JP5673931B2 - 混合物及びセルロースファイバー分散組成物並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
セルロースを有効活用する方法の一つとして補強材としての利用が挙げられる。従来では、樹脂成形体の機械的強度を高めるために、ガラス等の無機繊維を配合したものが補強材として用いられている。しかし、無機繊維が配合された樹脂成形体は、焼却時に無機繊維に由来する残渣が発生するため、埋め立て処理等により廃棄せざるを得ない点が問題となっている。
このため、補強材として相対的に強度の高い竹、麻、ケナフ等の植物繊維を有効利用できるなら、これら補強材は最終的に水と二酸化炭素に分解されるため、上記の廃棄の問題の解消につながるとして注目されている。
特許文献2には、市販のミクロフィブリル化セルロース(繊維径:0.01〜10μm)をアセトンに浸漬して脱水したミクロフィブリル化セルロースを、分散剤を用いてポリ乳酸と複合化させた材料が提案されている。
また、特許文献3には、疎水化されたセルロース系繊維とポリプロピレンをはじめとする合成樹脂を含む樹脂組成物並びに該組成物より形成された樹脂成形体が開示されている。
このように、セルロースとポリ乳酸からなる複合材料において、ポリ乳酸と繊維の界面の接着性や、成形体の外観を考慮すると、セルロースの平均粒子径や平均繊維径をおよそ1μmより小さい程度にまで微細化することが好ましいといえる。
しかしながら、これまでに提案されている技術では、たとえば微細化したセルロースファイバーとポリ乳酸との複合化(特許文献2)においては水分のアセトン置換を伴い、工
程が煩雑なものとなることから、工業スケールでのセルロースファイバー含有の複合材料の作製は困難なものとされていた。
また、疎水化されたセルロース系繊維を用いた場合(特許文献3)、簡便にセルロースファイバーと熱可塑性樹脂が複合化できるものの、この技術において用いる熱可塑性樹脂は水による加水分解が起きない樹脂であることが条件であり、対象樹脂が限定され、ポリ乳酸には適用できない。
このため、セルロースを乾燥させることなく複合化する試みも検討されているが、たとえば、特許文献1に示すような粉末状のセルロースと樹脂との複合化技術をナノサイズのセルロースファイバーに適用しようとすると、セルロースファイバー水分散液の水を除去する必要が生ずる。このとき、セルロースファイバー同士が凝集して凝集塊を形成することとなり、結果として得られる複合材料は、ナノサイズのセルロースファイバーが凝集した凝集塊が樹脂中に分散したものとなる。
また前記セルロースファイバーは、0.001乃至1μmの繊維径を有するファイバーであることが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂微粒子は、10nm乃至5μmの平均一次粒子径を有する微粒子であることが好ましく、より好ましくは50nm乃至1μmである。
また前記重合性基は、アクリロイル基、メタクリロイル基又はビニル基であることが好ましい。
さらに前記精製工程は、前記重合により得られた熱可塑性樹脂が不溶な溶剤を用いて行われることが好ましい。
そして前記セルロースファイバー及び前記単量体の合計100質量%に基いて、前記セルロースファイバーは0.1乃至50質量%の割合で用いられることが好ましい。
そして該混合物において、熱可塑性樹脂が10nm乃至5μmの平均一次粒子径を有する微粒子状の形態であると、該微粒子の表面積が大きいものとなり、該混合物をポリ乳酸樹脂等のマトリックス樹脂と溶融混練などにより複合化(組成物化)する際、熱可塑性樹脂に熱が伝わりやすく溶融しやすい。このため、溶融混練時に、マトリックス樹脂と熱可塑性樹脂との相溶性が高まり、ひいては、熱可塑性樹脂微粒子に交絡した状態で存在するセルロースファイバーのマトリックス樹脂への分散性が高まることとなる。また、たとえ熱可塑性樹脂(微粒子)がマトリックス樹脂よりもガラス転移温度が高い樹脂である場合であっても、微粒子状の形態を有していると溶融ブレンド時に熱可塑性樹脂間に溶融状態となったマトリックス樹脂が浸透しやすく、結果として得られるアロイ化複合樹脂の均一性が高まることとなる。
このように、本発明の混合物(複合材料)は、熱可塑性樹脂微粒子とセルロースファイバーとが交絡して存在し、また該熱可塑性樹脂微粒子の平均一次粒子径が非常に小さい微粒子であるために、該混合物をマトリックス樹脂にブレンドした組成物中のセルロースファイバー分散性を非常に優れたものとすることができる。
また該混合物は粉末形態を有するため、該混合物の製造時に製造装置からの抜き出し性が良好であり、該混合物とマトリックス樹脂との溶融ブレンド時、さらには溶融混練物(組成物)の成形時において、ハンドリングが向上したものとなる。
しかも、本製造方法によれば、セルロースファイバーと熱可塑性樹脂微粒子が、その後のマトリックス樹脂とのブレンド時に問題となるようなセルロースファイバーの凝集塊を形成することなく、均一に分散・複合化した微粒子状(粉末)の混合物(複合材料)が得られる。
そして該混合物の乾燥工程においても、セルロースファイバーと複合化している熱可塑性樹脂が微粒子であることから、表面積が大きいものとなり、このため乾燥効率が高く、該混合物の生産効率を向上させることができる。
そして本発明の製造方法によれば、使用するセルロース種によらずに、ポリ乳酸中のセルロースファイバーの均一分散性が高く、且つ成形性に優れるセルロースファイバー分散組成物を製造することができる、熱可塑性微粒子とセルロースファイバーとが交絡して存在する混合物(複合材料)を製造でき、ひいては、該混合物より、表面外観に優れた成形体を製造することができるセルロースファイバー分散組成物を製造することができる。
せておくことで、微粒子状の熱可塑性樹脂とセルロースファイバーとが交絡して存在する混合物(複合材料)が形成される。
このとき、熱可塑性樹脂の微粒子表面は疎水性であることが多く、親水性表面を有するセルロースとの親和性が低いことから、そのまま重合させるとそれぞれ別に凝集塊を生成し、不均一な混合物(複合材料)となる虞がある。そこで、熱可塑性樹脂の微粒子表面を、使用する重合開始剤の選択により制御することにより、すなわち、例えばアミノ基や水酸基、カルボキシル基などの極性基を有するラジカル開始剤を用いることによって、熱可塑性樹脂微粒子とセルロースの親和性を高めることが可能である。
このように、重合方法や重合条件、ラジカル開始剤の選択等を種々検討することにより、本発明の混合物(複合材料)、そしてその製造方法を完成させるに至った。以下、本発明について詳述する。
本発明は、熱可塑性樹脂微粒子とセルロースファイバーとが交絡して存在する混合物(複合材料)に関する。
該混合物は、セルロースファイバーの水分散液中で、ラジカル開始剤の存在下、60℃乃至90℃の温度で加熱することにより熱可塑性樹脂を形成する、重合性基を有する単量体を重合反応させる工程、前記重合反応系から水を除去する工程、及び前記ラジカル開始剤を反応系から除去する精製工程を経て、製造される。
このようにして得られた本発明の混合物(複合材料)は、セルロースファイバーが単独で凝集塊を形成することなく、またろ過など極めて簡便な方法によって、単離することができる。
以下、本発明の混合物(複合材料)について、その製造手順とともに詳述する。
まず、セルロースファイバーの水分散液中で、アゾ化合物、過硫酸塩又は有機過酸化物から選択されるラジカル開始剤の存在下、60℃乃至90℃の温度で加熱し熱可塑性樹脂を形成する、重合性基を有する単量体を重合させる。
こうした重合条件で単量体を重合させることにより、微粒子状の重合体を得ることができる。
こうして微細化されたセルロースファイバーは、0.001乃至1μmの繊維径を有する。
面、セルロースファイバーはアスペクト比が著しく高く、ファイバー同士の絡み合いが無視できないため、セルロースファイバーの濃度があまり高いと、濃度上昇に伴う粘度上昇が顕著で液体としての取扱いが困難になる。このため、セルロースファイバー水分散液のセルロースファイバー濃度は、0.1乃至10質量%が好ましく、より好ましくは1乃至5質量%である。
より好ましくは、重合性基を有する単量体の分散液への添加量が、単量体とセルロースファイバーの合計量の99乃至70質量%、すなわちセルロースファイバーの含量を前記合計量の1乃至30質量%とすることがより好ましい。
重合性基を有する単量体がセルロースファイバーに対して多量に存在していないと、後の工程でポリ乳酸等の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドして組成物を得る際、ファイバー同士が凝集して塊を形成する虞がある。このため、組成物中にセルロースファイバーが均一に分散した組成物を得るべく、重合性基を有する単量体を前記配合量に示すように、セルロースファイバーに対して多量に存在させることが肝要である。
前記ラジカル開始剤は、重合性基を有する単量体に対して0.01乃至100モル%添加することが好ましく、1乃至10モル%添加することがより好ましい。
上記有機溶剤としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチ
ルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。有機溶剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
また、上記有機過酸化物及び過硫酸塩は還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として用いることもできる。
前記単量体の重合工程に引き続き、反応系から水を除去する。本工程は、重合の終了を確認後、ろ過することにより容易に実施される。
その後、ラジカル開始剤を除去する精製工程は、先の工程で得られた重合体が不溶である溶剤を用いて実施される。具体的には、前工程でろ過して得られた残留物を、水、メタノール、エタノール、アセトン等を用いて洗浄する。
こうして析出した樹脂を、好ましくは25乃至100℃にて、上記洗浄に用いた溶剤を除去するために例えば真空乾燥させることにより、熱可塑性樹脂微粒子とセルロースファイバーとが交絡して存在する混合物(複合材料)を得る。
このようにして得られた混合物(複合材料)と、該混合物と溶融ブレンド可能なマトリックス樹脂を含むセルロースファイバー分散組成物も、本発明の対象である。
前記マトリックス樹脂としては、セルロースが分解する温度(約240℃)以下で成形できる熱可塑性樹脂(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、エチルセルロース、酢酸セルロース等)が挙げられる。
本発明の組成物は、公知の無機充填剤を含有し得る。無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、クレー、ウオラストナイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。これらの無機充填剤の形状は、繊維状、粒状、板状、針状、球状、粉末のいずれでもよい。これらの無機充填剤は、ポリ乳酸100質量部に対して、300質量部以内で使用できる。
また、本発明の組成物は、公知の難燃剤を含有し得る。難燃剤としては、例えば、臭素化合物、塩素化合物等のハロゲン系難燃剤、メラミン系難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリコーン化合物等の無機系難燃剤、赤リン、リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン等のリン系難燃剤、PTFE等のフッ素樹脂等が挙げられる。これらの難燃剤は、ポリ乳酸100質量部に対して、200質量部以内で使用できる。
さらに上記成分以外にも、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、離型剤、滑剤、可塑剤、相溶化剤、発泡剤、香料、抗菌抗カビ剤、その他の各種充填剤、一般的な合成樹脂の製造時に通常使用される各種添加剤も、本発明の組成物に併用することができる。
なお、これら<その他添加剤>をさらに含む混合物(複合材料)もまた、本発明の対象である。
[実施例1]
1.0質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液50gに、酢酸0.5g及びメタクリル酸メチル2.75gを加え、80℃に加熱した。別途、水3gに酢酸30mg及びラジカル開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]100mgを加え開始剤水溶液を調製した。この水溶液を80℃に加熱した前記セルロースファイバー水分散液に添加し、80℃に維持して撹拌を行った。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノール100gと水100gで洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)2.73gを作製した。
得られた混合物のポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと略称する。)の重量平均分子量;92,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
1.0質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液50gに、エタノール10gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル65.8mgを添加し、さらにメタクリル酸メチル2.75gを加え、70℃に加熱し撹拌を行った。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノール100gと水100gで洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)2.79gを作製した。
得られた混合物のPMMAの重量平均分子量;310,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
0.7質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液68gに、酢酸0.7g及びラジカル開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]104mgを添加し、撹拌して溶解させた後、酢酸ビニル2.41gを添加し、70℃に加熱し撹拌を行った。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物を水100gで洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)2.04gを作製した。
得られた混合物のポリ酢酸ビニルの重量平均分子量;1,255,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
3.5質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液68gに、酢酸0.7g及びメタクリル酸メチル8.40gを加え、70℃に加熱した。別途、水9gに酢酸90mg及びラジカル開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]300mgを加え、開始剤水溶液を調製した。この水溶液を前記セルロースファイバー水分散液に添加し、70℃に維持して撹拌を行った。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノールと水で洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)9.9
0gを作製した。
得られた混合物のPMMAの重量平均分子量;161,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
[実施例5]
実施例1で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とするセルロースファイバー分散組成物を作製した。
実施例2で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とするセルロースファイバー分散組成物を作製した。
実施例3で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とするセルロースファイバー分散組成物を作製した。
実施例4で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とするセルロースファイバー分散組成物を作製した。
0.7質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液68gに、メタクリル酸メチル2.75gを加え、80℃に加熱した。別途、水4gにラジカル開始剤として過硫酸カリウム218mgを加え開始剤水溶液を調製した。この水溶液を前記セルロースファイバー水分散液に添加し、80℃に維持して撹拌を行った。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノール100gと水100gで洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)2.99gを作製した。
得られた混合物のPMMAの重量平均分子量;141,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
0.7質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液60gに、メタクリル酸メチル3.96gを加え、80℃に加熱した。別途、水2gにラジカル開始剤として過硫酸アンモニウム920mgを加え開始剤水溶液を調製した。この水溶液を前記セルロースファイバー水分散液に添加し、80℃に維持して撹拌を行った。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、6N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和を行い、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノール100gと水100gで洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)2.95gを作製した。
得られた混合物のPMMAの重量平均分子量;118,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
[実施例11]
1.0質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液50gに、メタクリル酸メチル2.75gを加え、80℃に加熱した。別途、水3gにラジカル開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩100mgを加え開始剤水溶液を調製した。この水溶液を前記セルロースファイバー水分散液に添加し、80℃に維持して撹拌を行った。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノール100gと水100gで洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)2.29gを作製した。
得られた混合物のPMMAの重量平均分子量;115,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
1.0質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液50gに、メタクリル酸メチル5.00g及び2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]297mgを加え75℃に加熱し撹拌した。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノール100gと水100gで洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)を作製した。
得られた混合物のPMMAの重量平均分子量;612,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
[例13]
例9で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とするセルロースファイバー分散組成物を作製した。
例10で作製した混合物(複合材料)0.40gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.60gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とするセルロースファイバー分散組成物を作製した。
[実施例15]
実施例11で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とするセルロースファイバー分散組成物を作製した。
実施例1で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリメタクリル酸メチル3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(240℃、50rpm、5分)し、ポリメタクリル酸メチルを主成分とするセルロースファイバー分散組成物を作製した。
本比較例は、セルロースファイバー水分散液中で重合性基を有する単量体を重合させていない点で、本明細書の実施例と異なる。
水50gにメタクリル酸メチル2.75gと酢酸0.5gを加え80℃に加熱した。別途、水3gに酢酸36mg及びラジカル開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イ
ミダゾリン−2−イル)プロパン]100mgを加え開始剤水溶液を調製した。この水溶
液を80℃に維持したメタクリル酸メチル水溶液に添加し、80℃に加熱し撹拌を行った。加熱及び撹拌を中止して室温に放置し、重合が終了したことを確認した後、0.7質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液68gを加えた。撹拌した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノール100gと水100gで洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)2.73gを作製した。
得られた混合物(複合材料)のPMMAの重量平均分子量;55,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
本比較例は、アゾ化合物、過硫酸塩、有機過酸化物のいずれでもない開始剤を用いる点で、本明細書の実施例と異なる。
0.7質量%パルプ由来セルロースファイバー水分散液68gに、メタクリル酸メチル2.75g、硝酸二アンモニウムセリウム0.83gを加え、室温で撹拌した。48時間撹拌した後、ろ過により水を除去した。水を除去した後の残留物をメタノールと水で洗浄し、40℃で真空乾燥を行い、混合物(複合材料)1.02gを作製した。
得られた混合物(複合材料)のPMMAの重量平均分子量;549,000(測定装置:東ソー(株)製HLC−8220GPC、標準試料:ポリスチレン)
比較例1で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とする組成物を作製した。
比較例2で作製した混合物(複合材料)0.26gとポリ乳酸(NatureWorks社製3001D)3.74gをラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製)で溶融混練(200℃、50rpm、5分)し、ポリ乳酸を主成分とする組成物を作製した。
実施例1及び実施例2で作製した各混合物(複合材料)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、セルロースファイバーとPMMA(熱可塑性樹脂)の微粒子からなる混合物の状態を観察した。結果を図1及び図2に示す。
なお、使用した走査型電子顕微鏡は以下の通りである。
<測定装置>JEOL(日本電子(株))製 JSM−7400F
いて、セルロースファイバーはPMMAの微粒子表面に絡まった状態にあり、微粒子間にいわば抱きこまれている状態で存在していることが確認された。
また、これら顕微鏡写真より、PMMA微粒子の粒径は50nm乃至1μmの範囲内であった。
実施例5乃至実施例8、例13、例14、実施例15及び実施例16及び、比較例3及び比較例4で作製した各組成物について、偏光顕微鏡を用いて各組成物におけるセルロースファイバーの分散状態を観察した。結果を図3乃至図12に示す。
なお、偏光顕微鏡写真の撮影条件は以下の通りである。
<測定装置>(株)ニコン製 偏光顕微鏡 ECLIPSE LV100POL
<測定条件>200℃に組成物を加熱し、溶融状態を観察
図3乃至図10に示すように、実施例5乃至実施例8、実施例15及び実施例16で作製した各セルロースファイバー分散組成物は、ポリ乳酸又はポリメタクリル酸メチルへのセルロースファイバーの分散性が高いことが観察された。一方、比較例3及び比較例4で作製した組成物(図11及び図12)は実施例に比べてセルロースが凝集しており、均一分散性に劣ることが観察された。
実施例5乃至実施例8、例13、例14、実施例15及び実施例16及び、比較例3及び比較例4で作製した各組成物の偏光顕微鏡写真を観察し、撮影写真に見られるセルロースファイバーの凝集塊の大きさを評価した。そして下記表1の基準に基づき、セルロースファイバーの分散性を評価した。得られた結果を表2に示す。
評価方法:偏光顕微鏡写真を目視することによる凝集塊の大きさ評価
一方、比較例3及び比較例4の組成物は、偏光顕微鏡写真において100μmを超えるセルロースファイバーの凝集塊の存在が確認され、セルロースファイバーの分散性に劣るとする結果が得られた。
Claims (6)
- セルロースファイバーの水分散液中で、アゾ化合物からなるラジカル開始剤の存在下、60℃乃至90℃の温度で加熱することにより、10nm乃至5μmの平均一次粒子径を有する微粒子状の熱可塑性樹脂を形成する、アクリロイル基、メタクリロイル基又はビニル基を有する単量体を重合反応させる工程、
ろ過により前記重合反応系から水を除去する工程、及び
前記ラジカル開始剤を反応系から除去する精製工程、
を含む、10nm乃至5μmの平均一次粒子径を有する熱可塑性樹脂微粒子とセルロースファイバー(ただし、前記セルロースファイバーは、その表面が水系における重合性成分のグラフト重合により、グラフト修飾されているものを除く。)とが交絡して存在する混合物の製造方法。 - 前記ラジカル開始剤として水溶性のラジカル開始剤を用いる、請求項1に記載の製造方法。
- 前記ラジカル開始剤として疎水性のラジカル開始剤を用いる場合であって、前記セルロースファイバーの水分散液はメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む、請求項1に記載の製造方法。
- 前記精製工程は、前記重合により得られた熱可塑性樹脂が不溶な溶剤を用いて行われる、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記セルロースファイバー及び前記単量体の合計100質量%に基いて、前記セルロースファイバーは0.1乃至50質量%の割合で用いられる、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の製造方法。
- セルロースファイバーの水分散液中で、アゾ化合物からなるラジカル開始剤の存在下、6
0℃乃至90℃の温度で加熱することにより、10nm乃至5μmの平均一次粒子径を有する微粒子状の熱可塑性樹脂を形成する、アクリロイル基、メタクリロイル基又はビニル基を有する単量体を重合反応させる工程、
ろ過により前記重合反応系から水を除去する工程、
前記ラジカル開始剤を反応系から除去する精製工程、及び
前記精製工程後、25℃乃至100℃にて乾燥させて得られた前記微粒子状の熱可塑性樹脂と前記セルロースファイバーとが交絡して存在する混合物と該混合物と溶融ブレンド可能なポリ乳酸又はポリメタクリル酸メチルとを溶融ブレンドする工程、
を含む、10nm乃至5μmの平均一次粒子径を有する熱可塑性樹脂微粒子とセルロースファイバー(ただし、前記セルロースファイバーは、その表面が水系における重合性成分のグラフト重合により、グラフト修飾されているものを除く。)とが交絡して存在する混合物、及び、該混合物と溶融ブレンド可能なポリ乳酸又はポリメタクリル酸メチルを含むセルロースファイバー分散組成物の製造方法。
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