JP2014185257A - 樹脂組成物、樹脂成形体および変性ポリ乳酸樹脂 - Google Patents

樹脂組成物、樹脂成形体および変性ポリ乳酸樹脂 Download PDF

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Abstract

【課題】成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる樹脂組成物とその樹脂組成物を得るための変性ポリ乳酸樹脂を提供する。
【解決手段】シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂と、官能基を含有するシランカップリング剤により変性された変性ポリ乳酸樹脂とを含む樹脂組成物であり、前記変性ポリ乳酸樹脂が、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリル基のうち少なくとも1つの官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたものであり、変性はポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記官能基を含有するシランカップリング剤0.01質量部以上5質量部以下でされる。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、樹脂成形体および変性ポリ乳酸樹脂に関する。
電気製品や電子・電気機器の部品には、ポリスチレン、ポリスチレン−ABS樹脂共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタール等の高分子材料が、耐熱性、機械強度等、特に、電子・電気機器の部品の場合には、環境変動に対する機械強度の維持性等に優れることから用いられている。
また、近年、環境問題等の観点から、生分解性ポリマの一種であるポリ乳酸樹脂を含む樹脂組成物およびその樹脂組成物を用いて得られる成形体が知られている。
例えば、特許文献1には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂5〜89.95質量%、(B)ポリ乳酸、乳酸類とその他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、およびポリブチレンサクシネートから選ばれる少なくとも一種である脂肪族ポリエステル5〜60質量%、(C)タルク5〜30質量%、(D)官能基含有シリコーン0.05〜3質量%および(E)ポリテトラフルオロエチレン0〜2質量%からなる(A)〜(E)成分合計100質量%の組合せを含む樹脂組成物であって、(D)成分/(B)成分の質量比が0.003〜0.6である熱可塑性樹脂組成物および成形体が記載されている。
特許文献2には、(A)(a−1)ポリカーボネート樹脂45〜97質量%および(a−2)ポリ乳酸および/または乳酸類と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体である脂肪酸ポリエステル55〜3質量%からなる樹脂混合物と、その100質量部当り、(B)ゴム状弾性体0.5〜20質量部を含み、該(B)成分が(a−1)成分と(a−2)成分の界面または(a−2)成分のドメインに分散している熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
特許文献3には、(A)芳香族ポリカーボネート99〜1質量%および(B)ポリ乳酸1〜99質量%からなる樹脂混合物100質量部に対して、(C)ポリ乳酸成分およびポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル成分からなるポリ乳酸系共重合体1〜100質量部を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
特開2009−270008号公報 特開2006−131828号公報 特開2009−091408号公報
本発明の目的は、成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる樹脂組成物、その樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体、ならびに、その樹脂組成物を得るための変性ポリ乳酸樹脂を提供することである。
請求項1に係る発明は、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂と、官能基を含有するシランカップリング剤により変性された変性ポリ乳酸樹脂とを含む樹脂組成物である。
請求項2に係る発明は、前記変性ポリ乳酸樹脂が、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリル基のうち少なくとも1つの官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたポリ乳酸樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物である。
請求項3に係る発明は、前記変性ポリ乳酸樹脂が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記官能基を含有するシランカップリング剤0.01質量部以上5質量部以下によって変性されたポリ乳酸樹脂である、請求項1または2に記載の樹脂組成物である。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体である。
請求項5に係る発明は、官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたポリ乳酸樹脂である、変性ポリ乳酸樹脂である。
請求項6に係る発明は、前記変性ポリ乳酸樹脂が、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリル基のうち少なくとも1つの官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたポリ乳酸樹脂である、請求項5に記載の変性ポリ乳酸樹脂である。
請求項7に係る発明は、前記変性ポリ乳酸樹脂が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記官能基を含有するシランカップリング剤0.01質量部以上5質量部以下によって変性されたポリ乳酸樹脂である、請求項5または6に記載の変性ポリ乳酸樹脂である。
請求項1,2に係る発明によると、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂と、官能基を含有するシランカップリング剤により変性された変性ポリ乳酸樹脂とを含まない場合に比べて、成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる。
請求項3に係る発明によると、前記変性ポリ乳酸樹脂が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記官能基を含有するシランカップリング剤0.01質量部以上5質量部以下によって変性されたポリ乳酸樹脂ではない場合に比べて、成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性により優れる。
請求項4に係る発明によると、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂と、官能基を含有するシランカップリング剤により変性された変性ポリ乳酸樹脂とを含まない場合に比べて、外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる。
請求項5に係る発明によると、官能基を含有するシランカップリング剤により変性された変性ポリ乳酸樹脂以外に比べて、成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる樹脂組成物が得られる。
請求項6に係る発明によると、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリル基のうち少なくとも1つの官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたポリ乳酸樹脂以外に比べて、成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる樹脂組成物が得られる。
請求項7に係る発明によると、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記官能基を含有するシランカップリング剤0.01質量部以上5質量部以下によって変性されたポリ乳酸樹脂以外に比べて、成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる樹脂組成物が得られる。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る樹脂組成物は、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂と、官能基を含有するシランカップリング剤により変性された変性ポリ乳酸樹脂とを含む。本実施形態に係る樹脂組成物は、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂と、官能基を含有するシランカップリング剤により変性された変性ポリ乳酸樹脂とを含むことにより、成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる。ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂とを混合すると成形体にした場合に外観に真珠光沢が見られる場合があるが、本実施形態に係る樹脂組成物では、ポリカーボネートに共重合されたポリオルガノシロキサンとポリ乳酸樹脂に化学結合しているシラン化合物との相互作用により、成形体にした場合に真珠光沢がほとんどなく、外観が極めて良く、かつ長期湿熱環境下でもブリード物のほとんど生成しない組成物となると考えられる。また、ポリカーボネート樹脂およびポリ乳酸樹脂が高度に分散しているため、成形体にした場合に耐熱性に優れ、耐衝撃性や引張り破断伸度といった機械的特性にも優れると考えられる。必要に応じてタルクやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の添加剤を樹脂組成物に加えて、薄肉成型品での難燃性を付与してもよい。
<変性ポリ乳酸樹脂>
ポリ乳酸樹脂は、植物由来であり、環境負荷の低減、具体的にはCOの排出量削減、石油使用量の削減等の効果がある。ポリ乳酸樹脂としては、乳酸の縮合体であれば、特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸(以下「PLLA」ともいう)であっても、ポリ−D−乳酸(以下「PDLA」ともいう)であっても、それらが共重合やブレンドにより交じり合ったものでもよく、さらに、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合したものであり、これらのらせん構造が噛み合った耐熱性の高い、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸(以下「SC−PLA」ともいう)であってもよい。
共重合体あるいは混合体におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の成分比(モル比の割合%)は特に制限はないが、ポリ−L−乳酸の方がポリ−D−乳酸がよりもポリカーボネート・エポキシ化合物との反応性が高い等の点から、L−乳酸/D−乳酸として、50/50以上99.99/0.01以下の範囲であることが好ましい。L−乳酸/D−乳酸が、50/50未満であると、成形体にした場合に機械的特性が低下する場合があり、99.99/0.01を超えると、コストが増加する場合がある。
ポリ乳酸樹脂は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ユニチカ(株)製の「テラマックTE4000」、「テラマックTE2000」、「テラマックTE7000」、ネイチャーワークス社製の「Ingeo3251D」、「Ingeo3001D」、「Ingeo4032D」等が挙げられる。また、ポリ乳酸樹脂は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
ポリ乳酸樹脂としては、植物由来のエチレングリコール、ジブタノール等の乳酸以外の他の共重合成分を含んでもよい。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常1モル%以上50モル%以下の含有量とすればよい。また、ポリ乳酸樹脂としては、変性したものを用いてもよく、例えば、無水マレイン酸変性ポリ乳酸、エポキシ変性ポリ乳酸、アミン変性ポリ乳酸などを用いてもよい。
ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、50,000以上300,000以下の範囲であり、70,000以上250,000以下の範囲であることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂には、製造上、ブチロラクトン、1,6−ジオキサシクロデカン−2,7−ジオン等の環状ラクトン等のラクトン化合物等が不純物として含まれる場合がある。そのようなラクトン化合物等の不純物の含有量が少ないことが好ましく、具体的には、ポリ乳酸の量に対して10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。
変性ポリ乳酸樹脂は、官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたものである。官能基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリル基のうち少なくとも1つの官能基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられ、反応性等の点から、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
変性ポリ乳酸樹脂は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、官能基を含有するシランカップリング剤0.01質量部以上5質量部以下によって変性されたポリ乳酸樹脂であることが好ましく、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、官能基を含有するシランカップリング剤0.1質量部以上4質量部以下によって変性されたポリ乳酸樹脂であることがより好ましい。ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、官能基を含有するシランカップリング剤が0.01質量部未満であると、ポリカーボネート樹脂との親和性が劣る場合があり、5質量部を超えるとゲル化による凝集が発生する場合がある。
変性ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、50,000以上300,000以下の範囲であることが好ましく、70,000以上200,000以下の範囲であることがより好ましい。変性ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量が50,000未満の場合、ポリカーボネート樹脂との親和性が劣る場合があり、300,000を超える場合には、ポリカーボネート樹脂中で凝集する場合がある。
変性ポリ乳酸樹脂は、例えば、加熱下にポリ乳酸樹脂をシランカップリング剤と反応させることにより得られる。例えば、2軸押出機等を使用して加工温度160℃以上240℃以下の範囲でポリ乳酸樹脂の溶融混練押出しを行い、上記シランカップリング剤と過酸化物等の架橋剤とを可塑剤等に溶解した溶液を注入し、反応させることにより得られる。過酸化物等の架橋剤の量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上2質量部以下の範囲であることが好ましく、0.1質量部以上1.0質量部以下の範囲であることがより好ましい。過酸化物等の架橋剤の量がポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.05質量部未満であると、十分に反応しない場合があり、2質量部を超えるとポリ乳酸樹脂が分解される場合がある。
架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の過酸化物が挙げられ、ポリ乳酸樹脂の混練温度と、1/2半減期温度のマッチングの点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の過酸化物が好ましい。
可塑剤としては、例えば、グリセリン系可塑剤、クエン酸系可塑剤等が挙げられ、ポリ乳酸樹脂との親和性等の点から、グリセリン系可塑剤が好ましい。
<シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂>
シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、脂肪族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等が挙げられ、変性ポリ乳酸樹脂との相溶性等の点から芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体が好ましい。
シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂において、シリコーンの量はポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の範囲であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下の範囲であることがより好ましい。シリコーンの量が0.1質量部未満であると、変性ポリ乳酸樹脂との相溶性が十分でない場合があり、10質量部を超えると、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂の機械的特性が十分ではない場合がある。
シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5,000以上30,000以下の範囲であることが好ましく、10,000以上25,000以下の範囲であることがより好ましい。シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が5,000未満の場合、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂の機械的特性が十分ではない場合があり、30,000を超える場合には、変性ポリ乳酸樹脂との相溶性が十分でない場合がある。
シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、特に限定されるものではないが、100℃以上200℃以下の範囲であることが好ましく、120℃以上180℃以下の範囲であることがより好ましい。シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が100℃未満の場合、耐熱性が不足する場合があり、200℃を超える場合には、樹脂の溶融混練時の加工性不良が発生する場合がある。
シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂は、例えば、予め製造されたポリカーボネート部を構成するポリカーボネートオリゴマと、ポリオルガノシロキサン部(セグメント)を構成する末端に−R11−OH(R11は脂肪族または芳香族を含む二価の有機基)の反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、二価フェノールの水酸化アルカリ水溶液を加え、触媒として、第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、末端停止剤の存在下、界面重縮合反応することにより得られる。
シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂とを併用してもよい。併用する場合の量は、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、ポリカーボネート樹脂が50質量部以上1000質量部以下の範囲である。
<ポリカーボネート樹脂>
ポリカーボネート樹脂は、1つまたは複数のモノマの重縮合で得られ、少なくとも一つのカーボネート基を有するポリマであればよく、特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ビスフェノールS型ポリカーボネート、ビフェニル型ポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、帝人化成社製の「L−1250Y」、「AD5503」、出光興産社製の「A2200」、三菱エンジニアリングプラスチック社製の「ユーピロンS2000」(芳香族ポリカーボネート樹脂)、住友ダウ社製の「カリバー」等が挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、5,000以上30,000以下の範囲であることが好ましく、10,000以上25,000以下の範囲であることがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、特に限定されるものではないが、例えば、100℃以上200℃以下の範囲であることが好ましく、120℃以上180℃以下の範囲であることがより好ましい。
<各成分の含有量>
シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、および変性ポリ乳酸樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の固形分全量を基準として、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂の含有量が30質量%以上90質量%以下の範囲であり、変性ポリ乳酸樹脂の含有量が10質量%以上70質量%未満の範囲であることが好ましい。なお、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂とを併用する場合、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート樹脂との合計量をシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂の量と見なす。変性ポリ乳酸樹脂の含有量が70質量%未満であり、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂の含有量が30質量%以上であると、成形体にした場合にバイオマス度と耐衝撃性および引張り破断伸度とのバランスがとれた成形体となる。ここで、バイオマス度とは、植物等の生物由来の有機性資源であるバイオマス資源がどの程度含まれているかを表す指標であり、一般にバイオマス度は50質量%以上であることが好ましい。本実施形態においては、樹脂組成物あるいは樹脂成形体中の変性ポリ乳酸樹脂の含有量をバイオマス度とする。
<各種測定方法>
樹脂組成物中のシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、変性ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂の含有量は、H NMR分析により測定する。樹脂組成物中の変性ポリ乳酸樹脂に含まれるラクトン化合物等の不純物の含有量も、同様の方法により測定する。樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体中のシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、変性ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂の含有量も、同様の方法により測定する。このようにして測定した樹脂成形体中のシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、変性ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂の含有量から、樹脂組成物中のシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、変性ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂の含有量が推定される。
樹脂組成物中のシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、変性ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、高分子を溶媒に溶解し、この溶液をサイズ排除クロマトグラフ(GPC)にて、重量平均分子量を求める。テトラヒドロフラン(THF)溶解し分子量分布測定(GPC)により分析する。樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体中のシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、変性ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、高分子を溶媒に溶解し、この溶液をサイズ排除クロマトグラフ(GPC)にて、重量平均分子量を求める。テトラヒドロフラン(THF)溶解し、分子量分布測定(GPC)により分析する。
樹脂組成物中のシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、変性ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、熱分析装置(エスアイアイナノテクノロジ製、DSC6000型)を用いて、JIS K 7121の方法により測定する。樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体中のシリコーン共重合ポリカーボネート樹脂、変性ポリ乳酸樹脂およびポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、熱分析装置(エスアイアイナノテクノロジ製、DSC6000型)を用いて、JIS K 7121の方法により測定する。
樹脂組成物中の変性ポリ乳酸樹脂中の官能基を含有するシランカップリング剤の含有量は、29Si−NMR分析の方法により測定する。樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体中の変性ポリ乳酸樹脂中の官能基を含有するシランカップリング剤の含有量も、同様の方法により測定する。このようにして測定した樹脂成形体中の変性ポリ乳酸樹脂中の官能基を含有するシランカップリング剤の含有量から、樹脂組成物中の変性ポリ乳酸樹脂中の官能基を含有するシランカップリング剤の含有量が推定される。
<その他成分>
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、強化剤、耐候剤、加水分解防止剤等の添加剤、触媒等のその他の成分をさらに含有してもよい。これらのその他の成分の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として、それぞれ10質量%以下であることが好ましい。タルク、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を結晶核剤やアンチドリップ剤として用いることが好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂と、変性ポリ乳酸樹脂と、必要に応じてその他の成分とを、混練して作製すればよい。
混練は、例えば、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)、簡易ニーダ(東洋精機製、ラボプラストミル)等の公知の混練装置を用いて行えばよい。ここで、混練の温度条件(シリンダ温度条件)としては、例えば、170℃以上250℃以下の範囲が好ましく、180℃以上240℃以下の範囲がより好ましい。これにより、機械的特性等に優れた成形体が得られ易くなる。
[樹脂成形体]
本実施形態に係る樹脂成形体は、例えば、上述した本実施形態に係る樹脂組成物を成形することにより得られる。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形等の成形方法により成形して、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。生産性等の理由から、本実施形態に係る樹脂組成物を射出成形して得られたものであることが好ましい。
射出成形は、例えば、日精樹脂工業製「NEX150」、日精樹脂工業製「NEX70000」、東芝機械製「SE50D」等の市販の装置を用いて行えばよい。この際、シリンダ温度としては、樹脂の分解抑制等の観点から、170℃以上250℃以下の範囲とすることが好ましく、180℃以上240℃以下の範囲とすることがより好ましい。また、金型温度としては、生産性等の観点から、30℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましく、30℃以上60℃以下の範囲とすることがより好ましい。
本実施形態に係る樹脂成形体は、真珠光沢がほとんどなく、外観性、ブリード性、および機械的特性に優れる。
<電子・電気機器の部品>
本実施形態に係る樹脂成形体は、機械的強度(耐衝撃性、引張弾性率等)に優れたものになり得るため、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。電子・電気機器の部品は、複雑な形状を有しているものが多く、また重量物であるので、重量物とならない場合に比べて高い耐衝撃性が要求されるが、本実施形態に係る樹脂成形体によれば、このような要求特性が十分満足される。本実施形態に係る樹脂成形体は、特に、画像形成装置や複写機等の筐体に適している。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<製造実施例1〜14>
[変性ポリ乳酸樹脂の調製]
2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30α)を使用してトップフィーダからポリ乳酸樹脂(商品名「Ingeo3001D」、ネイチャーワークス社製)を供給し、加工温度190℃で溶融混練押出しを行った。その際、混練機途中から、ポンプを用いて、表2に示すシランカップリング剤(S−1〜S−3)と、架橋剤としての過酸化物(商品名「パーヘキサ25B」、日本油脂社製)とを、可塑剤であるグリセリンジアセトモノカプレート(商品名「リケマールPL−019」、理研ビタミン製)に溶解した溶液を表1に示す組成で注入した。そして、吐出された樹脂をペレット状にカッティングして、変性ポリ乳酸樹脂を得た。変性ポリ乳酸樹脂をアセトンにて8時間ソックスレー抽出を行った。抽出後の変性ポリ乳酸樹脂および抽出後のアセトンを30℃で5時間真空乾燥し、次いで、ブルカー・バイオスピン社製AVNCE400型にて、観測周波数79.45MHz、待ち時間10秒、積算回数5000回の条件で29Si−NMR(MAS)法により測定した。表1に反応率(初期仕込みに対する結合シランカップリング剤(%))を示す。
<実施例1〜20、比較例1〜5>
表3〜表6に示す割合の原料を全てできるだけ均一に混合したのち、2軸押出機(日本製鋼所社製TEX−30α)のホッパーに供給し、シリンダ温度およびダイス温度230℃、スクリュー回転数250rpm、ベント吸引度100MPa、ならびに吐出量10kg/hで溶融混練してペレットを得た。得られたペレットは80℃で4時間、熱風乾燥機を用いて乾燥後、射出成形機によりシリンダ温度230℃、金型温度60℃の条件で所定の評価用試験片を得た。
なお、変性していないポリ乳酸樹脂としてポリ乳酸樹脂(商品名「Ingeo3001D」、ネイチャーワークス社製、重量平均分子量150,000)、シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂として芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(ポリオルガノシロキサン含有量4.0質量%、特開2002−12755の製造例4に準拠して調製、重量平均分子量17,000)、ポリカーボネート樹脂としてポリカーボネート樹脂(商品名「カリバー」、住友ダウ社製、重量平均分子量26000)、シリコーン樹脂としてシリコーン樹脂(商品名「KBM−1003」)、難燃助剤としてタルク(商品名「P−3」、日本タルク製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(商品名「FA500H」、ダイキン工業社製)を用いた。
[測定・評価]
(成形品外観)
成形品として、80mm×120mm×2mm厚の平板状であり、成形品中央部に8mmφの穴が空いた射出評価品を成形し、その穴から樹脂流れ方向に生じるウエルドラインおよびフローマーク、真珠光沢の外観評価を目視にて行った。目視による評価は、5点満点の点数(最高点:5点、最低点:1点)による下記評価およびそれらのトータル点数で行った。
ウエルドライン:点数が高いほどウエルドラインは確認されず、点数が低いほどウエルドラインが確認された
フローマーク:点数が高いほどフローマークは確認されず、点数が低いほどフローマークが確認された
真珠光沢:点数が高いほど真珠光沢は確認されず、点数が低いほど真珠光沢が確認された
(ブリード性)
恒温恒湿機にて80℃、300時間経過後の成型片表面のブリード有無の判定を行った。ブリードなしを○、ブリードありを×、ブリード特にありを××と判定した。
(難燃性)
UL94に規定されているV試験を、試験片厚み1.0mmにて実施した。なお、燃焼試験の結果は、V−0、V−1、V−2、HBの順で高いレベルである。
(機械的特性)
[衝撃強度(耐衝撃性)]
ISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したものを用い、ISO−179に規定の方法に従って衝撃試験装置(東洋精機社製、DG−5)によりシャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。
[引張り破断伸度]
成形体の引張り破断伸度を、JIS K−7113に準じて測定した。なお、成形体として、射出成形により得られたJIS1号試験片(厚さ4mm)を用いた。
[引張り強度]
成形体の引張り強度(MPa)を、JIS K 7113に準じて測定した。
Figure 2014185257
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実施例1〜20の樹脂組成物は、比較例1〜5の樹脂組成物に比べて、成形体にした場合に外観性、ブリード性、および機械的特性に優れていた。

Claims (7)

  1. シリコーン共重合ポリカーボネート樹脂と、官能基を含有するシランカップリング剤により変性された変性ポリ乳酸樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記変性ポリ乳酸樹脂が、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリル基のうち少なくとも1つの官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたポリ乳酸樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記変性ポリ乳酸樹脂が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記官能基を含有するシランカップリング剤0.01質量部以上5質量部以下によって変性されたポリ乳酸樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて得られることを特徴とする樹脂成形体。
  5. 官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたポリ乳酸樹脂であることを特徴とする、変性ポリ乳酸樹脂。
  6. 前記変性ポリ乳酸樹脂が、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリル基のうち少なくとも1つの官能基を含有するシランカップリング剤により変性されたポリ乳酸樹脂であることを特徴とする、請求項5に記載の変性ポリ乳酸樹脂。
  7. 前記変性ポリ乳酸樹脂が、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、前記官能基を含有するシランカップリング剤0.01質量部以上5質量部以下によって変性されたポリ乳酸樹脂であることを特徴とする、請求項5または6に記載の変性ポリ乳酸樹脂。
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