本発明で用いられる(A)ポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。
本発明においては、耐熱性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸を用いることが好ましい。すなわち、(A)ポリ乳酸系樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかまたはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかまたはD体が90%以上含まれることがさらに好ましく、L体が95%以上含まれるかまたはD体が95%以上含まれることが特に好ましく、L体が98%以上含まれるかまたはD体が98%以上含まれることが最も好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。さらに融点が向上するという点から、L体が80%以上含まれるポリ乳酸およびD体が80%以上含まれるポリ乳酸を併用することが好ましい。
(A)ポリ乳酸系樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは4万以上、さらに好ましくは8万以上、特に好ましくは10万以上であるのがよい。上限は特に制限されないが、好ましくは50万以下、さらに好ましくは30万以下、より好ましくは25万以下であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。
(A)ポリ乳酸系樹脂の融点については、特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
(A)ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを用いることができる。
本発明で用いられる(B)メタクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル成分単位を主成分、好ましくは70%以上含むものであればよく、他のビニル系単量体成分単位を好ましくは30%以下共重合した共重合体でもよい。その他のビニル系単量体としては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、マレイン酸無水物、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸ジシクロペンタニル、ジアクリル酸ブタンジオール、ジアクリル酸ノナンジオール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ペンタメチルピペリジル、メタクリル酸テトラメチルピペリジル、メタクリル酸ベンジル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられ、これらのビニル系単量体は単独または2種以上を用いることができる。また、耐熱性、低吸湿性、表面硬度の点で、ラクトン環、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物などの環構造単位を主鎖に含有する共重合体が好ましい。さらに、環構造を主鎖に含有する共重合体を用いる場合には、環構造を含有しないメタクリル系樹脂を併用することがより好ましい。
本発明において、耐熱性および成形性が優れるという点で、(B)メタクリル系樹脂は、重量平均分子量5万〜45万であることが好ましく、7万〜20万がより好ましく、9万〜15万がさらに好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたGPCで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。
本発明において、耐熱性に優れるという点で、(B)メタクリル系樹脂のガラス転移温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましく、110℃以上が特に好ましく、120℃以上が最も好ましい。上限は特に限定されないが、成形性の点で、150℃以下が好ましい。ここでいうガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)測定により求めたガラス転移温度の値であり、ガラス転移温度領域における比熱容量変化が半分の値となる温度である。さらに、本発明においては、(B)メタクリル系樹脂は、ガラス転移温度110℃以上である(B)メタクリル系樹脂を少なくとも1種含むものであることが好ましい。
本発明において、耐熱性に優れるという点で、(B)メタクリル系樹脂のシンジオタクチシチーは、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましく、70%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、成形性の点で、90%以下が好ましい。また、耐熱性の点で、ヘテロタクチシチーが45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることがさらに好ましく、30%以下であることが特に好ましい。また、耐熱性の点で、アイソタクチシチーが20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。ここでいうシンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとは、溶媒として、重水素化クロロホルムを用いた1H−NMR測定による直鎖分岐のメチル基の積分強度比から算出した値である。
本発明で用いる(B)メタクリル系樹脂は、230℃の温度かつ37.2Nの荷重でのメルトフローレート(MFR)が、0.1〜40g/10分であることが好ましく、成形加工性の点で、1〜30g/10分であることがより好ましく、2〜20g/10分であることがさらに好ましい。MFRが0.1g/10分未満では、成形加工性が低下する傾向にあり、40g/10分を越えると耐熱性向上効果が低下する傾向にある。
本発明において、(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂の配合比は、特に限定されるものではないが、耐熱性および成形性の点で、重量比((A)ポリ乳酸系樹脂/(B)メタクリル系樹脂)が99/1〜1/99であることが好ましく、90/10〜10/90であることがより好ましく、80/20〜20/80であることがさらに好ましく、70/30〜30/70であることが特に好ましく、59/41〜35/65であることが最も好ましい。
本発明において、耐熱性および成形性に優れるという点で、(B)メタクリル系樹脂としては、下記条件を一つ以上満たす2種以上のメタクリル系樹脂を含むことが好ましい。
(a)ガラス転移温度の差が10℃以上
(b)シンジオタクチシチーの差が3%以上
さらに、ガラス転移温度の差が15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度の差が10℃未満であると、耐熱性改良効果が不充分である。また、ガラス転移温度の差の上限は特に限定されないが、透明性の点で、60℃以下であることが好ましい。本発明において、2種以上のメタクリル系樹脂を用いる場合には、ガラス転移温度領域、すなわち、比熱容量変化領域は、単独で用いる場合よりも広がる傾向にあり、好ましくはガラス転移温度±10℃、より好ましくはガラス転移温度±20℃、さらに好ましくはガラス転移温度±30℃、特に好ましくはガラス転移温度±40℃である。
さらに、シンジオタクチシチーの差が5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。シンジオタクチシチーの差が3%未満であると、耐熱性改良効果が不充分である。また、シンジオタクチシチーの差の上限は特に限定されないが、透明性の点で、50%以下であることが好ましい。
本発明において、2種以上のメタクリル系樹脂を用いる場合のそれぞれのメタクリル系樹脂の組成は、特に限定されないが、耐熱性および流動性が優れるという点で、ガラス転移温度もしくはシンジオタクチシチーが最も高い値を示すメタクリル系樹脂をメタクリル系樹脂1とし、他方をメタクリル系樹脂2として、メタクリル系樹脂1とメタクリル系樹脂2の重量比(メタクリル系樹脂1/メタクリル系樹脂2)が10/90〜90/10であることが好ましく、60/40〜40/60であることがより好ましい。
(B)メタクリル系樹脂の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができる。重合時の温度条件は特に限定されないが、メタクリル酸系樹脂の耐熱性の点で、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、―10℃以下が特に好ましい。
本発明で用いられる(C)耐衝撃改良剤とは、熱可塑性樹脂の耐衝撃性改良に用いることのできるものであれば特に制限されないが、室温でゴム弾性を示すゴム状物質のことであり、例えば、下記の各種耐衝撃改良剤などから選ばれる少なくとも1種のものを用いることができる。
すなわち、(C)耐衝撃改良剤の具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(たとえば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(たとえばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステル系エラストマーおよびポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
さらに、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造などを有するもの、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体などを使用することができる。
また、本発明において、(C)耐衝撃改良剤としては、上記具体例に挙げた各種の(共)重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体などのいずれも用いることができる。さらに、これらの(共)重合体を製造するに際し、他のオレフィン類、ジエン類、芳香族ビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルなどの単量体を共重合することも可能である。
これらの(C)耐衝撃改良剤の中でも、アクリル単位を含む重合体や、酸無水物基および/またはグリシジル基を持つ単位を含む重合体が好ましい。ここでいうアクリル単位の好適例としては、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位およびアクリル酸ブチル単位を挙げることができ、酸無水物基やグリシジル基を持つ単位の好適例としては、無水マレイン酸単位およびメタクリル酸グリシジル単位を挙げることができる。
本発明において、耐衝撃性に優れるという点から、(C)耐衝撃性改良剤としては、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体であり、シェル層がメタクリル酸メチル単位および/またはアクリル酸メチル単位を含む重合体から構成される多層構造重合体であることがさらに好ましい。なお、本発明において、多層構造重合体とは、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成され、また、隣接する層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェル型と呼ばれる構造を有する重合体である。
また、多層構造重合体を構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよい。
さらに、多層構造重合体としては、内部に少なくとも1層以上のゴム層を有する多層構造重合体であることが好ましい。ここで、ゴム層の種類は、特に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する重合体成分から構成されるものであればよい。例えば、(メタ)アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分などを重合させたものから構成されるゴムが挙げられる。好ましいゴムとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル単位、(メタ)アクリル酸ブチル単位、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル単位および(メタ)アクリル酸ベンジル単位などの(メタ)アクリル成分、ジメチルシロキサン単位やフェニルメチルシロキサン単位などのシリコーン成分、スチレン単位やα−メチルスチレン単位などのスチレン成分、アクリロニトリル単位やメタクリロニトリル単位などのニトリル成分またはブタンジエン単位やイソプレン単位などの共役ジエン成分を重合させたものから構成されるゴムである。また、これらの成分の他に、ジビニルベンゼン単位、(メタ)アクリル酸アリル単位またはブチレングリコールジアクリレート単位などの架橋性成分を共重合し架橋させた架橋ゴムも好ましい。これらの中でも、透明性、耐衝撃性の点から、ゴム層としては、架橋ゴムが好ましく、ガラス転移温度が0℃以下の架橋ゴムであることがより好ましく、このようなゴム層の種類としては、アクリル酸エチル単位、アクリル酸−2−エチルヘキシル単位、アクリル酸ブチル単位、アクリル酸ベンジル単位、メタクリル酸アリル単位を適宜選択し併用して用いることがさらに好ましく、メタクリル酸アリル単位をゴム層構成単位の0.005〜3重量%の範囲で用いるのが特に好ましい。
本発明において、多層構造重合体において、ゴム層以外の層の種類は、熱可塑性を有する重合体成分から構成されるものであれば特に限定されるものではないが、透明性、耐熱性および耐衝撃性の点から、ゴム層よりもガラス転移温度が高い重合体成分であることが好ましい。熱可塑性を有する重合体としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位またはその他のビニル系単位などから選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が挙げられ、中でも、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、不飽和グリシジル基含有単位または不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体が好ましく、さらに不飽和グリシジル基含有単位または不飽和ジカルボン酸無水物系単位から選ばれる少なくとも1種以上の単位を含有する重合体がより好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく使用される。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルまたはメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
グリシジル基含有ビニル系単位としては、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
不飽和ジカルボン酸無水物系単位としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸または無水アコニット酸などが挙げられ、耐衝撃性を向上する効果が大きいという観点から、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
また、脂肪族ビニル系単位としては、エチレン、プロピレンまたはブタジエンなど、芳香族ビニル系単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンまたはハロゲン化スチレンなど、シアン化ビニル系単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはエタクリロニトリルなど、マレイミド系単位としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドまたはN−(クロロフェニル)マレイミドなど、不飽和ジカルボン酸系単位として、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸など、その他のビニル系単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンまたは2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができ、これらの単位は単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明において、多層構造重合体において、最外層の種類は、特に限定されるものではなく、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位および/またはその他のビニル系単位などを含む重合体が挙げられ、透明性および耐衝撃性に優れるという点から、メタクリル酸メチル単位および/またはアクリル酸メチル単位を含む重合体から構成されることが好ましい。
本発明において、多層構造重合体の平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、透明性および耐衝撃性に優れるという点から、10〜10000nmであることが好ましく、さらに、20〜1000nmであることがより好ましく、50〜700nmであることが特に好ましく、100〜500nmであることが最も好ましい。また、多層構造重合体としては、1種または2種以上を用いることができ、耐衝撃性と流動性の点で、平均一次粒子径が異なる多層構造重合体を2種以上用いることが好ましく、例えば、平均一次粒子径が小さい多層構造重合体と平均一次粒子径が大きい多層構造重合体を併用することが好ましい。なお、本発明において、上記平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用い、2万倍で観察し、任意の100個について、一次粒子径を測定し、平均した数平均一次粒子径であり、具体的には、樹脂組成物中の多層構造重合体の分散形態を電子顕微鏡により観察することにより求めることができる。
本発明において、多層構造重合体としては、上述した条件を満たすものとして、市販品を用いてもよく、また、公知の方法により作製することもできる。
市販品としては、例えば、三菱レイヨン製”メタブレン”、カネカ製”カネエース”、ロームアンドハース製”パラロイド”、ガンツ化成製”スタフィロイド”またはクラレ製”パラフェイス”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
公知の方法としては、乳化重合法がより好ましい。製造方法としては、まず所望の単量体混合物を乳化重合させてコア粒子を作った後、他の単量体混合物をそのコア粒子の存在下において乳化重合させてコア粒子の周囲にシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。さらに該粒子の存在下において他の単量体混合物を乳化重合させて別のシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。このような反応を繰り返して所望のコア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体を得る。各層の(共)重合体を形成させるための重合温度は、各層とも0〜120℃が好ましく、5〜90℃がより好ましい。
乳化重合において用いられる乳化剤は、特に限定されないが、重合安定性および所望の平均一次粒子径などによって選択され、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などの公知の乳化剤を単独もしくは2種以上で使用することが好ましく、アニオン界面活性剤がより好ましい。アニオン界面活性剤としては、例えばステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウムなどのカルボン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩、モノ−n−ブチルフェニルペンタオキシエチレンリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩などが挙げられる。上記乳化剤の添加量は、用いる単量体の合計100重量部に対し、0.01〜15重量部が好ましい。
また、乳化重合に用いられる重合開始剤は、特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物、過酸化水素−第一鉄塩系、過硫酸カリウム−酸性亜硫酸ナトリウム系、過硫酸アンモニウム−酸性亜硫酸ナトリウム系などの水溶性レドックス系開始剤、クメンハイドロパーオキシド−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート系、tert−ブチルハイドロパーオキシド−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート系などの水溶−油溶レドックス系の開始剤などが挙げられ、この中でも、無機過酸化物系開始剤、水溶−油溶レドックス系の開始剤が好ましい。上記重合開始剤の添加量は、用いる単量体の合計100重量部に対し、0.001〜5重量部が好ましい。
本発明において、透明性および耐衝撃性に優れるという点から、(C)耐衝撃性改良剤が、下記条件を一つ以上満たすものであることが好ましい。
(c)屈折率が1.45〜1.50
(d)ガラス転移温度が30℃以下の構成成分を含む
さらに、透明性に優れるという点から、(C)耐衝撃性改良剤は、屈折率が1.465〜1.495であることがより好ましく、1.465〜1.490であることがさらに好ましい。また、(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂からなる樹脂相の屈折率と(C)耐衝撃性改良剤の屈折率との差が、0.05以下であることが好ましく、0.02であることがより好ましく、0.01以下であることがさらに好ましい。なお、本発明において、上記屈折率は、アッベ屈折計を用い、23℃、589nmの波長で測定した値である。また、(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂からなる樹脂相の屈折率は、(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂の合計100重量部中の(B)メタクリル系樹脂の配合量をx重量部としたときに、0.03×x/100+1.46と表すことができる。
さらに、耐衝撃性に優れるという点から、(C)耐衝撃改良剤は、ガラス転移温度が0℃以下の構成成分を含むものであることがより好ましく、−30℃以下の構成成分を含むものであることがさらに好ましい。なお、本発明において、上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、昇温速度20℃/分で測定した値である。
本発明において、(C)耐衝撃性改良剤の配合量は、特に限定されるものではないが、耐衝撃性に優れるという点から、(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂の合計100重量部に対し、0.1〜200重量部が好ましく、1〜100重量部がより好ましく、5〜50重量部がさらに好ましく、10〜30重量部が特に好ましい。
本発明においては、(C)耐衝撃改良剤が、樹脂組成物中で分散相を形成するものであることを特徴とする。
本発明においては、透明性、耐熱性および耐衝撃性に優れるという点から、樹脂組成物中における(C)耐衝撃性改良剤の分散粒子径は、1〜1000nmであることが好ましく、50〜750nmであることがより好ましく、100〜500nmであることがさらに好ましい。なお、本発明において、分散粒子径とは、電子顕微鏡を用い、2万倍で観察し、任意の分散粒子100個について、分散粒子径を測定し、平均した数平均分散粒子径である。なお、分散粒子とは、下記に示す判断基準により求めた凝集粒子数(X)と凝集してない粒子数(Y)を合計した値である。
本発明においては、透明性、耐熱性および耐衝撃性に優れるという点から、樹脂組成物中における(C)耐衝撃改良剤の凝集粒子数(X)と凝集していない粒子数(Y)との比(X/Y)が0〜0.5であることが好ましく、0〜0.2であることがより好ましい。なお、本発明において、凝集粒子数および凝集していない粒子数は、電子顕微鏡を用い、2万倍で観察し、任意の分散粒子100個について、(C)耐衝撃改良剤の分散粒子が接触している場合を凝集粒子と判定した。また、Xは、凝集に関与する分散粒子の総数を示すものであり、すなわち、3個の分散粒子が凝集し一つの凝集体を形成している場合は、X=3として計算する。
本発明においては、耐衝撃性を向上でき、耐加水分解性を向上できるという点から、さらに(D)反応性化合物として、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、オキサゾリン基から選択される少なくとも1種以上の官能基を含有する反応性化合物を配合することが好ましい。
本発明において、グリシジル基を含有する反応性化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。これらを配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
グリシジルエーテル化合物の例としては、ブチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応から得られるビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などを挙げることができる。なかでも、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
グリシジルエステル化合物の例としては、安息香酸グリシジルエステル、p−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどのを挙げることができる。なかでも、安息香酸グリシジルエステルやバーサティック酸グリシジルエステルが好ましい。
グリシジルアミン化合物の例としては、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−パラアミノフェノール、トリグリシジル−メタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロモアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
グリシジルイミド化合物の例としては、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジクロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミド、N−グリシジルステラミドなどを挙げることができる。なかでも、N−グリシジルフタルイミドが好ましい。
脂環式エポキシ化合物の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−トリル−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミドなどを挙げることができる。また、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノゾラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。
本発明において、酸無水物基を含有する反応性化合物の例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などを挙げることができる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含む重合体なども挙げることができる。
本発明において、カルボジイミド基を含有する反応性化合物とは、分子内に少なくともひとつの(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を有する化合物であり、例えば適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。
カルボジイミド化合物の例としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジ−o−トルイルカルボジイミド、ジ−p−トルイルカルボジイミド、ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−o−トルイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert −ブチルフェニルカルボジイミド、N−トルイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トルイルカルボジイミド、N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどのモノ又はジカルボジイミド化合物、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどが挙げられる。なかでもN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドが好ましい。
本発明において、オキサゾリン基を含有する反応性化合物の例としては、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物なども挙げることができる。
本発明において、(D)反応性化合物としては、ブリードアウトを抑制できるという点から、重量平均分子量1000〜300000の重合体であることが好ましく、重量平均分子量は5000〜250000がより好ましい。このような(D)反応性化合物としては、分子内の主鎖中または側鎖にグリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、オキサゾリン基から選択された少なくとも1種類以上の官能基を導入した重合体であることが好ましく、重合体としては、単独重合体でも共重合体でもいずれでもよく、共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体などのいずれも用いることができる。
本発明において、透明性および耐衝撃性を向上できるという点から、(D)反応性化合物としては、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体であることが好ましい。
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、p−スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルあるいはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中では、ラジカル重合性の点からアクリル酸グリシジルまたはメタアクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体には、グリシジル基含有ビニル系単位以外のビニル系単位を共重合成分として含むことが好ましく、その選択により重合体の融点、ガラス転移温度などの特性を調節することができる。グリシジル基含有ビニル系単位以外のビニル系単位としては、アクリル系ビニル単位、カルボン酸ビニルエステル単位、芳香族系ビニル単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、脂肪族系ビニル単位、マレイミド系単位またはその他のビニル系単位などが挙げられる。
アクリル系ビニル単位を形成する原料モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基を有するアクリル系ビニル単位を形成する原料モノマーなどが挙げられ、中でも、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、さらにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
カルボン酸ビニルエステル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−ブテニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルおよびシクロヘキサンカルボン酸ビニルなどの単官能脂肪族カルボン酸ビニル、安息香酸ビニルおよび桂皮酸ビニルなどの芳香族カルボン酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルおよびソルビン酸ビニルなどの多官能カルボン酸ビニルなどが挙げられ、中でも、酢酸ビニルが好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
芳香族系ビニル単位を形成する原料モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン,o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、1−ビニルナフタレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンなどが挙げられ、中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
不飽和ジカルボン酸無水物系単位を形成する原料モノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸または無水アコニット酸などが挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
不飽和ジカルボン酸系単位を形成する原料モノマーとして、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸などが挙げられ、中でも、マレイン酸、イタコン酸が好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
脂肪族ビニル系単位を形成する原料モノマーとしては、エチレン、プロピレンまたはブタジエンなど、マレイミド系単位を形成する原料モノマーとしては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドまたはN−(クロロフェニル)マレイミドなど、その他のビニル系単位を形成する原料モノマーとしてはN−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどが挙げられ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体のガラス転移温度は、特に限定されるものではないが、ハンドリング性に優れるという点から、30〜100℃の範囲であることが好ましく、40〜70℃の範囲であることがより好ましく、50〜65℃の範囲であることが最も好ましい。ガラス転移温度の測定方法は、特に限定されるものではなく、示差走査型熱量計で測定する方法、動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができるが、本発明においては、示差走査型熱量計で測定する方法が好ましい。なお、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体のガラス転移温度は、共重合成分の組成を調節することにより制御することができる。ガラス転移温度は通常、スチレンなどの芳香族系ビニル単位を共重合することにより高くすることができ、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル単位を共重合することにより低くすることができる。
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体は、未反応の原料モノマーや溶媒などが残存するために通常、揮発成分を含む。その残部となる不揮発成分量は、特に限定されるものではないが、ガスの発生を抑制するという観点から、不揮発成分量が多い方が好ましい。具体的には、95重量%以上であることが好ましく、中でも97重量%以上であることが好ましく、さらに98重量%以上であることがより好ましく、特に98.5重量%以上であることが最も好ましい。なお、ここでいう不揮発成分とは、試料10gを窒素雰囲気下、110℃で1時間加熱した場合の残量割合を表す。
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体は、低分子量体を得るために連鎖移動剤(分子量調整剤)として硫黄化合物を使用することがあるが、その場合には重合体は通常硫黄を含む。ここで、硫黄含有量は、特に限定されるものではないが、不快な臭いを抑制するという観点から、硫黄含有量が少ない方が好ましい。具体的には、硫黄原子として1000ppm以下が好ましく、中でも100ppm以下が好ましく、さらに10ppm以下が好ましく、特に1ppm以下であることが最も好ましい。
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体のグリシジル基含有量は、特に限定されないが、透明性、耐衝撃性、耐加水分解性、外観性の点で、エポキシ価として、1〜10meq/gが好ましく、2〜7meq/gであることがより好ましく、3〜5meq/gであることがさらに好ましい。ここでいうエポキシ価は、塩酸−ジオキサン法で測定した値である。
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体の製造方法としては、本発明で規定する条件を満たす限り特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合方法を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、重合開始剤、連鎖移動剤および溶媒などを使用することがあるが、これらは最終的に得られるグリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体の中に不純物として残存することがある。これら不純物量は特に限定されるものではないが、耐熱性や耐候性などの低下を抑制するという観点から、不純物量は少ない方が好ましい。具体的には、不純物量が最終的に得られる重合体に対して10重量%以下が好ましく、中でも5重量%以下が好ましく、さらに3重量%以下が好ましく、特に1重量%以下であることが最も好ましい。
以上のような、分子量、ガラス転移温度、不揮発成分量、硫黄含有量、不純物量などを満足させるグリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体の製造方法としては、150℃以上の高温で、かつ加圧条件(好ましくは1MPa以上)で、短時間(好ましくは5分〜30分)で連続塊状重合する方法が、重合率が高い点、不純物や硫黄含有の原因となる重合開始剤や連鎖移動剤および溶媒を使用しない点からより好ましい。
本発明において、(D)反応性化合物の配合量は、(A)ポリ乳酸系樹脂および(B)メタクリル系樹脂の合計100重量部に対し、0.01〜30重量部が好ましく、0.05〜20重量部がより好ましく、0.1〜10重量部がさらに好ましく、0.5〜3重量部が特に好ましい。(D)反応性化合物の配合量が、0.01重量部未満では、樹脂組成物の耐衝撃性改良効果が不充分な傾向にあり、30重量部を越える場合には、ゲル化などにより、流動性の低下を招く恐れがある。
本発明において、耐熱性が向上するという点から、さらに(E)有機変性層状珪酸塩を配合することができる。本発明において、(E)有機変性層状珪酸塩とは、層間に存在する交換性陽イオンまたは陰イオンが有機オニウムイオンまたは有機アニオンで交換された層状珪酸塩であり、特に交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩が好ましい。
交換性のイオンを層間に有する層状珪酸塩は、幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームの板状物が積層した構造を持ち、その板状物の層間に交換性のイオンを有している。そのイオン交換容量は0.2〜3meq/gのものが挙げられ、好ましくはイオン交換容量が0.8〜1.5meq/gのものである。
層状珪酸塩の具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母、ハイドロタルサイト等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであっても良い。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素雲母、Li型フッ素テニオライトなどの膨潤性合成雲母が好ましい。
有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好んで用いられる。アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムのいずれでも良い。
1級アンモニウムイオンとしてはデシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
2級アンモニウムイオンとしてはメチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
3級アンモニウムイオンとしてはジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
4級アンモニウムイオンとしてはベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウムなどのトリアルキルメチルアンモニウムイオン、ベンゼン環を2個有するベンゼトニウムイオンなどが挙げられる。
また、これらの他にもアニリン、p−フェニレンジアミン、α−ナフチルアミン、p−アミノジメチルアニリン、ベンジジン、ピリジン、ピペリジン、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコールなどから誘導されるアンモニウムイオンなども挙げられる。
これらのアンモニウムイオンの中でも、好ましい化合物としては、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどが挙げられる。これらのアンモニウムイオンは、一般的には、混合物として入手可能であり、前記の化合物名称は少量の類縁体を含む代表化合物の名称である。これらは、1種類で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
また、反応性の官能基を持つものや親和性の高いものが好ましく、12−アミノドデカン酸、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコールなどから誘導されるアンモニウムイオンなども好ましい。
有機アニオンとしては、長鎖のカルボン酸などがあり、ラウリン酸、デカン酸、ステアリン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸などをあげることができる。
本発明で用いられる(E)有機変性層状珪酸塩は、交換性の陽イオンまたは陰イオンを層間に有する層状珪酸塩と有機オニウムイオンまたは有機アニオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法か、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させた有機塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
本発明において、層状珪酸塩に対する有機イオンの量は、層状珪酸塩の分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの点から、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し通常、0.4〜2.0当量の範囲であるが、0.8〜1.2当量であることが好ましい。
また、(E)有機変性層状珪酸塩を反応性官能基を有するカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得るために好ましい。かかる反応性官能基を有するカップリング剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
本発明において、(E)有機変性層状珪酸塩の配合量は、(A)ポリ乳酸系樹脂と(B)メタクリル系樹脂の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましく、1〜3重量部が特に好ましい。
(E)有機変性層状珪酸塩は、樹脂組成物中に均一に分散していることが好ましい。ここでいう均一な分散とは、層状珪酸塩が5層以下の積層状態で局所的な固まりを持たずに分散していることをいい、分散状態は電子顕微鏡で観察できる。
本発明の樹脂組成物においては、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料および顔料を含む着色剤、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤などを添加することができる。中でも、機械特性、成形性、耐熱性および透明性などに優れた樹脂組成物が得られるという点から、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、通常熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンなどを挙げることができる。離型剤の配合量は、(A)ポリ乳酸系樹脂と(B)メタクリル系樹脂の合計100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。
また、本発明で用いられる樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂など)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)などの少なくとも1種以上をさらに配合することができる。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)メタクリル系樹脂、(C)耐衝撃性改良剤および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが用いられるが、生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、透明性および耐熱性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。
本発明の樹脂組成物について、樹脂組成物中におけるメタクリル系樹脂のシンジオタクチシチーとアイソタクチシチーの比(シンジオタクチシチー/アイソタクチシチー)が、2.5〜8.0であることを特徴とする。さらに、耐熱性および流動性の点で、3.0〜8.0であることがより好ましく、3.0〜5.5であることがさらに好ましく、3.0〜5.0であることが特に好ましい。ここでいうシンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとは、溶媒として、重水素化クロロホルムを用いた1H−NMR測定において、シンジオタクチシチー、ヘテロタクチシチー、アイソタクチシチーとしてそれぞれ観察される0.9ppm、1.0ppm、1.2ppmの直鎖分岐のメチル基のピークの積分強度の合計を100%として、それぞれのピークの積分強度の割合を百分率で表すことにより算出できる値である。
本発明の樹脂組成物について、耐熱性の点で、ASTM D648に従って、荷重0.45MPaにて測定した荷重たわみ温度(DTUL)が、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物について、衝撃強度は特に限定されないが、耐衝撃性の点で、ASTM D256に準じて測定したアイゾット衝撃強度が50J/m以上であることが好ましく、75J/m以上であることがより好ましく、100J/m以上であることがさらに好ましい。アイゾット衝撃強度が50J/mより低いと、落下などの衝撃により破損しやすくなるため好ましくない。
本発明の樹脂組成物について、メルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、成形性の点で、JIS K7210に準じて、190℃、21.2N荷重において測定したMFRが、30g/10分以下であることが好ましく、20g/10分以下であることがより好ましく、10g/10分以下であることがさらに好ましく、7g/10分以下であることが特に好ましく、5g/10分以下であることが最も好ましい。MFRが30g/10分を越えると耐熱性が低下する傾向にある。下限は特に制限されないが、成形加工性の点で0.1g/10分以上であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物について、飽和吸水率は特に限定されないが、ASTM D570に準じて測定した飽和吸水率が、0.4重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.2重量%以下であることがさらに好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましい。下限は特に制限されない。飽和吸水率が0.4重量%を越えると吸湿による変形が発生しやすく、使用できなくなる可能性が大きくなるため好ましくない。
本発明の樹脂組成物としては、透明であることが好ましい。ここで、透明とは、新聞など文字が印刷されている印刷物に成形品を重ねたときに、その文字を読みとることができる部分があることをいう。具体的には、厚み20μm以上、好ましくは1mmの成形品とした時のヘイズが30%以下であることが好ましく、透明性に優れるという点から、ヘイズが10%以下であることがより好ましく、ヘイズが5%以下であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物について、表面硬度は特に限定されないが、JIS K-5600に準じて測定した鉛筆硬度が、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがさらに好ましい。鉛筆硬度がHBより低いと、表面に傷がつきやすくなるため好ましくない。本発明の樹脂組成物を光記録媒体として使用する場合には、基板に加工した際に傷が付きにくく、読みとりエラーなどが発生しにくくなるという点で、HB以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましく、また、落下などの衝撃に対して光記録媒体が破壊されにくくなるという点で、3H以下であることが好ましく、2H以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物について、レターデーション(複屈折量)は特に限定されないが、市販のエリプソメーターを用い23℃、405nmのレーザー光を基板面に対して30℃の角度で照射して測定したレターデーションが50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることが特に好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。本発明の樹脂組成物を光記録媒体として使用する場合には、レターデーションが50nmを越えると読みとりエラーなどが発生しやすくなるため好ましくない。
本発明の樹脂組成物は、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。
本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フイルム、シートなどが挙げられる。本発明においては、耐熱性に優れるという点から、厚みが20μm以上の部分を有する成形品であることが好ましく、1mm以上の部分を有する成形品であることがより好ましい。さらに、耐熱性および耐衝撃性に優れるという点から、厚みが50mm以下の部分を有する成形品であることが好ましく、10mm以下の部分を有する成形品であることがより好ましく、5mm以下の部分を有する成形品であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、透明性に優れるという点から、成形品の厚みが20μm以上、好ましくは厚みが1mmで、ヘイズが30%以下である部分を有することが好ましく、ヘイズが10%以下である部分を有することがより好ましく、5%以下である部分を有することがさらに好ましい。本発明において、ヘイズは、JIS K7105に準じ、ヘイズメーターを用いて測定した値である。
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。
具体的には、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
本発明の樹脂組成物およびそれからなる成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を80℃以上、好ましくは100℃以上で熱処理した後、粉砕し、好ましくは粉末状とした後、アセトンもしくはテトラヒドロフランなどの溶媒を用いて、(B)メタクリル系樹脂を単離し、その後、クロロホルムなどの溶媒を用いて、残留物から(A)ポリ乳酸系樹脂を単離することができ、(C)耐衝撃改良剤は残留物として単離することができる。単離した樹脂は、それぞれ単独で用いることができ、さらにそれぞれを配合して得られる樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物と同じように使用でき、成形品とすることも可能である。
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。ここで、実施例中の配合比は重量%を示す。また、使用した原料および表中の符号を以下に示す。
(A)ポリ乳酸系樹脂
(A−1)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、Mw15万)
(A−2)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、Mw21万)
(A−3)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、Mw12万)
(B)メタクリル系樹脂
(B−1)メタクリル樹脂(クラレ製“パラペット”HR−L、Tg117℃、シンジオタクチシチー56%、Mw9万、MFR2g/10分(230℃、37.2N))
(B−2)メタクリル樹脂(住友化学製“スミペックスLG21”Tg105℃、シンジオタクチシチー41%、Mw8万、MFR21g/10分(230℃、37.2N))
(B−3)メタクリル樹脂(住友化学製“スミペックス”LG35、Tg90℃、シンジオタクチシチー39%、Mw10万、MFR35g/10分(230℃、37.2N))
(C)耐衝撃性改良剤
(C−1)製造例1により得られた重合体
(C−2)製造例2により得られた重合体
(C−3)クラレ製“パラフェイス”ME−120(コア:アクリル系重合体、シェル:メタクリル酸メチル共重合体、屈折率1.468、ゴム層のTg−50℃)
(C−4)ローム&ハース製“パラロイド”EXL2314(コア:アクリル系重合体、シェル:メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸メチル共重合体、屈折率1.470)
(C−5)ローム&ハース製“パラロイド”HIA28(コア:アクリル系重合体、シェル:メタクリル酸メチル共重合体、屈折率1.493)
(C−6)三菱レイヨン製“メタブレン”S2001(コア:シリコーン/アクリル重合体、シェル:メタクリル酸メチル重合体、屈折率1.448)
(C−7)カネカ製“カネエース”M511(コア:ブタジエン/スチレン重合体。シェル:メタクリル酸メチル重合体、屈折率1.518、ゴム層のTg−100℃)
(C−8)大日本インキ化学工業製“プラメート”PD−150(Tg50℃)
(D)反応性化合物
(D−1)グリシジル基含アクリル/スチレン系共重合体(東亞合成製“ARUFON”UG4040、重量平均分子量1万、エポキシ価2.1meq/g)
(D−2)グリシジル基含有アクリル系共重合体(日本油脂製“マープルーフ”G2050M、重量平均分子量21万、エポキシ価2.9meq/g)
(D−3)グリシジル基含有アクリル/スチレン系共重合体(ジョンソンポリマー製“ジョンクリル”ADR−4368、重量平均分子量7000、エポキシ価3.5meq/g)
(D−4)オキサゾリン基含有スチレン系重合体(日本触媒製“エポクロス”RPS−1000、重量平均分子量14万)
(D−5)テレフタル酸ジグリシジルエステル(ナガセケムテックス製“デナコールEX−711”、重量平均分子量260)
(D−6)ポリカルボジイミド(日清紡製“カルボジライト”HMV−8CA、重量平均分子量2000)。
(E)有機変性層状珪酸塩
(E−1)製造例3により得られた12−アミノドデカン酸塩酸塩で交換されたモンモリロナイト
[製造例1](耐衝撃性改良剤(C−1)の製造例)
環流冷却器付きの反応容器に、脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.2重量部、スルホコハク酸ジオクチル0.2重量部および過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル56重量部、メタクリル酸メチル12重量部およびメタクリル酸アリル1重量部からなる混合物を60分かけて連続的に添加した後、70℃で30分間保持して、コア層重合体を得た。次いで、過硫酸カリウム0.005重量部を添加した後、メタクリル酸メチル19重量部およびアクリル酸メチル10重量部からなる混合物を60分かけて連続的に添加し、70℃で60分間保持して、シェル層(第2層)を重合させた。このラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、50℃温水で水洗脱水を3回繰り返し、固形分を80℃12時間乾燥して、2層構造の多層構造重合体(C-1)の粉体を得た。C−1に関し、屈折率は1.472、ゴム層のTgは−30℃であった。
[製造例2](耐衝撃性改良剤(C−2)の製造例)
還流冷却器付き反応容器に、脱イオン水300重量部、ステアリン酸ナトリウム1.0重量部およびN−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム0.1重量部を仕込み、70℃で30分間撹拌した後、過硫酸カリウム0.01重量部を添加し、窒素雰囲気下で撹拌後、メタクリル酸メチル50重量部、アクリル酸メチル2重量部およびメタクリル酸アリル0.15重量部からなる混合物を60分かけて連続的に添加し、80℃で60分間保持して、コア層重合体を得た。次いで、過硫酸カリウム0.01重量部を添加した後、アクリル酸ブチル58重量部、スチレン12重量部およびメタクリル酸アリル1重量部からなる混合物を60分かけて連続的に添加し、70℃で30分間保持して、シェル層(第2層)を重合させた。次いで、過硫酸カリウム0.01重量部を添加した後、メタクリル酸メチル29重量部およびアクリル酸メチル1重量部からなる混合物を60分かけて連続的に添加し、70℃で60分間保持して、シェル層(第3層)を重合させた。このラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、50℃温水で水洗脱水を3回繰り返し、固形分を80℃12時間乾燥して、3層構造の多層構造重合体(C-2)の粉体を得た。C−2に関し、屈折率は1.485、ゴム層のTgは−34℃であった。
[製造例3](有機変性層状珪酸塩(E−1)の製造例)
Na型モンモリロナイト(クニミネ工業:“クニピアF”、陽イオン交換容量120m当量/100g)100gを温水10リットルに攪拌分散し、ここに12−アミノドデカン酸塩酸塩30.2g(陽イオン交換容量と等量)を溶解させた温水2Lを添加して1時間攪拌し、生じた沈殿の濾別、温水洗浄を3回行い、得られた固体を80℃で真空乾燥することでE−1を得た。
また、本発明で用いた測定方法および判定方法を以下に示す。
(1)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準PMMA換算の重量平均分子量の値である。溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、流速0.5mL/minとし、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入して測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
配合前の各原料については、示差走査型熱量計(セイコー電子製RDC220)により測定した。測定条件は、試料10mg、窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分である。
(3)シンジオタクチシチー
1H−NMR測定により測定した値である。1H−NMR測定は、日本電子製JNM−AL400を用いて、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、試料濃度20mg/mLとして測定した。
(4)屈折率
用いた(C)耐衝撃性改良剤を150℃でプレス成形し、厚さ0.5mmのシートとした後、幅5mm、長さ20mmの大きさの試験片を切り出し、アッベ屈折計(アタゴ製DR−M2)によって、23℃、589nm波長における屈折率を測定した。
(5)透明性
日本電色工業製ヘイズメーターNDH−300Aを用いて、JIS−K7105に準じ、5cm×5cm×1mmの板状成形品のヘイズを測定した。
(6)衝撃特性
衝撃強度はASTM D256に準じて、3mm厚ノッチ付き成形品のアイゾット衝撃強度を測定した。
(7)耐熱性
ASTM D648に準じて、12.7mm×127mm×3mmの成形品の荷重たわみ温度(荷重0.45MPa)を測定した。
(8)引張強度
ASTM1号ダンベル成形品を用いて、ASTM法D638に準じて引張試験を行った。
(9)樹脂組成物中における(C)耐衝撃性改良剤の分散状態
透過型電子顕微鏡を用い、2万倍で観察し、任意の100個の分散粒子について、一次粒子径を測定し、平均値を分散粒子径とした。また、耐衝撃改良剤の凝集粒子数(X)と凝集していない粒子数(Y)との比(X/Y)に関しては、透過型電子顕微鏡を用い、2万倍で観察し、任意の100個の分散粒子について、(C)耐衝撃改良剤の分散粒子が接触している場合を凝集粒子と判定し、X/Yを求めた。なお、12.7mm×127mm×3mmの成形品中心部を観察した。
(10)耐加水分解性
ASTM1号ダンベル成形品を、70℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中で100時間処理した後、引張強度を測定し引張強度保持率を求めた。引張強度保持率が大きいほど、耐加水分解性に優れると言える。
[実施例1〜6、比較例1〜4]
表1に示すようにポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂および耐衝撃改良剤を配合し、30mm径の二軸押出機を用い、シリンダー温度200℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行いペレット状の樹脂組成物を得た。
得た樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃で射出成形を行い、3mm厚のノッチ付き成形品、12.7mm×127mm×3mmの成形品、3mm厚のASTM1号ダンベル成形品および5cm×5cm×1mmの板状成形品を得た。
得た成形品を用いて、各種評価を行った結果を表1に示す。
表1の結果より以下のことが明らかである。
実施例1〜6と比較例1〜4との比較から、ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂および耐衝撃改良剤を配合してなる樹脂組成物は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、強度に優れることがわかる。中でも、メタクリル系樹脂として、ガラス転移温度の差が10℃以上、もしくはシンジオタクチシチーの差が3%以上のいずれか一つ以上の条件を満たす2種のメタクリル系樹脂を併用することにより、さらに、耐衝撃性および耐熱性に優れることがわかる。
[実施例7〜23]
表2に示すようにポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂および耐衝撃改良剤を配合する以外は、全て実施例1と同様に検討を行った。各種評価を行った結果を表2に示す。
表2の結果より以下のことが明らかである。
実施例7〜23から、ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂および耐衝撃性改良剤を配合してなる樹脂組成物は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、強度に優れることがわかる。中でも、耐衝撃改良剤として、屈折率が1.45〜1.50、もしくはガラス転移温度が30℃以下の構成成分を含む多層構造重合体を用いることにより、透明性、耐衝撃性および耐熱性に優れることがわかる。
[実施例24〜31]
表3に示すようにポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂、耐衝撃改良剤を配合する以外は、全て実施例1と同様に検討を行った。各種評価を行った結果を表3に示す。
表3の結果より以下のことが明らかである。
ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂および耐衝撃改良剤を配合してなる樹脂組成物において、メタクリル系樹脂として、ガラス転移温度の差が10℃以上、もしくはシンジオタクチシチーの差が3%以上のいずれか一つ以上の条件を満たす2種のメタクリル系樹脂を併用することにより、透明性、耐衝撃性、耐熱性、強度に優れることがわかる。
[実施例32〜44]
表4に示すようにポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂、耐衝撃改良剤、反応性化合物および/もしくは有機変性層状珪酸塩を配合する以外は、全て実施例1と同様に検討を行った。なお、実施例43および44は、金型温度110℃で射出成形を実施した。各種評価を行った結果を表4に示す。
表4の結果より以下のことが明らかである。
ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂および耐衝撃改良剤に加え、反応性化合物を配合してなる樹脂組成物は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、強度に優れることがわかる。中でも、重量平均分子量が1000〜300000の重合体であり、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体、もしくはカルボジイミド基を含有する化合物を用いることにより、さらに、耐衝撃性、耐熱性および耐加水分解性に優れることがわかる。
ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂および耐衝撃改良剤に加え、有機変性層状珪酸塩を配合してなる樹脂組成物は、特に耐熱性に優れることがわかる。さらに、反応性化合物として、カルボジイミド基を含有する化合物を併用することにより、耐加水分解特性にも優れることがわかる。
[実施例45〜50]
表5に示すようにポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂、耐衝撃改良剤および反応性化合物を配合する以外は、全て実施例1と同様に検討を行った。各種評価を行った結果を表5に示す。
表5の結果より以下のことが明らかである。
ポリ乳酸系樹脂、メタクリル系樹脂および耐衝撃改良剤に加え、反応性化合物を配合してなる樹脂組成物において、メタクリル系樹脂として、ガラス転移温度の差が10℃以上、もしくはシンジオタクチシチーの差が3%以上のいずれか一つ以上の条件を満たす2種のメタクリル系樹脂を併用することにより、透明性、耐衝撃性、耐熱性、強度に優れることがわかる。