JP5670688B2 - 環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法及び環状オレフィン系樹脂ペレット - Google Patents

環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法及び環状オレフィン系樹脂ペレット Download PDF

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Description

本発明は、環状オレフィン系樹脂ペレット及び環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法に関する。
環状オレフィン系樹脂は、主鎖に環状オレフィンの骨格を有する樹脂であり、高透明性、低複屈折性、高熱変形温度、軽量性、寸法安定性、低吸水性、耐加水分解性、耐薬品性、低誘電率、低誘電損失、環境負荷物質を含まない等、多くの特徴をもつ樹脂である。このため、環状オレフィン系樹脂は、これらの特徴が必要とされる多種多様な分野に用いられている。
とりわけ、高耐熱性、高透明性、及び、低複屈折性を発揮できる点から、環状オレフィン系樹脂は、レンズ、導光板、回折格子等の光学デバイス、建築ならびに照明分野等の産業材における透明な成形加工品の材料として用いられている。
ところで、環状オレフィン系樹脂は、上記のような有用な面以外に、溶融成形するとゲル状物が発生し成形表面が荒れ外観特性が低下するという面も持つ。この外観特性の低下は、特に透明な成形加工品としての材料に、環状オレフィン系樹脂を利用する場合に大きな影響を与える。
例えば、上記ゲル状物は、成形時の環状オレフィン系樹脂を加熱可塑化する工程において、溶融前の環状オレフィン系樹脂に強力な圧力とせん断力が加わり、環状オレフィン系樹脂が架橋構造を形成することにより発生する。
上記のようなゲル状物の発生を抑える方法として、脂肪酸アミド系滑剤、金属石鹸系滑剤等の滑剤を添加する方法が知られている(特許文献1)。上記のような滑材の使用方法としては、溶融状態の環状オレフィン系樹脂と滑剤とを混練し、環状オレフィン系樹脂の内部に滑剤を添加する方法(内部添加)と、環状オレフィン系樹脂のペレット等の表面に滑剤を付着させる方法(外部添加)とが知られている。
滑剤を外部添加する方法の場合、押し出し機の根元で滑剤が滞留し、滑剤が劣化することによって成形不良が発生する場合がある。また、滑剤を外部添加する方法の場合には、滑剤の粉の飛散に伴う製造環境のクリーン度の低下を抑えることが困難な場合がある。
上記の通り、滑剤を外添する方法を採用する場合には、いくつかの問題を生じる場合がある。このため、滑剤の添加方法は、内部添加する方法である方が好ましい場合もある(特許文献2)。
特開2006−321902号公報 特開2009−258571号公報
上記の通り、滑剤を内部添加する方法は有用であり、この滑剤の添加方法で、ゲル状物の発生を抑える技術の開発が進んでいるが、ゲル状物の発生を充分に抑えることができないのが現状である。このため、従来よりもゲル状物の発生を抑えることができる技術の開発が求められている。
本発明は以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、滑材の内部添加によりゲル状物の発生を抑える方法であって、従来よりもゲル状物の発生を抑えることができる技術を提供することにある。
本発明者らは、以上の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた。その結果、直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物と、環状オレフィン系樹脂と、を溶融混練して得られるペレットを用いて成形体の製造を行なえば、従来よりもゲル状物の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物と、環状オレフィン系樹脂と、を溶融混練する環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
(2) 前記炭素数は14以上30以下である(1)に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
(3) 前記有機化合物の割合は、前記有機化合物及び前記環状オレフィン系樹脂の合計100質量%中に、0.1質量%以上3%以下である(1)又は(2)に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
(4) 前記有機化合物は、脂肪酸である(1)から(3)のいずれかに記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
(5) 環状オレフィン系モノマーを含むモノマー組成物を溶液重合させてなる環状オレフィン系樹脂を含む重合溶液に、直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物を添加する有機化合物添加工程と、有機化合物添加工程後の重合溶液から重合溶媒を除去する溶媒除去工程と、前記溶媒除去工程後に得られる樹脂組成物を含有する原料を用いて、樹脂ペレットを製造するペレット製造工程と、を備える環状オレフィン系樹脂ペレットの製造法。
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の方法で製造された環状オレフィン系樹脂ペレットを成形してなる成形体。
(7) 直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物と、環状オレフィン系樹脂と、を含む環状オレフィン系樹脂ペレット。
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂に対して滑剤を内部添加する方法において、滑剤として、直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物を採用することで、従来よりもゲル状物の発生を抑えることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明は、環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法であり、直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物と、環状オレフィン系樹脂と、を溶融混練する。先ず、環状オレフィン系樹脂、有機化合物について、それぞれ説明する。
<環状オレフィン系樹脂>
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン成分を共重合成分として含むものであり、環状オレフィン成分を主鎖に含むポリオレフィン系樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物等を挙げることができる。
また、環状オレフィン系樹脂としては、上記重合体に、さらに親水基を有する不飽和化合物をグラフト及び/又は共重合したもの、を含む。
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィノ基等をあげることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができ、好ましくは、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィノ基が挙げられる。
環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物が好ましい。
また、環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂としては、市販の樹脂を用いることも可能である。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS(登録商標)(Topas Advanced Polymers社製)、アペル(登録商標)(三井化学社製)、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)等を挙げることができる。
環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体として、特に好ましい例としては、〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と、〔2〕下記一般式(I)で示される環状オレフィン成分と、を含む共重合体を挙げることができる。
Figure 0005670688
(式中、R〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R〜Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分について説明する。炭素数2〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。また、これらのα−オレフィン成分は、1種単独でも2種以上を同時に使用してもよい。これらの中では、エチレンの単独使用が最も好ましい。
〔2〕一般式(I)で示される環状オレフィン成分について説明する。一般式(I)におけるR〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
〜Rの具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
また、R〜R12の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、その他アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
一般式(I)で示される環状オレフィン成分の具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
これらの環状オレフィン成分は、1種単独でも、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独使用することが好ましい。
〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と〔2〕一般式(I)で表される環状オレフィン成分との重合方法及び得られた重合体の水素添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って行うことができる。ランダム共重合であっても、ブロック共重合であってもよいが、ランダム共重合であることが好ましい。
また、用いられる重合触媒についても特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ系、メタセシス系、メタロセン系触媒等の従来周知の触媒を用いて周知の方法により環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
次いで、その他共重合成分について簡単に説明する。環状オレフィン系樹脂(A)は、上記の〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と、〔2〕一般式(I)で示される環状オレフィン成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を含有していてもよい。
任意に共重合されていてもよい不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体等を挙げることができる。炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体の具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
<有機化合物>
本発明に用いる有機化合物は、片末端に親水基を有し、炭素数が14以上の直鎖状である。このような有機化合物が、環状オレフィン系樹脂ペレット中に存在すると、成形時に、環状オレフィン系樹脂よりも先に溶け始めるため、環状オレフィン系樹脂にかかる圧力とせん断力を抑えることができる。その結果、成形体内にゲル状物が生じることを抑えることができる。つまり、有機化合物は滑剤として働く。
特に、上記のような直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物を用いることで、成形時に環状オレフィン系樹脂にかかる圧力とせん断力を大幅に抑えることができる。その結果、従来の方法と比較して、ゲル状物の発生をより抑えることができる。
本発明の有機化合物は、環状オレフィン系樹脂の内部に存在していても、成形時に外部に現れやすいため、ゲル状物発生を抑える効果が高いと考えられる。
成形時にペレット内部の有機化合物が、成形開始後にペレットの表面に現れやすくなる結果、有機化合物は、環状オレフィン系樹脂ペレット同士の擦れ合いを和らげることができ、ゲル状物の発生を効果的に抑えることができると考えられる。また、有機化合物は、環状オレフィン系樹脂ペレットとシリンダー内壁面との擦れ合いを和らげることができ、ゲル状物の発生を効果的に抑えることができると考えられる。
また、直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の化合物を用いることで、白化等の問題を生じず、ゲル状物の発生以外の原因で、環状オレフィン系樹脂ペレットから得られる成形体の透明性が阻害されることもほとんどない。以下、有機化合物について、さらに具体的に説明する。
有機化合物は、片末端に親水基を有する。親水基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキシアルキレン基、エステル基、アミノ基、アミド基、スルホ基、エポキシ基、酸無水物基、ホスホノ基、ホスフィノ基等を挙げることができる。有機化合物は、片末端に2以上の親水基を有していてもよく、また、2以上の親水基を片末端に有する場合には、異なる種類の親水基を有してもよく、同じ種類の親水基を有してもよい。また、片末端に親水基を有するものであれば、直鎖状炭化水素内の他の炭素に親水基を有してもよい(両末端に親水基を有する場合を除く)。直鎖状炭化水素内の上記片末端以外の炭素に親水基を有する場合、末端の炭素に隣接していることが好ましい。上記片末端の炭素から離れた位置に親水基を有すると、親水基により樹脂との親和性が減少することにより当該有機化合物による本発明の効果が損なわれる可能性があると推定されるためである。なお、これらの親水基の中では、カルボキシル基が特に好ましい。
有機化合物は、直鎖状で炭素数が14以上である。つまり、本発明の製造方法で使用される有機化合物は、例えば、以下の一般式(II)で表すことができる。特に本発明においては、(III)で表される有機化合物を使用することが好ましい。
Figure 0005670688
(一般式(II)中のRは親水基を表し、R’は水素原子又はメチル基を表す。nは、親水基Rが炭素を有し、その炭素が直鎖状炭化水素の主鎖の炭素と結合する場合(例えば、カルボキシル基等)には12以上の自然数、それ以外の場合には13以上の自然数である。)
Figure 0005670688
(一般式(III)中のRは親水基を表し、R’は水素原子又は親水基を表す。nは、親水基Rが炭素を有し、その炭素が直鎖状炭化水素の主鎖の炭素と結合する場合(例えば、カルボキシル基等)には11以上の自然数、それ以外の場合には12以上の自然数である。)
本発明で用いる有機化合物において、炭素数は14以上である。炭素数が13以下になると、環状オレフィン系樹脂ペレットを成形してなる成形体が白化してしまい、成形体の透明性が損なわれる。炭素数の上限については、特に限定されないが、30以下であれば、ゲル状物の発生を充分に抑え、成形体の透明性を阻害することもほとんどない。
片末端にカルボキシル基を有し、直鎖状で炭素数14以上30以下の有機化合物としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等を挙げることができる。特に、本発明においては、上記のような脂肪酸の使用が好ましい。
上述のゲル状物の発生抑制の効果を得るために、環状オレフィン系樹脂ペレット中に含有させる有機化合物の量は特に限定されないが、0.1重量%以上3重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1重量%以上1%以下である。有機化合物の含有量が0.1重量%以上であれば、ゲル状物の発生を抑える効果が現れやすくなるため好ましい。3重量%以下であれば、成形体の変色やブリードアウトの問題が生じにくいため好ましい。
<環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法>
原料として、上記の材料を用いるものであれば、環状オレフィン系樹脂ペレットの具体的な製造手順は、特に限定されない。例えば、以下に示すような方法でペレットを製造することができる。
先ず、上記環状オレフィン系樹脂と上記有機化合物とを押出機に投入し、溶融混練する。次いで、溶融混練後の混合物が、ストランド状になるように、押出機先端の開口部(例えば、ダイの小孔)から吐出する。次いで、このストランド状物を冷却する。最後に冷却したストランド状物を、ペレタイズ法等により切断し、ペレットを得る。
また、上記有機化合物は溶融混練時だけでなく溶液中に添加しても良い。例えば、重合溶液に投入し、分散・溶解させて環状オレフィン系樹脂に添加させることも可能である。具体的には、環状オレフィン系モノマーを含むモノマー組成物を溶液重合させてなる環状オレフィン系樹脂を含む重合溶液に、直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物を添加する有機化合物添加工程と、有機化合物添加工程後の重合溶液から重合溶媒を除去する溶媒除去工程と、溶媒除去工程後に得られる樹脂組成物を含有する原料を用いて、樹脂ペレットを製造するペレット製造工程と、を備える環状オレフィン系樹脂ペレットの製造法が一例として挙げられる。以下、有機化合物添加工程、溶媒除去工程、ペレット製造工程について、簡単に説明する。
先ず、有機化合物添加工程について説明する。有機化合物添加工程における、モノマー組成物は環状オレフィン系モノマーを含む。環状オレフィン系モノマーとは上述の環状オレフィン成分に由来するモノマーを指す。また、モノマー組成物には本発明の効果を害さない範囲で、環状オレフィン系モノマー以外のモノマーを含有してもよい。
溶液重合の条件は特に限定されず、モノマー組成物に含まれるモノマーの種類等に応じて適宜好ましい条件を設定することができる。
溶液重合後に得られる重合溶液に添加される有機化合物は、上述の直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物と同様である。また、有機化合物の添加方法は特に限定されず従来公知の手法を採用することができる。
溶媒除去工程における、重合溶媒の除去方法は特に限定されないが、例えば、加熱することで、重合溶液から重合溶媒を除去する方法がある。
ペレット製造工程におけるペレットの具体的な製造方法は特に限定されず、上述の溶融混練による環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法で説明した方法と同様の方法で製造することができる。
最後に上記製法の奏する効果について簡単に説明する。特に、上記溶液中での有機化合物添加工程、溶媒除去工程、ペレット製造工程を有する方法で製造すれば、熱履歴やせん断履歴が少なく成形品中のゲル状物がさらに少ないという効果があるため好ましい。
<環状オレフィン系樹脂ペレット>
本発明の方法で得られる環状オレフィン系樹脂ペレットを原料として用い、成形体を製造すると、成形体にゲル状物がほとんど存在しない。上述の通り、内部に添加された有機化合物が、成形時に滑剤として働くからである。
環状オレフィン系樹脂ペレットの形状は特に限定されないが、具体的な形状としては、球形、半球形、円柱形、角柱形、円筒形、碁石形等を例示できる。また、環状オレフィン系樹脂ペレットの大きさも特に限定されないが、成形体の原料として用いる観点からは、最も長い部分の長さおよそ1mm以上10mm以下であることが好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<材料>
環状オレフィン系樹脂1:エチレンとノルボルネンとの共重合体(「TOPAS 8007F04」、Topas Advanced Polymers社製、ガラス転移点78℃) 実施例1、2、4〜9、比較例1〜5で用いた。
環状オレフィン系樹脂2:エチレンとノルボルネンとの共重合体(「TOPAS 5013S04」、「Topas Advanced Polymers社製」、ガラス転移点134℃) 実施例3で用いた。
有機化合物1:ミリスチン酸(炭素数14)東京化成工業株式会社
有機化合物2:パルミチン酸(炭素数16)東京化成工業株式会社
有機化合物3:ステアリン酸(炭素数18)日油株式会社
有機化合物4:ベヘン酸(炭素数22)東京化成工業株式会社
有機化合物5:モンタン酸(炭素数28)東京化成工業株式会社
有機化合物6:エポキシヘキサデカン(炭素数16)
有機化合物7:1,2−ヘキサデカンジオール(炭素数16)
有機化合物8:デカン酸(炭素数10)東京化成工業株式会社
有機化合物9:ラウリン酸(炭素数12)東京化成工業株式会社
従来公知の滑剤1:ペンタエリスリトールテトラステアレート 日油株式会社
比較例の炭化水素1:スクアラン(炭素数30)東京化成工業株式会社
比較例の炭化水素2:テトラコサン(炭素数24)東京化成工業株式会社
<環状オレフィン系樹脂ペレットの製造>
環状オレフィン系樹脂1と、表1に示す有機化合物又は従来公知の滑剤と、からなる環状オレフィン系樹脂ペレットを製造した。具体的には、表1に示す有機化合物又は滑剤を表1に示す割合で、環状オレフィン系樹脂とともに押出機(日本製鋼所 TEX−30 30mmφ 押出温度:8007F04 220℃ 5013S04 260℃ 押出量:15kg/h)に投入し、押出機内で環状オレフィン系樹脂と有機化合物又は滑剤とを溶融混練し、断面が直径3mmのストランド状物を成形した。このストランド状物をウォーターバス中の20〜30℃の冷却水におよそ5秒間浸した。冷却したストランド状物を、ペレタイザーを用いて、長さ3mm程度にカットし、その後、8007F04は60℃、24時間、5013S04は100℃、6時間の条件で脱気させ、実施例及び比較例のペレットを採取した。
<ゲル状物の評価>
実施例及び比較例の環状オレフィン系樹脂ペレットを、射出成形機(「SE75D」、住友重機械工業社製)に投入し、以下の成形条件で、70mm×70mm×2mmの射出成形体を得た。
シリンダー温度:
環状オレフィン系樹脂1(8007F04)を用いた実施例及び比較例の場合、(ノズル側)220−220−220−220−200(フィード側)(℃)、
環状オレフィン系樹脂2(5013S04)を用いた実施例の場合、(ノズル側)270−270−270−250−230(フィード側)(℃)
回転数:50rpm
金型温度:
環状オレフィン系樹脂1(8007F04)を用いた実施例及び比較例の場合、40℃
環状オレフィン系樹脂2(5013S04)を用いた実施例の場合、70℃
各射出成形体から試料として0.2gの成形片を採取した。この成形片を50mlのシクロヘキサンに入れ、室温で24時間以上放置し溶解した後、メンブレンフィルター(フィルターポアサイズ5μm)でろ過し、ろ過前後の質量からゲル量を下記式(A)から算出した。ゲル量は表1に示した。
Figure 0005670688
Figure 0005670688
上記の実施例の結果及び比較例の結果から明らかなように、片末端に親水基を有し炭素数が14以上の直鎖状の有機化合物である滑剤を、環状オレフィン系樹脂ペレットに内部添加することで、従来の滑剤の内部添加する方法と比較して、ゲル状物発生抑制の効果が高いことが確認された。

Claims (4)

  1. 環状オレフィン系モノマーを含むモノマー組成物を溶液重合させてなる環状オレフィン系樹脂を含む重合溶液に、直鎖状炭化水素の片末端に親水基を有する炭素数が14以上の有機化合物を添加する有機化合物添加工程と、
    有機化合物添加工程後の重合溶液から重合溶媒を除去する溶媒除去工程と、
    前記溶媒除去工程後に得られる樹脂組成物を含有する原料を用いて、樹脂ペレットを製造するペレット製造工程と、を備え
    前記有機化合物の割合は、前記有機化合物及び前記環状オレフィン系樹脂の合計100重量%中に、0.1重量%以上3重量%以下である、
    環状オレフィン系樹脂ペレットの製造法。
  2. 前記炭素数は14以上30以下である請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
  3. 前記有機化合物は脂肪酸である請求項1又は2に記載の環状オレフィン系樹脂ペレットの製造方法。
  4. 請求項1からのいずれかに記載の方法で製造された環状オレフィン系樹脂ペレットを成形してなる成形体。
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