JP5751605B2 - 重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法 - Google Patents
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上記のような要求性能に対して、例えば、特開平6−179772号公報(特許文献1)、特開平10−1504号公報(特許文献2)、特開2003−238635号公報(特許文献3)や特開2003−335807号公報(特許文献4)のような技術が提案されている。
また、重合体ラテックス、重合体エマルジョンの重合方法を工夫して、前記の目標を達成しようとする場合、重合途中の反応温度などを一定に保つ、あるいは2段階にして一定に保つことが提案されているが、その操作には、製造初期において重合系の外部から加熱することが必要である。特に比較的高温域での重合では、所定温度に到達させるのに必要とされる外部からの加熱エネルギーも大きく、地球温暖化や省エネルギーの観点からは、そのエネルギーの低減化についても社会的要請が高まるばかりである。
また、通常、反応槽を取り巻くジャケットなどに20〜35℃の常温冷却水を流して熱交換させることが省エネルギーの観点で最適であるが、必要に応じて20℃未満のチルド冷却水を用いたり、スチームや電熱ヒーターで加温した加温水を用いたりすることもできる。更には反応槽の任意の場所に空冷できるフィンを設置したり、従来公知の加熱冷却装置を重合槽に付帯させて補助的に活用したりすることも、本発明の効果を妨げない範囲で使用することができる。
また、本発明における単量体以外の各種成分の添加方法についても特に制限はなく、分割添加方法、連続添加方法などの何れであっても本発明の効果を妨げるものではない範囲で採用することができる。
還元剤の具体例としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、また、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩などの還元性スルホン酸塩、更にはL−アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類、更にはデキストロース、サッカロース、乳糖などの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が上げられる。特に亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、乳糖、デキストロースが好ましい。
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。また、特段の断りが無い限り、%や部は重量を基準とする。
重合転化率の評価方法:重合体ラテックスまたは、重合体エマルジョン約2g秤量し、この値を「乾燥前重量」とする。これを150℃で30分乾燥して秤量し、この値を「乾燥後重量」とする。重合槽へ仕込む単量体以外の固形分部数をSとし、Sと「重合水部数」と「単量体合計部数」との合計を「仕込み総部数」とすれば、下記の式(1)と式(2)を経て、式(3)によって、重合転化率が計算される。
式(1) 重合転化部数 = 仕込み総部数×乾燥後重量/乾燥前重量−S
式(2) 単量体合計部数 = 仕込み総部数−(重合水部数+S)
式(3) 重合転化率 = 重合転化部数/単量体合計部数
式(4) Hr = Ha×(T2−T1)
ただし、Haの算出に際して便宜的に単量体および油溶性物質の比熱を全て0.5、単量体以外の水溶性物質と重合に使用した純水の比熱を全て1.0とした。
また、槽内がT2℃に到達した時点までの重合熱Hpは、T2℃に到達するまでに槽内に仕込まれた単量体の部数M(部)、単量体1部当たりの単位重合熱Hu(kcal/部)、T2℃に到達した時点での重合転化率CT2を用いて下記の式(5)で計算される。
式(5) Hp = M×Hu×CT2
最終的に重合熱利用効率E(%)は、式(4)のHrと式(5)のHpを用いて下記の式(6)で計算される。
式(6) E = Hp/Hr×100
ただし、単量体1部当たりの単位重合熱Huについては単量体の種類や共重合する際の共重合組成により変化するので、本発明では、株式会社培風館出版から昭和50年6月20日に初版が発行された高分子学会編「共重合1反応解析」の295項から307項にわたる記載を参考にして、全ての単量体について16.5kcal/molの値を用いた。
具体的には、同書296項の表30に記載されている中で工業的に大量消費されている代表的な単量体の重合熱、ブタジエン17.6kcal/mol、スチレン16.68kcal/mol、アクリロニトリル18.3kcal/mol、メタクリル酸メチル13.0〜13.9kcal/molの重合熱を算術平均して、16.5kcal/molを全ての重合体組成について一律に使用することにした。例えば、分子量が54.1であるブタジエンの場合、重量(g)/部数換算係数を1(g/部)として単量体部数当たりの重合熱は16.5÷54.1=0.305kcal/部となり、同様にスチレンで0.158kcal/部、アクリロニトリルで0.345kcal/部、メタクリル酸メチルで0.165kcal/部となる。
◎(優秀):50%以上
○(良好):50%未満〜15%以上
△(微劣):15%未満〜5%以上
×(不良): 5%未満
◎(優秀):0.01未満
○(良好):0.01以上〜0.1未満
△(微劣):0.1以上〜0.5未満
×(不良):0.5以上
(実施例1)
重合体ラテックス1の作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水140部、ロジン酸カリウム2.5部、ブタジエン95部、スチレン4部、アクリロニトリル1部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.002部、ブドウ糖0.10部、燐酸ナトリウム0.05部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は30℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで30℃(T1)で重合を開始した。重合開始から120分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を70℃に上昇させた。この時点での槽内ラテックスの固形分濃度は17.9%、重合転化率は0.406であった。重合熱利用効率Eは158%であった。重合開始120分後から540分後までは、重合温度を70℃に保ち重合を継続した。重合開始540分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、重合体ラテックス1を得た。
重合体ラテックス1の数平均粒子径は120nm、pH10.2、固形分濃度41.7%、粗大凝集物の発生量は0.006%であった。
重合体ラテックス2の作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ロジン酸カリウム1.5部、ブタジエン28部、スチレン1部、アクリロニトリル1部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、硫酸第一鉄0.0015部、ブドウ糖0.11部、燐酸ナトリウム0.06部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は35℃であった。次にt−ブチルハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで35℃(T1)で重合を開始した。重合開始から90分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を74℃に上昇させると共に、重合開始60分後から360分後まで、ブタジエン69部、アクリロニトリル1部、ロジン酸カリウム1.0部、純水10部を連続的に添加した。重合開始から90分経過した時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は12.5%、重合転化率は0.518であった。重合熱利用効率Eは98%であった。重合開始90分後から510分後までは、重合温度を74℃に保ち重合を継続した。重合開始510分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、重合体ラテックス2を得た。
重合体ラテックス2の数平均粒子径は105nm、pH10.3、固形分濃度41.7%、粗大凝集物の発生量は0.002%であった。
重合体ラテックスAの作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ロジン酸カリウム1.5部、ブタジエン29部、スチレン5部、アクリロニトリル1部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0017部、ブドウ糖0.09部、燐酸ナトリウム0.08部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は35℃であった。重合熱を利用せずに外部ジャケットに高温水を流しながら90分かけて槽内温度を62℃に上昇させた。その後、過硫酸カリウム0.3部を仕込んで62℃で重合を開始した。重合開始と同時に300分かけて、ブタジエン64部、アクリロニトリル1部、ロジン酸カリウム1.0部、純水10部を連続的に添加した。重合開始時点、つまり62℃到達時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は1.00%、重合転化率は0であった。重合熱利用効率Eは0%であった。重合開始直後から300分後までは、重合温度を62℃に保ち重合を継続した。重合開始300分後から510分後までは重合温度を62℃から70℃へ上昇させながら重合を継続した。重合開始510分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、重合体ラテックスAを得た。
重合体ラテックス2の数平均粒子径は115nm、pH10.2、固形分濃度41.9%、粗大凝集物の発生量は0.012%であった。
重合体ラテックスBの作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水120部、ロジン酸カリウム1.5部、ブタジエン95部、スチレン5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.002部、ブドウ糖0.10部、燐酸ナトリウム0.05部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は33℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで33℃(T1)で重合を開始した。重合開始から180分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を54℃に上昇させると共に、重合開始180分後から780分後までロジン酸カリウム1.5部と純水20部を連続的に添加した。重合開始から180分経過した時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は11.2%、重合転化率は0.229であった。重合熱利用効率Eは190%であった。重合開始180分後から900分後までは、重合温度を54℃に保ち重合を継続した。重合開始900分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認して槽内温度を35℃以下に冷却し、重合体ラテックスBを得た。
重合体ラテックスBの数平均粒子径は170nm、pH10.3、固形分濃度42.0%、粗大凝集物の発生量は0.618%であった。
(実施例3)
重合体ラテックス3の作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、ブタジエン67部、アクリロニトリル29部、メタクリル酸4部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0015部、L−アスコルビン酸0.20部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は35℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで35℃(T1)で重合を開始した。重合開始から60分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を65℃に上昇させた。この時点での槽内ラテックスの固形分濃度は9.29%、重合転化率は0.196であった。重合熱利用効率Eは112%であった。重合開始60分後から120分後までは、重合温度を65℃に保ちながら、重合開始120分後から540分後までは、重合温度を65℃から70℃へ上昇させながら重合を継続した。また、重合開始60分後から360分後までは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部と純水10部を連続的に添加した。重合開始540分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認してからジエチルヒドロキシアミン0.01部を添加し、アンモニア水でpHを8以上に保ちながら、水蒸気蒸留によって未反応単量体を除去して重合体ラテックス3を得た。
重合体ラテックス3の数平均粒子径は115nm、pH8.2、固形分濃度45.7%、粗大凝集物の発生量は0.002%であった。
重合体ラテックス4の作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、ブタジエン27部、アクリロニトリル9部、メタクリル酸4部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0010部、L−アスコルビン酸0.20部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は30℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで30℃(T1)で重合を開始した。重合開始から90分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を60℃に上昇させると共に、重合開始60分後から360分後まで、ブタジエン40部、アクリロニトリル20部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、純水10部を連続的に添加した。重合開始から90分経過した時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は12.5%、重合転化率は0.449であった。重合熱利用効率Eは135%であった。重合開始90分後から180分後までは、重合温度を60℃に保ち、重合開始180分後から510分後までは重合温度を60℃から70℃へ上昇させながら重合を継続した。重合開始510分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認してからジエチルヒドロキシアミン0.01部を添加し、アンモニア水でpHを8以上に保ちながら、水蒸気蒸留によって未反応単量体を除去して重合体ラテックス4を得た。
重合体ラテックス4の数平均粒子径は125nm、pH8.2、固形分濃度45.6%、粗大凝集物の発生量は0.003%であった。
重合体ラテックスCの作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水130部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、ブタジエン24.5部、アクリロニトリル18.5部、メタクリル酸3部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0015部、L−アスコルビン酸0.25部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は35℃であった。重合熱を利用せずに外部ジャケットに高温水を流しながら90分かけて槽内温度を62℃に上昇させた。その後、過硫酸カリウム0.5部を仕込んで62℃で重合を開始した。重合開始と同時に300分かけて、ブタジエン42部、アクリロニトリル10部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、メタクリル酸2部を連続的に添加した。重合開始時点、つまり62℃到達時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は0.98%、重合転化率は0であった。重合熱利用効率Eは0%であった。重合開始直後から300分後までは、重合温度を62℃に保ち重合を継続した。重合開始300分後から重合開始510分後までは重合温度を62℃から70℃へ上昇させながら重合を継続した。重合開始510分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認してからジエチルヒドロキシアミン0.01部を添加し、アンモニア水でpHを8以上に保ちながら、水蒸気蒸留によって未反応単量体を除去して重合体ラテックスCを得た。
重合体ラテックスCの数平均粒子径は130nm、pH8.0、固形分濃度45.0%、粗大凝集物の発生量は0.025%であった。
重合体ラテックスDの作製:ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水120部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、ブタジエン66部、アクリロニトリル29部、メタクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、硫酸第一鉄0.0010部、L−アスコルビン酸0.20部を仕込み、初期仕込みを完了した。槽内温度は28℃であった。次にクメンハイドロパーオキサイド0.2部を仕込んで28℃(T1)で重合を開始した。重合開始から180分かけて、重合熱を利用しながら重合温度T2を52℃に上昇させると共に、重合開始180分後から780分後までドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部と純水20部を連続的に添加した。重合開始から180分経過した時点で、槽内ラテックスの固形分濃度は11.2%、重合転化率は0.228であった。重合熱利用効率Eは170%であった。重合開始180分後から900分後までは、重合温度を52℃に保ち重合を継続した。重合開始900分後に重合転化率が0.97を超えたことを確認してからジエチルヒドロキシアミン0.01部を添加し、アンモニア水でpHを8以上に保ちながら、水蒸気蒸留によって未反応単量体を除去して重合体ラテックスDを得た。
重合体ラテックスDの数平均粒子径は165nm、pH8.1、固形分濃度45.2%、粗大凝集物の発生量は0.425%であった。
Claims (6)
- 重合性単量体をラジカル乳化重合して得られる重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法であって、単量体の一部または全量を仕込み完了後、重合系内の温度T1が0〜50℃の範囲で重合を開始した後、重合系内の温度T2を60℃〜100℃の範囲に到達させるに際し、その温度上昇(T2−T1)に必要な熱量の15%以上を重合による重合熱を利用して昇温させ、重合開始から180〜900分で重合性単量体の重合転化率を0.9以上に到達させることを特徴とする重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
- 重合開始から180〜540分で重合性単量体の重合転化率を0.9以上に到達させる請求項1に記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
- 重合性単量体合計100重量部に対して65〜300重量部の重合水を使用してなる請求項1または2に記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
- T2−T1=10℃以上である請求項1〜3何れかに記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
- 温度上昇(T2−T1)に必要な熱量の50%以上を重合による重合熱によって昇温させることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
- 重合性単量体が共役ジエン系単量体を20〜100重量%含むことを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の重合体ラテックス、または重合体エマルジョンの製造方法。
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