JP2877367B2 - 超電導線材 - Google Patents

超電導線材

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  • Metal Extraction Processes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は、酸化物超電導体を使用した超電導線材に関
する。
(従来の技術) 1986年にBa-La-Cu-O系の層状ペロブスカイト型の酸化
物が40K以上の高い臨界温度を有することが発表されて
以来、酸化物系の超電導体が注目を集め、新材料探索の
研究が活発に行われている。その中でも、液体窒素温度
以上の高い臨界温度を有するY-Ba-Cu-O系で代表される
欠陥ペロブスカイト型の酸化物超電導体や、Bi-Sr-Ca-C
u-O系およびTl-Ba-Ca-Cu-O系の酸化物超電導体は、冷媒
として高価な液体ヘリウムに代えて、安価な液体窒素を
利用できるため、工業的にも重要な価値を有している。
このような酸化物超電導体のエネルギー分野への応用
を考えた場合、まず線材化することが必要となる。そこ
で、各種方法を用いて酸化物超電導体を線材化する試み
がなされている。
酸化物超電導体を用いた超電導線材の作製方法として
は、 (a)金属管内に酸化物超電導体を封入し、これを線引
き加工することによって線材化する方法、 (b)酸化物超電導体粉末と有機バインダとを混合し、
ノズルから押し出して線材化する方法、 (c)金属テープ上に溶射法や各種膜形成方法によって
酸化物超電導体層を形成し、線材化する方法 などが知られている。
これら酸化物超電導体を用いた超電導線材の臨界電流
密度は徐々に向上する傾向にあり、上記方法の中で特に
(c)の方法が配向性に優れた酸化物超電導体層が得や
すく、超電導特性の向上が期待できることから特に注目
を集めている。
しかしながら、上記(c)の方法を適用し、直接金属
基体上に酸化物超電導体層をスパッタ法や蒸着法などで
形成したのでは、配向した酸化物超電導体層を得ること
は非常に困難である。たとえば耐熱材料であるハステロ
イ系合金からなる基体上にスパッタ法を用いて酸化物超
電導体層を形成することが試みられているが、基体と酸
化物超電導体が反応して界面に反応物を生成したり、ま
た配向膜が得られないなどの不都合が生じる。
そこで、配向層を得るための現実的な手法としては、
酸化物超電導体と格子定数が近似したMgO層などを、金
属基体上にバッファ層として形成し、このバッファ層上
に酸化物超電導体層を薄膜形成する方法が採用されてい
る。
このようなバッファ層を介して酸化物超電導体層の形
成方法によれば、界面での反応を防ぐことができると共
に、配向した酸化物超電導体層が得られ、臨界電流密度
の向上を図ることができる半面、酸化物超電導体層と金
属基体との界面にMgOのような絶縁層が介在するため、
酸化物超電導体層と金属基体との電気的な導通をとるこ
とができないという欠点がある。したがって、使用中に
酸化物超電導体層の一部が常電導状態に転移した場合
に、金属基体へ電流をバイパスさせて超電導体を保護す
る、いわゆる安定化材として金属基体を機能させること
ができない。
(発明が解決しようとする課題) 上述したように、従来の薄膜法を適用した超電導線材
では、酸化物超電導体の配向層を得るためにMgOなどの
バッファ層を介在させているために、金属基体を安定化
材として機能させることができないという難点があっ
た。
本発明は、このような従来技術の課題に対処するため
になされたもので、金属基体上に配向性に優れた酸化物
超電導体層を形成し、臨界電流密度の向上を図ると共
に、金属基体を安定化材として機能させることを可能に
した超電導線材を提供することを目的とするものであ
る。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) すなわち本発明は、長尺な金属基体と、この金属基体
上に長手方向に連続して形成された酸化物超電導体層と
の複合体からなる超電導線材において、前記金属基体の
少なくとも酸化物超電導体層形成面は、銀の(100)結
晶面および/または(110)結晶面が、前記酸化物超電
導体層形成面に対して平行に配向した面により構成され
ていることを特徴としている。
酸化物超電導体としては、多数のものが知られている
が、本発明においては希土類元素含有のペロブスカイト
型の酸化物超電導体や、Bi-Sr-Ca-Cu-O系酸化物超電導
体、Tl-Ba-Ca-Cu-O系酸化物超電導体などが適用され
る。
希土類元素を含有しペロブスカイト型構造を有する酸
化物超電導体は、超電導状態を実現できるものであれば
よく、たとえばRE M2Cu3O7−δ系(REは、Y、La、S
c、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどの希
土類元素から選ばれた少なくとも1種の元素を、MはB
a、Sr、Caから選ばれた少なくとも1種の元素を、δは
酸素欠陥を表し通常1以下の数、Cuの一部はTi、V、C
r、Mn、Fe、Co、Ni、Znなどで置換可能。)の酸化物な
どが例示される。なお、希土類元素は広義の定義とし、
Sc、YおよびLa系を含むものとする。
また、Bi-Sr-Ca-Cu-O系の酸化物超電導体は、 化学式:Bi2Sr2Ca2Cu3Ox ………(I) :Bi2(Sr,Ca)3Cu2Ox ………(II) (式中、Biの一部はPbなどで置換可能。) などで表されるものであり、Tl-Ba-Ca-Cu-O系酸化物
超電導体は、 化学式:Tl2Ba2Ca2Cu3Ox ………(III) :Tl2(Ba,Ca)3Cu2Ox ………(IV) などで表されるものである。
本発明に使用される金属基体は、少なくとも酸化物超
電導体層の形成面が銀により構成されているものであ
り、金属基体全体を銀で構成してもよいし、また銀と固
溶しにくい鉄、ニッケル、クロムおよびこれらの合金か
らなる芯材上に銀層を形成したものを用いることも可能
である。また、金属基体の形状としては、テープ状、ワ
イヤ状など各種形状のものを用いることが可能である。
そして、これらいずれの場合においても酸化物超電導
体層の形成面を、銀の(100)結晶面または(110)結晶
面が形成面に対して平行に配向した面、もしくはこれら
の混在した配向面により構成する。このように、酸化物
超電導体層の形成面を銀の(100)結晶面や(110)結晶
面とすることによって、この形成面に対してc面配向さ
せた酸化物超電導体層を得ることが可能となり、特に
(100)結晶面が酸化物超電導体層を配向させるのに適
している。
なお、銀と他の金属との複合体によって金属基体を構
成する際の銀層の厚さは特に限定されるものではない
が、銀の配向性を考慮して実用的には1μm以上とする
ことが好ましい。また、複合方法としては、芯材となる
金属部材表面に銀層をメッキ法や各種膜形成法によって
形成したり、機械的に芯材と銀とを一体化するなどの方
法を採用することができる。
これら銀の結晶面の配向度は、(100)結晶面もしく
は(110)結晶面、あるいはこれらが混在した状態で、
酸化物超電導体層の形成面に対して60%以上平行に配向
させる必要があり、特に銀の(100)結晶面が80%以上
となるように配向させることが好ましい。
このような銀の(100)結晶面や(110)結晶面による
配向面は、配向面方向に対して銀に圧延加工を施し、す
べり面によって結晶方位を揃えることによって得ること
ができる。そして、圧延加工によって得られる結晶面
は、(110)結晶面が揃いやすいため、この後、熱処理
を施すことによって再結晶させることが好ましい。この
再結晶化によって、銀の結晶粒が粗大化すると共に、
(100)結晶面の配向度が向上し、より酸化物超電導体
の結晶方位を配向しやすくなる。
また、上記少なくとも表面を銀により構成した金属基
体への酸化物超電導体層の形成方法としては、物理的蒸
着法であるスパッタ法、反応性蒸着法、レーザ蒸着法、
あるいは化学的蒸着法であるCVD法、MOCVD法など、各種
薄膜形成方法を用いることが可能である。
(作用) 本発明の超電導線材においては、金属基体の酸化物超
電導体形成面が銀の(100)結晶面もしくは(110)結晶
面による配向面により構成されている。これら銀の結晶
面の格子定数(a軸=4.09Å)は、酸化物超電導体結晶
のa軸およびb軸の格子定数(3.8Å〜3.9Å)に近似し
ているため、上記銀の結晶面上に酸化物超電導体層を薄
膜形成法により形成することによって、金属基体表面に
直接酸化物超電導体結晶のc面を配向させた酸化物超電
導体層を得ることが可能となる。したがって、臨界電流
密度の向上が図れると共に、金属基体を超電導体に対す
る安定化材として機能させることが可能となる。
(実施例) 次に、本発明の実施例について説明する。
実施例1 まず、銀素材に対して一定方向に圧延加工を施しつつ
線引き加工を行い、幅10mm×厚さ1mmの長尺などテープ
状基体を作製した。このようにして得た銀製テープ状基
体の主面(圧力印加面)の結晶方位をX線回析により解
析したところ、主面長手方向に対してほぼ平行となるよ
うに(110)面が配向していた。
次いで、この銀製テープ状基体に対して700℃×60分
の条件で再結晶化のための熱処理を施した。熱処理後の
同一面の結晶方位および結晶粒の大きさをX線回析によ
り調べたところ、(100)面が配向しており、その配向
度は80%であり、他は(110)面であった。また、結晶
粒は、0.5mm〜2mmに粗大化していた。
なお、この結晶面の配向度は、X線回析による各結晶
面の強度比により測定した結果である。
次に、上記銀製テープ状基体を(100)面による配向
面が蒸着源に対向するよう成膜装置内に設置し、この銀
製テープ状基体を約700℃に加熱しつつ、Y、Ba、Cuを
それぞれ加熱蒸発させ、膜厚モニターで膜厚を1μmに
制御しながら銀製テープ状基体の(100)面による配向
面上に連続して堆積させて超電導線材を作製した。
なお、成膜の際に銀製テープ状基体の表面近傍に酸素
をノズルから吹付け、さらに高周波で励起しつつ供給し
た。また、各蒸発元素はクラスター化させてイオン化
し、加速して着膜させると共に、膜組成がYBa2Cu3o
7−δとなるように各蒸発元素の量を調整した。
このようにして得た超電導線材の酸化物超電導体層の
結晶方位をX線回析により解析したところ、第1図に示
すように、銀製テープ状基体の(100)面による配向面
においてc面が平行に配向されていることを確認した。
また超電導特性は、臨界温度が85Kで、77Kにおける臨界
電流密度は1×104 A/cm2であった。
実施例2 芯材としてニッケルを用い、まずニッケル素材の表面
に銀をメッキにより被覆し、次いでこの複合材に対して
一定方向に圧延加工を施しつつ線引き加工を行い、幅10
mm×厚さ1mmの長尺なテープ状基体を作製した。なお、
表面の銀層の厚さは5μmであった。次いで、この複合
テープ状基体に対して700℃×30分の条件で再結晶化の
ための熱処理を施した後、銀表面の結晶方位および結晶
粒の大きさをX線回析により調べたところ、結晶粒が1
〜2mmに粗大化していると共に、実施例1と同様に主面
長手方向に対して平行に(100)面が配向しており、そ
の配向度は70%であった。
次に、上記複合テープ状基体をその銀層が蒸着源に対
向するよう成膜装置内に設置し、実施例1と同一条件で
厚さ約1μmのY-Ba-Cu-O系酸化物超電導体層を連続し
て形成して超電導線材を作製した。
このようにして得た超電導線材の酸化物超電導体層の
結晶方位をX線回析により解析したところ、銀層表面に
対して酸化物超電導体のc面が平行に配向されているこ
とを確認した。また超電導特性は、臨界温度が85Kで、7
7Kにおける臨界電流密度は8×103 A/cm2であった。
比較例1 まず、板状のステンレス芯材の表面に銀を電気メッキ
によって被覆して複合金属基体を作製した。得られた複
合金属基体の銀層の結晶方位をX線回析により解析した
ところ、銀の結晶面は(111)方向に配向していた。
次に、上記複合基体の銀層上に実施例1と同一条件で
Y-Ba-Cu-O系酸化物超電導体層を形成して超電導線材を
作製した。
得られた酸化物超電導体層は、82Kで超電導状態を示
したが、その結晶方位をX線回析によって解析したとこ
ろ、粉末X線回析パターンと同様な回析ピークが得ら
れ、特にc面の配向は認められなかった。
[発明の効果] 以上の実施例からも明らかなように、本発明の超電導
線材は、酸化物超電導体の超電導電流が流れやすいc面
が金属基体の長手方向に配向したものとなり、しかもこ
のような配向性を有する酸化物超電導体層が金属基体上
に直接形成されたものである。したがって、臨界電流密
度のような超電導特性に優れると共に、金属基体が安定
化材として機能するため、安定して超電導特性を発揮さ
せることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の超電導線材のX線回析結果
を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 トルン・ディン・タン 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝総合研究所内 (56)参考文献 特開 平1−186711(JP,A) 特開 平1−189813(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01B 12/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】長尺な金属基体と、この金属基体上に長手
    方向に連続して形成された酸化物超電導体層との複合体
    からなる超電導線材において、 前記金属基体の少なくとも酸化物超電導体層形成面は、
    銀の(100)結晶面および/または(110)結晶面が、前
    記酸化物超電導体層形成面に対して平行に配向した面に
    より構成されていることを特徴とする超電導線材。
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