JP5648554B2 - ポリマーラテックスのpH調整方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリマーラテックスのpH調整方法に関し、特にポリマーラテックスのpHを、ポリマー粒子の凝集を招くことなく、とりわけ、8.0以上に調整する方法に関する。
微細なポリマー粒子の分散液であるポリマーラテックスは、高い界面エネルギーを内部に秘めている、熱力学的には準安定な状態にある系である。このため、移送や長期の貯蔵に際し、凝固物を生成したりしないように、十分な安定性をポリマーラテックスに付与する必要がある。
乳化剤としてアニオン性界面活性剤を使用したポリマーラテックスや、カルボキシル基を含有するポリマーのラテックスにおけるポリマー粒子の分散状態は、ラテックスのpHをアルカリ性に、好ましくはpH8以上に、調整することにより、安定的に保てることが知られている。
このためのpH調整剤としては、アンモニアが使用されることが多い。アンモニアを使用することにより、ポリマーラテックスのpHを、ポリマー粒子の凝集を招くことなく、8.0以上に調整することができる。しかしながら、アンモニアの使用には、廃水中の窒素を増加させてしまうという問題がある。
このアンモニア使用による廃水問題を解決するために、アンモニアに代えて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ(一価の強塩基)が用いられる。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等は、基礎工業薬品のひとつとして多様な方面で用いられおり、比較的安価に入手することができる(特許文献1)。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等の一価の強塩基をpH調整剤として使用するに際して、通常、水溶液の状態で使用する。このとき、水酸化アルカリ水溶液が高濃度であると、水溶液添加時にポリマー粒子を凝集させてしまうという問題が生じる(特許文献2)。一方、これを避けるために、低濃度の水酸化アルカリ水溶液を使用すると、今度は、ポリマーラテックスの固形分濃度を著しく低下させてしまうという問題がある。
国際公開第2002/036665号パンフレット 特開2003−206301号公報
従って、本発明の目的は、上記のような廃水問題、ポリマー粒子の凝集、固形分濃度の著しい低下を引き起こさずに、ポリマーラテックスのpHをアルカリ性に、好ましくは8.0以上に、調整する方法を提供することにある。
本発明者らは、一価の強塩基によってポリマーラテックスのpHを調整する際のポリマーラテックスの安定性を良好に維持するための方策について研究を進め、特定の界面活性剤の存在下に、pH調整を行なうことによって、上記課題を達成できることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主たる乳化剤とするポリマーラテックスのpH調整方法であって、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩の存在下に一価の強塩基を添加することを特徴とするポリマーラテックスのpH調整方法が、提供される。
本発明のポリマーラテックスのpH調整方法において、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩がドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩であることが好ましい。
また、本発明のポリマーラテックスのpH調整方法において、アルキルベンゼンスルフォン酸塩がドデシルベンゼンスルフォン酸塩であることが好ましい。
本発明のポリマーラテックスのpH調整方法は、ポリマーラテックスが、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主体とする乳化剤を用いて、単量体を乳化重合して得られた共役ジエンポリマーラテックスである場合に好適に適用できる。
また、本発明のポリマーラテックスのpH調整方法は、ポリマーラテックスが、共役ジエン単量体単位30〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体単位0.1〜20重量%及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体単位0〜69.9重量%からなる共役ジエンポリマーのラテックスである場合に好適に適用できる。
本発明によれば、廃水問題、ポリマー粒子の凝集、固形分濃度の著しい低下等の問題を引き起こさずに、ポリマーラテックスのpHをアルカリ性に、好ましくは8.0以上に、調整することができる。
本発明のpH調整方法の適用対象となるのは、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主たる乳化剤とするポリマーラテックスである。
このポリマーラテックスは、特に制限されず、例えば、共役ジエンラテックス等の軟質ポリマーラテックスや、ポリスチレンラテックス、ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体等の硬質ポリマーが挙げられる。これらのうち、軟質ポリマーラテックス、特に共役ジエンポリマーラテックスが好ましい。
共役ジエンポリマーラテックスを構成する共役ジエンポリマーは、特に限定されないが、共役ジエン単量体単位30〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体単位0.1〜20重量%及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体単位0〜69.9重量%からなるものであることが好ましい。
共役ジエンポリマーの単量体単位比率は、共役ジエン単量体単位40〜85重量%、エチレン性不飽和酸単量体単位1〜15重量%及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体単位0〜59重量%からなるものであることが、より好ましい。
共役ジエンポリマーの単量体単位比率は、共役ジエン単量体単位50〜85重量%、エチレン性不飽和酸単量体単位2〜6重量%及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体単位0〜48重量%からなるものであることが、特に好ましい。
共役ジエンポリマーを得るための共役ジエン単量体は、特に限定されず、その具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン等を挙げることができる。
これらの共役ジエン単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン単量体としては、上記のうち、1,3−ブタジエン又はイソプレンが好ましく用いられる。
重合に使用する共役ジエン単量体の量は、得られる共役ジエンポリマーにおける共役ジエン単量体単位の量が、所望の範囲になるように適宜設定すればよい。
共役ジエンポリマーを得るためのエチレン性不飽和酸単量体は、酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば、特に限定されない。
酸性基は、特に限定されないが、代表的なものとしては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基等を例示することができる。
カルボキシル基を含有するエチレン性不飽和酸単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体を挙げることができる。
酸無水物基を含有するエチレン性不飽和酸単量体の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物等を挙げることができる。
スルホン酸基を含有するエチレン性不飽和酸単量体の具体例としては、スチレンスルホン酸等のエチレン性不飽和スルホン酸単量体等を挙げることができる。
これらのエチレン性不飽和酸単量体は、塩の形態で、例えば、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩として、用いることもできる。
これらのエチレン性不飽和酸単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エチレン性不飽和酸単量体としては、上記のうち、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、特にメタクリル酸が好ましく用いられる。
重合に使用するエチレン性不飽和酸単量体の量は、得られる共役ジエンポリマーにおけるエチレン性不飽和酸単量体単位の量が、所望の範囲になるように適宜設定すればよい。
共役ジエンポリマーを得るための、共役ジエン単量体及びエチレン性不飽和酸単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(以下、単に「その他のエチレン性不飽和単量体」ということがある。)は、特に限定されず、その具体例としては、エチレン性不飽和ニトリル単量体、ビニル芳香族単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、エチレン性不飽和アミド単量体、アルキルビニルエーテル単量体、等を挙げることができる。
エチレン性不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等を挙げることができる。
ビニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等を挙げることができる。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルであってもエチレン性不飽和多価カルボン酸エステルであってもよい。
エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルの具体例としては、アクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体(以下、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体の代表的なものとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等を挙げることができる。
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アリールエステルは、アルキル基やアリール基の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されたものであってもよい。
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル;ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル;(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル;(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル;等を挙げることができる。
エチレン性不飽和多価カルボン酸エステルの具体例としては、エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、エチレン性不飽和トリカルボン酸トリエステル等を挙げることができる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸ジエステル;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル等のイタコン酸ジエステル;等を挙げることができる。
アルキルビニルエーテル単量体の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルビニルエーテル、フルオロエチルビニルエーテル等を挙げることができる。
エチレン性不飽和アミド単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸のアミド誘導体を挙げることができ、その代表例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
また、その他のエチレン性不飽和単量体は、その分子中に架橋性部位を有するものであってもよい。
そのような単量体の具体例としては、ジビニルベンゼン等のポリビニル芳香族単量体;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等のポリアクリレート単量体;等を挙げることができる。
上記のその他のエチレン性不飽和単量体の中でも、エチレン性不飽和ニトリル単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体が好ましく用いられる。
共役ジエン単量体及びエチレン性不飽和酸単量体と共重合可能な、その他のエチレン性不飽和単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他のエチレン性不飽和単量体の使用量は、得られる共役ジエンポリマーにおけるその他のエチレン性不飽和単量体単位の量が、所望の範囲になるように適宜設定すればよい。
本発明のポリマーラテックスのpH調整方法(以下、単に「本発明のpH調整方法」ということがある。)の対象となるポリマーラテックスは、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主たる乳化剤とするポリマーラテックスである。
ここで、「主たる乳化剤である」とは、ポリマーラテックスが含有する乳化剤のうち、50重量%以上がアルキルベンゼンスルフォン酸塩である、ことを意味する。
アルキルベンゼンスルフォン酸塩は、直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩でも、分岐鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩でもよいが、直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩が好ましい。
アルキルベンゼンスルフォン酸塩におけるアルキル基は、特に限定されないが、通常、その炭素数は、8以上が好ましく、10以上が更に好ましく、12以上が特に好ましい。炭素数の上限は、通常、20である。
アルキルベンゼンスルフォン酸塩は、アルカリ金属塩でもアンモニウム塩でもよいが、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
アルキルベンゼンスルフォン酸アルカリ金属塩の代表例としては、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルフォン酸カリウムを挙げることができる。
本発明において、アルキルベンゼンスルフォン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のpH調整方法の適用対象であるポリマーラテックスの合計乳化剤量は、特に限定されないが、ポリマーラテックス中のポリマー全量に対して、通常、0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%の範囲である。
pH調整方法の適用対象であるポリマーラテックスのための、アルキルベンゼンスルフォン酸塩以外の乳化剤は、特に限定されず、通常、ポリマーラテックスの乳化剤として用いられるものを、使用することができる。
このような乳化剤の例としては、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、プルロニック型界面活性剤等の非イオン性界面活性剤;等を挙げることができるが、アニオン界面活性剤が、より好ましい。
アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主たる乳化剤とするポリマーラテックスを得る方法は、特に限定されないが、以下の方法を示すことができる。
(1)アルキルベンゼンスルフォン酸塩を乳化剤として、単量体を乳化重合する方法。
(2)乳化剤として、アルキルベンゼンスルフォン酸塩以外の乳化剤のみを用いて単量体を乳化重合した後、得られたラテックスにアルキルベンゼンスルフォン酸塩を添加する方法。
(3)乳化重合以外の方法で、ポリマーを得て、例えばこのポリマーの有機溶媒溶液を得、乳化剤を用いてこの有機溶媒溶液を転相してラテックスとする方法。
上記の方法のいずれにおいても、最終的にポリマーラテックスに含まれる乳化剤のうち、アルキルベンゼンスルフォン酸塩の比率が50重量%以上となるように、調整する。
上記方法のうち、(1)及び(2)の乳化重合による方法が好ましく、(1)アルキルベンゼンスルフォン酸塩を乳化剤として、単量体を乳化重合する方法が、より好ましい。
アルキルベンゼンスルフォン酸塩を乳化剤として、単量体を乳化重合するに際して、乳化剤として、アルキルベンゼンスルフォン酸塩のみを使用してもよく、アルキルベンゼンスルフォン酸塩とそれ以外の乳化剤を併用してもよい。
乳化重合に際して、アルキルベンゼンスルフォン酸塩とこれ以外の乳化剤を併用する場合であって、アルキルベンゼンスルフォン酸塩の比率が50重量%を下回るときは、重合後に、この比率が50重量%以上となるように、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を添加すればよい。
乳化剤としてアルキルベンゼンスルフォン酸塩を単独で使用した場合又は50重量%を超えるアルキルベンゼンスルフォン酸塩とこれ以外の乳化剤とを併用した場合であっても、重合後に、更にアルキルベンゼンスルフォン酸塩を添加することは可能である。
乳化重合により、ポリマーラテックスを得る方法は、特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
重合温度は、特に限定されないが、特に45℃以下で行なうとラテックスを安定に製造することができるので好ましい。重合温度は、10〜45℃の範囲であることが更に好ましい。
共役ジエン系ゴムラテックスの製造において、単量体の重合系への添加方法は特に限定されず、単量体を重合反応器に一括して仕込む方法、単量体を重合反応器に連続的に供給する方法、単量体の一部を重合反応器に仕込み、残部を重合反応器に連続的に供給する方法等のいずれを採用してもよい。
乳化重合において用いる重合開始剤は、特に限定されないが、具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等を挙げることができる。
これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の重合開始剤のうち、無機過酸化物重合開始剤は、ラテックスを安定して製造することができるので好ましく用いられる。
重合開始剤の使用量は、その種類によって若干異なるが、単量体100重量部に対して、0.01〜1.0重量部であることが好ましい。
また、無機又は有機の過酸化物重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤は、重合開始剤として好ましく使用することができる。
このために用いられる還元剤は、特に限定されないが、その例としては、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のアミン化合物;等が挙げられる。
これらの還元剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
還元剤の使用量は、その種類によって若干異なるが、過酸化物1重量部に対して0.03〜10重量部であることが好ましい。
なお、乳化重合に際して、通常使用される分子量調整剤、粒径調整剤、老化防止剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合助剤(重合副資材)を、必要に応じて、使用することができる。
乳化重合によって得られるポリマーラテックスの粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察で測定される数平均粒子径において、好ましくは60〜300nm、より好ましくは80〜150nmである。なお、この粒子径は、乳化剤及び重合開始剤の使用量を調節する等の手段により、所望の値に調整できる。
本発明のpH調整方法においては、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主たる乳化剤とするポリマーラテックスのpHを、このラテックスに、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩の存在下に一価の強塩基を添加することによって調整する。
一価の強塩基は、特に限定されないが、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
一価の強塩基は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
この一価の強塩基は、水溶液として、添加することが好ましい。一価の強塩基の水溶液における一価の強塩基の濃度は、通常、0.1〜15重量%、より好ましくは、5〜12重量%である。なお、水溶液に代えて、アルコール等の水溶性溶媒と水との混合物である水性溶媒の溶液を用いてもよい。
一価の強塩基の濃度が、15重量%を超えると、凝固物が発生したり、ラテックス粒子が凝集したりする恐れがある。逆に、0.1重量%未満では、pH調整後のラテックスの固形分濃度が低下してしまう傾向にある。
本発明のpH調整方法において、調整すべきポリマーラテックスのpH範囲は特に限定されない。即ち、例えば、pH3からpH7まで調整してもよく、pH5からpH9まで調整してもよく、pH7からpH11まで調整してもよい。
しかし、本発明のpH調整方法は、ポリマーラテックスのpHを、重合後のpHの低い状態から、ポリマーラテックスが各種用途において使用されるpH8程度から10程度に、上昇させるときに、その効果が十分に示される。
本発明のpH調整方法においては、一価の強塩基のポリマーラテックスへの添加を、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩の存在下に行なうことが必要である。
アルキルジフェニルエーテルの存在下に、pH調整を行なうことにより、高濃度の一価の強塩基溶液を用いても、ラテックス粒子の凝集を招くことなく、pH調整を行なうことができる。
アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩は、特に限定されないが、アルキル基の炭素数は、8以上が好ましく、10以上が更に好ましく、12以上が特に好ましい。炭素数の上限は、通常、20である。
アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩を構成する塩基は、特に限定されないが、アルカリ金属であることが好ましく、ナトリウム及びカリウムが特に好ましい。
一価の強塩基は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩の具体例としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム及びドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸カリウムが挙げられる。
アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩の使用量は、ポリマーの重量に対して、通常、0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜3重量%の範囲である。
本発明のpH調整方法において、一価の強塩基のポリマーラテックスへの添加に際して、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩を存在させるには、例えば、以下の方法を取り得る。
(1)一価の強塩基を添加すべきポリマーラテックスに、予め、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩を含有させておく。
アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩を含有させるには、ポリマーラテックスを得るための重合に際してアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩を使用する、ポリマーラテックスの重合後にアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩を添加する等の方法がある。
(2)ポリマーラテックスに添加すべき一価の強塩基の水溶液や水性溶液に、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩を溶解して、一価の強塩基とアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩との混合溶液として、ポリマーラテックスに添加する。
この混合溶液における一価の強塩基の濃度は、一価の強塩基を単独で添加する際の濃度と同等でよい。また、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩の濃度は、特に限定されない。
上記の方法のうち、簡便に添加できる観点からは、(2)の方法が好ましい。
以下に製造例及び実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、特に断りのない限り、部及び%は、それぞれ、重量基準である。
ラテックスの各種物性は、以下の方法により、測定した。
〔pH値〕
pHメーター(M12:HORIBA社製)を用いて25℃で測定した。
〔凝集物含有率〕
全固形分濃度既知の試料ラテックスの一定重量の濃度を約40%に調整して、重量既知の200メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、ラテックスを除去する。これを、105℃で30分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定する。
凝集物含有率は、下記(1)式から求められる。
凝集物含有率(%)={(A−B)/(C×D)}×10,000
ここで、
A: 乾燥後の、金網及び乾燥凝集物の重量
B: 金網の重量
C: 試料ラテックスの重量
D: 試料ラテックスの全固形分(%)
である。
(製造例1)
窒素置換した耐圧重合反応器に、単量体としてアクリロニトリル27.0部、1,3−ブタジエン67.5部及びメタクリル酸0.5部の合計100部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.5部、軟水132部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム1.5部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3部、及び還元剤としてエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05部を仕込んだ。重合温度を37℃に保持して30時間反応させた後、反応停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合を終了して、pH5.6のポリマーラテックスAを得た。重合転化率は97%であった。
参考例1)
ポリマーラテックスAを攪拌しながら、これに、ドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウムをポリマーラテックスAの固形分100部に対して1.0部の割合で、10重量%水溶液の形態で、添加し、次いで、水酸化ナトリウムをポリマーラテックスAの固形分100部に対して0.5部の割合で、5重量%水溶液の形態で、添加して、pHが8.1のポリマーラテックスを得た。得られたポリマーラテックスについて、凝集物含有率を測定した。結果を表1に示す。
(実施例
ポリマーラテックスAの固形分100部に対して1.0部の割合のドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウムとポリマーラテックスAの固形分100部に対して0.5部の割合の水酸化ナトリウムとを混合して、固形分濃度が7.5重量%の混合水溶液を得た。
ポリマーラテックスAを攪拌しながら、これに、上記の混合水溶液を添加し、pHが8.1のポリマーラテックスを得た。得られたポリマーラテックスについて、凝集物含有率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリマーラテックスAを攪拌しながら、これに、ポリマーラテックスAの固形分100部に対して0.5部の割合で、水酸化ナトリウムを、5重量%水溶液の形態で、添加して、pHが8.1のポリマーラテックスを得た。得られたポリマーラテックスについて、凝集物含有率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
ドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウムに代えて、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを用いたほかは、実施例1と同様にしてポリマーラテックスのpH調整を行い、pHが8.1のポリマーラテックスを得た。得られたポリマーラテックスについて、凝集物含有率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
ドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウムに代えて、ロジン酸カリウムを用いたほかは、実施例1と同様にしてポリマーラテックスのpH調整を行い、pHが8.1のポリマーラテックスを得た。得られたポリマーラテックスについて、凝集物含有率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
ドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウムに代えて、β−ナフタレンスルフォン酸ホルマリン重縮合物のナトリウム塩(花王社製、商品名「デモールN」)用いた以外は、実施例1と同様にポリマーラテックスのpH調整を行い、pHが8.1のポリマーラテックスを得た。得られたポリマーラテックスについて、凝集物含有率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005648554
上記の結果から、以下のことが分かる。
重合後の低pHのポリマーラテックスに、何らの界面活性剤を添加しないでpH調整を行なった比較例1では、pH調整後のポリマーラテックスの凝集物含有率が0.294%となり、ラテックス安定性に劣る結果となった。
重合後の低pHのポリマーラテックスに、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを添加し、次いで水酸化ナトリウムを添加した場合(比較例2)、ポリマーラテックスにロジン酸カリウムを添加し、次いで水酸化ナトリウムを添加した場合(比較例3)、及び、ポリマーラテックスにβ−ナフタレンスルフォン酸ホルマリン重縮合物のナトリウム塩を添加し、次いで水酸化ナトリウムを添加した場合(比較例4)は、pH調整後のポリマーラテックスの凝集物含有率が、それぞれ、0.137%(比較例2)、0.165%(比較例3)、0.254%(比較例4)となり、いずれも、ラテックス安定性に劣る結果となった。
これに対して、ポリマーラテックスにアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩としてドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウムを添加し、次いで一価の強塩基として水酸化ナトリウムを添加した参考例1においては、pH調整後のポリマーラテックスの凝集物含有率が0.005%となり、ラテックス安定性に優れる結果となった。
また、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩であるドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウムと一価の強塩基である水酸化ナトリウムとの混合物を、ポリマーラテックスに添加した実施例においては、pH調整後のポリマーラテックス中に含まれる凝集物含有率が0.003%となった。
これから、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主たる乳化剤とするポリマーラテックスのpH調整を、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主体とする乳化剤を用いて単量体を乳化重合して得られたポリマーラテックスに、一価の強塩基とアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩との混合溶液を添加することによって行なえば、ポリマーラテックス粒子の凝集を引き起こすことなく、所望のpHを有するポリマーラテックスを得ることができる。

Claims (4)

  1. アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主たる乳化剤とするポリマーラテックスのpH調整方法であって、アルキルベンゼンスルフォン酸塩を主体とする乳化剤を用いて単量体を乳化重合して得られたポリマーラテックスに、一価の強塩基とアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩との混合溶液を添加することを特徴とするポリマーラテックスのpH調整方法。
  2. アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩がドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩である請求項1に記載のポリマーラテックスのpH調整方法。
  3. アルキルベンゼンスルフォン酸塩がドデシルベンゼンスルフォン酸塩である請求項1又は2に記載のポリマーラテックスのpH調整方法。
  4. ポリマーラテックスが、共役ジエン単量体単位30〜90重量%、エチレン性不飽和酸単量体単位0.1〜20重量%及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体単位0〜69.9重量%からなる共役ジエンポリマーのラテックスである、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリマーラテックスのpH調整方法。
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