JP5660750B2 - 拡散層の形成方法及び不純物拡散方法 - Google Patents

拡散層の形成方法及び不純物拡散方法 Download PDF

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Description

本発明は、拡散剤を塗布して拡散層を形成する拡散層の形成方法、及びそのような拡散層から不純物拡散成分を拡散させる不純物拡散方法に関する。
近年、半導体、特に太陽電池の製造において、インクジェット方式を用いてドーパントと呼ばれる不純物拡散成分を含む層(拡散層)を形成する方法が用いられるようになった。この方法は、従来行われてきたリソグラフィー法等と比較して複雑な工程を必要とせず、容易にパターンを形成することができるため、製造コストの削減に貢献するものと期待されている。
このように、インクジェット方式を使用することにより、パターンを形成する作業が容易になるが、従来のエタノール又はイソプロピルアルコールを主体とする拡散剤では乾燥性が高すぎてヘッド部で目詰まりを起こしてしまう等、吐出安定性に問題があった。そこで、従来のエタノール又はイソプロピルアルコールを主体とする拡散剤に、20〜40体積%のグリセリンと20〜40体積%のジメチルホルムアミド(DMF)とをそれぞれ添加することによって目詰まりを防ぐ等、拡散剤の吐出安定性をより向上させる方法が提案されている(特許文献1)。
特開2005−038997号公報
しかしながら、拡散剤を塗布する基板の表面が当該拡散剤を染み込まない材質であり、当該拡散剤中にグリセリンやジメチルホルムアミド等の高沸点溶剤を多く含む場合には、塗布後の塗布液が乾きにくく、塗布後のパターンが滲むことや広がることがあり、塗布したパターンが時間の経過と共に不鮮明になってしまうという問題が新たに見つかった。
このような事情にかんがみ、本発明は、インクジェット方式を用いて塗布後のパターンが滲む又は広がることなく基板の表面に選択的に拡散層を形成する拡散層の形成方法、及びそのような拡散層から不純物拡散成分を拡散させる不純物拡散方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、基板上に撥液性層を形成することにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、基板上に撥液性層を形成する工程を含む、インクジェット方式を用いて選択的にケイ素含有被覆形成用拡散剤を塗布して拡散層を形成する拡散層の形成方法、及びそのような拡散層から不純物拡散成分を拡散させる不純物拡散方法を提供する。
本発明によれば、ヘッド部の目詰まりを防止するための高沸点溶剤を含むケイ素含有被覆形成用拡散剤を、当該拡散剤が染み込まない材質の表面に塗布しても、塗布されたパターンがにじみ等の発生を防止することができる。これにより、当初企図したパターンに忠実なパターンを基板上に形成することができる。
本発明の実施形態について以下に記載するが、これに限定するものではない。
実施形態では、基板上に撥液性層を形成する工程を含む、インクジェット方式を用いて選択的にケイ素含有被覆形成用拡散剤を塗布して拡散層を形成する際の前処理方法を提供するが、上記の基板、撥液性層及びケイ素含有被覆形成用拡散剤とは、次のとおりである。
<<基板>>
基板としては、拡散層を形成できるものであればよく、特に限定されないが、従来公知のシリコン基板が挙げられる。
<<撥液性層>>
撥液性層は、基板の表面の特性を、インクジェット印刷により塗布される拡散剤をはじくように改質する。撥液性層を基板の表面に形成することによって、インクジェット印刷により形成されたパターンの滲みや広がりを防止することができる。
撥液性層を形成するための成分としては、基板上に形成した際に撥液性を示すことができるものであればいかなるものを用いてもよく、特に限定されないが、該撥液性層のケイ素含有被覆形成用拡散剤に対する接触角を高めるものであるものが好ましい。このような成分として、有機シラザン化合物、加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物等が挙げられる。なかでも、有機シラザン化合物又は加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物が好ましい。
<有機シラザン化合物>
有機シラザン化合物は、ポリシロキサンの窒素類似体であり、Si−N−Si結合を持つものがすべて含まれる。例えば、代表的な例として、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、CF(CFCHCHSi(NH)3/2、NH[Si(CHCHCl]、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、ポリチタノシラザン、ポリジシラシクロブタシラザン、ポリアルコキシシリルアルキレンジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オルガノテトラクロロシラザン、ヒドリドチオシラザンなどが挙げられる。中でも、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン又はトリメチルジシラザンが好ましい。これら有機シラザン化合物は混合して用いてもよく、予め酸、アルカリなどで部分的に加水分解縮合物を形成してから使用してもよい。また、これら有機シラザン化合物は、アクリル基、エポキシ基、その他の修飾基を持つもので共重合してもよい。これら有機シラザン化合物を部分的にオルガノクロロシラン、ビス(メチルジクロルシリル)エタン等と反応させてもよい。また、これら有機シラザン化合物の表面エネルギーを低くして撥液性を高くするために、これら化合物を部分的にフッ素などで置換した有機含フッ素シラザン化合物などを用いてもよい。これらシラザン化合物中に少量のSiO結合を含んでもよい。また、これら有機シラザン化合物の一部をアンモニアで処理してもよい。
<加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物を含有する液体>
加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物(以下、「金属酸化物膜形成材料」ともいう。)を溶剤に溶解した、加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物を含有する液体を基板表面に塗布すると、または塗布後さらに水、好ましくは脱イオン水を塗布すると、低温(たとえば室温程度)であっても、金属化合物が大気中の水分や塗布した水と反応し、加水分解により水酸基を生成する。そして、生成した水酸基同士が脱水縮合し、複数の金属化合物分子同士が結合して、膜密度の高い緻密な金属酸化物膜が形成される。このような緻密な膜は、金属酸化物を含有していることから、撥液性に優れている。
{加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物}
このような金属化合物としては、たとえば、加水分解により水酸基を生成しうる官能基を有する金属化合物を使用することができる。官能基は金属原子に直接結合していることが好ましい。官能基の数は、金属原子1つに対して2以上であることが好ましく、2〜4であることが好ましく、4であることが特に好ましい。2以上の官能基を有することにより、加水分解によって生成された水酸基同士が脱水縮合し、複数の金属化合物分子同士が連続的に結合して強固な被覆膜が形成される。
加水分解により水酸基を生成しうる官能基としては、イソシアネート基、アルコキシ基、カルボニル基等が挙げられる。また、ハロゲン原子も同様の機能を有するので、ハロゲン原子も官能基に含まれる。アルコキシ基としては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐状の低級アルコキシ基、たとえばメトキシ基(−O−Me)、エトキシ基(−O−Et)、n−プロポキシ基(−O−nPr)、イソプロポキシ基(−O−iPr)、n−ブトキシ基(−O−nBu)等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも塩素原子が好ましい。これらの中でも、イソシアネート基、ハロゲン原子(特に塩素原子)が、高活性で、加熱処理を特に行わずとも簡便に被覆膜を形成することができるため好ましい。
金属化合物を構成する金属には、通常の金属の他に、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、セレン、テルル等も含まれる。金属化合物を構成する金属として、例えばチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、ケイ素、ホウ素、ランタニド、イットリウム、バリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、タンタル等が挙げられ、チタン、ケイ素が好ましく、特にケイ素が好ましい。また、金属化合物中の金属原子の数は1であっても2以上であってもよく、1が好ましい。
金属化合物は、上記の加水分解により水酸基を生成しうる官能基以外の原子や有機基を有していてもよい。このような原子としては、たとえば水素原子が挙げられる。有機基としては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜5の低級アルキル基)等が挙げられ、エチル基、メチル基が好ましい。
金属化合物として、イソシアネート基を有する金属化合物としては一般式「M(NCO)」で表される2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられる(Mは金属原子であり、ここでのXは2〜4の整数である)。具体的には、テトライソシアネートシラン(Si(NCO))、チタンテトライソシアネート(Ti(NCO))、ジルコニウムテトライソシアネート(Zr(NCO))、アルミニウムトリイソシアネート(Al(NCO))等が挙げられる。
ハロゲン原子を有する金属化合物としては、一般式「M(X)」(Mは金属原子であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる一種であり、xは2〜4の整数である)で表される2個以上(好ましくは2〜4)のハロゲン原子を有するハロゲン化金属化合物が挙げられる。ハロゲン原子を有する化合物は金属錯体であってもよい。具体的には、テトラクロロチタン(TiCl)、テトラクロロシラン(SiCl)等が挙げられる。また、金属錯体として、塩化コバルト(CoCl)等も挙げられる。これらの中でも、特に高活性で、加熱処理を特に行わずとも簡便に、撥液性の高い金属酸化物膜を形成することができることから、イソシアネート基及び/又はハロゲン原子を2個以上(好ましくは2〜4個)有するケイ素化合物が好ましい。該ケイ素化合物の1分子中のケイ素の数は1であっても2以上であってもよく、好ましくは1である。中でも、以下の一般式(w−1)で表される化合物が好ましい。
SiW・・・(w−1)
[式中、yは2〜4の整数、Wはイソシアネート基(NCO基)またはハロゲン原子を示し、複数のWは相互に同じであっても異なっていてもよい。]
式(w−1)中、yは4であることが好ましい。Wはイソシアネート基またはハロゲン原子であり、ハロゲン原子については上記と同様であり、塩素原子であることが好ましい。これらの中でも、イソシアネート基が好ましい。金属化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
{溶剤}
加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物を含有する液体は、上記の金属酸化物膜形成材料を溶剤に溶解したものである。溶剤としては、金属化合物と反応する官能基を有さず、且つ使用する金属化合物を溶解できる溶剤であればよく、従来公知の有機溶剤が用いられる。金属化合物と反応する官能基としては、ビニル基等の炭素−炭素二重結合を有する基、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。このため、これらの官能基を有さない溶剤であれば、金属化合物は安定して存在できる。
具体的には、上記溶剤としては、脂肪族化合物であることが好ましい。ここで、本明細書における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものをいう。すなわち、「脂肪族化合物」は、芳香族性を持たない化合物であることを意味する。脂肪族化合物としては、その構造中に環を有さない鎖式化合物であってもよく、またその構造中に環を有する環式化合物であってもよいが、好ましくは環式化合物である。環式化合物は炭化水素化合物であることが好ましく、飽和の炭化水素化合物であることがより好ましい。このような環式化合物としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカン、これらの環にアルキル基等の置換基が結合した化合物等が挙げられる。
また、上記溶剤としては、環境に対する影響の小さい溶剤を選択することが好ましく、例えば、出発原料が天然物質である溶剤が好ましく用いられる。出発原料が天然物質である溶剤としては、植物の精油成分から得られるテルペン系溶剤等、例えば、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン等の単環式モノテルペンや、ピナン等の二環式モノテルペン等が挙げられる。
上記溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して併用してもよい。また、別の溶剤を含有してもよい。このような溶剤としては、例えばn−へキサン、n−へプタン、トルエン、ベンゼン、クメン等が挙げられる。これらのうち、撤密な膜が形成できる点から、n−へプタン(沸点約98℃)、クメン(沸点約152℃)が好ましい。このような別の溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して併用してもよい。
溶剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは、金属酸化物膜形成用組成物中のモル濃度(金属化合物と、必要に応じて用いられる後述の有機化合物との合計の濃度)が1〜200mM程度、好ましくは50〜150mM、さらに好ましくは50〜100mMとなるような範囲で用いられる。モル濃度がこの範囲内であれば、より均一な金属酸化物膜を形成できるため好ましい。
{任意成分}
上記の加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物を含有する液体は、金属化合物及び溶剤の他に、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば有機化合物が挙げられる。有機化合物を含有する金属酸化物膜形成材料によれば、金属酸化物と有機化合物との複合化膜が形成できる。有機化合物は、上記溶剤に溶解するものであれば、特に限定されない。ここでいう溶解とは、有機化合物単独で溶解する場合に限らず、4−フェニルアゾ安息香酸のように、金属アルコキシド類との複合化によりクロロホルム等の溶剤に溶解する場合も含まれる。なお、有機化合物の分子量については特に制限はない。
上記有機化合物としては、膜強度の観点から、複数の反応基(好ましくは水酸基又はカルボキシ基)を有し、また室温下(25℃)において固体の性状であるものが好ましい。このような有機化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸等の水酸基やカルボキシ基を有する高分子化合物;デンプン、グリコゲン、コロミン酸等の多糖類;グルコース、マンノース等の二糖類、単糖類;末端に水酸基やカルボキシ基を持つポルフィリン化合物やデンドリマー等が好ましく用いられる。
また、上記有機化合物として、カチオン性高分子化合物も好ましく用いられる。金属アルコキシド類や金属酸化物は、カチオン性高分子化合物のカチオンに対してアニオン的に相互作用するため、強固な結合を実現することができる。カチオン性高分子化合物の具体例としては、PDDA(ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサン、末端にアミノ基を持つデンドリマー等が挙げられる。
これらの有機化合物は、機械的強度の高い薄膜を形成させるための構造成分として機能する。また、得られる薄膜に機能を付与するための機能性部位として、あるいは成膜後に取り除いて、その分子形状に応じた空孔を薄膜中に形成させるための成分としての役割を果たすこともできる。有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して併用してもよい。有機化合物の含有量は、金属化合物100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部が特に好ましい。
<<基板上に撥液性層を形成する工程>>
次に、上記の化合物を用いて基板上に撥液性層を形成する工程について、使用する化合物ごとに記載する。
<有機シラザン化合物を用いる場合>
基板上に撥液性層を形成する方法としては、基板を有機シラザン化合物の液体又は雰囲気に暴露させる方法が好ましい。基板を有機シラザン化合物の液体に暴露する方法としては、浸漬法、噴霧法、ローラーコート法、フローコート法、ラビング法等が挙げられる。また、基板を有機シラザン化合物雰囲気に暴露する方法としては、有機シラザン化合物を蒸着、プラズマ重合などにより乾式でコーティングする方法、有機シラザン化合物を蒸発させて吸着させる方法が挙げられる。基板を有機シラザン化合物の液体に暴露した場合には、必要に応じ基板を風乾、あるいは50〜200℃の温度で1〜120分間加熱処理することにより、基板上に撥液性層を形成することができる。塗布方法、乾燥及び熱処理時間などについては所要に応じて適宣選択することができる。こうして形成された撥液性層の厚さは、1〜10nmが好ましい。
<加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物を用いる場合>
基板上に撥液性層を形成する方法としては、基板を加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物の液体に暴露させる方法が好ましい。このような方法として、浸漬法、噴霧法、ローラーコート法、フローコート法、ラビング法等が挙げられる。次に上記の金属化合物の液体に暴露した基板の表面を有機溶剤で洗浄して乾燥する。すなわち、加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物を含有する液体に暴露(塗布)した後、洗浄を行うことにより余分な金属化合物が除去される。そして、その後乾燥が完了するまでの間に、空気中の水分により金属化合物が徐々に加水分解して水酸基を生じ、この水酸基が脱水縮合することにより、基板の表面に金属酸化物膜が形成される。金属酸化物膜形成材料が有機物を含む場合には、有機物と金属酸化物との複合薄膜からなる金属酸化物膜が形成される。
基板を加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物を含有する液体に暴露する際の温度(塗布温度)は、用いられる金属化合物の活性により異なり、一概に限定することはできないが、一般的には0〜100℃の範囲内である。また、基板上に金属酸化物膜形成材料を塗布してから乾燥するまで(塗布、洗浄、必要に応じて行われる吸着等の処理を含む)の時間、即ち、加水分解前の金属酸化物膜形成材料と基板との接触時間と、その間の温度(接触温度)は、用いられる金属化合物の活性により異なり、一概に限定することはできないが、一般的には数秒から数時間、温度は上記塗布温度と同様の範囲内である。
洗浄に用いる有機溶剤としては、金属酸化物膜形成材料の溶剤として例示したものと同様の溶剤が好ましく用いられる。洗浄は、例えば有機溶剤をスプレー法等によって、金属酸化物膜形成材料からなる塗膜の表面に供給した後、余分な有機溶剤を減圧下で吸引して行う方法や、有機溶剤に浸漬洗浄する方法、スプレー洗浄する方法、蒸気洗浄する方法等が好ましく採用される。洗浄時の温度条件は、金属酸化物膜形成材料を塗布する際の温度と同様である。
金属酸化物膜の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは0.5〜50nmであり、さらに好ましくは1〜30nmである。金属酸化物膜の膜厚は、金属酸化物膜形成材料の塗布、洗浄、及び加水処理を繰り返して行うことにより調整できる。すなわち、金属酸化物膜形成材料を塗布して塗膜を形成した後、洗浄して必要に応じ放置し、そして加水分解処理を行う一連の操作を繰り返して行うことにより、所望の厚さを有する均一な薄膜からなる金属酸化物膜を形成できる。例えば、数nm〜数十nm、条件によっては数百nmの膜厚の金属酸化物膜を精度良く形成できる。
<<拡散層の形成>>
このように、本実施形態に係る前処理を行った後、前処理後の基板にインクジェット方式を用いて選択的にケイ素含有被覆形成用拡散剤を塗布して、拡散層を形成することができる。以下に、使用する拡散剤及び拡散層を形成する工程について記載する。
<ケイ素含有被覆形成用拡散剤>
ケイ素含有被覆形成用拡散剤は、半導体基板上へのケイ素系被覆形成用化合物と、一般にドーパントと呼ばれる不純物拡散成分とを含む。各成分について以下に記載する。
{ケイ素系被覆形成用化合物}
ケイ素系被覆形成用化合物は、例えば層間絶縁膜を形成するための、半導体基板上へのケイ素系被覆形成用の従来公知の化合物でよく、特に限定されない。ケイ素系被覆形成用化合物を用いることにより、ケイ素含有被覆形成用拡散剤が耐熱性を有することができる。このようなケイ素系被覆形成用化合物としては、無機又は有機ケイ素含有化合物が挙げられる。
[無機ケイ素含有化合物]
無機ケイ素含有化合物としては、半導体の製造において従来公知の無機充填物として用いられる無機ケイ素含有化合物が挙げられる。例えば、一般に骨格として(−O−Si−O−)を有する化合物が好ましい。
[有機ケイ素含有化合物]
有機ケイ素含有化合物としては従来公知のSOG(スピンオングラス)法によるシリカ系被膜形成用の化合物を用いることができるが、シロキサンポリマーが好ましい。このようなシロキサンポリマーとして、例えば、下記一般式(I)で表されるアルコキシシランから選択される少なくとも1種を加水分解反応させて得られる反応生成物が用いられる。
4−nSi(OR’)・・・(I)
式中、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基を表し、R’はアルキル基またはフェニル基を表し、nは2〜4の整数を表す。Siに複数のRが結合している場合、該複数のRは同じであっても異なっていてもよい。またSiに結合している複数の(OR’)基は同じであっても異なっていてもよい。
Rとしてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。Rのうち少なくとも1つはアルキル基またはフェニル基である。
R’としてのアルキル基は好ましくは炭素数1〜5の直鎖状または分岐状のアルキル基である。R’としてのアルキル基は、特に加水分解速度の点から炭素数1または2が好ましい。
上記シラン化合物を加水分解反応させて得られる反応生成物には、低分子量の加水分解物、および加水分解反応と同時に分子間で脱水縮合反応を生じて生成された縮合物(シロキサンオリゴマー)を含んでよい。本明細書におけるシロキサンポリマーとは、かかる加水分解物または縮合物を含む場合、これらをも含む全体を指す。
シロキサンポリマーの質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準、以下同様、)は、1000〜3000が好ましい。より好ましい範囲は1200〜2700であり、さらに好ましい範囲は1500〜2000である。
上記一般式(I)におけるnが4の場合のシラン化合物(i)は下記一般式(II)で表される。
Si(OR(OR(OR(OR・・・(II)
式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基またはフェニル基を表す。a、b、c及びdは、0≦a≦4、0≦b≦4、0≦c≦4、0≦d≦4であって、かつa+b+c+d=4の条件を満たす整数である。
一般式(I)におけるnが3の場合のシラン化合物(ii)は下記一般式(III)で表される。
Si(OR(OR(OR・・・(III)
式中、Rは上記Rと同じ水素原子、アルキル基、またはフェニル基を表す。R、R、及びRは、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基またはフェニル基を表す。e、f、及びgは、0≦e≦3、0≦f≦3、0≦g≦3であって、かつe+f+g=3の条件を満たす整数である。
一般式(I)におけるnが2の場合のシラン化合物(iii)は下記一般式(IV)で表される。
10Si(OR11(OR12・・・(IV)
式中、R及びR10は上記Rと同じ水素原子、アルキル基、またはフェニル基を表す。ただし、R及びR10のうちの少なくとも1つはアルキル基またはフェニル基を表す。R11、及びR12は、それぞれ独立に上記R’と同じアルキル基またはフェニル基を表す。h及びiは、0≦h≦2、0≦i≦2であって、かつh+i=2の条件を満たす整数である。
シラン化合物(i)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエトキシモノプロポキシモノブトキシシランなどのテトラアルコキシシランが挙げられ、中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
シラン化合物(ii)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリペンチルオキシシラン、エチルトリフェニルオキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリペンチルオキシシラン、プロピルトリフェニルオキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリペンチルオキシシラン、ブチルトリフェニルオキシシラン、メチルモノメトキシジエトキシシラン、エチルモノメトキシジエトキシシラン、プロピルモノメトキシジエトキシシラン、ブチルモノメトキシジエトキシシラン、メチルモノメトキシジプロポキシシラン、メチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、メチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、エチルモノメトキシジプロポキシシラン、エチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、エチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、プロピルモノメトキシジプロポキシシラン、プロピルモノメトキシジペンチルオキシシラン、プロピルモノメトキシジフェニルオキシシラン、ブチルモノメトキシジプロポキシシラン、ブチルモノメトキシジペンチルオキシシラン、ブチルモノメトキシジフェニルオキシシラン、メチルメトキシエトキシプロポキシシラン、プロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、ブチルメトキシエトキシプロポキシシラン、メチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、エチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、プロピルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ブチルモノメトキシモノエトキシモノブトキシシランなどが挙げられ、中でもメチルトリアルコキシシラン(特にメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン)が好ましい。
シラン化合物(iii)の具体例としては、メチルジメトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルメトキシプロポキシシラン、メチルメトキシペンチルオキシシラン、メチルメトキシフェニルオキシシラン、エチルジプロポキシシラン、エチルメトキシプロポキシシラン、エチルジペンチルオキシシラン、エチルジフェニルオキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルメトキシエトキシシラン、プロピルエトキシプロポキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロピルジペンチルオキシシラン、プロピルジフェニルオキシシラン、ブチルジメトキシシラン、ブチルメトキシエトキシシラン、ブチルジエトキシシラン、ブチルエトキシプロポキシシシラン、ブチルジプロポキシシラン、ブチルメチルジペンチルオキシシラン、ブチルメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジペンチルオキシシラン、ジメチルジフェニルオキシシラン、ジメチルエトキシプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルメトキシプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジペンチルオキシシラン、ジプロピルジフェニルオキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン、ジブチルメトキシペンチルオキシシラン、ジブチルメトキシフェニルオキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジペンチルオキシシラン、メチルエチルジフェニルオキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルブチルジメトキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、メチルブチルジプロポキシシラン、メチルエチルエトキシプロポキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルプロピルメトキシエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルメトキシエトキシシラン、プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、ジブチルメトキシエトキシシラン、ジブチルメトキシプロポキシシラン、ジブチルエトキシプロポキシシランなどが挙げられ、中でもメチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましい。
上記反応生成物を得るのに用いるシラン化合物は、上記シラン化合物(i)〜(iii)の中から適宜選択することができる。シラン化合物としてはシラン化合物(i)が最も好ましい。なおこれらのシラン化合物を混合して用いる場合、より好ましい組み合わせはシラン化合物(i)とシラン化合物(ii)との組み合わせである。シラン化合物(i)とシラン化合物(ii)とを用いる場合、これらの使用割合はシラン化合物(i)が10〜60モル%で、シラン化合物(ii)が90〜40モル%の範囲内が好ましく、シラン化合物(i)が15〜50モル%で、シラン化合物(ii)が85〜50モル%の範囲内がより好ましい。またシラン化合物(ii)は、上記一般式(III)におけるRがアルキル基またはフェニル基、好ましくはアルキル基であるものがより好ましい。
上記反応生成物は、例えば、上記シラン化合物(i)〜(iii)の中から選ばれる1種以上を、酸触媒、水、有機溶剤の存在下で加水分解、縮合反応せしめる方法で調製することができる。
上記酸触媒は有機酸、無機酸のいずれも使用できる。無機酸としては、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸などが使用でき、中でも、リン酸、硝酸が好適である。上記有機酸としては、ギ酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、n−酪酸などのカルボン酸及び硫黄含有酸残基をもつ有機酸が用いられる。上記硫黄含有酸残基をもつ有機酸としては、有機スルホン酸が挙げられ、それらのエステル化物としては有機硫酸エステル、有機亜硫酸エステルなどが挙げられる。これらの中で、特に有機スルホン酸、例えば、下記一般式(V)で表される化合物が好ましい。
13−Z・・・(V)
式中、R13は、置換基を有していてもよい炭化水素基、Zはスルホン酸基である。
上記一般式(V)において、R13としての炭化水素基は、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、この炭化水素基は飽和のものでも、不飽和のものでもよいし、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。R13の炭化水素基が環状の場合、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基などの芳香族炭化水素基がよく、中でもフェニル基が好ましい。この芳香族炭化水素基における芳香環には置換基として炭素数1〜20の炭化水素基が1個又は複数個結合していてもよい。該芳香環上の置換基としての炭化水素基は飽和のものでも、不飽和のものでもよいし、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。また、R13としての炭化水素基は1個又は複数個の置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えばフッ素原子等のハロゲン原子、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。上記一般式(V)で表わされる有機スルホン酸としては、レジストパターン下部の形状改善効果の点から、特にノナフルオロブタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸又はこれらの混合物などが好ましい。
上記酸触媒は、水の存在下でシラン化合物を加水分解するときの触媒として作用するが、使用する酸触媒の量は、加水分解反応の反応系中の濃度が1〜1000ppm、特に5〜800ppmの範囲になるように調製するのがよい。水の添加量は、これによってシロキサンポリマーの加水分解率が変わるので、得ようとする加水分解率に応じて決められる。本明細書におけるシロキサンポリマーの加水分解率とは、該シロキサンポリマーを合成するための加水分解反応の反応系中に存在する、シラン化合物中のアルコキシ基の数(モル数)に対する水分子の数(モル数)の割合(単位:%)である。本実施形態において、シロキサンポリマーの加水分解率は50〜200%が好ましく、より好ましい範囲は75〜180%である。
加水分解反応の反応系における有機溶剤は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノールのような一価アルコール、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネートのようなアルキルカルボン酸エステル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類あるいはこれらのモノアセテート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトンのようなケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基をすべてアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類などが挙げられる。上記有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような反応系で加水分解反応させることによりシロキサンポリマーが得られる。該加水分解反応は、通常5〜100時間程度で完了するが、反応時間を短縮させるには、80℃を超えない温度範囲で加熱するのがよい。
反応終了後、合成されたシロキサンポリマーと、反応に用いた有機溶剤を含む反応溶液が得られる。シロキサンポリマーは、上記の反応溶液のまま不純物拡散成分を添加して用いることができる。また、従来公知の方法により有機溶剤と分離し、乾燥して、使用の都度上記の溶剤に不純物拡散成分と共に溶解して用いてもよい。
実施形態に係る拡散剤組成物におけるケイ素化合物の配合量は、組成物全体に対してSiO換算で2〜10質量%が好ましい。
上記範囲で配合することによりクラックのない被膜を形成でき、また良好な不純物の拡散効果が得られる。特には2〜5質量%が好ましい。
{不純物拡散成分}
不純物拡散成分は、一般にドーパントとして半導体や太陽電池の製造に用いられてきた化合物を用いることができる。このような不純物拡散成分は、III族元素の酸化物又はV族元素の化合物を含むことにより、電極を形成する工程においてシリコン基板内にp型又はn型拡散領域を形成することができる。例えばp型拡散領域を形成しようとすればIII族元素の化合物から、n型拡散領域を形成しようとすればV族元素の化合物から選択することができる。また、所望の拡散領域の性質に応じて、III族元素の化合物とV族元素の化合物とから任意に組み合わせて用いてもよい。このような、III族元素及びV族元素の化合物には、例えば、B、Al、Bi、P等が挙げられ、不純物拡散成分には、拡散領域をp型にするかn型にするか所望に応じて、これらのうち1種類以上が含まれる。このようなIII族元素の化合物又はV族元素の化合物は、拡散剤組成物に対して0.1質量%以上含まれることが好ましく、1.0質量%以上含まれることがさらに好ましい。なお、不純物の拡散効果はケイ素化合物の配合量と不純物拡散成分の配合量とのバランスが重要で、特にケイ素化合物の配合量が2〜5質量%で、かつ不純物拡散成分の配合量が1.5〜3.0質量%の範囲の時、良好な拡散効果を得ることができる。
{溶剤}
溶剤は、特に限定は無く、上記のケイ素化合物と不純物拡散成分とを溶解可能な溶媒であれば用いることができるが、特に沸点100℃以下の溶剤と沸点180〜230℃の溶剤とを含むことが好ましい。
<沸点100℃以下の溶剤>
沸点100℃以下の溶剤は、常圧での沸点が前記の条件にあてはまるものであればいかなる有機溶剤でもよい。沸点100℃以下の溶剤成分を含むことによって、拡散剤組成物の乾燥速度が速くなり、塗布後のパターンが滲みや広がりを防止することができる。このような溶剤成分の例として、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、アセトンが挙げられる。なかでもエタノールが好ましい。また、沸点100℃以下の溶剤成分は、拡散剤組成物の70〜90質量%、特には72〜80質量%の範囲で含まれることが好ましい。さらに、この溶剤成分は、単独でも、2種類以上の溶剤成分を混合して用いてもよい。
<沸点180〜230℃の溶剤>
沸点180〜230℃の溶剤は、沸点が前記の条件にあてはまるものであればいかなる有機溶剤でもよい。沸点180〜230℃の溶剤成分を含むことによって、塗布後に形成される拡散剤組成物層の塗りムラの発生を防止することができる。このような溶剤成分の例として、プロピレングリコール、エチレングリコール等の多価アルコールを挙げることができる。なかでもプロピレングリコールが好ましい。また、沸点180〜230℃の溶剤成分は、拡散剤組成物の1〜20質量%、特には2〜10質量%の範囲で含まれることが好ましい。沸点180〜230℃の溶剤成分を上述の範囲の値で含むことにより、塗布後に形成される拡散剤組成物層の膜厚の高低差を0.1μm以下にすることができる。なお、溶質成分(主にケイ素化合物と不純物拡散成分の総量)が5質量%以下と非常に低い場合、沸点180〜230℃の溶剤成分と後述するジプロピレングリコールとの合計質量は、組成物全体の10質量%以下、好ましくは8質量%以下とすることで、パターン滲みのない良好な膜を形成できて好ましい。なお、この溶剤成分は、単独でも、2種類以上の溶剤成分を混合して用いてもよい。
溶剤は、インクジェット吐出機等のヘッド部の目詰まりを防止するために慣用の溶剤であるジプロピレングリコール等を更に含むことができ、特にジプロピレングリコールは好ましい。ジプロピレングリコールの配合量は拡散剤組成物中に1〜10質量%、特には2〜7質量%の範囲で配合されることが好ましい。
<その他の成分>
{界面活性剤}
実施形態に係る拡散剤組成物は、界面活性剤を更に含んでよい。界面活性剤を含むことによって、塗布性、平坦化性、展開性を向上させることができ、塗布後に形成される拡散剤組成物層の塗りムラの発生を減少することができる。このような界面活性剤として、従来公知のものを用いることができるが、シリコーン系の界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤は、拡散剤組成物全体に対し、500〜3000質量ppm、特には600〜2500質量ppmの範囲で含まれることが好ましい。更に2000質量ppm以下であると、拡散処理後の拡散剤組成物層の剥離性に優れて好ましい。界面活性剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
{ポロージェン又はコロイダルシリカ}
実施形態に係る拡散剤組成物は、後述するように、太陽電池用の電極の製造用に用いることができる。一般に、太陽電池において多用されている半導体基板はシリコン基板であり、当該シリコン基板の表面にはテクスチャと呼ばれる2μm程度の細かい凹凸が形成されている。テクスチャ上に拡散剤組成物を塗布すると、凹凸の差の大きい箇所では塗布した拡散剤組成物の層が厚くなりすぎてしまい、加熱することにより塗布した拡散剤組成物が収縮するとクラックが生じたり、塗布後形成した拡散剤組成物の層が基板から浮き上がり不純物拡散剤成分の拡散効率が低下することがある。本実施形態では、塗布した拡散剤組成物により形成される層中の応力を減少させる添加剤を更に含有させることができる。このような添加剤として、ポロージェン又はコロイダルシリカが挙げられる。ポロージェン又はコロイダルシリカを含有させることにより、形成した拡散剤組成物層を加熱した際に、クラックの発生と拡散剤組成物層の基板からの浮き上がりとを防止することができる。
[ポロージェン]
実施形態においてポロージェンとは、拡散剤組成物層の焼成時に分解され、最終的に形成されるケイ素化合物の被膜に空孔を形成させる材料である。このポロージェンとしては、例えばポリアルキレングリコール及びその末端アルキル化物;グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類又はその誘導体;スクロース、マルトース、ラクトース等の二糖類又はその誘導体;並びに多糖類又はその誘導体を挙げることができる。これらの有機化合物の中でも、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコールが更に好ましい。上記ポロージェンの質量平均分子量は、300〜10000であることが好ましく、500〜5000であることが更に好ましい。質量平均分子量を300以上にすることにより、拡散剤組成物を塗布し、乾燥させたときの分解、揮発を抑制することができ、熱拡散処理時にポロージェンが十分に作用することができる。一方質量平均分子量を10000以下にすることにより、熱拡散処理時に分解しやすくなり、ポロージェンが十分に作用することができる。
[コロイダルシリカ]
実施形態においては、ボロージェンに代えてコロイダルシリカを使用することもできる。コロイダルシリカは有機溶媒に分散させることが好ましい。このような有機溶媒の例として、上述した溶剤の効果に影響を与えないものであれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体、及びジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれる1種あるいは2種以上を使用することができる。更に、これらの有機溶媒と併用して、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム等の1種あるいは2種以上のものを使用することができる。シリカ粒子の粒径は、インクジェット吐出機等のヘッド部の目詰まりを起こさなければ特に限定されないが、10〜50nmが好ましい。
ポロージェン又はコロイダルシリカの含有量は、固形分全体の10質量%以下又は拡散剤組成物全体の1質量%以下が好ましくい。このような含有量にすることにより、ポロージェンを用いた場合には不純物拡散成分の拡散効率の低下を防ぐことができ、コロイダルシリカを用いた場合にはシリカ粒子の凝集によるインクジェット吐出機等のヘッド部の目詰まりやケイ素化合物の経時劣化を防止することができる。
<<拡散剤組成物の調製方法>>
実施形態に係る拡散剤組成物は、上記の各成分を従来公知の方法により、任意の順番で均一な溶液になるように混合することにより調製することができる。この際、全固形分濃度を6質量%以下になるように調製することが好ましい。このような濃度にすることにより、吐出後に形成されるパターンを適切な厚さに調整することができる。
<拡散層を形成する工程>
拡散層は、インクジェット方式を用いて選択的にケイ素含有被覆形成用拡散剤を塗布し、その後で加熱することにより形成される。
{選択的にケイ素含有被覆形成用拡散剤を塗布する工程}
選択的にケイ素含有被覆形成用拡散剤を塗布する工程では、ケイ素含有被覆形成用拡散剤をインクジェット吐出機を用いて吐出して基板上に付着させることにより、パターンが形成される。インクジェット吐出機としては、電圧を加えると変形するピエゾ素子(圧電素子)を利用したピエゾ方式の吐出機や、加熱により発生する気泡を利用したサーマル方式の吐出機のいずれもが使用可能である。このようにしてパターンを形成した後は、オーブン等の従来公知の手段によりケイ素含有被覆形成用拡散剤を乾燥させることが好ましい。形成されたパターン、すなわちケイ素含有被覆形成用拡散剤層の膜厚は0.1〜0.6μmが好ましい。このような膜厚のパターンを形成することにより、後述する拡散工程において拡散剤成分を効率よく半導体基板内に拡散させることができる。0.8μmを超えるとクラックが発生し易くなる。
{加熱により拡散剤を基板に拡散する工程}
パターン中の拡散剤を半導体基板に拡散させる工程は、従来公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されないが、例えば、電気炉等の拡散炉を用いて焼成することにより行うことができる。焼成は不活性ガス雰囲気下でも大気雰囲気下でもよい。焼成温度は、800℃〜1000℃が好ましい。また、拡散炉に代えて、慣用のレーザーの照射により加熱してもよい。このようにして、拡散剤が半導体基板内に拡散し、添加した元素に応じてp型又はn型拡散層を形成する。
本発明について、以下の実施例により詳説する。しかしながら、この実施例は本発明について例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
<<実施例1>>
<撥液性層の形成>
6インチp型シリコン基板(信越半導体(株)社製鏡面処理ウエハ)を70℃に管理されたオーブン中に載置し、これにヘキサメチルジシラザン撥液剤「OAP」(商品名:東京応化工業製)の蒸気をあて10分間処理を行うことで撥液性層を形成した。
<拡散層の形成>
{ケイ素含有被覆形成用拡散剤の調製}
ケイ素化合物としてSiO換算で9.0質量%のテトラエトキシシラン加水分解生成物(分子量(Mw)約2000)、五酸化二リン(P)1.0質量%、エタノール77.5質量%、ジプロピレングリコール5.0質量%、プロピレングリコール7.5質量%、界面活性剤(SF8421EG(シリコーン系界面活性剤、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製))1000質量ppmを均一に混合し、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過してケイ素含有被覆形成用拡散剤を調製した。
<パターンの形成>
上記により調製したケイ素含有被覆形成用拡散剤を、インクジェット吐出機(ローランド・ディー・ジー製フラットベットインクジェット吐出機)を用いて6インチP型シリコン基板上に吐出して500μm、300μm及び100μmの規定値でパターンを塗布した。塗布後、乾燥機にて100℃で10分間乾燥した。乾燥後、塗布された線幅をSurface Profiler(Dektek社製)を用いて測定した。
<<実施例2>>
p−メンタンに、テトライソシアネートシラン(Si(NCO))を100mMとなるよう溶解して、金属酸化物膜形成材料を調製した。この金属酸化物膜形成材料を、6インチp型シリコン基板上に、スピンコート(100rpmで10秒間)で均一に塗布した後、p−メンタンで洗浄(500rpmで10秒間)を行い、さらに、2000rpmで10秒間、3000rpmで10秒間の振り切り乾燥を行った。その結果、6インチp型シリコン基板の表面に均一な被覆層(シリコン酸化物膜(SiO))が形成された。以後、実施例1と同様にパターンを形成し、塗布された線幅を測定した。
<<比較例1>>
6インチp型シリコン基板に撥液性層を形成しない以外は実施例1と同様にパターンを形成し、塗布された線幅を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005660750
<<評価>>
基板上に撥液性層を設ける前処理を行うことにより、前処理をしない例と比較してインクジェット印刷により形成したパターンの線幅が規定値に近いことがわかる。これにより、基板上に撥液性層を設ける前処理は、パターンの滲みや広がりを防ぐことがわかった。

Claims (6)

  1. 基板に撥液性層を形成する工程と、
    不純物拡散成分と溶剤とを含有するケイ素含有被覆形成用拡散剤を、インクジェット方式を用いて前記撥液性層上に選択的に塗布し、所定のパターンの拡散層を形成する工程と、を含み、
    前記溶剤は、常圧での沸点が180〜230℃である溶剤とジプロピレングリコールとを含み、常圧での沸点が180〜230℃である溶剤の含有量が前記ケイ素含有被覆形成用拡散剤に対して1〜20質量%であり、ジプロピレングリコールの含有量が前記ケイ素含有被覆形成用拡散剤に対して1〜10質量%である、拡散層の形成方法。
  2. 前記基板表面を有機シラザン化合物を含む液体又は雰囲気に暴露させて前記撥液性層を形成する、請求項1に記載の拡散層の形成方法。
  3. 前記有機シラザン化合物がヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン又はトリメチルジシラザンである、請求項2に記載の拡散層の形成方法。
  4. 前記基板表面を加水分解により水酸基を生成しうる金属化合物を含有する液体に暴露させて前記撥液性層を形成する、請求項1に記載の拡散層の形成方法。
  5. 前記金属化合物は、イソシアネート基及び/又はハロゲン原子を2個以上有するケイ素化合物である、請求項4に記載の拡散層の形成方法。
  6. 基板に撥液性層を形成する工程と、
    不純物拡散成分と溶剤とを含有するケイ素含有被覆形成用拡散剤を、インクジェット方式を用いて前記撥液性層上に選択的に塗布し、所定のパターンの拡散層を形成する工程と、
    前記不純物拡散成分を前記基板に拡散させる工程と、を含み、
    前記溶剤は、常圧での沸点が180〜230℃である溶剤とジプロピレングリコールとを含み、常圧での沸点が180〜230℃である溶剤の含有量が前記ケイ素含有被覆形成用拡散剤に対して1〜20質量%であり、ジプロピレングリコールの含有量が前記ケイ素含有被覆形成用拡散剤に対して1〜10質量%である、不純物拡散方法。
JP2008101383A 2008-04-09 2008-04-09 拡散層の形成方法及び不純物拡散方法 Active JP5660750B2 (ja)

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