JP7369676B2 - 全固体二次電池用固体電解質層及び全固体二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、全固体二次電池用固体電解質層及び全固体二次電池に関する。
全固体二次電池は負極、電解質、正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性及び信頼性を大きく改善することができる。また長寿命化も可能になるとされる。更に、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車又は大型蓄電池等への応用が期待されている。
リチウム二次電池は、通常、充放電の繰り返しに伴い、発生したリチウム金属のデンドライトが成長して正極に到達すると、内部短絡が生じて、電池としての機能を失う。とりわけ、全固体二次電池はデンドライトによる内部短絡が発生しやすい。全固体二次電池は、正極及び負極の間に配置される電解液を固体電解質層に代えて電解質層も固体材料で形成されることから、固体電解質層を形成する固体材料間に残存する空隙(ピンホール)を通ってデンドライトが成長しやすいからである。そのため、全固体二次電池においては、デンドライトの成長による内部短絡の発生抑止が喫緊の課題となっている。
そこで、デンドライトの成長を防止して内部短絡の発生を防止する技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、正極及び負極の間に介在される固体電解質層を固体電解質の粉末を成形した粉末成形体で形成し、この粉末成形体の粉末間の隙間に、リチウム金属と反応して電子絶縁体となるものを生じる液状物質としてイオン液体を存在させた全固体リチウム二次電池が記載されている。
また、特許文献2には、硫化物固体電解質材料と特定の式で表される無機固体材料とを含有させた固体電解質層を備えた全固体リチウム電池が記載されている。特許文献2の全固体リチウム電池では、硫化物固体電解質材料及び無機固体材料それぞれの平均粒径を特定の条件に設定することにより、硫化物固体電解質材料の空隙発生を抑制してデンドライトの成長を物理的に防止するものである。
また、使用時における電池外部からの加圧拘束による内部短絡の発生を防止する技術として、特許文献3には、第1の固体電解質及びスペーサとして第2の固体電解質を含む下記の固体電解質層を備えた全固体リチウム二次電池が記載されている。
特開2009-211910号公報 特開2016-081905号公報 特開2011-081915号公報
正極活物質層、負極活物質層、固体電解質層等の構成層が固体材料(固体粒子)で形成される全固体二次電池では、所期の電池性能を発現させるため、通常、構成層ないしは全固体二次電池を加圧して、固体粒子同士を接触ないしは密着させる。このような加圧工程を行う場合にも、全固体二次電池には、長尺のシート状に成形して連続的な製造が可能になるという、工業的製造上の大きな利点がある。
全固体二次電池に対する電池性能向上等の要求は、近年、電気自動車の高性能化、実用化等の研究開発が急速に進行しており、その注目度も高いことから、一層高くなってきている。電池性能の向上には高エネルギー密度化が効果的であり、これを実現するため、固体電解質層を薄層化して、電池体積を低減する技術等が検討されている。また、全固体二次電池に対する要求は、電池性能向上だけではなく、例えば、急速充電を可能とする、高電流密度での充放電(ハイレート充放電)の適用が望まれている。
しかし、固体電解質層を薄層化すればするほどデンドライトが正極に到達しやすくなって内部短絡の早期発生が惹起される。また、ハイレート充放電条件で充電を行うとデンドライトの発生及び成長が大きく促進される。そのため、近年の要求に応えるには、全固体二次電池には、上述の工業的製造上の大きな利点を維持しながらも、固体電解質層の薄層化とハイレート充放電条件の適用に対しても内部短絡の発生を効果的に抑制できることが求められている。
このような状況の下、本発明者らは内部短絡の発生抑制について検討を進めたところ、内部短絡が発生しやすいという全固体二次電池に特有で喫緊の問題を解決するには更なる検討及び改善の余地があることが分かった。すなわち、特許文献1に記載の技術は、後述するように、連続的な製造方法に適用しにくく、工業的製造上の大きな利点に与ることができない場合もある。また、単に2種の材料を併用して空隙の発生を抑制する特許文献2に記載の技術では、上述の固体電解質層の薄層化及びハイレート充放電条件での充電などの条件下では更なる内部短絡の発生抑制を検討する余地があった。特許文献3はデンドライトによる内部短絡の発生抑制について何ら検討されていない。
本発明は、薄層化しながらもハイレート充放電条件での充電に対しても内部短絡の発生を効果的に抑制でき、しかも連続的な製造を可能とする全固体二次電池用固体電解質層を提供することを課題とする。また、本発明は、この全固体二次電池用固体電解質層を備えた全固体二次電池を提供することを課題とする。
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、固体電解質層中に硫化物系無機固体電解質に対してリチウム金属と反応しうる固体化合物を共存させることにより、充電により生成(析出)したリチウム金属がデンドライトとして成長する前又は成長する過程で固体化合物と化学反応させることで、正極への到達を抑制できることを見出した。また、固体化合物との化学反応によるデンドライトの成長抑制は、固体化合物が存在している限り可能となり、固体電解質層を薄層化しても、またハイレート充放電条件における充電を適用しても、実現できることを見出した。更に、固体電解質層に固体化合物を固体状態で共存させることから連続的な製造方法にも適用可能で、内部短絡の発生が高度に抑制され、高い電池性能を発揮しうる全固体二次電池を、その製造上の大きな利点を活用して生産性よく、製造できることも見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>リチウムイオン伝導性を有する硫化物系無機固体電解質と、リチウム金属と反応しうる固体化合物とを含有する、全固体二次電池用固体電解質層。
<2>固体化合物が無機酸化物である、<1>に記載の固体二次電池用固体電解質層。
<3>固体化合物が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む、<1>又は<2>に記載の固体二次電池用固体電解質層。
<4>固体化合物が、Al、Ti、P及びSiの各元素を含む酸化物である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体二次電池用固体電解質層。
<5>固体化合物が下記組成式で表される、<1>~<4>のいずれか1つに記載の固体二次電池用固体電解質層。
組成式:Li(1+x+y)AlTi(2-x)Si(3-y)12
ただし、x及びyはそれぞれ0を超え1.0未満である。
<6>上記組成式において、Tiの一部がGeで置換されている、<5>に記載の固体二次電池用固体電解質層。
<7>上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の固体二次電池用固体電解質層を備えた全固体二次電池。
本発明は、薄層化しながらもハイレート充放電条件での充電に対しても内部短絡の発生を効果的に抑制でき、しかも連続的な製造が可能で製造特性にも優れた、全固体二次電池用固体電解質層を提供できる。また、本発明は、この全固体二次電池用固体電解質層を備えた全固体二次電池を提供できる。
本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池を模式化して示す縦断面図である。 図2は実施例1で製造した全固体二次電池の充放電試験における充電レート結果を示す充放電曲線である。 図3は比較例1で製造した全固体二次電池の充放電試験における充電レート結果を示す充放電曲線である。
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、置換基を導入するなど一部を変化させた誘導体を含む意味である。
[固体電解質層]
本発明の全固体二次電池用固体電解質層(単に、固体電解質層ということがある。)は、硫化物系無機固体電解質と、リチウム金属と反応しうる固体化合物とを含有している。
固体電解質層が硫化物系無機固体電解質と固体化合物とを含有していると、充電により生成したリチウム金属を、デンドライトへの成長前又は成長過程で、固体化合物と化学反応させてデンドライトの正極への到達を阻害することができる。そのため、固体電解質層の薄層化及び/又はハイレート充放電条件の適用等の、内部短絡が発生しやすい条件においても、特許文献2及び3のようなデンドライトの成長を物理的に阻止する技術よりも高い水準で内部短絡の発生を抑制できる。
しかも、固体化合物を用いる本発明は、固体電解質層に固体化合物を固体状態で共存させることから、加圧工程を含む連続的な製造方法にも適用可能で、全固体二次電池に特有の工業的製造上の大きな利点を活用することもできる。
上述のように、本発明者らは、デンドライトへの成長前又は成長過程でデンドライトを形成するリチウム金属を物理的手段ではなく固体化合物と化学反応させることにより、内部短絡の発生を抑制するだけではなく、製造方法の観点からも、全固体二次電池の利点を有効に活用できることを初めて見出して、本発明を完成したものである。
よって、本発明の固体電解質層は、電気自動車の実用化等に向けた高い電池性能を実現可能としながらも内部短絡の発生を効果的に抑制できる全固体二次電池を、全固体二次電池に特有の工業的製造上の大きな利点を活用して、高い生産性で、製造できる。
<硫化物系無機固体電解質>
硫化物系無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有しており、更に電子絶縁性を有するものが好ましい。この硫化物系無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質を適宜選定して用いることができ、通常、アニオン元素として硫黄元素を主体として有するものが挙げられる。
このような硫化物系無機固体電解質としては、特に制限されず、例えば、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ただし、m、nは正の数を示す。ZはGe、Zn、Gaのいずれかを示す。)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ただし、x、yは正の数を示す。MはP、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかを示す。)、Li10GeP12等を挙げることができる。また、硫化物系無機固体電解質は、非晶質であってもよく、結晶質であってもよく、ガラスセラミックスであってもよい。
硫化物系無機固体電解質は、Li元素、P元素及びS元素を有するイオン伝導体を有することが好ましい。上記イオン伝導体は、通常、Liカチオンと、P及びSを含むアニオン構造とから構成される。中でも、上記イオン伝導体は、PS 3-構造をアニオン構造の主体(50モル%以上)として含有することが好ましい。中でも、PS 3-構造の割合は、イオン伝導体の全アニオン構造に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。なお、PS 3-構造の割合は、ラマン分光法、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、X線光電子分光(XPS)等により決定することができる。
また、硫化物系無機固体電解質は、上記イオン伝導体を主体として有することが好ましい。硫化物系無機固体電解質における上記イオン伝導体の割合は、65モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましい。また、硫化物系無機固体電解質は上記イオン伝導体のみから構成されていてもよく、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、LiIを挙げることができる。LiIの割合は、例えば5モル%以上であり、20モル%以上であることが好ましい。一方、LiIの割合は、例えば35モル%以下であり、30モル%以下であることが好ましい。特に、硫化物系無機固体電解質は、xLiI・(100-x)(yLiS・(1-y)P)(20≦x≦30、0.7≦y≦0.8)の組成を有することが好ましい。なお、yは、0.72以上であることが好ましく、0.74以上であることがより好ましい。また、yは、0.78以下であることが好ましく、0.76以下であることがより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性が高いことが好ましく、常温(25℃)におけるリチウムイオン伝導度は、例えば1×10-4S/cm以上であることが好ましく、1×10-3S/cm以上であることがより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、粉体状であることが好ましい。この場合、硫化物系無機固体電解質の平均粒径は、特に制限されず、例えば、0.01~100μmであることが好ましい。平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される一定量の固体電解質の粒径を測定して、平均値を算出することにより求めることができる。
本発明において、硫化物系無機固体電解質は、少なくともリチウムイオン伝導性を有していればよく、リチウム以外の周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有していてもよい。また、硫化物系無機固体電解質として、リチウムイオン伝導性を有するものに加えて、リチウム以外の周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有するものを併用することもできる。
<リチウム金属と反応しうる固体化合物>
リチウム金属と反応しうる固体化合物は、リチウム金属と化学反応を起こす化合物であって、常温(25℃)常圧(1atm)で固体状態をとる化合物である。
固体化合物のリチウム金属との反応は、他の化合物に変換可能な反応であれば特に制限されず、例えば、酸化還元反応、置換反応、脱離反応等が挙げられる。リチウム金属との反応は、固体化合物がリチウム金属と接触することで、自身が還元され、リチウム金属を酸化する酸化還元反応が好ましい。リチウム金属との反応は、リチウム金属(0価のリチウム)に対して特異的に起こる反応であることが好ましく、リチウムイオンに対しては反応しないことが電池性能を維持する点で望ましい。
リチウム金属との反応は、全固体二次電池の稼働(充放電)に関わらず生起してもよいが、少なくとも充電時に生起することが好ましい。反応が生起する条件は、特に制限されず、全固体二次電池の使用環境条件で生起すればよく、常温常圧で生起することが好ましい。
固体化合物とリチウム金属との反応により生成する他の化合物は、特に制限されないが、通常、内部短絡の発生要因とならない化合物又はデンドライトの成長を助長しない化合物等が挙げられる。例えば電子絶縁性(一義的に決定できないが、測定温度25℃での導電率が10-9S/cm以下)の化合物が挙げられる。例えば、酸化還元反応での反応生成物としては、酸化したリチウムイオンを自身(固体化合物)の(結晶)構造内に取り込んだ化合物が好ましい。
リチウム金属との反応及び他の化合物について、下記組成式で表される固体化合物を例に下記具体的に説明する。

組成式:Li(1+x+y)AlTi(2-x)Si(3-y)12
(ただし、x及びyはそれぞれ0を超え1.0未満である。)

上記固体化合物とリチウム金属とが接触すると、下記に示すように、リチウム金属は酸化され、リチウムイオンと電子とを発生する。一方、上記固体化合物(Ti元素)は、リチウム金属の酸化で生じた電子により還元され、固体化合物中のTi元素の価数が4価から3価に変化する。

リチウム金属(酸化):Li → Li + e
固体化合物(還元):Ti4+ + e → Ti3+

このとき、固体化合物1モルに対して、nmolのリチウム金属が反応するとすれば、下記反応式により、固体化合物中の(2-x)モルのTi元素のうちnモルのTi元素が4価から3価に還元されて、リチウムイオンが固体化合物の結晶構造中に取り込まれる。こうしてリチウムイオンを取り込んだ下記組成式に示す化合物が生成する。
この反応において、(2-x-n)モルのTi元素は還元されずに4価のままである。
上記組成式で表される固体化合物に対して、リチウム金属は最大で(2-x)モルが反応しうる。

Li(1+x+y)AlTi(2-x)Si(3-y)12 + nLi
→ Li(1+x+y+n)xAlTi(2-x)Si(3-y)12
固体化合物は、常温常圧で固体状態をとるものであればよく、上記反応を生起する化合物、特に酸化還元反応により生成するリチウムイオンを結晶構造中に取り込むことができる化合物が好ましい。
このような化合物としては、有機化合物、無機化合物等が挙げられ、上記酸化還元反応を生起してリチウムイオンを結晶構造中に取り込むことができる点で無機酸化物が好ましく、金属酸化物がより好ましい。
有機化合物としては、特に制限されず、例えば、オクタデシルブロミド等のハロゲン化アルキル等が挙げられる。
無機酸化物は、金属元素、半金属元素、非金属元素の酸化物が挙げられ、結晶構造が必ずしも酸化物の形態である必要はなく、例えばリン酸イオン等の陰イオンを有する結晶構造をとる固体化合物であっても酸化物の材料組成で表すことができる化合物(例えば後述する各組成式で表される化合物)を包含する。このような無機酸化物としては、特に制限されず、具体的には、例えば、ペロブスカイト型酸化物、スピネル酸化物、層状酸化物等が挙げられる。
無機酸化物としては、少なくとも1種の金属元素を含む酸化物(本発明において金属酸化物という。)が好ましく、価数変化を容易に起こしてリチウム金属との酸化還元反応しやすい点で、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む酸化物(金属酸化物)がより好ましく、Ti、Mn又はCoの金属元素を少なくとも1種を含む金属酸化物が更に好ましく、少なくともTiを含む金属酸化物が特に好ましい。無機酸化物及び金属酸化物を構成する上記金属元素以外の元素は、特に制限されず、金属元素、半金属元素、非金属元素等の各種元素が適宜に選択される。
固体化合物は、少なくともTiを含む金属酸化物として、Al、Ti、P及びSiの各元素を含む酸化物であることが好ましく、更にLiを含む酸化物であることがより好ましい。この酸化物は、酸化還元電位がリチウムイオンに近接するためリチウム金属との酸化還元反応が速やかに生起するうえ、例えばリン酸イオン(PO 3-)を有する結晶構造を維持しながらもリチウムイオンを取り込むことができる(結晶構造の安定化)。Al、Ti、P及びSiの各元素を含む酸化物としては、特に制限されず、後述する組成式で表される金属酸化物等が挙げられる。
上述の無機酸化物及び金属酸化物は、構成元素の一部が他の元素で置換されていてもよく、本発明において、無機酸化物及び金属酸化物には、それぞれ、構成元素の一部が他の元素で置換された酸化物を包含する。このような酸化物として、例えば、金属酸化物を構成するTiの一部がGe等で置換された酸化物が挙げられる。
固体化合物は、下記組成式で表される酸化物が好ましい。この酸化物は、リチウム金属との反応性が高く、リチウムデンドライトによる内部短絡の発生を効果的に防止することができる。更に、この化合物は、リチウムイオン伝導性をも有しており、硫化物系無機固体電解質に併用することによる固体電解質層のリチウムイオン伝導度の低減を抑えることができる。しかもリチウム金属との反応生成物もリチウムイオン伝導度を示し、硫化物系無機固体電解質により得られる高いリチウムイオン伝導度を、内部短絡の発生を抑制しながら、維持できる。

組成式:Li(1+x+y)AlTi(2-x)Si(3-y)12

上記組成式において、xは0を超え1.0未満であり、例えば、0.1~0.5をとることができる。yは0を超え1.0未満であり、例えば、0.1~0.3をとることができる。

上記組成式で表される酸化物は、Li置換NASICON(Na Super Ionic Conductor)型主結晶相を有しており、結晶構造を維持しつつリチウムイオンを取り込むことができる。この酸化物は、各元素の酸化物組成(材料組成)では、LiO-Al-SiO-P-TiOで表すことができる。
上記組成式で表される酸化物は、Tiの一部がGeで置換されていてもよく、下記組成式(G)で表される酸化物を包含する。下記組成式(G)においてGeで置換されるTi量は特に制限されず適宜に設定できる。

組成式(G):Li(1+x+y)Al(Ti、Ge)(2-x)Si(3-y)12
組成式(G)中のx及びyはそれぞれ0を超え1.0未満であり、上記組成式のx及びyと同義である。

上記組成式(G)で表される酸化物は、Li置換NASICON型主結晶相を有しており、結晶構造を維持しつつリチウムイオンを取り込むことができる。この酸化物は、各元素の酸化物組成(材料組成)では、LiO-Al-SiO-P-TiO-GeOで表すことができる。
固体化合物は、適宜に合成若しくは調製して用いてもよく、市販品を用いてもよい。上記各組成で表される酸化物は、例えば、商品名「LICGC」(登録商標、株式会社オハラ製)として市販されている。
固体化合物は、粉体状であることが好ましい。この場合、固体化合物の平均粒径は、特に制限されず、例えば、0.01~100μmであることが好ましい。平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される一定量の固体電解質の粒径を測定して、平均値を算出することにより求めることができる。
<その他の材料(化合物)>
固体電解質層は、硫化物系無機固体電解質及び固体化合物以外の化合物(その他の化合物)を含有していてもよい。その他の化合物としては、全固体二次電池の固体電解質層に用いられる化合物を特に制限されることなく挙げることができ、例えば、結着材が挙げられる。結着材としては、全固体二次電池に用いられる各種結着材が挙げられ、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素含有結着材、ブタジエンゴム等のゴム結着材等を挙げることができる。また、固体電解質層に生じる空隙を物理的に埋めるためにリチウムイオン伝導性を有するイオン液体等を本発明の作用効果を損なわない範囲で更に含有してもよいが、連続的な生産を行う点では液体成分を含有していないことが好ましい。
固体電解質層が含有する硫化物系無機固体電解質及び固体化合物が均一に分散していることが好ましい。
本発明の固体電解質層は、硫化物系無機固体電解質及び固体化合物を、それぞれ、1種含有していても、2種以上含有していてもよい。
固体電解質層に含まれる硫化物系無機固体電解質の含有量は、通常、硫化物系無機固体電解質及び固体化合物の合計体積に対して、0.1体積%以上であり、0.3体積%以上であることが好ましい。上限は、特に制限されず、例えば、99.9体積%以下であることが好ましく、99.5体積%以下であることがより好ましい。固体化合物の含有量は、特に制限されず、適宜に決定されるが、イオン伝導性の点で、硫化物系無機固体電解質及び固体化合物の合計体積に対して、0.1~50体積%であることが好ましく、0.3~47体積%であることがより好ましく、0.5~45体積%であることが更に好ましい。固体電解質層に含まれる硫化物系無機固体電解質及び固体化合物の合計の含有量は、質量基準では、例えば、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。合計の含有量の上限は、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましい。
固体電解質層の厚さは、特に制限されないが、例えば1000μm以下であり、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。また、厚さの下限は、例えば、1μm以上であり、5μm以上であることが好ましい。
本発明の固体電解質層は、上述のように、固体化合物を含有しているため、内部短絡の発生抑制効果を損なうことなく、薄層化することができる。これにより、全固体二次電池の体積を低減してエネルギー密度を高めることができる。このときの固体電解質層の厚さは、上述の範囲の厚さに関わらず、エネルギー密度等を考慮して適宜に設定でき、例えば、5~150μmであることが好ましく、7~100μmであることがより好ましく、10~50μmであることが更に好ましい。
なお、固体電解質層の厚さとは、固体電解質層の平均厚さをいう。
本発明の固体電解質層は、通常の方法、硫化物系無機固体電解質及び固体化合物、更には適宜にその他の化合物の混合物を加圧成形等する方法等により、作製することができる。
本発明の固体電解質層は、上記利点を有する連続的な製造方法を適用して作製することもでき、生産性の点で好ましい。例えば、硫化物系無機固体電解質及び固体化合物、更には適宜にその他の化合物を含有する組成物(好ましくはスラリー)を調製して、この組成物を基材に塗布乾燥することにより、長尺状の固体電解質層を、ロール トゥ ロール法等の連続的な製造方法で、作製することができる。このようなロール トゥ ロール法等では、ロールプレス法等の通常の方法により、塗布乾燥膜、固体電解質層等の加圧も可能である。組成物の塗布方法、乾燥方法(条件)、更に加圧方法(加圧条件)等は、適宜に設定することができる。
[全固体二次電池]
本発明の全固体二次電池は、上述の、本発明の固体電解質層を備えている。
この固体電解質層を備えた本発明の全固体二次電池は、充放電条件として、通常の充電条件はもちろん、ハイレート充放電条件を適用しても、リチウム金属のデンドライトの成長を阻害して、内部短絡の発生を効果的に抑制できる。更に、固体電解質層を例えば上記の厚さに薄層化して設けてエネルギー密度を向上させても、内部短絡の発生を効果的に抑制できる。そのうえ、製造方法として、電池性能の低下を招くことなく、工業的製造上の大きな利点を有する連続的な製造方法を適用できる。
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層、負極活物質層及び固体電解質層を備えている。具体的には、正極活物質層と、負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間に本発明の固体電解質層とを備えている。
この一例を示すと図1に示されるように、本発明の好ましいリチウムイオン全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4及び正極集電体5をこの順に有する。各層はそれぞれ接触しており、隣接した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球をモデル的に採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
<正極活物質層>
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また、正極活物質層は、正極活物質の他に、導電助剤、結着材及び無機固体電解質の少なくとも一つを含有していてもよい。
正極活物質としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができ、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質を挙げることができる。酸化物活物質としては、具体的には、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3等の岩塩層状型活物質、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCuPO等のオリビン型活物質等を挙げることができる。また、LiFeSiO、LiMnSiOを正極活物質として用いてもよい。
正極活物質は粒子状であることが好ましく、平均粒径は特に制限されず、例えば、0.1~50μmとすることができる。平均粒径の測定方法は上述の硫化物系無機固体電解質と同様である。
正極活物質は、1種を含有していても2種以上を含有していてもよい。
正極活物質の、正極活物質層中における含有量は、特に制限されず、固形分100体積%において、10~97体積%が好ましく、20~95体積%がより好ましく、30~90体積%が更に好ましく、40~85体積%が特に好ましい。
正極活物質の表面は、コート層で被覆されていてもよい。正極活物質と硫化物無機固体電解質との反応を抑制できるからである。コート層の材料としては、例えば、LiNbO、LiPO、LiPON等のリチウムイオン伝導性酸化物を挙げることができる。コート層の平均厚さは、例えば1~20nmの範囲内であることが好ましく、1~10nmの範囲内であることがより好ましい。
<負極活物質層>
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また、負極活物質層は、負極活物質の他に、導電助剤、結着材及び無機固体電解質の少なくとも一つを含有していてもよい。
負極活物質としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができ、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。負極活物質としては、例えば、金属活物質及びカーボン活物質を挙げることができる。
金属活物質としては、例えばIn、Al、Si、Sn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えば、天然黒鉛、高配向性グラファイト(HOPG)等の人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。
負極活物質は粒子状であることが好ましく、平均粒径は特に制限されず、例えば、0.1~50μmとすることができる。平均粒径の測定方法は上述の硫化物系無機固体電解質と同様である。
負極活物質は、1種を含有していても2種以上を含有していてもよい。
負極活物質の、負極活物質層中における含有量は、特に制限されず、固形分100体積%において、10~97体積%が好ましく、20~95体積%がより好ましく、30~90体積%が更に好ましく、40~85体積%が特に好ましい。
正極活物質層及び負極活物質層が含有してもよい導電助剤としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができ、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、VGCF、グラファイト等の炭素材料を挙げることができる。結着材としては、硫化物系無機固体電解質で説明したものが挙げられる。無機固体電解質としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができ、例えば、上述の硫化物系無機固体電解質、酸化物固体電解質を挙げることができる。また、正極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば0.1~1000μmの範囲内であることが好ましい。
導電助剤、結着材及び固体電解質は、それぞれ、1種含有していても2種以上を含有していてもよく、その含有量は適宜に決定される。
正極活物質層及び負極活物質層が含有してもよい結着材については、上述した内容と同様である。また、無機固体電解質は、上述の硫化物系無機固体電解質でもよく、リチウム以外の周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有する無機固体電解質含有組成物でもよく、全固体二次電池に用いられる他の無機固体電解質でもよい。
正極活物質層及び負極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば0.1~1000μmの範囲内であることが好ましい。
<固体電解質層>
全固体二次電池が備える固体電解質層は、本発明の固体電解質層であり、固体化合物を含有している。なお、固体電解質層の詳細は上述した通りである。ただし、固体電解質層中の固体化合物は、全固体二次電池の使用(充放電)によりリチウム金属と反応して、使用前よりも含有量が減少している。固体電解質層中に固体化合物が存在しているか否かは、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いた組成分析によって、確認できる。
<集電体>
正極活物質層の集電を行う正極集電体の材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。また、負極活物質層の集電を行う負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。
<その他の構成>
全固体二次電池について、上記構成以外の構成は、通常の構成を特に制限されることなく適用することができる。例えば、一般的な電池ケースを設けることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製若しくはアルミニウム製の電池ケース等を挙げることができる。
全固体二次電池は、充電時の電流密度を制御する通常の充電制御部を有していてもよい。
全固体二次電池は、拘束部材により、厚さ方向の拘束圧が付与されていてもよい。拘束部材の種類は特に限定されるものではなく、一般的な拘束部材を用いることができる。拘束圧(面圧)は、特に限定されるものではないが、例えば0.1MPa以上であり、1MPa以上であることが好ましい。拘束圧を大きくすることで、活物質粒子と電解質粒子との接触等、粒子同士の接触を維持しやすくなる。一方、拘束圧(面圧)は、例えば400MPa以下であり、300MPa以下であることが好ましい。拘束圧が大きすぎると、拘束部材に高い剛性が求められ、拘束部材が大型化する可能性があるからである。
全固体二次電池は、上述の、正極活物質層、負極活物質層及び固体電解質層を有するものであれば特に限定されるものではない。また、全固体二次電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型及び角型等を挙げることができる。
更に、上記の全固体二次電池は、全固体二次電池の製造工程において負極活物質層を設けているが、本発明の全固体二次電池は、負極活物質層を製造時に設けず、その後の充電により負極活物質としてのリチウム金属を析出させて形成する態様も包含する。また、負極活物質層を、リチウム金属の粉末を堆積又は成形してなる層、リチウム箔及びリチウム蒸着膜等のリチウム金属層として設けることもできる。
本発明の全固体二次電池は、通常の方法により、製造することができる。例えば、後述する実施例に示すように、正極活物質層、負極活物質層及び固体電解質層をそれぞれ作製した後に積層して、製造できる。各層は、本発明の固体電解質層の製造方法と同様にして、作製できる。
本発明の全固体二次電池は、上記利点を有する連続的な製造方法を適用して、製造することもでき、生産性の点で好ましい。例えば、各層を形成可能な組成物(好ましくはスラリー)を、集電体、又はすでに形成した層の表面上に塗布乾燥することにより、長尺状のシート若しくは積層体として、ロール トゥ ロール法等の連続的な製造方法で、製造することができる。このようなロール トゥ ロール法等では、ロールプレス法等の通常の方法により、塗布乾燥膜、積層体等の加圧も可能である。
<初期化>
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は特に制限されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を解放することにより、行うことができる。
[全固体二次電池の用途]
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に制限はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源などが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
以下に、実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。本発明において「室温」とは25℃を意味する。
[実施例1]
以下のようにして、図1に示す層構成を有する全固体二次電池を製造した。
(正極活物質層の作製)
正極活物質としてニッケルコバルトマンガン酸リチウム:LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)と、アルジロダイト型硫化物系無機固体電解質:LiPSCl(粒径1μm)と、導電助剤としてVGCF(昭和電工社製)と、結着材(バインダー)としてブタジエンゴムと、分散媒としてメシチレンとを用いて、固形分における活物質比率が50体積%のスラリーを調製した。スラリー中の含有率は、固形分100体積%において、硫化物系無機固体電解質が40体積%であり、導電助剤が5体積%であり、結着材が5体積%であり、固形分濃度は60質量%であった。
次いで、調製したスラリーを、容量が1.7mAh/cmとなるように、ステンレス鋼(SUS)箔上にアプリケーターを用いて塗工し、70℃で4時間乾燥して、正極シートを作製した。
(負極活物質層の作製)
負極活物質として人造黒鉛(粒径20μm)と、アルジロダイト型硫化物系無機固体電解質:LiPSCl(粒径1μm)と、結着材(バインダー)としてブタジエンゴムと、分散媒としてメシチレンとを用いて、固形分における活物質比率が50体積%のスラリーを調製した。スラリー中の含有率は、固形分100体積%において、硫化物系無機固体電解質が45体積%であり、結着材が5体積%であり、固形分濃度は60質量%であった。
次いで、調製したスラリーを、2.0mAh/cmとなるように、SUS箔上にアプリケーターを用いて塗工し、70℃で4時間乾燥して、負極シートを作製した。
(固体電解質層の作製)
アルジロダイト型硫化物系無機固体電解質:LiPSCl(粒径1μm)と、Li置換NASICON型固体化合物:LICGC(登録商標)PW-01(製品名、オハラ社製)と、結着材(バインダー)としてブタジエンゴムと、分散媒としてメシチレンとを用いて、固形分濃度50質量%のスラリーを調製した。硫化物系無機固体電解質と固体化合物との体積比率は80:20(硫化物系無機固体電解質:固体化合物)とした。スラリー中の結着材の含有率は固形分100体積%において5体積%であった。
用いたLi置換NASICON型固体化合物は下記組成式で表される。
組成式:Li(1+x+y)AlTi(2-x)Si(3-y)12
(x及びyはそれぞれ0を超え1.0未満である。)

次いで、調製したスラリーをSUS箔上に塗工し、70℃で4時間乾燥して、固体電解質層シートを作製した。
(全固体二次電池の製造)
作製した負極シート及び固体電解質シートをそれぞれ2.5cm角にカットして各シート片を得た。負極シート片の負極活物質層上に固体電解質シート片の固体電解質層を重ね合わせて、冷間等方圧プレス(CIP)を用いて、392MPaでプレスし、負極シート片及び固体電解質シート片の接合体(積層体)を得た。この接合体における、固体電解質層の厚さは20μmであり、負極活物質層の厚さは70μmであった。
次いで、作製した正極シートを2cm角にカットし、CIPを用いて392MPaで正極シートをプレスして、正極シート片を得た。この正極シート片の正極活物質層の厚さは70μmであった。
次いで、上記接合体の両面のSUS箔を剥し、正極シート片のSUS箔を剥した。その後、接合体の固体電解質層の表面に正極シート片の正極活物質層を重ね、正極及び負極の集電体としてSUS箔を重ねて、タブ付けを行った。これをアルミニウムラミネートフィルムでラミネートして、シート電池を得た。
次いで、得られたシート電池を、SUS製の拘束治具を用いて200MPaで積層方向に拘束し、0.1Cにて4.2Vまで充電した後に3Vまで放電して、初期化(化成処理)を完了した。
こうして、シート状の全固体二次電池を製造した。この全固体二次電池は25℃における比容量が150mAh/g-NCM523であった。
[比較例1]
(比較用固体電解質シートの作製)
実施例1の固体電解質層の作製において、LICGC(登録商標)を用いず、硫化物系無機固体電解質と固体化合物との体積比率を100:0(硫化物系無機固体電解質:固体化合物)としたこと以外は、実施例1の固体電解質層の作製と同様にして、比較用固体電解質シートを作製した。固体電解質層を形成するために調整した比較用スラリーにおける固形分濃度及び結着材の含有量は実施例1で調製したスラリーと同じである。
(比較用の全固体二次電池の製造)
実施例1の全固体二次電池の製造において、実施例1で作製した負極シート片の負極活物質層上に、2.5cm角にカットした比較用固体電解質シートの固体電解質層を重ね合わせたこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造と同様にして、負極シート片及び比較用固体電解質シート片の比較用接合体を得た。この比較用接合体における、固体電解質層の厚さは20μmであり、負極活物質層の厚さは70μmであった。
次いで、得られた比較用接合体を用いたこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造と同様にして、シート状の比較用全固体二次電池を製造した。
比較用全固体二次電池は25℃における比容量が150mAh/g-NCM523であった。
[充電レート試験]
製造した実施例1の全固体二次電池及び比較例1の比較用全固体二次電池について、充放電評価装置TOSCAT-3000(商品名、東洋システム社製)を用いて、充電レート試験を行って、内部短絡の発生抑制効果を評価した。
すなわち、各全固体二次電池を、それぞれ、60℃の環境下で、0.1Cから6.0Cまで充電レート試験を行った(CC4.2V、CV0.01Cカット)。
具体的には、下記のようにして、0.1C充放電工程から6.0C充放電工程を順に行って、充放電曲線を得た。
(1)0.1C充放電工程
各全固体二次電池について、4.2Vまで0.1CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで0.1CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(2)0.2C充放電工程
0.1C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで0.2CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで0.2CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(3)0.5C充放電工程
0.2C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで0.5CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで0.5CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(4)1.0C充放電工程
0.5C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで1.0CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで1.0CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(5)1.5C充放電工程
1.0C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで1.5CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで1.5CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(6)2.0C充放電工程
1.5C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで2.0CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで2.0CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(7)2.5C充放電工程
2.0C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで2.5CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで2.5CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(8)3.0C充放電工程
2.5C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで3.0CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで3.0CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(9)3.5C充放電工程
3.0C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで3.5CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで3.5CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(10)4.0C充放電工程
3.5C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで4.0CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで4.0CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(11)4.5C充放電工程
4.0C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで4.5CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで4.5CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(12)5.0C充放電工程
4.5C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで5.0CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで5.0CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(13)5.5C充放電工程
5.0C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで5.5CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで5.5CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
(14)6.0C充放電工程
5.5C充放電工程実施後の各全固体二次電池について、4.2Vまで6.0CでCC充電し、0.01CカットでCV充電した。30分休止後に、更に3Vまで6.0CでCC放電し、0.01CカットでCV放電して、30分休止した。
上述のようにして得た充電レート結果を示す充放電曲線を図2(実施例1)及び図3(比較例1)に示す。
ただし、図2には、0.1C、1.0C、2.0C、4.0C及び6.0Cでの各充放電工程における充電レート結果を示す。図3には、0.1C、1.0C、1.5C、2.0C、4.0C及び6.0Cでの各充放電工程における充電レート結果を示す。図2及び図3の横軸は容量Q(mAh)を示す。
図3に示す結果から、比較例1の比較用全固体二次電池は、1.0Cまでの充放電条件では内部短絡は発生しなかったものの、1.5C以上のハイレート充放電条件においては内部短絡が発生したことが分かる。これに対して、図2に示すように、実施例1の全固体二次電池は、20μmに薄層化した固体電解質層を備えていても、また6.0Cというハイレート充放電条件においても、内部短絡の発生を効果的に抑制できる。これは、充電により生成したリチウム金属がからなる固体電解質層に含有させた固体化合物と酸化還元反応することで、デンドライトの成長を抑制して正極活物質層への到達を効果的に防止できたためと考えられる。
[実施例2]
実施例1の全固体二次電池の製造方法において、各シートの作製、及び各シートの積層をロール トゥ ロール法で行ったこと以外は、実施例1の全固体二次電池の製造方法と同様にして、実施例2の全固体二次電池を製造した。製造した全固体二次電池について、実施例1と同様にして、充電レート試験を行ったところ、実施例1と同様の結果を得ることができ、連続的な製造方法にも十分に適用できることが分かる。
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池

Claims (3)

  1. リチウムイオン伝導性を有する硫化物系無機固体電解質と、リチウム金属と反応しうる固体化合物とを含有し、前記固体化合物が下記組成式で表される、全固体二次電池用固体電解質層。
    組成式:Li (1+x+y) Al Ti (2-x) Si (3-y) 12
    ただし、x及びyはそれぞれ0を超え1.0未満である。
  2. 前記組成式において、Tiの一部がGeで置換されている、請求項1に記載の固体二次電池用固体電解質層。
  3. 請求項1又は2に記載の固体二次電池用固体電解質層を備えた全固体二次電池。
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