JP5646270B2 - 保護スリーブ、保護スリーブを備えた回転電機、保護スリーブの製造方法および保護スリーブを備えた回転電機の製造方法 - Google Patents
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Description
この口出し線は、電線の表面のエナメル被覆の保護および絶縁性の向上を図るために、アラミド繊維を編んで円筒状に形成された保護スリーブに通されることがある。
また、口出し線をアラミド繊維からなる保護スリーブに通した後、コイルの電線間にワニスを滴下して電線同士をまとめ且つ当該電線間の絶縁性を高めるためにワニス含浸処理を行うことがある。
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。図1に示す回転電機1は、固定子2と、固定子2の内周に設けられた回転子3とを備えている。固定子2は、固定子鉄心4と、三相のステータコイル5とを備えている。以下、三相のステータコイル5を、コイル5と称する。固定子鉄心4は、例えば電磁鋼板をプレスなどにより打ち抜いて形成された複数枚の鉄心片が積層された円環形状をなしている。固定子鉄心4の内周側には、図示はしないが、当該固定子鉄心4の中心に向かって突出するティースが複数形成され、周方向に隣り合うティース間にスロットが形成されている。
中性点Naは、各コイル群6a、7a、8aが互いに接続された交点のところである。また、中性点Naを中心にリード線が三方向に延び、各リード線の先端部は端子部9、12、15に接続されている。中性点Nbは、各コイル群6b、7b、8bが互いに接続された交点のところである。また、中性点Nbを中心にリード線が三方向に延び、各リード線の先端部は端子部10、13、16に接続されている。そして、固定子鉄心4には、各電源側の端子であるU相の端子部11、V相の端子部14、W相の端子部17の間にコイル群6a、7a、8a及びコイル群6b、7b、8bが並列に設けられ、上述したダブルスター結線の接続となっている。
保護スリーブ31は、本体部32と、含浸部材33とから構成されている。本体部32は、耐電圧特性に優れ、且つ形状が変形しにくい繊維、例えばアラミド繊維の紡績糸、いわゆるスパンを編んで、円筒状に構成されている。保護スリーブ31の本体部32の内部には、口出し線21〜29が通される。そのため、本体部32の内径は、各口出し線21〜29の大きさ、例えば各口出し線21〜29を各円柱とした場合に当該各円柱が挿入可能な大きさである。含浸部材33は、本体部32に含浸して設けられるものである。この「本体部32に含浸」とは、本体部32の内部に浸み込んでいる状態のことである。含浸部材33は、硬化した場合にワニスで硬化されたものよりも軟らかく、且つ絶縁性を有する樹脂、例えば、メラミン系樹脂、またはシリコン系樹脂からなっている。メラミン系樹脂としては、例えば、「DIC社製 スーパーベッカミン(登録商標) 14−559」などが好ましい。また、シリコン系樹脂としては、例えば、「GE東芝シリコン社製 YR3270」が好ましい。含浸部材33の質量は、当該含浸部材33の乾燥後において、本体部32の質量の30〜40%であることが好ましい。含浸部材33の質量が本体部32の質量の30%以上であると、後述するワニスが本体部32全体に含浸してしまうことを防止する効果が得られやすい。また、乾燥後の含浸部材33の質量が本体部32の質量の40%以下であると、保護スリーブ31が硬くなり過ぎなくなる。
コイル5の電線間には、図4に示すワニス36が含浸して設けられている。ワニス36は、固定子鉄心4に設けられた各コイル5すなわち複数本の電線同士を固め、電線がバラバラになることを防止し、且つ当該電線間の絶縁性を高める作用をする。
まず、図3(a)に示すように、アラミド繊維の紡績糸を編んで筒状の本体部32を製造する本体部製造工程を行う。本体部32の軸方向の長さは、当該本体部32が取付けられる口出し線21〜29の長さに対応して調整され、例えば口出し線21〜29の長さとほぼ同じである。
次に、図3(b)に示すように、予め固定子2から延びる口出し線21〜29の太さと同じ太さに設計されている円柱状の治具45を用意し、この治具45を本体部32に通す治具挿入工程を行う。
次に、図3(d)に示すように、治具45が通されている本体部32を浴槽46から取出し、本体部32に含浸している樹脂の乾燥を行う含浸部材乾燥工程を行う。これにより、本体部32に含浸している樹脂は硬化される。この本体部32は、例えばワニス36で硬化された本体部よりも軟らかい。乾燥方法としては、例えば約130℃に保たれた雰囲気中に本体部32を入れて所定時間保持することにより行われる。
そして、図3(e)に示すように、含浸部材乾燥工程後に、本体部32から治具45を引抜く治具取外し工程を行う。上記製造工程を経ることにより、保護スリーブ31が得られる。
まず、固定子鉄心4に、各コイル5と、相間絶縁紙35と、図示しないスロット絶縁紙とを所定の位置に設けて、固定子2を製造する。このとき、コイル5を構成する電線の所定の一部、すなわち口出し線21〜29を形成する部分は、固定子2の固定子鉄心4の軸方向方から外に延びて設けられている。次に、コイル5において、各電線の口出し線21〜29をそれぞれ束ね、各口出し線21〜29に対応する各保護スリーブ31の内部に通す保護スリーブ取付け工程を行う。
保護スリーブ31は、本体部32に含浸部材33が設けられた構成である。そして、含浸部材33は、当該含浸部材33が硬化した場合にワニス36で硬化されたものよりも軟らかく、且つ絶縁性を有する樹脂、例えば、メラミン系樹脂またはシリコン系樹脂からなっているので、コイル用ワニス含浸処理工程で用いられるワニス36は、本体部32に含浸しにくくなる。これにより、各コイル5の近傍に位置する保護スリーブ31がワニス36によって硬化されることを極力抑制でき、保護スリーブ31の柔軟性の低下を極力抑制することができる。そのため、口出し線21〜29が動かされる場合において、当該保護スリーブ31に割れや破れなどの破損が発生することを極力防止することができる。
また、保護スリーブ31の本体部32の内周に含浸部材33が含浸して設けられることにより、本体部32の内周面において、紡績糸が編まれることによる凹凸の高さの差を小さくすることができる。そのため、口出し線21〜29を、保護スリーブ31内に通す際に、当該口出し線21〜29が本体部32の内周面の凹凸に引っ掛かりにくくなり、保護スリーブ31を口出し線21〜29に設ける作業時間を減らすことができる。
固定子2から延びている口出し線21〜29に従来の保護スリーブよりも柔軟な保護スリーブ31が設けられた構成であるので、保護スリーブ31が動かされることによる保護スリーブ31の破損を極力防止できる回転電機1を得ることができる。
第2の実施形態について、図5を参照して説明する。第2の実施形態の保護スリーブ51は、含浸部材52が、第1の実施形態の含浸部材33と異なる。なお、上記第1の実施形態と実質的に同一内容については、その内容の説明は省略する。
第2の実施形態の含浸部材52は、第1の実施形態と同様に本体部32に含浸して設けられるものであり、硬化した場合にワニスで硬化されたものよりも軟らかく、且つ絶縁性を有する樹脂として、メラミン系樹脂とシリコン系樹脂とからなっている。両方の樹脂からなる含浸部材52の総質量は、当該含浸部材52の乾燥後において、本体部32の質量の30〜40%であることが、第1の実施形態の理由と同様の理由で、好ましい。この実施形態の場合、本体部32にメラミン系樹脂およびシリコン系樹脂のいずれか一方を含浸、乾燥させた後に、その本体部32に他方の樹脂を設けて、乾燥を行うことにより形成させている。以下、第1の実施形態では、本体部32にメラミン系樹脂を含浸させ、乾燥させた後に、その本体部32にシリコン系樹脂を設けて、乾燥させた場合について説明する。
まず、第1の実施形態の本体部製造工程、治具挿入行程と同様にして、本体部製造工程、治具挿入行程を行い、本体部32に治具を通す(図5(a)、(b)参照)。
次に、図5(c)に示すように、治具45が通されている本体部32を、メラミン系樹脂が溜められている浴槽53に含浸させ、本体部32に当該メラミン系樹脂を含浸させる第1の含浸工程を行う。
次に、図5(e)に示すように、治具45が通されている本体部32を、シリコン系樹脂が溜められている浴槽54に含浸させ、本体部32に当該樹脂を含浸させる第2の含浸工程を行う。この場合、メラミン系樹脂からなる含浸部材33が含浸された本体部32の表面に、シリコン系樹脂からなる含浸部材33が覆う構成となる。
次に、図5(f)に示すように、治具45が通されている本体部32を浴槽54から取出し、本体部32に含浸している樹脂の乾燥を行う第2の含浸部材乾燥工程を行う。これにより、本体部32に含浸しているシリコン系樹脂は硬化される。乾燥方法としては、例えば約130℃に保たれた雰囲気中に本体部32を入れて所定時間保持することにより行われる。
そして、図5(g)に示すように、含浸部材乾燥工程後に、本体部32から治具45を引抜く治具取外し工程を行う。上記製造工程を経ることにより、保護スリーブ51が得られる。
また、保護スリーブ51の内部には、第1の実施形態の保護スリーブ31と同様にして、各口出し線21〜29が通される。その後は、第1の実施形態と同様の製造方法を行い、第1の実施形態の保護スリーブ31の代わりに保護スリーブ51を備える回転電機1が得られる。
含浸部材52がメラミン系樹脂とシリコン系樹脂とからなっているので、メラミン系樹脂およびシリコン系樹脂の配合比、例えば質量比を適宜調整することにより、含浸部材がメラミン系樹脂およびシリコン系樹脂のいずれか一方からなるものに比べて、含浸部材52の強度を任意に変更することができる。これにより、使用目的に合わせた保護スリーブ51の強度を得ることができる。
その他、第2の実施形態の保護スリーブ51は、第1の実施形態の保護スリーブ31と同様の効果を得ることができる。
第3の実施形態について、図6および図7を参照して説明する。第3の実施形態の回転電機61は、第1の実施形態の保護スリーブ31および第2の実施形態の保護スリーブ51の少なくともいずれか一方を備えている。以下、回転電機61に設けられる保護スリーブを、一例として第1の実施形態の保護スリーブ31を用いて説明する。
まず、第1の実施形態と同様にして保護スリーブ31を製造する。次に、口出し線21〜29を保護スリーブ31に通す保護スリーブ取付け工程を行う。
次に、固定子2を約90℃の雰囲気中で加熱させ、保護スリーブ31のうち固定子2側の端部にワニス36を滴下し、当該ワニス36を各コイル5の電線間に含浸させ、固定子2を約130℃の雰囲気中で当該ワニス36の乾燥を行い、当該ワニス36を硬化させるワニス部62を形成する保護スリーブ用ワニス含浸処理工程を行う(図7(a)参照)。
次に、固定子2を約90℃の雰囲気中で加熱させ、コイル5の電線間にワニス36を含浸させ(図7(b)参照)、約150℃の雰囲気で乾燥を行い、当該ワニス36を硬化させるコイル用ワニス含浸処理工程を行うことにより、保護スリーブ31にワニス部62が設けられた回転電機61が得られる。
口出し線21〜29にかけて固定子鉄心4の端部から15mm離れた部分から端子部までの範囲は、回転電機61の組立てや回転電機61の使用時などに動きやすいフレキシブルな部分である。本実施形態では、口出し線21〜29のうちフレキシブル部分より固定子鉄心4側の少なくとも一部に対応する保護スリーブ31の部位にワニス部62が設けられている。したがって、保護スリーブ31のうちワニス部62では、他の部位よりも隙間がなくなっている。よって、コイル用ワニス含浸処理工程で用いられるワニス36は、保護スリーブ31のうちワニス部62よりも、各端子部9〜17側に移動、例えば毛細管現象で移動しにくくなる。これにより、コイル用ワニス含浸工程後においても保護スリーブ31のうち口出し線21〜29のフレキシブル部分に相当する部分がコイル用ワニス含浸処理工程で用いられるワニス36によって硬化されることを、より一層抑制でき、口出し線21〜29が動かされる場合において、当該保護スリーブ31に割れや破れなどの破損が発生することを極力防止することができる。
第4の実施形態について、図8および図9を参照して説明する。第4の実施形態の回転電機71は、第1の実施形態の保護スリーブ31および第2の実施形態の保護スリーブ51少なくともいずれか一方を備えている。以下、回転電機71に設けられる保護スリーブを、一例として第1の実施形態の保護スリーブ31を用いて説明する。
まず、第3の実施形態と同様にして保護スリーブ31を製造し、口出し線21〜29を保護スリーブ31に通す保護スリーブ取付け工程を行う。
次に、保護スリーブ取付け工程後に、保護スリーブ31のうち上述した位置、すなわち保護スリーブ31のうち固定子2側の端部を糸73で縛り、保護スリーブ31に糸縛り部72を形成する糸縛り工程を行う(図9(a)参照)。
次に、固定子2を約90℃の雰囲気中で加熱させ、コイル5の電線間にワニス36を含浸させ(図9(b)参照)、約150℃の雰囲気中で乾燥を行い、当該ワニス36を硬化させるコイル用ワニス含浸処理工程を行うことにより、保護スリーブ31に糸縛り部72が設けられた回転電機71が得られる。
この実施形態では、口出し線21〜29のうちフレキシブル部分より固定子鉄心4側の少なくとも一部に対応する保護スリーブ31の部位に糸縛り部72が設けられている。したがって、保護スリーブ31のうち糸縛り部72では、他の部位よりも隙間がなくなっている。よって、コイル用ワニス含浸処理工程で用いられるワニス36は、保護スリーブ31のうち糸縛り部72よりも、各端子部9〜17側に移動、例えば毛細管現象で移動しにくくなる。これにより、コイル用ワニス含浸工程後においても保護スリーブ31のうち口出し線21〜29のフレキシブル部分に相当する部分がコイル用ワニス含浸処理工程で用いられるワニス36によって硬化されることを第3の実施形態と同様に抑制でき、口出し線21〜29が動かされる場合において、当該保護スリーブ31に割れや破れなどの破損が発生することを極力防止することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
Claims (9)
- 紡績糸を編んで筒状に構成され、回転電機の固定子から延びている口出し線が内部に通される本体部と、
前記本体部の内部に浸み込ませて設けられ、硬化した場合にワニスで硬化されたものよりも軟らかく、且つ絶縁性を有する樹脂からなる含浸部材と、
を備えていることを特徴とする保護スリーブ。 - 前記含浸部材は、メラミン系樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の保護スリーブ。
- 前記含浸部材は、シリコン系樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の保護スリーブ。
- 前記含浸部材は、メラミン系樹脂とメラミン樹脂とからなることを特徴とする請求項1記載の保護スリーブ。
- 前記含浸部材の質量は、当該含浸部材の乾燥後において、前記本体部の質量の30〜40%であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の保護スリーブ。
- 固定子と、
前記固定子の内周に設けられた回転子と、
前記固定子から延びている口出し線と、
前記口出し線が内部に通される請求項1から5のいずれか一項に記載の保護スリーブと、
を備えていることを特徴とする回転電機。 - 紡績糸を編んで筒状の本体部を製造する本体部製造工程と、
前記本体部に、固定子から延びる口出し線の太さと同じ太さの治具を通す治具挿入工程と、
前記治具が通されている前記本体部に、硬化した場合にワニスで硬化されたものよりも軟らかく、且つ絶縁性を有する樹脂を含浸させる含浸工程と、
前記本体部に含浸している前記樹脂の乾燥を行う含浸部材乾燥工程と、
前記含浸部材乾燥工程後に、前記本体部から前記治具を引抜く治具取外し工程と、
を経ることを特徴とする保護スリーブの製造方法。 - 固定子から延びている口出し線を請求項1から5のいずれか一項に記載の保護スリーブの内部に通す保護スリーブ取付け工程と、
前記保護スリーブ取付け工程後に、前記保護スリーブのうち前記固定子側の端部にワニスを含浸させて乾燥を行い、当該ワニスを硬化させる保護スリーブ用ワニス含浸処理工程と、
前記保護スリーブ用ワニス含浸処理工程後に、前記固定子のコイルにワニスを含浸させて乾燥を行い、当該ワニスを硬化させるコイル用ワニス含浸処理工程と、
を経ることを特徴とする回転電機の製造方法。 - 固定子から延びている口出し線を請求項1から5のいずれか一項に記載の保護スリーブの内部に通す保護スリーブ取付け工程と、
前記保護スリーブ取付け工程後に、前記保護スリーブのうち前記固定子側の端部を糸で縛る糸縛り工程と、
前記糸縛り工程後に、前記固定子のコイルにワニスを含浸させて乾燥を行い、当該ワニスを硬化させるコイル用ワニス含浸処理工程と、
を経ることを特徴とする回転電機の製造方法。
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