JP5668608B2 - 全固体電池の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、負極集電体の硫化を防止し、保存性の高い全固体電池を製造可能な全固体電池の製造方法、および全固体電池の保存方法に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層に変えて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。さらに、このような固体電解質層、または電極活物質層に用いられる固体電解質として、硫化物固体電解質が知られている。硫化物固体電解質は、Liイオン伝導性が高く、電池の高出力化を図る上で注目されている材料である。
また、リチウム電池に用いられる電極集電体としては、従来から種々の金属が用いられている。なかでも銅(Cu)、ニッケル(Ni)等は、導電性が高く、集電特性に優れていることから好適に用いられているものである。
そこで、近年、上述の硫化物固体電解質および上述の電極集電体を組み合わせることで、より電池特性に優れた全固体電池とすることが試みられている。しかしながら、硫化物固体電解質を用いた全固体電池は、電池の組み立て後に一定期間保存すると、電池特性が低下したり、負極集電体が破損してしまうという問題がある。
なお、電解質として液状の電解質を用いたリチウム電池において、負極集電体に銅を用いた場合は、電池の組み立て後に負極集電体から銅が溶出することにより電池特性が低下することが知られている(特許文献1および特許文献2)。また、特許文献1においては、銅の溶出を防止するため、負極電位を銅が酸化溶解し得る電位よりも還元側になるように、初期充電を行うことが示されている。
特開2001−325988号公報 特開2010−40256号公報
本発明者は、上記実情に鑑みて鋭意研究を行った結果、上述の保存状態においては負極集電体と負極活物質層中に含有されている硫化物固体電解質の硫黄とが反応して負極集電体が硫化されること、また負極集電体の硫化が原因となり、全固体電池の内部抵抗が増加したり、負極集電体の延性・展性が低下することによって全固体電池が劣化することを解明した。すなわち、本発明者は、全固体電池の劣化は、特許文献1等に示される液状の電解質を用いた電池における電池特性の低下の原因とは全くことなる原因によって生じる全固体電池に特有の問題であることを解明したのである。
そこで、本発明は、負極集電体の硫化を防止し、保存性に優れた全固体電池を製造可能な全固体電池の製造方法、および全固体電池の電池特性等を低下させることなく良好に保存可能な全固体電池の保存方法を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、負極集電体の硫化は、電池の保存時における負極電位が要因となって生じることを知見として得、負極集電体の硫化が生じるまでに、全固体電池を充電して負極電位を調整することにより、負極集電体の硫化を防止することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
すなわち、本発明においては、正極集電体、および、上記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、負極集電体、並びに、上記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の製造方法であって、上記全固体電池の各構成層を積層させて接合することにより、全固体電池を組み立てる組み立て工程と、上記負極集電体の硫化が生じるまでに、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する硫化防止充電工程と、を有することを特徴とする全固体電池の製造方法を提供する。
本発明によれば、硫化防止充電工程を有することから、電極集電体の硫化が生じるまでに全固体電池の負極電位を調整することができるため、負極集電体と硫化物固体電解質中の硫黄とが反応して負極集電体が硫化することを好適に防止することが可能となる。よって、電池特性の低下や負極集電体の劣化を好適に防止し、保存性に優れた全固体電池を製造することが可能となる。
また、本発明においては、正極集電体、および、上記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、負極集電体、並びに、上記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の製造方法であって、上記全固体電池の各構成層を積層させて接合することにより、全固体電池を組み立てる組み立て工程と、上記組み立て工程で上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから24時間以内に、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する硫化防止充電工程と、を有することを特徴とする全固体電池の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記組み立て工程で上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから上述した時間以内に全固体電池の負極電位を調整することができるため、負極集電体の硫化を好適に防止することが可能となる。よって、電池特性の低下や負極集電体の劣化を好適に防止し、保存性に優れた全固体電池を製造することが可能となる。
上記発明においては、上記組み立て工程は、全固体電池を加圧プレスする加圧プレス処理を有し、かつ上記加圧プレス処理および上記硫化防止充電工程が同時に行われることが好ましい。全固体電池の劣化をより好適に防止することが可能となる。また、製造工程を簡便な工程とすることができ、製造効率を高くすることが可能となる。
本発明においては、正極集電体、および、上記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、負極集電体、並びに、上記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の保存方法であって、負電極集電体の硫化が生じるまでに、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する硫化防止充電工程を有することを特徴とする全固体電池の保存方法を提供する。
本発明によれば、硫化防止充電工程を有することから、負極集電体の硫化が生じるまでに全固体電池の負極電位を調整することができ、負極集電体と硫化物固体電解質材料の硫黄とが反応して負極集電体が硫化することを好適に防止し、電池特性を低下させることなく良好な状態で全固体電池の保存を行うことが可能となる。
また、本発明においては、正極集電体、および、上記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、負極集電体、並びに、上記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の保存方法であって、上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから24時間以内に、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する硫化防止充電工程を有することを特徴とする全固体電池の保存方法を提供する。
本発明によれば、硫化防止充電工程を有することから、上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから上述した時間以内に、全固体電池の負極電位を調整することができ、負極集電体と硫化物固体電解質材料の硫黄とが反応して負極集電体が硫化することを好適に防止し、電池特性を低下させることなく良好な状態で全固体電池の保存を行うことが可能となる。
本発明においては、負極集電体の硫化を防止し、保存性に優れた全固体電池を製造可能な全固体電池の製造方法、および全固体電池の電池特性等を低下させることなく良好に保存可能な全固体電池の保存方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明の全固体電池の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の全固体電池の製造方法の他の例を示す工程図である。
以下、本発明の全固体電池の製造方法、および全固体電池の保存方法について説明する。
A.全固体電池の製造方法
まず、本発明の全固体電池の製造方法について説明する。本発明の全固体電池の製造方法は、2つの態様を有するものである。以下、各態様について説明する。
I.第1態様
本態様の全固体電池の製造方法の第1態様は、正極集電体、および、上記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、負極集電体、並びに、上記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の製造方法であって、上記全固体電池の各構成層を積層させて接合することにより、全固体電池を組み立てる組み立て工程と、上記負極集電体の硫化が生じるまでに、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する硫化防止充電工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
なお、本態様において「各構成層を積層させて接合する」とは、正極集電体、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、および負極集電体がこの順で積層するように、各構成層を接触させて配置することを指す。
また、「負極集電体の硫化が生じるまで」とは、上記組み立て工程で上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから実質的に負極集電体の硫化が生じていない間を指す。なお、実質的に電極集電体の硫化が生じていないことについては、以下のような測定方法により確認することが可能である。例えば、全固体電池の負極集電体のみを剥離し、XPS分析により金属硫化物のピークの有無を調査し、上記ピークが表れていないことを確認することにより、負極集電体の硫化が生じていないことを確認することができる。
また、「負極集電体の硫化が生じるまで」の具体例としては、上記組み立て工程で上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから、0分(形成と同時)〜24時間の範囲内、より好ましくは0分〜12時間の範囲内、特に好ましくは0分〜2時間の範囲内であることが好ましい。
また、「負極集電体が硫化する電位」(以下、硫化する電位と称する場合がある。)とは、負極集電体と負極活物質層中に含まれる硫化物固体電解質の硫黄とが反応して、負極集電体の硫化が起こる電位を指す。また、「硫化する電位」については、例えば、次のような測定方法により求めることが可能となる。
まず、作用極に対象となる負極集電体材料、対極に金属Li箔を使用し、極間に硫化物固体電解質を挿入した評価用サンプルを作製し、次いで、一般的な電極測定装置を使用し、2電極法にて、25℃で上記評価用サンプルのサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を実施して、酸化電流ピークを生じる電位を確認する。本態様においては、上記酸化電流ピークを生じる電位を硫化する電位と定義する。
ここで、本態様の全固体電池の製造方法について図を用いて説明する。図1(a)〜(d)は、本態様の全固体電池の製造方法の一例を示す工程図である。まず、本態様における組み立て工程について説明する。本態様における組み立て工程においては、例えば図1(a)に示すように、まず、正極集電体1αおよび正極活物質層1βを有する正極1と、負極集電体2αおよび負極活物質層2βを有する負極2とを準備する。次に、図1(b)に示すように、負極2の負極活物質層2β上に、上述の固体電解質層3を形成し、次いで図1(c)に示すように、正極1の正極活物質層1βと負極2上に形成された固体電解質層3とを接触させて配置することにより、全固体電池10の各構成層を積層させて接合する。次に、本態様における硫化防止充電工程においては、図1(c)に示すように、負極集電体2αの硫化が生じるまでに、負極集電体2αが硫化する電位よりも負極電位が低くなるように全固体電池10を充電する。なお、図1(c)に示すように、本態様においては、硫化防止充電工程を、例えば、組み立て工程における全固体電池10をロール21等により圧力Pを加えてプレスするロールプレス法を用いた加圧プレス処理と同時に行ってもよい。以上の各工程を経て、図1(d)に示すように、全固体電池10を製造することができる。
また、図2(a)〜(e)は、本態様の全固体電池の製造方法の他の例を示す工程図である。本態様においては、図2(c)に示すように、全固体電池10を組み立てる組み立て工程で加圧プレス処理を行った後、図2(d)に示すように、硫化防止充電工程を行うことによっても、図2(e)に示すように、全固体電池10を製造することができる。なお、図2(c)においては、加圧用プレス板22等により圧力Pを加えてプレスする平面プレス法を用いた加圧プレス処理を行う例について示している。また、図2において説明していない工程、および符号等については図1(a)〜(d)と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
ここで、初充電前の負極集電体の硫化が生じる理由、また充電を行うことにより硫化を防止することができる理由について説明する。
負極集電体の硫化は、初充電前の負極電位が上述した負極集電体が硫化する電位よりも高いことにより起こるものである。負極集電体の硫化について、具体的に、負極集電体として銅箔を、負極活物質層としてカーボンを用いた負極を例に挙げて説明する。
ここで、上述したCV測定により、銅箔が硫化する電位を求めると、約2VvsLi/Li〜3VvsLi/Liの範囲内に酸化電流ピークが観察される。これは、下記式に示される反応によるものと考えられる。
Figure 0005668608
一方で、初充電前のカーボン負極の電位は、概ね2.7VvsLi/Li程度であり、上述した反応が生じる理論上の電位よりも高い値であることから、負極集電体の硫化が生じるものである。
よって、上述した負極集電体の硫化を防止するには、負極電位が上述した負極集電体が硫化する電位よりも低くなるようにする必要がある。そこで、全固体電池の充電を行うことにより、負極電位を上述した負極集電体が硫化する電位よりも低くなるように調整することで、負極活物質層の硫化を防止することが可能となる。上述した銅箔およびカーボンを用いた負極を例に挙げれば、全固体電池を充電することにより、負極電位を理論上2.14VvsLi/Liよりも低くすることが可能となり、銅箔の硫化を防止することが可能となる。なお、実際の硫化する電位は理論値に対してある程度幅を有するものであることから、酸化電流ピークを生じる電位範囲における下限値(銅箔においては2VvsLi/Li)より低くすることにより、より好適に銅箔の硫化を防止することが可能となる。
本態様によれば、硫化防止充電工程を有することから、負極集電体の硫化が生じるまでに全固体電池の負極電位を調整することができるため、負極集電体と硫化物固体電解質中の硫黄とが反応して負極集電体が硫化することを好適に防止することが可能となる。よって、電池特性の低下や負極集電体の劣化を好適に防止し、保存性に優れた全固体電池を製造することが可能となる。
以下、本態様の全固体電池の製造方法における各工程について説明する。
1.組み立て工程
本態様における組み立て工程は、全固体電池の各構成層を積層させて接合することにより全固体電池を組み立てる工程である。以下、本態様における全固体電池の各構成層、および接合方法について説明する。
(1)負極
本工程に用いられる負極は、負極集電体と、負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層とを有するものである。
(i)負極集電体
本工程に用いられる負極集電体は、負極活物質層の集電を行う機能を有するものである。
上記負極集電体に用いられる電極集電体材料としては、導電性を有し、かつ硫黄と反応して硫化物となり得る材料であれば特に限定されず、銅、ニッケル、ステンレス、バナジウム、マンガン、鉄、チタン、コバルト、亜鉛等を挙げることができ、なかでも銅、ニッケルが好ましい。銅、ニッケルは導電性に優れ集電性に優れていることから好ましい。また、銅、ニッケルは負極活物質層中の硫黄と反応しやすく、硫化しやすい性質を有する。上記負極集電体の形状および厚みとしては、負極活物質層の集電を行うことが可能な程度であれば特に限定されず、本態様により製造される全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
(ii)負極活物質層
次に本工程に用いられる負極活物質層について説明する。
上記負極活物質層に用いられる硫化物固体電解質材料は、通常は、伝導するイオンとなる金属元素(M)と、硫黄(S)とを含有する。上記Mとしては、例えばLi、Na、K、Mg、Ca等を挙げることができ、中でもLiが好ましい。特に、硫化物固体電解質材料は、Li、A(Aは、P、Si、Ge、Al、Bからなる群から選択される少なくとも一種である)、Sを含有することが好ましい。さらに、上記AはP(リン)であることが好ましい。さらに、硫化物固体電解質材料は、Cl、Br、I等のハロゲンを含有していても良い。ハロゲンを含有することにより、イオン伝導性が向上するからである。また、硫化物固体電解質材料はOを含有していても良い。
Liイオン伝導性を有する硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。)等を挙げることができる。なお、上記「LiS−P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質材料を意味し、他の記載についても同様である。
また、硫化物固体電解質材料が、LiSおよびPを含有する原料組成物を用いてなるものである場合、LiSおよびPの合計に対するLiSの割合は、例えば70mol%〜80mol%の範囲内であることが好ましく、72mol%〜78mol%の範囲内であることがより好ましく、74mol%〜76mol%の範囲内であることがさらに好ましい。オルト組成またはその近傍の組成を有する硫化物固体電解質材料とすることができ、化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。ここで、オルトとは、一般的に、同じ酸化物を水和して得られるオキソ酸の中で、最も水和度の高いものをいう。本態様においては、硫化物で最もLiSが付加している結晶組成をオルト組成という。LiS−P系ではLiPSがオルト組成に該当する。LiS−P系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびPの割合は、モル基準で、LiS:P=75:25である。なお、上記原料組成物におけるPの代わりに、AlまたはBを用いる場合も、好ましい範囲は同様である。LiS−Al系ではLiAlSがオルト組成に該当し、LiS−B系ではLiBSがオルト組成に該当する。
また、硫化物固体電解質材料が、LiSおよびSiSを含有する原料組成物を用いてなるものである場合、LiSおよびSiSの合計に対するLiSの割合は、例えば60mol%〜72mol%の範囲内であることが好ましく、62mol%〜70mol%の範囲内であることがより好ましく、64mol%〜68mol%の範囲内であることがさらに好ましい。オルト組成またはその近傍の組成を有する硫化物固体電解質材料とすることができ、化学的安定性の高い硫化物固体電解質材料とすることができるからである。LiS−SiS系ではLiSiSがオルト組成に該当する。LiS−SiS系の硫化物固体電解質材料の場合、オルト組成を得るLiSおよびSiSの割合は、モル基準で、LiS:SiS=66.6:33.3である。なお、上記原料組成物におけるSiSの代わりに、GeSを用いる場合も、好ましい範囲は同様である。LiS−GeS系ではLiGeSがオルト組成に該当する。
また、硫化物固体電解質材料が、LiX(X=Cl、Br、I)を含有する原料組成物を用いてなるものである場合、LiXの割合は、例えば1mol%〜60mol%の範囲内であることが好ましく、5mol%〜50mol%の範囲内であることがより好ましく、10mol%〜40mol%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、硫化物固体電解質材料は、硫化物ガラスであっても良く、結晶化硫化物ガラスであっても良く、固相法により得られる結晶質材料であっても良い。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。また、硫化物固体電解質材料がLiイオン伝導体である場合、常温におけるLiイオン伝導度は、例えば1×10−5S/cm以上であることが好ましく、1×10−4S/cm以上であることがより好ましい。
本工程に用いられる負極活物質としては、例えば、金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。
本工程に用いられる負極活物質層は、硫化物固体電解質、および負極活物質の他に、例えば導電化材や結着材等を必要に応じて含有させてもよい。導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。負極活物質層に用いられる結着材としては、例えば、PTFE、PVDF等のフッ素含有結着材を挙げることができる。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましく、例えば40質量%〜99質量%の範囲内、中でも45質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましい。また、導電化材の含有量は、所望の電子伝導性を確保できれば、より少ないことが好ましく、例えば0.1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。また、結着材の含有量は、負極活物質等を安定に固定化できれば、より少ないことが好ましく、例えば0.5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。また、硫化物固体電解質の含有量は、所望のイオン伝導性を確保できれば、より少ないことが好ましく、例えば1質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましい。
負極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
本態様における負極活物質層の形成方法としては、均質な負極活物質層を所望の厚みで形成することが可能な方法であれば特に限定されない。例えば、負極活物質層の材料をプレスしてペレットを形成する方法であってもよく、負極活物質層の材料および溶剤を含有するスラリーを調製し、これを所定の厚みで負極集電体上に塗布することにより形成する方法であってもよい。なかでも、スラリーを用いた形成方法であることが好ましい。
(3)正極
本工程に用いられる正極は、正極集電体と、正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層とを有するものである。
(i)正極集電体
本工程に用いられる正極集電体は、正極活物質層の集電を行う機能を有するものである。
正極集電体に用いられる電極集電体材料としては、バナジウム、アルミニウム、ステンレス、金、白金、マンガン、鉄、チタン等を挙げることができ、なかでもアルミニウムであることが好ましい。正極集電体の形状および厚みについては、本態様により製造される全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。
(ii)正極活物質層
次に本態様に用いられる正極活物質層について説明する。
正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO等の層状正極活物質、LiMn、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiNiMn等のスピネル型正極活物質、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等のオリビン型正極活物質等を挙げることができる。
なお、正極活物質層に用いられる硫化物固体電解質については、上述した負極活物質層の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。なお、正極活物質層に用いられる硫化物固体電解質については、負極活物質層に用いられるものと同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
また、本行程に用いられる正極活物質層は、上述した硫化物固体電解質、および正極活物質のほかに、導電化材、結着材、固体電解質を含有していてもよい。導電化材、結着材については、上述した負極活物質層の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、正極活物質層に用いられる固体電解質については、後述する固体電解質層の項で説明するものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。なお、正極活物質層に硫化物固体電解質が用いられる場合は、負極活物質層に用いられるものと同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
また、正極活物質層の各構成材料の含有量については、負極活物質層の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
正極活物質層の厚み、および形成方法等については、負極活物質層の厚み、および形成方法等と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
(4)固体電解質層
本工程に用いられる固体電解質層は、固体電解質を含有するものである。上記固体電解質としては、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではなく、上述した硫化物固体電解質や、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B、LiO−B−ZnO等の酸化物非晶質固体電解質、LiI、LiI−Al、LiN、LiN−LiI−LiOH、Li1+xAlTi2−x(PO(0≦x≦2)、Li1+x+yTi2−xSi3−y12(A=AlまたはGa、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)、[(A1/2Li1/21−x]TiO(A=La、Pr、Nd、Sm、B=SrまたはBa、0≦x≦0.5)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2x)(x<1)、Li3.6Si0.60.4等の結晶質酸化物・酸窒化物等を挙げることができる。なかでも、硫化物固体電解質であることが好ましい。
固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
固体電解質層の形成方法としては、均質な固体電解質層を所望の厚みで形成することが可能であれば特に限定されず、上述した負極活物質層の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
(6)接合方法
本工程に用いられる全固体電池の各構成層の接合方法としては、上述した順に各構成層を積層し、接触させて配置することが可能な方法であれば特に限定されない。
例えば、各電極集電体上に、それぞれ電極活物質層を形成し、正極活物質層または負極活物質層のいずれか一方の電極活物質層上に固体電解質層を形成し、次いで、固体電解質層と他方の電極活物質層とを接触させて配置することにより、各構成層を接合させる方法を挙げることができる。また、例えば、正極活物質層、固体電解質層、および負極活物質層を有する積層体をプレス等により形成した後、上記積層体の各電極活物質層と各電極集電体とを接触させて配置することにより、各構成層を接合させる方法を挙げることができる。
また、本工程は各構成層を積層させた全固体電池を加圧プレスする加圧プレス処理を行うことが好ましい。
加圧プレス処理におけるプレス圧としては、固体電解質層や電極活物質層等の密度を向上させ、各層の密着性を向上させることが可能な程度の圧力であれば特に限定されず、硫化物系固体電池の形状、材料等により適宜選択することができる。
また、加圧プレス処理は、後述する硫化防止充電工程前に行ってもよく、同時に行ってもよいが、後述する硫化防止充電工程とを同時に行うことが好ましい。これにより、本態様の全固体電池の製造方法の工程数を少なくすることができることから、製造効率を向上させることが可能となる。また、本工程を硫化防止充電工程と同時に行う場合は、組み立て工程直後に行うことがさらに好ましい。電極集電体の硫化をより好適に防止することが可能となるからである。
本工程に用いられる加圧プレス方法としては、全固体電池の固体電解質層および活物質層の密度を高くし、かつ各構成層の密着性を向上させることが可能な方法であれば特に限定されず、一般的な全固体電池の製造方法に用いられる加圧プレス方法と同様とすることができる。具体的には、ロールプレス法、平面プレス法等を挙げることができる。
2.硫化防止充電工程
本態様における硫化防止充電工程は、上記負極集電体の硫化が生じるまでに、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する工程である。
本工程を行うタイミングとしては、所定の負極電位となるように全固体電池の充電を行うことで負極集電体の硫化を防止することが可能であれば特に限定されず、負極集電体の硫化が生じるまでの任意のタイミングで行うことが可能であるが、負極集電体上に負極活物質層を形成してからの時間経過がより少ないことが好ましい。時間経過が少ないほど、全固体電池の劣化をより好適に防止することが可能となるからである。
また、本工程後の負極電位としては、上述した硫化する電位よりも低い電位であれば特に限定されない。例えばリチウム全固体電池の場合は、本工程後の負極電位としては、上記硫化する電位よりも−0.5VvsLi/Li以下、なかでも−1.0VvsLi/Li以下、特に−1.5VvsLi/Li以下であることが好ましい。
より具体的に、本工程後の負極電位としては、2.0VvsLi/Li以下、なかでも1.0VvsLi/Li以下、特に0.7VvsLi/Li以下であることが好ましい。
本工程における充電容量としては、負極集電体の硫化を防止することが可能な程度に電極電位を調整することが可能な程度であれば特に限定されず、全固体電池における負電極の構成等に応じて適宜選択される。
このような全固体電池の充電容量としては、負極活物質層がカーボン活物質である場合、0.03mAh/g以上、なかでも0.04mAh/g以上、特に0.10mAh/g以上であることが好ましい。上記充電容量が上記の値を下回る場合は、各電極電位を電極集電体の硫化を生じない程度に十分に調整することが困難となるからである。なお、充電容量の上限としては、全固体電池を使用する際に必要な充電容量と同様とすることができる。本工程においては、全固体電池を使用するための初回の充電を同時に行うことも可能である。
また、本工程は、使用前の全固体電池の充電を行うことから、同時に、短絡検査を行う工程や、全固体電池の性能(ばらつき)を把握する工程を兼ねることができる。
なお、上述した組立て工程において加圧プレス処理を行わない場合は、本工程後に加圧プレス処理を行ってもよい。
3.その他の工程
本態様の全固体電池の製造方法は、上述した組み立て工程および硫化防止充電工程を有するものであれば特に限定されず、必要に応じて任意の工程を適宜追加することができる。
このような工程としては、例えば、端子を接続する工程や、電池ケースに封入する工程等を挙げることができる。
4.全固体電池
本態様により製造される全固体電池としては、例えば、硫化物系全固体リチウム電池、硫化物系全固体ナトリウム電池、硫化物系全固体カリウム電池、硫化物系全固体マグネシウム電池、硫化物系全固体カルシウム電池等を挙げることができ、中でも、硫化物系全固体リチウム電池が好ましい。また、上記全固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。上記全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
II.第2態様
本発明の全固体電池の製造方法の第2態様は、正極集電体、および、上記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、負極集電体、並びに、上記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の製造方法であって、上記全固体電池の各構成層を積層させて接合することにより、全固体電池を組み立てる組み立て工程と、上記組み立て工程で上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから24時間以内に、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する硫化防止充電工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
本態様によれば、上記組み立て工程で上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから上述した時間以内に全固体電池の負極電位を調整することができるため、負極集電体の硫化を好適に防止することが可能となる。よって、電池特性の低下や負極集電体の劣化を好適に防止し、保存性に優れた全固体電池を製造することが可能となる。
本態様においては、上記組み立て工程で上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから、上記硫化防止充電工程を行うまでの間が24時間以内であれば特に限定されないが、なかでも、0分(負極形成と同時)〜12時間の範囲内、特に0分〜2時間の範囲内であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、好適に負極集電体の硫化を防止することが可能となる。
なお、本態様において、上述した点以外については第1態様の全固体電池の製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
B.全固体電池の保存方法
次に、本発明の全固体電池の保存方法について説明する。本発明の全固体電池の保存方法は、2つの態様を有するものである。以下、各態様について説明する。
I.第1態様
本発明の全固体電池の保存方法の第1態様は、正極集電体、並びに、上記正極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、負極集電体、並びに、上記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の保存方法であって、負電極集電体の硫化が生じるまでに、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する硫化防止充電工程を有することを特徴とする保存方法である。
なお、「負極集電体の硫化が生じるまで」とは、上述した「A.全固体電池の製造方法 I.第1態様」の項で説明した「負極集電体の硫化が生じるまで」と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様によれば、硫化防止充電工程を有することから、負極集電体の硫化が生じるまでに全固体電池の負極電位を調整することができ、負極集電体と硫化物固体電解質材料の硫黄とが反応して負極集電体が硫化することを好適に防止し、電池特性を低下させることなく良好な状態で全固体電池の保存を行うことが可能となる。
なお、本態様に用いられる全固体電池、その各構成層、硫化防止充電工程後の負極電位等については上述した「A.全固体電池の製造方法」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
II.第2態様
本発明の全固体電池の保存方法の第2態様は、正極集電体、および、上記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、負極集電体、並びに、上記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の保存方法であって、上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから24時間以内に、上記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように上記全固体電池を充電する硫化防止充電工程を有することを特徴とする保存方法である。
本態様によれば、硫化防止充電工程を有することから、上記負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから24時間以内に、全固体電池の負極電位を調整することができ、負極集電体と硫化物固体電解質材料の硫黄とが反応して負極集電体が硫化することを好適に防止し、電池特性を低下させることなく良好な状態で全固体電池の保存を行うことが可能となる。
なお、本態様に用いられる全固体電池、その各構成層、負極集電体上に上記負極活物質層を形成してから硫化防止充電工程を行うまでの間の時間、硫化防止充電工程後の負極電位等については上述した「A.全固体電池の製造方法」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明および比較例をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(全固体電池の充電による負極電位の変化について)
まず、以下の手順により全固体電池を作製した。硫化物固体電解質として、75LiS‐25Pガラスの粉末材料を用い、プレス機に上記粉末材料を入れた後、平滑にならしてから1t/cmの圧力を加えてプレスし、固体電解質層を形成した。
次に、正極活物質層としてLiNbOでコーティングしたLiCoO、および硫化物固体電解質として75LiS‐25Pガラスを、体積比で正極活物質:硫化物固体電解質=5:5となるように組成を調整して、振とう機(柴田科学社製)に入れて5分間振とうした後、混合粉末をプレス機の固体電解質層上に入れて平滑に均してから1t/cmの圧力を加えてプレスし、正極活物質層を形成した。
次に、負極活物質として天然黒鉛カーボン、および硫化物固体電解質として75LiS‐25Pを、体積比で負極活物質:硫化物固体電解質=5:5となるように組成を調整して、振とう機(柴田科学社製)に入れて5分間振とうした後、混合粉末をプレス機の固体電解質層上に入れて平滑に均してから1t/cmの圧力を加えてプレスし、負極活物質層を形成した。
次に、正極活物質層側にAl箔、負極活物質層側にCu箔を挿入し、4t/cmの圧力を加えてプレスを行うことにより全固体電池を作製した。
上述した負極を使用した全固体電池において、硫化防止充電工程前の負極電位は2.7VvsLi/Liとなり、硫化防止充電工程において充電容量0.04mAh/gの充電を行ったところ負極電位が約1VvsLi/Liとなった。これにより、全固体電池を充電することにより、負極集電体が硫化する電位よりも負極電位を低くすることが可能であることが確認できた。なお、上述した銅箔においては、上述したように理論上2.14VvsLi/Liで硫化が生じることが考えられる。
[実施例2および比較例]
(保存状態の評価)
以下の手順により、全固体電池を作製した。
正極活物質としてLiNbOでコーティングしたLiCo1/3Ni1/3Mn1/32、硫化物固体電解質として30LiI・70(75LiS‐25P)ガラスを体積比が6:4となり、さらにバインダーとしてブチレンラバー(JSR社製)が1.5mass%、導電化材としてVGCF(昭和電工社製)が3mass%となるように組成を調整し、これらをヘプタン溶媒に加えて超音波分散装置(エスエムテー製UH−50)にて30秒間攪拌した。その後、振とう機(柴田科学社製)に入れて30分間振とうして、ペースト状にし、Al箔に塗布することにより正極活物質層を形成した。これにより正極を得た。
次に、硫化物固体電解質として30LiI・70(75LiS‐25P)ガラスを用い、バインダーとしてブチレンラバー(JSR社製)が1.5mass%となるように組成を調整し、これらをヘプタン溶媒に加えて超音波分散装置(エスエムテー製UH−50)にて30秒間攪拌した。その後、振とう機(柴田科学社製)に入れて30分間振とうして、ペースト状にし、Al箔に塗布することにより固体電解質層を形成した。
次に、負極活物質として天然黒鉛カーボン、硫化物固体電解質として30LiI・70(75LiS‐25P)ガラスを体積比が6:4となり、さらにバインダーとしてブチレンラバー(JSR社製)が1.5mass%、導電化材としてVGCF(昭和電工社製)が3mass%となるように組成を調整し、これらをヘプタン溶媒に加えて超音波分散装置(エスエムテー製UH−50)にて30秒間攪拌した。その後、振とう機(柴田科学社製)に入れて30分間振とうして、ペースト状にし、Cu箔に塗布することにより負極活物質層を形成した。これにより負極を得た。
次に、得られた固体電解質層を1t/cmでプレスし、その後、正極の正極活物質層と固体電解質層とを接触させて配置して1t/cmでプレスし、次いで、固体電解質層と負極の負極活物質層とを接触させて配置して4t/cmでプレスすることにより、全固体電池を作製した。
上述した全固体電池を2つ準備し、一方を負極集電体上に負極活物質層を形成してから2時間経過後(実施例2)、他方を負極集電体上に負極活物質層を形成してから40時間経過後(比較例)にSOC20における電気化学インピーダンス法による抵抗測定および出力測定を実施した。なお、全固体電池の保存環境は25℃、露点温度−90℃のグローブボックス内とした。
実施例2および比較例の測定結果を表1に示す。なお、表1においては、実施例2における直流抵抗(バルク抵抗)、反応抵抗(電荷移動抵抗)、および出力における数値については、比較例における各値を100とした場合における比率で示している。
Figure 0005668608
表1に示すように、比較例においては、各抵抗を小さくすることができ、全固体電池の劣化が少ないものと考えられる。
1 … 正極
1α … 正極集電体
1β … 正極活物質層
2 … 負極
2α … 負極集電体
2β … 負極活物質層
3 … 固体電解質層
10 … 全固体電池

Claims (6)

  1. 正極集電体、および、前記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、
    負極集電体、並びに、前記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、
    前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の製造方法であって、
    前記全固体電池の各構成層を積層させて接合することにより、全固体電池を組み立てる組み立て工程と、
    前記負極集電体の硫化が生じるまでに、前記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように前記全固体電池を充電する硫化防止充電工程と、を有することを特徴とする全固体電池の製造方法。
  2. 正極集電体、および、前記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、
    負極集電体、並びに、前記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、
    前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の製造方法であって、
    前記全固体電池の各構成層を積層させて接合することにより、全固体電池を組み立てる組み立て工程と、
    前記組み立て工程で前記負極集電体上に前記負極活物質層を形成してから24時間以内に、前記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように前記全固体電池を充電する硫化防止充電工程と、を有することを特徴とする全固体電池の製造方法。
  3. 前記組み立て工程は、全固体電池を加圧プレスする加圧プレス処理を有し、かつ前記加圧プレス処理および前記硫化防止充電工程が同時に行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の全固体電池の製造方法。
  4. 前記負極集電体に銅箔を用い、
    前記硫化防止充電工程が、2VvsLi/Li よりも負極電位が低くなるように前記全固体電池を充電する工程であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの請求項に記載の全固体電池の製造方法。
  5. 正極集電体、および、前記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、
    負極集電体、並びに、前記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、
    前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の保存方法であって、
    負電極集電体の硫化が生じるまでに、前記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように前記全固体電池を充電する硫化防止充電工程を有することを特徴とする全固体電池の保存方法。
  6. 正極集電体、および、前記正極集電体上に形成され、正極活物質を含有する正極活物質層を有する正極と、
    負極集電体、並びに、前記負極集電体上に形成され、硫化物固体電解質および負極活物質を含有する負極活物質層を有する負極と、
    前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に配置され、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する全固体電池の保存方法であって、
    前記負極集電体上に前記負極活物質層を形成してから24時間以内に、前記負極集電体が硫化する電位よりも負極電位が低くなるように前記全固体電池を充電する硫化防止充電工程を有することを特徴とする全固体電池の保存方法。
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