JP5668914B2 - 洗浄方法および洗浄システム - Google Patents
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このような従来のSPM法として、以下の方法が知られている。
96質量%硫酸溶液と30質量%過酸化水素水とを容積比2:1で常温のまま混合し、洗浄部に供給し、ウエハ100を洗浄する(図6(a)参照)。混合後の溶液の温度は140℃まで上がる。
(2)その2
前記その1と同様に前記硫酸溶液と前記過酸化水素水とを容積比2:1で混合するが、96質量%硫酸を加熱器101で80℃まで予熱してから混合する(図6(b)参照)。これにより混合液は185℃に到達するが、混合後の硫酸濃度が75質量%になるので沸点を超えてしまう(75質量%硫酸溶液の沸点は183℃である)。従って、混合液が、洗浄部に備える洗浄ノズルを出た瞬間に沸騰蒸発して、液が周囲に飛び散り、適切にウエハ100上に散布することができない。
(3)その3
前記硫酸溶液と前記過酸化水素水との容積混合比を5:1にすれば混合後の硫酸濃度は86質量%になる。該濃度の硫酸溶液の沸点は200℃を超えるので、硫酸溶液が200℃に昇温しても混合液が沸騰する心配はない。前記硫酸溶液を図6(c)に示すように、加熱器101で120℃、前記過酸化水素水を加熱器102で60℃に予熱した後、混合することで混合液は200℃にまで到達する。
しかし、過酸化水素水の投入量が少ないので、下記式(1)で示す反応で生成されるカロ酸(H2SO5、ペルオキソ一硫酸)の濃度が低くなり、十分なレジスト剥離効果を得ることができないとされている。
H2SO4+H2O2→H2SO5+H2O (1)
(4)その4
硫酸溶液と過酸化水素水の混合時に、混合液を冷却して溶解熱による温度上昇が発生しないように調整し、低温のまま洗浄を図る技術が公開されている。(特許文献1参照)
また、その3で示す方法においては、上記のように、カロ酸濃度が低く、十分な洗浄効果が得られていない。従来、その原因は過酸化水素水の投入量が少ないためと考えられていたが、本願発明者らの研究によって、カロ酸の濃度が低いのは、過酸化水素水の混合割合が低いためではなく、予熱された硫酸および過酸化水素水が接触した瞬間に、過酸化水素水が高温になり、下記式(2)に示すように過酸化水素が酸素を放出してしまい、前記(1)式の反応が起こらない、あるいは起こる割合が減ってしまうためであることが判明した。
H2O2→H2O+1/2O2 (2)
前記洗浄後の混合液の一部または全部を回収し、回収した前記溶液に前記加熱後の混合液の一部を加えて貯液した後、前記混合液として循環使用することを特徴とする。
第2の本発明の洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記混合液が前記加熱前に60〜100℃の温度を有することを特徴とする。
第3の本発明の洗浄方法は、前記第1または第2の本発明において、前記混合液は、前記加熱後に150〜220℃の温度を有することを特徴とする。
第4の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記混合液の加熱を10秒以内で行い、該混合液を、加熱後20秒以内に前記洗浄に使用することを特徴とする。
第5の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記混合液は、硫酸濃度が70〜92質量%であることを特徴とする。
第6の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、回収した前記溶液に、前記硫酸溶液と過酸化水素水の一方または両方を添加し前記混合液として循環使用することを特徴とする。
第7の本発明の洗浄方法は、前記第6の本発明において、前記洗浄における洗浄結果に従って、前記洗浄後の混合液の循環使用比率を調整することを特徴とする。
第8の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記貯液における前記溶液の温度を120〜150℃とし、前記混合液として循環使用することを特徴とする。
第9の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第8の本発明のいずれかにおいて、回収した前記溶液を冷却することを特徴とする。
第10の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第9の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄後の混合液の水分を一部除去して前記循環使用することを特徴とする。
さらに、前記循環ラインに、前記洗浄部で洗浄に用いた混合液を回収して貯液する回収貯液部が介在し、
前記加熱器と前記洗浄部との間で前記循環ラインから分岐して、前記回収貯液部に加熱された前記混合液の一部を供するバイパスラインを備えることを特徴とする。
第12の本発明の洗浄システムは、前記第11の本発明において、前記加熱器は、入液部から出液部に至る通液時間が10秒以内とされ、入液された60〜100℃の混合液を150〜220℃に加熱して出液するものであることを特徴とする。
第13の本発明の洗浄システムは、前記第11または第12の本発明において、前記混合貯液部は、前記混合液を60〜100℃に保持するものであることを特徴とする。
第14の本発明の洗浄システムは、前記第11〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記回収貯液部は、前記硫酸溶液と過酸化水素水の一方または両方を添加するものであることを特徴とする。
第15の本発明の洗浄システムは、前記第11〜第14の本発明のいずれかにおいて、前記回収貯液部は、回収した溶液を120〜150℃に保持するものであることを特徴とする。
第16の本発明の洗浄システムは、前記第11〜第15の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄部の下流側であって、前記混合貯液部または該混合貯液部に至るまでに前記混合液を冷却する冷却器を備えることを特徴とする。
なお、硫酸溶液と過酸化水素水とは混合した際に、溶解熱によって昇温するので、硫酸溶液と過酸化水素水とは低温にして混合するのが望ましい。昇温の程度は濃度や混合比率によっても異なるが、例えば硫酸溶液と過酸化水素水とを混合前に40℃以下としておくのが望ましい。
その理由は、式(3)(4)に示すような平衡反応により、高温になると徐々にカロ酸の分解が進む方に平衡が移動して酸素を放出してしまい、酸化剤としての機能を失うからである。また、カロ酸は高濃度硫酸溶液中では下記式(5)に示すような平衡反応により、その一部はペルオキソ二硫酸(H2S2O8)になると考えられる。ペルオキソ二硫酸はカロ酸より更に強力な酸化剤と言われているが、高温では急速に分解してカロ酸に戻る方に平衡が移動することが知られている。さらには、高温によりカロ酸やペルオキソ二硫酸から非常に酸化力の強い硫酸ラジカルの生成が顕著になるが、硫酸ラジカルは化学的に不安定なため短時間で分解して硫酸に戻ってしまうと考えられる。
H2O2→H2O+1/2O2 (4)
H2SO5+H2SO4→H2S2O8+H2O (5)
この場合、混合液の加熱後の温度は150〜220℃が望ましい。混合液の温度が150℃未満であると、カロ酸の自己分解による酸化力が十分に得られず、洗浄効果が十分ではない。一方、220℃を超えるとカロ酸の自己分解が短時間で進んでしまい、洗浄時に十分な洗浄効果が得られなくなる。したがって、混合液の加熱後の温度は上記範囲が望ましい。なお、同様の理由で下限を160℃、上限を200℃とするのが一層望ましい。なお混合液を液状に保持する必要があるので、混合液温度の上限値は混合液中の硫酸の濃度に対応する沸点以下とする。
なお混合液は、加熱を10秒以内で行い、加熱後、20秒以内に前記洗浄に使用するのが望ましい。さらには、前記加熱を5秒以内、加熱後の時間を10秒以内とするのが一層望ましい。上記加熱を短時間で行うために、一過式の加熱器などを用いることができ、該加熱器の加熱源として近赤外線を用いることができる。
また、本発明は、シリコンウエハなどの基板上に付着した汚染物を高濃度硫酸溶液で洗浄剥離するプロセスに利用することができ、アッシングプロセスなどの前処理工程を省略してレジスト剥離することができる。
溶液の回収、循環使用の方法では、使い捨て式に比べて酸化剤濃度は低くなるが、その後、高温に加熱されるのでレジストのイオンドーズレベルなどにもよるが十分な剥離効果が得られる。
洗浄した混合溶液は全量を回収して循環使用してもよく、また、一部を破棄して残部を回収して循環使用するようにしてもよい。洗浄の際にウエハに付着して少量ずつ液量が減少するので、これを補うために循環使用に際し、硫酸溶液および過酸化水素を添加する。このとき所望の濃度になるように添加量を調整する。
また、洗浄に用いた溶液を回収して循環使用する際に、該溶液を冷却してカロ酸などの早期の分解を抑制するのが望ましい。該冷却は、冷却器などを用いて行うことができる。
また、貯液されている回収溶液には、加熱直後で洗浄使用前の混合溶液の一部を添加して有機物等の分解の促進を図るようにしてもよい。また、この添加によって回収溶液の温度を調整する機能も得られる。すなわち、回収溶液を貯液している際に、溶液が自然冷却によって温度が必要以上に低下するのを回避でき、回収溶液を加熱する手段を設けることなく回収溶液の温度調整を行うことができる。
回収溶液を貯液した後、該溶液は、硫酸溶液と過硫酸溶液とを混合して貯液している混合液に加えるのが望ましい。これにより加熱前の溶液が均一になり、洗浄に際し、バラツキのない洗浄能力が得られる。
なお、水分除去の方法は、本発明としては特に限定されるものではなく、例えば空気のストリッピングによって水分を蒸発させる放散塔や、水分を蒸発させる加熱蒸発器などを用いることができ、その他の既知のものを用いることができる。
また、洗浄後の溶液を回収して循環使用することで、運転コストを低減できるとともに、洗浄効果を良好に維持することができる。
以下に、本発明の一実施形態の洗浄システム1を図1に基づいて説明する。
本発明の混合貯液部に相当する混合貯液槽2に送液ライン3の一端が接続されており、該送液ライン3は、送液ポンプ4、加熱器5が介設されて、他端が枚葉式の洗浄部6に接続されており、上記各部によって本発明の洗浄システムが構成されている。なお、加熱器5は、石英製の管路を有し、近赤外線ヒータによって溶液を通液しつつ一過式で加熱するものである。
例えば、25℃の硫酸溶液と25℃の過酸化水素水とをそれぞれ用意し、前記混合貯液槽2に添加、混合する。該混合によって、硫酸と過酸化水素とは均一に混合され、前記式(1)(5)に示す反応が生じ、混合液である溶液50は反応に伴う発熱によって昇温する。
例えば、常温25℃の96質量%硫酸と30質量%過酸化水素水とを容積比5:1の割合で混合すると、硫酸濃度86質量%、温度が約100℃の混合液になる。
上記実施形態1の洗浄システムは、洗浄後の溶液50を廃棄しているが、本発明の他の形態では、洗浄後の溶液を回収して循環使用することができる。該循環使用を可能とした洗浄システムについて、図2に基づいて説明する。なお、前記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明する。
洗浄部6では、洗浄に用いた溶液を回収する回収ライン11の一端が接続されており、該回収ライン11の他端に回収貯液槽12が接続されている。該回収貯液槽12は、本発明の回収貯液部に相当する。回収貯液槽12には、さらに環流ライン13の一端が接続されており、環流ライン13の他端は前記混合貯液槽2に接続されている。環流ライン13には、上流側から環流ポンプ14、冷却器15が順次介設されている。また、回収貯液槽12には、回収した溶液の一部を廃棄する廃棄ライン16が接続されている。
上記した送液ライン3、回収ライン11、環流ライン13は、本発明の循環ラインを構成する。
25℃の硫酸溶液と25℃の過酸化水素水とを前記混合貯液槽2に添加、混合する。該混合によって得られる溶液50は前記反応式(1)(5)で示される反応に伴う発熱によって昇温する。常温25℃の96質量%硫酸と30質量%過酸化水素水とを容積比5:1の割合で混合して硫酸濃度86質量%、温度が約100℃の溶液50が得られる。
高温となった溶液50は、送液ライン3によって洗浄部6に送液され、10秒以内に洗浄部6内のノズル6aからウエハ100にスプレーされるか少量ずつウエハ100に流れ落ちてウエハ100のレジスト等を剥離除去する。
上記溶液50を繰り返し循環しつつ使用することで、洗浄効果を損なうことなく薬液の使用量を低減し、運転コストを低下させることができる。
例えば、回収した液量の半量を循環使用して、これに新たな硫酸と過酸化水素水を同じ比率で加えて溶液を調製し、急速加熱して洗浄に供すれば、薬剤消費量は半分に低減できる。従来のSPM法では薬品費が年間運転コストの約80%を占めているので、これを半減することにより年間運転費を60%に下げることができる。レジストの剥離性能との見合いで循環比率を調整して運転費を適宜低減することができる。
上記実施形態2では、回収貯液槽12においてレジスト等に由来する有機物の分解を行っている。該分解を促進するため、加熱された溶液50を回収貯液槽12に補給することができる。
該実施形態を図3に基づいて説明する。なお、前記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
なお、加熱された溶液50の回収貯液槽12への供給は連続的に行ってもよく、また、間欠的に行うようにしてもよい。また、供給量を時間とともに変化させるようにしてもよい。
前記実施形態2では、回収貯液槽12における廃棄量の調整によってシステム全体における液量を調整しているものとして説明している。この実施形態4では、溶液50の水分除去を行うことで液量の調整を行うとともに、硫酸濃度を高めるものとしている。以下に、図4に基づいて説明する。なお、前記各実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
洗浄部6から出た溶液50を、放散塔31において900NL/minの空気でストリッピングすると、水分が蒸発し、温度が下がって、硫酸濃度86.4質量%、118℃にすることができる。これを回収貯液槽12に回収して50%を廃棄ライン16より廃棄し、50%を循環使用するとすれば、硫酸の使用量は50%、過酸化水素水の使用量は56.8%になる。即ち、放散塔無しで50%循環使用する場合よりも過酸化水素の投入量が13.7%多くなるので、前記実施形態の方法よりカロ酸などの酸化剤濃度をそれだけ高くすることができる。
なお、上記の説明では硫酸濃度調整の方法として空気による放散を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば加熱蒸発など、その他の方法で濃度調整を行っても良い。
次の実施形態5は、図5に示すように、前記実施形態4において加熱器5で加熱された溶液50をバイパスライン21によって回収貯液槽12に導入する洗浄システム40を示すものである。放散塔31で水分をストリッピングすることによって溶液50の温度が放散塔31を用いないものよりも低下しており、バイパスライン21を通して供給される高温の溶液50によって回収貯液槽12内の溶液の温度を上昇させて溶液に含まれる有機物の分解を促進することができる。
2 混合貯液槽
3 送液ライン
4 送液ポンプ
5 加熱器
6 洗浄部
10 洗浄システム
11 回収ライン
12 回収貯液槽
13 環流ライン
14 環流ポンプ
15 冷却器
20 洗浄システム
21 バイパスライン
30 洗浄システム
31 放散塔
Claims (16)
- 硫酸溶液と過酸化水素水とを混合した後、混合液を加熱して被洗浄材の洗浄に供し、
前記洗浄後の混合液の一部または全部を回収し、回収した前記溶液に前記加熱後の混合液の一部を加えて貯液した後、前記混合液として循環使用することを特徴とする洗浄方法。 - 前記混合液は、前記加熱前に60〜100℃の温度を有することを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。
- 前記混合液は、前記加熱後に150〜220℃の温度を有することを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄方法。
- 前記混合液の加熱を10秒以内で行い、該混合液を、加熱後20秒以内に前記洗浄に使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄方法。
- 前記混合液は、硫酸濃度が70〜92質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄方法。
- 回収した前記溶液に、前記硫酸溶液と過酸化水素水の一方または両方を添加し前記混合液として循環使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄方法。
- 前記洗浄における洗浄結果に従って、前記洗浄後の混合液の循環使用比率を調整することを特徴とする請求項6に記載の洗浄方法。
- 前記貯液における前記溶液の温度を120〜150℃とし、前記混合液として循環使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の洗浄方法。
- 回収した前記溶液を冷却することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の洗浄方法。
- 前記洗浄後の混合液の水分を一部除去して前記循環使用することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の洗浄方法。
- 過硫酸溶液と過酸化水素水とを混合して貯液する混合貯液部と、前記混合貯液部から供給される混合液を通液しつつ加熱する加熱器と、前記加熱器から供給される加熱した混合液を洗浄液として用いる洗浄部と、前記混合貯液部と前記洗浄部との間で、前記加熱器を介して前記混合液を循環させる循環ラインと、を備え、
さらに、前記循環ラインに、前記洗浄部で洗浄に用いた混合液を回収して貯液する回収貯液部が介在し、
前記加熱器と前記洗浄部との間で前記循環ラインから分岐して、前記回収貯液部に加熱された前記混合液の一部を供するバイパスラインを備えることを特徴とする洗浄システム。 - 前記加熱器は、入液部から出液部に至る通液時間が10秒以内とされ、入液された60〜100℃の混合液を150〜220℃に加熱して出液するものであることを特徴とする請求項11記載の洗浄システム。
- 前記混合貯液部は、前記混合液を60〜100℃に保持するものであることを特徴とする請求項11または12に記載の洗浄システム。
- 前記回収貯液部は、前記硫酸溶液と過酸化水素水の一方または両方を添加するものであることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の洗浄システム。
- 前記回収貯液部は、回収した溶液を120〜150℃に保持するものであることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の洗浄システム。
- 前記洗浄部の下流側であって、前記混合貯液部または該混合貯液部に至るまでに前記混合液を冷却する冷却器を備えることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の洗浄システム。
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