ルイス塩基の例示的で非限定的リストには、アンモニアおよびアミンなどの窒素含有化合物が含まれる。アミンの例には、CHCN、CNおよびRNが含まれる。Rのそれぞれは、独立に、H、アルキル基(例えば、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、脂肪族アルキル基、非脂肪族アルキル基および/または置換アルキル基)などである。理論に拘束されようとは思わないが、前駆体溶液中のルイス塩基の存在は、中間体生成中の銅の架橋を少なくし得ると考えられる。これは、ルイス塩基が銅イオンに配位(例えば、選択的配位)することによって、銅の架橋する能力を低下させるために起こると考えられる。
【0032】
ある特定の実施形態では、前駆体溶液は比較的小さい全遊離酸濃度を有し得る。いくつかの実施形態では、前駆体溶液の全遊離酸濃度は、約1×10−3モル(molar)(例えば、約1×10−5モル、約1×10−7モルより小さい)より小さい。前駆体溶液に含まれ得る遊離酸の例には、トリフルオロ酢酸、酢酸、硝酸、硫酸、ヨウ化物の酸、臭化物の酸および硫酸塩(sulfate)の酸が含まれる。
【0033】
いくつかの実施形態において、例えば、前駆体溶液が水を含む場合、前駆体溶液は比較的中性に近いpHを有し得る。例えば、前駆体溶液のpHは、少なくとも約3(例えば、少なくとも約5、約7)である。
【0034】
前駆体溶液の水含量は比較的少ない。ある特定の実施形態では、前駆体溶液の水含量は50体積パーセントより少ない(例えば、約35体積パーセントより少ない、25体積パーセントより少ない)。
【0035】
遷移金属、アルカリ土類金属および希土類金属を、前駆体溶液中の(例えば、イオンの状態の)これら元素のモル比が、約3:2:1であるように選択することが可能である。
【0036】
ある特定の実施形態では、アルカリ土類金属塩(例えば、バリウム塩)は、前駆体溶液を処理して中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を生成させるとき、アルカリ土類金属ハライドを生成するのに用いられるハロゲンの主要な(例えば、唯一の)供給源である。別の実施形態では、例えば、希土類金属塩がアルカリ土類金属塩と同時に分解されるとき、希土類塩もまたアルカリ土類金属にハロゲンを供給し得る。いくつかの実施形態では、例えば、遷移金属塩がアルカリ土類金属塩と同時に分解されるとき、遷移金属塩もまたアルカリ土類金属にハロゲンを供給し得る。いくつかの実施形態では、希土類金属塩と遷移金属塩の両方がアルカリ土類金属塩と同時に分解されるとき、希土類金属塩および遷移金属がアルカリ土類金属にハロゲンを供給し得る。
【0037】
一般に、希土類金属、遷移金属およびアルカリ土類金属の塩と望ましい(複数の)溶剤、ならびに任意選択で水および/または1種もしくは複数のルイス塩基を組み合わせることにより、前駆体溶液を調製し得る。ある特定の実施形態では、塩は、溶液中の遷移金属塩:アルカリ土類金属塩:希土類金属塩のモル比がほぼ3:2:1であるように、組み合わされる。
【0038】
前駆体溶液の生成に続いて、下にある層(例えば、緩衝層、超電導体層あるいは基板)の表面上に、その溶液を塗布する。通常、下の層の表面上に前駆体溶液を塗布するのに用いられる技法に基づいて、用いられる特定の(複数の)溶剤、ならびに前駆体溶液中に含まれるその(複数の)溶剤および/または水の量を選択することが可能である。例えば、その溶液が下にある材料層の表面上に、ディップコート、スピンコートあるいはウェブコートされる場合、1種または複数のアルコール(例えば、メタノール、2−メトキシエタノール、ブタノールおよび/またはイソプロパノール)を使用することが可能で、(複数の)溶剤の量を、望ましい粘度および固形分含量となるように、選択することが可能である。前駆体溶液が下の層上にウェブコートされる実施形態では、前駆体溶液が約1センチストークスから約10センチストークスの動粘性率を有することが望ましい。
【0039】
下の層の表面への塗布に続いて、溶液は超電導体材料の層を生成するように処理される。この処理は通常、前駆体溶液の中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)への転化中に、アルカリ土類炭酸塩(例えば、BaCO)の生成が最少になり、また個別の遷移金属分子(例えば、銅分子)間に起こる架橋が最少になるように、適当な速度で、適当なガス雰囲気中で加熱することを含む。次に、中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)がさらに加熱されて所望の超電導体材料を生成する。中間体および超電導体材料を生成させる特定の方法は後に記載される。
【0040】
図1は本発明の1実施形態による、前記の方法を用いて調製された多層超電導体10を示す。製品10は、表面13を有する基板層12および表面15を有する超電導体材料層14からなる。層14は表面13の上に配置される。
【0041】
層12は、層14を支持し得る材料で形成される。製品10が多層超電導体である実施形態では、層12は基板材料で形成される。層12として使用され得る基板材料の例には、例えば、ニッケル、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデンおよび/またはこれらの合金などの、金属および/または合金が含まれる。
【0042】
層12の表面13はまた、イオン・ビーム・アシスト蒸着法および基板傾斜成膜法(inclined substrate deposition)ならびに2軸テクスチャ面を例えば無秩序に配向した多結晶表面上に生成するための、当業者に周知の他の真空技法などの真空処理を用いても調製される。
【0043】
いくつかの実施形態では、イオン・ビーム・アシスト蒸着法(IBAD)を用いて緩衝層を形成することが可能である。この方法では、イオン・ビーム(例えば、アルゴン・イオン・ビーム)が、蒸発した緩衝層材料がその上に成膜する基板の平滑な非晶質表面に向けられた状態で、緩衝層の材料が、例えば電子ビーム蒸着法、スッパタリング蒸着法、あるいはパルスレーザ蒸着法を用いて蒸着される。
【0044】
例えば、岩塩のような構造を有する緩衝層材料(例えば、MgOを含む酸化物、あるいは窒化物などの岩塩型構造を有する材料)を、基板の平滑な非晶質表面(例えば、実効粗さが約100オングストロームより小さい表面)上にイオン・ビーム・アシスト蒸着法(IBAD)によって蒸着することにより、緩衝層が形成される。その緩衝層材料は面内でも面から離れても殆ど整列する(例えば、約13°以下)表面となる。
【0045】
緩衝層材料の蒸着の際に用いられる条件は、例えば、約0℃から約400℃(例えば、ほぼ室温から約400℃)の基板温度、約1.0オングストローム/秒から約4.4オングストローム/秒の蒸着速度、約200eVから約1200eVのイオンのエネルギー、および/または約110マイクロアンペア/cmから120マイクロアンペア/cmのイオン・フラックスからなる。
【0046】
いくつかの実施形態では、IBADを使用するとき、基板は、多結晶、非晶質ではないベース構造(例えば、ニッケル合金のような金属合金)を有し、異なる材料(例えば、Si)で形成される平滑な非晶質表面を有する材料で形成される。
【0047】
ある特定の実施形態では、元のIBAD表面上へのエピタキシャル成長により複数の緩衝層が成膜される。各緩衝層は、面内でも面から離れても殆ど整列している(例えば、約13°以下)。
【0048】
これらの方法は、1999年5月27日に公表され、「Thin Films Having A Rock−Salt−Like Structure Deposited on Amorphous Surfaces(非晶質表面上に成膜された岩塩状構造を有する薄膜)」の名称のPCT公開、第WO99/25908号に記載されており、これを本願明細書に援用する。
【0049】
他の実施形態では、2軸テクスチャ(例えば、(113)[211])あるいは立方体テクスチャ(例えば、(100)[001]または(100)[011])された1つ以上の面を有する合金で基板を形成する。この合金は比較的低いキュリー温度(例えば、高くて80K、高くて40K、あるいは高くて20K)を有し得る。
【0050】
これらの実施形態のいくつかでは、基板は以下の金属の2種からなる2成分合金である:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、金および亜鉛。例えば、ニッケルとクロム(例えば、ニッケルおよび多くて20原子パーセントのクロム、ニッケルおよび約5から約18原子パーセントのクロム、あるいはニッケルおよび約10から約15原子パーセントのクロム)で2成分合金を形成することが可能である。別の例として、ニッケルと銅(例えば、銅および約5から約45原子パーセントのニッケル、銅および約10から約40原子パーセントのニッケル、あるいは銅および約25から約35原子パーセントのニッケル)で2成分合金を形成することが可能である。2成分合金は比較的少量の不純物(例えば、約0.1原子パーセント未満の不純物、約0.01原子パーセント未満の不純物、約0.005原子パーセント未満の不純物)をさらに含み得る。
【0051】
これらの実施形態のある特定のものでは、基板は2種類以上の金属を含む(例えば、3成分合金あるいは4成分合金)。これらの実施形態では、合金は1種以上の酸化物形成元素(oxide former)(例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Ga、Ge、Zr、Hf、Y、Si、Pr、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu、Th、Er、Tm、Be、Ce、Nd、Sm、Ybおよび/またはLa、好ましい酸化物形成元素はAl)、ならびに次の金属:銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、金および亜鉛、のうちの2種類を含み得る。この合金は、少なくとも約0.5原子パーセントの酸化物形成元素(例えば、少なくとも約1原子パーセントの酸化物形成元素、あるいは少なくとも約2原子パーセントの酸化物形成元素)、多くても約25原子パーセントの酸化物形成元素(例えば、多くても約10原子パーセントの酸化物形成元素、あるいは多くても約4原子パーセントの酸化物形成元素)を含み得る。例えば、合金は、1種の酸化物形成元素(例えば、少なくとも約0.5のアルミニウム)、約25原子パーセントから約55原子パーセントのニッケル(例えば、約35原子パーセントから約55原子パーセントのニッケル、あるいは約40原子パーセントから約55原子パーセントのニッケル)、残りの部分として銅を含み得る。別の例では、合金は、1種の酸化物形成元素(例えば、少なくとも約0.5原子のアルミニウム)、約5原子パーセントから約20原子パーセントのクロム(例えば、約10原子パーセントから約18原子パーセントのクロム、あるいは約10原子パーセントから約15原子パーセントのクロム)、残りの部分としてニッケルを含み得る。合金は比較的少量のさらなる金属(例えば、約0.1原子パーセント未満のさらなる金属、約0.01原子パーセント未満のさらなる金属、あるいは約0.005原子パーセント未満のさらなる金属)を含み得る。
【0052】
例えば、粉末形態の成分を一緒にし、融かし、冷却するか、あるいは、例えば、粉末の成分を固体状態で互いに拡散させることにより形成された、合金基板を製造することが可能である。次に、その合金は、テクスチャ表面(例えば、2軸テクスチャあるいは立方体テクスチャ)を形成するために、変形テクスチャ(deformation texturing)(例えば、アニーリングおよびローリング、スェージング、押出および/または引抜き)により成形され得る。別法として、合金成分をゼリーロール形状に積み重ねて、次に変形テクスチャにすることが可能である。いくつかの実施形態では、比較的熱膨張係数が小さい材料(例えば、Nb、Mo、Ta、V、Cr、Zr、Pd、Sb、NbTi、NiAlもしくはNiAlなどの金属間化合物、あるいはこれらの混合物)を、棒状に成形し、変形テクスチャ化の前に合金に埋め込むことが可能である。
【0053】
いくつかの実施形態では、基板の表面上に配置された介在層を用いて、最初のエピタキシャル(例えば、緩衝)層が2軸テクスチャ合金表面上に形成されるまで、安定な酸化物の生成を抑えることが可能である。本発明で使用するのに適する介在層には、エピタキシャル緩衝層膜の初期の成長に必要とされるPO2および温度により設定される条件に曝されたときに、表面に酸化物を生成しない、エピタキシャル金属もしくは合金層が含まれる。さらに、緩衝層は、(複数の)基板元素が介在層の表面に移動し、エピタキシャル層の初期の成長の際に酸化物を生成することを防ぐ障壁として作用する。このような介在層がないと、基板の1種以上の元素が、例えば、その酸化物の層がテクスチャ化されていないためにエピタキシャル層の成膜をかなり阻害し得ると思われる、熱力学的に安定な(複数の)酸化物を基板表面に生成すると予想される。
【0054】
これらの実施形態のいくつかでは、介在層は本質的に過渡的なものである。本明細書では、「過渡的」は、エピタキシャル膜の初期の核生成および成長の後、2軸テクスチャ基板に、全体としてもしくは部分的に組み込まれるか、あるいは合体する介在層を表す。これらの事情があっても、介在層および2軸テクスチャ基板は、成膜した膜のエピタキシャル性が確立されるまで別個のままである。過渡的介在層の利用は、介在層が何らかの望ましくない性質を有するとき、例えば、介在層がニッケルのように磁性体であるときに好ましい。
【0055】
例示的な介在層金属には、ニッケル、金、銀、パラジウム、およびこれらの合金が含まれる。さらなる金属あるいは合金には、ニッケルおよび/または銅の合金が含まれる。介在層上に成膜されるエピタキシャル膜もしくは層には、金属酸化物、カルコゲナイド、塩化物、および窒化物が含まれる。いくつかの実施形態では、介在金属層はエピタキシャル膜の成膜条件では酸化しない。
【0056】
成膜した介在膜は、緩衝層初期構造体の核生成および成長によりエピタキシャル層が確立される前には、基板に完全に組み込まれていないか、あるいは完全に拡散していないということに注意すべきである。これは、基板合金中の拡散定数、エピタキシャル緩衝層成長の実施条件のもとでの酸化に対する熱力学的安定性ならびにエピタキシャル層との格子整合などの固有の属性で金属(または合金)を選択した後、成膜させる金属層の厚さを、エピタキシャル層成膜条件、特に温度に合わせたものにしなければならないということを意味する。
【0057】
蒸着もしくはスパッタリングなどの真空処理で、あるいは(電極を使用するかあるいは使用しない)電気めっきのような電気化学的手段により、介在金属層の成膜を行なうことが可能である。これらの成膜した介在金属層は、成膜後(成膜中の基板温度に応じて)エピタキシャルであることもそうでないこともあるが、成膜後の熱処理後にエピタキシャル配向となり得る。
【0058】
ある特定の実施形態では、基板12は、比較的大きな表面積を有する(例えば、テープあるいはウェハ)形態である。これらの実施形態では、基板12は、好ましくは、比較的可撓性のある材料(例えば、変形テクスチャニッケルあるいは変形テクスチャニッケル合金)で形成される。
【0059】
好ましくは、層12の表面13は比較的よく規定された結晶学的配向を有する。例えば、表面13は、2軸テクスチャ表面(例えば、(113)[211]面)あるいは立方体テクスチャ表面(例えば、(100)[011]面あるいは(100)[001]面)であり得る。好ましくは、表面13のX線回折極点図形のピークは約20°より小さい(例えば、約15°より小さい、約10°より小さい、あるいは約5°から約10°)FWHMを有する。
【0060】
層14は、1つ以上の様々な技法を用いて調製され得る。
一般に、層14は、前記の超電導体前駆体溶液を用いて調製される。前駆体溶液は、スピン・コーティングあるいは当業者に周知の他の方法等によって、表面(例えば、緩衝層表面)に塗布され、続いて加熱される。前駆体は、比較的短時間(例えば、約5時間未満、約2時間未満、約1時間未満、約30分未満、約10分未満)に超電導体中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)に、まず転化する。超電導体中間体は比較的厚くてよい(例えば、約1マイクロメートルより厚い、約2マイクロメートルより厚い、約3マイクロメートルより厚い、約4マイクロメートルより厚い、約5マイクロメートルより厚い、約6マイクロメートルより厚い、約7マイクロメートルより厚い、約8マイクロメートルより厚い、約9マイクロメートルより厚い、約10マイクロメートルより厚い)。超電導体中間体は比較的小さな欠陥密度を有し得る。例えば、超電導体中間体には、最大寸法が約200マイクロメートルより大きい如何なる欠陥も殆どないということがあり得るし、欠陥は、1平方センチメートルの超電導体中間体表面の投影により規定される、超電導体中間体の任意の体積要素の約20パーセント未満(例えば、1平方センチメートルの超電導体中間体表面の投影により規定される、前駆体中間体の任意の体積要素の約10パーセント未満、1平方センチメートルの超電導体中間体表面の投影により規定される、該組成物の任意の体積要素の約5パーセント未満)となり得る。
【0061】
材料層表面の与えられた領域の投影により規定される、材料層の体積要素は、その端部が材料層表面の与えられた領域に垂直である、材料の層の体積に対応する。
【0062】
前駆体は、ガス雰囲気および温度を含む様々な反応条件を用いて処理され得る。通常、選択される条件は、前駆体溶液が比較的短時間(例えば、約5時間未満、約3時間未満、約2時間未満、約1時間未満、約30分未満、約10分未満)に、欠陥密度が小さい中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)に転化されるようなものである。
【0063】
ある特定の実施形態では、厚さが少なくとも約1マイクロメートル(例えば、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約4マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約6マイクロメートル、少なくとも約7マイクロメートル、少なくとも約8マイクロメートル、少なくとも約9マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル)の中間体の膜(例えば、金属オキシハライド)を形成するとき、少なくとも約0.5℃/分(例えば、少なくとも約1℃/分、少なくとも約2℃/分、少なくとも約5℃/分、少なくとも約10℃/分、少なくとも約15℃/分、少なくとも約20℃/分)の速度で、約200℃から約220℃へ、温度を上げる。
【0064】
いくつかの実施形態では、約5時間未満(例えば、約2時間未満、約1時間未満、約30分未満、約10分未満)で、前駆体溶液は、厚さが少なくとも約1マイクロメートル(例えば、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約4マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約6マイクロメートル、少なくとも約7マイクロメートル、少なくとも約8マイクロメートル、少なくとも約9マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル)の中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)に転化される。中間体の膜内に含まれる欠陥は、1平方センチメートルの中間体表面の投影により規定される、中間体の任意の体積要素の約20パーセント未満(例えば、約10パーセント未満、約5パーセント未満、約1パーセント未満)であり得るし、また中間体には、最大寸法が約200マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない(例えば、最大寸法が約100マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない、最大寸法が約50マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない)。
【0065】
いくつかの実施形態では、厚さが約1マイクロメートルより薄い中間体膜(例えば金属オキシハライド)を形成するとき、少なくとも約1℃/分(例えば、少なくとも約5℃/分、少なくとも約10℃/分、少なくとも約15℃/分、少なくとも約20℃/分)の速度で、約200℃から約220℃へ、温度を上げる。
【0066】
いくつかの実施形態では、前駆体溶液は、約5時間未満(例えば、約2時間未満、約1時間未満、約30分未満、約10分未満)で、厚さが約1マイクロメートルより薄い中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)に転化される。中間体膜内に含まれる欠陥は、1平方センチメートルの中間体表面の投影により規定される、中間体の任意の体積要素の約20パーセント未満(例えば、約10パーセント未満、約5パーセント未満、約1パーセント未満)であり得るし、また中間体には、最大寸法が約200マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない(例えば、最大寸法が約100マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない、最大寸法が約50マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない)。
【0067】
いくつかの実施形態では、前駆体溶液は、中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を生成させるために、適当な温度(例えば、少なくとも約300℃、約300℃から約400℃、約350℃)に予熱された炉に、適当な時間(例えば、約10分から約5時間、約10分から約2時間、約10分から約1時間、約30分)保持される。中間体は比較的厚くてよい(例えば、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約4マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約6マイクロメートル、少なくとも約7マイクロメートル、少なくとも約8マイクロメートル、少なくとも約9マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル)。中間体は、比較的小さな欠陥密度を有し得る。例えば、中間体膜内に含まれる欠陥は、1平方センチメートルの中間体表面の投影により規定される、中間体の任意の体積要素の約20パーセント未満(例えば、約10パーセント未満、約5パーセント未満、約1パーセント未満)であり得るし、また中間体には、最大寸法が約200マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない(例えば、最大寸法が約100マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない、最大寸法が約50マイクロメートルより大きい如何なる欠陥もない)。
【0068】
一般に、これらの方法は、十分な酸素を含み、生成した有機分子が酸化された炭化水素の形で除去されるガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、前駆体溶液を加熱しているときに用いられるガス雰囲気は次のようである。
【0069】
これらのある実施形態では、その溶液が、湿気を含んだ(例えば、約20℃から約75℃の範囲の露点を有する)酸素中で、約300℃から約500℃の範囲の温度にまず加熱される。次に、塗膜は、湿気を含んだ窒素−酸素ガス混合物(例えば、約0.5%から約5%の酸素を含む組成を有する)中で、約860℃より低い温度(例えば、約810℃より低い温度)に約1時間加熱される。任意選択で、塗膜は、約860℃から約950℃に、約5から約25分間さらに加熱され得る。続いて、塗膜は、湿気を含まない酸素中で少なくとも約8時間、約400℃から約500℃の温度に加熱される。次に、湿気を含まない酸素中で、塗膜を室温に冷却することが可能である。これらの方法は、1993年7月27日に発行され、「Preparation of Highly Textured Oxide Superconducting Films from MOD Precursor Solutions(MOD前駆体溶液による高度にテクスチャ化された酸化物超電導膜の調製)」の名称を有する米国特許第5,231,074号に記載されている。
【0070】
別の実施形態では、前駆体溶液は、約5Torrから約50Torrの水蒸気圧(例えば、約5Torrから約30Torrの水蒸気、あるいは約10Torrから約25Torrの水蒸気)の水蒸気のもとで、初期温度(例えば、室温)から、約190℃から約215℃(例えば、約210℃)の温度に加熱される。酸素の公称分圧は、例えば、約0.1Torrから約760Torrであり得る。これらの実施形態では、次に、約5Torrから約50Torrの水蒸気圧(例えば、約5Torrから約30Torrの水蒸気、あるいは約10Torrから約25Torrの水蒸気)の水蒸気のもとで、約220℃から約290℃(例えば、約220℃)の温度まで加熱が続けられる。酸素の公称分圧は、例えば、約0.1Torrから約760Torrであり得る。これに続いて、約5Torrから約50Torrの水蒸気圧(例えば、約5Torrから約30Torrの水蒸気、あるいは約10Torrから約25Torrの水蒸気)の水蒸気のもとで、少なくとも約2℃/分(例えば、少なくとも約3℃/分、あるいは少なくとも約5℃/分)の速度で、約400℃まで加熱して、超電導体材料の中間体(例えば、金属オキシハライド)を生成させる。酸素の公称分圧は、例えば、約0.1Torrから約760Torrである。
【0071】
別の実施形態では、前駆体溶液の加熱には、室温に近い温度からより高い温度への最初の昇温の後、その温度が比較的長時間(例えば、約1分より長く、約5分より長く、約30分より長く、約1時間より長く、約2時間より長く、約4時間より長く)、殆ど一定(例えば、約10℃以内で、約5℃以内で、約2℃以内で、約1℃以内で一定)に保持される1つ以上の工程が含まれる。これらの実施形態では、前駆体溶液の加熱には、比較的長時間(例えば、約1分より長く、約5分より長く、約30分より長く、約1時間より長く、約2時間より長く、約4時間より長く)、温度を殆ど一定(例えば、約10℃以内で、約5℃以内で、約2℃以内で、約1℃以内で一定)に保持したままで、1種類以上のガス雰囲気(例えば、水蒸気圧が比較的高いガス雰囲気ならびに水蒸気圧が比較的低いガス雰囲気)を使用することが含まれる。例としては、水蒸気圧が高い雰囲気においては、水蒸気圧は約5Torrから約40Torr(例えば、約32Torrのように、約25Torrから約38Torr)である。水蒸気圧が低い雰囲気は、約1Torrより低い水蒸気圧(例えば、約0.1Torrより低い、約10ミリTorrより低い、約5ミリTorr)を有する。
【0072】
ある特定の実施形態では、前駆体溶液の加熱には、コートされた試料を予熱された炉(例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、高くても約300℃、高くても約250℃の温度、約200℃)に入れることが含まれる。炉内のガス雰囲気は、例えば、全ガス圧が約760Torrで、所定の水蒸気分圧で(例えば、少なくとも約10Torr、少なくとも約15Torr、高くても約25Torr、高くても約20Torr、約17Torr)、残りの部分は酸素分子であり得る。コートされた試料が炉の温度に達した後、所定の昇温速度で(例えば、少なくとも約0.5℃/分で、少なくとも約0.75℃/分で、早くても約2℃/分で、早くても約1.5℃/分で、約1℃/分で)炉の温度を上昇させる(例えば、少なくとも約225℃まで、少なくとも約240℃まで、高くても約275℃まで、高くても約260℃まで、約250℃)。最初の加熱工程で用いられたものと同じ公称ガス雰囲気で、この工程を実施することが可能である。次に、所定の昇温速度で(例えば、少なくとも約5℃/分で、少なくとも約8℃/分で、早くても約20℃/分で、早くても約12℃/分で、約10℃/分で)炉の温度をさらに上昇させ得る(例えば、少なくとも約350℃まで、少なくとも約375℃まで、高くても約450℃まで、高くても約425℃まで、約450℃まで)。最初の加熱工程で用いられたものと同じ公称ガス雰囲気で、この工程を実施することが可能である。
【0073】
いくつかの実施形態で、超電導体材料の調製は、前駆体溶液のスロット・コーティング(例えば、その上に次々に配置された、Gd、YSZおよびCeOなどの、エピタキシャル緩衝層および/またはキャップ層(cap layer)を有するテクスチャ化ニッケル・テープで形成されたテープのような、テープ上への)を含む。HOを含む雰囲気(例えば、約5torrのHOから約15torrのHO、約9torrのHOから約13torrのHO、約11torrのHO)中で、コートされた前駆体膜を成膜させることが可能である。雰囲気の残りの部分は不活性ガス(例えば、窒素)であり得る。成膜中の全圧は、例えば、約760torrであり得る。前駆体の膜を、例えば、コートされたテープを、温度勾配を有する管状炉(例えば、直径が約6.35cm(2.5インチ)の管状炉)に通して移動させることにより、分解させることが可能である。膜の処理が前記の方法によるものと殆ど同じになるように、炉中の勾配のそれぞれの温度およびガス雰囲気、ならびに各勾配を通る試料の移動速度を選択し得る。
【0074】
前駆体溶液の前記の処理により、金属オキシハライド中間体を得ることが可能である。この金属オキシハライド中間体の欠陥密度は比較的小さいことが好ましい。金属オキシハライド中間体をさらに加熱して、所望の超電導体層を生成させることが可能である。通常、この工程は、約700℃から約825℃の温度に加熱することにより実施される。この工程の際、公称ガス雰囲気は通常、残りの部分を窒素および/またはアルゴンとして、約0.1Torrから約50Torrの酸素および約0.1Torrから約150Torr(例えば、約12Torr)の水蒸気を含む。
【0075】
別法として、次に、中間体は、湿気を減らした窒素−酸素ガス混合物(例えば、約0.5%から約5%の酸素を含む組成を有する)中で、約860℃より低い温度(例えば、約810℃より低い温度)に約1時間加熱される。任意選択で、約860℃から約950℃の温度に、約5から約25分間、塗膜をさらに加熱し得る。続いて、塗膜は、湿気を含まない酸素中で少なくとも約8時間、約400℃から約500℃の温度に加熱される。次に、湿気を含まない静止酸素中で、塗膜を室温に冷却する。この手法は、米国特許第5,231,074号に記載されている。
【0076】
他の実施形態では、金属オキシハライドは、温度、気体状の水の蒸気圧あるいは両方を調節することにより選択されるある転化速度で、酸化物超電導体に転化される。例えば、25℃で、相対湿度100%より少ない(例えば、相対湿度95%より少ない、相対湿度50%より少ない、あるいは相対湿度3%より少ない)水分含量を有する処理ガス中で、いくらかの酸化物超電導体を生成させるように、金属オキシハライドを転化して、次に、より水分含量の多い(例えば、25℃で、相対湿度が約95%から相対湿度が約100%)処理ガスを用いて転化を完了させることが可能である。金属オキシハライドを転化させる温度は、約700℃から約900℃の範囲(例えば、約700℃から約835℃)にある。処理ガスは、約1体積%の酸素ガスから約10体積%の酸素ガスを含み得る。
【0077】
特定の実施形態では、必要とされる反応条件となるまで酸化物層の生成を妨げることにより、望ましくないa軸配向酸化物層粒子の生成を最少にするような、溶液を処理する方法が用いられ得る。
【0078】
フッ化物含有前駆体の分解および反応のために開発された従来の方法は、膜表面に平行な方向に分解炉に導入され、膜/ガスの界面で安定な境界層となる、一定で、ゆっくり動く非乱流処理ガスを使用する。酸化物層前駆体の分解と反応に通常用いられる装置のタイプでは、このガス/膜の界面層を通してのガス状の反応物と生成物の拡散が、全体の反応速度を律しているようである。薄く、面積の小さい膜(例えば、厚さが約0.4マイクロメートルより小さく約1平方センチメートルより小さい)は、膜内へのHOの拡散および膜外へのHFの拡散が、試料が処理温度に達するまでYBaCu7−x相の生成が認められる程の速度では始まらないような速度で起こる。しかし、膜の厚さあるいは面積が大きくなると、他のパラメータが同じであれば、膜内および外へのガスの拡散速度は小さくなる。このために、反応時間はより長くなり、また/またはYBaCu7−x相の生成は不完全になり、結果として結晶学的組織は減少し、密度は低くなり、また臨界電流密度は小さくなる。このように、YBaCu7−x相生成の全体としての速度は、かなりの程度、膜表面の境界層を通してのガスの拡散により決められる。
【0079】
これらの境界層を無くする1つの手法は、膜表面に乱流をつくりだすことである。このような条件下では、界面の局所的ガス組成はバルク・ガスと本質的に同一(すなわち、pHOは一定で、pHFはほぼゼロ)に保たれる。こうして、膜内のガス状の生成物/反応物の濃度は、ガス/膜の表面の境界層条件を通しての拡散によるのではなく、むしろ膜を通しての拡散により支配される。基板表面でのa軸配向YBaCu7−x粒子の核生成をできるだけ少なくするために、望ましい処理条件になるまで、YBaCu7−x相の生成を抑える。例えば、望ましい処理温度に達するまで、YBaCu7−x相の生成を抑えることが可能である。
【0080】
一実施形態では、1)ゆっくりと動く(非乱流)処理ガス流、その結果としての、昇温中における膜/ガスの界面での安定な境界層の形成、および2)早い(乱流)処理ガス流、その結果としての、膜/ガスの界面での境界層の撹乱、からなる組合せが用いられる。例えば、7.62cm(3インチ)管状炉では、周囲温度から所望の処理温度までの昇温中、流れは約0.5から約2.0L/分でよい。その後、膜の処理中には約4から約15L/分のある値に流れを増やすことが可能である。このようにして、昇温中の低温での望ましくないa軸核生成および成長の量を最少にしながら、高温でYBaCu7−xの生成およびエピタキシャル組織形成の速度を大きくすることが可能である。これらの方法によれば、a軸核生成粒子の存在量は、走査電子顕微鏡により求めた場合、望ましくは約1%以下である。
【0081】
好ましい実施形態では、層14は比較的大きな臨界電流密度(例えば、少なくとも約0.5×10アンペア/cm)を有する。好ましくは、層14の臨界電流密度は、1μV/cm基準を適用して、自己電磁界(すなわち、印加電磁界なし)下、77Kでの輸送測定により求めた場合、少なくとも約0.5×10アンペア/cm、より好ましくは少なくとも約1×10アンペア/cm、また最も好ましくは少なくとも約2×10アンペア/cmである。
【0082】
ある特定の実施形態では、アンペア/単位幅の単位で求めた場合に、層14は比較的大きな臨界電流を有し得る。例として、アンペア/cm幅の単位で臨界電流を表すことが可能である。言うまでもなく、層14の幅が1cmである必要はない。むしろ、様々な幅の材料に対する電流と幅の比の値を標準化するのに好都合なように、この値を使用し得る。例として、電流が100アンペアで幅が0.5センチメートルの試料は、臨界電流は200アンペア/cm幅である。200アンペアの電流が流れ、幅が1センチメートルの試料もまた、臨界電流が200アンペア/cm幅である。好ましい実施形態では、層14の臨界電流は、少なくとも約200アンペア/cm幅(例えば、少なくとも約300アンペア/cm幅、少なくとも約500cm/cm幅)である。
【0083】
好ましい実施形態では、層14はよく秩序化している(例えば、2軸テクスチャあるいは立方体テクスチャ)。層14の厚さは、少なくとも約1マイクロメートル(例えば、厚さが少なくとも約2マイクロメートル、厚さが少なくとも約3マイクロメートル、厚さが少なくとも約4マイクロメートル、厚さが少なくとも約5マイクロメートル)である。
【0084】
図2は本発明の方法により形成し得る製品20からなる実施形態を示す。製品20は層12および14を含む。製品20はまた、層12と14の間に置かれた層16を含み、層16は表面13上に置かれ、また層14は層16の表面17上に置かれている。
【0085】
層16は、層14を支持し得る何らかの材料で形成される。例えば、緩衝層材料からなる1つ以上の層で層16を形成することが可能である。緩衝層材料の例には、銀、ニッケル、TbO、GaO、CeO、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、Y、LaAlO、SrTiO、Gd、LaNiO、LaCuO、SrRuO、NdGaO、NdAlOなどの金属および金属酸化物および/または当業者に周知のいくつかの窒化物が含まれる。例えば、エス エス ショウプら(S.S.Shoup et al.)、J.Am.Cer.Soc.、第81巻、3019ページ;ディー ビーチら(D.Beach et al.)、Mat.Res.Soc.Symp.Proc.、第495巻、263ページ(1988年);エム パランタマンら(M.Paranthaman et al.)、Superconductor Sci.Tec.、第12巻、319ページ(1999年);ディー ジェー リーら(D.J.Lee et al.)、Japanese J.Appl.Phys.、第38巻、L178ページ(1999年)およびエム ダブリュ ルピッチら(M.W.Rupich et al.)、I.E.E.E.Trans.on Appl.Supercon.、第9巻、1527ページに開示されるような有機金属成膜法(metalorganic deposition)を含む溶液相技法を用いて、緩衝層を調製することが可能である。
【0086】
ある特定の実施形態では、テクスチャ化基板上に1層の酸化物層または酸化物層の何らかの組合せを成膜させるために、溶液コーティング法を使用してもよい;しかし、それらは、テクスチャ金属基板上の最初の(シード(seed))層を成膜させるために特に応用し得る。シード層の役割は、1)次にくる酸化層の成膜中、基板に対して酸化性の雰囲気で実施されるとき(例えば、酸化物ターゲットを使用するイットリア安定化ジルコニアのマグネトロン・スパッタリング成膜)、基板を酸化から保護すること;および2)次の酸化物層の成長のエピタキシャル・テンプレート、を提供することである。これらの要求を満たすために、シード層は、金属基板の全表面上でエピタキシャル成長し、また次のエピタキシャル酸化物層の成膜を妨げる可能性がある如何なる汚染物質も含まないようにすべきである。
【0087】
酸化物緩衝層の形成は、下にある基板層の濡れをよくするように実施され得る。さらに、特定の実施形態では、金属アルコキシド前駆体(例えば、「ゾル・ゲル前駆体」)を用いて、金属酸化物層の形成を実施することが可能であり、金属アルコキシド前駆体を使用する既知の他の方法より大幅に炭素汚染物質のレベルを低下させることが可能である。
【0088】
酸化物層の下にある基板が、その酸化物層を形成するのに用いられる前駆体溶液により十分に覆われていないと、その酸化物層は、次の酸化層の成膜中、基板に対して酸化性の雰囲気で実施されるとき、基板を酸化から十分に保護しないであろうし、次の層のエピタキシャル成長のテンプレートとして完全ではないであろう。ゾル・ゲル前駆体膜を加熱することによって、前駆体が基板の粒界領域に流れ込めるようにすることにより完全な被覆が可能になる。加熱は比較的低温、例えば約80℃から約320℃、例えば約100℃から約300℃、あるいは約100℃から200℃である。このような温度に、約1から約60分、例えば約2から45分、あるいは約15から約45分、保持される。より短時間でより高温を用いて加熱工程を実施することも可能であり、例えば、300℃の温度で2分以内に膜を処理することが可能である。
【0089】
ゾル・ゲル前駆体膜からの余分な溶剤の乾燥の後、あるいはそれと同時に、この加熱工程を実施することが可能である。しかし、それは前駆体膜の分解の前に実施しなければならない。
【0090】
還元雰囲気(例えば、4%H−Ar)での通常の酸化物膜調製に伴う炭素汚染は、前駆体膜の有機成分の除去が不完全なことによると考えられる。酸化物層内あるいはその近くの炭素汚染物質、CおよびCの存在は、それらが酸化物層のその後のエピタキシャル成膜を変え得るので有害である。さらに、膜内に埋め込まれ捕捉された炭素含有汚染物質は、次の酸化層の処理工程中に、酸化雰囲気を利用して酸化されるであろう。炭素含有汚染物質の酸化により、COの生成、それによる膜中の泡の生成、および膜の剥離の可能性、あるいは複合構造体の他の欠陥が起こり得る。したがって、金属アルコキシドの分解で生ずる炭素含有汚染物質は、酸化物層が形成された後だけは、酸化状態にさせることは望ましくない。好ましくは、炭素含有汚染物質は、分解が起こるときに酸化される(またこの故にCOとして膜構造体から除去される)。また、膜表面上あるいはその近くの炭素含有化学種の存在も、次の酸化物層のエピタキシャル成長を妨げる可能性がある。
【0091】
特定の実施形態によれば、金属基板あるいは緩衝層へのコーティング後、その前駆体溶液は空気乾燥され、次に初期分解工程で加熱され得る。別法として、前駆体溶液は、金属基板に対して還元性の雰囲気下に、直接に初期分解工程で加熱され得る。酸化物層が最初に金属基板上で望ましいエピタキシャル方位に核生成されると、例えば、水蒸気あるいは酸素を加えることにより、処理ガスの酸素レベルが上げられる。核生成工程は、典型的な条件下で起こるのに約5分から約30分必要である。
【0092】
ある特定の実施形態では、エピタキシャル緩衝層は、低真空蒸着法(例えば、少なくとも約1×10−3Torrの圧力で実施される方法)を用いて形成され得る。この方法は、緩衝層材料からなる比較的高速かつ/または集中したガス・ビームを用いてエピタキシャル層を形成することからなる。
【0093】
ガス・ビーム中の緩衝層材料は、約1メートル/秒より大きい(例えば、約10m/秒より大きい、あるいは約100m/秒より大きい)速度を有し得る。ビーム中の緩衝層材料の少なくとも約50%がターゲットの表面に入射し得る(例えば、ビーム中の緩衝層材料の少なくとも約75%がターゲットの表面に入射し得る、あるいはビーム中の緩衝層材料の少なくとも約90%がターゲットの表面に入射し得る)。
【0094】
この方法は、ターゲット表面(例えば、基板表面あるいは緩衝層表面)を低真空雰囲気に置くこと、ならびにそれ以外は同じ条件下の高真空雰囲気(例えば、1×10−3Torrより低くて、約1×10−4Torrより低いような)で、ターゲット表面に所望の材料のエピタキシャル層が形成されるしきい値温度より高い温度に、ターゲット表面を加熱することからなる。緩衝層材料および任意選択で不活性キャリア・ガスを含むガス・ビームが、少なくとも約1メートル/秒の速度でターゲット表面に向けられる。状態調節ガス(conditioning gas)が低真空雰囲気に供給される。この状態調節ガスは、ガス・ビームに含まれているか、あるいは状態調節ガスは別の方法で低真空雰囲気に導入され得る(例えば、その雰囲気中へ漏らされて)。状態調節ガスはターゲット表面に存在する化学種(例えば、汚染物質)と反応してその化学種を除去することが可能で、これはエピタキシャル緩衝層の核生成を増進させ得る。
【0095】
高真空で(例えば、大きくても約1×10−4Torrで)物理蒸着を用いてエピタキシャル層を成長させるのに用いられる温度より低い表面温度でも、低真空(例えば、少なくとも約1×10−3Torr、少なくとも約0.1Torr、あるいは少なくとも約1Torr)を用いて、エピタキシャル緩衝層をターゲット表面に成長させることは可能である。ターゲット表面の温度は、例えば約25℃から約800℃(例えば、約500℃から約800℃、あるいは約500℃から約650℃)であり得る。
【0096】
エピタキシャル層は、例えば、少なくとも約50オングストローム/秒のような比較的高速で成長し得る。
これらの方法は、2000年2月22日に発行され、「Low Vacuum Process for Producing Epitaxial Layers(エピタキシャル層生成のための低真空処理)」の標題を有する米国特許第6,027,564号;2000年2月8日に発行され、「Low Vacuum Process for Producing Superconductor Articles with Epitaxial Layers(エピタキシャル層を有する超電導体製品の低真空製造法)」の標題を有する米国特許第6,022,832号に記載されている。
【0097】
別の実施形態では、大きな処理量での、金属または金属酸化物ターゲットのスパッタリングにより、エピタキシャル緩衝層を成膜させる。基板の加熱は、抵抗加熱あるいはエピタキシャル・モルフォロジーを得るためのバイアスおよび電位により実施され得る。金属または金属酸化物ターゲットにより酸化物エピタキシャル膜を生成させるために、成膜ドウェル(dwell)を用いてもよい
【0098】
還元雰囲気内で基板表面を、エネルギーを有するイオンに曝すことにより、基板上に通常存在する酸化物層を除去することが可能で、イオン・ビーム・エッチングとしても周知である。イオン・ビーム・エッチングは、基板から残留酸化物あるいは不純物を除去して成膜前に基板を清浄し、酸化物が殆ど無くて好ましくは2軸テクスチャ化した基板表面を形成するために使用される。これは、基板と後で成膜する材料との間の接触をよくする。エネルギーを有するイオンは様々なイオン・ガン、例えば、基板表面に向けてArのようなイオンを加速することにより発生させ得る。好ましくは、150eVより大きなビーム電圧を有するグリッド付きイオン源が用いられる。別法として、基板に近い領域でプラズマを安定化させることが可能である。この領域内で、イオンは基板表面と化学的に相互作用して、その表面から、金属酸化物を含めて、材料を除去し、殆ど酸化物のない金属表面をつくり出す。
【0099】
基板から酸化物層を除去する別の方法は、基板に電気的バイアスをかけることである。基板テープあるいは線材は、アノードの電位に対してマイナスにされた場合、成膜の前(ターゲットが遮断されている場合)あるいは成膜の際、ガスのイオンにより定常的に衝突を受けるであろう。このイオンの衝突は、そうしなければ膜に組み入れられるかもしれない吸収ガスを取り除いて線材あるいはテープの表面を清浄にし、また高い成膜温度に基板を加熱する。このようなイオンの衝突は、エピタキシャル膜の密度あるいは平滑性を上げることにより、さらに有用になる。
【0100】
適切にテクスチャ化され、殆ど酸化物がない基板表面を生成させた上で、緩衝層の成膜を始めることが可能である。それぞれが単一の金属あるいは酸化物層を含む、1つ以上の緩衝層を使用してもよい。いくつかの実施形態では、基板は、これらの実施形態の成膜方法の工程を実施するのに適合した装置を通る。例えば、基板が線材またはテープの形態である場合、送出しリール(payout reel)から引取りリール(take−up reel)まで真っ直ぐに基板を通すことが可能で、基板はリール間を通りながら処理され得る。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、基板材料は、基板材料の融点の約90%より低いが、真空雰囲気内において所定の成膜速度で基板材料上に所望の材料のエピタキシャル層を生成させるためのしきい値温度よりは高い、高温に加熱される。適切な緩衝層の結晶構造および緩衝層の平滑性を形成するために、高い基板温度が通常好ましい。金属上で酸化物層が成長するための典型的な下限温度は、約200℃から800℃、好ましくは500℃から800℃、またより好ましくは650℃から800℃である。放射加熱、対流加熱、および伝導加熱などの様々な周知の方法は、長さの短い(2cmから10cm)基板に適しているが、長さのより長い(1mから100m)ものに対しては、これらの方法はうまく適合しないこともある。また、製造工程において望ましい大きな処理量速度を実現するために、基板の線材またはテープは、処理中、成膜装置(station)の間を動いているか、あるいは運ばれていなければならない。特定の実施形態によれば、基板は抵抗加熱により、すなわち金属基板に電流を流すことにより加熱され、これは長尺製造工程に合わせて容易に規模を拡大することが可能である。この手法は、これらのゾーンの間での早い移動を直ちに可能にする。温度制御は、光高温計および閉ループ・フィードバック・システムを用いて、加熱されている基板に供給される電力を制御することにより実施され得る。基板の少なくとも2つの異なるセグメントで基板に接触する電極により、電流を基板に供給することが可能である。例えば、基板が、テープまたは線材の形態で、リールの間を通される場合、リール自体が電極として働くことが可能であろう。別法として、ガイドがレール間で基板を運ぶのに用いられた場合、このガイドが電極として働くことが可能であろう。電極はまた、何れのガイドあるいはリールとも完全に独立していることも同様に可能であろう。いくつかの実施形態では、電流は電流ホイール(current wheel)の間でテープに供給される。
【0102】
成膜が適当な温度にあるテープ上に実施されるためには、テープ上に成膜される金属あるいは金属酸化物を、電流ホイールの間の領域で成膜させることが望ましい。電流ホイールは有効なヒートシンクになり、従ってホイール近傍の領域のテープは冷却されるので、ホイールの近傍の領域では材料を成膜させないことが望ましい。スパッタリングの場合、テープ上に成膜される帯電材料が、スパッタリング・フラックスの進路近傍の他の帯電表面あるいは材料により影響を受けないことが望ましい。この理由で、スパッタリング・チャンバは、チャンバ壁面、および他の成膜用部品を含めて、スパッタリング・フラックスに影響を及ぼすかあるいは偏向させる可能性がある部品および表面を、それらが所望の真っ直ぐなフラックス進路ならびに適正な成膜温度のテープの領域での金属あるいは金属酸化物の成膜を変えないように、成膜ゾーンから離れた位置に置くように配置構成されていることが好ましい。
【0103】
ある特定の実施形態では、層14が状態調節された表面に形成されるべく、層16を状態調節する(例えば、熱的に状態調節し、かつ/または化学的に状態調節する)ことが可能である。層16の状態調節された表面は、2軸テクスチャ(例えば、(113)[211])、あるいは立方体テクスチャ(例えば、(100)[011]または(100)[011])されたものであり得るし、約20°より小さい(例えば、約15°より小さい、約10°より小さい、あるいは約5°から約10°)半値幅を有するX線回折極点図形のピークを有し得るし、高解像度走査電子顕微鏡あるいは原子間力顕微鏡により求められたときに状態調節前より平滑であり得るし、比較的高密度であり得るし、比較的小さい不純物密度を有し得るし、他の材料層(例えば、超電導層あるいは緩衝層)への接着性を向上し得るし、また/あるいはX 線回折により求めたときに比較的小さいロッキング・カーブの幅を示し得る。
【0104】
本明細書では、「化学的状態調節」は、緩衝層あるいは超電導体材料層などの材料層表面に変化をもたらし、その結果得られる表面が1つ以上の前述の性質を示すべく、1種以上の化学種(例えば、気相化学種および/または溶液相化学種)を使用する処理を指す。
【0105】
本明細書では、「熱的状態調節」は、緩衝層あるいは超電導体材料層などの材料層表面に変化をもたらし、その結果得られる表面が1つ以上の前述の性質を示すべく、化学的状態調節を伴い、あるいは伴わずに、高温を使用する方法を指す。熱的状態調節は、化学的状態調節を用いて、あるいは使用することなく実施され得る。好ましくは、熱的状態調節は制御された雰囲気中でおこなわれる(例えば、制御されたガス圧力、制御されたガス雰囲気および/または制御された温度)。
【0106】
熱的状態調節は、層16の表面を、成膜温度または下層の結晶化温度より少なくとも5℃高い(例えば、成膜温度または下層の結晶化温度より約15℃から約500℃高い、成膜温度または下層の結晶化温度より約75℃から約300℃高い、あるいは成膜温度または下層の結晶化温度より150℃から300℃高い)温度に加熱することからなる。このような温度の例は、約500℃から約1200℃(例えば、約800℃から約1050℃)である。熱的状態調節は、大気圧より高いか、大気圧より低いか、あるいは大気圧であるような様々な圧力条件下で実施され得る。熱的状態調節はまた、化学的状態調節雰囲気(例えば、酸化性ガス雰囲気、還元性ガス雰囲気)あるいは不活性ガス雰囲気などの様々なガス雰囲気を用いて実施され得る。
【0107】
本明細書では、「成膜温度」は状態調節された層に成膜させた温度を表す。
本明細書では、「結晶化温度」は、材料層(例えば、下層)が結晶質形態となる温度を表す。
化学的状態調節は、真空技法(例えば、反応性イオン・エッチング、プラズマ・エッチングならびに/またはBFおよび/またはCFなどのフッ素化合物を使用するエッチング)を含み得る。化学的状態調節法は、例えば、Silicon Processing for the VLSI Era、第1巻、エス.ヴォルフとアール エヌ タンバ(S.Wolf and R.N.Tanber)編、539〜574ページ、ラティス・プレス(Lattice Press)、カルフォルニア州サンセット・パーク(Sunset Park、CA)、1986年、に開示されている。
【0108】
別法としてあるいは追加として、化学的状態調節は、Metallurgy and Metallurgical Engineering Series、第3版、ジョージ エル ケール(George L.Kehl)、マックグローヒル(McGraw−Hill)編、1949年、に開示されるような溶液相技法を含み得る。このような技法は、下層の表面に比較的薄い酸の溶液(例えば、約10パーセント未満の酸、約2パーセント未満の酸、あるいは約1パーセント未満の酸を含む酸の溶液)を接触させることからなる。薄い酸の溶液の例には、過塩素酸、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、酢酸および緩衝酸溶液が含まれる。一実施形態では、薄い酸溶液は約1パーセントの硝酸水溶液である。ある特定の実施形態では、緩衝層あるいは超電導体層の表面を状態調節するために、臭化物含有および/または臭素含有組成物(例えば、液体臭素溶液)を使用してもよい。
【0109】
別法として、層16を、前記のようにして調製し得る超電導体材料で形成することが可能である。層16が超電導体材料で形成される実施形態では、層16と14の相対的な厚さは、製品20を調製するために用いられた方法および/または製品20の想定される用途に応じて変わり得る。例えば、層14が層16より厚いということがあり得るし、あるいは層16が層14より厚いということがあり得る。例えば、いくつかの実施形態では、層16の厚さは、約1マイクロメートル未満(例えば、約0.05マイクロメートルから約0.2マイクロメートルのような、約0.5マイクロメートル未満)であり得るし、また層14の厚さは約1マイクロメートル超(例えば、約2マイクロメートル超、約3マイクロメートル超、約4マイクロメートル超、約5マイクロメートル超)であり得る。
【0110】
層16が超電導体材料で形作られる実施形態では、層14と16を合わせた厚さは、製品20を調製するために用いられた方法および/または製品20の想定される用途に応じて変わり得る。例えば、層14と層16を合わせた厚さは2マクロメートル未満、あるいは2マイクロメートル超であり得る。好ましくは、層14と層16を合わせた厚さは、約1マイクロメートルより大きい(例えば、約2マイクロメートルより大きい、約3マイクロメートルより大きい、約4マイクロメートルより大きい、約5マイクロメートルより大きい、約6マイクロメートルより大きい、約7マイクロメートルより大きい、約8マイクロメートルより大きい、約9マイクロメートルより大きい、約10マイクロメートルより大きい)。
【0111】
層16が超電導体材料で形成される実施形態では、前記のように、化学的および/または熱的に、層16の表面層を状態調節することが可能である。
層16が超電導体材料で形成されている実施形態では、層14を、分散体として成膜した固体状態または半固体状態の前駆体材料から形成してもよい。これらの前駆体溶液により、例えば、最終のYBCO超電導層のBaCOが殆ど除去され、また同時に膜の核生成と成長が制御できるようになる。
【0112】
前駆体溶液の処方には2つの一般的な手法が存在する。1つの手法では、前駆体溶液のカチオン成分が、元素として、あるいは好ましくは、他の元素と複合して、固体の構成成分を形成する。前駆体溶液は、適切な基板、介在層をコートした基板、あるいは緩衝層をコートした基板の表面上に、超微粒子をコートし、固着させ得るべく分散した超微粒子の形態で供用される。エアロゾル・スプレー、蒸発、あるいは所望の化学組成と大きさが得られるように制御し得る類似の技法により、これらの超微粒子を作製することが可能である。これらの超微粒子は約500nmより小さく、好ましくは約250nmより小さく、より好ましくは約100nmより小さく、またより一層好ましくは約50nmより小さい。一般に、この粒子は所望の最終膜厚の約50%の厚さより小さく、所望の最終膜厚の、好ましくは約30%、最も好ましくは約10%の厚さより小さい。例えば、前駆体溶液は、キャリア中に存在する、殆ど化学量論的に混合された1種以上の超電導層の成分からなる超微粒子を含み得る。このキャリアは、溶剤、可塑剤、バインダ、分散剤、あるいは当技術分野においてこのような粒子の分散体を生成するとして周知の類似の系からなる。それぞれの超微粒子は、そのような成分からなる組成が殆ど一様で均質な混合物からなる。例えば、各粒子は、殆ど化学量論的に混合された、BaF、および希土類酸化物、および酸化銅、あるいは希土類/バリウム/銅オキシハライド等からなる。このような粒子を分析したときに、希土類:バリウム:銅の比が、殆ど化学量論的に1:2:3であり、フッ素:バリウムの比が殆ど化学量論的に2:1であることが示されれば望ましい。これらの粒子は、形態が結晶質、あるいは非晶質のいずれでもよい。
【0113】
第2の手法では、前駆体の構成成分は、元素供給源により、あるいは所望の成分からなる殆ど化学量論的な混合物により調製され得る。例えば、所望のREBCO成分(例えば、YBaCu7−x)の殆ど化学量論的な混合物からなる固体、あるいはそれぞれが所望の最終的な超電導層の特定の成分を含むいくつかの固体(例えば、Y、BaF、CuO)の蒸発させて、前駆体溶液製造のための超微粒子を製造するために使用してもよい。別法として、所望のREBCO成分の殆ど化学量論的な混合物を含む有機金属溶液の、スプレードライあるいはエアロゾル化を、前駆体溶液で用いられる超微粒子を製造するために使用してもよい。別法として、1種以上のカチオン成分を、有機金属塩もしくは有機金属化合物の形状で前駆体溶液に使用することが可能であり、またこれらの成分は溶液中に存在し得る。有機金属溶液は、他の固体状態元素もしくは混合物の溶剤、あるいはキャリアともなり得る。この実施形態によれば、分散剤および/またはバインダを前駆体溶液から殆ど除去することが可能である。例えば、前駆体溶液には、殆ど1:3の化学量論比の希土類酸化物および酸化銅からなる超微粒子が、可溶化されたバリウム含有塩、例えば、メタノールなどの有機溶剤に溶解されたバリウム−トリフルオロ酢酸と共に含まれ得る。
【0114】
前駆体溶液は、殆ど均一な厚さの塗膜が得られるように工夫されたいくつかの方法により、基板あるいは緩衝層処理基板に塗布され得る。前駆体溶液は、例えば、スピン・コーティング、スロット・コーティング、グラビア・コーティング、ディップ・コーティング、テープ・キャスティング、あるいはスプレー法を用いて塗布され得る。基板は、一様にコートされて、約1から10マイクロメートル(例えば、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約4マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル)の超電導膜となることが望ましい。
【0115】
層16が超電導体材料で形成される実施形態では、製品20で14および16を合わせた層の臨界電流密度が比較的大きいということがあり得る。製品20で14と16を合わせた層の臨界電流密度は、1μV/cm基準を適用して、自己電磁界の下で、77Kでの輸送測定により求めた場合、好ましくは少なくとも約5×10アンペア/cm、より好ましくは少なくとも約1×10アンペア/cm、例えば少なくとも約2×10アンペア/cmである。
【0116】
前記では、2つの材料層(すなわち、介在層がない)および3つの材料層(すなわち1つの介在層)を有する多層製品について説明したが、本発明はこの点に限定されない。複数の介在層を使用することも可能である。介在層のそれぞれは、緩衝層材料あるいは超電導体材料で形成され得る。例えば、図3は、本発明のさらに別の実施形態による多層超電導体30を示す。製品30は層12、14および16を含む。製品30は、それぞれ表面19および23を有する、さらなる(複数の)介在層18および22を含む。層18および22は層16と14の間に配置されている。各層16、18および22は、緩衝層材料あるいは超電導体材料で形成され得る。さらに、表面19および23は、本明細書に記載される方法を用いて調製され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、超電導品は基板と超電導体材料との間に3つの緩衝層を含む。YもしくはCeOからなる層(例えば、約20ナノメートルから約30ナノメートルの厚さ)が、基板表面上に成膜されるか(例えば、電子ビーム蒸着法を用いて)、あるいはGdの層が溶液から成膜される。YSZの層(例えば、0.5マイクロメートルの厚さのような、約0.2マイクロメートルから約1マイクロメートルの厚さ)が、スパッタリングを用いてY、CeOあるいはGd層の表面上に成膜される(例えば、マグネトロン・スパッタリングを用いて)。CeO層(例えば、約20ナノメートルの厚さ)がYSZ表面上に成膜される(例えば、マグネトロン・スパッタリングを用いて)か、あるいはGdの層が溶液によりYSZ表面上に成膜される。本明細書に記載されたようにして、1つ以上の緩衝層は、化学的および/または熱的に状態調節され得る。
【0118】
本発明による超電導体製品はまた、キャップ材料の層を含むことが可能であり、キャップ材料層を生成させるのに用いられる反応条件下では、超電導体材料(例えば、YBaCu7−x)との反応生成物が熱力学的に不安定な金属もしくは合金でキャップ材料層を形成することが可能である。例示的なキャップ材料には、銀、金、パラジウムおよび白金が含まれる。
【0119】
さらに、前記では、ある特定の構造を有する多層製品について説明したが、本発明はこの点に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、第1および第2の高温超電導体がk−トされた領域を含む多層高温超電導体が提供される。各領域は、基板、基板上に成膜された少なくとも1つの緩衝層、高温超電導体層、および任意選択でキャップ層を含む。第1および第2のキャップ層で、第1および第2の高温超電導体がコートされた領域を接合するか、あるいは、好ましくは金属の層を介在させて接合することが可能である。例示的な接合法にはハンダ付けおよび拡散結合が含まれる。
【0120】
このような多層構造は、電流の分散(current sharing)をよくし、交流状態でのヒステリシス損失をより少なくし、電気的および熱的安定性を増し、機械的性質を向上させ得る。十分な電流容量、寸法安定性、および機械的強度を有するように、多数のテープを互いに積み重ね、および/またはラミネートして、有用な伝導体が製造され得る。このような実施形態はまた、コートされたテープ・セグメントの接合ならびにコートされた積層テープまたは伝導体部品の端末加工のための手段も提供する。
【0121】
さらに、この構造は交流用途でかなりの利益をもたらし得ると期待される。AC損失は、伝導体、より詳細には、その中を電流が流れる断面積内の実効臨界電流密度に逆比例するということが示される。マルチフィラメント伝導体では、これは、束の回りの如何なるシース材料も除外した、超電導フィラメントの「束」の面積であろう。面−面(face to face)構造では、「束」の臨界電流密度は高温超電導体膜およびキャップ層構造体の厚さのみからなるであろう。1つ以上の層でキャップ層を形成することが可能であり、また好ましくは、キャップ層は少なくとも1つの貴金属層を含む。本明細書では、「貴金属」は、その反応生成物がHTSテープを調製するのに用いられる反応条件では熱力学的に不安定な金属である。例示的な貴金属には、例えば、銀、金、パラジウム、および白金が含まれる。貴金属はHTS層とキャップ層の間の界面抵抗を小さくする。さらに、キャップ層は一般の金属(例えば、銅もしくはアルミニウムあるいは通常の伝導金属の合金)からなる第2の層を含み得る。直流での応用においては、与えられた用途に対して必要とされる電流容量と幾何学的形態をもたせるために、さらなる面−面線材が束ねられるか、あるいは積み重ねられるであろう。
【0122】
さらに、テープ表面上の高温超電導体膜を、局所的破れ(local break)、すなわちテープの長手方向(電流の流れる方向)にのみ沿う膜の非超電導領域あるいはストライプをつくり出すために処理することが可能であろう。このとき、高温超電導体膜上に成膜されたキャップ層は、延性の通常の伝導金属領域で非超電導帯に橋をかけるのに役立つであろう。細いストリップあるいはフィラメントの端部を詰めてずらせて積ねることにより、ランニング・ボンド・レンガ模様(running bond brick pattern)に似て、電流が、キャップ層を横切り隣接するフィラメントへと、いくつかの細い超電導フィラメントへ移動することができ、さらに重複性(redundancy)が増し安定性が向上するであろう。
【0123】
全ての実施形態において、高温超電導体膜を密封すべくシールし、膜への、また必要であれば膜から基板への電流の移動ができるように、伝導体の端部に沿って一般の金属層を含め得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、被覆された伝導体は、交流での応用で発生する損失を最少にするような方法で作成され得る。この伝導体は多数の伝導経路を有するように作成され、それぞれの経路は、少なくとも2つの伝導層にまたがって延び、さらにこれらの層の間に延びる、経路セグメントからなる。
【0125】
各超電導層は、一方の端部からもう一方の端部へ、その層の幅に渡って延びる、複数の伝導経路セグメントを有し、その経路セグメントはまた超電導層の長手方向に沿った成分を有する。超電導層表面の経路セグメントは層間接続によって電気的に接続しており、それによって、電流が1つの超電導層から別の超電導層へ流れることを許容する。2層タイプの実施例において、経路セグメントからなる複数の経路は、電流が2つの超電導層の間で交互に流れ、層間接続を介して層を横断するように、周期性を有する設計がなされている。
【0126】
その幅全体にも長手方向にも延びる複数の経路セグメントを含むように、超電導層を作製することが可能である。例えば、超電導層は、複数の経路セグメントの各々の間に高い抵抗あるいは完全に絶縁性の障壁ができるようにパターン化し得る。例えば、テープの全長に沿って、斜め模様の経路セグメントの規則的で周期的な配列を層の上につくり込むことが可能である。このような配列を生じる超電導層のパターン化は、例えばレーザ・スクライビング、機械的切断、注入(implantation)、マスクを通しての局所的化学処理、および他の既知の方法を含む、当業者に周知の様々な方法により実施され得る。さらに、超電導層は、それらの表面の伝導性経路セグメントが、それらの層の端部で、あるいは端部近くで、層間接続している伝導性層間接続と電気的に連結している。層間結合は通常の伝導性(超電導ではない)であろうが、特別な構成では超電導性でもありうるであろう。層間結合は、超電導層の間に位置する非伝導性あるいは高抵抗材料により隔てられている超電導層の間を電気的に連結する。1つの超電導層の上に、このような非伝導性あるいは高抵抗材料を成膜させ得る。流路は、層間結合を導入できるように、その絶縁材料の端部につくられ、その後でさらに超電導層が成膜される。超電導層を、テープの軸に平行なフィラメントにパターン化し、テープを円柱形の回りにらせん状に巻くことにより、コートされた伝導体で転移配置(transposed configuration)が実現され得る。
【0127】
以下の実施例は例示のためであるにすぎない。
実施例I
前駆体溶液を次のようにして調製した。約1.36gのY(CFCO・4HO、約2.46gのBa(CFCOおよび約2.51gのCu(CFCO・2HOを約5ミリリットルのCHOHに溶解した。次に、約0.86ミリリットルの水を加えて、溶液の全容積をメタノールで約10ミリリットルに調節した。
【0128】
この前駆体溶液を、次のようにして、単結晶SrTiO基板の(100)表面上にスピンコートした。基板を、約ゼロ回転/分(RPM)から約2000RPMに、約0.5秒で上昇させた。約2000RPMで約5秒間回転速度を維持し、次に約4000RPMへ、約0.5秒で上昇させた。約4000RPMで約60秒間回転速度を維持し、それから約ゼロRPMに下げた。
【0129】
被覆された試料を次のようにして分解させた。試料を、全ガス圧が約760Torr(水蒸気圧が約24Torrで残りの部分は酸素)の公称ガス雰囲気内で、室温から約210℃まで、約10℃/分の速度で加熱した。加熱を、直径が約5.72cm(2.25インチ)の炉内で、約2125sccm(4.5標準立方フィート/時)のガス流量を用いて実施した。殆ど同じ公称ガス雰囲気を保ちながら、温度を約0.5℃/分の速度で約220℃まで上げ、その後約5℃/分の速度で約400℃まで加熱して、中間体薄膜を生成させた。
【0130】
分解後、中間体の膜を、約10℃/分の速度で約725℃まで加熱し、公称全ガス圧が約760Torr(水蒸気圧が約17Torr、酸素ガス圧が約76ミリTorrで残りの部分は酸素)の雰囲気内に約3時間保持し、その後、公称全ガス圧が約760Torr(酸素ガス圧が約76ミリTorrで残りの部分は窒素)の雰囲気内で、約725℃の温度を約10分間保持した。膜を、同じ公称ガス雰囲気内で約450℃に冷却し、この温度で、公称全ガス圧が約760Torr(酸素が約760Torr)のガス雰囲気内に約1時間保持し、次に室温に冷却した。
【0131】
得られた層は、(001)テクスチャYBaCu7−xであり、厚さが約0.4マイクロメートルであった。
実施例II
前駆体溶液を次のようにして調製した。約1.41gのY(CFCO、約2.39gのBa(CFCOおよび約1.97gのCu(CHCO・2HOを約20ミリリットルのCHOH、約10ミリリットルの水および約0.5ミリリットルのNHOHに溶解した。次に、減圧下で溶剤を除去することにより、この溶液を約20ミリリットルに濃縮した。
【0132】
この濃縮された前駆体溶液を、単結晶SrTiO基板の(100)表面上にスピンコートし、実施例Iに記載されるように分解させて、中間体膜を生成させた。
【0133】
中間体膜の厚さは約0.95マイクロメートルであった。図4は膜の光学顕微鏡写真(750倍)であり、膜には視認され得る亀裂や泡はないということを示している。
【0134】
次に、分解膜を実施例Iのようにして反応させて、YBaCu7−x膜を生成させた。
実施例III
2000RPMの代わりに500RPM、4000RPMの代わりに1000RPMのスピン速度が用いられたこと以外は、実施例IIを繰り返した。前駆体の膜の分解後、中間体の膜の厚さは約1.4マイクロメートルであった。この膜を実施例Iのように、さらに反応させてYBaCu7−x膜を生成させた。図5は、YBaCu7−x膜のθ−2θX線回折走査図であり、わずかな特定されない不純物相と共に、殆ど、テクスチャ化されたYBaCu7−xが生成していることを示している。
【0144】
実施例X
前駆体溶液を次のようにして調製した。約8.55gのY(CFCOおよび約14.5321gのBa(CFCOを、約50ミリリットルのメタノールに溶解して1つの溶液をつくった。
【0145】
もう1つの溶液を次のようにして作製した。約11.98gのCu(CHCO・HOを約10ミリリットルのメタノールに分散させ、約10分間還流させながら加熱した。次に、約20ミリリットルのCCOOHを滴下して加え、約30分間還流させながら沸騰させ、その後でほぼ室温まで冷却した。
【0146】
前記の2つの溶液を約10分間攪拌しながら混合し、次に、減圧下に溶剤を除去することにより、約50ミリリットルに濃縮した。
得られた濃縮溶液を、実施例Iに記載されたスピン・コーティングのパラメータを用いて、CeOでキャップされたYSZ単結晶基板上にスピンコートした。
【0147】
このコートされた試料を次のようにして分解させた。全圧が約760Torr(HOが約17Torrで残りの部分はO)の公称ガス雰囲気下で約200℃の、実施例Iに記載された炉に導入することにより、試料を炉に導入した。次に、炉を、約1℃/分の速度で約250℃まで加熱した。試料を、約10℃/分の速度で約400℃までさらに加熱して(同じ公称ガス雰囲気中で)、次に、室温まで冷却して(同じ公称ガス雰囲気中で)、中間体材料の膜を生成させた。
【0148】
分解後、中間体膜を実施例Iに記載されるようにして、さらに反応させてYBaCu7−x層を生成させた。図11は、YBaCu7−x層のθ−2θX線回折走査図であり、約0.41マイクロメートルの厚さの、高品質(001)テクスチャYBaCu7−x層が生成していることを示している。このYBaCu7−x層の臨界電流密度は、77K(自己電磁界)で約4.2×10アンペア/cmであった。
【0149】
実施例XI
実施例Xに記載されるようにして、濃縮された前駆体溶液を調製した。この濃縮された前駆体溶液を、2000RPMの代わりに1500RPM、4000RPMの代わりに3000RPMのスピン速度を用いた以外は、実施例Iに記載されるスピン・コーティング条件を用いて、CeOでキャップされたYSZ単結晶基板上にスピンコートした。スピンコートされた膜を実施例Xに記載されるようにして分解させ、実施例Iに記載されるようにして、その中間体膜をさらに反応させた。得られた層は、(001)テクスチャYBaCu7−xであり、約0.5マイクロメートルの厚さであった。このYBaCu7−x層の臨界電流密度は、77K(自己電磁界)で約3.2×10アンペア/cmであった。
【0150】
実施例XII
前駆体溶液を次のようにして調製した。
第1の溶液を、約1.35gのY(CHCO・4HOを約10ミリリットルのメタノールに分散させることにより作製した。約5ミリリットルのCCOOHおよび約3ミリリットルのNHOHを、溶液が透明になるまで、攪拌しながら加えた。
【0151】
第2の溶液を、約2.9gのBa(CFCOを約10ミリリットルのCHOHに溶解することにより作製した。
第3の溶液を、約2.4gのCu(CHCO・HOを約10ミリリットルのメタノールに分散させることにより作製した。約5ミリリットルのCCOOHおよび約3ミリリットルのNHOHを、溶液が透明になるまで、滴下して加えた。
【0152】
前記3種の溶液を約10分間攪拌しながら合わせて混合し、次に、減圧下で溶剤を除去することにより、約10ミリリットルに濃縮した。
得られた濃縮溶液を、実施例Iに記載されるスピン・コーティング条件を用いて、CeOでキャップされたYSZ単結晶基板上にスピンコートした。このコートされた膜を、実施例Xに記載されるようにして分解させた。分解後、その中間体膜を実施例Iに記載されるようにして、さらに反応させて、YBaCu7−x層を生成させた。図12は、YBaCu7−x層のθ−2θX線回折走査図である。YBaCu7−x層は、高品質(001)組織を有し、約0.3マイクロメートルの厚さであった。このYBaCu7−x層の臨界電流密度は、77K(自己電磁界)で約4.8×10アンペア/cmであった。
【0153】
実施例XIII
前駆体溶液を次のようにして調製した。約8.55gのY(CFCO、約14.53gのBa(CFCOおよび約12.87gのCu(CCOを約60ミリリットルのメタノールに溶解した。次に、減圧下で溶剤を除去することにより、この溶液を約50ミリリットルに濃縮した。
【0154】
この濃縮された前駆体溶液を、実施例Iに記載されるスピン・コーティング条件を用いて、CeOでキャップされたYSZ単結晶基板上にスピンコートした。このコートされた膜を、実施例Xに記載されるようにして分解させた。分解後、その中間体膜を実施例Iに記載されるようにして、さらに反応させて、YBaCu7−x層を生成させた。図13は、YBaCu7−x層のθ−2θX線回折走査図である。YBaCu7−x層は、高品質(001)組織を有し、約0.8マイクロメートルの厚さであった。このYBaCu7−x層の臨界電流密度は、77K(自己電磁界)で約3.8×10アンペア/cmであり、臨界電流は約300アンペア/cm幅であった。
【0155】
実施例XIV
実施例XIIIに記載されるようにして、前駆体溶液を調製した。この前駆体溶液を、スロット・ダイ・コータを用いて、連続して長い金属テープ基板上に塗布した。
【0156】
この金属テープ基板は4つの層で形成されていた。第1の層は、約50マイクロメートルの厚さを有する変形テクスチャニッケルであり、厚さは約10ミリメートルであった。このニッケルのテクスチャ表面上に、約50ナノメートルの厚さの、Gdからなるエピタキシャル層を配置した。このGd層の上に、約250ナノメートルの厚さの、YSZからなるエピタキシャル層を配置した。このYSZ層の上に、約24ナノメートルの厚さの、CeO層からなるエピタキシャル層を配置した。
【0157】
前駆体膜を、約11torrのHOおよび残りの部分として窒素を含む(全圧は約760torr)雰囲気中で成膜した。
コートされた前駆体膜を、直径が約6.35cm(2.5インチ)の管状炉にコートされたテープを通すことにより分解させた。管状炉の温度およびガス雰囲気には勾配を付けた。試料の処理(すなわち、処理中に試料が曝される温度およびガス雰囲気)が、実施例Xに記載されるものと殆ど同じであるような移動速度で試料を管状炉に通した。
【0158】
得られたYBaCu7−x膜は約0.8マイクロメートルの厚さであり、視認される欠陥はなかった。
ある特定の実施形態が、本明細書において記載されたが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。他の実施形態は特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層製品の一実施形態の横断面図。
【図2】多層製品の別の実施形態の横断面図。
【図3】多層製品のさらなる実施形態の横断面図。
【図4】中間体材料膜の光学顕微鏡写真。
【図5】YBaCu7−x膜のθ−2θX線回折走査図。
【図6】YBaCu7−x膜のθ−2θX線回折走査図。
【図7】中間体材料膜の光学顕微鏡写真。
【図8】中間体材料膜の光学顕微鏡写真。
【図9】中間体材料膜の光学顕微鏡写真。
【図10】中間体材料膜の光学顕微鏡写真。
【図11】YBaCu7−x膜のθ−2θX線回折走査図。
【図12】YBaCu7−x膜のθ−2θX線回折走査図。
【図13】YBaCu7−x膜のθ−2θX線回折走査図。

Claims (10)

  1. 希土類金属のカルボン酸塩、アルカリ土類金属のフッ素化カルボン酸塩および銅の非ハロゲン化カルボン酸塩を含む前駆体溶液を、層の表面上に塗布して前駆体の膜を形成する工程と、
    該前駆体膜を5時間より短い時間で処理して、希土類金属−アルカリ土類金属−銅酸化物からなる中間体を形成させる工程と、
    該中間体の層を処理して、少なくとも0.5×10アンペア/cmの臨界電流密度を有する希土類金属−アルカリ土類金属−銅酸化物の層を生成させる工程と、
    からなる超電導体薄膜の形成方法。
  2. 前記前駆体溶液がさらにルイス塩基を含む請求項1に記載の方法。
  3. 前記中間体層内に含まれる欠陥が、前記中間体の任意の体積の20パーセント未満からなる請求項1に記載の方法。
  4. 前記銅の非ハロゲン化カルボン酸塩がCu(OCCからなる請求項1に記載の方法。
  5. 前記ルイス塩基が窒素含有化合物からなる請求項2に記載の方法。
  6. 前記希土類金属−アルカリ土類金属−銅からなる前記中間体が、臨界電流が少なくとも200アンペア/cm幅である超電導体材料を形成するべく更に処理される請求項1に記載の方法。
  7. 前記銅の非ハロゲン化カルボン酸塩が銅のプロピオン酸塩からなる請求項1に記載の方法。
  8. 前記銅の非ハロゲン化カルボン酸塩が銅のカルボン酸塩からなる請求項1に記載の方法。
  9. 前駆体溶液を層の表面上に塗布して前駆体の膜を形成する工程であって、希土類金属のカルボン酸塩、アルカリ土類金属のフッ素化カルボン酸塩および銅の非ハロゲン化カルボン酸塩を含み、該前駆体膜は該希土類金属塩、該アルカリ土類金属塩および銅塩を含むことと、
    該前駆体膜を5時間より短い時間処理して、希土類金属−アルカリ土類金属−銅酸化物からなる中間体を生成させる工程であって、該中間体層は第1の層の表面に隣接する表面を有し、該中間体層は複数の体積を有し、かつ、
    該中間体内に含まれる欠陥が、該中間体の任意の体積の20パーセント未満からなり、
    該中間体には最大寸法が200マイクロメートルより大きい如何なる欠陥も有しないことと、
    該中間体層を処理して、臨界電流密度が少なくとも0.5×10アンペア/cmである希土類金属−アルカリ土類金属−銅酸化物の層を形成させる工程と、
    からなる超電導体薄膜の形成方法。
  10. 前記中間体層内に含まれる欠陥が、前記中間体の任意の体積の10パーセント未満からなる請求項に記載の方法。
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