JP5672926B2 - 化合物半導体装置及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
窒化物半導体デバイスは、高い飽和電子速度及びワイドバンドギャップ等の特徴を利用し、高耐圧及び高出力の半導体デバイスとしての開発が活発に行われている。窒化物半導体デバイスとしては、電界効果トランジスタ、特に高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)についての報告が数多くなされている。特に、GaNを電子走行層とし、AlGaNを電子供給層として用いたAlGaN/GaN・HEMTが注目されている。AlGaN/GaN・HEMTでは、GaNとAlGaNとの格子定数差に起因した歪みがAlGaNに生じる。これにより発生したピエゾ分極及びAlGaNの自発分極により、高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が得られる。そのため、高耐圧及び高出力が実現できる。
特開2008−218479号公報 特開2008−159621号公報
GaNの結晶を用いた基板の製造は極めて困難であり、大径の基板は存在しない。そのため、SiC、サファイア、Si等の基板を用いて、ヘテロエピタキシャル成長によりGaNを形成している。特にSi基板は、大径で高品質の基板が、低コストで入手可能であり、近年ではSi基板上のGaN形成の研究が盛んに行われている。
Siは、GaN、AlGaN等の化合物半導体に比べて熱膨張係数が小さい。GaNのエピタキシャル成長は高温で行われる。そのため、Si基板とGaN層との熱膨張係数差に起因して、Si基板に反り、クラック等が発生するという問題がある。この問題を解決するため、超格子構造により結晶歪を低減し基板の反りを低減する手法等が研究されている。しかしながらこの方法では、結晶の成長制御が困難であり、また、成長時間が長くなるためコストが高くなるという問題がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることを可能とし、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力の化合物半導体装置を実現することを目的とする。
化合物半導体装置の一態様は、基板と、前記基板の上方に形成された化合物半導体層とを含み、前記化合物半導体層は、第1の層及び前記第1の層上に形成された第2の層を有しており、前記第1の層は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数以下であるとともに、膜厚方向において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい二部位を有しており、前記第1の層は、Al組成比率が均一な第1の領域と、膜厚方向のAl組成比率が前記第1の領域との界面から前記第2の層との界面にかけて漸増する第2の領域とが積層されてなる
化合物半導体装置の一態様は、基板と、前記基板の上方に形成された化合物半導体層と
を含み、前記化合物半導体層は、第1の層及び前記第1の層上に形成された第2の層を有しており、前記第1の層は、下領域及び前記下領域よりも格子定数の小さい上領域からなる構成層が複数積層されてなり、複数の前記構成層のうち、任意の隣接する2層において、上部の前記構成層の前記下領域の格子定数が下部の前記構成層の前記下領域の格子定数よりも大きく、且つ、上部の前記構成層の前記上領域の格子定数が下部の前記構成層の前記上領域の格子定数よりも大きく、前記各構成層の前記上領域は、下面から上面にかけてAl組成比率が漸増している
化合物半導体装置の製造方法の一態様は、基板の上方に、常温以上の所定の処理温度で化合物半導体からなる第1の層及び第2の層を順次形成する工程を含み、前記第1の層は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数以下であるとともに、膜厚方向において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい二部位を有しており、前記基板は、前記第1の層及び前記第2の層よりも熱膨張係数が小さく、前記基板、前記第1の層及び前記第2の層は、前記第2の層を形成した際に、前記基板から前記第1の層及び前記第2の層に向かって上に凸に反った形状とされる。
化合物半導体装置の製造方法の一態様は、基板の上方に、常温以上の所定の処理温度で化合物半導体からなる第1の層及び第2の層を順次形成する工程を含み、前記第1の層は、下領域及び前記下領域よりも格子定数の小さい上領域からなる構成層が複数積層されてなり、前記基板は、前記第1の層及び前記第2の層よりも熱膨張係数が小さく、複数の前記構成層のうち、任意の隣接する2層において、上部の前記構成層の前記下領域の格子定数が下部の前記構成層の前記下領域の格子定数よりも大きく、且つ、上部の前記構成層の前記上領域の格子定数が下部の前記構成層の前記上領域の格子定数よりも大きく、前記基板、前記第1の層及び前記第2の層は、前記第2の層を形成した際に、前記基板から前記第1の層及び前記第2の層に向かって上に凸に反った形状とされる。
上記の各態様によれば、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力の化合物半導体装置が実現する。
第1の実施形態による化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図である。 図1に引き続き、第1の実施形態による化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図である。 第1の実施形態における第2のバッファ層のAl組成比率を示す模式図である。 比較例によるAlGaN/GaN・HEMTの図1(a)に相当する状態を示す模式図である。 比較例において、Si基板上に電子走行層等の化合物半導体層を形成した場合の基板形状を示す模式図である。 第1の実施形態によるAlGaN/GaN・HEMTの図1(a)の状態を示す模式図である。 第1の実施形態において、Si基板上に電子走行層等の化合物半導体層を形成した場合の基板形状を示す模式図である。 第1の実施形態の変形例による化合物半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。 第2の実施形態による化合物半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。 第2の実施形態における第2のバッファ層の詳細を示す模式図である。 第2の実施形態における第2のバッファ層のAl組成比率を示す特性図である。 第2の実施形態の変形例による化合物半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。 第2の実施形態の変形例における第2のバッファ層の詳細を示す模式図である。 第2の実施形態の変形例における第2のバッファ層のAl組成比率を示す特性図である。 第3の実施形態による電源装置の概略構成を示す結線図である。 第4の実施形態による高周波増幅器の概略構成を示す結線図である。
以下、諸実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の諸実施形態では、化合物半導体装置の構成について、その製造方法と共に説明する。
なお、以下の図面において、図示の便宜上、相対的に正確な大きさ及び厚みに示していない構成部材がある。諸実施形態において、素子分離は、所定の素子分離法、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法、又は素子分離領域へのイオン注入等により行う。
(第1の実施形態)
本実施形態では、化合物半導体装置としてAlGaN/GaN・HEMTを開示する。
図1及び図2は、第1の実施形態による化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
成長用基板として、汎用性に優れたSi基板を用いる。Si基板は、その上に形成する、後述する電子走行層等の諸化合物半導体よりも熱膨張係数が小さい。図1(a)に示すように、Si基板1上に、AlNからなる第1のバッファ層2を形成した後、AlGaNからなる第2のバッファ層3を形成する。
第2のバッファ層3は、均一組成領域3aと傾斜組成領域3bとの積層構造とされている。均一組成領域3aは、AlGaNのAl組成比率が均一となるように形成されている。傾斜組成領域3bは、第2のバッファ層3の上面に近づくにつれてAlGaNのAl組成比率が徐々に高くなるように形成されている。AlGaNは、Al組成比率が高いほど格子定数は小さくなる。換言すれば、傾斜組成領域3bでは、膜厚方向の任意の二部位において、上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい。
第2のバッファ層3上に、電子走行層4、中間層5、電子供給層6、及びキャップ層7を順次形成する。AlGaN/GaN・HEMTでは、電子走行層4の電子供給層6(直接的には中間層5)との界面近傍に2次元電子ガス(2DEG)が生成される。
詳細には、Si基板1上に、例えば有機金属気相成長法であるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、以下の各化合物半導体層を成長する。MOCVD法の代わりに、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等を用いても良い。各化合物半導体層の成長時の処理温度は、例えば900℃〜1000℃程度である。
Si基板1上に、AlN、インテンショナリーアンドープAlGaN(i−AlGaN)、i−GaN、i−AlGaN、n−AlGaN、及びn+−GaNを順次堆積し、第1のバッファ層2、第2のバッファ層3、電子走行層4、中間層5、電子供給層6、及びキャップ層7を積層形成する。ここで、第1のバッファ層2は膜厚50nm程度、第2のバッファ層3は膜厚400nm程度に形成する。
第2のバッファ層3では、図3(第1のバッファ層2、第2のバッファ層3、電子走行層4のみ図示する。)に示すように、均一組成領域3aは、Al組成比率が例えば0.5の均一組成となるように形成される。傾斜組成領域3bは、例えば厚み10nm程度であり、Al組成比率が傾斜組成領域3bの下面から上面にかけて例えば0.5から0.7に漸増するように形成される。
電子走行層4は例えば膜厚1μm程度、中間層5は例えば膜厚5nm程度でAl組成比率0.2、電子供給層6は例えば膜厚30nm程度でAl組成比率0.2、キャップ層7は例えば膜厚10nm程度に形成する。なお、電子供給層4をi−AlGaN層としても良い。
上記のi−GaN、i−AlGaN、n−GaN、及びn−AlGaNの成長条件としては、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(TMA)ガス、トリメチルガリウム(TMG)ガス、及びアンモニア(NH3)ガスの混合ガスを用いる。成長する化合物半導体層に応じて、Al源であるTMAガス、Ga源であるTMGガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。傾斜組成領域3bを形成する際には、TMAガスの供給量を徐々に増加させる、或いはTMGガスの供給量を徐々に減少させて成長する。共通原料であるNH3ガスの流量は、100ccm〜10LM程度とする。また、成長圧力は50Torr〜300Torr程度、成長温度は900℃〜1200℃程度とする。n−GaN及びn−AlGaNを成長する際には、n型不純物として例えばSiを含む例えばSiH4ガスを所定の流量で原料ガスに添加し、GaN及びAlGaNにSiをドーピングする。Siのドーピング濃度は、1×1018/cm3程度〜1×1020/cm3程度、例えば5×1018/cm3程度とする。
ここで、本実施形態によるAlGaN/GaN・HEMTの優位性について、比較例との比較に基づいて説明する。
図4は、比較例によるAlGaN/GaN・HEMTの図1(a)に相当する状態を示す模式図である。図示の便宜上、(a)ではSi基板1、第1のバッファ層2、第2のバッファ層10、電子走行層4のみを、(b)では第1のバッファ層2、第2のバッファ層10、電子走行層4のみを示している。
第2のバッファ層10は、第1のバッファ層2のAlNと電子走行層4のGaNとの格子定数差を緩和するために設けられており、膜厚400nm程度で、AlGaNのAl組成比率が0.5で均一となるように形成されている。
第2のバッファ層10のAlGaNは、第1のバッファ層2のAlNよりも格子定数が大きく、電子走行層4のGaNよりも格子定数が小さい。そのため比較例では、図4(b)に示すように、第2のバッファ層10は、第1のバッファ層2との界面近傍では、第1のバッファ層2との格子定数差に起因する比較的大きな圧縮応力(矢印A1)が印加される。これにより、第2のバッファ層10には比較的大きな圧縮歪み(矢印B1)が生じる。この圧縮歪みは、第1のバッファ層2との界面で最大であり、当該界面から離間するにつれて、結晶転移の発生等に起因して小さくなる。第2のバッファ層10の膜厚が大きいほど当該界面との距離が大きくなるため、圧縮歪みは小さくなる。
一方、第2のバッファ層10は、電子走行層4との界面近傍では、電子走行層4との格子定数差に起因する比較的小さな引張応力(矢印A2)が印加される。この引張応力は、第2のバッファ層10の第1のバッファ層2との関係で生じた圧縮応力の一部と相殺される。その結果、第2のバッファ層10は、電子走行層4との界面近傍では、第1のバッファ層2との界面近傍における圧縮歪み(矢印B1)に比べて小さな圧縮歪み(矢印B2)が残留することになる。第2のバッファ層10は400nm程度の厚い膜厚に形成されるため、第1のバッファ層2との関係で生じた圧縮応力は、電子走行層4との界面近傍では相当に小さくなる。そのため、矢印B2で示す圧縮歪みは、矢印B1で示す圧縮歪みに比べて非常に小さい。
図5は、比較例において、Si基板上に電子走行層等の化合物半導体層を形成した場合の基板形状を示す模式図であり、(a)が形成直後の高温状態の基板形状、(b)が所定時間経過した常温状態の基板形状を示している。図5では便宜上、Si基板1上の第1のバッファ層2、第2のバッファ層10、電子走行層4、中間層5、電子供給層6、及びキャップ層7を「化合物半導体層」と示す。
Si基板1はその上の電子走行層4等の化合物半導体よりも熱膨張係数が小さい。比較例において、図1(a)に相当する工程を終了した直後には、Si基板1等は1000℃以下の高温状態にある。第2のバッファ層10では、電子走行層4との界面近傍の方が第1のバッファ層2との界面近傍よりも圧縮応力が小さい。そのためSi基板1等は、当該直後には、上記の熱膨張係数の差と、第2のバッファ層10における第1のバッファ層2との界面近傍と電子走行層4との界面近傍との圧縮歪みの差(圧縮応力差)とが拮抗して、図5(a)のように平坦に近い状態となる。そして、Si基板1等は、温度が下がって常温となると、上記の拮抗が崩れて図5(b)のように下に凸に反った状態となってしまう。
図6は、本実施形態によるAlGaN/GaN・HEMTの図1(a)の状態を示す模式図である。図示の便宜上、(a)ではSi基板1、第1のバッファ層2、第2のバッファ層3、電子走行層4のみを、(b)では第1のバッファ層2、第2のバッファ層3、電子走行層4のみを示している。
本実施形態によるAlGaN/GaN・HEMTでは、比較例の第2のバッファ層10に替わって第2のバッファ層3が設けられている。本実施形態では、図6(b)に示すように、第2のバッファ層3の均一組成領域3aにより、比較例と同様に、第2のバッファ層3の第1のバッファ層2との界面近傍では、矢印B1で示す大きな圧縮歪みが生じる。本実施形態の第2のバッファ層3では、均一組成領域3a上にこれよりもAl組成比率の高い傾斜組成領域3bが形成されている。傾斜組成領域3bの存在により、第2のバッファ層3の電子走行層4との界面近傍におけるAl組成比率が、比較例の第2のバッファ層10の場合よりも高くなり、格子定数が小さくなる。その結果、第2のバッファ層3では、電子走行層4との界面近傍において、矢印A3に示すように、図6(b)の第1のバッファ層2との関係で生じた圧縮応力に加えて、比較的大きな圧縮応力が印加される。矢印A3で示すように、図6(b)の矢印A2で示す引張応力を打ち消してもなお、大きな引張応力が残留する。これにより、第2のバッファ層3では、電子走行層4との界面近傍において、第1のバッファ層2との界面近傍における矢印B1で示す圧縮歪みに相当する(例えば同等の)大きさの圧縮歪み(矢印B3)が生じることになる。
傾斜組成領域3bは、均一組成領域3aとの界面から電子走行層4との界面にかけてAl組成比率が漸増している。この構成により、傾斜組成領域3bと均一組成領域3aとの界面では両者の格子定数に差は殆どなく、格子欠陥は発生しない。また、傾斜組成領域3bのAl組成比率を上記のように漸増させることで、圧縮歪みを効率良くきめ細かに増加させることが可能となる。
図7は、本実施形態において、Si基板上に電子走行層等の化合物半導体層を形成した場合の基板形状を示す模式図であり、(a)が形成直後の高温状態の基板形状、(b)が所定時間経過した常温状態の基板形状を示している。図7では便宜上、Si基板1上の第1のバッファ層2、第2のバッファ層3、電子走行層4、中間層5、電子供給層6、及びキャップ層7を「化合物半導体層」と示す。
Si基板1はその上の電子走行層4等の化合物半導体よりも熱膨張係数が小さい。本実施形態において、図1(a)の工程を終了した直後には、Si基板1等は1000℃以下の高温状態にある。第2のバッファ層3では、電子走行層4との界面近傍と第1のバッファ層2との界面近傍とで圧縮応力は例えば同等の大きさである。そのためSi基板1等は、当該直後には、上記の熱膨張係数の差に起因して、図7(a)のように上に凸に反った状態となる。そして、Si基板1等は、温度が下がって常温となると、上記の熱膨張係数の差による影響が緩和(ほぼ消失)して、図7(b)のようにほぼ平坦な状態となる。
続いて、図1(b)に示すように、リフトオフ法により、ソース電極8及びドレイン電極9を形成する。
詳細には、先ず、キャップ層7上にレジストを塗付し、リソグラフィーによりレジストを加工して、ソース電極の形成部位及びドレイン電極の形成部位に開口を有するレジストマスクを形成する。電極材料として例えばTi/Alを用い、蒸着法等により、各開口を埋め込むようにレジストマスク上にTi/Alを堆積する。リフトオフ法により、レジストマスク及びその上に堆積するTi/Alを除去する。その後、Si基板1を、例えば窒素雰囲気中において600℃程度で熱処理し、オーミックコンタクトを確立する。以上により、キャップ層7上には、ソース電極8及びドレイン電極9が形成される。
続いて、図1(c)に示すように、パッシベーション膜11を形成する。
詳細には、ソース電極8及びドレイン電極9を覆うように、キャップ層7上に絶縁物、ここではPECVD法等によりSiNを膜厚500nm程度に堆積する。これにより、保護膜となるパッシベーション膜11が形成される。
続いて、図2(a)に示すように、パッシベーション膜11に開口11aを形成する。
詳細には、先ず、パッシベーション膜12をリソグラフィー及びドライエッチングにより加工する。これにより、キャップ層7の表面の一部を露出させるゲート電極形成用の開口12aが形成される。
続いて、図2(b)に示すように、リフトオフ法により、ゲート電極12を形成する。
詳細には、先ず、パッシベーション膜11上にレジストを塗付し、リソグラフィーによりレジストを加工して、パッシベーション膜11の開口11aを露出する開口を有するレジストマスクを形成する。電極材料として例えばNi/Auを用い、蒸着法等により、開口を埋め込むようにレジストマスク上にNi/Auを堆積する。リフトオフ法により、レジストマスク及びその上に堆積するNi/Auを除去する。以上により、パッシベーション膜11上には、ソース電極8とドレイン電極9との間で、開口11aをNi/Auで埋め込みキャップ層7と接続されるゲート電極12が形成される。
しかる後、ソース電極8、ドレイン電極9、及びゲート電極12と接続される配線の形成等の諸工程を経る。これにより、本実施形態のAlGaN/GaN・HEMTが形成される。
以上説明したように、本実施形態によれば、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力のAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
[変形例]
以下、第1の実施形態の変形例について説明する。本例では、第1の実施形態と同様にAlGaN/GaN・HEMTを開示するが、第2のバッファ層の構成が若干異なる点で第1の実施形態と相違する。
図8は、第1の実施形態の変形例による化合物半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
先ず、図8(a)に示すように、第1の実施形態と同様の手法により、Si基板1上に、AlNからなる第1のバッファ層2を形成した後、AlGaNからなる第2のバッファ層21を形成する。
第2のバッファ層21は、低Al組成領域21aと高Al組成領域21bとの積層構造で例えば膜厚400nm程度とされている。低Al組成領域21aは、AlGaNのAl組成比率が比較的低値で均一、例えばAl組成比率が0.5となるように形成されている。高Al組成領域21bは、厚みが例えば10nm程度であり、AlGaNのAl組成比率が比較的高値で均一、例えば0.7となるように形成されている。
第2のバッファ層21上に、第1の実施形態と同様に、電子走行層4、中間層5、電子供給層6、及びキャップ層7を順次形成する。AlGaN/GaN・HEMTでは、電子走行層4の電子供給層6(直接的には中間層5)との界面近傍に2DEGが生成される。
本例では、第2のバッファ層21は、第1の実施形態の第2のバッファ層3と同様に、第1のバッファ層2との界面近傍では、第1のバッファ層2との格子定数差に起因する比較的大きな圧縮応力が生じる。これにより、第2のバッファ層10には比較的大きな圧縮歪みが生じる。一方、低Al組成領域21aよりもAl組成比率の高い高Al組成領域21bの存在により、第2のバッファ層21の電子走行層4との界面近傍においても、第1のバッファ層2との界面近傍のものと例えば同等の大きな圧縮応力が生じる。
本例でも、第1の実施形態と同様に、図8(a)の工程を終了した直後には、Si基板1等は1000℃以下の高温状態にある。第2のバッファ層21では、電子走行層4との界面近傍と第1のバッファ層2との界面近傍とで圧縮応力は例えば同等の大きさである。そのためSi基板1等は、当該直後には、上記の熱膨張係数の差に起因して、上に凸に反った状態となる。そして、Si基板1等は、温度が下がって常温となると、上記の熱膨張係数の差による影響が緩和(ほぼ消失)して、ほぼ平坦な状態となる。
続いて、第1の実施形態の図1(b)〜図2(b)と同様の諸工程を経て、図8(b)に示す構造体を得る。
しかる後、ソース電極8、ドレイン電極9、及びゲート電極12と接続される配線の形成等の諸工程を経る。これにより、本例のAlGaN/GaN・HEMTが形成される。
以上説明したように、本例によれば、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力のAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態の変形例について説明する。本実施形態では、第1の実施形態と同様にAlGaN/GaN・HEMTを開示するが、第2のバッファ層の構成が異なる点で第1の実施形態と相違する。
図9は、第2の実施形態による化合物半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
先ず、図9(a)に示すように、第1の実施形態と同様の手法により、Si基板1上に、AlNからなる第1のバッファ層2を形成した後、AlGaNからなる第2のバッファ層31を形成する。
第2のバッファ層31上に、第1の実施形態と同様に、電子走行層4、中間層5、電子供給層6、及びキャップ層7を順次形成する。AlGaN/GaN・HEMTでは、電子走行層4の電子供給層6(直接的には中間層5)との界面近傍に2DEGが生成される。
第2のバッファ層31の詳細を図10に示す。ここでは図示の便宜上、第1のバッファ層2、第2のバッファ層31、電子走行層4のみ示している。
第2のバッファ層31は、下領域及び下領域よりも格子定数の小さい上領域が積層された構成層が複数積層されてなる。図10(a)では、構成層が3層形成された場合を例示しており、Si基板1側から構成層32A,32B,32Cとする。構成層32Aは、下領域32Aa及び上領域32Abが積層されてなる。構成層32Bは、下領域32Ba及び上領域32Bbが積層されてなる。構成層32Cは、下領域32Ca及び上領域32Cbが積層されてなる。
第2のバッファ層31を構成する構成層32A,32B,32CのAl組成比率を図11に示す。
各構成層について、下領域では、AlGaNのAl組成比率が均一となるように形成されている。上領域では、その上面に近づくにつれてAlGaNのAl組成比率が高くなるように形成されている。換言すれば、各構成層の下領域は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい。
第2のバッファ層31では、最下層の構成層から最上層の構成層に向かって、ここでは構成層32A,32B,32Cの順に、AlGaNのAl組成比率が低くされている。
具体的には、下領域32Aa,32Ba,32Caでは、この順にAl組成比率が低くなるように、例えば0.5,0.3,0.1でそれぞれ均一のAl組成比率とされている。
上領域32Ab,32Bb,32Cbでは、この順に、漸増するAl組成比率のピーク値(各上領域の上面におけるAl組成比率の値)が低くなるように、例えばピーク値が0.7,0.4,0.2とされている。この構成により、最上層の構成層32C上に、格子欠陥等を可及的に生ぜしめることなく電子走行層4を形成することができる。
このことは、換言すれば、以下のようになる。
構成層32A,32B,32Cのうち、任意の隣接する2層に着目する。ここでは、構成層32A,32B、構成層32B,32Cが考えられる。例えば、構成層32B,32Cを例示する。当該2層では、上部の構成層32Cの下領域32Caの格子定数が下部の構成層32Bの下領域32Baの格子定数よりも大きい。且つ、上部の構成層32Cの上領域32Cbの上面における格子定数が下部の構成層32Bの上領域32Bbの上面における格子定数よりも大きい。
第2のバッファ層31の各構成層は、その下面近傍では、当該構成層の下層との格子定数差に起因する比較的大きな圧縮応力が印加される。
具体的に、当該構成層が構成層32Aであれば下層はAlNからなる第1のバッファ層2であり、当該構成層が構成層32B又は構成層32Cであれば下層は構成層32A(の上領域32Ab)又は構成層32B(の上領域32Bb)である。
第1のバッファ層2に生じる内部応力を図10(b)に示す。
構成層32Aの第1のバッファ層2との界面近傍では、第1の実施形態と同様に、第1のバッファ層2との格子定数差に起因する比較的大きな圧縮応力が印加される。これにより、構成層32Aには比較的大きな圧縮歪み(矢印A1)が生じる。
構成層32Bの下領域32BaのAl組成比率(0.3)は、構成層32Aの上領域32AbのAl組成比率のピーク値(0.7)よりも低い。そのため、構成層32Bの構成層32Aとの界面近傍では、構成層32Bには比較的大きな圧縮歪みが印加される。これにより、構成層32Bには比較的大きな圧縮歪み(矢印B1)が生じる。
構成層32Cでも同様に、構成層32Bとの界面近傍で比較的大きな圧縮歪みが印加され、比較的大きな圧縮歪み(矢印C1)が生じる。
一方、第2のバッファ層31の各構成層は、その上面近傍では、下領域よりもAl組成比率の高い上領域の存在により、上層との界面近傍において大きな圧縮歪みが印加される。これにより、各構成層では、上層との格子定数差に起因して生じる引張応力を打ち消して、大きな圧縮応力が生じる。
具体的に、当該構成層が構成層32A又は構成層32Bであれば上層は構成層32B(の下領域32Ba)又は構成層32C(の下領域32Ca)であり、当該構成層が構成層32Cであれば上層は電子走行層4である。
ここで、各構成層はその積層構造のために比較的薄く、その下層との関係で当該下層との界面近傍に生じた圧縮応力は当該界面から上方に離れた部位でもさほど低下しない。このことも作用して、上領域32Abの存在により、構成層32Aの構成層32Bとの界面近傍においても、矢印A1で示す圧縮応力と例えば同等の大きな圧縮応力(矢印A2)が生じる。
同様に、上領域32Bbの存在により、構成層32Bの構成層32Cとの界面近傍においても、矢印B1で示す圧縮応力と例えば同等の大きな圧縮応力(矢印B2)が生じる。
同様に、上領域32Cbの存在により、構成層32Cの電子走行層4との界面近傍においても、矢印C1で示す圧縮応力と例えば同等の大きな圧縮応力(矢印C2)が生じる。
以上により、第2のバッファ層31では、全体的にみれば、膜厚方向において大きさに偏りの少ない圧縮応力を内在している。
構成層32A,32B,32Cにおいて、上領域32Ab,32Bb,32Cbは、それぞれ下面から上面にかけてAl組成比率が漸増している。この構成により、上領域32Ab,32Bb,32Cbと下領域32Aa,32Ba,32Caとの界面では両者の格子定数に差は殆どなく、格子欠陥は発生しない。また、上領域32Ab,32Bb,32CbのAl組成比率を上記のように漸増させることで、それぞれ上面における圧縮歪みを効率良くきめ細かに増加させることが可能となる。
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、図9(a)の工程を終了した直後には、Si基板1等は1000℃以下の高温状態にある。第2のバッファ層31では、電子走行層4との界面近傍と第1のバッファ層2との界面近傍とで圧縮応力は同等の大きさである。そのためSi基板1等は、当該直後には、上記の熱膨張係数の差に起因して、上に凸に反った状態となる。そして、Si基板1等は、温度が下がって常温となると、上記の熱膨張係数の差による影響が緩和(ほぼ消失)して、ほぼ平坦な状態となる。
続いて、第1の実施形態の図1(b)〜図2(b)と同様の諸工程を経て、図9(b)に示す構造体を得る。
しかる後、ソース電極8、ドレイン電極9、及びゲート電極12と接続される配線の形成等の諸工程を経る。これにより、本実施形態のAlGaN/GaN・HEMTが形成される。
以上説明したように、本実施形態によれば、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力のAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
[変形例]
以下、第2の実施形態の変形例について説明する。本例では、第2の実施形態と同様にAlGaN/GaN・HEMTを開示するが、第2のバッファ層の構成が若干異なる点で第2の実施形態と相違する。
図12は、第2の実施形態の変形例による化合物半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
先ず、図12(a)に示すように、第1の実施形態と同様の手法により、Si基板1上に、AlNからなる第1のバッファ層2を形成した後、AlGaNからなる第2のバッファ層41を形成する。
第2のバッファ層41上に、第2の実施形態と同様に、電子走行層4、中間層5、電子供給層6、及びキャップ層7を順次形成する。AlGaN/GaN・HEMTでは、電子走行層4の電子供給層6(直接的には中間層5)との界面近傍に2DEGが生成される。
第2のバッファ層41の詳細を図13に示す。ここでは図示の便宜上、Si基板1、第1のバッファ層2、第2のバッファ層41、電子走行層4のみ示している。
第2のバッファ層41は、下領域及び下領域よりも格子定数の小さい上領域が積層された構成層が複数積層されてなる。図13では、構成層が3層形成された場合を例示しており、Si基板1側から構成層42A,42B,42Cとする。構成層42Aは、下領域42Aa及び上領域42Abが積層されてなる。構成層42Bは、下領域42Ba及び上領域42Bbが積層されてなる。構成層42Cは、下領域42Ca及び上領域42Cbが積層されてなる。
第2のバッファ層1を構成する構成層2A,2B,2CのAl組成比率を図14に示す。
各構成層について、下領域では、AlGaNのAl組成比率が均一となるように形成されている。上領域では、AlGaNのAl組成比率が下領域よりも高値で均一となるように形成されている。
第2のバッファ層1では、最下層の構成層から最上層の構成層に向かって、ここでは構成層2A,2B,2Cの順に、AlGaNのAl組成比率が低くされている。
具体的には、下領域42Aa,42Ba,42Caでは、この順にAl組成比率が低くなるように、例えば0.5,0.3,0.1でそれぞれ均一のAl組成比率とされている。
上領域42Ab,42Bb,42Cbでは、この順にこの順にAl組成比率が低くなるように、且つ下領域42Aa,42Ba,42CaよりもAl組成比率が高くなるように、例えば0.7,0.4,0.2でそれぞれ均一のAl組成比率とされている。この構成により、最上層の構成層42C上に、格子欠陥等を可及的に生ぜしめることなく電子走行層4を形成することができる。
第2のバッファ層41の各構成層は、その下面近傍では、当該構成層の下層との格子定数差に起因する比較的大きな圧縮応力が印加される。
具体的に、当該構成層が構成層42Aであれば下層はAlNからなる第1のバッファ層2であり、当該構成層が構成層42B又は構成層42Cであれば下層は構成層42A(の上領域42Ab)又は構成層42B(の上領域42Bb)である。
構成層42Aの第1のバッファ層2との界面近傍では、第1の実施形態と同様に、第1のバッファ層2との格子定数差に起因する比較的大きな圧縮応力が印加される。これにより、構成層42Aには比較的大きな圧縮歪みが生じる。
構成層42Bの下領域42BaのAl組成比率(0.3)は、構成層42Aの上領域42AbのAl組成比率(0.7)よりも低い。そのため、構成層42Bの構成層42Aとの界面近傍では、構成層42Bには比較的大きな圧縮歪みが印加される。これにより、構成層42Bには比較的大きな圧縮歪みが生じる。
構成層42Cでも同様に、構成層42Bとの界面近傍で比較的大きな圧縮歪みが印加され、比較的大きな圧縮歪みが生じる。
一方、第2のバッファ層41の各構成層は、その上面近傍では、下領域よりもAl組成比率の高い上領域の存在により、上層との界面近傍において大きな圧縮歪みが印加され、大きな圧縮応力が生じる。
具体的に、当該構成層が構成層42A又は構成層42Bであれば上層は構成層42B(の下領域42Ba)又は構成層42C(の下領域42Ca)であり、当該構成層が構成層42Cであれば上層は電子走行層4である。
ここで、各構成層はその積層構造のために比較的薄く、その下層との関係で当該下層との界面近傍に生じた圧縮応力はさほど低下しない。このことも作用して、上領域42Abの存在により、構成層42Aの構成層42Bとの界面近傍においても、第1のバッファ層2との界面近傍のものと例えば同等の大きな圧縮応力が生じる。
同様に、上領域42Bbの存在により、構成層42Bの構成層42Cとの界面近傍においても、構成層42Aとの界面近傍のものと例えば同等の大きな圧縮応力が生じる。
同様に、上領域42Cbの存在により、構成層42Cの電子走行層4との界面近傍においても、構成層42Bとの界面近傍のものと例えば同等の大きな圧縮応力が生じる。
以上により、第2のバッファ層41では、全体的にみれば、膜厚方向において大きさに偏りのない圧縮応力を内在している。
本例でも、第2の実施形態と同様に、図12(a)の工程を終了した直後には、Si基板1等は1000℃以下の高温状態にある。第2のバッファ層41では、電子走行層4との界面近傍と第1のバッファ層2との界面近傍とで圧縮応力は同等の大きさである。そのためSi基板1等は、当該直後には、上記の熱膨張係数の差に起因して、上に凸に反った状態となる。そして、Si基板1等は、温度が下がって常温となると、上記の熱膨張係数の差による影響が緩和(ほぼ消失)して、ほぼ平坦な状態となる。
続いて、第1の実施形態の図1(b)〜図2(b)と同様の諸工程を経て、図12(b)に示す構造体を得る。
しかる後、ソース電極8、ドレイン電極9、及びゲート電極12と接続される配線の形成等の諸工程を経る。これにより、本実施形態のAlGaN/GaN・HEMTが形成される。
以上説明したように、本例によれば、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力のAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
(第3の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態及びその変形例、並びに第2の実施形態及びその変形例から選ばれた1種のAlGaN/GaN・HEMTを備えた電源装置を開示する。
図15は、第3の実施形態による電源装置の概略構成を示す結線図である。
本実施形態による電源装置は、高圧の一次側回路51及び低圧の二次側回路52と、一次側回路51と二次側回路52との間に配設されるトランス53とを備えて構成される。
一次側回路51は、交流電源54と、いわゆるブリッジ整流回路55と、複数(ここでは4つ)のスイッチング素子56a,56b,56c,56dとを備えて構成される。また、ブリッジ整流回路55は、スイッチング素子56eを有している。
二次側回路52は、複数(ここでは3つ)のスイッチング素子57a,57b,57cを備えて構成される。
本実施形態では、一次側回路51のスイッチング素子56a,56b,56c,56d,56eが、第1の実施形態及びその変形例、並びに第2の実施形態及びその変形例から選ばれた1種のAlGaN/GaN・HEMTとされている。一方、二次側回路52のスイッチング素子57a,57b,57cは、シリコンを用いた通常のMIS・FETとされている。
本実施形態では、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力のAlGaN/GaN・HEMTを高圧回路に適用する。これにより、信頼性の高い大電力の電源回路が実現する。
(第4の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態及びその変形例、並びに第2の実施形態及びその変形例から選ばれた1種のAlGaN/GaN・HEMTを備えた高周波増幅器を開示する。
図16は、第4の実施形態による高周波増幅器の概略構成を示す結線図である。
本実施形態による高周波増幅器は、例えば携帯電話の基地局用パワーアンプに適用されるものである。この高周波増幅器は、ディジタル・プレディストーション回路61と、ミキサー62a,62bと、パワーアンプ63とを備えて構成される。
ディジタル・プレディストーション回路61は、入力信号の非線形歪みを補償するものである。ミキサー62aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号をミキシングするものである。パワーアンプ63は、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅するものであり、第1の実施形態及びその変形例、並びに第2の実施形態及びその変形例から選ばれた1種のAlGaN/GaN・HEMTを有している。なお図16では、例えばスイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー62bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路61に送出できる構成とされている。
本実施形態では、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力のAlGaN/GaN・HEMTを高周波増幅器に適用する。これにより、信頼性の高い高耐圧の高周波増幅器が実現する。
(他の実施形態)
第1の実施形態及びその変形例、第2の実施形態及びその変形例、並びに第3及び第4の実施形態では、化合物半導体装置としてAlGaN/GaN・HEMTを例示した。化合物半導体装置としては、AlGaN/GaN・HEMT以外にも、以下のようなHEMTに適用できる。
(その他のHEMT例1)
本例では、化合物半導体装置として、InAlN/GaN・HEMTを開示する。
InAlNとGaNは、組成によって格子定数が近くすることが可能な化合物半導体である。この場合、上記の諸実施形態及び変形例では、第2のバッファ層上に形成される電子走行層がi−GaN、中間層がi−InAlN、電子供給層がn−InAlN、キャップ層がn+−GaNで形成される。また、この場合のピエゾ分極がほとんど発生しないため、2次元電子ガスは主にInAlNの自発分極により発生する。
本例によれば、本実施形態のAlGaN/GaN・HEMTと同様に、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力のInAlN/GaN・HEMTが実現する。
(その他のHEMT例2)
本例では、化合物半導体装置として、InAlGaN/GaN・HEMTを開示する。
GaNとInAlGaNは、後者の方が前者よりも格子定数が小さい化合物半導体である。この場合、上記の諸実施形態及び変形例では、第2のバッファ層上に形成される電子走行層がi−GaN、中間層がi−InAlGaN、電子供給層がn−GaN、キャップ層がn+−InAlGaNで形成される。
本例によれば、本実施形態のAlGaN/GaN・HEMTと同様に、比較的短い製造時間で容易且つ確実に反りのない基板を得ることが可能となり、低コストで信頼性の高い高耐圧及び高出力のInAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
以下、化合物半導体装置の製造方法及び化合物半導体装置の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と
を含み、
前記化合物半導体層は、第1の層及び前記第1の層上に形成された第2の層を有しており、
前記第1の層は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数以下であるとともに、膜厚方向において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい二部位を有することを特徴とする化合物半導体装置。
(付記2)前記第1の層は、前記第2の層との界面から下方にかけて、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい領域を有することを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
(付記3)前記第1の層は、前記第2の層との界面から下方にかけて、格子定数が均一な領域を有することを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
(付記4)前記化合物半導体層は、前記基板との間に第3の層を有しており、
前記第3の層は、前記第1の層の当該第3の層との界面における格子定数よりも格子定数が小さいことを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記5)前記第1の層は、Al含有の化合物半導体からなり、膜厚方向の任意の二部位において上部位のAl含有比率が下部位のAl含有比率以上であるとともに、厚方向において上部位のAl含有比率が下部位のAl含有比率よりも高い二部位を有することを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記6)基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と
を含み、
前記化合物半導体層は、第1の層及び前記第1の層上に形成された第2の層を有しており、
前記第1の層は、下領域及び前記下領域よりも格子定数の小さい上領域からなる構成層が複数積層されてなり、
複数の前記構成層のうち、任意の隣接する2層において、上部の前記構成層の前記下領域の格子定数が下部の前記構成層の前記下領域の格子定数よりも大きく、且つ、上部の前記構成層の前記上領域の格子定数が下部の前記構成層の前記上領域の格子定数よりも大きいことを特徴とする化合物半導体装置。
(付記7)前記構成層の前記下領域は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さいことを特徴とする付記6に記載の化合物半導体装置。
(付記8)前記構成層の前記下領域は、格子定数が均一であることを特徴とする付記6に記載の化合物半導体装置。
(付記9)前記化合物半導体層は、前記基板との間に第3の層を有しており、
前記第3の層は、前記第1の層の当該第3の層との界面における格子定数よりも格子定数が小さいことを特徴とする付記6〜8のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記10)前記第1の層は、Al含有の化合物半導体からなり、
複数の前記構成層のうち、任意の隣接する2層において、上部の前記構成層の前記下領域のAl含有比率が下部の前記構成層の前記下領域のAl含有比率よりも低く、且つ、上部の前記構成層の前記上領域のAl含有比率が下部の前記構成層の前記上領域のAl含有比率よりも低いことを特徴とする付記6〜9のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記11)基板の上方に、常温以上の所定の処理温度で化合物半導体からなる第1の層及び第2の層を順次形成する工程を含み、
前記第1の層は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数以下であるとともに、膜厚方向において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい二部位を有しており、
前記基板、前記第1の層及び前記第2の層は、前記第2の層を形成した際に、前記基板から前記第1の層及び前記第2の層に向かって上に凸に反った形状とされることを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
(付記12)前記第1の層は、前記第2の層との界面から下方にかけて、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい領域を有することを特徴とする付記11に記載の化合物半導体装置の製造方法。
(付記13)前記第1の層は、前記第2の層との界面から下方にかけて、格子定数が均一な領域を有することを特徴とする付記11に記載の化合物半導体装置の製造方法。
(付記14)前記第1の層を形成する前に、前記基板上に化合物半導体からなる第3の層を形成する工程を更に含み、
前記第3の層は、前記第1の層の当該第3の層との界面における格子定数よりも格子定数が小さいことを特徴とする付記11〜13のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
(付記15)基板の上方に、常温以上の所定の処理温度で化合物半導体からなる第1の層及び第2の層を順次形成する工程を含み、
前記第1の層は、下領域及び前記下領域よりも格子定数の小さい上領域からなる構成層が複数積層されてなり、
複数の前記構成層のうち、任意の隣接する2層において、上部の前記構成層の前記下領域の格子定数が下部の前記構成層の前記下領域の格子定数よりも大きく、且つ、上部の前記構成層の前記上領域の格子定数が下部の前記構成層の前記上領域の格子定数よりも大きく、
前記基板、前記第1の層及び前記第2の層は、前記第2の層を形成した際に、前記基板から前記第1の層及び前記第2の層に向かって上に凸に反った形状とされることを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
(付記16)前記構成層の前記下領域は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さいことを特徴とする付記15に記載の化合物半導体装置の製造方法。
(付記17)前記構成層の前記下領域は、格子定数が均一であることを特徴とする付記15に記載の化合物半導体装置の製造方法。
(付記18)前記第1の層を形成する前に、前記基板上に化合物半導体からなる第3の層を形成する工程を更に含み、
前記第3の層は、前記第1の層の当該第3の層との界面における格子定数よりも格子定数が小さいことを特徴とする付記15〜17のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
(付記19)変圧器と、前記変圧器を挟んで高圧回路及び低圧回路とを備え、
前記高圧回路はトランジスタを有しており、
前記トランジスタは、
基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と
を含み、
前記化合物半導体層は、第1の層及び前記第1の層上に形成された第2の層を有しており、
前記第1の層は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数以下であるとともに、膜厚方向において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい二部位を有することを特徴とする電源回路。
(付記20)入力した高周波電圧を増幅して出力する高周波増幅器であって、
トランジスタを有しており、
前記トランジスタは、
基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と
を含み、
前記化合物半導体層は、第1の層及び前記第1の層上に形成された第2の層を有しており、
前記第1の層は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数以下であるとともに、膜厚方向において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい二部位を有することを特徴とする高周波増幅器。
1 Si基板
2 第1のバッファ層
3,10,21,31,41 第2のバッファ層
3a 均一組成領域
3b 傾斜組成領域
4 電子走行層
5 中間層
6 電子供給層
7 キャップ層
8 ソース電極
9 ドレイン電極
11 パッシベーション膜
11a 開口
12 ゲート電極
21a 低Al組成領域
21b 高Al組成領域
32A,32B,32C,42A,42B,42C 構成層
32Aa,32Ba,32Ca,42Aa,42Ba,42Ca 下領域
32Ab,32Bb,32Cb,42Ab,42Bb,42Cb 上領域
51 一次側回路
52 二次側回路
53 トランス
54 交流電源
55 ブリッジ整流回路
56a,56b,56c,56d,56e,57a,57b,57c スイッチング素子
61 ディジタル・プレディストーション回路
62a,62b ミキサー
63 パワーアンプ

Claims (8)

  1. 基板と、
    前記基板の上方に形成された化合物半導体層と
    を含み、
    前記化合物半導体層は、第1の層及び前記第1の層上に形成された第2の層を有しており、
    前記第1の層は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数以下であるとともに、膜厚方向において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい二部位を有しており、
    前記第1の層は、Al組成比率が均一な第1の領域と、膜厚方向のAl組成比率が前記第1の領域との界面から前記第2の層との界面にかけて漸増する第2の領域とが積層されてなることを特徴とする化合物半導体装置。
  2. 前記化合物半導体層は、前記基板との間に第3の層を有しており、
    前記第3の層は、前記第1の層の当該第3の層との界面における格子定数よりも格子定数が小さいことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
  3. 前記第1の層は、Al含有の化合物半導体からなり、膜厚方向の任意の二部位において上部位のAl含有比率が下部位のAl含有比率以上であるとともに、厚方向において上部位のAl含有比率が下部位のAl含有比率よりも高い二部位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
  4. 基板と、
    前記基板の上方に形成された化合物半導体層と
    を含み、
    前記化合物半導体層は、第1の層及び前記第1の層上に形成された第2の層を有しており、
    前記第1の層は、下領域及び前記下領域よりも格子定数の小さい上領域からなる構成層が複数積層されてなり、
    複数の前記構成層のうち、任意の隣接する2層において、上部の前記構成層の前記下領域の格子定数が下部の前記構成層の前記下領域の格子定数よりも大きく、且つ、上部の前記構成層の前記上領域の格子定数が下部の前記構成層の前記上領域の格子定数よりも大きく、
    前記各構成層の前記上領域は、下面から上面にかけてAl組成比率が漸増していることを特徴とする化合物半導体装置。
  5. 前記化合物半導体層は、前記基板との間に第3の層を有しており、
    前記第3の層は、前記第1の層の当該第3の層との界面における格子定数よりも格子定数が小さいことを特徴とする請求項4に記載の化合物半導体装置。
  6. 前記第1の層は、Al含有の化合物半導体からなり、
    複数の前記構成層のうち、任意の隣接する2層において、上部の前記構成層の前記下領域のAl含有比率が下部の前記構成層の前記下領域のAl含有比率よりも低く、且つ、上部の前記構成層の前記上領域のAl含有比率が下部の前記構成層の前記上領域のAl含有比率よりも低いことを特徴とする請求項4又は5に記載の化合物半導体装置。
  7. 基板の上方に、常温以上の所定の処理温度で化合物半導体からなる第1の層及び第2の層を順次形成する工程を含み、
    前記第1の層は、膜厚方向の任意の二部位において上部位の格子定数が下部位の格子定数以下であるとともに、膜厚方向において上部位の格子定数が下部位の格子定数よりも小さい二部位を有しており、
    前記基板は、前記第1の層及び前記第2の層よりも熱膨張係数が小さく、
    前記基板、前記第1の層及び前記第2の層は、前記第2の層を形成した際に、前記基板から前記第1の層及び前記第2の層に向かって上に凸に反った形状とされることを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
  8. 基板の上方に、常温以上の所定の処理温度で化合物半導体からなる第1の層及び第2の層を順次形成する工程を含み、
    前記第1の層は、下領域及び前記下領域よりも格子定数の小さい上領域からなる構成層が複数積層されてなり、
    前記基板は、前記第1の層及び前記第2の層よりも熱膨張係数が小さく、
    複数の前記構成層のうち、任意の隣接する2層において、上部の前記構成層の前記下領域の格子定数が下部の前記構成層の前記下領域の格子定数よりも大きく、且つ、上部の前記構成層の前記上領域の格子定数が下部の前記構成層の前記上領域の格子定数よりも大きく、
    前記基板、前記第1の層及び前記第2の層は、前記第2の層を形成した際に、前記基板から前記第1の層及び前記第2の層に向かって上に凸に反った形状とされることを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
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