JP5641829B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真プロセス等を利用して、記録材に未定着トナー像を転写方式または直接方式で形成する画像形成手段と、未定着トナー像を記録材に熱定着させる定着装置を有し、ハードコピーを得る複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、その技術の発展と市場要求の拡大に伴い、複写機・プリンタなど現在様々な分野で利用されている。特に近年においては、環境対応、低コスト化への要求が高まり、トナー消費量低減化技術が非常に重要となってきた。このトナー消費量を少なくする技術は、トナーを記録材に固着させる過程で発生するエネルギーを減少させるという観点からも重要である。特にオフィス系の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、省エネルギー化という要求からも重要な役割を持つようになってきた。
一方で、デジタル化・カラー化の進展によって、電子写真方式の画像形成装置は、印刷領域の一部へ適用されはじめ、オンデマンドプリンテイングを初めとするグラフィックアーツやショートラン印刷領域における実用化が顕著となり始めている。このPOD市場への参入を鑑みた場合、電子写真方式は無版印刷としてのオンデマンド性の特徴はあるものの、色再現領域、質感、画質安定性、メディア対応性等、出力成果物としての市場価値を訴求するには数多くの問題がある。
このような問題に対応しつつも、さらには同時に前述したような低コスト化への意識が高まり、出力物1枚あたりの価格を低く抑えるという観点からも、トナー消費量低減化技術が重要になってきている。
ここで、トナー消費量低減化技術に関して、特許文献1〜3には次のような提案がなされている。特許文献1においては、感光体の帯電電位の絶対値を350〜550Vなる低めの条件に設定し、転写後の転写材上でのトナー量が定着後に必要な画像濃度が確保できるように0.3〜0.7mg/cmなる高着色力を有するトナーを用いる。これにより、小型、低コストかつ、高速プリントが可能で、長期に渡り安定してフルカラー画像を形成するものである。
特許文献2においては、トナーとして次のような結晶性トナーを用いる。即ち、Tm+20℃〜Tm+50℃における、貯蔵弾性率の温度に対する勾配が0.02log(Pa)/℃以下であり、重量平均粒径は5μm以下の結晶性トナーを用いる。そして、単色トナー最大のり量は0.35mg/cm以下である結晶性トナーを、地合い指数20以上の転写用紙上にトナー画像として転写し、該トナー画像を50msから500msの定着時間で定着する。これにより、トナーのり量むら、光沢むら、及び色差むら等の画像むらを低減した画像を形成するものである。
特許文献3においては、トナーとして次のような結晶性トナーを用いる。即ち、重量平均粒径が5μm以下であり、Tm+20℃〜Tm+50℃における、貯蔵弾性率の温度に対する勾配が0.02log(Pa)/℃以下の結晶性トナーを用いる。そして、単色のトナー最大のり量が0.35mg/cm以下のトナー画像として転写用紙上に転写し、該トナー画像を定着ロール表面温度130℃以下で定着する。これにより、画像荒れが少なく、定着性に優れたカラー画像を形成できるものである。
特開2004−295144号公報 特開2005−195670号公報 特開2005−195674号公報
従来のトナー消費量低減化技術、すなわち、トナーの消費量を低減させると同時に、トナーを小粒径化する、トナー自体の着色力を上げる方法は、トナー消費量を低下させながら、必要な画像濃度を得ることができている。しかしながら、トナーの消費量を減らすこと自体に起因する新たな課題が発生してきた。
本発明者らは単色のトナー最大載り量を低減させると同時に、所望の画像濃度が得られるように着色力の高いトナーを用いて検討を行った。その結果、着色力の低いトナーで最大載り量が多い場合と比較して、単色の濃度は同程度であるものの、二次色、あるいは多次色の色再現領域が狭くなってしまうことがわかった。そこで、単色の最大トナー消費量が減少した場合に、記録材上のトナーがどのような溶融状態にあるかを十分に検証、観察したところ、この二次色あるいは多次色の色再現領域の減少は、以下のことが原因であることが判明した。この原因について順を追って説明していく。
(紙をトナーで隠蔽できなくなる現象)
まず、紙(記録材)をトナーで隠蔽できなくなる現象について、説明する。最初に、単色時のトナー量と紙の隠蔽状態について説明する。図7は、トナー量と紙の隠蔽状態についての関係図である。紙602上に単色時のトナー601の量が多い時から少ない時までの、各々のトナー層形成状態の違いを示したものである。トナーの重なりを見るために、トナー層を横から見た側面図と斜観図、トナーによる紙の隠蔽状態を見るための平面図を示した。(a)→(b)→(c)→(d)の順に、トナー量がだんだんと減っていく状態の変化を表している。
トナー量が多い状態を示した(a)および(b)においては、溶融後の平面図を見てわかるとおり、トナーによって紙が十分に隠蔽されていることがわかる。これは、未定着(溶融前)の状態においても、隣り合うトナー同士に隙間が無いことによって、そもそも紙がしっかりと隠蔽されているということがわかる。
一方、トナー量が少ない(c)においては、トナーが重なり合ったり、平面的に隣同士のトナーが接している部分は、溶融後に紙が隠蔽されているものの、隙間がある部分については、溶融後も紙が見えてしまっていることがわかる。さらに、トナーが少ない状態の(d)においては、トナーの重なりが無いため、溶融後にトナーによる紙の隠蔽がさらに不良化していることがわかる。
その中でも、トナー間の隙間が小さい部分においてはトナーが単層であるため、未定着時には隙間があっても溶融後の溶け拡がりによって、若干紙の隠蔽が進んでいる部分もあることがわかる。しかし、トナー間の隙間が大きければ大きいほど、トナーによる紙の隠蔽状態が不良化している。
次に、二次色(2色のトナー層の重ね合わせ)におけるトナー量と二次色の形成状態について説明する。図8は、トナー量と「単色時および二次色のトナー層形成状態」についての関係図である。単色時のトナー601(説明においてはシアン)に加え、2色目のトナー603(説明においてはイエロー)が示されている。図中、トナーの量が少ない時の単色のトナー層形成状態を(a)、二次色のトナー層形成状態を(b)に、さらに、トナー量が多い時(すなわち、隙間無く並んでいる時)の単色のトナー層形成状態を(c)、二次色のトナー層形成状態を(d)に示した。
トナー量が少ない時は、(a)に示すように下層のシアントナー601に隙間が多く存在していることがわかり、(b)に示すように2色目となる上層のイエロートナー603が、シアントナー601が形成する隙間に載っていることがわかる。トナーのような粒子状のものが層を形成する際に、上に載る粒子が下になる粒子間に落ち込むことは言うまでも無い。
このように、隙間が存在する下層のシアントナー601上には、形成する隙間の上に上層のイエロートナーが載る。そのため、(b)の(透過状態)に示すようにトナーを透過してみると、部分604、部分605、部分606の3つの部分が形成されることがわかる。部分604は上層のイエロートナー603のみが存在する部分である。部分605は下層のシアントナー601のみが存在する部分である。部分606は上層のイエロー603トナーおよび下層のシアントナー601が重なってグリーンを形成する重なり部分である。
一方、トナー量が多い時(隙間無く並んでいる時)は、(c)に示すように下層のシアントナー601は隣同士のトナーが接しているため、紙がほとんど隠蔽されていることがわかる。また、(d)に示すように、2色目となる上層のイエロートナー603が、(b)同様、シアントナー601が形成する隙間に載っている。さらに、イエロートナー603の上に載っているイエロートナー603もイエロートナー自身が形成する隙間に載っていることがわかる。
(c)の単色状態で既に紙がしっかりと隠蔽されている上に、上層に位置するイエロートナー603自身もイエロートナー同士で下層を隠蔽する状態となる。そのため、(d)の透過状態を見てわかるように、トナー量が少ない時の(b)の透過状態とは異なる。即ち、イエロートナー603が存在する多くの部分が、上層のイエロー603トナーおよび下層のシアントナー601が重なってグリーンを形成する重なり部分606となることがわかる。
このように、トナー量が多い時は、多くの部分が良好に二次色を形成する重なり部分606となる。これに対して、トナー量が少ない時は、トナー量が少なくなればなるほど、上層および下層の互いの隙間に単色のみとなる部分(604,605)が増加し、良好に二次色を形成する重なり部分606が減少する。そのため、従来のトナー量に対してトナー量を減らそうとすると、二次色の発色が不良化し、同時に単色形成部分においても、紙の隠蔽が不良化することにより、色域の再現範囲が極端に低下するものである。
ここで、より少ないトナー量で隙間の少ないトナー層を形成するための理想状態について説明する。図9は、トナー量が少ない時(隙間がある時)と1層で隙間無く並んでいる時のトナー層形成状態を示した図である。(a)は平面に対して格段にトナー量が少ない場合であり、隙間が多く存在してしまうことは避けられない。(b)のように、(a)に対しトナー量が若干増えた場合においても、トナー同士が立体的に重なる部分と隙間が生じる部分があると、紙の隠蔽も不良化して、二次色形成時にも良好な重なりを得ることが難しくなる。
そこで、(e)に示すようにトナー粒子を平面的に理想的に配列した場合について見てみると、(b)の配列状態に比べ、隙間は減少しているものの、トナー粒子が異形である。そのために、トナー同士がすべて接していても、隙間が大きくなってしまう部分があることがわかる。同様に、(d)に示すように真球体のトナー粒子で粒度分布を持つ場合においても、大きい粒径の粒子の下に入り込んで配列してしまう分などを考慮すると隙間が増えてしまう方向にある。つまり、(c)に示すように、同一粒径の真球体トナー粒子を最密に並べた場合が、平面に対して最も効率よくトナーを配列することができる。
また、この状態においては、隣り合うすべてのトナー同士が接することにより、同一体積の粒子においてはもっとも紙を隠蔽することが出来ることは言うまでも無い。例えば、楕円状の球形トナーなどは長径方向がうまく配列した場合には、(c)よりも高い隠蔽を達成できることも考えられるが、短径方向で配列してしまうと、(c)よりも低い隠蔽になってしまう。そのため、楕円状の球形トナーの平均的な配列を考えた場合、真球体のトナーに比較すると結局は低い隠蔽率になってしまうこともいうまでもない。
次に、この理想配列状態を形成できる同一粒径の真球体トナーのトナー量(トナー密度)に対するトナー層の形成状態について説明する。図10は、同一体積の真球体トナーのトナー量(トナー密度)に対するトナー層の形成状態について示したものである。単色の層形成状態を比較すると、(a)に示すように、最密状態時にはすべての隣同士のトナーが接する状態であるため、隙間が最小になっているのに対し、(b)→(c)→(d)と、トナー量が減るにつれ隙間が増大していることがわかる。
二次色の形成状態(平面図)を見ると、トナーの量に関係なく、2色目となる上層のイエロートナー603が、下層のシアントナー601が形成する隙間に載っていることがわかる。ここで、二次色の形成状態(側面図)を見ると、トナー量が減るにつれ、上層のトナーが下層のトナーの隙間にどんどん入り込んでいる。
(a)においては、上層トナーが下層トナーに乗っている状態に対して、(b)→(c)→(d)と隙間が大きくなるにつれ、乗っているというより引っかかっているといった状態となっている。また、隙間が大きいほど、上層トナーが低い位置に位置するようになっている。すなわち、下層トナー間に上層トナーが入り込んでいっているのがわかる。このように、未定着の状態において、隙間が大きいほど、下層トナー間に上層トナーが位置関係的に入り込んでしまうことがよくわかる。
さらに、透過状態について説明する。説明するに当たり、重なり状態を詳細に見るため、図11を用いて説明する。下層の隣り合う3個のシアントナー601の間に形成される隙間607に上層となるイエロートナー603が載っていることがわかる。逆に、上層を形成するイエロートナー603の隣合う3個のトナー間に形成される隙間608に下層のシアントナー601が位置することもわかる。
このような状態において、トナー層が溶融されると、下層のシアントナー601の形成する隙間607に上層のイエロートナー603が矢印の方向(↓)に入り込む。また、上層のイエロートナー603の形成する隙間608に下層のシアントナー601が矢印の方向(↑)に入り込む。これにより、各々の単色部分(604、605)が生じ、良好な重なり部分(グリーン混色部分)606が拡がることを阻害するため、二次色の発色が低下している。図10に示すように、(b)→(c)→(d)とトナー量が少なければ少ないほど、隙間は増大するため、この阻害状態は不良化していく。
次に、トナーの理想配列状態時の各種パラメータについて説明する。図12は、トナーの理想配列状態の各種パラメータを示したものである。トナーの粒径(トナー直径)をL[μm]とすると、トナーの体積はV[μm]、平面的なトナーの投影面積はS[μm]、トナー1つ分が含まれる単位面積は
であり、それぞれ以下のようになる。
これらから、トナーが最密に並んだ時の単層(1色)の載り量H[μm](単位面積あたりの体積=平均高さ)が以下のように算出される。
図13は、上記関係式から理想配列状態のトナー粒径およびトナー載り量(平均高さ)の関係を示したグラフである。図中、実線(−)が理想配列状態を表し、Aゾーンは単位面積あたりのトナー量が理想状態より多くある範囲であり、Bゾーンは単位面積あたりのトナー量が理想状態より少ない範囲を示す。つまり、Bゾーンにおいては、紙に対してのトナー量が不足し、隙間が生じてしまう範囲を示しているものである。ここで、理想配列状態時に生じる隙間、すなわち、トナーが細密に並んだ時の隙間の割合T[%](単位面積あたりの隙間の量)(図12)を算出したものが、以下のようになる。
これは、図13に示した理想配列状態となるトナー粒径およびトナー載り量(平均高さ)(グラフの実線(−))において、常に9.31[%]となることを意味する。言い換えると、トナー量によらず、理想配列状態時に生じる隙間は9.31[%]であるということである。
ここで、理想配列状態のトナー量より、トナー量が多い場合について説明する。図14は、理想配列状態のトナー量より、トナー量が増えていった時のトナーの最密積層状態について示した図である。(a)は、1層目のトナー611が最密に配列した状態を示している。六角形612は1単位面積であり、この六角形内の隙間A613および隙間B614が見えなくなる状態について考えることにより、紙が100%隠蔽される時のトナー載り量を考えることが出来る。
(a)においては、隙間A613および隙間B614が存在し、この割合が単位面積あたり9.31%となっている。(b)および(c)は、2層目のトナー615が乗った状態であり、隙間A613を隠蔽していることがわかる。さらに、(d)および(e)は、3層目のトナー616が乗った状態である。隙間B614が隠蔽され、紙が100%隠蔽されたことがわかる。
次に、理想配列状態のトナー量よりトナー量が下回った場合の各種パラメータについて説明する。図15は、理想配列状態のトナー量よりトナー量が下回った状態の各種パラメータを示したものである。
粒径(トナー直径)をL[μm]とすると、トナーの体積V[μm]および平面的なトナーの投影面積S[μm]は図12と同様である。しかし、ここでは、トナー間に隙間t[μm]が生じるため、トナー1つ分が含まれる単位面積はS[μm]であり、以下のようになる。
これらから、トナーが隙間t[μm]をもって均一に並んだ時の単層(1色)の載り量H[μm](単位面積あたりの体積=平均高さ)が以下のように算出される。
さらに、トナーが隙間t[μm]をもって均一に並んだ時に生じる隙間の割合T[%](単位面積あたりの隙間の量)(図15)を算出したものを上記式によってトナー間の隙間t[μm]を消して整理したものが、以下のようになる。
図16は、上記関係式から、一例として、トナー粒径が6[μm]の時のトナー載り量(平均高さ)と隙間の割合の関係を示したグラフである。図中、境界線(…)は理想配列状態時の載り量を示す点である。境界線よりトナー量が少ない場合は隙間が生じる範囲であり、上記式を基に求められたカーブである。
境界線よりトナー量が多い部分では、図14によって説明したとおり、理想積載状態で3層積層された時に隙間が0%(隠蔽率100%)になることから求められたカーブである。このカーブから、トナーの載り量が理想配列状態(境界線)を下回ると、急激に隙間が大きく、すなわち、隠蔽率が低下する。上回った範囲、すなわちトナー量が多くなっても、理想配列状態を超えると、隙間の減る量の変化が小さくなる(隠蔽率の向上が鈍る)ことがわかる。
ここでは、一例として、トナー粒径が6[μm]の時の状態について説明したが、この境界線を境にした変化はこれに限るものではなく、通常の使用範囲内のトナー粒径においては、すべての粒径に当てはまるものであることはいうまでもない。
本発明は、このような現象を鑑みたものである。そして、図13のBゾーンや図16の境界線(…)よりトナーの量が少ない範囲、すなわち、トナー量が理想配列状態(最密)より少ない範囲において、原理的に生じるトナー間の隙間があっても、より適正な色再現を実現するものである。詳しくは、単色における紙の隠蔽率、異なるトナーの良好な重なりによる二次色の発色を向上させるものである。
逆に、従来のような、トナー粒径に対して十分なトナー量があるような、図13のAゾーンや図16の境界線(…)よりトナーの量が少ない範囲においては、トナー量が十分である。そのため、トナーの配列による発色のロスが生じない状態においては、本発明の効果は発揮できない。
ここまで、トナーの配列状態を考えるために、トナーの載り量については、「単位面積あたりのトナー体積[μm]」(=平均高さ)で説明したが、通常、トナーの載り量を計測管理する際には、「単位面積あたりの重さ[mg/cm]」を用いている。これに準じて、先に説明した理想配列状態(真球形トナーの最密状態)を表す式が、密度ρ[g/cm]を考慮すると、以下のように、トナー載り量A[mg/cm]として変換される。式中、1/10は単位合わせるためのものである。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、トナー消費量を少なくしていった場合においても、色の重なり度合いが減少しないようにすることによって、幅広い色再現領域を得る画像形成装置を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、記録材に有彩色トナーにより未定着トナー像を形成し、前記未定着トナー像を加熱及び加圧して前記記録材に定着させる画像形成/定着工程を同一の記録材に対して有彩色トナーの色を違えて少なくとも2回以上適用して、色が異なる複数の有彩色トナー像が重ねあわされた画像を形成する画像形成装置であって、
前記未定着トナー像を記録材に形成した時に、前記有彩色トナーの比重をρ(g/cm)、重量平均粒径をL(μm)、前記未定着トナー像の記録材に対するトナー載り量をA(mg/cm)としたときに、
A<(ρπL)/30√3
となるトナー載り量を、各色の有彩色トナーによる未定着トナー像の形成における最大トナー載り量とし、前記画像において各色の有彩色トナーの色が重なって見える領域が84%以上存在するように前記未定着トナー像を定着することを特徴とする。
本発明によれば、トナー消費量を少なくしていった場合においても、色の重なり度合いが減少しないようにすることによって、幅広い色再現領域を得る画像形成装置を提供することができる。
(a)は実施例における画像形成装置の概略構成図、(b)は定着器の要部の横断面模型図である。 (a)は実施例で用いたトナーの温度に対する粘度特性のグラフ、(b)は実施例における定着ニップ部内の搬送方向の位置と、その位置におけるトナー温度、そのトナー温度におけるトナーの溶融粘度の関係を示す図である。 実施例における取得画像に対する2値化画像処理の概略説明図である。 実施例と比較例における2値化処理画像である。 (a)は実施例におけるG領域の割合と彩度の関係を示すグラフ、(b)は実施例における二次色率とトナー載り量の関係を計算上で算出した結果のグラフである。 二次色領域割合算出のシステムブロック図である。 トナー量と紙(記録材)の隠蔽状態を説明するための図である。 トナー量と単色時および二次色のトナー層形成状態を説明する図である。 トナー量が少ない時(隙間がある時)と1層で隙間無く並んでいる時のトナー層形成状態を示した図である。 同一体積の真球体トナーのトナー量に対するトナー層の形成状態について説明する図である。 トナーの重なりについて説明するための図である。 理想配列状態時の各種パラメータについて説明するための図である。 トナーの粒径とトナー載り量の関係を説明するための図である。 トナーの最密積層状態を説明するための図である。 トナーで紙表面が隠蔽できないときの各種パラメータについて説明するための図である。 トナー粒径が6[μm]時のトナー載り量と隙間の割合を示す図である。
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明における最良な実施の形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
<第1の実施形態>
(画像形成部)
図1の(a)は本実施形態における画像形成装置100の概略構成図である。この装置100は4色フルカラーの電子写真レーザープリンタであり、制御回路部(CPU)101と通信可能に接続した外部ホスト装置102から入力する電気的な画像情報に対応したフルカラー画像を記録材Sに形成して出力することができる。装置102は、例えば、パソコン、イメージリーダー、ファクシミリ等である。回路部101は装置102や操作部103、各種作像機器と信号の授受をして作像シーケンス制御を司る。
装置100の本体内には、図面上左側から右側にかけて第1乃至第4の4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが並設されている。各画像形成部はレーザー走査露光方式の電子写真プロセス機構部であり、それぞれ、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)1(1a、1b、1c、1d)を有する。また、ドラム1に作用するプロセス手段としての、一次帯電器2(2a、2b、2c、2d)、現像器4(4a、4b、4c、4d)、一次転写帯電器5(5a、5b、5c、5d)、ドラムクリーナ6(6a、6b、6c、6d)を有する。
ドラム1は矢印の反時計方向に所定の速度(プロセススピード)にて回転駆動される。一次帯電器2は回転するドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する帯電手段であり、本実施例においては接触帯電ローラである。
現像器4はドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤(有彩色トナー:カラートナー)により有彩色トナー像として現像する現像手段である。本実施例の装置100において、第1の画像形成部Paはドラム1aにイエロー色(Y色)のトナー像を形成する画像形成部であり、現像器4aにはY色トナーが収容されている。第2の画像形成部Pbはドラム1bにマゼンタ色(M色)のトナー像を形成する画像形成部であり、現像器4bにはM色トナーが収容されている。
第3の画像形成部Pcはドラム1cにシアン色(C色)のトナー像を形成する画像形成部であり、現像器4cにはC色トナーが収容されている。第4の画像形成部Pdはドラム1dにブラック色(Bk色)のトナー像を形成する画像形成部であり、現像器4dにはBk色トナーが収容されている。
一次転写帯電器5はドラム1に形成されたトナー像を後述する中間転写ベルト11に転写する転写手段であり、本実施例においては転写ローラ(接触帯電ローラ)を用いている。ドラムクリーナ6はベルト11に対するトナー像の一次転写後のドラム1面から転写残トナー等の残留付着物を除去してドラム面を清掃するクリーニング手段であり、本実施例においてはブレードクリーニング装置を用いている。
第1乃至第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの上方部にはレーザースキャナユニット3が配設されている。ユニット3は各ドラム1の一次帯電処理面を画像情報に対応して変調されたレーザー光L(La、Lb、Lc、Ld)で走査露光して静電潜像を形成する画像露光手段である。ユニット3は、光源装置から発せられたレーザー光を、ポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズによりドラム1の母線上に集光して露光する。これにより、ドラム1の表面に画像信号に応じた静電潜像が形成される。
第1乃至第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの下方部には中間転写ベルトユニット7が配設されている。ユニット7は、第1の画像形成部Pa側の駆動ローラ8と、第4の画像形成部Pd側のターンローラ9と、ローラ8とローラ9の間で該両ローラ8・9よりも下方に位置する二次転写内ローラ10と、の並行3本のローラを有する。また、その3本のローラ間に懸回張設されている無端状でフレキシブルな中間転写ベルト11を有する。各画像形成部Pにおける一次転写ローラ5はベルト11の内側に配設されていて、ローラ8と9間の上行側のベルト部分を介して対応するドラム1の下面に当接している。
各画像形成部Pにおいてドラム1とベルト11との当接ニップ部が一次転写部である。二次転写内ローラ10にはベルト11を介して二次転写外ローラ12が当接している。ベルト11とローラ12との当接ニップ部が二次転写部である。ローラ8のベルト懸回部にはベルトクリーナ13が配設されている。
クリーナ13はベルト11の面を清掃するクリーニング手段である。本実施例においては、クリーニング部材13aとしてクリーニングウエブ(不織布)を用いたウエブクリーニング装置を用いている。ベルト11上の二次転写残トナー及びその他の異物はベルト11の表面にウエブ13aを当接して拭い取るようにしている。
記録材Sに対するフルカラー画像形成は次のとおりである。画像形成動作は、装置102や操作部103から回路部101に対して、画像データ、および、使用する記録材サイズ・枚数等のユーザー設定情報が転送された後に開始される。回路101は入力されたカラー画像情報の色分解画像信号に基づいて各画像形成部Pを画像形成動作させる。
また、ローラ8によりベルト11を矢印Aの時計方向に所定の速度で循環移動駆動する。また、所定の制御タイミングで給紙機構部(不図示)を駆動して、記録材Sが積載収容されている給送カセット14から記録材Sが一枚宛て分離給送されて搬送路15を通ってレジストローラ対16へ搬送される。
本実施例の装置100においては、各単色トナーの未定着トナー像を一旦記録材上に定着させた後、別の単色トナーの未定着トナー像をその上に形成する。そして、また定着工程を行うという動作を繰り返し行い、4色の画像形成/定着工程を経ることによってフルカラーの出力画像を得るものである。
また、各単色トナーを順次記録材上に形成して定着させていくため、第1色をBk色、第2色をC色、第3色をM色、第4色をY色とした。すなわち、記録材Sの表面に近い側から、Bk色トナー像、C色トナー像、M色トナー像と、トナー像が順次に画像形成・定着されて形成され、最表面にY色トナー像が画像形成/定着される。
即ち、本実施例の装置100は、記録材Sに有彩色トナーにより未定着トナーを形成し、そのトナー像を加熱及び加圧して記録材に定着させる画像形成/定着工程を同一の記録材Sに対して、トナーの色をBk色、C色、M色、Y色と違えて4回適用する。
これにより、記録材にBk色、C色、M色、Y色4色のトナー像が重ねあわされた画像を形成するものである。そして、未定着トナー像を記録材Sに形成した時に、記録材に対するトナー載り量をA(mg/cm)としたときに、A<(ρπL)/30√3となるトナー載り量を、各色のトナーによる未定着トナー像の形成における最大トナー載り量とする。ここで、ρはトナーの比重(g/cm)、Lはトナーの重量平均粒径(μm)である。
また、前記画像において各色のトナーの色が重なって見える領域が84%以上存在するように前記未定着トナー像を定着することを特徴としている。この構成により、トナー消費量を少なくしていった場合においても、色の重なり度合いが減少しないようにすることによって、幅広い色再現領域を得る画像形成装置を提供することができる。以下、これについて詳述する。
1)第1色のBk色トナー像の形成
回路部101は第1乃至第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdのうち、Bk色トナー像を形成する第4の画像形成部Pdだけを画像形成動作させる。その他の画像形成部についてはドラム1を回転駆動(空回転)させるだけで画像形成動作させない。各画像形成部のドラム1とベルト11は同じ周速度をもって駆動される。回路部101は第4の画像形成部Pdにおいてドラム1dに対する帯電、露光、現像のプロセスを実行して、ドラム1dの面にフルカラー画像のBk色成分像に対応するBk色トナー像を形成する。
そのBk色トナー像が一次転写部においてドラム1dからベルト11の面に順次に一次転写される。この転写は、ローラ5dに対してトナーの帯電極性とは逆極性で所定電位の一次転写バイアスが印加されることによる電界と一次転写部のニップ圧力によりなされる。ベルト11に対するBk色トナー像転写後のドラム1dの面はクリーナ6dにより清掃されて繰り返して画像形成に供される。ベルト11の面に一次転写されたBk色トナー像は引き続くベルト11の移動により二次転写部に搬送されていく。
一方、カセット14から給送された記録材Sは回転停止状態のローラ対16のニップ部に先端部が受け止められることで斜行矯正を受けて停止している。そして、ローラ対16が所定の制御タイミングで駆動され、記録材Sがローラ対16により搬送路17を通って二次転写部に給送される。これにより、ベルト11上のBk色Bk色トナー像の先端部が二次転写部に到達するタイミングに合わせて記録材Sの先端部が二次転写部に導入され、記録材Sが二次転写部を挟持搬送されていく。
これにより、ベルト11上のBk色トナー像が二次転写部において記録材Sの面に順次に二次転写される。この転写はローラ12に対してトナーの帯電極性とは逆極性で所定電位の二次転写バイアスが印加されることによる電界と二次転写部のニップ圧力によりなされる。二次転写部を出た記録材Sはベルト11の面から分離されて搬送路18を通って定着器19に導入される。記録材分離後のベルト11の面はクリーナ13で清掃されて繰り返して画像形成に供される。
定着器19は記録材S上の未定着トナー像を加熱及び加圧して固着像として定着させる画像定着手段であり、本実施例においては熱ローラ定着器である。図1の(b)はその定着器19の要部の横断面模型図である。
定着器19は並行2本の定着ローラ(熱ローラ)20と加圧ローラ21を上下に圧接させて定着ニップ部Nを形成させている。ローラ20は、内径φ54.6mm、外径φ56.0mm、厚み0.7mmのFeからなる芯金20aの外周面に厚さ2mmのシリコーンゴム層20bを形成し、さらにその表面に30μm厚みのPFAチューブ20cを被覆した外径φ60のローラである。
ローラ21もローラ20と同様のローラである。即ち、内径φ54.6mm、外径φ56.0mm、厚み0.7mmのFeからなる芯金21aの外周面に厚さ2mmのシリコーンゴム層21bを形成し、さらにその表面に30μm厚みのPFAチューブ21cを被覆した外径φ60のローラである。
ローラ20とローラ21を上下に並行に配列し、該両ローラを総圧で約80kgf(約784N)で加圧して記録材搬送方向に関して所定幅の定着ニップ部Nを形成させている。ローラ20と21は矢印の方向に回転駆動される。ローラ20の芯金20aの内部にはハロゲンランプ等のヒータ(熱源)Hが配設されている。ヒータHは電源部(不図示)から電力が供給されて発熱する。この発熱によりローラ20が内部から加熱される。
そして、ローラ20の表面温度がサーミスタ等の温度検知素子THにより検知され、検知温度に関する電気的情報が回路部101に入力する。回路部101は、素子THから入力する検知温度情報が所定の定着温度に対応する電気的情報に維持されるように電源部からヒータHへの供給電力を制御する。回路部101はローラ20の表面温度が所定の定着温度に維持されるように温調する。
ローラ20、21が回転駆動され、ローラ20が所定の定着温度に立ち上げられて温調された状態において、未定着トナー像tを担持した記録材Sが定着ニップ部Nに導入されてニップ部Nを挟持搬送されていく。これにより、未定着トナー像tがニップ部Nにおいて加熱及び加圧により記録材面に固着画像として定着される。
ニップ部Nを出た記録材Sはローラ20の面から分離されて、搬送路22から再循環搬送路(複数回定着用の搬送経路)23側に導入される。この記録材Sの搬送路22から再循環搬送路23への導入は第1の姿勢に切り換えられているフラッパ24によりなされる。この記録材Sは定着済みのBk色トナー像が形成されている記録材であり、搬送路23から再び搬送路15に入り、レジストローラ対16に搬送される。そして、その記録材Sが回転停止状態のローラ対16のニップ部に先端部が受け止められることで斜行矯正を受けて停止する。
2)第2色のC色トナー像の形成
次に回路部101は第3の画像形成部Pcにおいてドラム1cに対する帯電、露光、現像のプロセスを実行して、ドラム1cの面にフルカラー画像のC色成分像に対応するC色トナー像を形成する。その他の画像形成部についてはドラム1を回転駆動させるだけで画像形成動作させない。ドラム1cに形成されたC色トナー像が一次転写部においてベルト11の面に順次に一次転写される。ベルト11の面に一次転写されたC色トナー像は引き続くベルト11の移動により二次転写部に搬送されていく。
そして、ローラ対16が所定の制御タイミングで駆動され、既に定着済みのBk色トナー像が形成されている記録材Sがローラ対16により搬送路17を通って二次転写部に給送される。これにより、ベルト11上のC色トナー像が二次転写部において記録材SのBk色トナー像形成面に重畳されて順次に二次転写される。二次転写部を出た記録材Sはベルト11の面から分離されて搬送路18を通って定着器19に導入され、未定着のC色トナー像がニップ部Nにおいて加熱及び加圧により記録材面に固着画像として定着される。
ニップ部Nを出た記録材Sはローラ20の面から分離されて、搬送路22から再循環搬送路23側に導入される。そして、その記録材Sが再び搬送路15に入り、回転停止状態のローラ対16のニップ部に先端部が受け止められることで斜行矯正を受けて停止する。
3)第3色のM色トナー像の形成
次に回路部101は第2の画像形成部Pbにおいてドラム1bに対する帯電、露光、現像のプロセスを実行して、ドラム1bの面にフルカラー画像のM色成分像に対応するM色トナー像を形成する。その他の画像形成部についてはドラム1を回転駆動させるだけで画像形成動作させない。
ドラム1bに形成されたM色トナー像が一次転写部においてベルト11の面に順次に一次転写される。ベルト11の面に一次転写されたM色トナー像は引き続くベルト11の移動により二次転写部に搬送されていく。
そして、ローラ対16が所定の制御タイミングで駆動され、既に定着済みのBk色トナー像+C色トナー像が形成されている記録材Sがローラ対16により搬送路17を通って二次転写部に給送される。これにより、ベルト11上のM色トナー像が二次転写部において記録材Sの既に定着済みのBk色トナー像+C色トナー像形成面に重畳されて順次に二次転写される。
二次転写部を出た記録材Sはベルト11の面から分離されて搬送路18を通って定着器19に導入され、未定着のM色トナー像がニップ部Nにおいて加熱及び加圧により記録材面に固着画像として定着される。ニップ部Nを出た記録材Sはローラ20の面から分離されて、搬送路22から再循環搬送路23側に導入される。そして、その記録材Sが再び搬送路15に入り、回転停止状態のローラ対16のニップ部に先端部が受け止められることで斜行矯正を受けて停止する。
4)第4色のY色トナー像の形成
次に回路部101は第1の画像形成部Paにおいてドラム1aに対する帯電、露光、現像のプロセスを実行して、ドラム1aの面にフルカラー画像のY色成分像に対応するY色トナー像を形成する。その他の画像形成部についてはドラム1を回転駆動させるだけで画像形成動作させない。ドラム1aに形成されたY色トナー像が一次転写部においてベルト11の面に順次に一次転写される。ベルト11の面に一次転写されたY色トナー像は引き続くベルト11の移動により二次転写部に搬送されていく。
そして、ローラ対16が所定の制御タイミングで駆動され、既にブラックトナー像+シアントナー像+マゼンタトナー像が形成され、かつ定着されている記録材Sがローラ対16により搬送路17を通って二次転写部に給送される。
これにより、ベルト11上のイエロートナー像が二次転写部において記録材Sの既に定着済みのBk色トナー像+C色トナー像+M色トナー像形成面に重畳されて順次に二次転写される。二次転写部を出た記録材Sはベルト11の面から分離されて搬送路18を通って定着器19に導入され、未定着のY色トナー像がニップ部Nにおいて加熱及び加圧により記録材面に固着画像として定着される。
そして、ニップ部Nを出た記録材Sはローラ20の面から分離されて、搬送路22から搬送路25側に導入され、排出口26から排出トレイ27に4色フルカラーの画像形成物(出力物)として排出される。記録材Sの搬送路22から搬送路25への導入はフラッパ24が第2姿勢に切り換えられることによりなされる。
(トナー特性と溶融状態の関係)
ここで、本実施例において用いているトナーの特性と、定着工程におけるトナーの溶融状態について説明する。まず、本実施例におけるトナーは、ポリエステル系の樹脂を使用したトナーを用いた。トナーを製造する方法としては、粉砕法や、懸濁重合法・界面重合法・分散重合法等の媒体中で直接トナーを製造する方法(重合法)が挙げられる。本実施例においては粉砕法によって製造したトナーを用いた。なお、トナーの成分、製造方法はこれに限定されるものではない。
Y色、M色、C色、Bk色の各色のトナーとしては、各色の色素を含有した透明な熱可塑性樹脂で構成されたものを用いることができる。本実施例においては、図2の(a)に示すような温度―粘度特性を有するポリエステルをバインダとした着色トナーを用いた。
また、本実施例におけるトナーは、比重ρが1.1(g/cm)、重量平均粒径Lが6.0(μm)のものを使用し、未定着トナーの記録材上の最大トナー載り量が0.3(mg/cm)となるように設定した。ここで、トナーの比重ρ、重量平均粒径L、未定着トナーの載り量Aの関係は、
A<(ρπL)/30√3
を満たせば、上記設定に限定されるものではない。
次に、トナーの溶融状態とトナー特性、定着器加圧状態の関係について説明する。トナー溶融状態は、定着温度や定着スピード、加圧力等の定着条件と、その条件下におけるトナーの粘度特性と、定着加圧状態によって決まる。これは、ある定着条件に到達したときに、トナーの粘度が低いほうがトナー溶融の進行度合いが高く、従って定着性が高かったり、あるいは発色性が良かったりする。逆に、トナーの粘度が高い場合は、トナー溶融が進まず、従って定着性が低かったり、また発色性が不良化したりする。
また、トナーがある粘度状態に到達したときに、定着器の加圧力が高いほうがトナーの記録材に対する濡れ広がりが大きく、従って定着性が高かったり、あるいは発色性が良かったりする。逆に、定着器の加圧力が低いほうがトナーの記録材に対する濡れ広がりが小さく、従って定着性が低かったり、あるいは発色性が不良化したりする。
図2の(b)は定着ニップ部N内の記録材搬送方向aの位置と、その位置におけるトナー温度、そのトナー温度におけるトナーの溶融粘度の関係を示している。なお、トナー温度は記録材(記録媒体)上に熱電対((株)アンベ エスエムティ、極細薄熱電対KFST−10−100−200)を貼り付けて計測し、圧力分布はタクタイルセンサ(ニッタ(株)、シーラー)を用いて計測した。
トナーの溶融粘度は、高架式フローテスター(島津フローテスターCFT−100型)を用いて測定した。加圧成形器を用いて成形した重量1.0gの試料を昇温速度5.0C/minでプランジャーにより20kgfの荷重をかけ直径1mm、長さ1mmのノズルより押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量を測定した。図2の(b)から分かるように、定着ニップ部N内においては、トナー温度は記録材搬送方向aにおいて定着ニップ入口側から徐々に上昇し、定着ニップ出口にて最も高い温度になる。
例えば、定着ニップ内において、トナー温度が105℃に到達した時点では、それに対応するトナー粘度、ここでは、1×10Pa・sとなり、ニップ出口においては、トナー温度は135℃に達し、この時点でトナー粘度は、1×10Pa・sになっている。このようにトナー粘度はニップ内において変化し、その粘度が高いか低いかによってトナー溶融の進行度合いが変化し、また定着器によって加圧されたときの記録材に対する濡れ広がり性も変わってくる。
(色が重なって見える領域の検証)
次に、本実施例の特徴である、得られた画像における、異なる色の有彩色トナーの色が重なって見える領域について、検出方法ならびに検出結果について、比較例を交えて説明する。まず、以下の説明においては、有彩色トナーとして、Y色トナーとC色トナーを用いて検証し、Y色トナー像とC色トナー像の色が重なった領域、すなわちグリーン色(G色)に見える領域の算出方法および算出結果を代表例として示す。しかし、その他の色についても同様で、これに限定されるものではない。
本検証においては、前記した定着構成において、プロセススピードを100mm/s、定着部の制御温度を180℃とした。また、記録材としてはコート紙(坪量150g/m;紙グロス30%程度)を用いた。また、前記したが、トナーは比重ρが1.1(g/cm)、重量平均粒径Lが6.0(μm)のものを使用し、未定着トナーの記録材上の最大載り量が0.3(mg/cm)となるように設定した。
(二次色領域算出方法)
次に、このような条件において2色重ね合わされ定着された画像から、色の重なって見える領域、ここではグリーン色に見える領域(以後G領域)の算出方法について図6にて説明する。まず、得られた画像を光学顕微鏡(OLYMPUS製;STM6−LM測定顕微鏡)で透過画像観察を行うと、C色、Y色、G色に見える顕微鏡画像を得ることができる。C色トナー像とY色トナー像が重なっていない領域では、C色、Y色の単色で見え、重なっている領域はG色に見える。このときの顕微鏡画像取得条件は、以下のような設定で行った。
接眼レンズ:倍率10×
対物レンズ:倍率5×
実視野領域:4.4mm
開口数:0.13
光源フィルタ:透過用MM6−LBD
出力光量:MAX
また、上記条件で取得した画像を、画像ファイリングソフトウェア;FLVFS−FIS(OLYMPUS製)にて取り込み、保存を行った。このときのカメラプロパティは以下のような設定で行った。
シャッターグループ
モード:スロー
シャッタースピード:0.17[s]
レベルグループ
ゲイン R=2.13 G=1.00 B=1.74
オフセット R/G/B=±0
ホワイトバランス 画面中央にて
ガンマ R/G/B=0.67
シャープネス なし
Gain(Camera PGA−AMP)
R/G/B=1.34
次に、得られた顕微鏡画像において、観察領域内の光量が安定している中央部分をトリミングした。トリミングは、フォトショップ(アドビシステムズ社)で行い、画像中央部の2mm四方を選択した。なお、このトリミング作業は、観察領域内の光量が安定している領域について作業を行うためで、トリミングではなく観察領域内光量バランスのキャリブレーション等を行ってもよい。
次に、得られたトリミング画像から、二次色部分とそれ以外の部分で2値化処理ができ、2値化した部分の領域の大きさを算出できる画像処理ソフト(Image−Pro Plus;(株)プラネトロン製)を用いて、観察領域内における、G色領域を算出する。得られた顕微鏡透過画像のトリミング画像を、二次色とそれ以外の単色の部分あるいは背景色の部分、すなわち、G色領域と、C色・Y色・背景色領域で2値化を行う。ここではG色に見える部分を取得画像内で閾値を設けて抽出し、この部分を白部として変換し、その他の色に見える部分を黒部として変換する。
この2値化された画像に対して、白部の領域の個数カウント、及び、各白部の面積をカウントファイルにて保存する。得られた2値化画像の白部分の面積を、例えばエクセル(マイクロソフト社製)にて積算し、白部分の面積比率をG色領域として算出した。例えば、図3の(a)のように見える画像に対して、上記の2値化処理を行うと、図3の(b)のような黒部分/白部分の2値化画像を得る。この2値化画像において、白部分の割合を算出すると、G色領域の割合が算出される。
G色領域割合(%)={(白部分の面積)/(白部分+黒部分の面積)}×100
={0.3×0.4/1.0×1.0}×100
=12%
となる。
(画像形成工程)
以下の説明においては、有彩色トナーとして、Y色トナーとC色トナーを用いて検証し、Y色トナー像とC色トナー像が重なった領域、すなわちG色に見える領域の算出結果を例として示す。しかし、その他の色についても同様で、これに限定されるものではない。
まず、第1色目のC色トナー像について、第3の画像形成部Pcのドラム1cに未定着のC色トナー像が形成され、ベルト11に一次転写される。そのベルト11上のC色トナー像が二次転写部にて記録材Sに二次転写される。そして、C色トナー像の転写を受けた記録材Sが定着器19に導入されて、未定着のC色トナー像が記録材面に熱と圧力で固着像として定着される。この1回目の画像形成・定着工程が終了した記録材Sが搬送路22,23、15を通り、再び二次転写部へと導入される。
次に、第2色目のY色トナー像について、第1の画像形成部Paのドラム1aに未定着のY色トナー像が形成され、ベルト11に一次転写される。そのベルト11上のY色トナー像が二次転写部にて、既に定着されたC色トナー像が形成された記録材S上に二次転写される。そして、Y色トナー像の転写を受けた記録材Sが定着器19に導入されて、未定着のY色トナー像が記録材面に熱と圧力で固着像として定着される。この2回目の画像形成・定着工程が終了して、定着済みのC色トナー像+Y色トナー像が形成された記録材Sが出力物として搬送路22、25、排出口26を通ってトレイ27に排出される。
(G色領域割合検証実験)
以上のような方法を用いて、実際に本実施例の定着器構成・定着条件において得られた画像の顕微鏡観察を行い、G色領域の割合を算出してみた。また、本実施例の画像形成条件で、1回の画像形成しか行わなかった場合、即ち、第1の画像形成部Paと第3の画像形成部Pcを連携動作させてベルト11上にY色+C色トナー像を形成し、それを記録材に一括して転写/定着した場合を比較例1とする。
また、未定着トナーの記録材上の最大載り量が0.6(mg/cm)となるように設定されたトナー量において、本実施例の定着条件で、1回の画像形成しか行わなかった場合を比較例2とし、2回の画像形成とした場合を比較例3する。その比較例1と2と3の検証を行った。なお、比較例2と3の未定着トナー量については、
A>(ρπL)/30√3
の条件になるように設定した。
なお、本実施例1、比較例1から3までの画像形成回数と未定着トナー量Aと比重ρ、重量平均粒径Lの関係式、及びG領域割合と彩度C*の値を表1に示す。
まず、本実施例および比較例1、2、3の条件において得られたそれぞれの顕微鏡画像を得る。この画像に対して、前記した2値化処理を行うと、図4の(a)(b)(c)(d)のようになり、G領域を算出すると、それぞれ93.2%、75.7%、92.8%、95.2%となった。
このとき、それぞれの画像の彩度をあらわす指標C*はそれぞれ84.0、75.9、83.6、85.6となった。なお、彩度C*とは、色空間であるCIELAB空間の色座標である(L*、a*、b*)において、C*=((a*)^2+(b*)^2)^0.5で表される。色座標はGretag Macbeth Spectro Scan(Gretag Macbeth AG;StatusCode A)で測定した値である。
図4の(a)、(b)を比較すると、本実施例のように2回の画像形成工程を得るほうが、G領域が大幅に増加していることがわかる。これは、異なる色のトナーを未定着の状態で重ね合わせた場合、上層側のトナーが下層側のトナーの隙間を埋めながら定着されるために、色の重なりを阻害してしまう現象が生じる。これに対して、本実施例のように、一旦単色ずつ色を定着させていくことによって、前記したような色の重なりを阻害することなく、画像形成・定着工程が行われるため、大幅に色の重なりを増やし、結果、彩度C*が大幅に増加するためである。
一方、図4の(c)、(d)は、未定着トナーの記録材上の最大載り量が0.6(mg/cm)において定着工程を行ったものである。(c)が1回の画像形成工程を行った比較例2の場合、(d)が2回の画像形成工程を行った比較例3の場合の取得画像に対する2値化処理を行ったものである。これを比較すると、定着工程を1回行った場合も、2回行った場合も、それほどG領域が増加していないことがわかる。また、表1より彩度に関してもあまり増加していないことがわかる。これは、未定着トナーの状態において、色の重なりが多く、従って、1回の画像形成工程において十分な色の重なりを得ているためである。
即ち、従来技術のように、ある程度トナー量が多い領域(すなわち、A>(ρπL)/30√3の領域)で定着画像を得る場合においては、1回の定着工程において十分な色の重なりを得ることができる。従って、彩度の増加、色再現範囲の拡大を達成できていたが、トナー量が少ない領域(すなわち、A<(ρπL)/30√3の領域)においては、色の重なりを増やす工程がないと、極端に色再現範囲が落ちてしまう。
図5の(a)は、本実施例のトナー条件において、定着条件を変化させながらG領域の割合を変化させ、そのときの彩度を検証したものである。図5の(a)からわかるように、多少バラツキはあるものの、G領域の割合で84%を境に、彩度に対する傾きが変化することがわかる。これは、前述したように、二次色領域84%は、トナー同士が隣接してトナー間の隙間が最小になる割合であるためである。従って、二次色領域84%までは、彩度は急激に増減傾向を示すため、少なくとも84%よりも大きい二次色割合にすることが重要である。
また、図5の(b)はトナー比重ρを1.1(g/cm)、重量平均粒径Lを6.0(μm)とした時、トナーを均一に記録材上に配置した時の、二次色率とトナー載り量の関係を計算上で算出したものである。図5の(b)からも分かるように、二次色率は84%を境に大幅に傾きが変化し、84%以上は伸び率が鈍ることが分かる。
本計算における場合においては、単色のトナー載り量が0.399(mg/cm)になった時、トナーが隣接するようになり、二次色率が84%になるが、この84%という値は、トナー粒径、比重が変わっても一定の値である。従って、計算から算出した値と検証した値はほぼ同じ傾向を示し、すなわち二次色領域84%までは、彩度は急激に増減傾向を示し、少なくとも84%よりも大きい二次色割合にすることが重要であることが分かる。
以上説明したように、本実施例の画像形成工程、定着器構成、定着条件において、各単色トナーの未定着画像を一旦記録材上に定着させた後、別の単色トナーの未定着画像を上に形成して、また定着工程を行うという動作を繰り返し行う。これにより、4色の画像形成・定着工程を経ることによって、二次色割合は84%を超えることが可能である。従って、トナー消費量を少なくしていった場合においても、色の重なり度合いが減少しないようにすることが可能で、幅広い色再現領域を得る画像形成装置を提供するができる。
(その他の事項)
1)本発明の画像形成装置において、記録材Sに対する有彩色トナーによる未定着トナー像の形成プロセスは実施例の転写式電子写真プロセスに限られない。転写方式あるいは直接方式の静電記録プロセスや磁気記録プロセス等の他の画像形成プロセスであってもよい。
2)未定着トナー像の定着手段(定着器)19も実施例の熱ローラ方式の装置に限られない。定着部材としてベルトやフィルムを用いた他の構成の加熱・加圧定着器、電磁誘導加熱方式の装置などであってもよい。
3)実施例の画像形成装置は画像形成/定着工程を同一の記録材に対してトナーの色を違えて4回適用して4色フルカラーの画像を形成するものであるが、これに限られない。本発明は、画像形成/定着工程を同一の記録材に対してトナーの色を違えて少なくとも2回以上適用して、色が異なる複数の有彩色トナー像が重ねあわされた画像を形成する画像形成装置に有効に適用できる。
S・・記録材、t・・未定着トナー像、100・・画像形成装置、19・・定着器、N・・定着ニップ部

Claims (1)

  1. 記録材に有彩色トナーにより未定着トナー像を形成し、前記未定着トナー像を加熱及び加圧して前記記録材に定着させる画像形成/定着工程を同一の記録材に対して有彩色トナーの色を違えて少なくとも2回以上適用して、色が異なる複数の有彩色トナー像が重ねあわされた画像を形成する画像形成装置であって、
    前記未定着トナー像を記録材に形成した時に、前記有彩色トナーの比重をρ(g/cm)、重量平均粒径をL(μm)、前記未定着トナー像の記録材に対するトナー載り量をA(mg/cm)としたときに、
    A<(ρπL)/30√3
    となるトナー載り量を、各色の有彩色トナーによる未定着トナー像の形成における最大トナー載り量とし、前記画像において各色の有彩色トナーの色が重なって見える領域が84%以上存在するように前記未定着トナー像を定着することを特徴とする画像形成装置。
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