JP3741816B2 - 酸化物超電導テープ線材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導電力ケーブル、超電導マグネット、超電導エネルギー貯蔵装置、超電導発電装置、医療用MRI装置、超電導電流リード等の分野で利用できる酸化物超電導テープ線材を蒸着法により製造する方法に関し、銀層と酸化物超電導層とを交互に多層積層するに際して、銀層表面を超硬ロールにより圧延した後、圧延後の銀層表面に酸化物超電導層を蒸着法により積層する工程を繰り返すことによって、臨界電流を向上できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の酸化物系超電導線材の製造方法としては、酸化物超電導粉末または熱処理によって酸化物超電導体となる粉末を円柱状にプレスし、これを銀管中に挿入し伸線・圧延工程と、熱処理工程を行って線材化するパウダーインチューブ法(PIT法)の他に、化学気相成長法(CVD法)、物理的気相堆積法(PVD法)などの蒸着法により金属テープなどの基材上に連続的に酸化物系超電導薄膜を形成する成膜法が知られている。
また、蒸着法により酸化物系超電導薄膜を成膜する場合においては、金属製の基材上に酸化物超電導薄膜を直接形成すると、基材自体が多結晶体でその結晶構造も酸化物超電導体と大きく異なるために結晶配向性の良好な酸化物超電導薄膜が形成できないという問題があり、これを改善するために金属テープなどの基材上に、スパッタ装置を用いてYSZ(イットリア安定化ジルコニア)などの多結晶中間薄膜を形成し、この多結晶中間薄膜上にYBaCuO系超電導薄膜を形成することで超電導特性の優れた超電導線材を製造する試みを種々行っている。
このような試みの中から本発明者らは先に、結晶配向性に優れた多結晶薄膜を形成するために、あるいは、超電導特性の優れた超電導テープを得るために、特願平3ー126836号、特願平3ー126837号、特願平3ー205551号などにおいて特許出願を行なっている。
【0003】
これらの特許出願に記載された技術によれば、ハステロイテープなどのテープ状の基材上にスパッタ装置により多結晶中間薄膜を堆積させる際に、スパッタリングと同時に基材成膜面の斜め方向からイオンビームを照射しながら多結晶中間薄膜を形成する方法(イオンビームアシストスパッタリング法)により、結晶配向性に優れた多結晶薄膜を形成することができるものである。この方法によれば、多結晶中間薄膜を形成する多数の結晶粒のそれぞれの結晶格子のa軸あるいはb軸で形成する粒界傾角を30度以下に揃えることができ、結晶配向性に優れた多結晶薄膜(配向制御多結晶薄膜)を形成することができる。そして更に、この配向制御多結晶薄膜上にYBaCuO系超電導層を蒸着法等により成膜するならば、酸化物超電導層の結晶配向性も優れたものになり、これにより臨界電流密度が高い酸化物超電導体を製造することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところがPIT法にあっては作製される酸化物系超電導線材の臨界電流密度は小さいものの高い臨界電流が得られ易いが、蒸着法にあっては作製される酸化物超電導テープ線材の臨界電流密度は高いものの、酸化物超電導層の厚みを厚くすることが困難であるために臨界電流は小さいという問題があった。従って、酸化物超電導テープ線材の実用化には、高臨界電流化が重要であり、特に、超電導マグネットに応用するには少なくとも数十Aレベルの臨界電流が要求されるが、未だ、実用化されていかなった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、臨界電流が高い酸化物超電導テープ線材の製造が可能な酸化物超電導テープ線材の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明にあっては、テープ状の基材上に多結晶中間層を介して酸化物超電導層を積層し、さらに該酸化物超電導層上に銀層と酸化物超電導層とを交互に多層積層する酸化物超電導テープ線材の製造方法において、
銀層と酸化物超電導層とを交互に多層積層するに際して、銀層表面を超硬ロールにより圧延した後、圧延後の銀層表面に酸化物超電導層を蒸着法により積層する工程を繰り返すことを特徴とする酸化物超電導テープ線材の製造方法を前記課題の解決手段とした。
また、請求項2記載の発明にあっては、多結晶中間層が配向制御多結晶中間層であることを特徴とする請求項1記載の酸化物超電導テープ線材の製造方法を前記課題の解決手段とした。
また、請求項3記載の発明にあっては、圧延後の銀層表面の平滑度がRmax=0.2μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の酸化物超電導テープ線材の製造方法を前記課題の解決手段とした。
【0007】
本発明者は、酸化物超電導テープ線材の臨界電流を向上すべく、種々の検討及び実験を重ねた結果、テープ状の基材上に多結晶中間層を積層し、さらに該多結晶中間層上に酸化物超電導層と銀層とを交互に多層積層することにより、酸化物超電導層を多層化でき、臨界電流を向上できるとの推定に至った。
ところが、このように酸化物超電導層間に銀層を挾んで多層化する場合には、銀層表面の平滑性が大きく超電導特性に影響するため、銀層表面をできるだけ平滑にすることが望ましい。この銀層表面の平滑性はその下層の酸化物超電導層の平滑性に依存するが、一般的にCVD法などにより形成したYBaCuO系超電導層の表面は平滑性に乏しく、平滑度はRmax=0.5μm程度になってしまう。従って、通常、このYBaCuO系超電導層上に形成した銀層の平滑度はRmax=0.5μm前後になっしまう。
【0008】
そこで、本発明者は、特に、銀層を形成した後、これを超硬ロールにより圧延することにより、銀層表面の平滑度をRmax=0.1μm程度まで改善でき、この後、銀層上に酸化物超電導層を蒸着法により積層することにより、銀層の圧延を行わない酸化物超電導テープ線材の製造方法と比べて臨界電流を大幅に向上できることを究明し、本発明を完成したのである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法の一実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法により得られた酸化物超電導テープ線材の一例を示す断面図である。
この酸化物超電導テープ線材は、テープ状の基材1上に配向制御多結晶中間層2を介して酸化物超電導層3が積層され、さらに酸化物超電導層3上に圧延された銀層4と、酸化物超電導層3とが交互に多層積層されてなるものである。
本発明で用いられるテープ状の基材1の構成材料としては、ステンレス鋼、銅、または、ハステロイなどのニッケル合金などの合金各種金属材料から適宜選択される長尺の金属テープを用いることができる。
この基材1の厚みは、0.01〜0.5mm、好ましくは0.02〜0.15mmとされる。基材1の厚みが0.5mmを超えると、酸化物超電導層3の膜厚に比べて厚く、オーバーオール(酸化物超電導導体全断面積)あたりの臨界電流密度としては低下してしまう恐れがある。一方、基材1の厚みが0.01mm未満であると、著しく基材の強度が低下し、超電導体の補強効果を消失してしまう恐れがある。
【0010】
前記配向制御多結晶中間層2は、立方晶系の結晶構造を有する結晶の集合した微細な結晶粒が多数相互に結晶粒界を介して接合一体化されてなり、各結晶粒の結晶軸のc軸は基材1の上面(成膜面)に対してほぼ直角に向けられ、各結晶粒の結晶軸のa軸どうしおよびb軸どうしは、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。各結晶粒の結晶のa軸(あるいはb軸)どうしは、それらのなす角度(粒界傾角)を30度以内にして接合一体化されているのが好ましい。この配向制御多結晶中間層2の厚みは、0.1〜1.0μm、好ましくは0.3〜0.7μmとされる。配向制御多結晶中間層2の厚みを1.0μmを超えて厚くしてもももはや効果の増大は期待できず、経済的にも不利となる。一方、配向制御多結晶中間層2の厚みが、0.1μm未満であると薄すぎて基材1を十分支持できず、後述する酸化物超電導層3の蒸着時に高温雰囲気によって基材1に歪みが生じる恐れがあり、また、熱処理時に酸化物超電導層3の元素を基材1側に拡散させてしまう恐れがあり、酸化物超電導層3の成分組成が崩れる恐れがあるからである。
【0011】
前記酸化物超電導層3は、Y1Ba2Cu3Ox、Y2Ba4Cu8Ox、
Y3Ba3Cu6Oxなる組成、(Bi,Pb)2Ca2Sr2Cu3Ox、
(Bi,Pb)2Ca2Sr3Cu4Oxなる組成、
あるいはTl2Ba2Ca2Cu3Ox、Tl1Ba2Ca2Cu3Ox、
Tl1Ba2Ca3Cu4Oxなる組成などに代表される臨界温度の高い超電導材料からなるものである。
各酸化物超電導層3の厚みは0.5〜5μm程度とされる。
【0012】
前記銀層4の表面の平滑度はRmax=0.2μm以下、好ましくは0.1μm程度、より好ましくは0.05μm程度とされている。銀層4の表面の平滑度がRmax=0.2μmを越えると、この銀層4上に形成される酸化物超電導層3の結晶配向性にばらつきが生じ、臨界電流の向上効果が低下してしまう。
各銀層4の厚みは、0.5〜10μm程度とされている。銀層4の厚みが0.5μm以下であると、超電導層が露出する恐れがあり、10μmを越えて厚くしてももはや効果の増大は期待できず、経済的にも不利となる。
【0013】
このような酸化物超電導テープ線材を製造するには、以下の工程による。
まず、図2に示すようなイオンビームスパッタ装置にイオンビームアシスト用のイオンガンを設けたイオンビームアシストスパッタ装置を用いてテープ状の基材1上に配向制御多結晶中間層2を以下のようにして形成する。
テープ状の基材1上に配向制御多結晶中間層2を形成するには、目的の組成の多結晶中間層と同一組成あるいは近似組成のターゲット26を用いるとともに、基材ホルダ23を最適照射領域に配置するとともに傾斜角度を調節して第二のフィラメント型イオンソース29から照射されるイオンビームを基材ホルダ23上に移動してきた基材1の成膜面に50〜60度の範囲の角度で照射できるようにする。また、テープ状の基材1が巻かれた基材送出ボビン24を成膜処理容器20内に配置し、基材送出ボビン24からテープ状の基材1を基材ホルダ23上に連続的に送り出し、配向制御多結晶層2形成後のテープ状の基材1を基材巻取ボビン25で巻き取れるようにセットする。ついで、成膜処理容器20の内部を真空引きして減圧雰囲気とする。また、基材1を負に帯電させておく。
そして、第一のフィラメント型イオンソース28と第二のフィラメント型イオンソース29を作動させる。
【0014】
第一のフィラメント型イオンソース28からターゲット26にイオンビームを照射すると、ターゲット26の構成粒子が叩き出されて基材1上に飛来する。そして、最適照射領域内にある基材ホルダ23上に送り出された基材1上にターゲット26から叩き出した構成粒子を堆積させると同時に第二のフィラメント型イオンソース29からArイオンなどの希ガスのイオンと酸素イオンの混合イオンビームを照射して上述の範囲内の厚みの配向制御多結晶中間層2を形成し、続いて配向制御多結晶中間層2形成後のテープ状の基材1を基材巻取ボビン25に巻き取る。
ここでイオン照射する際の入射角度θは、50〜60度の範囲が好ましく、55〜60度の範囲が最も好ましい。前記のような好ましい範囲の角度でイオンビーム照射するならば配向制御多結晶中間層2の結晶の(100)面が立つようになる。このような入射角度でイオンビーム照射を行ないながらスパッタ粒子の堆積を行なうことで、基材1上に形成される配向制御多結晶中間層2の結晶軸のa軸とb軸とを配向させることができるが、これは、堆積されている途中のスパッタ粒子に対して適切な角度でイオンビーム照射されたことによるものと思われる。
【0015】
このようにテープ状の基材1上に配向制御多結晶中間層2を形成したならば、第一層目の酸化物超電導層3を図3に示すようなCVD装置を用いて以下のようにして形成する。
まず、酸化物超電導層3をCVD反応により成膜するための原料溶液34を用意する。この原料溶液34は、成膜するべき目的化合物の構成金属元素の有機金属錯体、金属アルコキシドなどの金属有機化合物を、目的化合物の組成比となるように複数種混合し、THFなどの有機溶媒に溶解させたものを用いることができる。このような原料溶液34を用意したならば、収納容器42に満たしておく。
【0016】
そして、上記配向制御多結晶中間層2が形成された基材1(以下、第一の積層体5という。)を反応チャンバ61内に基材搬送機構78により基材導入部62から所定の移動速度で送り込むとともに基材搬送機構75の巻取ドラム74で巻き取り、更に反応生成室63内の第一の積層体5を加熱ヒータ67で所定の温度に加熱する。なお、第一の積層体5を送り込む前に、不活性ガス供給源68から不活性ガスをパージガスとして反応チャンバ61内に送り込み、同時に圧力調整装置72を作動させて反応チャンバ61の内部のガスを抜くことで反応チャンバ61内の空気等の不用ガスを排除して内部を洗浄しておくことが好ましい。
【0017】
第一の積層体5を反応チャンバ61内に送り込んだならば、酸素ガス供給源69から反応チャンバ61内に酸素ガスを送り、更に、加圧源43ならびにMFC(流量調整器)41aにより収納容器42から原料溶液34を流量0.1〜1.0ccm程度で原料溶液供給部31内に送液し、これと同時にアトマイズガスをアトマイズガス供給部32に流量200〜300ccm程度で送り込むとともにシールドガスをシールドガス供給部33に流量200〜300cc程度で送り込む。また、同時に圧力調整装置72を作動させ反応チャンバ61の内部のガスを排気する。この際、シールドガスの温度は、室温程度になるように調節しておく。また、原料溶液気化装置50の気化器本体51の内部温度が前記原料のうちの最も気化温度の高い原料の気化に適した200〜300℃程度の範囲内の一定温度になるようにヒータ53により調節することにより、第二の加熱手段54も最も気化温度の高い原料の気化に適した200〜300℃程度の範囲内の一定温度に加熱する。
【0018】
すると、原料溶液34は液だまり35に溜まりつつ原料溶液供給部31の先端に達し、この後、吹き出し口37aから吹き出る際、アトマイズガス供給部32から流れてくるアトマイズガスにより直ちに霧化されるので、一定流量のミスト状の原料溶液34が気化器本体51内に連続的に供給される。そして、吹き出し口37aから気化器本体51内に噴霧されたミスト状の原料溶液34は第二の加熱手段54に接触して直ちに気化し、原料ガスが得られる。さらにこの原料ガスは輸送管57を介してガス拡散部66に連続的に供給される。この時、輸送管57の内部温度が前記原料のうちの最も気化温度の高い原料の最適温度になるようにヒータ57aにより調節しておく。また、この時、酸素ガス供給源58から酸素ガスを供給して原料ガス中に酸素を混合する操作も行う。
【0019】
次に、反応チャンバ61の内部においては、輸送管57の出口部分からガス拡散部66に出た原料ガスが、拡散しながら反応生成室63側に移動し、反応生成室63の内部を通り、次いで第一の積層体5の近傍を移動してガス排気管70に引き込まれるように移動する。
従って、加熱された第一の積層体5の配向制御多結晶中間層2側で原料ガスを反応させて酸化物超電導層3を成膜させることができる。
以上の成膜操作を所定時間継続して行なうことにより、配向制御多結晶中間層2上に上述の範囲の厚さの膜質の安定した酸化物超電導層3を形成することができる。なお、第一の積層体5上に第一層目の酸化物超電導層3を形成したものを第二の積層体6とする。
【0020】
このようにして第二の積層体6を形成したならば、さらにこの第一層目の酸化物超電導層3上に以下のようにして銀層4と酸化物超電導層3とを交互に多層積層する。
まず、第一層目の銀層4を蒸着法により形成したのち、この第一層目の銀層4表面を図4に示すような上下一対の超硬ロール79,79を備えた2重圧延機80を用いて銀層4表面の平滑度がRmax=0.2μm以下となるように圧延する。ここで用いられる超硬ロール79としては、硬さが70〜100Hs程度で、かつヤング率が21500kg/mm2程度の鍛鋼ロールや、120Hs程度で、かつヤング率が66000kg/mm2程度のタングステンカーバイド焼結ロールなどが好適に用いられる。
【0021】
ここでの圧延条件は、温度約室温〜300℃、圧下率約5〜20%、圧延速度約0.1〜1m/時間程度である。圧延時の温度が300℃を越えると圧延銀表面の平滑性が失われるため好ましくない。また、圧延時の圧下率が20%を越えると酸化物超電導層を破壊するもしくは均一な圧延ができなくなるため好ましくない。
【0022】
ついで、圧延後の第1層目の銀層4表面に第二層目の酸化物超電導層3を上述の方法と同様にして成膜する。ついで、第二層目の銀層4の成膜、圧延を上述の第一層目の銀層4の成膜、圧延方法と同様にして行った後、第三層目の酸化物超電導層3を上述の方法と同様にして成膜する。ついで、この第三層目の酸化物超電導層3上に第三層目(最外層)の銀層4を上述の方法と同様にして成膜するが、最外層の銀層4の圧延は、必ずしも必ずしも行わなくてもよい。
【0023】
この実施形態の酸化物超電導テープ線材の製造方法にあっては、特に、銀層4と酸化物超電導層3とを交互に多層積層するに際して、銀層4表面を超硬ロール79,79により圧延した後、圧延後の銀層4表面に酸化物超電導層3を蒸着法により積層する工程を繰り返すようにしたことにより、圧延後の各銀層4は、表面の平滑度がRmax=0.2μm以下となり、平滑性が優れたものとなるので、圧延後の銀層4上に形成される各酸化物超電導層3も結晶配向が優れたものとなり、酸化物超電導層3の多層化による臨界電流を大幅に向上させることができる。 従って、実施形態の酸化物超電導テープ線材の製造方法は、銀層の圧延を行わない酸化物超電導テープ線材の製造方法と比べて臨界電流を大幅に向上できるので、超電導マグネット等に応用するのに十分の臨界電流を得ることができる。
また、この実施形態の酸化物超電導テープ線材の製造方法にあっては、特に、多結晶中間層として配向制御多結晶中間層2を形成したことにより、無配向多結晶中間層を形成する場合と比べて多結晶中間層上に形成される第一層目の酸化物超電導層の結晶配向性を向上させることができる。
【0024】
なお、上記実施形態においては、酸化物超電導層を3層積層した場合について説明したが、必ずしも、これに限らず、用途に応じてさらに超鋼ロールにより圧延した銀層と酸化物超電導層とを交互に積層して酸化物超電導層を4層以上積層することにより、数十Aレベルの臨界電流を実現することができる。
また、上記実施形態の酸化物超電導テープ線材の製造方法においては、図4に示したような上下一対の超硬ロール79,79を備えた2重圧延機80を用いて銀層4を圧延する方法について説明したが、圧延機としてはその他の構造のものも使用可能であり、例えば、図5に示すような2重圧延機80の上側の超硬ロール79の上方にさらに超硬ロール79を設けた3重圧延機90や、図6に示すような上下一対の超硬ロール79,79の上下にさらに鋳鉄あるいは鋼製のロール81,81を設けた4重圧延機100を使用してもよい。
【0025】
また、上記実施形態の酸化物超電導テープ線材の製造方法においては、テープ状の基材1上に配向制御多結晶中間層2を介して酸化物超電導層3を形成する場合について説明したが、テープ状の基材1上にイオンビームスパッタ装置を用いて結晶配向性を制御していない多結晶速成中間層を形成したのち、この多結晶速成中間層上に配向制御多結晶中間層を形成し、さらにこの配向制御多結晶中間層上に酸化物超電導層を形成するようにしてもよい。
また、上記実施形態の酸化物超電導テープ線材の製造方法においては、多結晶中間層として配向制御多結晶中間層を形成する場合について説明したが、高周波スパッタ法により無配向多結晶中間層を形成してもよい。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を、実施例および比較例により、具体的に説明する。
(実施例)
図2に示したような構成のイオンビームアシストスパッタリング装置を使用し、テープ状の基材が巻かれた基材送出ボビンを成膜処理容器内に配置し、基材送出ボビンからテープ状の基材を基材ホルダ上に連続的に送り出し、多結晶中間層形成後のテープ状の基材を基材巻取ボビンで巻き取れるようにセットした。
テープ状の基材としては、幅10mm、厚さ0.1mm、長さ10cmのハステロイC276テープを使用した。また、ターゲットとしてはYSZ(安定化ジルコニア)製のものを用いた。
そして、このイオンビームアシストスパッタリング装置の成膜処理容器内部をクライオポンプおよびロータリーポンプで真空引きして3.0×10-4トールに減圧し、また、基材を負に帯電させた。
【0027】
さらに、スパッタ電圧1200V、スパッタ電流240mAのアルゴンイオンと酸素イオンの混合イオンビームを第一のフィラメント型イオンソースから発生させる際、フィラメントとアノード間に印加するイオン化電圧値を50Vとし、一方、アシスト電圧200V、アシスト電流100mAのアルゴンイオンと酸素イオンの混合イオンビームを第二のフィラメント型イオンソースから発生させる際、フィラメントとアノード間に印加するイオン化電圧値を50Vとし、基材の成膜面上にYSZの粒子を堆積させると同時にイオンビームを照射して成膜処理することで厚さ0.5μmのYSZ配向制御多結晶中間層を形成した。ここでの第二のフィラメント型イオンソースから発生させる混合イオンビームの入射角度は55度に設定した。
【0028】
ついで、図3に示すようなCVD装置を用い、YSZの多結晶中間層形成後のテープ状の基材(第一の積層体)上に第1層目の酸化物超電導層を以下のようにして成膜した。
原料溶液として、Y(thd)3、Ba(thd)2、Cu(thd)2をモル比でY:Ba:Cu=1.0:2.4:3.3に混合したものジグリム溶液に溶解したものを収納容器に貯留した(thd=2,2.6.6-テトラメチル-3.5-ヘプタンジオン)。
一方、気化器本体内に配設された原料溶液供給装置の吹き出し口の前方に設ける第二の加熱手段として、多数の径5mm程度のステンレス球を用いた。
前記原料溶液を加圧源ならびに液体微量MFCにより流速1.0ml/分で原料溶液供給部に連続的に供給した。これと同時にアトマイズガスとしてArをアトマイズガス供給部に流量300ccm程度で送り込むとともにシールドガスとしてArをシールドガス供給部に流量300ccm程度で送り込んだ。
【0029】
以上の操作により、一定量のミスト状の原料溶液を気化器本体内に連続的に供給することができ、気化本体内に供給されたミスト状の原料溶液はステンレス球に接触して直ちに気化し、原料ガスが得られ、さらにこの原料ガスを反応チャンバに一定量連続的に供給することができた。この時の気化器本体および輸送管の温度は240℃とした。
反応チャンバ内の基材移動速度1.2m/h、基材加熱温度760℃、リアクタ内圧力5トール、酸素ガス供給源からの酸素ガス流量を50〜100ml/分に設定して、第一の積層体のYSZの多結晶中間層上にY-Ba-Cu-O系の超電導層を連続的に形成し、第二の積層体を得た。
【0030】
ついで、この第二の積層体上に銀層とY-Ba-Cu-O系の超電導層とを交互に多層積層する際、銀層表面を図4に示したような上下一対の超硬ロールを備えた2重圧延機を用いて銀層表面の平滑度がRmax=0.2μmとなるように圧延した後、圧延後の銀層表面にY-Ba-Cu-O系の超電導層を上述の方法と同様にして形成する工程を繰り返すことにより、銀層をn層(nは1〜5の整数)形成してY-Ba-Cu-O系の超電導層を多層(1〜5層)有する酸化物超電導テープ線材を作製した。ここでの圧延条件は、温度約室温、圧下率10%、圧延速度1m/時間であった。また、ここで形成された各銀層の厚みは、2μmであり、各Y-Ba-Cu-O系の超電導層の厚みは1μmであった。
そして、作製した酸化物超電導テープ線材の両端部側にそれぞれAgの電極を形成し、Agコーティング後に純酸素雰囲気中にて500℃で2時間熱処理を施して測定試料とした。そして、これら試料を液体窒素で77Kに冷却し、外部磁場0T(テスラ)の条件で各試料における臨界電流(Ic)を調べた。その結果を図7に示す。図7は、銀層をn層形成してY-Ba-Cu-O系の超電導層を多層化した場合のIc(A)と超電導層数との関係を示すグラフである。
【0031】
(比較例)
第二の積層体上に銀層と酸化物超電導層とを交互に多層積層する際、銀層表面を圧延しない以外は、上記実施例と同様にして銀層をn回(nは自然数)挾んで酸化物超電導層を多層(1層〜5層)有する酸化物超電導テープ線材し、これらの酸化物超電導テープ線材について実施例と同様にして臨界電流(Ic)を調べた。その結果を図7に示す。
【0032】
図7に示した結果から明らかなように、銀層表面の圧延を行わないで、酸化物超電導層を形成した比較例の製法によりで得られた酸化物超電導テープ線材は、多層化によるIcの増加が小さく、酸化物超電導層を5層積層しても臨界電流が3A程度である。これに対して実施例の製法によりで得られた酸化物超電導テープ線材は、銀層表面の圧延を行って平滑性を向上させた後、酸化物超電導層を形成することで、Icの増加が大きくなり、酸化物超電導層を5層積層した場合、5Aの臨界電流を得ることができた。従って、超硬ロールにより銀層表面を圧延することにより、銀層表面の平滑性を改善しながらY-Ba-Cu-O系の超電導層の多層化を行った実施例は、銀層表面を圧延しない比較例に比べて、多層化によるIcの増加が1.7倍程度となり、高Ic化に有利であることが分った。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法にあっては、テープ状の基材上に多結晶中間層を介して酸化物超電導層を積層し、さらに該酸化物超電導層上に銀層と酸化物超電導層とを交互に多層積層する酸化物超電導テープ線材の製造方法において、銀層と酸化物超電導層とを交互に多層積層するに際して、銀層表面を超硬ロールにより圧延した後、圧延後の銀層表面に酸化物超電導層を蒸着法により積層する工程を繰り返すようにしたことにより、圧延後の各銀層表面の平滑性が優れたものとなるので、圧延後の銀層上に形成される各酸化物超電導層も結晶配向が優れたものとなり、酸化物超電導層の多層化による臨界電流を大幅に向上させることができる。
従って、本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法は、銀層の圧延を行わない酸化物超電導テープ線材の製造方法と比べて臨界電流を大幅に向上できるので、超電導マグネット等に応用するのに十分の臨界電流を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法により得られた酸化物超電導テープ線材の一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法において配向制御多結晶中間層の成膜に好適に用いられるイオンビームアシストスパッタ装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】 本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法において酸化物超電導層の成膜に好適に用いられるCVD装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】 本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法において銀層の圧延に好適に用いられる2重圧延機を示す概略構成図である。
【図5】 本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法において銀層の圧延に好適に用いられる3重圧延機を示す概略構成図である。
【図6】 本発明の酸化物超電導テープ線材の製造方法において銀層の圧延に好適に用いられる4重圧延機を示す概略構成図である。
【図7】 銀層をn層形成してY-Ba-Cu-O系の超電導層を多層化した場合の臨界電流と超電導層数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・基材、2・・・配向制御多結晶中間膜、3・・・酸化物超電導層、4・・・銀層、5・・・第一の積層体、6・・・第二の積層体、79・・・超硬ロール、80・・・2重圧延機、90・・・3重圧延機、100・・・4重圧延機。
Claims (3)
- テープ状の基材上に多結晶中間層を介して酸化物超電導層を積層し、さらに該酸化物超電導層上に銀層と酸化物超電導層とを交互に多層積層する酸化物超電導テープ線材の製造方法において、
銀層と酸化物超電導層とを交互に多層積層するに際して、銀層表面を超硬ロールにより圧延した後、圧延後の銀層表面に酸化物超電導層を蒸着法により積層する工程を繰り返すことを特徴とする酸化物超電導テープ線材の製造方法。 - 多結晶中間層が配向制御多結晶中間層であることを特徴とする請求項1記載の酸化物超電導テープ線材の製造方法。
- 圧延後の銀層表面の平滑度がRmax=0.2μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の酸化物超電導テープ線材の製造方法。
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