JP5751605B2 - 重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法に関するものである。詳しくは、重合反応中に発生する粗大凝集物が極めて少なく、かつ、製造初期において重合反応系外からの過大な加熱を必要とせず、省エネルギー性に優れた効率のよい重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法に関するものである。
近年、様々な用途に多種多様な重合体ラテックスや重合体エマルジョンが、ゴム強化樹脂、各種水系接着剤、紙塗工用バインダー、ディップ成型用ラテックスなどに広く利用されている。各用途において操業性に優れて使いやすく、最終製品に高度な物性バランスを与えるよう改良が重ねられているものの、更に高度な物性バランスが切望されている。また、重合体ラテックスや重合体エマルジョンの製造に際しては、それらの重合安定性が良好で粗大凝集物の発生を抑制できうる重合方法が安定生産体制構築の観点から切望されている。
上記のような要求性能に対して、例えば、特開平6−179772号公報(特許文献1)、特開平10−1504号公報(特許文献2)、特開2003−238635号公報(特許文献3)や特開2003−335807号公報(特許文献4)のような技術が提案されている。
また、重合体ラテックス、重合体エマルジョンの重合方法を工夫して、前記の目標を達成しようとする場合、重合途中の反応温度などを一定に保つ、あるいは2段階にして一定に保つことが提案されているが、その操作には、製造初期において重合系の外部から加熱することが必要である。特に比較的高温域での重合では、所定温度に到達させるのに必要とされる外部からの加熱エネルギーも大きく、地球温暖化や省エネルギーの観点からは、そのエネルギーの低減化についても社会的要請が高まるばかりである。
特開平6−179772号公報 特開平10−1504号公報 特開2003−238635号公報 特開2003−335807号公報
本発明は、従来から要求のあった製品の性能に加えて、近年急激に要求が高まった省エネルギーに関する上記課題の両者を解決するために成されたもので、重合反応中に発生する粗大凝集物の発生が極めて少なく、かつ、重合反応系外からの過大な加熱を必要とせず、省エネルギーに優れた効率のよい重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法を提供することを目的とするものである。
すなわち本発明は、重合性単量体をラジカル乳化重合して得られる重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法であって、単量体の一部または全量を仕込み完了後、重合系内の温度T1が0〜50℃の範囲で重合を開始した後、重合系内の温度T2を60℃〜100℃の範囲に到達させるに際し、その温度上昇(T2−T1)に必要な熱量の15%以上を重合による重合熱を利用して昇温させ、重合開始から180〜900分で重合性単量体の重合転化率を0.9以上に到達させることを特徴とする重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法を提供するものである。
本発明における製造方法を用いれば、重合初期における外部からの加熱エネルギーを大幅に低減できるとともに、重合反応における粗大凝集物性の発生を低く抑えることができる。また、本発明における製造方法によって製造される重合体ラテックス、または重合体エマルジョンはゴム強化樹脂用のゴム重合体、紙加工用、不織布含浸用、繊維加工用の共重合体ラテックス、ディップ成型用、ゴム発泡体成型用の共重合体ラテックス、粘着加工用の共重合体エマルジョンなど非常に幅広い分野に活用することができる。
以下、本発明の製造方法につき詳細に説明する。
本発明において、重合で発生する重合熱は特定範囲の昇温コントロールに積極的に利用される。よって、単量体の一部または全量を仕込み(以下、初期仕込みと記す場合あり)完了後、温度T1(0〜50℃)の任意の温度で重合を開始すればよく、その後、反応系が60℃を越える温度まで、外部からの多大な熱源によって加熱する必要は無い。T1は好ましくは10〜50℃である。
本発明において、初期仕込み完了後、重合を開始して重合系内の温度T2を60℃〜100℃の範囲に到達させるに際して、その温度上昇(T2−T1)に必要な熱量の15%以上を重合熱によって賄うことが必要である。15%未満では、外部から85%を超える熱量を与えねばならず、省エネルギー性に劣る。好ましくは、重合熱が温度上昇(T2−T1)に必要な熱量の25%以上、更に好ましくは50%以上を重合熱によって賄うことが好ましい。また、重合開始前に仕込む単量体は、単量体の一部又は全量の何れでもよく、単量体の一部を仕込む場合には、その後、重合を終了させる任意の間に残部の単量体を添加すればよい。
本発明において、重合系内の温度T2が60℃〜100℃に到達した後は、T2を60℃〜100℃の範囲内で一定に保っても、必要に応じて変化させても本発明の効果を妨げないが、温度T2に到達した後は実質的に重合温度は一定に保って重合を継続するか、もしくは一定時間重合温度を一定に保って重合した後、重合温度を上昇させて(上限は100℃)重合を行なうことが好ましい。また、重合系内の温度T2を60℃〜100℃の範囲を保って重合を継続する間、適宜、残部の単量体が添加され、さらには必要に応じて重合速度調節剤などを用いて重合反応による単位時間当たりの発熱量を制御できる。なお、本発明においては、T2−T1=10℃以上、好ましくは20℃以上であることが好ましい。
また、通常、反応槽を取り巻くジャケットなどに20〜35℃の常温冷却水を流して熱交換させることが省エネルギーの観点で最適であるが、必要に応じて20℃未満のチルド冷却水を用いたり、スチームや電熱ヒーターで加温した加温水を用いたりすることもできる。更には反応槽の任意の場所に空冷できるフィンを設置したり、従来公知の加熱冷却装置を重合槽に付帯させて補助的に活用したりすることも、本発明の効果を妨げない範囲で使用することができる。
本発明において、使用する重合水の量は特に限定されないが、重合性単量体合計100重量部に対して、65〜300重量部使用されることが好ましい。また、本発明においては、重合開始前に仕込む初期単量体とともに友重合体シードを添加して、公知のシード重合法を適応することも可能である。また、単量体を連続的または間欠的に添加する場合、均一な組成の単量体混合物を仕込む均一フィード法、途中で1回または数回にわたって単量体(混合物)の組成を変える二段重合法、または多段重合法、連続的に単量体組成を変化させて仕込むパワーフィード法など、いずれの添加方法も採用することができる。
また、本発明における単量体以外の各種成分の添加方法についても特に制限はなく、分割添加方法、連続添加方法などの何れであっても本発明の効果を妨げるものではない範囲で採用することができる。
本発明においては、従来公知の重合性単量体を制限なく使用することができる。例えば、共役ジエン系単量体、芳香族ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、シアン化ビニル系単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、不飽和カルボン酸アミド系単量体、その他酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル類や塩化ビニル系単量体などが使用できる。これら重合性単量体のうち、特に共役ジエン系単量体を20〜100重量%含むことが好ましい。
共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にスチレンの使用が好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマルエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にメチルメタクリレート、ブチルアクリレートの使用が好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの使用が好ましい。
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にβ−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレートの使用が好ましい。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、イタコン酸の使用が好ましい。
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリルアミドまたはメタクリルアミドの使用が好ましい。
本発明において、重合体ラテックス、または重合体エマルジョンを製造する際には、公知の乳化剤や界面活性剤を使用することができる。例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。
本発明においては、公知の連鎖移動剤を使用することができる。例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。さらに、連鎖移動剤としてはα−メチルスチレンダイマーも使用することができる。α−メチルスチレンダイマーには、異性体として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテンおよび1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンがあるが、α−メチルスチレンダイマーとしては、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの含有量が60重量%以上、特に80重量%以上であることが好ましい。これらの連鎖移動剤の量は特に限定されないが、通常、単量体100重量部に対して0〜5重量部にて使用される。
本発明においては、さらに公知の重合開始剤として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドの使用が好ましい。単量体100部に対する重合開始剤の量は特に制限されないが、単量体組成、重合反応系のpH、他の添加剤などの組み合わせを考慮して、重合熱や温度上昇が本発明の範囲になるよう、適宜調整される。
重合反応系内に前記重合開始剤とともにごく微量の鉄イオンと還元剤を組み合わせて存在させることも可能であり、それらの量は使用する単量体組成、重合開始剤の種類と量、重合反応系のpH、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整される。
還元剤の具体例としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、また、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩などの還元性スルホン酸塩、更にはL−アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類、更にはデキストロース、サッカロース、乳糖などの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が上げられる。特に亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、乳糖、デキストロースが好ましい。
本発明においては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を使用することができる。特に、沸点が適度に低く、重合終了後に水蒸気蒸留などによって回収、再利用しやすいシクロヘキセンやトルエンが、重合体ラテックスまたは重合体エマルジョンの品質の面から好適である。
本発明においては、必要に応じて酸素補足剤、キレート剤、分散剤、pH調整剤等の公知の添加剤を用いることも差し支えなく、これらは種類、使用量ともに特に限定されず、適宜適量使用することが出来る。更には消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を用いることも差し支えなく、これらも種類、使用量ともに特に限定されず、適宜適量使用することが出来る。また、本発明の製造方法で製造された重合体ラテックス、または重合体エマルジョンは、その使用目的に応じて他のラテックスと適宜適量ブレンドすることもできる。
〔実施例〕
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。また、特段の断りが無い限り、%や部は重量を基準とする。
各物性の評価方法
重合転化率の評価方法:重合体ラテックスまたは、重合体エマルジョン約2g秤量し、この値を「乾燥前重量」とする。これを150℃で30分乾燥して秤量し、この値を「乾燥後重量」とする。重合槽へ仕込む単量体以外の固形分部数をSとし、Sと「重合水部数」と「単量体合計部数」との合計を「仕込み総部数」とすれば、下記の式(1)と式(2)を経て、式(3)によって、重合転化率が計算される。
式(1) 重合転化部数 = 仕込み総部数×乾燥後重量/乾燥前重量−S
式(2) 単量体合計部数 = 仕込み総部数−(重合水部数+S)
式(3) 重合転化率 = 重合転化部数/単量体合計部数
重合熱利用効率E(%)の計算:初期仕込みを完了後、重合系内の温度をT1℃からT2℃まで(T2−T1)℃だけ昇温させるのに必要な熱量Hr(kcal)は、T2℃に到達するまでに槽内に仕込まれた物質の全熱容量Ha(kcal/℃)を用いて、下記の式(4)で計算される。
式(4) Hr = Ha×(T2−T1)
ただし、Haの算出に際して便宜的に単量体および油溶性物質の比熱を全て0.5、単量体以外の水溶性物質と重合に使用した純水の比熱を全て1.0とした。
また、槽内がT2℃に到達した時点までの重合熱Hpは、T2℃に到達するまでに槽内に仕込まれた単量体の部数M(部)、単量体1部当たりの単位重合熱Hu(kcal/部)、T2℃に到達した時点での重合転化率CT2を用いて下記の式(5)で計算される。
式(5) Hp = M×Hu×CT2
最終的に重合熱利用効率E(%)は、式(4)のHrと式(5)のHpを用いて下記の式(6)で計算される。
式(6) E = Hp/Hr×100
ただし、単量体1部当たりの単位重合熱Huについては単量体の種類や共重合する際の共重合組成により変化するので、本発明では、株式会社培風館出版から昭和50年6月20日に初版が発行された高分子学会編「共重合1反応解析」の295項から307項にわたる記載を参考にして、全ての単量体について16.5kcal/molの値を用いた。
具体的には、同書296項の表30に記載されている中で工業的に大量消費されている代表的な単量体の重合熱、ブタジエン17.6kcal/mol、スチレン16.68kcal/mol、アクリロニトリル18.3kcal/mol、メタクリル酸メチル13.0〜13.9kcal/molの重合熱を算術平均して、16.5kcal/molを全ての重合体組成について一律に使用することにした。例えば、分子量が54.1であるブタジエンの場合、重量(g)/部数換算係数を1(g/部)として単量体部数当たりの重合熱は16.5÷54.1=0.305kcal/部となり、同様にスチレンで0.158kcal/部、アクリロニトリルで0.345kcal/部、メタクリル酸メチルで0.165kcal/部となる。
省エネルギー性:前記の重合熱利用効率E(%)を下記の様に相対区分して評価した。値が高いほど外部からの加熱熱量が少なく省エネルギー性が良い。
◎(優秀):50%以上
○(良好):50%未満〜15%以上
△(微劣):15%未満〜5%以上
×(不良): 5%未満
粗大凝集物の発生量:得られた重合体ラテックス、または重合体エマルジョン1リットルを重量既知の200メッシュのステンレス製金網でろ過した。その際、金網上に捕捉された粗大凝集物を120℃で60分間乾燥して水分を除去し、その乾燥重量を測定した。測定された粗大凝集物の乾燥重量をろ過前の試料中の固形分重量で除して、粗大凝集物の発生量(重量%)を求めた。得られた測定結果に基づいて下記の様に相対区分、評価した。
◎(優秀):0.01未満
○(良好):0.01以上〜0.1未満
△(微劣):0.1以上〜0.5未満
×(不良):0.5以上
数平均粒子径の測定方法:重合体ラテックスまたは、重合体エマルジョンを透過型電子顕微鏡で撮影し、2000個の粒子の直径を測定して単純数平均値(nm)を算出した。
ゴム強化樹脂用ゴム重合体ラテックスの作製
(実施例1)
重合体ラテックス1の作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水140部、ロジン酸カリウム2.5部、ブタジエン95部、スチレン4部、アクリロニトリル1部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.002部、ブドウ糖0.10部、燐酸ナトリウム0.05部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は30℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで30℃(T1)で重合を開始した。重合開始から120分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を70℃に上昇させた。この時点での槽内ラテックスの固形分濃度は17.9%、重合転化率は0.406であった。重合熱利用効率Eは158%であった。重合開始120分後から540分後までは、重合温度を70℃に保ち重合を継続した。重合開始540分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、重合体ラテックス1を得た。
重合体ラテックス1の数平均粒子径は120nm、pH10.2、固形分濃度41.7%、粗大凝集物の発生量は0.006%であった。
(実施例2)
重合体ラテックス2の作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ロジン酸カリウム1.5部、ブタジエン28部、スチレン1部、アクリロニトリル1部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、硫酸第一鉄0.0015部、ブドウ糖0.11部、燐酸ナトリウム0.06部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は35℃であった。次にt−ブチルハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで35℃(T1)で重合を開始した。重合開始から90分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を74℃に上昇させると共に、重合開始60分後から360分後まで、ブタジエン69部、アクリロニトリル1部、ロジン酸カリウム1.0部、純水10部を連続的に添加した。重合開始から90分経過した時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は12.5%、重合転化率は0.518であった。重合熱利用効率Eは98%であった。重合開始90分後から510分後までは、重合温度を74℃に保ち重合を継続した。重合開始510分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、重合体ラテックス2を得た。
重合体ラテックス2の数平均粒子径は105nm、pH10.3、固形分濃度41.7%、粗大凝集物の発生量は0.002%であった。
(比較例A)
重合体ラテックスAの作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ロジン酸カリウム1.5部、ブタジエン29部、スチレン5部、アクリロニトリル1部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0017部、ブドウ糖0.09部、燐酸ナトリウム0.08部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は35℃であった。重合熱を利用せずに外部ジャケットに高温水を流しながら90分かけて槽内温度を62℃に上昇させた。その後、過硫酸カリウム0.3部を仕込んで62℃で重合を開始した。重合開始と同時に300分かけて、ブタジエン64部、アクリロニトリル1部、ロジン酸カリウム1.0部、純水10部を連続的に添加した。重合開始時点、つまり62℃到達時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は1.00%、重合転化率は0であった。重合熱利用効率Eは0%であった。重合開始直後から300分後までは、重合温度を62℃に保ち重合を継続した。重合開始300分後から510分後までは重合温度を62℃から70℃へ上昇させながら重合を継続した。重合開始510分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、重合体ラテックスAを得た。
重合体ラテックス2の数平均粒子径は115nm、pH10.2、固形分濃度41.9%、粗大凝集物の発生量は0.012%であった。
(比較例B)
重合体ラテックスBの作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水120部、ロジン酸カリウム1.5部、ブタジエン95部、スチレン5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.002部、ブドウ糖0.10部、燐酸ナトリウム0.05部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は33℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで33℃(T1)で重合を開始した。重合開始から180分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を54℃に上昇させると共に、重合開始180分後から780分後までロジン酸カリウム1.5部と純水20部を連続的に添加した。重合開始から180分経過した時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は11.2%、重合転化率は0.229であった。重合熱利用効率Eは190%であった。重合開始180分後から900分後までは、重合温度を54℃に保ち重合を継続した。重合開始900分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、重合体ラテックスBを得た。
重合体ラテックスBの数平均粒子径は170nm、pH10.3、固形分濃度42.0%、粗大凝集物の発生量は0.618%であった。
ディップ成型用ゴム重合体ラテックスの作製
(実施例3)
重合体ラテックス3の作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、ブタジエン67部、アクリロニトリル29部、メタクリル酸4部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0015部、L−アスコルビン酸0.20部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は35℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで35℃(T1)で重合を開始した。重合開始から60分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を65℃に上昇させた。この時点での槽内ラテックスの固形分濃度は9.29%、重合転化率は0.196であった。重合熱利用効率Eは112%であった。重合開始60分後から120分後までは、重合温度を65℃に保ちながら、重合開始120分後から540分後までは、重合温度を65℃から70℃へ上昇させながら重合を継続した。また、重合開始60分後から360分後までは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部と純水10部を連続的に添加した。重合開始540分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認してからジエチルヒドロキシアミン0.01部を添加し、アンモニア水でpHを8以上に保ちながら、水蒸気蒸留によって未反応単量体を除去して重合体ラテックス3を得た。
重合体ラテックス3の数平均粒子径は115nm、pH8.2、固形分濃度45.7%、粗大凝集物の発生量は0.002%であった。
(実施例4)
重合体ラテックス4の作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、ブタジエン27部、アクリロニトリル9部、メタクリル酸4部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0010部、L−アスコルビン酸0.20部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は30℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで30℃(T1)で重合を開始した。重合開始から90分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を60℃に上昇させると共に、重合開始60分後から360分後まで、ブタジエン40部、アクリロニトリル20部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、純水10部を連続的に添加した。重合開始から90分経過した時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は12.5%、重合転化率は0.449であった。重合熱利用効率Eは135%であった。重合開始90分後から180分後までは、重合温度を60℃に保ち、重合開始180分後から510分後までは重合温度を60℃から70℃へ上昇させながら重合を継続した。重合開始510分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認してからジエチルヒドロキシアミン0.01部を添加し、アンモニア水でpHを8以上に保ちながら、水蒸気蒸留によって未反応単量体を除去して重合体ラテックス4を得た。
重合体ラテックス4の数平均粒子径は125nm、pH8.2、固形分濃度45.6%、粗大凝集物の発生量は0.003%であった。
(比較例C)
重合体ラテックスCの作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、ブタジエン24.5部、アクリロニトリル18.5部、メタクリル酸3部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0015部、L−アスコルビン酸0.25部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は35℃であった。重合熱を利用せずに外部ジャケットに高温水を流しながら90分かけて槽内温度を62℃に上昇させた。その後、過硫酸カリウム0.5部を仕込んで62℃で重合を開始した。重合開始と同時に300分かけて、ブタジエン42部、アクリロニトリル10部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、メタクリル酸2部を連続的に添加した。重合開始時点、つまり62℃到達時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は0.98%、重合転化率は0であった。重合熱利用効率Eは0%であった。重合開始直後から300分後までは、重合温度を62℃に保ち重合を継続した。重合開始300分後から重合開始510分後までは重合温度を62℃から70℃へ上昇させながら重合を継続した。重合開始510分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認してからジエチルヒドロキシアミン0.01部を添加し、アンモニア水でpHを8以上に保ちながら、水蒸気蒸留によって未反応単量体を除去して重合体ラテックスCを得た。
重合体ラテックスCの数平均粒子径は130nm、pH8.0、固形分濃度45.0%、粗大凝集物の発生量は0.025%であった。
(比較例D)
重合体ラテックスDの作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水120部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、ブタジエン66部、アクリロニトリル29部、メタクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0010部、L−アスコルビン酸0.20部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は28℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで28℃(T1)で重合を開始した。重合開始から180分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を52℃に上昇させると共に、重合開始180分後から780分後までドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部と純水20部を連続的に添加した。重合開始から180分経過した時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は11.2%、重合転化率は0.228であった。重合熱利用効率Eは170%であった。重合開始180分後から900分後までは、重合温度を52℃に保ち重合を継続した。重合開始900分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認してからジエチルヒドロキシアミン0.01部を添加し、アンモニア水でpHを8以上に保ちながら、水蒸気蒸留によって未反応単量体を除去して重合体ラテックスDを得た。
重合体ラテックスDの数平均粒子径は165nm、pH8.1、固形分濃度45.2%、粗大凝集物の発生量は0.425%であった。
以上の重合体ラテックスの重合結果を表1にまとめた。
以上のとおり、本発明は重合反応中に発生する粗大凝集物の発生が極めて少なく、かつ、製造初期において重合反応系外からの過大な加熱を必要とせず、省エネルギー性に優れた効率のよい重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造を可能にするものである。

Claims (6)

  1. 重合性単量体をラジカル乳化重合して得られる重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法であって、単量体の一部または全量を仕込み完了後、重合系内の温度T1が0〜50℃の範囲で重合を開始した後、重合系内の温度T2を60℃〜100℃の範囲に到達させるに際し、その温度上昇(T2−T1)に必要な熱量の15%以上を重合による重合熱を利用して昇温させ、重合開始から180〜900分で重合性単量体の重合転化率を0.9以上に到達させることを特徴とする重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
  2. 重合開始から180〜540分で重合性単量体の重合転化率を0.9以上に到達させる請求項1に記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
  3. 重合性単量体合計100重量部に対して65〜300重量部の重合水を使用してなる請求項1または2に記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
  4. T2−T1=10℃以上である請求項1〜何れかに記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
  5. 温度上昇(T2−T1)に必要な熱量の50%以上を重合による重合熱によって昇温させることを特徴とする請求項1〜何れかに記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
  6. 重合性単量体が共役ジエン系単量体を20〜100重量%含むことを特徴とする請求項1〜何れかに記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
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