JP6100470B2 - 熱成型性を有する接着剤組成物 - Google Patents
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Description
特に自動車内装用のニードルパンチカーペットおよびタフテッドカーペットにおいては、繊維基材に強度と剛性を付与するために共重合体ラテックスや樹脂エマルジョンが使用されている。
従来より、共重合体ラテックスや樹脂エマルジョンを主成分とする接着剤組成物を該カーペット裏面に塗布および/または含浸加工することにより不織布繊維またはパイル糸を固着せしめた後に、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂皮膜を熱融着によって裏打ちする2段加工法にて製造されている。しかしこのような2段加工法では、カーペットの製造工程が煩雑で生産効率が悪い。そこで、例えば、特定の組成を有する共重合体ラテックスAとBを特定比率で含有する接着剤組成物(特許文献1)、特定の粒子径の関係式を満たす共重合体ラテックスAとBを含有する接着剤組成物(特許文献2)、さらには高架式フローテスターにおけるフローレイトを規定した共重合体ラテックスを含有する接着剤組成物(特許文献3)を用いることにより、熱可塑性樹脂皮膜の熱融着を必要としない1段加工法が採用されて製造されている。
しかし、最近、さらなる生産効率の向上や合理化検討が進むに従い、熱成型性、成型後の形状を保ちえる性能(保型性)及び最終カーペット製品の剛性に対して要求物性は日々高まっている。上記した改良技術において熱成型性、保型成、剛性を改良しようとすれば、繊維の固着力が低下してしまい、高まる要求物性を十分に満足するレベルには至っておらず、総合的な性能バランスの更なる向上が望まれていた。
1)エチレン系単量体100重量部を乳化重合するにあたり、下記のアルキルメルカプタンを使用する共重合体ラテックスを含有する
(1)ウンデシルメルカプタン 0.0005〜0.6重量部、
(2)ドデシルメルカプタン 0.025〜1.8重量部、
(3)トリデシルメルカプタン 0.0005〜0.6重量部、
(4)テトラデシルメルカプタン 0〜0.2重量部
(5)その他のメルカプタン 0〜0.2重量部
2)該共重合体ラテックスが、(A)ガラス転移温度が90〜140℃である共重合体ラテックスと、(B)70℃以下のガラス転移温度を有する共重合体ラテックスとを含有する
(1)ウンデシルメルカプタン 0.0005〜0.6重量部、好ましくは、0.0005〜0.5重量部、
(2)ドデシルメルカプタン 0.025〜1.8重量部、好ましくは、0.025〜1.5重量部、
(3)トリデシルメルカプタン 0.0005〜0.6重量部、好ましくは、0.0005〜0.5重量部、
(4)テトラデシルメルカプタン 0〜0.2重量部、好ましくは、0〜0.16重量部、
(5)その他のメルカプタン 0〜0.2重量部、好ましくは0〜0.16重量部
(1)〜(5)に記載のアルキルメルカプタンを一種使用した場合、もしくは、二種以上を上記範囲外の量で使用した場合は、良好な熱成型性、相転移連続層の形成及び繊維の固着力が得られない。また、アルキルメルカプタンのアルキル基としては、直鎖タイプ、分岐タイプがあるが、上記範囲内の量を用いた場合には、いずれのタイプでも、良好な熱成型性、相転移連続層の形成及び繊維の固着力が得られる。
共重合体ラテックス(A)の比率が40未満では、接着剤の相転移連続層形成性が劣る傾向があり、(A)の比率が80を超えると繊維の固着力に劣る傾向があり、いずれも好ましくない。
なお、本発明の接着剤組成物をカーペット裏面もしくは紙に塗布した後、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂皮膜を熱融着によって裏打ちすることを何ら妨げるものではない。
得られた各共重合体ラテックスを、ガラス板に0.5g程度塗り、70℃で4時間乾燥してフィルムを作成した。乾燥後のフィルムを示差走査熱量計(DSC、(製品名)DSC6200、セイコーインスツルメンツ社製)のアルミニウム製の試験用パンにセットし、再度加熱によりサンプルを均一化し、その後、測定温度を−100〜150℃まで速度10℃/分で昇温した。得られた温度−吸熱曲線より、相変化の吸熱の開始点を読み取って各共重合体ラテックスのガラス転移温度(℃)とした。相変化が2つ以上見られる場合は、各々の吸熱の開始点を読み取った。
耐圧製の重合反応器に、純水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、炭酸水素ナトリウム0.5部、表1に示す各単量体、各アルキルメルカプタン、過硫酸カリウムを添加して、70℃に保ち、単量体の重合転化率が97%になるまで乳化重合を継続した。水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整して、水蒸気蒸留を行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、共重合体ラテックス(イ)〜(リ)を得た。
純水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、炭酸水素ナトリウム0.5部、表2の1段目に示す各単量体、各アルキルメルカプタン、過硫酸カリウムを添加して、70℃にて重合を開始した。重合転化率が90%になった時点で、表2の2段目に示す各単量体、各アルキルメルカプタン、および純水10部と過硫酸カリウム0.5部の混合物の添加を開始し、4時間かけて連続添加した。連添終了後もそのまま重合を継続し、最終重合転化率が97%を超えたことを確認し、重合を終了した。水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整して、水蒸気蒸留を行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、共重合体ラテックス(ヌ)、(ル)を得た。
表3に示す比率で混合した共重合体ラテックス100部(固形分)に対し、さらに、酸化防止剤(スミライザーWX−R:住友化学株式会社製)0.5部(固形分)を添加して、固形分48%の接着剤組成物を得た。
硬度(1)
接着剤組成物を50℃、80%RHの条件にて乾燥し、厚みが6〜10mmのフィルムを作成した。得られたフィルムをJIS K-6253(1997)に基づき、タイプDデュロメーター硬さを測定した。
硬度(2)
硬度(1)にて作成したフィルムを、枠板状の金型を用い、170℃にてプレス成形して厚みが6〜10mmの成型品を作成した。得られた成型品をJIS K-6253(1997)に基づき、タイプDデュロメーター硬さを測定した。
硬度(1)と硬度(2)の値の差が大きい方が、熱成型における相転移現象が発現し連続層が良好に形成されたことを示すものである。硬度(2)の値から硬度(1)の値を差し引いた数値について、次の基準にて評価した。
○:5以上 (連続層形成性良好)
×:5未満 (連続層形成性劣る)
各接着剤組成物を、ホバートミキサーで3倍容量に泡立て、ポリエステルニードルパンチカーペットの裏面に270g/m2塗布した後内部まで含浸させた。その後130℃、5分乾燥して得た。
各カーペット試料を180℃のオーブン中にて5分間加熱した後、図1に示す凹凸状の金型(A部の角度:90度)にてプレス成形(1分間)して型付けを施した。この成形品を金型より取り出し、図2に示すA′部の角度を測定し、次の基準にて評価した。
○:80度超 (熱成型性良好)
△:75〜80度 (熱成型性不十分)
×:75度未満 (熱成型性不良)
熱成型性評価後、成型品を再度90℃のオーブン中にて24時間静置した。
その後オーブンより取り出し図2に示すA’の角度を測定した。この角度の変化(熱成型評価時のA’の角度から、90℃オーブン取出し後のA’の角度を差し引いた角度)を次の基準にて評価した。
○:10度未満 (保型性良好)
△:10〜15度 (保型性不十分)
×:15度超 (保型性不良)
各カーペット試料の裏面を金属片にて摩擦し、接着剤の脱落ならびに繊維のピリングの程度を次の基準に基づき評価した。
○:接着剤の脱落がなく、ピリング良好
△:接着剤の脱落が少し有り、ピリングやや不良
×:接着剤の脱落(粉落ち)が多く、ピリング不良
表4に示すとおり、比較例においては、接着剤組成物に使用している共重合体ラテックスは、アルキルメルカプタンが本願発明の規定範囲外であり、熱成型性、保型性、相転移連続層の形成および繊維の固着力の物性バランスが劣ることが明らかである。
ロ: カーペット
A: 型付け時の角度(90度)
A’: 熱成型後の角度、保型性評価角度
Claims (2)
- 下記1)及び2)を満たすことを特徴とする熱成型性を有する接着剤組成物。
1)エチレン系不飽和単量体100重量部を乳化重合するにあたり、下記のアルキルメルカプタンを使用する共重合体ラテックスを含有する
(1)ウンデシルメルカプタン 0.0005〜0.6重量部、
(2)ドデシルメルカプタン 0.025〜1.8重量部、
(3)トリデシルメルカプタン 0.0005〜0.6重量部、
(4)テトラデシルメルカプタン 0〜0.2重量部
(5)その他のメルカプタン 0〜0.2重量部
2)該共重合体ラテックスが、(A)ガラス転移温度が90〜140℃である共重合体ラテックスと、(B)70℃以下のガラス転移温度を有する共重合体ラテックスとを含有する - 共重合体ラテックス(A)と共重合体ラテックス(B)の比率が、A/B=40/60〜80/20(重量比)であることを特徴とする請求項1に記載の熱成型性を有する接着剤組成物。
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