JP2009084333A - ポリ乳酸/天然ゴム組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】天然ゴムおよび脱蛋白質化天然ゴムの少なくとも一方からなるゴム状重合体が分散した溶液にビニルモノマーを添加してグラフト化ゴム状重合体を形成し、同反応液に酸を添加してグラフト化ゴム状重合体を凝集させて回収した凝集物を乾燥させて、粉体化した粒子状のポリ乳酸樹脂改質剤を得る。その後、得られた改質剤とポリ乳酸樹脂とを溶融混練してポリ乳酸/天然ゴム組成物を製造する。
【選択図】図1
Description
具体的には、請求項2に記載されるように、前記粒子状の改質剤の平均粒径が0.02〜25μmであり、より具体的には、請求項3に記載されるように、前記ゴム状重合体の平均粒径が0.01〜20μmであるようにすることができる。すなわち、同ゴム状重合体は、前記ゴムの粒子が単数で、または複数凝集した塊で、その平均粒径が0.01〜20μmであるようにすることができる。
上記構成によれば、前記改質剤のグラフト率が5〜50%であるため、ゴム状重合粒子の表面をグラフト鎖により形成された表層が覆う良好なミクロ相分離構造を形成することができるようになる。
また、請求項7に記載されるように、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物は、前記ビニルモノマーが重合して形成されたホモポリマーを有するものであることもできる。ここで、ビニルモノマーがゴム状重合体にグラフト共重合されて形成されているポリマー、すなわちグラフト鎖を形成しているポリマーがグラフトポリマーに相当し、ゴム状重合体にグラフト共重合されずにビニルモノマーのみが重合して形成されているポリマーがホモポリマーに相当する。
(ポリ乳酸樹脂)
ここで、ポリ乳酸系樹脂とは乳酸を主成分とするポリエステルである。このポリ乳酸の合成方法としては特に限定されず、D−乳酸、L−乳酸の直接重合でもよく、乳酸の環状2量体であるD−ラクチド、L−ラクチド、meso−ラクチドの開環重合であってもよい。またポリ乳酸としては、L−乳酸由来のモノマー単位と、D−乳酸由来のモノマー単位のいずれか一方のみで構成されていてもよいし、また双方の共重合体であってもよい。また、L−乳酸由来のモノマー単位と、D−乳酸由来のモノマー単位の比率が異なる複数のポリ乳酸が任意の割合でブレンドされたものを用いてもよい。さらに、ポリ乳酸は、上述した乳酸又はラクチド成分に加えて、グリコリド、カプロラクトン等の他の重合性単量体成分が重合した共重合体を含んでいてもよい。また、これら他の重合性単量体が単独重合したポリマーがポリ乳酸にブレンドされていてもよい。このポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、7万≦重量平均分子量<300万が好ましく、10万≦重量平均分子量≦150万がより好ましい。なお、本発明において重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値をいう。
(原料ラテックス)
本発明で改質剤を得るための原料となる天然ゴムラテックスとしては、天然ゴムの木から得られたラテックスおよび該ラテックスを処理したものを使用することができ、例えば、新鮮なフィールドラテックスや、市販のアンモニア処理ラテックス等を使用することができる。
(天然ゴムの脱蛋白質化)
天然ゴムラテックスの脱蛋白質化の方法は特に限定されないが、同ラテックスに蛋白質分解酵素等を添加して蛋白質を分解させる方法(特開平6−56902号公報)、石鹸等の界面活性剤により繰り返し洗浄する方法、尿素を用いる方法(特開2004−99696号公報)など、公知の方法により行うことができる。このうち、例えば本発明者らが先に提案した尿素を用いる方法は、適当な界面活性剤添加して安定化させた天然ゴムラテックスに、下記一般式(1)で表される尿素系化合物およびNaClOからなる群から選択される蛋白質変性剤を添加し、ラテックス中の蛋白質を変性除去した後、界面活性剤により洗浄して脱蛋白質化天然ゴムラテックスを得る方法である。ここで界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウムに代表されるアニオン系界面活性剤が好んで用いられる。
R1NHCONH2 (1)
(式中、R1はH、炭素数1〜5のアルキル基を表す)
なお、天然ゴムラテックスの脱蛋白質化は、天然ゴムの窒素含有率が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下になるようにする。
(グラフト化)
天然ゴムおよび脱蛋白質化天然ゴムの少なくとも一方からなるゴム状重合体表面にビニルモノマーをグラフトさせるには、同ゴム状重合体のラテックス溶液にビニルモノマーおよび適当な重合開始剤を添加して反応させる。
重合開始剤を反応液に添加し、好ましい温度下で2〜10時間反応を行わせることにより、ゴム状重合体表面にビニルモノマーがグラフト化したグラフト化ゴム状重合体が得られる。なお、重合温度は、使用する開始剤の種類により異なるが、通常10〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲である。
(粉体としての粒子状改質剤の回収)
グラフト化終了後の反応液に酸を添加してグラフト化ゴム状重合体を凝集させて同グラフト化重合体をろ過回収した後、高温下乾燥処理を行うことにより粉体として粒子状の改質剤を得る。このようにグラフト化ゴム状重合体が凝集する理由としては、反応液に酸が添加されて、アニオン系界面活性剤のアニオン性が失われることが考えられる。そして、このような状態で高温下乾燥処理を行うことにより粒子状の改質剤を粉体として得ることができる。なお、乾燥は20〜80℃の範囲で行われることが望ましい。
(ポリ乳酸/天然ゴム組成物の調製)
上記ポリ乳酸樹脂と上記改質剤とを、例えば1軸又は2軸押出機により所定温度で均一に溶融混練することにより、ポリ乳酸/天然ゴム組成物が調製される。改質剤の分散をよくする点では、1軸押出機よりも2軸押出機が適している。
(評価方法)
本実施例においては、以下に示す各種評価方法を適用した。
(1)強度試験:曲げ強度(MPa)
規格(ISO178)に準拠して評価した。
(2)耐衝撃性試験:アイゾット(Izod)衝撃強度(kJ/m2)
規格(ISO180)に準拠して23℃にて評価した。
(3)成形性試験
熱板プレスにて試験片を成形する際に作業性や成形性、金型離型性に問題がないものを「○」と評価した。ここで、問題があるとは、金型から離型し難いことや著しく粘性が高いことなどを示す。
(4)ポリ乳酸/天然ゴム組成物中の改質剤分散状態の観察
四酸化オスミウムOsO4にて染色した後、クライオミクロトームを用いて−30℃にて約100nmの超薄切片を作製した。同超薄切片を用いて透過型電子顕微鏡にて相分離構造を観察した。
(5)グラフト率
グラフト後の重合体の適量をアセトン/メチルエチルケトン混合溶液(体積比1/2)中に投入し、40℃にて72時間浸漬させながら約2時間毎に上記混合溶液を交換してホモポリマーを同混合溶液に溶解させた。その後、不溶性成分として得られたグラフト化ゴム状重合体を重クロロホルム溶媒へ溶解させ、1H−NMR測定により、グラフト化ゴム状重合体中のグラフトポリマーの定量を行い、重量%としてグラフト率を求めた。
(実施例1)
(1)天然ゴムの脱蛋白質化
天然ゴムラテックスとして、GOLDEN HOPE PLANTATION製のsingleHAラテックス(ゴム分濃度60.2重量%、アンモニア分0.7重量%、ゴム粒子の平均粒径約1μm)を使用した。
(2)グラフト化ゴム状重合体の形成
窒素置換下の反応系において、上記脱蛋白質化天然ゴムラテックス(ゴム状重合体)に、tert−ブチルハイドロパーオキサイドおよびテトラエチレンペンタミンを、ラテックス中のゴム分1gに対して各々3.3×10−5molになるように室温で添加した。次いで、45℃にて、ラテックス中のゴム分1gに対して0.15gのメタクリル酸メチルを約1ml/minの速度で滴下して4時間反応を行った。反応後、未反応のメタクリル酸メチルを減圧除去してグラフト化ゴム状重合体を得た。ここで、メタクリル酸メチルのみが重合したホモポリマーと改質剤の合計量は、ゴム状重合体100gに対して113.1gであった。また、重合度を評価するグラフト率を前述の方法で求めたところ、グラフト化ゴム状重合体のグラフト率は7%であった。
(3)粉体化した粒子状の改質剤の回収
(2)で得られた反応液に、グラフト化ゴム状重合体の凝集物が得られるまで撹拌しながら蟻酸を徐々に添加した。次いで、同凝集物をろ過回収して水洗した後、同凝集物を50℃にて高温乾燥することにより、粉体として粒子状のグラフト化ゴム状重合体、すなわち改質剤を得た。
(4)ポリ乳酸/天然ゴム組成物のサンプルの調製
(3)で得られた改質剤20重量部をポリ乳酸樹脂(三井化学株式会社製「LACEA H−400」)80重量部に加え、溶融混練を行った。
(実施例2)
実施例1の(2)のグラフト化ゴム状重合体の形成において、上記グラフト化ゴム状重合体のグラフト率が10%、メタクリル酸メチルのみが重合したホモポリマーと改質剤の合計量が、ゴム状重合体100gに対して113.8gであるほかは、実施例1と同様にして試験用サンプルを作製し、上記評価を行った。
(実施例3)
実施例1の(2)のグラフト化ゴム状重合体の形成において、上記ビニルモノマーとして酢酸ビニルを使用したほかは、実施例1と同様にして試験用サンプルを調製し、上記評価を行った。
(比較例1)
実施例1で使用したポリ乳酸樹脂100重量部からなる試験用サンプルを作製し、上記評価を行った。
(比較例2)
実施例1で使用したポリ乳酸樹脂80重量部と実施例1で使用した天然ゴムラテックス、すなわちGOLDEN HOPE PLANTATION製のsingleHAラテックス(ゴム分濃度60.2重量%、アンモニア分0.7重量%、ゴム粒子の平均粒径約1μm)20重量部とを溶融混練してポリ乳酸/天然ゴム組成物を得た。その後、実施例1と同様にして試験用サンプルを作製し、上記評価を行った。
(比較例3)
実施例1で使用したポリ乳酸樹脂80重量部と、実施例1の(1)で調製した脱蛋白質天然ゴム20重量部とを溶融混練してポリ乳酸/天然ゴム組成物を得た。その後、実施例1と同様にして試験用サンプルを作製し、上記評価を行った。
(比較例4)
実施例1で使用したポリ乳酸樹脂80重量部に対し、メタクリル酸メチルを用いてグラフト率が30%になるようにグラフト化したグラフト化天然ゴム(INTER RUBBER LATEX社製「Mg30」)20重量部を溶融混練してポリ乳酸/天然ゴム組成物を得た。その後、実施例1と同様にして試験用サンプルを作製し、上記評価を行った。
(比較例5)
実施例1の(3)に記載した工程を行わずにポリ乳酸/天然ゴム組成物を得たほかは、実施例1と同様にして試験用サンプルを作製した。
(評価結果)
実施例1〜3,比較例1〜5を評価した結果を表1に示す。
なお、比較例2,比較例3においてはアイゾット衝撃強度の向上がみられなかったことから、ゴム状重合体(天然ゴム、脱蛋白質化天然ゴム)20重量部をポリ乳酸樹脂に混合することでは耐衝撃性が向上しないことが分かった。
上記評価結果になった理由としては、図1の実施例1のポリ乳酸/天然ゴム組成物の透過型電子顕微鏡写真に示されるように、ゴム状重合体(黒色部)が粒子状で同組成物中に均一に分散するとともに、同ゴム状重合体の表面に形成されたグラフト鎖がポリ乳酸樹脂と相溶していることが挙げられる。すなわち、同組成物は、ゴム状重合体(黒色部)が島、ポリ乳酸樹脂(白色部)が海の海島構造を形成するとともに、これら島と海との境界において同ゴム状重合体の表面に形成されたグラフト鎖がポリ乳酸樹脂と相溶することにより、同グラフト鎖を介してゴム状重合体とポリ乳酸樹脂とが密接に結び付いた構造を形成している。なお、分散する改質剤の粒径は0.1〜5μmであるとともに、ゴム状重合体の粒径は0.05〜4.5μmであった。
(1)ポリ乳酸樹脂の改質剤を得る工程として、ゴム状重合体が分散した溶液にビニルモノマー(メタクリル酸メチルまたは酢酸ビニル)を添加してグラフト化ゴム状重合体を形成する工程を備えているため、非極性であるゴム状重合体の表面を、極性を有するビニルモノマーが重合してなるグラフト鎖により形成される表層で覆う構造、すなわちミクロ相分離構造を有するグラフト化ゴム状重合体を形成することができる。このように極性を有するグラフト鎖は、高極性であるポリ乳酸との相溶性が良いため、乾燥させて粉体化して得られる粒子状の改質剤をポリ乳酸樹脂中に均一に分散させることができるようになる。すなわち、ポリ乳酸樹脂の耐衝撃性向上に寄与するゴム状重合体をポリ乳酸樹脂中に均一に分散させることができるようになる。したがって、耐衝撃性を向上させたポリ乳酸/天然ゴム組成物が得られる。
Claims (14)
- ポリ乳酸樹脂に同ポリ乳酸樹脂を改質する天然ゴム由来の改質剤が少なくとも混合されてなるポリ乳酸/天然ゴム組成物であって、
前記改質剤は、天然ゴムおよび脱蛋白質化天然ゴムの少なくとも一方からなるゴム状重合体と、同ゴム状重合体の表面にビニルモノマーをグラフト共重合させて形成される表層とを有し、粒子状の前記改質剤が前記ポリ乳酸樹脂中に分散されてなる
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物。 - 請求項1に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物において、
前記粒子状の改質剤の平均粒径が0.02〜25μmである
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物。 - 請求項1または2に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物において、
前記ゴム状重合体の平均粒径が0.01〜20μmである
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物において、
前記改質剤のグラフト率が5〜50%である
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物において、
前記ビニルモノマーは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルおよび酢酸ビニルのいずれか一つである
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物において、
前記ポリ乳酸樹脂(A)と前記改質剤(B)との重量比A/Bが99/1〜40/60である
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物において、
前記ビニルモノマーが重合して形成されたホモポリマーを有する
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物。 - 請求項7に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物において、
前記ゴム状重合体100重量部に対して前記改質剤と前記ホモポリマーが合計量で101〜200重量部含まれる
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物。 - ポリ乳酸樹脂に同ポリ乳酸樹脂を改質する天然ゴム由来の改質剤が少なくとも混合されてなるポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法であって、
天然ゴムおよび脱蛋白質化天然ゴムの少なくとも一方からなるゴム状重合体が分散した溶液にビニルモノマーを添加してグラフト化ゴム状重合体を形成する工程と、同反応液に酸を添加して前記グラフト化ゴム状重合体を凝集物として回収する工程と、前記凝集物を乾燥させて粉体化した粒子状の改質剤を得る工程と、
前記改質剤と前記ポリ乳酸樹脂とを溶融混練する工程とを備える
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法。 - 請求項9に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法において、
前記粒子状の改質剤の平均粒径は0.02〜25μmである
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法。 - 請求項9または10に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法において、
前記ゴム状重合体の平均粒径が0.01〜20μmである
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法。 - 請求項9〜11のいずれか一項に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法において、
前記改質剤のグラフト率が5〜50%である
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法。 - 請求項9〜12のいずれか一項に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法において、
前記ビニルモノマーはアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルおよび酢酸ビニルのいずれか一つである
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法。 - 請求項9〜13のいずれか一項に記載のポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法において、
前記ポリ乳酸樹脂(A)と前記改質剤(B)の重量比A/Bが99/1〜40/60である
ことを特徴とするポリ乳酸/天然ゴム組成物の製造方法。
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