以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
先ず、本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体的な構成及び動作について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置100の全体的な構成を示す模式的な縦断面図である。図2は、本実施例の画像形成装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタなどの機能を有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral(多機能周辺装置))である。本実施例の画像形成装置100は、フルカラー画像、モノクロ画像の形成が可能であると共に、透明トナーを用いて記録材S上の指定した領域の光沢度を調整することが可能である。
画像形成装置100は、制御手段としてのコントローラ部119、画像読み取り手段としてのスキャナ部116、プリンタ部115、表示手段としてのディスプレイ111、入力手段としての操作パネル112、インターフェース部などを有する。
1−1.コントローラ部
先ず、コントローラ部119について説明する。コントローラ部119において、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103は、バス105に接続されている。同様に、HDD(Hard Disk Drive)104、画像処理専用回路106、ネットワークコントローラ107、プリンタコントローラ108、スキャナコントローラ109、I/Oコントローラ110は、バス105に接続されている。バス105に接続されている各種ユニットは、バス105を介して相互に通信することができる。
このような構成において、CPU101は、バス105を介して、HDD104、ネットワークコントローラ107、プリンタコントローラ108、スキャナコントローラ109、I/Oコントローラ110に対して制御命令などを送信する。又、CPU101は、バス105を介して、HDD104、ネットワークコントローラ107、プリンタコントローラ108、スキャナコントローラ109、I/Oコントローラ110からの状態を示す信号又は画像データなどのデータを受信する。このようにして、CPU101は、画像形成装置100を構成する各種ユニットを制御することができる。各ユニットの動作について以下詳述する。
CPU101及び画像処理専用回路106は、例えばROM103に保存されているプログラムをCPU101及び画像処理専用回路106の内部にあるレジストリと呼ばれる1次メモリーに展開して実行する。RAM102は、CPU101及び画像処理専用回路106がプログラムを実行する際に必要となる2次メモリーとして共用される。ROM103と比較して記録容量の多いHDD104は、主に画像形成装置100の内部で保持される画像データの保存に利用される。
ネットワークコントローラ107は、外部の機器と通信するための処理回路である。ネットワークコントローラ107は、CPU101から送信される信号を変調して、各種規格に準じた信号に変換する。本実施例では、ネットワークコントローラ107は、IEEE803.2規格に準じた多値の信号に変換し、Ethernet(登録商標)I/F114を介してネットワークに送信する。又、ネットワークコントローラ107は、EthernetI/F114を介してネットワークから受信した多値の信号を復調し、CPU101に送信する。これにより、画像形成装置100は、ネットワークを介して後述するコントローラ(MFP Controller)200又はPC300と通信することもできる。同様に、ネットワークコントローラ107は、CPU101から送信される信号をARCNET(Attached Resource Computer Network)規格に準じた信号に変換し、装置間通信I/F113を介して補助装置118に送信する。又、ネットワークコントローラ107は、補助装置118から受信した信号を復調し、CPU101に送信する。
尚、補助装置118としては、例えば、後処理装置としてのフィニッシャー、補助給紙装置としてのペーパーデッキなどが挙げられる。
CPU101がプリンタコントローラ108を介してプリンタ部115へ送信する画像データは、イメージデータである。そのため、PC300から画像形成装置100に対してPDL(Page Discription Language)が入力されたとき、CPU101及び画像処理専用回路106は、RIP(Raster Image Prossessing)を分担して実行する。
尚、PDLとは、画像形成装置100に出力すべき画像イメージを指示するためのプログラミング言語ある。PDLの利点は、プリンタの解像度に依存しないベクターデータとして図形を保持できること及び単純な線画の場合にデータ量をイメージデータと比べて少なくすることができることである。逆に、PDLを用いることでPDLをプリンタ部で出力する際に必要となるマップイメージデータに再変換する必要があり、この処理がオーバーヘッドとなる。このようなPDLをイメージデータに変換する処理を、RIP(Raster Image Processing)と呼ぶ。
このようにRIPによってPDLから変換されたイメージデータは、プリンタコントローラ108を介してプリンタ部115へ送信される。プリンタ部115は、受信したイメージデータに基づき印刷物を出力する。
尚、プリンタコントローラ108は、外部から入力されたイメージデータに基づき、プリンタ部115に対して、該イメージデータに応じたトナー像を記録材Sに定着させるように制御することができる。プリンタコントローラ108は、ネットワークコントローラ107を介して、外部から送信されるイメージデータに基づき、プリンタ部115を制御することができる。
スキャナコントローラ109は、スキャナ部116の原稿台の下部のイメージセンサによる原稿イメージの取り込み動作及びスキャナ部116のADF(Auto Document Feeder)の動作を制御する。操作者は、原稿のイメージデータを画像形成装置100に取り込ませるときに、原稿台に1枚ずつ原稿をセットする。スキャナコントローラ109は、原稿の読み取りの指示を受け、原稿台の下部にあるイメージセンサを走査させ、原稿台にセットされた原稿のイメージデータを取得する。又、操作者は、複数枚の原稿をADFにセットし、原稿の読み取りを指示することができる。これにより、ADFは、セットされた複数枚の原稿から1枚をイメージセンサ部へ送り出す。次に、ADFは、イメージセンサ部へ送り出した原稿を除く複数枚の原稿から1枚をイメージセンサ部へ送り出し、ADFにセットされた原稿がなくなるまでこの動作を繰り返す。こうして、ADFにセットされた原稿を自動的に連続して読み取ることができる。これにより、大量の原稿をスキャンする場合に、操作者が原稿を1枚ずつ原稿台に載せ換える手間を省くことができる。
画像形成装置100内のHDD104に画像を保存するボックスモードが選択された場合、スキャナコントローラ109は、スキャナ部116で取得されたイメージデータをHDD104に保存する。スキャナ部116で取得されたイメージデータをプリンタ部115で出力するコピーモードが選択された場合、スキャナコントローラ109は、スキャナ部116で取得されたイメージデータをプリンタコントローラ108に送信する。これにより、プリンタコントローラ108は、受信したイメージデータをプリンタ部115に出力させる。
I/Oコントローラ110は、USB I/F117を介して、PC300又はコントローラ200と通信を行う。又、I/Oコントローラ110は、ディスプレイ111と操作パネル112に接続されている。CPU101は、操作者が操作パネル112によって入力した情報をI/Oコントローラ110を介して取得することができる。又、I/Oコントローラ110は、操作者に選択可能な情報や画像形成装置100の状態を示す情報をディスプレイ111に表示させる。ディスプレイ111には、各種設定を入力するための画面などが表示され、本実施例との関連では、後述する透明トナーを用いて部分的に周囲よりも相対的に光沢度を高くしたい領域を入力するための画面などが表示される。又、詳しくは実施例4で説明するように、ディスプレイ111には、画像形成装置100で用いる記録材Sの光沢に関する情報を入力する画面などを表示することもできる。
1−2.スキャナ部
次に、スキャナ部116について説明する。スキャナ部116は、プリンタ部115の図中上方に配置されている。前述の通り、スキャナ部116は、原稿画像を読み取るための光電変換素子としてイメージセンサと、原稿台と、ADF(Auto Document Feeder)と、を有する。スキャナ部116は、イメージセンサを用いて原稿台又はADFにセットされた原稿の画像データを取得する。スキャナ部116で取得された画像データは、スキャナコントローラ109に送信される。スキャナコントローラ109は、バス105を介して接続された各部へスキャナ部116で取得された画像データを送信することができる。
1−3.プリンタ部
次に、プリンタ部115について説明する。本実施例の画像形成装置100のプリンタ部115は、電子写真方式を用いて画像を形成する。そのため、プリンタ部115は、搬送部、画像形成手段、定着部などを有する。
搬送部は、カセット13a及び13b、手差しトレイ14、ピックアップローラ11、搬送ローラ対12、レジストローラ対8などを有する。記録材(シート,記録媒体)Sは、カセット13a及び13bにセットされる。カセット13a及び13bにセットされた記録材Sの光沢、坪量、種類などは、それぞれ操作パネル112を用いて手動登録することができる。
カセット13a又は13bにセットされた記録材Sは、ピックアップローラ11によって1枚ずつ送り出される。ピックアップローラ11によって送り出された記録材Sは、搬送ローラ対12によって搬送される。搬送ローラ対12によって搬送された記録材Sは、停止しているレジストローラ対8に突き当たる。このように突き当たった記録材Sは、中間転写ベルト7上のトナー像と同期するように回転するレジストローラ対8によって二次転写部N2に搬送される。
画像形成手段は、複数の画像形成部としての第1、第2、第3、第4、第5の画像形成部(ステーション)PT、PY、PM、PC、PKと、中間転写ベルトユニット70とを有する。
透明トナー像は、透明画像形成部である第1の画像形成部PTによって形成される。イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像は、それぞれ有色画像形成部である第2、第3、第4、第5の画像形成部PY、PM、PC、PKによって形成される。各画像形成部PT、PY、PM、PC、PKは、略水平に並設されている。各画像形成部PT、PY、PM、PC、PKによって形成されたトナー像は、中間転写ユニット70が有する中間転写ベルト7にそれぞれ一次転写される。中間転写ベルト7上に一次転写されたトナー像は記録材Sに二次転写される。
尚、本実施例では、第1〜第5の画像形成部PT、PY、PM、PC、PKの構成及びその基本的な動作自体は、使用するトナーの種類が異なることを除いて実質的に同一である。従って、特に区別を要しない場合は、いずれかの画像形成部のための要素であることを示すために符号に与えた添え字T、Y、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
画像形成部Pは、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、回転自在に画像形成装置100の装置本体に軸支されている。感光ドラム1は、駆動手段としての駆動モータからの駆動力を受けて、図示矢印R1方向(反時計回り)に回転する。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2である。次に、露光手段としてのレーザスキャナ3である。次に、現像手段としての現像器4である。次に、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ6である。次に、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーナ5である。
又、中間転写ベルトユニット70は、第1〜第5の画像形成部PT、PY、PM、PC、PKの各感光ドラム1T、1Y、1M、1C、1Kに対向するように配置された、無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト7を有する。中間転写ベルト7は、複数の支持部材としての従動ローラ71、二次転写対向ローラ72、及び駆動ローラ73によって張架されている。従動ローラ71はテンションローラを兼ねており、中間転写ベルト7に張力を付与しながら中間転写ベルト7の移動に従って回転する。各一次転写ローラ6は、各感光ドラム1に対向する位置において、中間転写ベルト7の内周面側に配置されている。各一次転写ローラ6は、中間転写ベルト7を各感光ドラム1に向けて押圧して、中間転写ベルト7と各感光ドラム1とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。又、中間転写ベルト7の外周面側には、二次転写対向ローラ72に対向する位置において、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は、中間転写ベルト7を介して二次転写対向ローラ72に押圧され、中間転写ベルト7と二次転写ローラ9とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。駆動ローラ73は、駆動手段としての駆動モータから駆動力を受けて回転する。中間転写ベルト7は、駆動ローラ73からの駆動力を受けて図示矢印R2方向(時計回り)に周回移動(回転)する。
詳しくは後述する1PASS方式で第1〜第5の画像形成部PT、PY、PM、PC、PKの全てを用いて画像を形成する場合を例に画像形成動作を説明する。各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2により一様な電位に帯電させられる。続いて、各画像形成部Pにおいて、各種類のトナーでトナー像を形成するための画像信号がプリンタコントローラ108からレーザスキャナ3に入力される。そして、各画像形成部Pにおいて、レーザスキャナ3は入力された画像信号に応じて、感光ドラム1の表面にレーザ光を照射する。これにより、各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1の表面の電荷が中和され、感光ドラム1の表面に静電潜像(静電像)が形成される。続いて、各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像は、現像器4によってトナーで現像される。そして、各画像形成部Pにおいて、感光ドラム1上に現像されたトナー像は、一次転写部N1に搬送され、一次転写ローラ6の作用により、画像搬送体としての中間転写ベルト7に一次転写される。このとき、一次転写ローラ6には、一次転写電圧印加手段としての一次転写電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。各一次転写部N1で中間転写ベルト7に転写されなかった感光ドラム1上のトナー(一次転写残トナー)は、ドラムクリーナ5により回収される。
先ず、上述のようにして第1の画像形成部PTにおいて感光ドラム1上に形成された透明トナー像が、中間転写ベルト7上に一次転写される。その後、第2、第3、第4の画像形成部PY、PM、PC、PKにおいて感光ドラム1上に形成されたトナー像も同様に、中間転写ベルト7上に順次に重ね合わせるように一次転写される。
尚、前述のように、第1の画像形成部PTの構成は、現像器4に収納されるトナーを除き、第2〜第5の画像形成部PY、PM、PC、PKと同一である。そのため、第1の画像形成部PTのレーザスキャナ3Tに入力される画像信号に応じて透明トナー像を形成することができ、従って第1の画像形成部PTを用いて記録材Sの全面又は部分的に透明画像を形成することができる。
中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、二次転写部N2へ搬送される。中間転写ベルト7によって二次転写部N2に搬送されたトナー像は、前述の搬送部によって二次転写部N2に搬送された記録材S上に、二次転写ローラ9及び二次転写対向ローラ72の作用により二次転写される。このとき、二次転写ローラ9には、二次転写電圧印加手段としての二次転写電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。尚、二次転写対向ローラ72にトナーの正規の帯電極性と同極性の二次転写電圧を印加するようにしてもよい。二次転写部N2で記録材Sに転写されなかった中間転写ベルト7上のトナー(二次転写残トナー)は、ベルトクリーナ74によって回収される。ベルトクリーナ74は、中間転写ベルト7の表面移動方向において二次転写部N2の下流側(第1の画像形成部PTの一次転写部N1Tよりも上流側)に設置されている。
トナー像が転写された記録材Sは、後述する定着部に搬送される。
尚、透明トナー像は、第1の画像形成部PTによって最初に中間転写ベルト7に転写される。従って、透明トナーを用いて画像形成を行う際には、透明トナーが記録材S上において最上層となる。
又、透明トナーを用いず、有色トナーのみを用いて画像を形成する場合は、概略、次のような動作になる。即ち、第2〜第5の画像形成部PY、PM、PC、PKのうち少なくとも1つにおいて感光ドラム1上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト7上に一次転写された後、記録材S上に二次転写される。第2〜第5の画像形成部PY、PM、PC、PKの全てを用いたフルカラー画像の形成の他、例えば第5の画像形成部PKのみを用いたモノクロ画像の形成も可能である。
又、有色トナーを用いず、透明トナーのみを用いて画像を形成する場合も同様に、第1の画像形成部PTにおいて感光ドラム1上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト7上に一次転写された後、記録材S上に二次転写される。
定着部は、定着手段としての加熱・加圧式の定着器10を有する。定着器10は、定着ローラ10aと加圧ローラ10bとを有する。定着ローラ10aと加圧ローラ10bとは、互いに圧接しており、その間に定着部(定着ニップ)N3が形成される。本実施例では、定着ローラ10a及び加圧ローラ10bの外径は共に80mmである。又、定着ローラ10a及び加圧ローラ10bの回転軸方向の長さは共に350mmである。定着ローラ10aは、定着器10の外壁に回動可能に軸支されている。加圧ローラ10bは、定着ローラ10aに対して移動可能な軸受けを介して回動可能に定着器10に支持されている。そして、加圧ローラ10bは、その軸受けが付勢手段としてのばねによって定着ローラ10aに向けて付勢されることによって、定着ローラ10aに対して500Nで圧接されている。
定着ローラ10aは、アルミニウム製の中空芯金上に、弾性層としてのゴム層、トナー離型層としてのフッ素樹脂層が積層された、積層体構造を有する。又、中空芯金の内部には、加熱源としてのハロゲンヒータが設置されている。中空芯金は、鉄などの他の材料であってもよい。又、加熱源としては、例えば電磁誘導加熱を利用したIH方式を用いてもよい。定着ローラ10aは駆動ギア列を介して駆動手段としての駆動モータに接続されており、駆動モータから伝達される回転動力によって回転する。
加圧ローラ10bは、定着ローラ10aと同様の構成を有する。即ち、加圧ローラ10bは、中空芯金上に、ゴム層、フッ素樹脂層を積層した積層体構造を有する。又、中空芯金の内部には、ハロゲンヒータが設置されている。又、加圧ローラ10bは、定着ローラ10aに従動して回転する。
定着ローラ10aの表面の近傍には、定着ローラ10aの温度を検出する検出手段としてのサーミスタが設けられている。又、加圧ローラ10bの表面の近傍には、加圧ローラ10bの温度を検出する検出手段としてのサーミスタが設けられている。それぞれのサーミスタから出力された温度検出信号は、プリンタコントローラ108に送られる。これにより、プリンタコントローラ108は、定着ローラ10a及び加圧ローラ10bの温度を制御することができる。
本実施例では、プリンタコントローラ108は、定着ローラ10aの表面温度(制御目標温度)が155℃になるように、定着ローラ10aに内蔵されたハロゲンヒータを制御する。又、本実施例では、プリンタコントローラ108は、加圧ローラ10bの表面温度(制御目標温度)が100℃になるように、加圧ローラ10bに内蔵されたハロゲンヒータを制御する。
詳しくは後述するように1PASS方式で画像を形成する場合、二次転写部N2でトナー像が転写された記録材Sは定着部N3を通過する。これにより、記録材S上に転写されたトナー像は記録材Sに定着される。トナー像が定着された記録材Sは、搬送路を通って画像形成装置100の外部に排出される。
又、詳しくは後述するように2PASS方式で画像を形成する場合、記録材Sは、1回目の定着工程を経た後、反転パス15cに導入されることなく、搬送路15a、15bを通って、二次転写部N2に再び搬送される。そして、記録材Sは、二次転写部N2で透明トナー像が転写された後、再び定着部N3を通過する。これにより、記録材S上に転写された透明トナー像は記録材Sに定着される。トナー像が定着された記録材Sは、搬送路を通って画像形成装置100の外部に排出される。
尚、通常の両面画像形成時は、記録材Sは、1回目の定着工程を経た後、反転パス15cに導入され、その後搬送路15a、15bを通って、1回目に画像を形成した面とは反対側の面に画像が形成されるように二次転写部N2に搬送される。
又、本実施例では、記録材Sは、定着器10の定着部N3を通過し終えた直後、約90〜110℃といった高い温度を保持した状態で定着器10から排出される。但し、記録材Sが定着器10から排出される際の温度は、定着条件、記録材Sの坪量などに影響される。
又、本実施例では、定着器10は、定着ローラ10aと加圧ローラ10bとのローラ対を有するが、定着側と加圧側の一方又は両方がエンドレスベルトによって構成されてもよい。又、定着方法は、本実施例のような加熱・加圧式の定着器を用いるものに限定されるものではなく、少なくとも未定着のトナー像を加熱する手段を用いて行うことができる。
2.トナー
次に、トナーについて説明する。ここで、本実施例では、有色トナーとは、透明トナーを除くイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーの総称であるものとする。
本実施例では、透明トナー及び有色トナーには、ポリエステル系の樹脂が使用されている。トナーを製造する方法としては、粉砕法や、懸濁重合法・界面重合法・分散重合法などの媒体中で直接トナーを製造する方法(重合法)が挙げられる。本実施例では、懸濁重合法を用いて製造されたものを用いた。尚、トナーの成分、製造方法はこれに限定されるものではない。
更に説明すると、有色トナーは、主にポリエステル樹脂と顔料とで構成される。又、透明トナーは、顔料を含まず、主にポリエステル樹脂で構成される。透明トナーとしては、光透過性が高く、着色剤が実質的に入らない樹脂から成る、実質的に無色であり、少なくとも可視光を実質的に散乱することなく良く透過する粒子を好適に用いることができる。但し、透明トナーは、定着後に上述のように実質的に無色透明となるものであれば好適に用いることができ、定着前には無色透明でなくてもよく、例えば集合したときに白色に見えるようなものであっても構わない。
本実施例では、透明トナー及び有色トナーのガラス転移点(Tg)は共に約55℃である。即ち、本実施例では、透明トナーは、そのガラス転移点(Tg)が有色トナーと略同一になるように製造した。そのため、同じ定着条件且つ単位面積当たりのトナー量が略同一の場合、記録材S上に定着された有色トナーと透明トナーの光沢度は略同一となる。
勿論、トナーのガラス転移点(Tg)は本実施例のものに限定されるものではない。透明トナーに用いる樹脂の種類や分子量を変更するとその溶融特性が変わる。そのため、同じ定着条件で記録材Sにトナー像を定着すると、トナーの性質によって異なる光沢度が得られる。従って、有色トナーよりもガラス転移点(Tg)が低く、溶けやすい樹脂を用いて透明トナーを製造することによって、有色トナーと比べて定着後の光沢が高い透明トナーを得ることができる。又、有色トナーよりもガラス転移点(Tg)が高く、溶け難い樹脂を用いて透明トナーを製造することによって、有色トナーと比べて定着後の光沢が低い透明トナーを得ることができる。このようにガラス転移点(Tg)が有色トナーと異なる透明トナーを用いても良い。
3.光沢度の調整
次に、記録材S上の指定した領域の光沢度(グロス)を調整する方法について説明する。本実施例の画像形成装置100は、記録材S上の画像形成可能領域内における指定した領域とその他の領域との間に光沢差を付けることのできる画像形成モード(透明印刷モード、光沢調整動作)を実行可能である。透明印刷モードでは、記録材S上において有色画像の上に透明画像を重ねることで、有色トナー及び透明トナーの載った領域と、有色トナーのみが載った領域とで、定着後の光沢度を異ならせることができる。例えば、記録材S上の画像形成可能領域内における指定した領域としての模様や文字の光沢度を、その他の部分よりも高くして、透かしのような効果を得ることができる。
この透明印刷モードでは、1PASS方式で画像を形成する第1のモードと、2PASS方式で画像を形成する第2のモードとを選択的に実行可能である。前述のように、1PASS方式とは、記録材S上に有色トナー像及び透明トナー像を形成し、その後1回の定着工程を経て出力物を得る画像形成方法である。又、2PASS方式とは、先ず記録材S上に有色トナー像を形成し、その後1回目の定着工程を経て、更にその記録材S上に透明トナー像を形成し、その後2回目の定着工程を経て出力物を得る画像形成方法である。本実施例では、透明印刷モードで形成される有色画像の濃度(トナー量)に応じて、1PASS方式を用いるか2PASS方式を用いるかを切り替える。これにより、透明印刷モードで形成される有色画像の濃度(トナー量)によらずに、記録材S上の画像形成可能領域内における指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけることが容易となる。
尚、例えば、記録材S上の画像形成可能領域内における指定した領域として上述のような模様や文字の光沢度を、その他の部分よりも低くすることも可能である。しかし、このことは、本実施例の画像形成装置100の動作としては、記録材S上の当該指定した領域以外の領域の光沢度を高くすることと同じと考えることができる。従って、本発明の理解を容易とするために、以下の説明では、別に特段の記載のない場合、光沢度差をつけるとは、記録材S上の画像形成可能領域内における指定した領域の光沢度をその他の領域の光沢度よりも高くすることをいうものとする。勿論、次のような場合に、操作者が当該指定した領域の光沢度をその他の領域よりも下げることを選択できるようにすることは可能である。例えば、詳しくは後述する透明印刷モードの設定操作において、特定の模様や文字といった、まとまりある領域を記録材S上の指定した領域とすることが操作者にとって便宜である場合などである。この場合、画像形成装置100は、この光沢度を下げることを指定された領域以外の領域を、以下の説明における光沢度を高くすることを指定された領域として、同じ動作を行えばよい。
3−1.単位面積当たりの有色トナー量と光沢度との関係
先ず、単位面積当たりの有色トナー量と光沢度との関係について説明する。
以下の説明において、光沢の程度を表す光沢度は、日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢計PG−1Mを用いて計測した。測定モードはJIS Z 8741 鏡面光沢度−測定方法に準拠した60度光沢測定モードである。
又、本実施例において定着工程後の記録材Sの表面の光沢度に影響を与えると考えられる各種条件を列記すると次の通りである。
記録材Sとしては、マットコート紙(日本製紙製「ユーライト(商標)」坪量157g/m2)を使用した。
又、プリンタコントローラ108は、各種類のトナー毎に、画像濃度100%の信号が入力されたときに記録材S上の単位面積当たりに載せるべきトナー量(トナー載り量)が約0.55mg/cm2となるように、プリンタ部115を制御する。画像濃度100%とは、濃度レベル信号(本実施例では256階調)の最高レベルに対応する画像濃度である。以下、記録材S上の単位面積当たりのトナー量(以下、単に「トナー量」ともいう。)は、適宜、各種類のトナー毎の単位面積当たり最大量(目標値)である0.55mg/cm2を100%として、これに対する比率に換算した値で表記する。尚、本実施例では、有色画像の合計のトナー量(有色トナー量)は、最大で250%になるように制御される。又、本実施例では、透明印刷モードでは、透明画像のトナー量(透明トナー量)は、70%(0.39mg/cm2)の一定量とされている。
又、プリンタコントローラ108は、定着ローラ10aの表面温度が約155℃になるように制御する。又、プリンタコントローラ108は、記録材Sが定着器10を通過する際のプロセススピード(定着ローラ10aの周速度に対応)が285mm/secになるように、プリンタ部115を制御する。このプロセス速度(285mm/sec)、定着ローラ10aの制御目標温度(155℃)は、2PASS方式を用いる場合には、1回目の定着工程も2回目の定着工程も同じである。又、定着ニップN3における定着ローラ10aと加圧ローラ10bとの当接圧(ニップ圧)は、1PASS方式、2PASS方式のいずれにおいても実質的に同一である。
又、前述の通り、有色トナー及び透明トナーは共に、ポリエステル樹脂を用いたガラス転移点(Tg)が約55℃のトナーである。
(1PASS方式の場合)
図3は、1PASS方式を用いる場合における、記録材Sの表面に定着される有色トナー量とトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係を示すグラフである。縦軸は光沢度を示す。横軸は記録材Sに定着される有色トナー量を示す。
図3中の破線は、有色トナー像のみを1回の定着工程で記録材Sに定着したときの光沢度を示す曲線である。又、図3中の一点鎖線は、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を記録材Sに形成し、これを1回の定着工程で記録材Sに定着したときの光沢度を示す曲線である。
ここで、図3において、有色トナー量が100%以上、特に、150%以上の領域では、有色トナー像のみを形成した場合と、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を形成した場合とで、光沢度があまり変化しないことが分かる。即ち、有色トナー量が100%以上、特に、150%以上の領域では、1PASS方式では記録材S上の画像形成可能領域内において指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけにくいことが分かる。
(2PASS方式の場合)
図4は、2PASS方式を用いる場合における、記録材Sの表面に定着される有色トナー量とトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係を示すグラフである。縦軸は光沢度を示す。横軸は記録材Sに定着される有色トナー量を示す。
図4中の破線は、有色トナー像を記録材Sに形成し、1回目の定着工程を経た後、更に2回目の定着工程を経て出力したときの光沢度を示す曲線である。又、図4中の一点鎖線は、有色トナー像を記録材Sに形成し、1回目の定着工程を経た後、定着された有色トナーを覆うようにトナー量70%の透明トナー像を形成し、2回目の定着工程を経て出力したときの光沢度を示す曲線である。
例えば、有色トナー量が150%の場合における破線と一点鎖線で示される光沢度に注目する。有色画像のうち、その上に透明画像が形成されない部分は、2回の定着工程を経るため、光沢度が51%となる。又、有色画像を覆うように、透明画像がトナー量70%で形成される部分は、その透明画像は1回の定着工程しか経ないため、光沢度が29%となる。
尚、図4中の破線で示す曲線は、有色トナー量が0%のとき、有色トナー像も透明トナー像も形成されていない2回の定着工程を経た後の記録材S自体の光沢度(6%)となる。しかし、図4中の一点鎖線で示す曲線は、トナー量70%の一定量で透明トナー像を形成した場合の光沢度を示している。従って、有色トナー量が0%のとき、有色トナー像を形成しないで1回目の定着工程を経た後に記録材Sにトナー量70%の透明トナー像を形成して2回目の定着工程を経たときの光沢度になる。詳しくは実施例2以降で説明するように、本実施例のマットコート紙は、所謂、低光沢紙であり、トナー量70%の透明トナー像のみを形成して定着すると、その部分の光沢度は記録材S自体の光沢度よりも高くなる。
有色画像を覆うように透明画像が形成されていない部分(図4中の破線)に関しては、有色トナー像の表面が定着器10で熱を2回与えられている。しかしながら、有色画像を覆うように透明画像が形成された部分(図4中の一点鎖線)に関しては、表層である透明トナー像に1回しか熱量が与えられていない。そのため、透明画像で覆われた部分の光沢度は高くなりにくい傾向がある。
ここで、図4において、有色トナー量が50%〜80%の領域では、有色トナー像のみを形成した場合と、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を形成した場合とで、光沢度があまり変化しないことが分かる。即ち、有色トナー量が50%〜80%の領域では、2PASS方式では記録材S上の画像形成可能領域内における指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけにくいことが分かる。
以上のように、1PASS方式においても、2PASS方式においても、光沢差をつけることが困難である有色トナー量の領域が存在する。本実施例の条件下では、有色トナー量が100%未満であれば、1PASS方式の方が光沢差をつけやすく、有色トナー量が100%以上であれば、2PASS方式の方が光沢差をつけやすいことが分かる。
即ち、例えば、有色トナー量が70%程度の画像を形成する場合は、2PASS方式では光沢差を表現することが困難で、1PASS方式の方がより顕著に光沢差を表現できる。逆に、有色トナー量が150%程度の画像を形成する場合は、1PASS方式では光沢差を表現することが困難で、2PASS方式の方がより顕著に光沢差を表現できることが分かる。
そこで、本実施例では、有色画像のトナー量(画像濃度)に応じて、有色画像と透明画像を一括して定着させる(1PASS)か、有色画像を一旦定着させてからその上から透明画像を形成して定着させる(2PASS)か、を切り替える。これによって、ユーザの指定した領域に十分な光沢差をつけることが可能になる。
尚、例えば図4に示す例では、2PASS方式でも、有色トナー量が50%未満の領域では、有色トナー像のみを形成した場合と、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を形成した場合とで、光沢度が変化するようになる。詳しくは実施例2以降で説明するように、有色トナー量と光沢度との関係は、記録材Sの種類に応じて変化するが、記録材Sの種類によっては、図4に示す例と同様に、有色トナー量が少ない領域において、再び光沢差が顕著となるような変化を示すことがある。しかし、定着工程を複数回行うために記録材Sを搬送する必要がない分、1PASS方式の方が、2PASS方式よりも、単位時間当たりに多くの画像を出力することが可能である(即ち、印刷速度が速い。)。そのため、同程度の光沢差を実現可能であれば、1PASS方式の方が有利である。従って、有色トナー量の特定の1つの閾値(図3及び図4に示す例では、例えば有色トナー量100%)を境に、1PASS方式と2PASS方式とを切り替えることが有利である。又、このことは、制御の簡易化の点でも有利である。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、所望により、有色トナー量の閾値を複数設けて、1PASS方式と2PASS方式とを交互に切り替えるようにしてもよい。例えば、図3及び図4に示す例では、有色トナー量0%以上50%未満の領域では2PASS方式、有色トナー量50%以上100%未満の領域では1PASS方式、有色トナー量100%以上の領域では2PASS方式を用いるようにしてもよい。
3−2.透明印刷モードの設定操作
次に、透明印刷モードの設定操作について説明する。透明印刷モードの設定操作では、記録材S上の画像形成可能領域内における特定の領域の指定、及びその指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけることの指示を行う。以下、記録材S上の画像形成可能領域内における特定の領域を指定する情報及びその指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけることを指示する情報を単に「透明印刷設定情報」という。又、透明印刷設定情報により、記録材S上の画像形成可能領域内におけるその他の領域との間に光沢差をつけるものとして指定される領域を「光沢調整領域」という。
尚、前述のように、本実施例では、記録材S上の画像形成可能領域内における操作者が指定した光沢調整領域の光沢度がその他の領域よりも光沢度が高くなるように、光沢調整領域又はその他の領域に透明トナーを付与する。しかし、前述のように、操作者が指定した領域の光沢度を低下させるようにすることも可能である。
図5は、ディスプレイ111に表示される画面の一例を示す。図5に示す画面がディスプレイ111に表示されている状態(コピーモード)において、操作者によって操作パネル112に設けられたスタートボタン(図示せず)が押下されると、画像形成装置100は原稿台にセットされた原稿を複製する。
尚、操作者によって図5に示す画面の「ボックス」と表示された表示要素B102が選択されることによって、画像形成装置100はボックスモードに切り替わる。ボックスモードにおいて、操作者は、画像形成装置100内部のHDD104に保存されているデータをプリンタ部115で出力することができる。操作者によって図5に示す画面の「コピーモード」と表示された表示要素B101が選択されることによって、画像形成装置100はボックスモードからコピーモードに切り替わる。
図5に示す画面において、操作者は、「応用印刷設定」と表示された表示要素B103を選択することができる。そして、操作者が、当該表示要素B103を選択することで表示される「透明印刷設定」と表示された表示要素(図示せず)を選択すると、画像形成装置100はディスプレイ111に図6に示す画面を表示する。
図6は、画像形成装置100が、操作者に対して透明印刷設定情報の入力を促す画面の一例を示す。画像形成装置100は、ディスプレイ111に図6に示すような画面を表示させる。これにより、画像形成装置100は、操作者によって設定される透明印刷設定情報を取得することができる。
図6に示す画面の表示要素B201は、操作者によって指定された光沢調整領域を示すプレビュー領域である。ここで、光沢調整領域は「★」で示されている。「★」を囲む実線の矩形の領域が記録材S上の画像形成可能領域である。本実施例では、具体的には、この「★」で示されるマークの光沢度を、記録材S上の画像形成可能領域内のその他の領域の光沢度よりも高くして、「★」で示されるマークが透かしのように見える効果を得るものとする。以下、操作者によって指定された光沢調整領域(図6中の「★」部)を「マーク部」ともいう。又、記録材S上の画像形成可能領域内の光沢調整領域(マーク部)を除く領域を「背景部」ともいう。
図6に示す画面の表示要素B202は、画像形成装置100のHDD104に保存されている画像ファイルを選択するための領域である。操作者は、表示要素B202に一覧表示された画像ファイルから、光沢調整領域(マーク部)を指定する。図6には、ファイル名「ccc.tif」の画像ファイルが選択されている状態が示されている。例えば、このファイル名「ccc.tif」の画像ファイルが、図6においてプレビュー領域B201に表示されるような、記録材S上の画像形成可能領域内に収まる複数の「★」部を規定するものとする。
尚、図6に示す画面の「外部参照」と表示された表示要素B204は、光沢調整領域(マーク部)を指定するためのファイルをネットワークを介して指定する画面を呼び出すための領域である。これにより、画像形成装置100の内部に保存されたファイル以外のファイルであって、ネットワークを介して利用可能なファイルを用いて、光沢調整領域(マーク部)を指定することができる。
図6に示す画面の「光沢モード」と表示された表示要素B203は、光沢調整領域(マーク部)に光沢差をつけることを指定するためのボタンである。操作者が表示要素B203を選択することにより、透明印刷設定情報取得手段としてのCPU101は、操作者によって設定された透明印刷設定情報を取得する。より詳細には、CPU101は、光沢調整領域を指定する情報を取得する領域取得手段として機能する。又、CPU101は、記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域とその他の領域との間に光沢差をつけることを指示する情報を取得する指示情報取得手段として機能する。
尚、本実施例では、上述のように、操作者が表示要素B202(又はB204)で光沢調整領域を指定する画像ファイルを選択し、表示要素B203を選択することで、透明印刷設定情報がCPU101によって取得される。このような態様は、記録材S上の特定の領域を指定して、その領域について光沢度の変更以外の操作(例えば、その領域を特定の色に着色するなど)を行えるようになっている場合などに便利である。即ち、同じ画像ファイルで指定される領域に対して、光沢度の調整や着色といった複数種類の処理を選択的に適用することができる。但し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、図6のような画面が選択された時点で光沢差をつけることが選択され、後は光沢調整領域を指定すればよくなっていてもよい。
透明印刷設定情報が設定された状態において、操作者は、図6に示す画面の「OK」と表示された表示要素B205を選択することにより、透明印刷設定情報を反映させることができる。操作者が表示要素B205を選択した場合、画像形成装置100は図5に示す画面をディスプレイ111に表示する。操作者は、透明印刷情報が反映された状態で操作パネル112に設けられたスタートボタン(図示せず)を押下することにより、透明印刷設定情報に基づく画像形成を行うことができる。
尚、操作者は、図6に示す画面の「キャンセル」と表示された表示要素B206を選択することにより、透明印刷設定情報を破棄させることができる。操作者が表示要素B206を選択した場合、画像形成装置100は図6に示す画面において設定された透明印刷情報を破棄し、図5に示す画面をディスプレイ111に表示する。
3−3.制御フロー
次に、本実施例における透明印刷モードでの画像形成装置100の動作の流れについて説明する。
図7は、本実施例の透明印刷モードにおける画像形成装置100の動作の流れを示すフローチャートである。CPU101は、ROM103に保存されたプログラムに従い、図7に示すような透明印刷モードにおける画像形成装置100の動作を制御する。
S101は、CPU101が、操作者によって設定された透明印刷設定情報を取得するためのステップである。ここで、領域取得手段としてのCPU101は、光沢調整領域を指定する情報を取得する。このとき取得した情報は、RAM102に記憶される。
S102は、CPU101が、光沢調整領域における有色トナー量の情報を取得するためのステップである。本実施例では、コントローラ部119は、入力されたRGB信号に対して、マスキング処理、UCR処理、γ補正処理など、適宜最適化するために必要な処理を行い、プリンタ部115で出力するためのYMCK信号に変換する。本実施例では、光沢調整領域における有色トナー量の情報は、具体的には、S102で取得される、光沢調整領域内に形成される有色画像の画像濃度の情報である。より詳細には、この光沢調整領域における有色トナー量の情報は、光沢調整領域内の有色画像の領域におけるYMCK信号値(4色の有色画像の濃度レベル信号の積算値)の平均値(面積平均)とした。
S103は、CPU101が、S102で取得された光沢調整領域における有色トナー量の情報に基づき、1PASS方式で画像を形成するか2PASS方式で画像を形成するかを決定するためのステップである。又、S103は、それと共に、CPU101が、透明トナーを付与する領域(マーク部又は背景部)を決定するためのステップである。CPU101は、取得した有色トナー量が閾値以上であれば、S104の処理を実行する。一方、CPU101は、取得した有色トナー量が閾値以下であれば、S105の処理を実行する。本実施例では、図3及び図4に示す有色トナー量と光沢度との関係から、この閾値は、有色トナー量100%とした。
尚、図3に示すような有色トナー量と光沢度の関係は、画像を形成する記録材S、環境条件、画像形成に用いるトナーの種類、プロセススピードなどで変化する。そのため、制御に用いる有色トナー量と光沢度との関係は、LUT(Look UP Table)としてROM103又はHDD104などに格納されているものとする。
S104は、透明画像データを生成し、2PASS方式で画像を形成することを決定するためのステップである。ここで、透明画像データは、記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域とその他の領域との間に光沢差をつけるための透明画像を記録材Sに形成するために、プリンタ部115に送信すべきデータである。S104では、透明画像データ生成手段としてのCPU101は、記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域(マーク部)を除く領域(背景部)に透明トナー像を形成させるような透明画像データを生成する。図4に示すように、閾値である有色トナー量100%以上の領域において2PASS方式で画像を形成する場合、有色画像を覆うように透明画像を形成する領域の方が、有色画像のみの領域よりも光沢度が低くなるからである。
S105は、透明画像データを生成し、1PASS方式で画像を形成することを決定するためのステップである。S105では、透明画像データ生成手段としてのCPU101は、記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域(マーク部)に透明トナー像を形成させるような透明画像データを生成する。図3に示すように、閾値である有色トナー量100%未満の領域において1PASS方式で画像を形成する場合、有色画像を覆うように透明画像を形成する領域の方が、有色トナー像のみの領域よりも光沢度が高くなるからである。
以上のような透明印刷モードにおける画像形成装置100の動作により、記録材S上の画像形成可能領域内における操作者が指定した光沢調整領域とその他の領域との間に所望の光沢差がつけられた出力物を得ることができる。
3−4.透明印刷モードにおける画像形成動作
図8及び図9は透明印刷モードにおける画像処理の手順のイメージ図である。
図8は、透明印刷モードにおいて2PASS方式で画像を形成する場合の画像形成動作を模式的に示す。CPU101に、光沢調整領域を指定するデータとしての透明トナー用の画像データが入力される(図8(a))。CPU101は、入力された透明トナー用の画像データと後述する有色画像データとに基づいて、記録材Sに透明画像を形成するための透明画像データを生成する(図8(c))。又、CPU101に、画像情報信号としてRGBデータが入力される(図8(b))。CPU101は、入力されたRGB画像データから、記録材Sに有色画像を形成するための有色画像データとしてのYMCK画像データに変換する(図8(d))。ここで、有色画像データは、記録材Sに有色画像を形成するためにプリンタ部115に送信すべきデータである。
図8は2PASS方式の例であるので、CPU101は、透明画像データを生成する際に、有色画像データとしてのYMCK画像データに基づいて取得した光沢調整領域における有色トナー量が閾値以上であることを検知する。そして、CPU101は、入力された光沢調整領域を指定する透明トナー用の画像データが規定する領域を反転した領域(背景部)に透明トナー像を形成するような、透明画像データ(ネガの透明画像データ)を生成する。
CPU101は、生成した透明画像データと有色画像データに従って、プリンタ部115に2PASS方式による画像形成動作を実行させる。即ち、YMCK画像データに従って有色トナー像が記録材Sに形成され、1回目の定着工程を経た後、記録材Sに定着された有色トナー像の上に透明画像データに従って透明トナー像が形成され、2回目の定着工程を経て、出力物が出力される(図8(e))。
図9は、透明印刷モードにおいて1PASS方式で画像を形成する場合の画像形成動作を模式的に示す。CPU101が透明画像データと有色画像データを生成し、生成した透明画像データと有色画像データに従って記録材Sに透明トナー像と有色トナー像とを形成して出力物を得る流れは図8の2PASS方式の場合と同様である(図9(a)〜(d))。
但し、図9は1PASS方式の例であるので、CPU101は、透明画像データを生成する際に、有色画像データとしてのYMCK画像データに基づいて取得した光沢調整領域における有色トナー量が閾値未満であることを検知する。そして、CPU101は、入力された光沢調整領域を指定する透明トナー用の画像データが規定する領域(マーク部)に透明トナー像を形成するような、透明画像データ(ポジの透明画像データ)を生成する。
又、CPU101は、生成した透明画像データと有色画像データに従って、プリンタ部115に1PASS方式により画像形成動作を実行させる。即ち、YMCK画像データに従って有色トナー像が記録材Sに形成され、その上に透明画像データに従って透明トナー像が形成された後、1回の定着工程を経て、出力物が出力される(図9(e))。
以上のように、本実施例では、画像形成装置100は、記録材上に有色トナーで有色トナー像を形成する有色画像形成手段を有する。又、画像形成装置100は、有色画像形成手段により有色トナー像が形成された記録材上の画像形成可能領域内の一部分に透明トナーで透明トナー像を形成する透明画像形成手段を有する。有色画像形成手段は、第2〜第5の画像形成部PY、PM、PC、PK、中間転写ベルトユニット70、二次転写ローラ9などで構成される。透明画像形成手段は、第1の画像形成部PT、中間転写ベルトユニット70、二次転写ローラ9などで構成される。又、画像形成装置100は、トナー像が形成された記録材に加熱処理を施してトナー像を記録材に定着させる定着手段としての定着器10を有する。又、画像形成装置100は、次の第1のモードと、第2のモードと、を選択的に実行させる制御手段としてのCPU101を有する。第1のモードは、有色トナー像を形成した後に定着手段で加熱処理を施していない記録材上に透明トナー像を形成し、その後その記録材に定着手段で加熱処理をしてから出力するモードである(1PASS方式)。第2のモードは、有色トナー像を形成した後に定着手段で加熱処理を施した記録材上に透明トナー像を形成し、その後その記録材に定着手段で加熱処理を施してから出力するモードである(2PASS方式)。
そして、画像形成装置100は、制御手段が、記録材に形成する有色トナー像のトナー量に係る情報と比較して、前記第1及び第2のモードのうちいずれを実行するかを選択するために用いる選択情報を記憶する記憶手段(ROM、HDDなど)を有する。本実施例では、選択情報は、第1のモードと第2のモードとを切り替えるための有色トナー量の閾値の情報である。この選択情報は、次のことを制御手段に示すように設定されている。即ち、記録材に形成する有色トナー像のトナー量に係る情報に対して、そのトナー量の有色トナー像に所定のトナー量の透明トナー像を重ねた場合と重ねない場合とでの定着後の画像の光沢度の差が、第1、第2のモードのいずれの方が大きくなるかを示す。特に、本実施例では、制御手段は、記録材に形成する有色トナー像のトナー量に係る情報としての、記録材上の画像形成可能領域内の透明トナーで透明トナー像を形成する領域内における有色トナー像のトナー量に係る情報と、選択情報と、を比較する。これにより、第1及び第2のモードのうちいずれを実行するかを選択する。
3−5.具体例
次に、透明印刷モードにおいて出力した出力物のマーク部と背景部の光沢度の具体例について説明する。前述のように、本実施例では、1PASS方式と2PASS方式とを切り替えるための光沢調整領域内の有色トナー量の閾値は100%である。
尚、本実施例において1PASS方式を用いる場合に2PASS方式を用い、本実施例において2PASS方式を用いる場合に1PASS方式を用いたものを比較例とした。但し、比較例においては、図3及び図4に示す有色トナー量と光沢度との関係に基づいて、マーク部の光沢度が背景部の光沢度よりも高くなるように、適宜マーク部と背景部とのいずれに透明トナー像を形成するかを本実施例とは異ならせた。
先ず、記録材S上の画像形成可能領域内に有色トナー量160%の均一の有色画像を形成し、透明トナー量70%の透明画像によって記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域の光沢度をその他の領域の光沢度よりも高くする場合について説明する。この場合、本実施例によれば、図3及び図4に示す有色トナー量と光沢度との関係から、背景部に透明トナー像を形成するネガの透明画像データを使い、2PASS方式にて画像形成を行う。表1は、本実施例と比較例1について、マーク部と背景部のトナー量(画像濃度信号(%)と換算した単位面積当たりのトナー量(mg/cm2))及び光沢度をまとめたものである。
表1から分かるように、マーク部と背景部との光沢差は、本実施例では25%あるが、比較例1では5%しかない。従って、本実施例によって、より効果的な光沢差をつけることが可能になる。
次に、記録材S上の画像形成可能領域内に有色トナー量75%の均一の有色画像を形成し、透明トナー量70%の透明画像によって記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域の光沢度をその他の領域の光沢度よりも高くする場合について説明する。この場合、本実施例では、図3及び図4に示す有色トナー量と光沢度との関係から、マーク部に透明トナー像を形成するポジの透明画像データを使い、1PASS方式にて画像形成を行う。表2は、本実施例と比較例2について、マーク部と背景部のトナー量(画像濃度信号(%)と換算した単位面積当たりのトナー量(mg/cm2))及び光沢度をまとめたものである。
表2から分かるように、マーク部と背景部との光沢差は、本実施例では10%あるが、比較例2では4%しかない。従って、本実施例によって、より効果的な光沢差をつけることが可能になる。
以上説明したように、本実施例では、操作者が指定した光沢調整領域内の有色トナー量に応じて、透明画像データを形成し、1PASS方式で画像を形成するか2PASS方式で画像を形成するか画像形成モードを選択する。これにより、記録材S上の画像形成可能領域内における操作者が指定した光沢調整領域とその他の領域との間に所望の光沢差をつけることができる。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、本実施例の画像形成装置において実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
実施例1では、記録材Sとして、マットコート紙(日本製紙製「ユーライト(商標)」坪量157g/m2)を使用した。一般に、低光沢紙と呼ばれるものは、記録材S上に一定量(例えば、透明印刷モードで使用する透明トナー量70%)のトナーを定着することで、トナーを定着する前よりも光沢度が上昇する傾向を有する。これは定着条件やトナーの種類によって変わるものである。図3の破線で示す曲線における有色トナー量が0%のときの光沢度は、1回の定着工程を経た後の上記マットコート紙自体の光沢度(6%)となる。図3の一点鎖線で示す曲線における有色トナー量が0%のときの光沢度は、上記マットコート紙にトナー量70%の透明トナー像を形成して1回の定着工程を経たときの光沢度になる。図3に示すように、上記マットコート紙は、トナー量70%の透明トナーが定着された部分の光沢度が記録材S自体の光沢度(6%)よりも上昇しているため、低光沢紙に分類される。
しかし、有色トナー量と光沢度との関係は、記録材Sとして高光沢紙を用いる場合には、記録材Sとして低光沢紙を用いる場合とは異なる。そのため、実施例1で示した1PASS方式と2PASS方式とを切り替えるための有色トナー量の閾値が異なる。
本実施例では、記録材Sとして高光沢紙を用いる場合の一例を説明する。本実施例では、記録材Sとして、グロスコート紙(王子製紙製「SA金藤+(商標)」坪量157g/m2)を使用した。一般に、高光沢紙と呼ばれるものは、記録材S上に一定量(例えば、透明印刷モードで使用する透明トナー量70%)のトナーを定着することで、トナーを定着する前よりも光沢度が顕著に変化しないか又は低下する傾向を有する。これは定着条件やトナーの種類によって変わるものである。詳しくは以下に説明するが、記録材Sの種類が異なることを除いて図3と同様の内容を示す図10において、破線で示す曲線における有色トナー量が0%のときの光沢度は、1回の定着工程を経た後の本実施例のグロスコート紙自体の光沢度(50%)となる。図10の一点鎖線で示す曲線における有色トナー量が0%のときの光沢度は、本実施例のグロスコート紙にトナー量70%の透明トナー像を形成して1回の定着工程を経たときの光沢度になる。図10に示すように、本実施例のグロスコート紙は、トナー量70%の透明トナーが定着された部分の光沢度が低下しているため、高光沢紙に分類される。
尚、記録材Sの種類を除く、定着後の記録材Sの表面の光沢度に影響を与えると考えられる各種条件(トナー、トナー量、プロセススピード、ニップ圧など)は、実施例1において列記したものと同一である。
1.単位面積当たりのトナー量と光沢度との関係
次に、記録材Sとして本実施例のグロスコート紙を用いた場合における単位面積当たりの有色トナー量と光沢度との関係について説明する。
(1PASS方式の場合)
図10は、1PASS方式を用いる場合における、記録材Sの表面に定着される有色トナー量とトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係を示すグラフである。縦軸は光沢度を示す。横軸は記録材Sに定着される有色トナー量を示す。
図10中の破線は、有色トナー像のみを1回の定着工程で記録材Sに定着したときの光沢度を示す曲線である。又、図10中の一点鎖線は、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を記録材Sに形成し、これを1回の定着工程で記録材Sに定着したときの光沢度を示す曲線である。
ここで、図10において、有色トナー量が70%以上、特に、150%以上の領域では、有色トナー像のみを形成した場合と、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を形成した場合とで、光沢度があまり変化しないことが分かる。即ち、有色トナー量が70%以上、特に、150%以上の領域では、1PASS方式では記録材S上の画像形成可能領域における指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけにくいことが分かる。
(2PASS方式の場合)
図11は、2PASS方式を用いる場合における、記録材Sの表面に定着される有色トナー量とトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係を示すグラフである。縦軸は光沢度を示す。横軸は記録材Sに定着される有色トナー量を示す。
図11中の破線は、有色トナー像を記録材Sに形成し、1回目の定着工程を経た後、更に2回目の定着工程を経て出力したときの光沢度を示す曲線である。又、図11中の一点鎖線は、有色トナー像を記録材Sに形成し、1回目の定着工程を経た後、定着された有色トナーを覆うようにトナー量70%の透明トナー像を形成し、2回目の定着工程を経て出力したときの光沢度を示す曲線である。
例えば、有色トナー量が150%の場合における破線と一点鎖線で示される光沢度に注目する。有色画像のうち、その上に透明画像が形成されない部分は、2回の定着工程を経るため、光沢度が47%となる。又、有色画像を覆うように、透明画像がトナー量70%で形成される部分は、その透明画像は1回の定着工程しか経ないため、光沢度が22%となる。
尚、図11中の破線で示す曲線は、有色トナー量が0%のとき、有色トナー像も透明トナー像も形成されていない2回の定着工程を経た後の記録材S自体の光沢度(47%)となる。しかし、図11中の一点鎖線で示す曲線は、トナー量70%の一定量で透明トナー像を形成した場合の光沢度を示している。従って、有色トナー量が0%のとき、有色トナー像を形成しないで1回目の定着工程を経た後に記録材Sにトナー量70%の透明トナー像を形成して2回目の定着工程を経たときの光沢度になる。
有色画像を覆うように透明画像が形成されていない部分(図11中の破線)に関しては、有色トナー像の表面が定着器10で熱を2回与えられている。しかしながら、有色画像を覆うように透明画像が形成された部分(図11中の一点鎖線)に関しては、表層である透明トナー像に1回しか熱量が与えられていない。そのため、透明画像で覆われた部分の光沢度は高くなりにくい傾向がある。
ここで、図11において、有色トナー量が70%以下の領域、特に、30%〜70%の領域では、有色トナー像のみを形成した場合と、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を形成した場合とで、光沢度があまり変化しないことが分かる。即ち、有色トナー量が70%以下、特に、30〜70%の領域では、2PASS方式では記録材S上の画像形成可能領域内における指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけにくいことが分かる。
以上のように、1PASS方式においても、2PASS方式においても、光沢差をつけることが困難である有色トナー量の領域が存在する。例えば、本実施例の条件下では、有色トナー量が70%未満であれば、1PASS方式の方が光沢差をつけやすく、有色トナー量が70%以上であれば、2PASS方式の方が光沢差をつけやすいことが分かる。
2.具体例
次に、透明印刷モードにおいて出力した出力物のマーク部と背景部の光沢度の具体例について説明する。
透明印刷モードにおける画像形成動作は、実施例1における図7、図8及び図9を参照して説明したものと同様である。但し、本実施例では、使用する記録材Sが本実施例のグロスコート紙であることが実施例1の場合と異なる。又、本実施例では、図10及び図11に示す有色トナー量と光沢度との関係から、1PASS方式と2PASS方式とを切り替えるための有色トナー量の閾値を70%としたことが実施例1の場合と異なる。更に、本実施例では、1PASS方式を用いる場合に背景部に透明トナー像を形成するネガの透明画像データを使用したことが実施例1の場合とは異なる。
尚、本実施例において1PASS方式を用いる場合に2PASS方式を用い、本実施例において2PASS方式を用いる場合に1PASS方式を用いたものを比較例とした。
先ず、記録材S上の画像形成可能領域内に有色トナー量140%の均一の有色画像を形成し、透明トナー量70%の透明画像によって記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域の光沢度をその他の領域の光沢度よりも高くする場合について説明する。この場合、本実施例によれば、図10及び図11に示す有色トナー量と光沢度との関係から、背景部に透明トナー像を形成するネガの透明画像データを使い、2PASS方式にて画像形成を行う。表3は、本実施例と比較例3について、マーク部と背景部のトナー量(画像濃度信号(%)と換算した単位面積当たりのトナー量(mg/cm2))及び光沢度をまとめたものである。
表3から分かるように、マーク部と背景部との光沢差は、本実施例では24%あるが、比較例3では6%しかない。従って、本実施例によって、より効果的な光沢差をつけることが可能になる。
次に、記録材S上の画像形成可能領域内に有色トナー量50%の均一の有色画像を形成し、透明トナー量70%の透明画像によって記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域の光沢度をその他の領域の光沢度よりも高くする場合について説明する。この場合、本実施例では、図10及び図11に示す有色トナー量と光沢度との関係から、背景部に透明トナー像を形成するネガの透明画像データを使い、1PASS方式にて画像形成を行う。表4は、本実施例と比較例4について、マーク部と背景部のトナー量(画像濃度信号(%)と換算した単位面積当たりのトナー量(mg/cm2))及び光沢度をまとめたものである。
表4から分かるように、マーク部と背景部との光沢差は、本実施例では10%あるが、比較例4では6%しかない。従って、本実施例によって、より効果的な光沢差をつけることが可能になる。
以上説明したように、本実施例によれば、記録材Sとして高光沢紙を用いる場合であっても、記録材S上の画像形成可能領域内における操作者が指定した光沢調整領域とその他の領域との間に所望の光沢差をつけることができる。
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、本実施例の画像形成装置において実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、記録材Sとして実施例2とは別の高光沢紙を用いる場合の一例を説明する。本実施例では、記録材Sとして、グロスコート紙(王子製紙製「OKトップコート+」坪量128g/m2)を使用した。詳しくは以下に説明するが、記録材Sの種類が異なることを除いて図3と同様の内容を示す図12において、破線で示す曲線における有色トナー量が0%のときの光沢度は、1回の定着工程を経た後の本実施例のグロスコート紙自体の光沢度(27%)となる。図12の一点鎖線で示す曲線における有色トナー量が0%のときの光沢度は、本実施例のグロスコート紙にトナー量70%の透明トナー像を形成して1回の定着工程を経たときの光沢度になる。図12に示すように、本実施例のグロスコート紙は、トナー量70%の透明トナーが定着された部分の光沢度は若干上昇しているが、顕著に変化していないため、高光沢紙に分類される。尚、このときに定着する透明トナー量がより少なければ、実施例2で用いたグロスコート紙と同様に、透明トナーが定着された部分の光沢度は低下する。
尚、記録材Sの種類を除く、定着後の記録材Sの表面の光沢度に影響を与えると考えられる各種条件(トナー、トナー量、プロセススピード、ニップ圧など)は、実施例1において列記したものと同一である。
1.単位面積当たりのトナー量と光沢度との関係
次に、記録材Sとして本実施例のグロスコート紙を用いた場合における単位面積当たりの有色トナー量と光沢度との関係について説明する。
(1PASS方式の場合)
図12は、1PASS方式を用いる場合における、記録材Sの表面に定着される有色トナー量とトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係を示すグラフである。縦軸は光沢度を示す。横軸は記録材Sに定着される有色トナー量を示す。
図12中の破線は、有色トナー像のみを1回の定着工程で記録材Sに定着したときの光沢度を示す曲線である。又、図12中の一点鎖線は、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を記録材Sに形成し、これを1回の定着工程で記録材Sに定着したときの光沢度を示す曲線である。
ここで、図12において、有色トナー量が100%以上、特に、150%以上の領域では、有色トナー像のみを形成した場合と、有色トナー像とトナー量70%の透明トナー像を形成した場合とで、光沢度があまり変化しないことが分かる。即ち、有色トナー量が100%以上、特に、150%以上の領域では、1PASS方式では記録材S上の画像形成可能領域における指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけにくいことが分かる。
(2PASS方式の場合)
図13は、2PASS方式を用いる場合における、記録材Sの表面に定着される有色トナー量とトナー像が定着された部分の記録材Sの表面の光沢度との関係を示すグラフである。縦軸は光沢度を示す。横軸は記録材Sに定着される有色トナー量を示す。
図13中の破線は、有色トナー像を記録材Sに形成し、1回目の定着工程を経た後、更に2回目の定着工程を経て出力したときの光沢度を示す曲線である。又、図13中の一点鎖線は、有色トナー像を記録材Sに形成し、1回目の定着工程を経た後、定着された有色トナーを覆うようにトナー量70%の透明トナー像を形成し、2回目の定着工程を経て出力したときの光沢度を示す曲線である。
例えば、有色トナー量が150%の場合における破線と一点鎖線で示される光沢度に注目する。有色画像のうち、その上に透明画像が形成されない部分は、2回の定着工程を経るため、光沢度が37%となる。又、有色画像を覆うように、透明画像がトナー量70%で形成される部分は、その透明画像は1回の定着工程しか経ないため、光沢度が15%となる。
尚、図13中の破線で示す曲線は、有色トナー量が0%のとき、有色トナー像も透明トナー像も形成されていない2回の定着工程を経た後の記録材S自体の光沢度(30%)となる。しかし、図13中の一点鎖線で示す曲線は、トナー量70%の一定量で透明トナー像を形成した場合の光沢度を示している。従って、有色トナー量が0%のとき、有色トナー像を形成しないで1回目の定着工程を経た後に記録材Sにトナー量70%の透明トナー像を形成して2回目の定着工程を経たときの光沢度になる。
有色画像を覆うように透明画像が形成されていない部分(図12中の破線)に関しては、有色トナー像の表面が定着器10で熱を2回与えられている。しかしながら、有色画像を覆うように透明画像が形成された部分(図11中の一点鎖線)に関しては、表層である透明トナー像に1回しか熱量が与えられていない。そのため、透明画像で覆われた部分の光沢度は高くなりにくい傾向がある。
ここで、図13において、有色トナー量が90%以下の領域、特に、60%〜90%の領域では、有色トナー像のみを形成した場合と、有色トナーとトナー量70%の透明トナー像を形成した場合とで、光沢度があまり変化しないことが分かる。即ち、有色トナー量が90%以下、特に、60〜90%の領域では、2PASS方式では記録材S上の画像形成可能領域内における指定した領域とその他の領域との間に光沢差をつけにくいことが分かる。
以上のように、1PASS方式においても、2PASS方式においても、光沢差をつけることが困難である有色トナー量の領域が存在する。例えば、本実施例の条件下では、有色トナー量が90%未満であれば、1PASS方式の方が光沢差をつけやすく、有色トナー量が90%以上であれば、2PASS方式の方が光沢差をつけやすいことが分かる。
2.具体例
次に、透明印刷モードにおいて出力した出力物のマーク部と背景部の光沢度の具体例について説明する。
透明印刷モードにおける画像形成動作は、実施例1における図7、図8及び図9を参照して説明したものと同様である。但し、本実施例では、使用する記録材Sが本実施例のグロスコート紙であることが実施例1の場合と異なる。又、本実施例では、図12及び図13に示す有色トナー量と光沢度との関係から、1PASS方式と2PASS方式とを切り替えるための有色トナー量の閾値を90%としたことが実施例1の場合と異なる。更に、本実施例では、1PASS方式を用いる場合に背景部に透明トナー像を形成するネガの透明画像データを使用したことが実施例1の場合とは異なる。
尚、本実施例において1PASS方式を用いる場合に2PASS方式を用い、本実施例において2PASS方式を用いる場合に1PASS方式を用いたものを比較例とした。但し、比較例においては、図12及び図13に示す有色トナー量と光沢度との関係に基づいて、マーク部の光沢度が背景部の光沢度よりも高くなるように、適宜マーク部と背景部とのいずれに透明トナー像を形成するかを本実施例とは異ならせた。
先ず、記録材S上の画像形成可能領域内に有色トナー量140%の均一の有色画像を形成し、透明トナー量70%の透明画像によって記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域の光沢度をその他の領域の光沢度よりも高くする場合について説明する。この場合、本実施例によれば、図12及び図13に示す有色トナー量と光沢度との関係から、背景部に透明トナー像を形成するネガの透明画像データを使い、2PASS方式にて画像形成を行う。表5は、本実施例と比較例5について、マーク部と背景部のトナー量(画像濃度信号(%)と換算した単位面積当たりのトナー量(mg/cm2))及び光沢度をまとめたものである。
表5から分かるように、マーク部と背景部との光沢差は、本実施例では20%あるが、比較例5では5%しかない。従って、本実施例によって、より効果的な光沢差をつけることが可能になる。
次に、記録材S上の画像形成可能領域内に有色トナー量50%の均一の有色画像を形成し、透明トナー量70%の透明画像によって記録材S上の画像形成可能領域内における光沢調整領域の光沢度をその他の領域の光沢度よりも高くする場合について説明する。この場合、本実施例では、図12及び図13に示す有色トナー量と光沢度との関係から、背景部に透明トナー像を形成するネガの透明画像データを使い、1PASS方式にて画像形成を行う。表6は、本実施例と比較例6について、マーク部と背景部のトナー量(画像濃度信号(%)と換算した単位面積当たりのトナー量(mg/cm2))及び光沢度をまとめたものである。
表6から分かるように、マーク部と背景部との光沢差は、本実施例では14%あるが、比較例6では6%しかない。従って、本実施例によって、より効果的な光沢差をつけることが可能になる。
以上説明したように、本実施例によれば、実施例2と同様に、記録材Sとして高光沢紙を用いる場合であっても、記録材S上の画像形成可能領域内における操作者が指定した光沢調整領域とその他の領域との間に所望の光沢差をつけることができる。
実施例4
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、本実施例の画像形成装置において実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例では、記録材Sの種類或いは記録材Sの光沢度の情報に応じて透明印刷モードの動作を制御する方法について説明する。
1.記録材の種類或いは記録材の光沢度に応じた制御
実施例1では、記録材S自体の光沢度が6%であるマットコート紙(日本製紙製「ユーライト(商標)」坪量157g/m2)を使用した。又、実施例2では、記録材S自体の光沢度が50%であるグロスコート紙(王子製紙製「SA金藤+(商標)」坪量157g/m2)を使用した。又、実施例3では、記録材S自体の光沢度が30%であるグロスコート紙(王子製紙製「OKトップコート+」坪量128g/m2)を使用した。
そして、実施例1〜3では、それぞれの記録材Sを使用した場合について、記録材S上の画像形成可能領域内における操作者が指定した光沢調整領域とその他の領域との間に十分な光沢差をつけられるようにするための制御について説明した。表7は、各記録材Sの種類について、記録材S自体の光沢度と、1PASS方式と2PASS方式とを切り替えるための有色トナー量の閾値との関係をまとめたものである。
実施例1〜3で説明したように、記録材Sの種類によって、有色トナー量と光沢度との関係が異なる。従って、記録材Sの種類によって、必要な光沢差を出すための条件(1PASS方式と2PASS方式とを切り替えるための有色トナー量の閾値)が異なる。又、例えば1PASS方式において、透明画像データとしてネガの透明画像データ又はポジの透明画像データのいずれを用いるかも、記録材Sの種類によって異なることがある。
実施例1〜3では、各種類の記録材Sに対して個別に対処したが、画像形成装置100において多様な記録材Sに対応することが望まれる。そこで、例えば、操作者が記録材Sの種類の情報を入力することなどによって、各種類の記録材Sに対応した透明印刷モードの動作を制御できるようにすることができる。
例えば、図3及び図4、図10及び図11、図12及び図13に示すような、記録材Sの種類毎の有色トナー量と光沢度の関係を示す情報を、予め調べることによって、LUTなどとしてROM103又はHDD104(閾値情報記憶部、指定情報記憶部)などに格納しておくことができる。但し、必ずしも予め調べられた図3及び図4、図10及び図11、図12及び図13に示すような関係自体を格納しておく必要はない。例えば、実施例1〜3にて説明した動作に必要な範囲で、上述のような閾値の情報(閾値情報)、1PASS方式及び2PASS方式のそれぞれにおいてネガ又はポジのいずれの透明画像データを用いるかを指定する情報(指定情報)などを、記録材Sの種類毎に格納しておくことができる。
使用する記録材Sの種類が操作者の指定などで決定され、記録材Sの種類に関する情報が取得されれば、画像形成装置100は、各種類の記録材S毎に予め調べられて格納されている上述のような各情報を用いて、透明印刷モードの動作を制御することができる。
ここで、表7から分かるように、記録材S自体の光沢度と、1PASS方式と2PASS方式とを切り替えるための有色トナー量の閾値とには、凡その相関がある。即ち、記録材S自体の光沢度が低くなるにつれて、該閾値の値は大きくなる傾向があり、記録材S自体の光沢度が高くなるにつれて、該閾値は小さくなる傾向にある。従って、個別の種類の記録材Sについて有色トナー量と光沢度との関係を示す情報を予め調べて格納しておくことが好ましいが、記録材Sの光沢度に関する情報に応じて透明印刷モードの動作を制御することもできる。
透明印刷モードの動作を記録材Sの光沢度に関する情報に応じて制御する場合、記録材Sの光沢度は、段階的に又は連続的に複数種類を指定(選択)できるようにすることができる。詳しくは後述するように、特定の種類の記録材S毎にその光沢度に関する情報を記憶しておき、記録材Sの種類を指定することで、対応する光沢度を指定できるようにすることができる。或いは、より簡易に「低光沢紙」、「高光沢紙」といった定性的な記録材Sの分類毎に光沢度を関係付けて記憶しておき、その分類を指定することで、対応する光沢度を指定できるようにすることができる。或いは、光沢度を直接数値で指定したり、複数段階に区分された光沢度の代表値を指定したりすることもできる。例えば、本実施例のトナー及び定着条件においては、高光沢紙と低光沢紙を分ける記録材Sの光沢度は20%となる。従って、例えば光沢度20%以上の記録材Sを高光沢紙として実施例2で説明した制御を適用し、光沢度20%未満の記録材Sを低光沢紙として実施例1の制御を適用するなどしてもよい。以下に、具体例を示して更に詳しく説明する。
2.記録材の種類或いは記録材の光沢度に関する情報の取得方法
次に、画像形成装置100が記録材の種類或いは記録材の光沢度に関する情報を取得する方法の一例について説明する。
図14は、画像形成装置100が、操作者に対して記録材Sの種類又は光沢度に関する情報の入力を促す画面の一例を示す。操作者は、ディスプレイ11に表示された図14に示すような画面から、印刷に用いる記録材Sがセットされているカセット13a、カセット13b、又は手差しトレイ14を選択することができる。即ち、操作者が、図14に示す画面の表示要素B301を選択すると、ディスプレイ111に「カセット1」、「カセット2」、「手差しトレイ」が選択可能にプルダウンメニューとして提示される。尚、プルダウンメニューに限定されるものではなく、他の選択肢提示方法、例えばポップアップメニューなどを用いてもよい。操作者は、提示された項目の中から、印刷に用いる記録材Sがセットされている項目を選択する。
例えば、図14に示すように、操作者が「カセット1」を選択したものとする。すると、ディスプレイ111には、操作者が選択することができる記録材Sの種類がリストとして提示される。例えば、「カセット1」には「A社グロスコート紙 坪量157g/m2」がセットされているものとする。又、「カセット2」には「B社マットコート紙 坪量157g/m2」がセットされているものとする。このとき、プルダウンメニューの中から「カセット1」が選択された場合、CPU101は、カーソルB302が「A社グロスコート紙 坪量157g/m2」に合うように制御する。又、プルダウンメニューの中から「カセット2」が選択された場合、CPU101は、カーソルB302が「B社マットコート紙 坪量157g/m2」に合うように制御する。又、例えば操作者が「カセット1」に「A社グロスコート紙 坪量106g/m2」を新たにセット(交換)した場合、操作者は次の操作を行う。先ず、操作者は、表示要素B301において「カセット1」を選択する。その後、操作者は、ディスプレイ111に表示されている記録材Sの種類のリストにおいて、カーソルB202を「A社グロスコート紙 坪量106g/m2」に合わせるように操作する。以上のような操作を行うことにより、操作者は、画像形成装置100に対して、印刷に用いる記録材Sの種類を指定することができる。
又、画像形成装置100は、表8に示すような、ディスプレイ111に表示される記録材Sの種類と、その種類の記録材Sの光沢度との関係を示す情報を、ROM103やHDD104或いはRAM102に記憶している。そのため、例えば、図14に示す画面から操作者によって「A社グロスコート紙 坪量157g/m2」が選択されると、光沢度情報取得手段としてのCPU101は、印刷に用いる記録材Sの光沢度「50%」を取得することができる。同様に「B社マットコート紙 坪量 157g/m2」が選択されると、CPU101は、印刷に用いる記録材Sの光沢度「6%」を取得することができる。
尚、「カセット1」にセットした記録材Sの種類がディスプレイ111に提示されたリストの中に無い場合に、次にようにして特定の記録材Sの種類を指定できるようにすることができる。即ち、操作者は、図14に示す画面の「WEB参照」と表示された表示要素B303を選択することによって、提示されたリストの中に無い記録材Sの種類を選択することができる。操作者は、表示要素B303を選択することで、例えばネットワーク上に用意された記録材Sの情報を管理するデータベースにアクセスすることができる。操作者は、データベースの中から「カセット1」にセットした記録材Sを選択する。これにより、操作者は提示されたリストに無い記録材Sを選択することができる。
又、操作者は、「カセット1」、「カセット2」、又は「手差トレイ」にセットした記録材Sの光沢を手動で入力することができる。例えば、図14に示す画面の表示要素B304は、操作者が多段階で任意に記録材Sの光沢に関する情報を設定することができるスライダバーである。操作者は、表示要素B304のスライダバーを用いて、多段階(図示の例では10段階で光沢度0〜100%)で任意に記録材Sの光沢度に関する情報を指定することができる。
尚、記録材Sの光沢度を操作者が任意に指定する入力手段はスライダバーに限定されるものではない。例えば、画像形成装置100は、操作者がセットした記録材Sの光沢度が高い場合に選択すべき「高光沢度紙」などと表示された表示要素を選択可能にディスプレイ111に表示する。操作者はセットした記録材Sの光沢度が高いと判断したときに、ディスプレイ111の「高光沢度」と表示された表示要素を選択する。又、同様に「低光沢度」と表示された表示要素を選択可能にディスプレイ111に表示し、操作者が記録材Sの光沢度が低いと判断したときにこれを選択できるようにすることができる。或いは、操作者が記録材Sの光沢度を数値で直接入力できるようになっていてもよい。
このように、上述のような様々な方法によって、操作者が印刷に用いる記録材Sの光沢度に対応する情報を画像形成装置100に指定することができるようになっていてよい。
例えば、図14に示すように、印刷に用いる記録材Sとして、「カセット1」にセットされた「A社グロスコート紙 坪量157g/m2」が指定されたものとする。操作者は、印刷に使用する記録材Sの設定を反映させたい場合、図14に示す画面の「OK」と表示された表示要素B305を選択することができる。これにより印刷に用いる記録材Sの設定は終了する。
このようにして操作者によって設定された情報は、RAM102に保存される。そして、このようにRAM102に保存された記録材Sの光沢に関する情報は、後述する図15におけるS201において光沢度情報取得手段としてのCPU101によって取得される。
又、操作者が印刷に使用する記録材Sの設定を反映させたくない場合、操作者は図14に示す画面の「キャンセル」と表示された表示要素B306を選択することができる。これにより、印刷に用いる記録材Sの設定は破棄される。
以上のように、画像形成装置100は、制御手段に画像が形成される記録材の種類に係る情報を入力する入力手段を有していてよい。この場合、記憶手段には画像が形成される記録材の種類に対応して複数の選択情報(閾値の情報など)が記憶されている。そして、制御手段は入力手段によって入力された画像が形成される記録材の種類に対応した選択情報を用いて第1及び第2のモードのうちいずれを実行するかを選択する。或いは、画像形成装置100は、制御手段に画像が形成される記録材の光沢度に係る情報を入力する入力手段を有していてよい。この場合、記憶手段には画像が形成される記録材の光沢度に対応して複数の選択情報(閾値の情報など)が記憶されている。そして、制御手段は入力手段によって入力された画像が形成される記録材の光沢度に対応した選択情報を用いて第1及び第2のモードのうちいずれを実行するかを選択する。本実施例では、入力手段は、操作パネル112などで構成される。
3.制御フロー
次に、本実施例における透明印刷モードでの画像形成装置100の動作の流れについて説明する。
図15は、本実施例における透明印刷モードでの画像形成装置100の動作の流れを示すフローチャートである。CPU101は、ROM103に保存されたプログラムに従い、図15に示すような透明印刷モードにおける画像形成装置100の動作を制御する。
先ず、S201において、光沢度取得手段としてのCPU101が、図14に示す画面において操作者が指定する記録材Sの光沢度に関する情報を取得する。
次に、S202において、CPU101は、ROM103に予め記憶している記録材Sの光沢度に対応する、閾値の情報及びネガ又はポジのいずれの透明画像データを用いるかを指定する情報を取得する。これらの情報は、実施例1〜3で説明した有色トナー量と光沢度との関係から、記録材S上の画像形成可能領域内において光沢調整領域とその他の領域との光沢差を十分に目立たせることができるように設定されている。
S203以降の処理(S203〜S207)については、図7を参照して実施例1において説明したもの(S101〜S105)と同様である。但し、透明画像データを生成する処理は、指定された記録材Sの光沢度に対応して、実施例1〜3にて説明したようにネガ又はポジの透明画像データを生成するように行う。
尚、前述のように、記録材Sの種類と、有色トナー量と光沢度との関係を示す情報とが関係付けられている場合は、上記S201に対応するステップで、記録材種類取得手段としてのCPU101は、記録材Sの種類を示す情報を取得する。上述のように、記録材Sの種類と、有色トナー量と光沢度との関係を示す情報は、当該関係を示すテーブル、閾値、透明画像データの生成方法を決定するための情報などである。そして、この場合、CPU101は、上記S203〜S207に対応するステップで、記録材Sの種類と関係付けて記憶されている上記情報を使用して、記録材Sの種類に応じて透明印刷モードによる画像形成動作を制御する。
以上説明したように、本実施例によれば、使用する記録材Sの種類或いは記録材Sの光沢度に応じて、操作者の指定した領域に効率的に光沢差をつけることが可能であり、複数種類の記録材Sに対応した幅広い光沢差制御が可能になる。
その他の実施例
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
例えば、画像形成装置100が記録材Sの種類や光沢度の情報を取得する方法は、操作者による直接入力に限るものではない。例えば、画像形成装置100が画像出力に使用する記録材Sの種類や光沢度を検知する手段を有している場合には、当該検知手段の検知結果により、画像形成装置100が自動的に記録材Sの種類や光沢度の情報を取得することができる。記録材Sの種類は、上述のように光沢度を直接検知する場合のほか、厚さや表面粗さを指標として普通紙、低光沢紙、高光沢紙などの記録材Sの種類を検知することができる。
又、記録材Sの種類は上述のものに限定されるものではない。他の種類の記録材Sに関しても、有色トナー量と光沢度との関係を示す情報から上述の閾値などの必要な情報を求めておき、予め入力しておくことによって対応することができる。
又、上述の実施例では、光沢調整領域は、画像形成装置100やネットワーク上に予め格納されている画像ファイルを選択することで指定するものとして説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、原稿画像を複写する際に、その原稿画像における、別の原稿画像の画像部に対応する領域の光沢度を調整するようにしてもよい。この場合、例えば、スキャナ部116で、光沢調整領域を規定するための上記別の原稿画像を読み込んでRAM102やHDD104に記憶する。次に、複写すべき原稿画像をスキャナ部116で読み込んでRAM102やHDD104に記憶する。そして、CPU101は、この読み込んだ原稿画像及び別の原稿画像の画像データから、光沢調整領域における有色トナー量に係る情報を取得して、1PASS方式又は2PASS方式の選択、透明画像データの生成方法の選択を行う。そして、その後は上述の実施例と同様にして、透明印刷モードによる画像形成動作を制御することができる。
又、上述の実施例では、有色画像の有色トナー量に係る情報として、光沢調整領域内の有色画像の有色トナー量に係る情報に基づいて、1PASS方式と2PASS方式とを選択した。これは、透明印刷モードで光沢調整領域とその周辺の領域との間に光沢差をつけようとする場合、当該光沢調整領域の周辺の有色画像も、当該光沢調整領域内と同程度の有色トナー量を有していることが多いからである。透明印刷モードで光沢差をつけようとする画像において、当該光沢調整領域と重なる領域のみ、その周辺と大きく異なる濃度の有色画像が形成されていることは通常は考えられない。そのため、光沢調整領域内の有色トナー量に基づいて、図3及び図4などに示すような予め求めた有色トナー量と光沢度との関係から1PASS方式と2PASS方式とを選択することで、光沢調整領域とその周辺の領域との間に十分な光沢差をつけることができる。但し、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、有色画像の有色トナー量に係る情報として、記録材上の画像形成可能領域の全域における有色トナー量に係る情報(全域内での平均値など)に基づいて、1PASS方式と2PASS方式とを選択してもよい。
又、上述の実施例では、透明印刷モードにおける透明画像の透明トナー量は70%としたが、これに限定されるものではなく、本発明を適用する画像形成装置に合わせて適宜設定することができる。