すでに説明したように、近年では、普通紙をはじめとして、アート紙、コート紙、微コート紙といった、光沢度の小さい記録シートから光沢度の大きい記録シートにまで対応して、画像の出力を行いたい、といった要望が多くなってきている。つまり、さまざまな記録シート(当然、記録シートの光沢度も広範囲に及ぶ)のそれぞれに対して、最適な光沢度に調整して画像形成を行うことが求められている。
特に注目すべきは、コート紙であっても普通紙並に光沢度が小さいマットコート紙である。こうした記録シートは、マットコート紙、ダルコート紙などと呼ばれが、本発明では総じて「マットコート紙」と称することにする。こうしたマットコート紙の用途は、商業印刷分野において拡大してきている点も注目すべき点である。マットコート紙は、紙文書に高級感を持たせることができるとされており、商品カタログ用途などで使用されることが多い。したがって、こうした使用用途が広がりつつあるマットコート紙にも対応して、好適な光沢度を実現した画像形成を行うことが、電子写真方式の画像形成装置でも求められている。
発明者の行った検討によれば、電子写真方式で形成したトナー画像(乾式トナー画像)の場合、普通紙を用いた場合に好まれる光沢度は、5〜20%程度である。ここでの光沢度とは、入射角度が60°である60°光沢度の値である。本願発明では、以後、特に断りがない場合には、60°光沢度の計測値を示すこととする。さらに好ましくは、普通紙を用いた場合に好まれる光沢度は、10〜15%である。一方で、コート紙を用いた場合に好まれる光沢度は、30〜40%である。
普通紙とは、上述したとおり、オフィスなどで一般的に使用される記録シートであり、記録シート表面に紙繊維が露出していることが特徴的な記録シートのことである。一方、コート紙(塗工紙)とは、記録シート表面に、白色顔料などを含有した樹脂を塗工した記録シートのことである。コート紙は、印刷の分野では広く用いられている記録シートであり、記録シート表面をコートすることで、印刷インクが記録シート内部へ浸透することを防ぐことができるため色再現性や濃度の優れた画像を形成することを可能としている。また、記録シート表面のコートの処方を変えることで、記録シートの質感(見た目の印象)も変えることができる。
先述したように、電子写真方式で形成したトナー画像(乾式トナー画像)の場合、コート紙を用いた場合に好まれる光沢度は、30〜40%である。ここで注目するべき点は、コート紙である限りは、普通紙と同じ程度の光沢度(60°光沢度で5%程度)であるようなマットコート紙であっても、好まれる光沢度は、30〜40%であるということである。
マットコート紙と普通紙とでは両者の光沢度に大きな差はないにも関わらず、トナー画像の部分において好ましい光沢度が異なる理由について、十分明らかになってはいない。以下、この理由についての発明者の予測を説明する。
マットコート紙と普通紙とでは、光沢度の値はほぼ同じ値であるが、両者の表面状態は異なっている。具体的には、普通紙では紙繊維が表面に露出しているため、記録シート表面には大きな隙間が生じており、表面の凹凸はおよそ10〜20μmと大きい。一方で、マットコート紙では、塗工層が記録シート表面に形成されているため表面に隙間はなく、また表面の凹凸はおよそ5μm以下と小さい。
このような表面状態が異なる記録シート上に、トナー画像を形成した場合には、トナー画像の表面にも記録シートの表面凹凸の影響がかなり残ると考えられる。つまり、普通紙とマットコート紙とでは、トナー画像の表面状態においても異なる状態となっているのである。このことは、普通紙上のトナー画像とマットコート紙上のトナー画像とでは、見た目の印象である光沢感が異なることに通じる。光沢感とは、計測器によって計測される光沢度とは異なり、ここでは「人間が感じる光沢の程度である」と定義することにする。つまり、トナー画像の表面状態(表面凹凸)が大きく異なる場合には、光沢度が一致するようにトナー画像を形成しても、見た目の印象である光沢感は同じにはならないと考えている。
つまり、上記のような発明者の予測ではあるが、マットコート紙と普通紙とでは、記録シートの表面状態が大きく異なる。そして、この記録シートの表面状態の違いは、トナー画像の表面状態に影響を及ぼす。そして、トナー画像の表面状態が異なるため、計測器での光沢度の測定値が同じであっても、見た目の印象である光沢感が異なるようになってしまう。このため、マットコート紙と普通紙とでは、それぞれの記録シートにおいて、トナー画像で好ましい光沢を得るためには、トナー画像の光沢度を別々の値に設定した方がよいのである。
従来は、記録シートの光沢度にあわせて画像部の光沢度を設定すれば、好ましい光沢を実現した画像を得ることができると考えられていた。具体的には、記録シートの光沢度に対して、同程度かそれより少し高い光沢度(+5〜+10ポイント程度光沢度を高くする)に画像部の光沢度を設定することが好ましいと考えられていた。したがって、記録シートの光沢度を知ることができれば、その記録シートに対する好ましい光沢度を決めることができると考えられていた。しかしながら、発明者の行った検討によれば、上述したように、普通紙とマットコート紙とでは、光沢度は5%程度でほぼ同じ程度であっても、画像部における好ましい光沢度は、普通紙の場合には5〜20%程度で、マットコート紙の場合には30〜40%である、といった具合に異なる光沢度と設定することがより望ましいことが判明した。
このことは、光沢度が同じ程度である記録シートであっても、普通紙であるかマットコート紙であるかを識別する必要があることを意味している。また、特許文献1〜3などに記載されている、従来から多く用いられている記録シート表面の反射光や光沢度から記録シートの種類を識別する手法では、記録シート表面の反射特性に関する情報しか得られないため、光沢度が同程度の記録シートの違いを識別することが難しかった。このため、普通紙およびマットコート紙の違いを識別して、それぞれの記録シートに対して好適な光沢を実現した画像形成を行うことが難しかった。
また、上述したように、特許文献4の場合には、記録シート表面からの反射光の他、記録シートの透過性および記録シート表面の蛍光強度から、記録シートの種類の識別を行うことができるようになっている。このため、普通紙とマットコート紙の差異も検知することが可能であると予想される。しかしながら、記録シートの種類の識別を行う目的のため、反射光、透過光、蛍光強度を検知するための各センサを配置することは、あまりに豪華であり、画像形成装置に装備して搭載するためのセンサとしてコスト面・サイズ面などからも現実的ではない。つまり、特許文献4において開示されている従来技術は、画像形成装置に搭載することが困難であるという問題があった。
他方、特許文献5には、透過光の情報を利用して、記録シートの種類を識別する内容が記載されている。しかし、光沢度にはほとんど差異がない普通紙とマットコート紙との違いを識別するような記載はまったくなく、そもそも普通紙とマットコート紙とを識別する必要性が認識されていない。また、光沢の高い記録シートには光沢の高い画像を適用するといった内容の記載はあるものの、同程度の光沢度の記録シートに対して異なる光沢度の画像を適用するといった記載はない。
そこで、この発明の第1の目的は、普通紙と、普通紙並に光沢度が小さいマットコート紙のそれぞれに好適となる光沢を実現して画像出力することが可能な画像形成装置を提供することにある。
この発明の第2の目的は、マットコート紙および普通紙それぞれの記録シートに対して、ユーザー調査結果を反映して、好ましい光沢を実現した画像出力が可能な画像形成装置を実現することにある。
ところで、透過光の強度分布から記録シートの種類の識別を行うとき、記録シートの汚れや、センサ受光部の汚れ、センサにおける光照射部での照度むらといった要因によって、受光部での受光強度分布が大きくなってしまうことがあり、マットコート紙であっても普通紙と識別されてしまうような問題が発生していた。これは、透過光の強度分布(位置のばらつき)が、マットコート紙に比べて普通紙の方が大きいといった特徴を利用したものであるが、透過光の強度分布は、上述したような要因(記録シートの汚れ、センサ受光部の汚れ、センサにおける光照射部での照度むら)でも、位置のばらつきが大きな値となってしまうためである。
そこで、この発明の第3の目的は、記録シートの汚れや、センサ受光部の汚れ、センサにおける光照射部での照度むらといった、要因によって識別精度が低下してしまうようなことがなく、マットコート紙であるか普通紙であるかを精度良く識別し、マットコート紙と普通紙との各記録シートに対して、ユーザー調査結果を反映して、好ましい光沢を実現した画像出力が可能な画像形成装置を実現することにある。
ところで、作像装置が印刷方式やインクジェット方式の場合には、画像光沢の切り換えはあまり容易とはいえない。特に記録シートが普通紙の場合には、印刷方式やインクジェット方式では、画像部の光沢度は記録シートの光沢度以下となっていることが多く、ユーザーに好まれる光沢度5〜20(さらに好ましくは10〜15%)の間に設定することができない問題がある。
印刷方式やインクジェット方式では、一般的には画像部の光沢度の切り換えは記録シート特性(記録シート表面の平滑性やインクの吸収特性)によるため、実際には記録シートを選択した時点で、画像部の光沢が決定してしまう。このため、使用者が出力画像の光沢が気に入らなかったとしても、それを調整するようなことは不可能である。
印刷方式やインクジェット方式では、画像部の光沢度は、インク特性などでもある程度は変えることができるが、このようにインク特性を変える方式では、記録シートの種類をセンサで検知しても、検知後にインクの入れ換えが必要となってしまう。センサでの検知後にインクの入れ換えを行っていたのでは、出力速度が著しく低下してしまい、非常に不便である。また、インクの切り換えを行う際には、使用者の手間を必要とし、インク経路の清掃などの作業をともなうこともあり、使用者にとっては負荷の大きい作業となってしまう。
そこで、この発明の第4の目的は、記録シートの種類の識別を精度良く行うことができれば、画像部を狙いの光沢度に設定しやすい画像形成装置を提供することにある。
この発明の第5の目的は、制御上の観点からはきわめてシンプルな定着条件の変更で、画像部の光沢度調整を可能とした画像形成装置を実現することにある。
この発明の第6の目的は、定着温度が狙いの温度に達するまでの待機時間をほとんど必要とせず、画像部の光沢度調整を可能とした画像形成装置を実現することにある。
この発明の第7の目的は、待機時間が必要なく、また光沢の切り換えを行ってもいわゆるプリント速度が低下してしまうようなことなく、画像部の光沢度調整を可能とした画像形成装置を実現することにある。
この発明の第8の目的は、シート厚みが大きいことによって透過光の強度分布の感度が低下してしまう問題を解決し、マットコート紙であるか普通紙であるかを精度良く識別し、マットコート紙および普通紙それぞれの記録シートに対して、好ましい光沢を実現した画像出力が可能な画像形成装置を実現することにある。
この発明の第9の目的は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4色のトナー画像によって、フルカラーでの画像出力が可能な画像形成装置を実現することにある。
この発明の第10の目的は、厚さの厚い普通紙が含まれる場合であっても、マットコート紙であるか普通紙であるかを精度良く識別し、マットコート紙および普通紙それぞれの記録シートに対して、ユーザー調査結果を反映して、好ましい光沢を実現した画像出力が可能な画像形成方法を提供することにある。
このため、請求項1に記載の発明は、
作像装置を用いて、用紙等の記録シート上に画像が記録される、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において、
記録シートに光を透過させる光透過装置と、
その光透過装置で記録シートに光を透過させて得た透過光の強度分布、すなわち光強度の位置によるばらつきから、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかを識別するとともに、その識別結果に基づき、記録シート上の画像部の光沢を切り換える制御装置と、
が備えられていることを特徴とする。
ここで、普通紙とは、オフィスなどで一般的に使用される記録シートであり、記録シート表面に紙繊維が露出していることが特徴的な記録シートのことである。一方、コート紙とは、記録シート表面に、白色顔料などを含有した樹脂を塗工した記録シートのことである。マットコート紙とは、コート紙の中でも、普通紙並に光沢度が小さい記録シートのことである。
そして、作像装置を用いて画像が記録された記録シートに光透過装置で光を透過させ、その透過光の強度分布から、制御装置で、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかを識別し、その識別結果に基づき記録シート上の画像部の光沢を切り換える。
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御装置が、記録シートが普通紙であると識別した場合には、30%〜40%の光沢度に設定し、マットコート紙であると識別した場合には、5%〜20%の光沢度に設定することを特徴とする。
そして、制御装置が、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかの識別結果に基づき、記録シート上の画像部の光沢を切り換えて、記録シートが普通紙であると識別した場合には、30%〜40%の光沢度に設定し、マットコート紙であると識別した場合には、5%〜20%の光沢度に設定する。
請求項3に記載の発明は、
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記制御装置が、透過光の強度分布の空間周波数特性から、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかを識別することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、
請求項1ないし3のいずれか1に記載の画像形成装置において、
記録シート上に形成したトナー画像を記録シートに定着する定着装置を備え、
前記制御装置が、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかの識別結果に基づき、前記定着装置の定着条件を変更することにより、記録シート上の画像部の光沢を切り換えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置において、前記定着条件の変更が、前記定着装置の定着温度の変更であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の画像形成装置において、前記定着条件の変更が、前記定着装置を通過する記録シートのシート搬送速度の変更であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、
請求項4ないし6のいずれか1に記載の画像形成装置において、
前記定着装置に定着条件が異なる複数の定着手段を備え、
前記制御装置が、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかの識別結果に基づき、前記複数の定着手段の1つを選択的に使用することにより、記録シート上の画像部の光沢を切り換えることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、
請求項1ないし7のいずれか1に記載の画像形成装置において、
前記制御装置が、透過光が一定光量以下となったときに、前記光透過装置の発光部での発光量を強くすることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、
請求項1ないし8のいずれか1に記載の画像形成装置において、
前記作像装置が、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの4色のトナーを使用することによりトナー画像を形成していることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、
作像装置を用いて、用紙等の記録シート上に画像が記録される画像形成方法において、
画像が形成された記録シートに光を透過させ、
その透過光の強度分布、すなわち光強度の位置によるばらつきから、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかを識別し、
その識別結果に基づき、記録シート上の画像部の光沢を切り換える、
ことを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、作像装置を用いて画像が記録された記録シートに光透過装置で光を透過させ、その透過光の強度分布から、制御装置で、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかを識別し、その識別結果に基づき記録シート上の画像部の光沢を切り換える。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、透過光に基づいて記録シートの種類の識別を行うことができる。このようにすることによる最大の効果は、マットコート紙と普通紙といった光沢度の値にあまり差異が無い記録シートの種類の識別を行うことができるようになる点である。また、請求項1の構成にすることで、マットコート紙と普通紙とのそれぞれに対して、好ましい光沢となるようなトナー画像を形成して画像出力を行うことが可能となる。
請求項1の構成に対して、従来技術では、記録シート表面からの反射光に基づいて記録シートの種類の識別を行う場合が多数であった。しかしながら、記録シート表面からの反射光に基づいて記録シートの種類の識別を行う方法では、光沢度の差がほとんどないマットコート紙と普通紙との違いを識別することができないといった問題が生じていた。このような問題に対して、請求項1に記載の発明によれば、透過光によって記録シートの種類の識別を行うため、光沢度の差がほとんどないようなマットコート紙と普通紙との違いを識別することができるようになる。
上述したように、マットコート紙と普通紙とを識別することの意義は、マットコート紙と普通紙とでは、記録シート自体の光沢度には大きな差は無いものの、画像部分において好ましい光沢が異なることが、その理由である。つまり、普通紙とマットコート紙とでは、好ましい画像を実現するためには、それぞれの記録シートに対して画像部分の光沢度を異なる値に設定することが必要になるためである。
好ましい光沢とは、ユーザーからの聞き取り調査から判明するものであるが、より詳細にその中身を説明すると、1つ目の条件として紙と違和感を覚えない光沢になっている(紙と画像部との光沢の差があまり大きくない)こと、2つ目の条件として光沢の違和感を覚えない範囲で光沢が大きく色再現範囲が大きいことと考えることができる。一般的には光沢が高い方が色再現範囲も大きくなるため、光沢が大きい方が鮮やかに見えるようになる。つまり、光沢が高過ぎて紙と画像部とが違和感を覚えるようでは困るが、そうならない程度に光沢が高いことが、好ましい光沢の条件であると考えられる。
また、請求項1の構成では、記録シートの透過光に基づいて記録シートの種類がマットコート紙であるか普通紙であるかの識別を行う識別装置を用いている。この点も、たくさんの種類の識別装置(センサ)を使用して、記録シートの種類を識別しているような従来技術(特許文献4)とは少し異なっている。記録シートの種類を識別するための識別装置が複雑(多数のセンサ)となると、コスト面・サイズ面において画像形成装置に搭載することが現実的ではないといった問題が発生してしまう。これに対して、請求項1に記載の発明によれば、センサ数は1つあり、こうしたコスト面・サイズ面にかかわる問題は発生しない。
請求項1に記載の発明は、各記録シートにおいて好ましい光沢が、コート紙であるか普通紙であるかといった記録シートの種別にのみ依存し、記録シート自体の光沢度にはほとんど依存しないといった、発明者らが行った検討の結果に基づいた発明である。この検討結果によれば、記録シートの識別は普通紙とコート紙とを識別することが重要となり、それ以上の識別はそれほど重要ではないというものであった。請求項1に記載の発明は、この点に鑑みて、記録シートがコート紙であるか普通紙であるかを識別することができるような必要最小限の構成とした識別装置を用いている点が特徴である。このため、請求項1に記載の発明は、コスト面・サイズ面において実現性の高い識別装置を用いながら、各記録シートに対して好ましい光沢を実現した画像出力を可能とした画像形成装置を実現することができる。
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、普通紙と、普通紙並に光沢度が小さいマットコート紙に対して、それぞれに好適となる異なる光沢を実現して画像出力することが可能な画像形成装置を提供することができる。そして、このとき記録シートの識別を行う識別装置(センサ)が複雑化してしまうといった問題が発生せず、コスト面・サイズ面で実現性の高い識別装置を搭載した画像形成装置を実現することができる。
加えて、普通紙であっても厚みが大きな普通紙の場合には、普通紙であることを上手く識別できない場合があった。これは、記録シートの厚みにより、透過光が変化してしまうためである。このような場合であっても、透過光の光量ではなく、透過光の強度分布(透過光強度の位置によるばらつき)から、記録シートがマットコート紙であるか普通紙であるかの判定を行うため、上述した記録シートの厚みが大きくなった場合に発生する問題を解決することができる。この理由は、記録シートを透過する光量(平均値)は記録シートの厚みで変化してしまう一方で、透過光の強度分布は記録シートの厚みの影響がそれほど大きくなく、マットコート紙では普通紙に比較して透過光強度の分布が小さくなる関係が保持される。このため、透過光の強度分布の情報から、マットコート紙と普通紙との違いを識別することができる。
つまり、請求項1に記載の発明によれば、厚さの厚い普通紙が含まれる場合であっても、マットコート紙であるか普通紙であるかを精度良く識別し、マットコート紙および普通紙それぞれの記録シートに対して、ユーザー調査結果を反映して、好ましい光沢を実現した画像出力が可能な画像形成装置を実現することができる。
請求項2に記載の発明によれば、記録シートが普通紙であると識別した場合には、30%〜40%の光沢度に設定し、マットコート紙であると識別した場合には、5%〜20%の光沢度に設定するので、マットコート紙および普通紙それぞれの記録シートに対して、ユーザー調査結果を反映して、好ましい光沢を実現した画像出力が可能な画像形成装置を実現することができる。
ユーザーを対象として、発明者が行ったパネラーテストの結果において、マットコート紙の場合には好ましい光沢度は30〜40%であり、普通紙の場合には好ましい光沢度は5〜20%(Redパッチにおける60°光沢度)である、という結果が得られた。そこで、請求項2に記載の発明によれば、マットコート紙および普通紙それぞれにおいて、このようなユーザー調査の結果を反映して、ユーザーに好まれる光沢を実現することができるようになる。
さて、透過光の強度分布を大きくしてしまう要因の場合には、いわゆる空間周波数が小さいものが大部分である。具体的には、センサの受光エリア内に1箇所程度、透過光の強度分布の特異的な箇所が存在するといった、形態である。つまり空間周期で表すと、1cm以上の周期性をもつものであり、これは0.1cycle/mm以下の空間周波数成分に相当する。
一方で、マットコート紙と普通紙との透過光強度分布における差異は、1cycle/mm程度の周波数成分の違いとしてあらわれる。マットコート紙と普通紙では、1cycle/mm程度の周波数成分の大きさに違いがあり、マットコート紙に比べて普通紙の方がこの周波数成分が大きい。このため、1cycle/mm程度の周波数成分を使用して識別を行うことにより、マットコート紙と普通紙とを精度良く識別することができるようになる。
そこで、請求項3に記載の発明によれば、透過光の強度分布の空間周波数特性に基づいて、記録シートの種類がマットコート紙であるか普通紙であるかの識別を行う。そこで、透過光の強度分布のみ(周波数成分を考慮しない)から記録シートの種類の識別を行った場合に生じる不具合は、空間周波数成分で表すと、0.1cycle/mm以下に相当するため、1cycle/mmを使用してマットコート紙と普通紙との識別を行うことで、不具合を生じさせる要因を分離することができるようになる。
つまり、請求項3に記載の発明によれば、記録シートの汚れや、センサ受光部の汚れ、センサにおける光照射部での照度むらといった、要因によって識別精度が低下してしまうようなことがなく、マットコート紙であるか普通紙であるかを精度良く識別し、マットコート紙と普通紙との各記録シートに対して、ユーザー調査結果を反映して、好ましい光沢を実現した画像出力が可能な画像形成装置を実現することができる。
請求項4に記載の発明によれば、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかの識別結果に基づき、記録シート上に形成したトナー画像を記録シートに定着する定着装置の定着条件を変更することにより、記録シート上の画像部の光沢を切り換える。よって、作像装置を用いて形成されたトナー画像を定着装置によって加熱・加圧することで記録シート上に定着させる方式の場合、印刷方式やインクジェット方式に比べると、画像部の光沢度は、記録シートの表面性にはそれほど依存せず、トナーの付着量や定着条件などを調整することで、画像部の光沢度をある程度は調整することができ、画像部を狙いの光沢度に設定しやすい利点を有する。
請求項5に記載の発明によれば、定着条件の変更を定着温度の変更によって行い、可動部分の条件変更を伴わないため、定着条件変更にともなってその他の条件を変更する必要がほとんどない。このため、制御上の観点からはきわめてシンプルな定着条件の変更で、画像部の光沢度調整を可能とした画像形成装置を実現することができる。
請求項6に記載の発明によれば、定着条件の変更をシート搬送速度の変更によって行い、定着装置の温度変更の必要がないか、またはわずかな温度変更でよいので、定着温度が狙いの温度に達するまでの待機時間がほとんど必要なく、使用者がこうした待機時間を強いられることがない画像形成装置を実現することができる。
請求項7に記載の発明によれば、定着装置に定着条件が異なる複数の定着手段を備え、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかの識別結果に基づき、複数の定着手段の1つを選択的に使用することにより、記録シート上の画像部の光沢を切り換える。よって、定着条件の変更は、記録シートの搬送経路を切り換えることによって、記録シートを通過させる定着手段を切り換えればよい。このため、待機時間が必要なく、また異なる定着手段を通過させる際にシート搬送速度を切り換える必要もなくなるため、光沢の切り換えを行ってもいわゆるプリント速度が低下してしまうようなことがなくなる。
また、定着温度やシート搬送速度だけの変更ではなく、定着部材の材質などの条件を変更することも可能である。つまり、請求項7に記載の発明によれば、定着条件をマットコート紙と普通紙とでそれぞれに好ましい光沢を実現できるように定着条件を変更する際に、変更可能な定着パラメータが多くなり、定着条件変更の際の自由度を大きくすることができる。
請求項8に記載の発明によれば、制御装置が、透過光が一定光量以下となったときに、光透過装置の発光部での発光量を強くするので、シート厚みが大きいことによって透過光の強度分布の感度が低下し、透過光が減少して光強度分布のばらつきがほとんど判別できないような状態になってしまう場合であっても、記録シートに照射する光量を増加させることで、このような透過光の強度分布の感度が低下してしまう問題を解決することができる。
請求項9に記載の発明によれば、作像装置が、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの4色のトナーを使用することによりトナー画像を形成しているので、4色のトナー画像によって、フルカラーでの画像出力を可能とすることができる。
請求項10に記載の発明によれば、作像装置を用いて画像が記録された記録シートに光透過装置で光を透過させ、その透過光の強度分布から、制御装置で、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかを識別し、その識別結果に基づき記録シート上の画像部の光沢を切り換えるので、厚さの厚い普通紙が含まれる場合であっても、マットコート紙であるか普通紙であるかを精度良く識別し、マットコート紙および普通紙それぞれの記録シートに対して、ユーザー調査結果を反映して、好ましい光沢を実現した画像出力が可能な画像形成方法を実現することができる。
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、この発明による画像形成装置の内部概略構成を示す。
画像形成装置内には、下部に、給紙カセット11、12が上下に配置されている。給紙カセット11、12は、いずれも、記録シートである用紙を収納している。記録シートとしては、一般的に複写機やプリンタなどに使用されるOA用紙(普通紙)とよばれる情報用紙などの他に、キャストコート紙・アート紙・微塗工紙などの塗工紙、上質紙・中質紙・下級紙などの非塗工紙など、どのようなものであっても構わない。また、PETなどのプラスチック素材で形成される、いわゆるOHPシートなどであっても構わない。
図示画像形成装置は、特に、マットコート紙と普通紙といった用紙光沢度が5〜6%程度と低い記録シートそれぞれに対して、ユーザー調査結果を反映して、好ましい光沢を実現したものであり、給紙カセット11にはマットコート紙が、給紙カセット12には普通紙が、各々ストックされている。
給紙カセット11、12から排出された記録シートは、シート搬送経路13にしたがって画像形成装置の上部へと搬送されていく。搬送ベルト14は、記録シートを表面に保持しながら記録シートを搬送する。作像装置15では、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーを用いて、後述するごとく単色画像を重ね合わせてカラートナー画像を形成している。そして、搬送ベルト14で保持する記録シートへと転写する。トナー画像を転写された記録シートは、搬送ベルト14によってシート搬送経路13に沿ってさらに画像形成装置の上部へと搬送されていく。
記録シートは、表面にトナー層を保持した状態で、定着装置16へと搬送され、定着装置16を通過することで、後述のごとくトナー画像が加熱・加圧され、記録シート上へ定着される。定着装置16において定着されたトナー画像を保持した記録シートは、定着装置16の出口を出て、画像形成装置の上部において向きを左向きに変え、画像形成装置の機外へと排出される。
光透過装置17は、記録シートに光を照射する発光部、記録シートを介して反対側に設置された受光部などから構成されている光透過型センサである。光透過装置17は、記録シートが搬送ベルト14に進入する手前のレジストローラ18の手前に配置されている。記録シートがレジストローラ18において、進入のタイミングを合わせるために停止している間に、光透過装置17では、記録シートを透過する透過光を用いて、記録シートの種類の識別を行う。
図2には、作像装置15の構成を示す。
作像装置15は、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の色成分画像を重ね合わせてトナー画像を形成する。作像装置15には、図示するように、YCMKの各色成分に対応して、4つの画像形成ユニット20が配置されている。各画像形成ユニット20で形成された各色成分トナー画像は、4つの画像形成ユニット20に当接して配置されているベルト状の中間転写体21へと、順次転写される。中間転写体21は、不図示の駆動手段によって所定のタイミングで回転しているため、中間転写体21上において、各色成分トナー画像が所定の位置で重ね合わされるようになっている。中間転写体21上で重ね合された各色成分トナー画像は、搬送ベルト14上の記録シートへと一括転写され、記録シート上にトナー画像が記録される。
YCMKの4色の各色画像形成ユニット20は、共通の構成となっており、それぞれ、感光体ドラム22と、この感光体ドラム22を所望の電位に帯電する帯電器23、所望の電位に帯電された感光体ドラム22に出力用画像データ(後述する画像処理を施した画像データ)に対応して書き込みを行うレーザ光学ユニット24、レーザ光学ユニット24による書き込みによって感光体ドラム22上に形成された静電潜像を各色成分に対応するトナーによって現像する現像器25、現像器25によって感光体ドラム22上に現像されたトナー画像を上記の中間転写体21上へと転写する1次転写器26、中間転写体21へ転写されずに感光体ドラム22上に残った未転写トナーをクリーニングするクリーナー27とから構成されている。
次に、画像データ入力から出力用画像データを得るまでの画像処理部を説明する。スキャナ部(コピー機の場合)、またはパーソナルコンピュータ(プリンタの場合)などからの入力データは、RGB多値(多くの場合8bit)画像であり、画像処理装置28に入力されて、画像処理部の中の、MTFフィルタ処理部において強調処理され、次いで色分解によりRGB色空間からCMYK色空間へと分解された後、階調補正処理部(γ変換部)によりあらかじめ設定されている階調を実現するための濃度制御がなされる。次いで、擬似中間調処理部によりプリンタ特性に合うように擬似中間調処理が施され、出力用画像データ(600dpi、4bitデータ)として、画像出力側(ビデオ信号処理部29)へと引き渡される。
ビデオ信号処理部29では前述の出力画像用データ(画像処理の結果)を受け取り、発光点(レーザーダイオード)の個数分のデータをラインメモリ上に記憶し、ポリゴンミラーの回転に同期した信号(いわゆる同期信号)に合せて、各画素に対応する上記ラインメモリ状のデータを所定のタイミング(画素クロック)で、PWM制御部へと引き渡す。なお、この例では、発光点の数は、各色ともに1つである。PWM制御部では、このデータがパルス幅変調(PWM)信号へと変換され、LDドライバへと引き渡される。LDドライバでは、このパルス幅変調信号に対応して所定の光量でLD素子(LDアレイ)を光変調駆動する。例では、各色成分の出力用画像データに対応して、パルス幅変調(PWM)制御を行い、レーザの光変調駆動を行うようになっている。
この画像処理部でのデータの流れに関して、図2ではY色についてだけ図示するが、他のCMK3色についても、それぞれ別個のビデオ信号処理部を有し、同様の処理が施される。
LD素子からの発光光は、コリーメートレンズにおいて平行光を形成するようになり、アパーチャにより所望のビーム径に対応する光束に切り取られる。アパーチャ通過後の光束は、シリンドリカルレンズを通過し、ポリゴンミラーへと入射される。ポリゴンミラーで反射された光束は、走査レンズ(f−θレンズ)によって集光されて、折り返しミラーで折り返した後に、感光体ドラム22位置上で結像するようになっている。上述したように、感光体ドラム22に対して静電潜像を形成したのち、この静電潜像をトナー画像へと現像して、記録シート上のトナー画像とするまでの工程は先述の通りである。
図示画像形成装置で使用するトナーは重合法によって作製を行った、いわゆる重合トナーである。また、定着装置5においてオイルレス定着を実現することができるように、トナー内部に離型剤であるWAXを内包している。この例では、トナーの粒径は、体積平均粒径が5.5μmとなるように製造した。トナー粒径の測定は、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTAII」を用い、アパーチャ径100μmで測定した。ほぼ同一の製法により、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーについて作製を行っている。なお、この発明のトナーは、上記作製方法の他、分散重合法、または粉砕法などによって作製したトナーであっても構わない。
図3には、定着装置16の拡大構成を示す。
定着装置16は、エンドレスの定着ベルト30に対して、裏側からはスポンジローラ31が、表側からは加圧ローラ32がそれぞれ加圧されて当接された構成になっている。定着ベルト30は、スポンジローラ31と加熱ローラ33とテンションローラ34とに掛けまわされ、加圧ローラ32の内部には、加熱源であるハロゲンヒータ35が配置されている。また、加熱ローラ33の内部にも、加熱源であるハロゲンヒータ36が配置されている。
定着ベルト30は、導電性カーボンを分散した厚さ70μmのポリイミドフィルムを基材として、厚さ200μmのシリコーンゴムの弾性層を設け、さらにトナー画像との接触層として上部に膜厚30μmのPFA層を塗布して形成する。このようにして形成した定着ベルト30の表面性を測定したところ、算術平均粗さRaで、0.03μmであった。また、スポンジローラ31は、発泡シリコーンローラで、厚さ10mmに形成されている。この他、加圧ローラ32は、アルミニウム製の芯金の上に1mmのシリコーンゴム層を配置した構成になっている。
先述した作像装置15によってトナー画像が形成された記録シートは、シート搬送経路13に沿って図3の下部から定着装置16へと搬送される。そして、ハロゲンヒータ36によって加熱された定着ベルト30およびハロゲンヒータ35によって加熱された加圧ローラ32間の定着ニップに挿入されると、記録シート上のトナー画像が加熱および加圧されて半溶融状態となり、記録シートへと定着される。その後、記録シート上のトナー画像は、定着ベルト30と分離されて、定着装置16から排出される。定着装置16から排出された記録シートは、前述したように画像形成装置の外部へと排出される。なお、この例では、記録シートは、線速150mm/secで搬送されている。
ところで、以上説明した定着装置16は、一例に過ぎず、この発明においては、上記以外の構成であっても構わない。定着ベルトの構成なども、上記で説明した以外の部材であってもよいし、またベルトを使用しないものであってもよい。
図4には、光透過装置17の構成を示す。
光透過装置17は、発光部40であるLEDから発した光を発光部レンズ41を介して、記録シートに照射する。シート搬送経路13を挟んで発光部40の反対側には、記録シートを透過した光が受光部レンズ42を介して受光部43に集光されるように構成されている。受光部43は、フォトダイオードであり、受光光量に応じた電気信号を出力するようになっている。
図示例では、光透過装置17から出力された電気信号を用いて、図1に示す制御装置44により、記録シートの種類がマットコート紙であるか普通紙であるかの識別を行う。このとき、同じ厚みであれば、マットコート紙の方が普通紙に比べて透過光量が小さい、すなわち透過率が小さいことを用いて、記録シートの種類の識別を行う。
図5には、光透過装置17からの出力に基づいて行う制御のフローチャートである。
光透過装置17からの出力値Sがあらかじめ設定してある基準値Tと比較し(ステップS1)、基準値T以下の場合(透過光量が基準となる透過光量よりも小さい場合)には、記録シートの種類をマットコート紙であると判定して、定着条件としてマットコート紙用の定着条件を設定するようにする(ステップS2)。一方、光透過装置17からの出力値Sがあらかじめ設定してある基準値Tよりも大きい場合には、記録シートの種類を普通紙である判定して、定着条件として普通紙用の定着条件を設定するようにしてある(ステップS3)。
マットコート紙用の定着条件としては、上述の定着装置16を使用して、シート搬送速度150mm/sec、定着ベルト30の温度185deg、加圧ローラ32の温度170degとして記録シートを通過させる。また、このときの記録シート上のトナー付着量は、CMYK各色0.45mg/cm2となるように設定する。このような条件下において、マットコート紙上に画像を形成すると、画像部の光沢として35%の光沢度(60°光沢)を得ることができる。ここでの画像部の光沢としては、いわゆるRedパッチとよばれるM(マゼンタ)=100%、Y(イエロ)=100%のベタ画像に対して、入射角が60°の光沢度で測定したものを記載する。なお、このときマットコート紙としては、OK嵩王(王子製紙、坪量:110g/m2、用紙光沢度6.4%(60°光沢度))を使用した。
一方、普通紙用の定着条件としては、シート搬送速度150mm/secは同じであるが、定着温度を切り換えて、定着ベルト30の温度を150deg、加圧ローラ32の温度を130degとして記録シートを通過させる。同様に、記録シート上のトナー付着量は、CMYK各色0.45mg/cm2となるように設定する。こうした条件下において、普通紙上に画像を形成すると、画像部の光沢として15%の光沢度(60°光沢度)を得ることができる。画像部の光沢としては、上記と同様にRedバッチの光沢度で測定したものを記載する。なお、このときの普通紙としては、TYPE6200(リコー製、坪量:70g/m2、用紙光沢度5.0%(60°光沢度)を使用した。
ここで注目するべき点は、図示例の構成では、記録シート:OK嵩王と記録シート:TYPE6200とが、記録シート自体の光沢度は大きくは違わないにもかかわらず、画像部光沢の値は大きく異なる点である。
この例では、このような構成にしたことで、記録シートがマットコート紙と普通紙であるかの違いを識別することができるようになり、さらに、マットコート紙には画像部の光沢度を35%に設定した画像を出力し、普通紙には画像部の光沢度を15%に設定した画像を出力することができるようになる。なお、後述するように、マットコート紙での画像部の光沢度が35%であること、普通紙での画像部の光沢度が15%であることは、それぞれの記録シートに対してユーザーが好ましいと感じる光沢度であることが、発明者の行った次の主観評価実験から明らかになっている。このため、この例の画像形成装置は、マットコート紙と普通紙との両方の記録シートにおいて、ユーザーにとって好ましい光沢を実現して、画像出力を行うことができる。
<主観評価実験>
記録シート:
OKカサブランカX(王子製紙、坪量:100g/m2、60°光沢度:45%)
OK嵩王(王子製紙、坪量:110g/m2、60°光沢度:6%)
TYPE6200(リコー製、坪量:70g/m2、60°光沢度:5%)
光沢:
記録シート(1)に対して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、の6水準
記録シート(2)に対して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、の6水準
記録シート(3)に対して、1%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、の6水準
の光沢度(Redパッチの60°光沢度)に設定した画像を準備
画像種:
A.写真画像であり、さらに画像領域と紙白領域とが近接するような光沢の違和感に一番厳しい画像。
B.黒文字文章中とイメージ(写真)混在する画像
結果:
記録シート(1)と記録シート(2)とで、好まれた画像の光沢度はあまり変わらなかったが、若干(2)の方が低い光沢を好む人が多かった。記録シート(1)、記録シート(2)ともに、光沢度30%〜40%のものが、好ましい光沢度として支持された。
記録シート(3)については、光沢度5%〜20%のものが許容され、10%〜15%のものが特に支持された。
画像種(写真であるが、写真入り文字文書であるか)の違いによって、好ましい光沢が大きく変わることはなかった。画像種Aでも画像種Bでも好まれた光沢度は、光沢度30%〜40%であった。
結論:
好ましい光沢(画像部)は、記憶シートの光沢度にはあまり依存しない。記録シートが塗工紙であるか普通紙ではあるかの違いにより、好ましい光沢度(画像部)は大きく異なる。
ところで、この発明では、光透過装置17の受光部43を2次元のCCDで形成する。そして、このCCDによって記憶シートを透過した透過光の強度分布、すなわち光強度の位置によるばらつきを、2次元信号として出力するようにしている。
このような記憶シートの透過光量ばらつきに相当する2次元信号に対して、いわゆるフーリエ変換を施すことで、各空間周波数の振幅(空間周波数成分)を算出する。この発明では、このようにして計算された空間周波数成分に基づいて、記録シートの種類の識別を行う。なお、一例としては、CCDの画素数(実効的な画素数)は200×200pixelとし、受光部レンズ42によって1画素サイズが、記録シートの表面上で50μmに相当するように各素子を配置して構成される。
次に、このようにして算出した空間周波数成分から、記憶シートの種類の識別を行う方法について説明する。記憶シートがマットコート紙である場合には、上述した空間周波数成分のうち1cycle/mm程度の空間周波数に相当する振幅AFが比較的小さい、といった特徴がある。一方で、記憶シートが普通紙である場合には、上述した空間周波数成分のうち1cycle/mm程度の空間周波数に相当する振幅AFが比較的大きい、といった特徴がある。この発明は、こうした記録シートの特性に注目したものである。
この発明でも、1cycle/mm程度の空間周波数に相当する振幅AFを記憶シートの透過光から算出して、この値Aをあらかじめ設定してある規定値Tと比較することで、記憶シートがマットコート紙(コート紙)であるか普通紙であるかを識別する。記録シートの種類の識別を行った後の制御方法は、上述した場合と同様である。
この発明では、このような記録シートの透過光量ばらつきに相当する2次元信号から、上述した空間周波数成分のうち1cycle/mm程度の空間周波数成分を算出することで、記録シートの種類の識別を行っている。このような構成にすることで、1cycle/mmよりも小さな周波数成分に相当する透過光のばらつき(たとえば、記録シートを照射する照明の照度むら、記録シートの汚れ)の影響を排除して、記録シートがマットコート紙と普通紙であるかの違いを識別することができるようになり、それぞれの記録シートに対してユーザーが好ましいと感じる光沢度として、発明者の行った主観評価実験から明らかになった光沢を実現して、画像出力を行うことがきる。つまり、この発明による画像形成装置は、マットコート紙と普通紙との両方の記録シートにおいて、ユーザーにとって好ましい光沢を実現して、画像出力を行うことできる。
図6には、光透過装置17の他例の構成を示す。
図4に示す光透過装置17では、発光部40からの光が記録シートの広いエリアを照射するようになっている。これに対して、この例の光透過装置17では、記録シートの狭いエリアを照射するようにしている。具体的には、この発明の前例では、記録シートを照射するエリアをφ10mmとしているのに対して、この例では、φ0.5mmとしている。
この例では、記録シートが給紙カセット11、12からレジストローラ18に搬送される間、光透過装置17によって、記録シートに光を照射して0.05msec間、透過光を検知する。こうして得られた透過光の時間経過に伴う変動から、記録シートがマットコート紙であるか、または普通紙であるかの識別を行う。
記録シートがマットコート紙である場合には、上述した透過光の時間経過に伴う変動が比較的小さい。一方で、記録シートが普通紙であるある場合には、透過光の時間経過に伴う変動が比較的大きい。この図6に示す例では、こうした記録シートの特性に注目したものである。透過光の時間経過に伴う最大値と最小値からこの差である振幅A(=最大値−最小値)を算出して、記録シートの種類の識別を行っている。このようにして、振幅Aを算出した後は、この値Aをあらかじめ設定してある規定値Tと比較し、記録シートがマットコート紙であるか普通紙であるかを識別する。記録シートの種類の識別を行った後の制御方法は、前例と同様である。
この図6に示す例では、このようにして記録シートの透過光についての時間的変化に注目しているため、記録シートの厚みが異なるような場合でも、記録シートがマットコート紙と普通紙であるかの違いを識別することができるようになる。例えば、厚みの大きい普通紙の場合、記録シートの透過光は厚みの影響により減少するが、この場合でのばらつきは普通紙であるために大きくなる。よって、それぞれの記録シートに対してユーザーが好ましいと感じる光沢度として、発明者の行った主観評価実験から明らかになった光沢を実現して、画像出力を行うことがきる。
なお、図6においても、図4と同様に、発光部40であるLEDから発した光を発光部レンズ41を介して、記録シートに照射する。シート搬送経路13を挟んで発光部40の反対側には、記録シートを透過した光が受光部レンズ42を介して受光部43に集光されるように構成されている。
図7には、光透過装置17のまた他例の構成を示す。
この例では、照射された記録シートの透過光の像(記録シート表面の像)が、受光部レンズ42を介して受光部43の位置で結像するようになっている。受光部43は図4の場合にはフォトダイオードであったが、この発明の場合は2次元CCDである。この2次元CCDによって記録シートを透過した透過光の強度分布、すなわち光強度の位置によるばらつきを検知し、2次元での透過光量のばらつきに相当する信号データを出力するようになっている。
次に、このようにして検知した2次元の透過光量ばらつきから、記録シートの種類の識別を行う方法について説明する。記録シートがマットコート紙である場合には、上述した2次元の透過光のばらつきが比較的小さい。これに対し、記録シートが普通紙である場合には、2次元の透過光のばらつきが比較的大きい。よって、この例では、こうした記録シートの特性に注目する。
この図7に示す例でも、透過光の2次元のばらつきに対する最大値と最小値からこの差である振幅A(=最大値−最小値)を算出して、記録シートの種類の識別を行っている。こうして振幅Aを算出した後は、この値Aをあらかじめ設定してある規定値Tと比較することで、記録シートがマットコート紙であるか普通紙であるかを識別する。記録シートの種類の識別を行った後の制御方法は、上述した例と同様である。
この例では、このようにして記録シートの2次元の透過光量ばらつきに注目しているため、記録シートの厚みが異なるような場合でも、記録シートがマットコート紙と普通紙であるかの違いを識別することができるようになり、それぞれの記録シートに対してユーザーが好ましいと感じる光沢度として、発明者の行った主観評価実験から明らかになった光沢を実現して、画像出力を行うことがきる。
図8には、この発明による画像形成装置の他例の内部概略構成を示す。
この図8に示す画像形成装置では、図1に示す画像形成装置のレジストローラ18に対抗して、その変位量を測定する変位センサ45を備えたものである。
そして、記録シートをレジストローラ18で保持する間に、図1に示す例と同様に光透過装置17で記録シートの透過光の検知を行いながら、同時にレジストローラ18の変位量を変位センサ45で検知するような構成になっている。レジストローラ18は、記録シートを保持していない場合と保持している場合とで、シート厚さに応じてローラ位置が移動するような構成になっている。このため、レジストローラ18の変位量を検知することで、レジストローラ18に保持している記録シートの厚みを算出することができるようにする。
このようにして得られたシート厚みも活用して、次のようにして記録シートの種類の識別を行っている。上述のようにして検出されたシート厚みをdとし、単位長さ(厚み)あたりの透過率をσ1とするとき、記録シートの透過率R1は、次式の関係を満たすと考える。
R1 ∝ (σ1)(−d)
記録シートの透過率は、光透過装置17を用いて検出することができる。そして、光透過装置17で検知した記録シートの透過率R1と、記録シートの厚みdから、次式において算出される値であるXを用いて、記録シートの種類の識別を行う。
X = −(log(R1))/d
上式から判るように、この値Xは、次の関係を満たす。
X ∝ log(σ1)
この式から判るように、値Xは、単位長さあたりの透過率σ1から一義的に求まる値であるため、記録シートの厚みをキャンセルした形で記録シートの特性を検知することができるようになる。
この後は、この値Xをあらかじめ設定してある規定値Tと比較することで、記録シートがマットコート紙であるか普通紙であるかを識別することができる。記録シートの種類の識別を行った後の制御方法は、上述した例と同様である。
この図8に示す例では、このようにして、記録シートの厚みが異なるような場合でも、記録シートがマットコート紙と普通紙であるかの違いを識別することができるようになり、それぞれの記録シートに対してユーザーが好ましいと感じる光沢度として、発明者の行った主観評価実験から明らかになった光沢を実現して、画像出力を行うことがきる。
ところで、光透過装置17においては、記録シートを照射する光の強さを、例えば3段階に変更できるようにすることができる。すなわち、電気的な制御部に発光量制御装置を備え、シート厚みが大きく透過光が少なくなってしまうような場合に、受光部43で検知する光量から、光量不足であることを検知して、発光部40での発光量を段階的に強くする。このような構成とすることで、記録シートを透過する光の量が小さくなり、光透過のばらつきが反映されないほどの低光量となってしまい、十分な感度が得られないような場合であっても、発光部40での発光量を強くすることで、十分な感度が得られて光透過のばらつきを反映可能とすることができる。
このようにすることで、記録シートの厚みに起因して透過光の光量が小さくなりすぎ、十分な感度が取れなくなる問題を排除することができ、記録シートがマットコート紙と普通紙であるかを精度良く識別することができるようになる。この結果、それぞれの記録シートに対してユーザーが好ましいと感じる光沢度として、発明者の行った主観評価実験から明らかになった光沢を実現して、画像出力を行うことがきる。
また、上述した例では、定着条件の変更を、定着装置16の定着温度の変更により行った。しかし、定着温度の変更に代えて、記録シートの搬送速度を変更して定着条件を変更するようにしてもよい。
例えば、普通紙のシート搬送速度は150mm/sec、定着ベルト30の温度は150deg、加圧ローラ32の温度は130degとしているとき、マットコート紙の場合には、シート搬送速度は80mm/sec、定着ベルト30の温度は150deg、加圧ローラ32の温度は130degとなるように設定する。このようにすることで、マットコート紙上に画像を形成すると、画像部の光沢として35%の光沢度(60°光沢)を得ることができ、普通紙上に画像を形成すると、画像部の光沢として15%の光沢度(60°光沢度)を得ることができる。
図9には、この発明による画像形成装置のさらに他例の構成を示す。
この発明では、定着装置16に、定着条件が異なる複数の定着手段が備えられるようにしてもよい。そして、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかの識別結果に基づき、制御装置44が、複数の定着手段のうちの1つを選択的に使用することにより、記録シート上の画像部の光沢を切り換えるようにする。
例えば図示例のように、定着装置16に、定着条件が異なる2つの定着手段47、48が備えられ、各定着手段47、48が、それぞれ例えば図3に示すように、スポンジローラ31、熱源を内蔵する加熱ローラ33、テンションローラ34に掛けまわされる定着ベルト30と、熱源を内蔵する加圧ローラ32とで構成されているものとする。そして、記録シートが普通紙であるかマットコート紙であるかの識別結果に基づき、制御装置44が、2つの定着手段47、48のうちの1つを選択的に使用することにより、記録シート上の画像部の光沢を切り換えることができるようにする。
一方の第1の定着手段47は、シート搬送速度が150mm/sec、定着ベルト30の温度が185deg、加圧ローラ32の温度が170degとなるように設定されており、記録シートがマットコート紙であると判定された場合には、この第1の定着手段47を通過するようになっている。これに対し、他方の第2の定着手段48は、シート搬送速度が150mm/sec、定着ベルト30の温度が150deg、加圧ローラ32の温度が130degとなるように設定されており、記録シートが普通紙であると判定された場合には、搬送経路を切り換えて、この第2の定着手段48を通過するようになっている。
これにより、マットコート紙上に画像を形成すると、画像部の光沢として35%の光沢度(60°光沢)を得ることができ、また普通紙上に画像を形成すると、画像部の光沢として15%の光沢度(60°光沢度)を得ることができる。
この例では、定着装置16における定着条件の変更を、記録シートを通紙させる複数の定着手段の1つを選択的に使用することにより行っている。制御装置44によって、記録シートがマットコート紙であるか普通紙であるかを識別し、それぞれの記録シートに対してユーザーが好ましいと感じる光沢度として、発明者の行った主観評価実験から明らかになった光沢を実現して、画像出力を行うものである。