JP5660128B2 - 発光装置 - Google Patents

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Description

本発明は、発光装置に関し、詳しくは、有機エレクトロルミネッセンス素子を内包した発光装置に関する。
従来から、ガラス基板上に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、OLED素子ともいう)を用いた表示素子の研究開発が多数報告されている。特に、近年では、OLED白色発光材料の性能・寿命向上により、発光装置、照明用途としてのOLED素子開発も盛んに行われるようになった。さらに、より低コスト化、大量生産、フレキシブル化、薄型化を目的として、フィルム基板上に形成されたOLED素子を用いた発光装置の開発が進んでいる。
OLED素子に関しては、特に水分や酸素等の不純物を嫌う特性があり、水分環境に暴露すると素子が劣化して寿命が低減するという問題がある。そのため、OLED素子を封止して水分や酸素等の不純物のアタックを防止する構造を設ける必要がある。ガラス基板上に形成されたOLED素子の場合、アルミ缶封止などの封止構造が用いられている。これは、ガラス基板上にアルミ材などの金属を用いたキャップを、UV硬化樹脂などを用いて積層接着して中空構造を形成するものである。この封止工程は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス環境内などの水分や酸素量が管理された絶乾環境の中で行われ、中空構造内部は不活性ガス環境となってOLED素子への水分や酸素等の不純物のアタックを抑制する効果を有する。
一方、フィルム基板を用いたOLED素子の場合、フレキシブル化を図るために上記のような中空封止構造は採用し難いことが容易に想像される。そのため、封止工程として、フィルム基板のOLED素子形成面側に、TiOやSiOなどの透明薄膜バリア構造を設け、その上面にOLED素子と無機封止薄膜を形成する構造が多数提案されている。無機封止薄膜としては、SiNなどの材料を用い、CVDなどの薄膜形成方法を用いて形成される。
しかしながら、フィルム基板を用いた場合は、基板の変形が熱や湿度などの周囲環境の変化によって容易に発生するため、上記のような無機封止薄膜による封止構造にクラックなどが生じやすく、水分封止性能を満足できなくなる可能性がある。また、フィルム基板断面からの水分や酸素等の不純物の透過、拡散を考慮すると、例え缶封止構造を採用したとしても、水分封止性能が実用レベルに達するためにはさらなる新たな封止構造を追加する必要があった。
上記のような状況を踏まえ、フィルム基板を用いたOLED素子の封止構造についていくつかの提案が成されている。例えば、フィルム基板構造のOLED素子を、透明ガスバリア性フィルムとシーラントを有する第一の多層封止フィルムと、金属箔とシーラントを有する第二の多層封止フィルムの間にサンドイッチした構成などの技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この場合、第一、第二の封止フィルムとOLED素子を有する基板を真空貼合によって接着することによって封止構造が形成される。一般的に、発光面側に用いられる透明ガスバリアフィルムは、PETやPENなどの透明フィルム基材上にSiOやTiOなどの透明無機薄膜層を構成することで形成される。この基材を用い、真空貼合によって上記のようなサンドイッチ構造を形成すると、第一、第二の封止フィルム共にOLED基板フィルムの近傍で、基板の厚みに起因した段差が形成され、曲げ変形が発生する。この際、第一の封止フィルムである透明ガスバリアフィルム内において、バリア層としての機能を有する無機薄膜層にも曲げ変形が発生してしまい、応力集中によるクラックが発生して封止性能に悪影響を及ぼすという課題があった。
特開2001−237065号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、第一、第二の封止フィルムとで、OLED素子を有する基材を貼合によって接着内包して封止構造が形成されるフィルム基板を用いたOLED素子を内包した発光装置において、クラックの発生を抑制し水分や酸素等の不純物の封止性に優れたOLED素子を内包した発光装置を提供することにある。
本発明者は、第二の封止フィルムの曲げ弾性率を、第一の封止フィルム(以下、透明バリアフィルムともいう)の曲げ弾性率よりも小さく設定することにより、封止構造作製時の貼合工程において、上記二枚のフィルムに内包されるOLED基材フィルム端部にて発生する段差を上記第二の封止フィルム(以下、単に封止フィルムと略すことがある)に吸収させることが可能となる。
これにより、ガスバリア層を有する第一の封止フィルムに生じる段差を低減し、ガスバリア層に生じる応力集中とクラックの発生を抑制することが可能となり、封止性に優れた、OLED素子を内包した発光装置を提供できることを見出した。
また、第二の封止フィルムの曲げ弾性率を第一の封止フィルムの曲げ弾性率よりも小さく設定することにより、第一の封止フィルムの変形量が低減し、第一の封止フィルム(透明バリアフィルム)面を平坦化できるため、その後の工程で光取り出し効率向上を狙って貼合される光取り出しフィルムや、アピアランス向上のための色味調整フィルムなどを貼合し易くなる効果も得ることができることを見出した。
さらに、前記第二の封止フィルムは、金属膜及び接着層(以下シーラント層ともいう)を有することが好ましく、前記第一の封止フィルムは、ガスバリア層及び接着層を有することが好ましい。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
1.
透明基材上に、少なくとも透明陽極層、発光層を含む有機層及び陰極層をこの順番で積層した有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記透明基材側に第一の封止フィルムを設置し、前記陰極層側に第二の封止フィルムを設置することで前記有機エレクトロルミネッセンス素子が内包されるように封止された封止構造を有する発光装置であって、
前記第二の封止フィルムの曲げ弾性率が、前記第一の封止フィルムの曲げ弾性率よりも小さいことを特徴とする発光装置。
2.
前記第一の封止フィルムは、少なくともガスバリア層及び接着層が積層されたものであり、前記第二の封止フィルムは、少なくとも金属膜と接着層が積層されたものであることを特徴とする前記1に記載の発光装置。
3.
前記封止構造は真空貼合によって作製されることを特徴とする前記1または2に記載の発光装置。
4.
前記第二の封止フィルムの膜厚は、前記第一の封止フィルムの膜厚よりも小さいことを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
5.
前記第二の封止フィルムの曲げ弾性率は、前記第一の封止フィルムの曲げ弾性率の50%以下であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
6.
前記陰極層の前記有機層側とは反対側の面上に、SiNの無機膜からなる封止層を有することを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
7.
前記陰極層の前記有機層側とは反対側の面上に、熱硬化性樹脂からなる封止層を有することを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
8.
前記第二の封止フィルムが有する前記金属膜が、アルミニウムであることを特徴とする前記2から7のいずれか1項に記載の発光装置。
本発明によれば、第一、第二の封止フィルムとで、OLED素子を有するフィルム基板を貼合によって接着内包して水分封止構造が形成されるフィルム基板を用いたOLED素子を内包した発光装置において、クラックの発生を抑制し水分や酸素等の不純物の封止性に優れたOLED素子を内包した発光装置を提供することができる。
図1aは、本発明の発光装置の一例を示す断面図。図1bは、陰極層を成膜した後に、設けることもできる無機封止層や熱硬化性樹脂封止層を示す断面図。 発光デバイスの構成を示す断面図。 図3aは、透明バリアフィルム(第一の封止フィルム)の構成を示す断面図。図3bは、封止フィルム(第二の封止フィルム)の構成を示す断面図。 図4aは、真空チャンバ開放時を示す断面図。図4bは、真空チャンバを密閉、ダイヤフラム加圧時、を示す断面図。 内包される発光デバイスの段差を透明バリアフィルム(第一の封止フィルム)でも吸収し、段差形状が発生して応力集中が発生する部分を示す断面図。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明の発光装置は、
透明基材上に、少なくとも透明陽極層、発光層を含む有機層及び陰極層をこの順番で積層した有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記透明基材側に第一の封止フィルムを設置し、前記陰極層側に第二の封止フィルムを設置することで前記有機エレクトロルミネッセンス素子が内包されるように封止された封止構造を有する発光装置であって、
前記第二の封止フィルムの曲げ弾性率が、前記第一の封止フィルムの曲げ弾性率よりも小さいことを特徴としている。
本発明においては、前記第二の封止フィルムの曲げ弾性率が、前記第一の封止フィルムの曲げ弾性率よりも小さいことで、クラックの発生を抑制し水分や酸素等の不純物の封止性に優れ、かつ、フィルム基板の平坦化に優れて後工程での光取り出しフィルムや色味調整フィルムなどの貼合が容易な、OLED素子を内包した発光装置が得られる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様等について詳細な説明をする。
<発光装置の構成>
図1aは、本発明の発光装置の一例を示す断面図である。
本発明の発光装置101は、詳しくは図1aに示されるように、透明基材102、透明陽極層103、有機層104、陰極層105、取り出し電極部106、透明バリアフィルム(第一の封止フィルム)107、封止フィルム(第二の封止フィルム)108から構成される。矢印112は発光光の進む方向を示す。
透明基材102はPENやPETなどの透明フィルムから構成される。有機層が形成される側の面上には、基材からのオリゴマーの析出、面の平坦化、表面傷の抑止を目的としたハードコート層が形成される。該ハードコート層は、一般的にはアクリル系の樹脂内に無機物のフィラーや粒子を混合させ、塗布、硬化することによって透明基材102上に薄膜状に形成される。
透明陽極層103は、一般的にはインジウムとスズの複合酸化物であるITOが用いられる。ITOは、上記透明基材102上にスパッタリング等の薄膜形成方法を用いて形成される。ITOについては、薄膜形成時にはアモルファスの状態であり、一般的には成膜後に焼成工程を経て結晶化が行われる。この結晶化工程を行うことにより、ITOの電気抵抗値を大幅に低下させることが可能となる。ITOを成膜した後、フォトリソグラフィー工程を経てフォトレジストがITO上にパターニングされ、ウエットエッチング法などを用いてITO透明陽極層は所定の形状にパターニングされる。
有機層104は、詳しくは図2に示されるように、主に正孔輸送層201、発光層202、電子輸送層203、から構成され、それぞれ、真空蒸着法、スピンコート法、塗布法、インクジェット法などの成膜方法を適用することにより各層所定の厚みに成膜される。発光層202の材料としては、高分子有機エレクトロルミネッセンス発光材料、低分子有機エレクトロルミネッセンス発光材料が考えられるが、共に成膜工程から封止工程が完了するまでは、水分や酸素等の不純物を遮断した絶乾環境内での作業が必要となるため、純窒素やアルゴン、ドライエアーでパージされた環境内にてプロセスが行われる。
正孔輸送層201については、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることが出来る。正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。正孔輸送層として使用出来る化合物としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体などが挙げられる。
発光層202については、(a)電荷の注入機能、すなわち、電界印加時に陽極或いは正孔注入層から正孔を注入することが出来、陰極或いは電子注入層から電子を注入することが出来る機能、(b)輸送機能、すなわち、注入された正孔及び電子を電界の力で移動させる機能、及び(c)発光機能、すなわち、電子と正孔の再結合の場を提供し、これらを発光に繋げる機能、の3つの機能を併せもつものであれば特に限定はない。発光層202の材料としては、高分子有機エレクトロルミネッセンス発光材料、低分子有機エレクトロルミネッセンス発光材料を用いることができ、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物を用いることが出来る。発光層202は、成膜工程から封止工程が完了するまで、水分を遮断した絶乾環境内での作業が必要となるため、純窒素やアルゴン、ドライエアーでパージされた環境内にてプロセスが行われる。
電子輸送層203については、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることが出来る。電子輸送層として使用できる化合物としては、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
陰極層105は、一般的にはAlやAg/Mg合金などの金属膜を蒸着法などによって形成する。また、陰極層105と上記電子輸送層203との間には、電子注入効率向上のためのバッファ層として、アルカリ金属膜や金属酸化物薄膜等を1nmから50nmの厚みで成膜してもよい。
陰極層105を成膜した後に、封止性能を向上させるために陰極層105上にSiNなどの無機膜からなる無機封止層110や熱硬化性樹脂などの樹脂封止層110を設けることもできる(図1b参照)。無機封止層や熱硬化性樹脂などの樹脂封止層の厚みは0.5μmから50μmが好ましく、更に好ましくは、1μmから20μmである。この範囲であると好ましい封止効果が得られる。無機封止層としては、SiOやSiNが好ましく用いられ、樹脂封止層としては熱硬化性エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
取り出し電極部106については、一般的にはFPCなどのフレキシブル基板や、AlやCuなどの導電性に優れた材料薄板が用いられる。透明陽極層103や陰極層105と取り出し電極部106の接続には、圧着法やACF(Anisotropic Conductive Film)による接続などの方法が挙げられる。
本発明の第一の封止フィルムは、好ましくは少なくとも透明樹脂フィルムとガスバリア層と接着層(シーラント層)とから構成される。
本発明の第一の封止フィルムとしての透明バリアフィルム107については、PETやPENなどの透明樹脂フィルム301(ハードコート層302を有していてもよい)上に、ガスバリア層303として無機物を含む薄膜ガスバリア層を有することが好ましい。薄膜ガスバリア層の材料としては、SiO、TiO、SiNなどが挙げられる。上記の材料を、真空蒸着法、スパッタ法、プラズマCVD法、大気圧プラズマ法などの成膜方法を用いて透明なガスバリア層を成膜し、該透明なガスバリア層上に接着層として、熱可塑性樹脂などの接着層(シーラント層)304を設けることで、透明バリアフィルム107が形成される(図3a参照)。接着層は塗布法で形成される。塗布法としては、ロールコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法及びインクジェット法などの方法を用いることができる。
透明樹脂フィルム301の厚みは10μmから500μmが好ましく、ハードコート層302の厚みは1μmから20μmが好ましい。ガスバリア層の厚みは0.1μmから5μmが好ましい。接着層(シーラント層)304の材料としては、熱硬化性エポキシ樹脂やポリエチレンが好ましく用いられる。
第一の封止フィルムは、発光層からの発光を透過する透明度を有し、透明度としては380〜800nmの光を透過し、全光線透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。
本発明の第二の封止フィルムとしての封止フィルム108は、好ましくはPENやPETなどの透明樹脂フィルム301上に、金属膜305としてAl箔などの金属薄膜層を有し、該金属膜上に接着層として熱可塑性樹脂などの接着層(シーラント層)304を有する(図3b参照。)。金属膜は透明樹脂フィルムにアルミ箔などの金属膜をラミネートする方法等で形成され、接着層は第一の封止フィルムと同様に塗布法等で形成される。
透明樹脂フィルムの厚みは5μmから200μmが好ましく、金属薄膜305としては5μmから50μmが好ましい。シーラント層としては1μmから100μmが好ましい。シーラント層としては第一の封止フィルム同様、熱硬化性エポキシ樹脂やポリエチレン等が好ましく用いられる。
本発明においては、第二の封止フィルム(封止フィルム108)の曲げ弾性率が、第一の封止フィルム(透明バリアフィルム107)の曲げ弾性率よりも小さいことを特徴とする。
本発明において、第二の封止フィルム(封止フィルム108)の曲げ弾性率を、第一の封止フィルム(透明バリアフィルム107)の曲げ弾性率よりも小さくするには、特に、封止フィルム108の主構成材料をPE(ポリエチレン)などの曲げ弾性率のより小さな材料を選択することによって、曲げ弾性率を下げることが可能となる。具体的には、封止フィルム108の曲げ弾性率は、透明バリアフィルム107の曲げ弾性率の50%以下であることが好ましい。50%以下10%以上であることが好ましく、40%以下20%以上であることがより好ましい。あるいは、上記の目的は、封止フィルム108の厚みを透明バリアフィルム107よりも薄くすることによっても達成できる。封止フィルム108の厚みは、50μmから300μmが好ましく、曲げ弾性率が透明バリアフィルム107の50%以下になる厚みであることが好ましい。
本発明の曲げ弾性率は、フィルム試料について、インストロン社製5582型曲げ試験機を用いて、測定方法については、ISO 178に記載の方式に準じて、フィルムを短冊に切り抜き、3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率(単位:MPa)を測定することができる。
<発光装置の製造工程>
本発明の発光装置101は、詳しくは以下の工程で製造される。
透明基材102上に、透明陽極層103、有機層104、陰極層105を絶乾環境下で成膜し、発光可能な状態としたものを発光デバイスと呼ぶ。より詳細には、発光デバイスとしては、OLED素子を用いる。OLED素子109の製造方法として、PENなどの透明基材上に透明陽極層を設け、その上に正孔輸送層201、発光層202を順次塗布方式で設ける。さらにその上に電子輸送層203を設けた上に陰極層105を設けることで製造される。
なお、陰極層105上にSiNなどの無機封止層を設ける場合は、CVDなどの成膜方法を用いて行う。また、熱硬化性樹脂などの樹脂封止層を設ける場合は、ロール貼合あるいは真空貼合によって、陰極層105上に形成する。
一方、取り出し電極部106、透明バリアフィルム107と封止フィルム108については、製造過程でOLED素子109に接触してOLED特性に悪影響を与えてしまうため、前処理として水分を除去しておく必要がある。それぞれ、所定の温度にて、クリーンオーブン、あるいは真空オーブン、あるいは絶乾環境内での保持によって内部の水分を可能な限り除去する工程を行う。
OLED特性に影響がないレベルにまで水分を除去するためには、材料のガラス転移点Tgを越えない範囲で可能な限り高い温度での乾燥を行うことが望ましい。具体的には、水分濃度1ppm〜100ppmの範囲内となるまで乾燥を行うことが望ましい。
上記の乾燥過程を経て、透明バリアフィルム107上にOLED素子109を所定の位置に配置する。OLED素子109の配置位置を仮決めするため、透明バリアフィルム107上にOLED素子109を配置後、一部分に所定の温度を与えることによって透明バリアフィルム107上のシーラント層を軟化させ、この軟化部分が再び硬化することによってOLED素子109の配置位置が仮決めされる。この仮決め温度については、シーラント層の軟化点よりも若干低い温度、具体的には5℃程度低い温度で行うことが好ましい。
その後、電流の給電部である透明陽極層103の一部分と、電流の受け取り部である陰極層105の一部分に取り出し電極部106を所定の方法にて接続する。特に接続方法としてACFを用いた場合は、ACFの仮接着温度による仮貼工程と、実際にACF中の電気的接続を取る役割を有する金属粒子を押しつぶす圧着工程を行い、取り出し電極部106は接続される。
上記の工程を経た後、透明バリアフィルム107上に仮配置されたOLED素子109上に、封止フィルム108を仮積層する。仮積層は、封止フィルム108の一部分を加熱し、シーラント層を軟化させることにより行うことができる。
上記透明バリアフィルム107と封止フィルム108は、ロール状態のままロールtoロール工程を用いて仮積層を行ってもよいし、所定のサイズに断裁した後に仮積層を行ってもよい。
その後、仮積層を行った状態のフィルムを所定のサイズに正確に断裁し、真空貼合あるいはロール貼合によって発光装置101が製作される。特に、OLED素子109の合計厚みが大きくなるほど、良好な貼合性を得るために真空貼合によって製作することが好ましい。
真空貼合方法には、平行平板圧着法、ダイアフラム法などの方法があるが、ここではダイアフラム法を採用した場合について記述する。
ダイアフラム法は、図4に示すように、上チャンバ404と下チャンバ401から構成される真空チャンバ内にてシリコンゴム薄膜などのダイアフラム405の内部407を陽圧にし、ダイアフラム405を膨らませながら貼合したい材料403の中心部から徐々に加圧し、内部406に残った気泡を追い出す原理で貼合される。特に、上記の工程は、シーラント層を軟化させる所定の温度まで受け側のテーブルを加熱しながら行うのが一般的である。なお、受け側のテーブルはSUS系の材料にメッキなどの表面処理を施すことで構成される。
ダイアフラム法の場合は、受け側のテーブルに金属材料を用いるものが一般的であるので、加圧側=ダイアフラム側に内部の段差が転写されることになる。二枚の封止フィルムに内包される材料の厚みが大きくなるほどに、この内部材料厚みを吸収する目的で、ダイアフラムのゴム硬度を低くする、あるいはどちらかの封止フィルムの曲げ弾性率を下げ、曲げ変形に対する許容応力値を上げる必要が生じる。
上記を踏まえ、本発明の発光装置101は、ダイアフラム側を封止フィルム108に、テーブル側を透明バリアフィルム107とし、なおかつ封止フィルム108の曲げ弾性率を透明バリアフィルム107のその値よりも小さく設定することで、二枚のフィルムに内包されるOLED素子109の厚み段差を封止フィルム108側で吸収し、透明バリアフィルム107には曲げ変形を起し難い構成として製作される(図5参照)。図5における111は内包される発光デバイスの段差を透明バリアフィルムでも吸収し、段差形状が発生して応力集中が発生する部分を示している。
本発明では、上記構成とすることによって、クラックの発生を抑制し水分封止性に優れた発光装置を提供することができるだけでなく、透明バリアフィルム面の平坦化に優れて後工程での光取り出しフィルムや色味調整フィルムなどの貼合が容易な、OLED素子を内包した発光装置を提供することができる。
以上から、本発明を構成する第一の封止フィルムと第二の封止フィルムの構成技術について、OLED素子を対象に説明したが、本発明のこの技術はOLED素子だけでなく、有機薄膜太陽電池または電気泳動素子などにも幅広く適用出来る。
以上、本発明を具体的な実施形態を参照して詳細に説明したが、本発明の範囲は前述の実施形態によって限定されるべきではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものの範囲内で様々な変形が可能なことは、当該技術分野における通常の知識を持つ者には明らかである。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(透明バリアフィルム107−1の作製)
透明バリアフィルム107−1として、厚み125μmのPETフィルムの両面にアクリル系樹脂を用いたCHC層(クリアハードコート層)を5μmの厚みで塗布した基材を用い、この一方の上にCVD方式を用いてSiO系無機物を含むガスバリア層を0.5μmの厚さとなるように複数層成膜した。更にその上にシーラント層(接着層)として水溶性ポリエチレンを塗布方式で10μmの厚みで設け透明バリアフィルム107−1を作製した。
(封止フィルム108−1の作製)
また、封止フィルム108−1として、熱可塑性樹脂(ポリエチレンを主成分とした熱可塑性樹脂)を用いた20μm厚のシーラント層(接着層)、金属膜として30μm厚のAl箔層、25μm厚のPET層がラミネートされて積層された封止フィルム108−1を作製した。
(透明バリアフィルム107−2の作製)
上述の透明バリアフィルム107−1の作製におけるフィルムの構成を表1にように変更して、透明バリアフィルム107−2を作製した。
(封止フィルム108−2〜108−6の作製)
上述の封止フィルム108−1の作製におけるフィルムの構成を表2にように変更して、封止フィルム108−2〜108−6を作製した。
(OLED素子の作製)
透明基材として、厚さ180μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の両面に、アクリル系クリアハードコート層を塗布乾燥後、紫外線硬化させた基材フィルムに、大気圧プラズマCVDにより、酸化珪素からなる総膜厚900nmの透明ガスバリア層を形成したPETフィルムを作製し、当該透明基材上に、透明陽電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極層をこの順に積層してOLED素子109を作製した。
実施例1(発光装置1の作製)
上述のようにして作製した透明バリアフィルム107−1のシーラント層の所定の位置にOLED素子109を仮位置決めし、さらにその上に上記封止フィルム108−1のシーラント層がOLED素子109側になるようにして仮止めし、真空貼合することにより,OLED素子109を内包した本発明の発光装置1を作製した。なお、この仮位置決めのための熱シールについては、OLED素子109の発光部以外の部分で行なった。
実施例2〜6(発光装置2〜6の作製)
(発光装置2〜6の作製)
実施例1における発光装置1の作製と同様にして、透明バリアフィルム107−1、107−2および封止フィルム108−1〜108−4を用いて発光装置2〜6を作製した。
なお、ここで、実施例5の発光装置5は封止フィルム108とOLED素子109の間に無機封止層110として5μmのSiN層をCVD法で設け、実施例6の発光装置6は同様に樹脂封止層110として10μmの熱硬化性エポキシ樹脂層を塗布法により設けた。
比較例1、2(発光装置7、8の作製)
以上のようにして作製した透明バリアフィルム107−1と封止フィルム108−5、6を用いて、発光装置7、8を作製し、これを比較用とした。
<評価>
(曲げ弾性率の評価)
上述のようにして作製した封止フィルム108−1〜封止フィルム108−6と透明バリアフィルム107−1、107−2について、インストロン社製5582型曲げ試験機を用いて、曲げ弾性率を測定した。測定方法については、ISO 178に記載の方式に準じて、フィルムを短冊に切り抜き、3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率(単位:MPa)を測定し、下記式によりA値を求めた。結果を表3に示す。
(封止フィルム曲げ弾性率)÷(透明バリアフィルムの曲げ弾性率)=A値
なお、このA値は、透明バリアフィルム107の曲げ弾性率に対する封止フィルム108のそれぞれの曲げ弾性率の比を示しており、A値が1より小さいは、透明バリアフィルム107(第一の封止フィルム)に対して封止フィルム108(第二の封止フィルム)の曲げ弾性率が小さく、曲がりやすいことを示している。
(封止性評価)
この発光装置1〜10について、湿熱(60℃、RH90%、500時間)をかけた状態で、封止性に関する加速試験を行った。上記環境下で500時間放置した発光装置について、ダークスポットを評価した。ダークスポット(DS)は、低電圧電源((株)エーディーシー製、直流電圧・電流源R6243)にて+5Vを印加し発光装置を発光させ、その時の発光状態をマイクロスコープにより観察した。直径30μm以上のダークスポット(発光せず黒点として観察されるところ)の10mm×10mmの範囲の発生個数をカウントした。
(判定基準)
◎:0個
○:1個以上10個未満
△:10個以上20個未満
×:20個以上
封止性試験の結果、表3に示したようにダークスポット(DS)の発生個数はA値によって差があることが判明した。特に、A値が1.0未満の本発明の発光装置(発光装置1〜6)においては、封止性が優れ発光時のダークスポットが見られず所定の性能を満足するものであったのに対し、A値が1.0以上の比較用の発光装置(発光装置7、8)においては、OLED素子109の段差部分111で発生したクラックからの水分等の起因による発光時のダークスポットの成長が見られた。
比較例3(発光装置9の作製)
透明バリアフィルム107−3として、5μmのポリ塩化ビニリデンをコーティングした12μmのPET上にシーラント層としてポリプロピレンの酸変性樹脂を50μmの厚さにラミネートし、透明バリアフィルム107−3を作製した。次に、封止フィルム108−7として、12μmのポリエステルフィルム上に20μmのアルミニウム箔をラミネートし、更にその上にシーラント層としてポリプロピレンの酸変性樹脂を50μmの厚さに設け、封止フィルム108−7を作製した。この組み合わせのA値は2.3であった。
この透明バリアバリアフィルム107−3と封止フィルム108−7を用いて、実施例1と同様にして、比較用の発光装置9を作製した。
比較例4(発光装置10の作製)
透明バリアフィルム107−4として、上記透明バリアフィルム107−3のポリ塩化ビニリデンを厚さ5μmの酸化アルミニウム蒸着膜に変更して透明バリアフィルム107−4を作製した。この透明バリアフィルム107−4と上記で作製した封止フィルム108−7との組み合わせのA値は、比較例3と同じく2.3であった。
この透明バリアフィルム107−4と前述の封止フィルム108−7を用いて、発光装置10を作製した。
これらの発光装置9、10を湿熱(60℃、RH90%、500時間)をかけた状態で、水分封止性に関する加速試験を行ったところ、クラックの発生しやすい応力集中部分だけでなく、いずれも発光装置全面にダークスポットが発生した。これは発光装置9、10の第一、第二の封止フィルムの水分封止性が十分でなく実用に耐えるものではなかったことを示している。
以上の結果から、透明バリアフィルム107と封止フィルム108の曲げ弾性率を調整することで、バリア層のクラック破壊を抑止でき、発光装置の水分封止性が優れることがわかった。また、本発明の場合には、透明バリアフィルム面の平坦化に優れており後工程での光取り出しフィルムや色味調整フィルムなどの貼合が容易であることを確認した。
101 発光装置
102 透明基材
103 透明陽極層
104 有機層
105 陰極層
106 取り出し電極部
107 透明バリアフィルム(第一の封止フィルム)
108 封止フィルム(第二の封止フィルム)
109 OLED素子
110 無機封止層または熱硬化性樹脂封止層
111 内包される発光デバイスの段差を透明バリアフィルムでも吸収し、段差形状が発生して応力集中が発生する部分
112 矢印(発光光の進む方向)
201 正孔輸送層
202 発光層
203 電子輸送層
301 透明樹脂フィルム
302 ハードコート層
303 ガスバリア層
304 接着層(シーラント層)
305 金属膜
401 下チャンバ
402 下テーブル
403 貼合材料
404 上チャンバ
405 ダイヤフラム部
406 真空部分
407 陽圧部分

Claims (8)

  1. 透明基材上に、少なくとも透明陽極層、発光層を含む有機層及び陰極層をこの順番で積層した有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記透明基材側に第一の封止フィルムを設置し、前記陰極層側に第二の封止フィルムを設置することで前記有機エレクトロルミネッセンス素子が内包されるように封止された封止構造を有する発光装置であって、
    前記第二の封止フィルムの曲げ弾性率が、前記第一の封止フィルムの曲げ弾性率よりも小さいことを特徴とする発光装置。
  2. 前記第一の封止フィルムは、少なくともガスバリア層及び接着層が積層されたものであり、前記第二の封止フィルムは、少なくとも金属膜と接着層が積層されたものであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
  3. 前記封止構造は真空貼合によって作製されることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
  4. 前記第二の封止フィルムの膜厚は、前記第一の封止フィルムの膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
  5. 前記第二の封止フィルムの曲げ弾性率は、前記第一の封止フィルムの曲げ弾性率の50%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
  6. 前記陰極層の前記有機層側とは反対側の面上に、SiNの無機膜からなる封止層を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
  7. 前記陰極層の前記有機層側とは反対側の面上に、熱硬化性樹脂からなる封止層を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
  8. 前記第二の封止フィルムが有する前記金属膜が、アルミニウムであることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の発光装置。
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