[実施例]
(1)記録材
図1は、高光沢部と低光沢部が並存する高画質画像を形成するための電子写真用受像シートとしての記録材(以下、記録シートと記す)Pの平面模式図である。
Aは記録シートPの基材(以下、ベース紙と記す)、Bは熱可塑性樹脂からなる透明(実質透明)なトナー受容層(樹脂層:受像層・光沢化層:以下、受容層と記す)である。ベース紙Aは一般的に用いられる電子写真用記録シートや顔料塗工層を有するコート紙等である。受容層Bはベース紙Aの面(基材上)に対して点在している形態で形成されている。なお、トナー受容層の透明度については、十分に透明である例だけに限られない。例えば、再現画像に影響を及ぼさない範囲内であるならばトナー受容層が多少白濁化しているものにも同様に本発明を適用することが可能である。
ここで、トナー受容層とは、後述する平滑化装置(定着装置)によって、表面に形成されているトナー像と共に軟化・溶融することにより平滑化される樹脂層のことである。つまり、平滑化装置による平滑化処理に伴い、トナー受容層内にトナー像が埋め込まれることにより平滑化される層であると言うことができる。従って、トナー受容層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は40℃以上80℃以下に設定されている。一方、トナー受容層が設けられていない基材の部分は、平滑化処理時にほぼ軟化・溶融しないので、トナー受容層の部分に比して光沢度が上がらず低光沢部となる。
トナー受容層のガラス転移温度Tgを上記の範囲に設定した理由は次の通りである。
まず、本例では、後述するように、使用するトナーのガラス転移温度Tgは40℃以上80℃以下に設定されている。これは、トナーのガラス転移温度Tgが40℃よりも低いと、トナーが現像器内などにおいて(記録材に未定着トナー像を形成する前の時点で)ブロッキングし易くなったりするためで適切ではないからである。一方、トナーのガラス転移温度Tgが80℃よりも高いと、平滑化装置での加熱時の温度を過剰に高くしなければならなくなり適切ではないからである。なお、このトナーのガラス転移温度Tgは後述の方法により測定することができる。
このようなトナーを用いて記録シートP上に形成されたトナー像と共にトナー受容層が平滑化処理時に軟化・溶融することが好ましい為、本例では、トナーとトナー受容層のガラス転移温度がほぼ等しいものを使用している。つまり、後述するように、トナーもトナー受容層もポリエステル樹脂を主体に構成されている。
トナー受容層(トナー)のガラス転移温度Tgは以下の方法により測定することができる。
具体的には、トナー受容層のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計(DSC測定装置)、DCS−7(パーキンエルマー社製)やDSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)を用いて、ASTM(D3418−82)に準拠した方法により測定した。
測定試料としては5〜20mgであれば構わないが、本例では10mgを精密に秤量した。この測定試料を内包した試料用のアルミパンとリファレンスとしての空のアルミパンを、測定温度範囲(30〜200℃)の間で、下記の如くに温度を昇降させる。
まず、樹脂などに含まれている水分などの影響を除くため試料用とリファレンス用のアルミパンを下記の条件で昇温(昇温I)させ、その後、降温(降温II)させる。
その後、試料用とリファレンス用のアルミパンを下記の条件で昇温(昇温III)させる。このとき得られた温度曲線の差分から、トナー受容層を構成する樹脂の温度曲線(DSCカーブ)を求めることができる。
測定条件:昇温I・・・30℃ → 200℃、昇温速度10℃/分
降温II・・・200℃→ 30℃、降温速度10℃/分
昇温III・・30℃ → 200℃、昇温速度10℃/分
このように求められた昇温IIIのDSCカーブから、中点法によりTgを求めることができる。
図1の記録シートPは、ベース紙Aの表面に、受容層Bを長方形の同一模様で規則的配列にて点在させて塗工して形成具備させてある。本実施例においては、図1に示すように長方形の模様は長辺の長さが約10mm、短辺の長さが約6mmの模様をA4サイズの記録材に規則的に点在させた。点在のパターンとしては、図1に示すようにA4サイズの長辺方向に約25mm間隔で上記長方形模様を7個、短辺方向に約20mm間隔で上記長方形模様を7個、合計49個点在させた。また記録材の長辺方向のパターンは1行ごとに交互に位相をずらして点在させた。なお本実施例においては図1の様に受容層Bを点在させたが、この模様や大きさや配列パターンは必ずしも本実施例の構成に限ったものではないのは言うまでも無い。また、多数の模様を等間隔に配列する例について説明したが、模様と模様の間隔についてはほぼ同じであれば良く、製造誤差により多少間隔がずれている場合であっても構わない。
また、受容層Bの各々の模様は必ずしも同一でなくても良い。具体的には、例えば、図1のような長方形状のものと図9のようなハート形状のものを交互に規則的に配列させる構成であっても構わない。さらに、受容層Bの模様を文字にする構成であっても構わない。具体的には、例えば、CANON(登録商標)という文字を記録シートに対して斜めに規則的に多数配列するような構成であっても構わない。
この記録シートPは、受容層Bが定着温度付近で溶けることが最大の特徴である。これにより、後述するように、トナー像を記録材Pに定着する際にトナー像が受容層B内に埋め込まれるために高光沢トナー面を得ることができる。
上記のような記録シートPは、例えば、ベース紙Aとして顔料塗工層をもつコート紙を用い、これに受容層Bとして熱可塑性透明樹脂層をシルクスクリーン印刷等により塗工して設けることによって製造される。これにより、受容層Bの下層にベース紙Aとして用いたコート紙の顔料層があり高白色で平滑な面が形成されているため、最表層である受容層Bの樹脂に顔料を混ぜる必要がなく白色度を上げるといった機能も不要となる。そのため、記録シートPの最表層である受容層Bを構成させる熱可塑性透明樹脂層は、光沢度を上げることと、トナー像を埋め込むといった機能を優先した設計が可能となる。
記録シートPの具体的な製造方法の一例を紹介する。ベース紙Aとして顔料塗工層を形成したコート紙を用いる。このベース紙Aの片面又は両面に、熱可塑性透明樹脂をシルクスクリーン印刷を用いて塗工することで、部分的又は規則的に点在させた形態で受容層Bを塗工した記録シートPを作ることができる。
図2はスクリーン印刷機の概略斜視図、図3はスクリーン印刷工程の説明図である。スクリーン印刷は、スクリーン42の4方の周を版枠41に緊張固定し、その上に手工的方法や光学的方法で版膜を作成する。スクリーン42は、素材としては主にナイロン、テトロン、ステンレス等を用いた網目状の織物である。そして、浅い箱船状になった版枠41内にスクリーン印刷用インキ43を入れ、スキージ44と称する厚みのあるヘラ状のゴムで、版上面(スクリーン上面)を加圧しながらこする。これにより、インキ43は版膜の部分よりスクリーン42面を通して、版下面に置かれた被印刷体Aの表面上に押し出され、印刷が行われる。
この印刷の大きな特徴として、版枠41を交換することでそのスクリーン42のメッシュを変更できるし、また、塗工膜の厚さ及び表面性に関してもスクリーン42の材質やスキージ44の硬度と角度、また版枠41と被印刷体Aの表面との距離46で管理できる。
まず、図3の(a)のように、版枠41の中に印刷インキ43を入れ、スキージ44の硬度と角度と加圧力を調整する。そして、(b)のように、版枠41が下がるとスキージ44が動き、(c)のように、インク43がスクリーン42を通して被印刷体Aの表面に塗工される。(d)において、再び版枠41が上に上がり印刷が完成する。そのとき残ったインク43はインキ返し(スクレーバ)45と呼ばれる所に溜められ、次の印刷の際、同じ行程を繰り返す。
多層塗りに関しても、一枚ずつ同じ行程の印刷を行い、乾燥してからまた同様な行程で次の層の塗工を行う。
このような方法を用いることで、記録シートPのベース紙Aを被印刷体にし、熱可塑性透明樹脂をスクリーン印刷用インキにして、ベース紙表面に熱可塑性透明樹脂による受容層Bを部分的又は規則的に点在させた形態で塗工して形成具備させることができる。
受容層Bを構成させる熱可塑性透明樹脂としては、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル樹脂等を用いることができる。特に、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分と多価カルボン酸成分としては、下記のものが例示される。
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAにオレフィンオキサイドを付加したモノマー等を用いることができる。
多価カルボン酸成分としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ドデシルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの酸の低級アルキルエステル等を用いることができる。
ポリエステル樹脂は、上記多価アルコール成分の1種以上と多価カルボン酸成分の1種以上との重合により合成される。
また、トナーの樹脂成分としては、カラートナーではポリエステル樹脂が用いられ、モノクロトナーでは、スチレン−アクリル樹脂が主に用いられている。このことから、受容層Bを構成させる熱可塑性樹脂としては、トナーとの相溶性の高いものを選ぶことが好ましい。
したがって、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル樹脂等の中から目的に応じて1種或いは2種以上の混合物が使用される。
さらに、受容層Bとしての透明樹脂層には、その透明性を阻害しない範囲内で、顔料、離型剤、導電剤等を含有させることができる。その場合、樹脂層全重量に対し、主成分の樹脂量は80重量以上であることが好ましい。さらに受容層Bとしての透明樹脂層は、温度20℃、相対湿度85において、その表面電気抵抗が8.0×108Ω以上になるようにその組成を調整されたものが好ましい。
記録シートPの製法は上記のような製法に限定されるものではない。表面が定着温度付近で溶ける溶融特性をもつ熱可塑性樹脂層が設けられたコート紙であれば、必ずしも多層構成にする必要はなく、顔料などの様々な添加物を加えてもよいことは言うまでもない。
次に、受容層Bを構成する樹脂の定着温度付近での溶融特性について説明する。
溶融特性については、プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−回転粘度計による定せん断速度での粘度の測定方法(JIS K 7117−2)を用いて粘弾特性を測定することによって調べることができる。
定着温度付近で表層が溶ける樹脂をもつコート紙の表面について、このような測定を行うと、好ましい貯蔵弾性率は150℃において、1x107 Pa・s以下である。より好ましい貯蔵弾性率は150℃において、1x106 Pa・s以下であると考えられる。
しかしながら、コート紙の表面が多層構成になると、このような粘弾性測定が出来ない場合が多い。
つまり、最表層は、貯蔵弾性率が150℃にて1x107 Pa・sの樹脂を1〜5μm塗工して、その下に、貯蔵弾性率が150℃にて1x103 Pa・sの樹脂を10〜50μm塗工した場合でも、光沢度の変化やトナーを埋め込むといった効果は得られる。しかし、複数層全体として機能するために、単一樹脂の貯蔵弾性率の組み合わせや、複数の樹脂を混ぜ合わせた樹脂の貯蔵弾性率では、光沢度の変化やトナーを埋め込むといった効果について表すことが難しい。
また、通常のコート紙の最表層樹脂についてこのような粘弾性測定が可能となる量を集めることは非常に困難である。
そこで、本実施例では、下記のようなコート紙(溶融特性)の判別方法を用いる。即ち、表層が溶けない通常のコート紙と、定着温度付近で表層が溶ける樹脂層をもつコート紙の判別方法について説明する。
まず、定着装置にコート紙を突入させ、そして定着ニップ内にコート紙を5秒間留まらせることで充分に加熱し、その後取り出す。このとき記録材表面の状態(樹脂が溶けているか否か)を確認することによって、コート紙の判別を行う。
具体的には、このような測定を行うと、定着温度で溶ける樹脂を用いたコート紙では、紙表面の樹脂が溶けて定着ニップから押出されるために定着ニップの跡が段差として残ることになる。したがって、この段差の有無で判別することができる。この段差は、進行方向上流に樹脂がはみ出すために、上流で樹脂が盛り上がり、ニップ中で薄くなり、ニップ通過後の下流では、ニップ下流に溶け出した樹脂が潰されるため、少し滑らかな段差になる。この段差の高さは、樹脂層の厚みにもよるが、1〜10μm程度の段差がつく。
一方、定着温度付近で溶けることのない顔料塗工層を用いたコート紙では、段差はほとんどなくニップ中で加圧されたことによるなだらかな凹凸となる。また、加熱によって変色が見られることもある。
以上説明したような方法で、コート紙の溶融特性の判別が可能であるが、次のような方法でも構わない。例えば、定着温度付近(例えば180°程度)に加熱したある重さの金属棒をコート紙上に一定時間置いた後、持ち上げる。金属棒が置かれたコート紙の位置に金属棒の跡があるか否かを観察することにより判別する。
そのような記録材の中でも本実施例で用いた記録シートPは、ベース紙(基材)Aとしての坪量170g/m2のコート紙の片面に、受容層Bとしてポリエステル(熱可塑性樹脂)を主成分とした透明樹脂層を20μmの厚さで設けたものである。
受容層Bとして用いたポリエステル樹脂単体で試験片を作り、熱膨張率を測定したところ、7×10−5/℃であった。
本実施例においては上述した記録シートPに、以下のような画像形成装置及び定着装置を用いて画像形成をおこなった。その画像形成装置と定着装置を説明する。
(2)画像形成装置
図4は本発明に係る好適な画像形成システムの一例の概略構成を示す模式図である。
この画像形成システムを構成する画像形成装置は、電子写真プロセスを用いた、4色フルカラーのレーザプリンタである。この画像形成装置は、上述した電子写真用受像シートとしての記録シートPや通常の用紙などに画像形成を行うことができる。101はプリンタ本体である。102はこのプリンタ本体101の上面側に配設したリーダ機構である。103はプリンタ本体101の図面上右側面側に連設した大容量給紙装置である。以下、記録シートPに画像形成を行う例について説明する。
次に、記録シートPに未定着トナー像を形成する画像形成手段としての各種画像形成機器について説明する。
プリンタ本体101内において、Pa・Pb・Pc・Pdは、図面上右から左に水平方向に並べて配設(インライン構成、タンデム型)した、第1から第4の4つの画像形成部である。104は第1から第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdの上側に配設した、複数の光走査手段を有するレーザ走査機構(レーザスキャナ)である。105は第1から第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdの下側に配設した転写ベルト機構である。106は転写ベルト機構105よりも記録材搬送方向下流側に配設した定着装置である。107と108は転写ベルト機構105よりも下側に上下2段に配設した第1と第2の2つの給紙カセットである。109はプリンタ本体101の図面上右側面側に配設した手差し給紙トレイである。この手差し給紙トレイ109はプリンタ本体101に対して実線示のように畳み込んで格納自在である。使用時は2点鎖線示のように開き状態にする。
リーダ機構102はフルカラー原稿の画像情報をCCD等の光電変換素子(固体撮像素子)で色分解読取り処理する。
レーザ走査機構104はリーダ機構102からの各色分解読取り画像情報に対応して変調したレーザ光を第1から第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdに対してそれぞれ出力する。
図5は第1から第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pd部分と転写ベルト機構105部分の拡大図である。第1から第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdは互いに同様の構成である。すなわち、それぞれ、像担持体としての電子写真感光体ドラム(以下、ドラムと記す)1を有する。そして、このドラム1に作用するプロセス手段である、全面露光ランプ(除電ランプ)2、一次帯電器3、現像器4、転写帯電器5、クリーナ6等が設けられている。第1から第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdの現像器4にはそれぞれ供給装置により、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが所定量充填されている。
転写ベルト機構105は、エンドレスの転写ベルト7と、この転写ベルト7を懸回張設した駆動ローラ7aとターンローラ7b・7cを有する。駆動ローラ7aが駆動モータMによりタイミングベルト装置等の動力伝達装置を介して回転駆動されることにより転写ベルト7が矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。転写ベルト7は、ポリエチレンテレフタレート樹脂シート(PET樹脂シート)や、ポリフッ化ビニリデン樹脂シート、ポリウレタン樹脂シートなどの誘電体樹脂のシートによって構成されている。そのシートの両端部を互いに重ね合わせて接合し、エンドレス形状にしたものか、あるいは継ぎ目を有しないシームレスベルトが用いられている。
フルカラー画像を形成するための動作は次の通りである。第1から第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdが画像形成のタイミングに合わせて順次駆動する。その駆動に応じて各ドラム1が矢印の時計方向に回転する。また転写ベルト機構105の転写ベルト7も回転駆動される。レーザ走査機構104も駆動される。この駆動に同期して一次帯電器3がドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。レーザ走査機構104は各ドラム1の表面に画像信号に応じたレーザビーム走査露光Lを行なう。これによって各ドラム1の表面に画像信号に応じた静電潜像が形成される。すなわちレーザ走査機構104は光源装置から発せられたレーザ光を、ポリゴンミラー8を回転させて走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズによりドラム1の母線上に集光して露光する。これにより、感光ドラム上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器4によりトナー像として現像される。
上記のような電子写真画像形成プロセス動作により、第1の画像形成部Paのドラム1の周面にはフルカラー画像のイエロー成分像に対応したイエロートナー像が形成される。第2の画像形成部Pbのドラム1の周面にはフルカラー画像のマゼンタ成分像に対応したマゼンタトナー像が形成される。第3の画像形成部Pcのドラム1の周面にはフルカラー画像のシアン成分像に対応したシアントナー像が形成される。第4の画像形成部Pdのドラム1の周面にはフルカラー画像のブラック成分像に対応したブラックトナー像が形成される。
一方、大容量給紙装置103、第1の給紙カセット107、第2の給紙カセット108、手差し給紙トレイ109、の内で選択指定された給紙部の給紙ローラが駆動される。これにより、その給紙部に積載収納されている記録シートPが1枚分離給紙される。そして、複数の搬送ローラ、及びレジストローラ9を経て転写ベルト機構105の転写ベルト7上に供給される。転写ベルト7上に供給された記録シートPは転写ベルト7による搬送で第1〜第4の各画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdの転写部に順次に送られる。
すなわち、転写ベルト機構105の転写ベルト7が駆動ローラ7aによって回転駆動されて、所定の位置にあることが確認されると、記録シートPは、レジストローラ9から転写ベルト7に送り出され、第1の画像形成部Paの転写部へ向けて搬送される。これと同時に画像書き出し信号がオンとなり、それを基準としてあるタイミングで第1の画像形成部Paのドラム1に対し画像形成を行う。そしてドラム1の下側の転写部で転写帯電器5が電界又は電荷を付与することにより、ドラム1上に形成された第1色目のイエロートナー像が記録シートP上に転写される。この転写により記録シートPは転写ベルト7上に静電吸着力でしっかりと保持され、引き続いて第2〜第4の画像形成部Pb・Pc・Pdの転写部へ順次に搬送される。そして、各画像形成部の各感光ドラム上に形成された、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像の順次重畳転写を受ける。これにより記録シートP上に4色フルカラーの未定着のトナー像が合成形成される。
4色フルカラーのトナー像が合成形成された記録シートPは、転写ベルト7の搬送方向下流部で分離帯電器10により除電されて静電吸着力が減衰させることによって、転写ベルト7の末端から離脱する。特に、低湿環境では記録シートPが乾燥して電気抵抗が高くなるため、転写ベルト7との静電吸着力が大きくなり、分離帯電器10の効果は大きくなる。通常、分離帯電器10は、トナー像未定着の状態で記録シートPに帯電するため、非接触帯電器が用いられる。
転写ベルト7から剥離された記録シートPは定着装置106へ搬送され、該定着装置106で加熱・加圧されて各色トナー像の混色及び記録シートPへの固定(定着)が行われ、フルカラー画像形成物となる。
片面画像形成モードが選択されている場合には、定着装置106を出た記録シートPは、第1姿勢に保持されているセレクタ11の上側を通り、排紙ローラ12により排紙口13から機外の排紙トレイ110上に排紙される。
両面画像形成モードが選択されている場合には、定着装置106を出た1面目定着済みの記録シートPは、第2姿勢に切換えられたセレクタ11によって反転再給紙機構111側に進路変更される。そしてこの反転再給紙機構111の反転部(スイッチバック機構)14で表裏反転され、両面搬送パス15に送られ、中間トレイ16に一旦収納される。
中間トレイ16に収納された記録シートPは所定の制御タイミングで駆動された給紙ローラにより中間トレイ16からレジストローラ9に向けて送り出される。そして、レジストローラ9から再度、転写ベルト機構105の転写ベルト7上に2面目が上向きの状態で給紙される。これにより、記録シートPの1面目に対する画像形成の場合と同様に、第1〜第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdにより2面目に対する4色フルカラーのトナー像の合成形成が実行される。
2面目に対するトナー像形成を受けた記録シートPは転写ベルト7から分離されて定着装置106へ搬送される。そして、該定着装置106で2面目に対するトナー像の定着処理を受け、第1姿勢に切換えられたセレクタ11の上側を通り、排紙ローラ12により排紙口13から機外の排紙トレイ110上に両面画像形成物として排紙される。
モノクロ画像形成物あるいは単色画像形成物の出力も可能である。この場合は、その画像形成モードを選択すると、第1〜第4の画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdのうち選択された画像形成モードに対応した画像形成部だけが画像形成動作し、他の画像形成部は感光ドラムの回転駆動はなされるけれども画像形成動作はなされない。そして、画像形成動作した画像形成部の転写部において、転写ベルト機構105で搬送される記録シートPにトナー像を転写するシーケンスが実行される。
(3)定着装置106
次に、平滑化装置としての定着装置について説明する。なお、平滑化装置としては後述するベルト定着器に限らず、トナー受容層が設けられた記録シートの平滑化処理を施すことができるのであれば他の構成であっても構わない。
図6に定着装置106の拡大模型図を示す。本実施例における定着装置106は、定着ベルトを備えた冷却分離系のベルト定着器である。
このベルト定着器106は、第一定着ローラ51と、この第一定着ローラ51から所定間隔を保ち配設された分離ローラとしての回転ローラ53と、この回転ローラ53の上側に配設されたテンションローラとしての回転ローラ54と、を有する。この3本のローラ51・53・54間にエンドレス(無端状)の定着ベルト57(光沢ベルト)を懸回張設してある。この定着ベルト57を挟み第一定着ローラ51に対峙して圧接される加圧ローラとしての第二定着ローラ52(ニップ形成部材)を有する。
以下、上記の第一定着ローラ51を定着ローラ51と記す。回転ローラ53を分離ローラ53と記す。回転ローラ54をテンションローラ54と記す。第二定着ローラ52を加圧ローラ52と記す。
そして、定着ローラ51と分離ローラ53との間の定着ベルト部分において、分離ローラ53寄りの位置で定着ベルト外面に当接させて配設された補助ローラ55を有する。また、定着ベルト57の内側で、定着ローラ51と分離ローラ53との間に配設され、定着ローラ51と分離ローラ53との間の定着ベルト部分を空冷する冷却ファン56を有する。上記の定着ローラ51、加圧ローラ52、分離ローラ53、テンションローラ54、補助ローラ55は互いに実質的に並行に配列されている。
定着ローラ51は同心円状に3層構造を採用しており、コア部分、弾性層、離型層を有している。コア部分は直径44mm、厚さ5mmのアルミニウム製中空パイプにより構成される。弾性層はJIS−A硬度50度、厚さ300μmのシリコーンゴムにより構成される。離型層は厚さ50μmのPFAにより構成される。コア部分の中空パイプ内部には、熱源(ローラ加熱ヒータ)としてのハロゲンランプ58が配設されている。
加圧ローラ52も同様の構成を採用している。弾性層は厚さ3mmのシリコーンゴムを用いる。これは弾性層により定着ニップを稼ぐためである。59は加圧ローラ52のコア部分の中空パイプ内部に配設した熱源(ローラ加熱ヒータ)としてのハロゲンランプである。
定着ローラ51と加圧ローラ52は定着ベルト57を挟ませて所定の押圧力で圧接させて記録材搬送方向において所定幅の加熱・加圧部としての定着ニップ部Nを形成させている。加圧ローラ52の加圧力は、総圧で490N(50kgf)とした。このときの定着ニップ部Nの幅は5mmであった。
ここで、定着ローラ51の表面硬度は、定着ベルト57に合わせて選ぶ必要がある。定着ローラ51の表面硬度が軟らかいと定着ベルト57が撓んでしまい、トナーを記録材の受容層の中に十分に押し込めずトナー段差が残ったままになってしまう。定着ベルト57の硬度が柔らかい場合は、定着ローラ51の硬度は十分硬くするために、弾性層を薄くしたり、無くしてPFAの表層のみとしたり、さらには、アルミニウムのコアのみで用いたりしてもよい。
定着ベルト57の表面の材質はシリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂等からなり、高光沢な鏡面状になっている。具体的には、定着ベルト57は、トナー受容層が点在するように形成された記録シートPの画像面と密着しながら加熱することにより、その高光沢な表面性を記録シートPの画像面に転移させる機能を担っている。従って、本例では光沢度(60°)が60以上100以下である定着ベルト57を用いている。なお、ベルトの光沢度は、画像形成装置において求められている画像の光沢度にあわせて任意に選択することができる。また、ベルトの光沢度は、日本電色工業(株)製のハンディ型光沢計(PG−1M)を用いて、入射角と受光角がともに60°の際の光沢度を測定した(JIS Z 8741に準拠)。本例では、光沢度が90の定着ベルトを用いている。
定着ローラ51は不図示の駆動機構により矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。この定着ローラ51の回転駆動により定着ベルト57が矢印の時計方向に回動状態になる。分離ローラ53・テンションローラ54・加圧ローラ52・補助ローラ55は定着ベルト57の回転に伴い従動回転する。テンションローラ54は定着ベルト57に所定の張力を与えている。
定着ローラ51と加圧ローラ52のそれぞれ内部に配設されるハロゲンランプ58・59に電力が供給され、ハロゲンランプ58・59の発熱により定着ローラ51と加圧ローラ52が内部加熱されて表面温度が上昇する。定着ローラ51と加圧ローラ52の表面温度はそれぞれ不図示のサーミスタによって検知され、それらのサーミスタの検知温度が不図示の制御回路にフィードバックされる。制御回路は各サーミスタから入力する検知温度が定着ローラ51と加圧ローラ52とにそれぞれ設定した所定の温度に維持されるようにハロゲンランプ58・59に供給する電力を制御する。すなわち、定着ローラ51と加圧ローラ52を所定の温度に温調管理して定着ニップ部Nの温度を所定の定着温度に温度管理する。
転写ベルト機構105側からベルト定着器106側に送られた、表面に未定着トナー像を有する記録シートPは定着ニップ部Nの定着ベルト57と加圧ローラ52との間に導入されて定着ニップ部Nを挟持搬送される。記録シートPの未定着トナー像面が定着ベルト57の表面に対面する。記録シートPは定着ニップ部Nを挟持搬送されていく過程で加熱・加圧されて各色トナー像の混色及び記録シートPへの固定(定着)が行われる。同時に、記録シートPは定着ベルト57の表面に密着する。その後、記録シートPは定着ベルト57に密着した状態で定着ベルト57の回転と共に、定着ニップ部Nと分離ローラ53との間である冷却領域(冷却部)Rを搬送される。この冷却領域Rにおいて、定着ベルト57と記録シートPは冷却手段としての冷却ファン56及びそれを囲むエアダクト56a内を流れるエアフローの作用により強制的に効率よく冷却される。冷却ファン56によって紙面に直交するエアフローが生じている。本例では、トナーやトナー受容層がベルトにオフセットしてしまうのを防止するため、冷却ファンにより記録シートをトナー(トナー受容層)のガラス転移温度(50℃)程度にまで冷却する構成としている。
このように定着ベルト57の表面に密着状態の記録シートPは、冷却領域Rで定着ベルト57とともに十分に冷却される。そして、分離ローラ53の位置へ至り、分離ローラ53により定着ベルト57の曲率が変化する領域で定着ベルト57の表面から自らの剛性(こし)により剥離(曲率分離)される。即ち、記録材シートPは定着ベルト57に密着したまま移動して定着ベルト57からの分離前に冷却される。
補助ローラ55は、定着ローラ51から分離ローラ53にいたる定着ベルト冷却領域Rの途中において記録材Pが定着ベルト57の表面から剥がれて、画像が乱れたり、搬送できなくなったりすることを防止する。
冷却手段56は、ファンに限らず、接触型の冷却方式でも可能なのは言うまでもない。ペルチェ素子、ヒートパイプ、水の循環型冷却装置を用いても良い。
(4)光沢画像形成物
光沢画像形成物を出力する場合には、記録シートPとして、表面に樹脂からなるトナー受容層Bを持つシートを用いる。この場合には、該記録シートPが定着ニップ部Nを挟持搬送される過程における定着ベルト57による加熱により、未定着トナー像のトナーが加熱軟化すると共に受容層Bも加熱軟化する。さらに、定着ニップ部Nの圧力が加わることにより、加熱軟化したトナーが加熱軟化した受容層B中に埋没される。同時に、記録シートPは定着ベルト57の表面に密着される。その後、記録シートPは定着ベルト57に密着した状態で定着ベルト57の回転と共に冷却領域Rを搬送されて強制的に効率よく十分に冷却される。そして、分離ローラ53により定着ベルト57の曲率が変化する領域で定着ベルト57の表面から曲率分離する。
冷却部の温度はトナー樹脂のガラス転移温度Tgより小さく設定することが好ましい。この理由としては、ガラス転移温度Tgより低い温度にまで冷却されていない場合、トナー樹脂の表面は充分に固化していない。そのため、記録シート分離時にトナー樹脂が定着ベルト57の表面に部分的に付着してトナー像表面の平滑性を損なう場合があるからである。このような場合においては、記録シート分離後のトナー表面の平滑性が不十分となり、本来高光沢を得たい箇所においても十分に高光沢を得ることができなくなってしまう。また、更には、トナー樹脂が充分に固化していないため、定着ベルト57とトナー樹脂と付着力が大きく、記録シートの定着ベルト面からの分離不良が発生する場合もある。
さて、ここで、本実施例において、図1のように、受容層Bがベース紙(基材)Aの面に対して点在している形態で形成されている記録シートPを用いて画像形成をおこなった場合の画像の説明を図7の断面模式図を用いて説明する。なお、図7は、概念図である。つまり、実際には、形成すべき画像(再現画像)に応じて記録シートPにトナー像が形成されているので、特殊な画像を除き、記録シートPの部位に応じてトナーの載り量が異なっていることが多い。
この記録シートPの低光沢なベース紙Aは坪量170g/m2のコート紙である。受容層Bは、このベース紙Aの片面(コート層側)に、前述したシルクスクリーン印刷を用いて、ポリエステル(熱可塑性樹脂)を主成分とした透明樹脂層を20μmの厚さで、長方形の同一模様で規則的配列にて点在させて塗工して形成してある。なお、本例では、使用するトナーもポリエステルを主成分とした樹脂粉体とされている。
図7の(a)は、上記の記録シートPの上に未定着のトナー像Tが載っている定着前状態の模式図である。(b)はこの記録シートPを前述したベルト定着器106を用いて定着を行った定着後状態の模式図である。
(b)において、Cは記録シートPの受容層Bが塗工されていない箇所に対応したトナー像部分の定着後形状を模式的あらわしており、Dは記録シートPの受容層Bが塗工されている箇所に対応したトナー像部分の定着後形状を模式的あらわしている。
トナー像を受容層Bに埋め込んだ状態で定着させた受容層Bと定着トナー像部分Dは、共に鏡面状のベルト表面形状にならって凝固して平滑な面となるので、光沢性に優れた画像部分となる。また、トナー像の無い受容層Bも鏡面状のベルト表面形状にならって凝固して光沢性に優れた平滑な面となる。
一方、記録シートPの受容層Bが塗工されていない箇所に対応した定着トナー像部分Cの表面は、ベース紙の表面性とトナーの載り量に応じて平滑な面とはならないため、充分な光沢を得ることができない。また、記録シートPの受容層Bが塗工されていない箇所でトナー像の無い部分もベース紙の表面性(低光沢度)が反映されて充分な光沢を得ることができない。
すなわち、記録シートPの受容層Bが有る部分は、トナー像が有るところも無いところも高光沢部分となり、受容層Bが無い部分は、トナー像が有るところも無いところも低光沢部分となる。これにより、光沢不均一画像を得ることができ、高光沢画像を部分的、又は規則的に点在させた形態の、アート性に優れた画像を提供することができる。
具体的に、図1の記録シートPを用い、図4の画像形成装置で画像形成を行った。ベルト定着器106は図6で説明したものを用い、設定は、定着温度150℃、定着速度50mm/sec、加圧力50kg、分離ローラ53上の定着ベルト57の表面温度がトナー樹脂のガラス転移点Tgより低い温度の50℃となるように冷却手段56の出力を調整した。
ここで、ガラス転移温度が40〜80℃であるトナー受容層の平滑化処理(定着処理)を良好に行うための平滑化条件(定着条件)としては後述の定着温度、定着速度、加圧力の少なくとも1つが含まれる。
定着温度(加熱温度:定着ローラ51の目標温度)としてはトナーの軟化点温度近傍の100℃以上であって、紙ブリスター発生温度近傍の170℃以下の範囲(100℃以上170℃以下)に設定することが好ましい。なお、紙ブリスターとは、ベース紙内の水分が過剰に熱せられることにより水蒸気となり、これがトナー受容層を突き破って外に排出される現象のことを言う。
また、定着速度(シート搬送速度:記録シートPの搬送速度)としては25mm/sec以上であって75mm/sec以下の範囲(25mm/sec以上75mm/sec以下)に設定するのが好ましい。また、加圧力(ベルト57と加圧ローラ52間の圧力)としては25kg(245N)以上75kg(735N)以下の範囲(245N以上735N以下)に設定するのが好ましい。
そして、出力された画像定着済みの記録シートの、受容層Bが塗工されている箇所に対応した定着トナー像部分Dのトナー表面のベタ画像光沢と、受容層Bが塗工されていない箇所に対応した定着トナー像部分Cのトナー表面のベタ画像光沢をそれぞれ測定した。この光沢測定は、日本電色工業(株)製の光沢計PG−1Mを用いて、入射角60°・受光角60°の光沢(測定角60°における光沢値)を測定した。測定に用いる画像条件は2色のトナーを記録シートPの全面に一様に、各色0.6mg/cm2ずつ合計1.2mg/cm2の量で画像形成を行った箇所を測定した。所謂、ベタ画像を記録シートPの全面に一様に形成した。
受容層Bが塗工されている箇所に対応した定着トナー像部分Dの光沢値G1は90であり、高光沢が得られたのに対して、受容層Bが塗工されていない箇所に対応した定着トナー像部分の光沢値G2は50であり、低光沢となった。
このときの記録シートの光沢度を図8に示す。図8は図1の記録シートPのXのラインに沿って測定角60°の光沢度を測定したものである。これを見ると、受容層Bが塗工されている箇所は、光沢値G1が90の高光沢値が得られた。また、受容層Bが塗工されていない箇所は、光沢値G2が50の低光沢値が得られ、受容層Bが塗工されている箇所は規則的に高光沢画像を得ることができた。つまり、上述のトナー受容層が点在して設けられた記録シートPに対し上述の平滑化装置(定着装置)にて平滑化処理(定着処理)を施すことにより、形成されるトナー画像に依らず、光沢度が20以上異なる高光沢部と低光沢部が混在した出力物を得ることができる。
このように、本例の構成であれば、形成されるトナー画像がどのようなものであっても、1枚の記録シートPに対し、高光沢部と低光沢部とで光沢度が少なくとも20以上異なる画像を形成することができる。
この低光沢面の定着トナー像部分Cに高光沢面の定着トナー像部分Dが任意の模様で均一あるいは不均一の配列分布で点在することで、人の視線に対して記録シートPの角度をかえると高光沢の定着トナー像部分Dが部分的に浮かび上がって認識される。つまり、新規な画像形成物を提供することが可能となる。
低光沢値G2の画像部分C中に高光沢値G1の画像部分Dが点在することは、画像光沢のコントラストが大きい為、人間の視覚にはその差が際立って認識されることになる。このような画像は、記録シートPの全面を高光沢にする従来の構成と異なり、デザイン性、アート性の高い特殊な画像ということができる。
高光沢の画像部分Dと低光沢画像部分Cとのコントラストの差(光沢値G1とG2との差)が、人間の視覚特性の観点から、少なくとも20以上となるように構成するのが好ましい。なお、高光沢部の認識性をより高めるには光沢度のコントラストが40以上となるように構成するのが好ましい。すなわち、記録シートPの受容層Bが有る箇所のベルトからの分離後の測定角60°における光沢値G1と、受像層が無い箇所のベルトからの分離後の測定角60°の光沢値G2との関係が、G1―G2≧20(トナー受容層に形成されたトナー画像の光沢度が基材に形成されたトナー画像の光沢度よりも20以上高くなる)、であることが望ましい。これにより、高光沢と低光沢とのコントラスト差が大きくなり、デザイン性、アート性に優れた画像を提供することができる。
記録シートPの表面に具備させる受容層Bの模様形態は任意である。シルクスクリーン印刷の版膜の模様を所望に変えることで、例えば図9や図10のような、他の所望の模様にすることが可能である。受容層Bは、図1・図9・図10のように、同一模様で規則的配列にて形成具備させても、不均一配列にて形成具備させても、部分的に形成具備させても、異なる模様の受容層Bを混在させてもよい。
本発明を用いることにより、記録シート中に光沢の異なる任意の画像を形成することが可能となる為、画像形成後の出力物として従来と異なる新たな特性や商品性を提供することができる。
なお、本実施例における記録シートPの材料や厚さ、定着条件は必ずしも例示した値に限るものではなく、この条件に応じて得られる光沢の値も異なってくるのは言うまでも無い。
次に、受容層にエンボス加工を行った構成について説明する。
本実施例の記録シートPは、図11の(a)の模式図に示すように、ベース紙(基材)Aの表面に樹脂からなるトナー受容層Bを全面的に塗工した後に、(b)の模式図に示すように、エンボス加工を施した形態のシートである。
このようにすることで、記録シートPの受容層Bには、凹のエンボス箇所Eと、凸のエンボス箇所Gとが点在して形成されることになる。
このエンボス加工を施した形態の記録シートPを用いて画像形成を行った。
図12の(a)は、上記の記録シートPの上に未定着のトナー像Tが載っている定着前状態の模式図である。凸のエンボス箇所Gにも、凹のエンボス箇所Eにも、エンボス受容層Bの上に未定着のトナー像Tが形成される。
(b)はこの記録シートPを前述したベルト定着器106を用いて定着を行った定着後状態の模式図である。Jは受容層Bの凸のエンボス箇所Gに対応したトナー像部分の定着後形状を模式的あらわしており、Kは受容層Bの凹のエンボス箇所Eに対応したトナー像部分の定着後形状を模式的あらわしている。
凸のエンボス箇所Gに形成されたトナー像部分は、定着ベルト57に密着して定着と冷却が行われるため、充分に溶融して受容層B中に埋め込まれる。トナー像を受容層Bに埋め込んだ状態で定着させた受容層Bと定着トナー像部分Jは、共に鏡面状のベルト表面形状にならって凝固して平滑な面となるので、光沢性に優れた画像部分となる。また、トナー像の無い凸のエンボス箇所Gも鏡面状のベルト表面形状にならって凝固して光沢性に優れた平滑な面となる。
それに対して、凹のエンボス箇所Eに形成されたトナー像部分は定着ベルト57との密着が不十分となってしまう。すると、凹のエンボス箇所Eのトナーには定着ベルト57から充分な熱供給が行われないため充分に溶融することができない。また定着ベルト57の表面性をトナー像表面に転写することも十分にできない。その結果、凹のエンボス箇所Eにおいては、受容層B中にトナー像は十分には埋め込まれず、且つその定着トナー像表面は荒れて低光沢となってしまう。凹のエンボス箇所Eでトナー像の無い部分も十分な光沢を得ることができず、低光沢部分となる。
これによって、受容層Bの凹凸エンボスの形状に応じて、記録シートP上の定着トナー像に高光沢の画像部分と低光沢の画像部分が点在することになる。
したがって、高光沢画像を部分的、又は規則的に点在させることができ、デザイン性、アート性に優れた画像を提供することができる。
エンボスの凹凸の深さは、記録シートの坪量にもよるが、凸部に対して、凹部の深さが約50μmより大きくなると、定着トナー像に高光沢の画像部分と低光沢の画像部分が点在する傾向が現れ、100μmを超えると顕著になる。従って、凸部に対する凹部の深さ(平均値)は、50μm以上500μm以下に設定するのが好ましい。
また、凹部の幅は小さいほど定着ベルト57が追従できなくなるが、約5mmより小さくなると凹部全体が低光沢となる。凹部の幅が大きくなると凹部の底の中央部分には定着ベルト57が接触する場合があるが、凹部の底の端部分には追従することができない。そのため幅が約5mmより大きくなると、凹部の底の中央部は若干光沢が出るが、凹部の底の端部分は低光沢をなる為、凸部との光沢差が発生する。従って、凹部の幅が大きい場合でも、凸部との光沢差は発生する。従って、凹部の幅は、1mm以上5mm以下に設定するのが好ましい。
以上より、凸凹による光沢差の発生要因は、凹部の深さの影響が大きいといえる。また定着ベルト57の表層材料の硬度が硬いほど、凸凹部への追従性が低下する為、光沢差が大きくなる傾向となる。
実際に、凸のエンボス部分Gと、凸部に対して100μmの深さの凹のエンボス部分Eに形成された定着後のトナー面の光沢を同様に測定した。
その結果、凸のエンボス部分Gでは同様に90の光沢値の定着後トナー面が得られ、凹のエンボス部分Eでは60〜70の光沢値の定着後トナー面が得られた。
図13に凹凸部の光沢値の結果を示す。エンボスの形状に応じて凸部は高光沢値が得られ、凹部は低光沢値が得られた。
本実施例において、人の視線に対して記録シートPの角度をかえると、高光沢画像部分Jが部分的に浮かび上がり、従来の画像とは異なり、デザイン性、アート性の高い新規な画像を得ることができた。
記録シートPのエンボス凸部個所のベルトからの分離後の測定角60°における光沢値G3と、エンボス凹部箇所のベルトからの分離後の測定角60°の光沢値G4との関係が、G3―G4≧20(トナー受容層の凸部に形成されたトナー画像の光沢度が凹部に形成されたトナー画像の光沢度よりも20以上高くなる)、であることが望ましい。これにより、高光沢と低光沢とのコントラスト差が大きくなり、アート性に優れた画像を提供することができる。
更に、本実施例においては、光沢の箇所に対応して記録シートの表面も凹凸状になっているため、視覚に加えて触覚においても新たな価値を付加することが可能となる。
本発明を用いることにより、記録シート中に光沢及び形状の異なる任意の画像を形成することが可能となる為、画像形成後の出力物として従来と異なる新たな特性や商品性を提供することができる。
エンボス加工を施した形態の記録シートPは、記録材基材の面に対してトナー受容層を点在させた形態で形成した後、表面にエンボス加工を施した形態のシートであっても良い。
以上の実施例では、未定着トナー像を定着する定着装置が平滑化装置としての機能を併せ持つ構成とされているが、このような構成だけに限られない。例えば、記録シート上の未定着トナー像を仮定着する仮定着器を画像形成装置内に設置すると共に、上述した平滑化装置を画像形成装置に着脱自在なオプションユニットとして別途用意する構成としても構わない。つまり、この場合、オプションユニットが画像形成システムの構成要素となる。なお、上述した仮定着器は通常の用紙に対しては定着器としての機能を発揮するように構成されている。