JP5626654B2 - 非水電解質電池、及び非水電解質電池の製造方法 - Google Patents

非水電解質電池、及び非水電解質電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、正極活物質層及び正極側固体電解質層を備えた正極体と、負極活物質層及び負極側固体電解質層を備えた負極体と、をそれぞれ別個に作製し、後工程において両電極体を重ね合わせる非水電解質電池の製造方法、及びその製造方法で得られた非水電解質電池に関するものである。
充放電を繰り返すことを前提とした電源として、正極層と負極層とこれら電極層の間に配される電解質層とを備える非水電解質電池が利用されている。この電池に備わる電極層はさらに、集電機能を有する集電体と、活物質を含む活物質層とを備える。このような非水電解質電池のなかでも特に、正・負極層間のLiイオンの移動により充放電を行う非水電解質電池は、小型でありながら高い放電容量を備える。
上記非水電解質電池を作製する技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。この特許文献1では、非水電解質電池の作製にあたり、正極集電体上に粉末成形体の正極活物質層を備える正極体と、負極集電体上に粉末成形体の負極活物質層を備える負極体と、を別個に作製している。これら電極体はそれぞれ固体電解質層を備えており、これら正極体と負極体とを重ね合わせることで非水電解質電池を作製している。その重ね合わせの際、特許文献1の技術では、両電極体に備わる固体電解質層同士を950MPaを超える高圧で圧接している。
特開2008−103289号公報
しかし、特許文献1の非水電解質電池では、以下に示すような問題点がある。
第一に、両電極体を高圧で圧接するため、各電極体に割れなどが生じる恐れがある。特に、粉末成形体からなる活物質層が割れ易く、割れてしまうと非水電解質電池の性能が著しく低下する恐れがある。
第二に、特許文献1の非水電解質電池の固体電解質層は、正極側固体電解質層と負極側固体電解質層とを圧接することで形成されるため、その正極側固体電解質層と負極側固体電解質層との間に接合界面が形成される。その接合界面は高抵抗となり易いため、非水電解質電池の放電容量や放電出力が理論値よりも大幅に低下する恐れがある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、個別に作製した2つの電極体を貼り合せても、両電極体の接合界面に高抵抗層が形成されない非水電解質電池の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記製造方法により得られる非水電解質電池を提供することにある。
(1)本発明非水電解質電池の製造方法は、正極活物質層、負極活物質層、及びこれら活物質層の間に配される硫化物固体電解質層を備える非水電解質電池を製造する非水電解質電池の製造方法であって、準備工程と、接合工程とを備える。準備工程では、粉末成形体からなる正極活物質層、及びその正極活物質層上に形成されるアモルファスの正極側固体電解質層を有する正極体と、粉末成形体からなる負極活物質層、及びその負極活物質層上に形成されるアモルファスの負極側固体電解質層を有する負極体とを用意する。接合工程では、正極体と負極体とを、両電極体の固体電解質層同士が接触するように重ね合わせた状態で加圧しながら熱処理し、正極側固体電解質層と負極側固体電解質層とを結晶化させることで接合させる。そして、上記準備工程における両固体電解質層は、互いに共通する硫化物を複数種含み、かつ各硫化物同士の構成比が互いに異なる。
本発明非水電解質電池の製造方法によれば、アモルファスが結晶化するときの原子の相互拡散を利用して正極側固体電解質層と負極側固体電解質層を接合しているので、両層の間に高抵抗の接合界面が形成されない。特に、両固体電解質層は、互いに共通する硫化物を複数種含み、かつ各硫化物同士の構成比が互いに異なることで、後工程の固体電解質層の形成工程で上記両固体電解質層を接合すると、両固体電解質層の間で、固体電解質層の濃度差により相互拡散が進行し易くなる。そのため、従来に比べ低い圧力及び低い熱処理温度の条件でも上記両層を短時間で接合でき、その上、短時間で上記両層を接合しても高抵抗の接合界面が形成されない。また、両固体電解質層の接合時に正極体と負極体とを高圧で圧縮する必要がないので、両電極体の構成要素に割れなどの不具合が生じ難い。
(2)本発明製造方法の一形態として、複数種の硫化物が、LiSとPであり、LiSとPの構成比LiS:Pが、モル%で、70%:30%〜80%:20%であることが挙げられる。
上記の構成によれば、固体電解質層に上記硫化物を上記の範囲含有させることで、高いLiイオン伝導性を有し、優れた放電容量を備える非水電解質電池を製造できる。
(3)本発明製造方法の一形態として、熱処理は、150℃以下×30分未満で行うことが挙げられる。
上記の構成によれば、上記熱処理条件で、低Liイオン伝導性の結晶相の形成を抑制しつつ、正極側固体電解質層と負極側固体電解質層とを十分に結晶化でき、高抵抗な接合界面の形成を防止できる。熱処理温度が高すぎたり、熱処理時間が長すぎると、低Liイオン伝導性の結晶相が形成される恐れがある。しかし、上述のように両電解質層の間で相互拡散が進行し易くなるため、熱処理温度が低く、熱処理時間が短くても、両固体電解質層を十分に結晶化できるため、低Liイオン伝導性の結晶相が形成され難いからである。
(4)本発明製造方法の一形態として、加圧は、16MPa以下で行うことが挙げられる。
上記の方法によれば、加圧の圧力を16MPa以下とすることで、正極体と負極体の接合の際、これら電極体に備わる各層に割れなどの不具合が生じることを抑制できる。上記不具合が生じることなく、正極側固体電解質層と負極側固体電解質層との一体化を促進できる。
(5)本発明の非水電解質電池は、正極活物質層、負極活物質層、及びこれら活物質層の間に配される固体電解質層を備える。この非水電解質電池の正極活物質層と負極活物質層は、粉末成形体である。固体電解質層は、複数種の硫化物を含む結晶質の層で、各硫化物の構成比が正極活物質層側と負極活物質層側とで異なる。
本発明の非水電解質電池によれば、固体電解質層の抵抗値が低く、優れた電池特性(放電容量や放電出力)を発揮する。
(6)本発明非水電解質電池の一形態として、複数種の硫化物が、LiSとPであり、LiSとPの構成比LiS:Pが、モル%で、70%:30%〜80%:20%であることが挙げられる。
上記の構成によれば、固体電解質層に上記硫化物を上記の範囲含有させることで、Liイオン伝導性を高めることができ、非水電解質電池の放電容量を向上させることができる。
本発明の非水電解質電池の製造方法は、個別に作製された正極体と負極体とを接合しても、正極体と負極体との間に高抵抗層が形成されないので、低抵抗な非水電解質電池を製造できる。
本発明の非水電解質電池は、優れた電池特性を発揮する。
実施形態に係る非水電解質電池の概略を示す図であって、(A)は、縦断面図であり、(B)は、(A)に示す電池の組み立て前の状態を示す縦断面図である。
《非水電解質電池の全体構成》
図1(A)に示す非水電解質電池100は、正極集電体11、正極活物質層12、固体電解質層(SE層)40、負極活物質層22、及び負極集電体21とを備える。この非水電解質電池100の特徴とするところは、SE層40を構成する硫化物の構成比が正極活物質層12側と負極活物質層22側とで異なる点にある。この非水電解質電池100は、以下の工程に従う非水電解質電池の製造方法、即ち、図1(B)に示すように個別に作製された正極体1と負極体2とを重ね合わせることで作製することができる。その際、図1(B)に示す、正極側固体電解質層(PSE層)13と負極側固体電解質層(NSE層)23とが、共通する硫化物を複数種含み、かつ各硫化物の構成比が互いに異なることを特徴とする。以下、非水電解質電池100の製造方法を詳細に説明する。
《非水電解質電池の製造方法》
非水電解質電池100は、以下の工程に従う非水電解質電池の製造方法により作製できる。
[A]正極体1と負極体2を用意する準備工程。
[B]正極体1と負極体2とを重ね合わせ、加圧しながら熱処理を施して、正極体1と負極体2とを接合する接合工程。
〔工程A:準備工程〕
工程Aでは、粉末成形体からなる正極活物質層12、及びその正極活物質層12上に形成されるアモルファスの正極側固体電解質層13を有する正極体1と、粉末成形体からなる負極活物質層22、及びその負極活物質層22上に形成されるアモルファスの負極側固体電解質層23を有する負極体2とを用意する。
[正極体]
本実施形態の正極体1は、正極集電体11の上に、正極活物質層12と正極側固体電解質層(PSE層)13を積層した構成を有する。この正極体1を作製するには、正極集電体11となる基板を用意し、その基板の上に残りの層12,13を順次形成すれば良い。なお、正極集電体11は、正極体1と負極体2とを接合する工程Bの後に、正極活物質層12におけるPSE層13とは反対側の面に形成しても良い。
(正極集電体)
正極集電体11となる基板は、正極体1の集電を行うものであり、導電材料のみから構成されていても良いし、絶縁基板上に導電材料の膜を形成したもので構成されていても良い。後者の場合、導電材料の膜が集電体として機能する。導電材料としては、AlやNi、これらの合金、ステンレスから選択される1種が好適に利用できる。
(正極活物質層)
正極活物質層12は、電池反応の主体となる正極活物質粒子を含む粉末を加圧成形することで得られる層である。正極活物質としては、層状岩塩型の結晶構造を有する物質、例えば、Liαβ(1−X)(αはCo,Ni,Mnから選択される1種、βはFe,Al,Ti,Cr,Zn,Mo,Biから選択される1種、Xは0.5以上)で表される物質を挙げることができる。その具体例としては、LiCoOやLiNiO、LiMnO、LiCo0.5Fe0.5、LiCo0.5Al0.5などを挙げることができる。その他、正極活物質として、スピネル型の結晶構造を有する物質(例えば、LiMnなど)や、オリビン型の結晶構造を有する物質(例えば、LiFePO(0<X<1))を用いることもできる。
上記正極活物質層12は、この層12のLiイオン伝導性を改善する電解質粒子を含有していても良い。その場合、加圧成形の原料である正極活物質粒子に電解質粒子を混合しておく。そうすることで、原料を加圧成形した際、正極活物質粒子と固体電解質粒子とを含む正極活物質層12を形成できる。上記電解質粒子としては、例えば、LiS−Pなどの硫化物を好適に利用することができる。
その他、正極活物質層12は、必要に応じて導電助剤や結着剤(バインダー)を含有してもよい。正極活物質層12に含有する電解質粒子が、例えば、硫化物系固体電解質粒子である場合、硫化物系固体電解質粒子は、酸化物系のものに比較して軟らかく、変形性に優れることから、結着剤としての機能も発揮し易い。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)といったカーボンブラックなどが挙げられる。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。
加圧成形の条件は、適宜選択することができる。例えば、室温〜300℃の雰囲気下、面圧100〜400MPaで加圧成形すると良い。また、加圧成形される正極活物質粒子の平均粒径は、1〜20μmが好ましい。さらに電解質粒子を利用するのであれば、その電解質粒子の平均粒径は、0.5〜2μmが好ましい。これら平均粒径は、D50、即ち、粒径のヒストグラム中、体積基準の累積分布曲線の50%に相当する粒径のことである。
(正極側固体電解質層)
正極側固体電解質層(PSE層)13は、アモルファスのLiイオン伝導体である。このPSE層13は、後述する工程Bを経て結晶化し、図1(A)に示す完成した電池100のSE層40の一部となる。PSE層13に求められる特性は、結晶化したときに高Liイオン伝導性で、かつ低電子伝導性であることである。例えば、アモルファス状態にあるPSE層13が結晶化したときのLiイオン伝導度(20℃)は、10−5S/cm以上、特に、10−4S/cm以上であることが好ましい。結晶化したときのPSE層13の電子伝導度は、10−8S/cm以下であることが好ましい。
このPSE層13の材質は、後述する負極側固体電解質層(NSE層)23と共通する硫化物を複数種含み、これら共通する硫化物の構成比がNSE層23と異なっている。PSE層13がNSE層23と共通する硫化物を含むことで、次の工程Bを経てPSE層13とNSE層23とが一層のSE層40となったときに、SE層40の厚み方向にLiイオン伝導性にバラツキが生じ難い。また、共通する硫化物同士の構成比が異なることで、PSE層13とNSE層23とで共通する硫化物同士の濃度に差が生じる。それにより、次の工程BでPSE層13とNSE層23とを接合する際、両層13、23の間(接合面)で相互拡散が進行し易くなるため、接合界面が形成され難く、SE層40を低抵抗にできる。
PSE層13の材質としては、複数の硫化物の一つとしてLiSを含むものが好適である。より具体的には、LiS−P、LiS−SiS、LiS―Bなどが挙げられる。中でも、LiS―Pは、高いリチウムイオン伝導性を示すのでより好適である。複数種の硫化物のうち、LiSとそれ以外の硫化物との構成比が、モル%で、70%:30%〜80%:20%となることが好ましい。つまり、PSE層13がLiSとPを含む場合、その構成比は、モル%でLiS:P=70%:30%〜80%:20%であることが好ましい。そして、この構成比の範囲内で、NSE層23の硫化物の構成比と異なるようにPSE層13が構成されていることが好ましい。NSE層23の具体的な構成比は、後述する。また、PSE層13は、PやLiPOが添加されてもよい。
PSE層13の形成には、気相法を利用することができる。気相法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法などを利用できる。ここで、アモルファス状態のPSE層13を形成するには、膜形成時の基材温度が膜の結晶化温度以下になるように基材を冷却したりすれば良い。例えば、LiS−PでPSE層13を形成する場合、膜形成時の基材温度を150℃以下とすることが好ましい。そして、複数の硫化物の構成比が上述した範囲内のPSE層13を形成するには、例えば膜形成時において、複数の硫化物の各蒸着速度を、所望の構成比に比例した速度に調整すればよい。蒸着速度の調整には、複数の硫化物の各蒸着源への投入電力を調整することが挙げられる。例えば、LiSとPを含み、その構成比がモル%で80%:20%のPSE層13を形成する場合、LiSとPの蒸着源を各々用意して、各蒸着源への投入電力を調整することでLiSとPの各蒸着速度が4:1となるように調整するとよい。
(その他の構成)
PSE層13が硫化物固体電解質を含むと、この硫化物固体電解質がPSE層13に隣接する正極活物質層12に含まれる酸化物の正極活物質と反応して、正極活物質層12とPSE層13との界面近傍が高抵抗化し、非水電解質電池100の放電容量を低下させる恐れがある。そこで、上記界面近傍の高抵抗化を抑制するために、正極活物質層12とPSE層13との間に中間層を設けても良い。
上記中間層に用いる材料としては、非晶質のLiイオン伝導性酸化物、例えばLiNbOやLiTaOなどを利用できる。特にLiNbOは、正極活物質層12とPSE層13との界面近傍の高抵抗化を効果的に抑制できる。
[負極体]
負極体2は、負極集電体21の上に、負極活物質層22と負極側固体電解質層(NSE層)23を積層した構成を有する。この負極体2を作製するには、負極集電体21となる基板を用意し、その基板の上に残りの層22,23を順次形成すれば良い。なお、負極集電体21は、工程Bの後に、負極活物質層22におけるNSE層23とは反対側の面に形成しても良い。
(負極集電体)
負極集電体21となる基板は、導電材料のみから構成されていても良いし、絶縁基板上に導電材料の膜を形成したもので構成されていても良い。後者の場合、導電材料の膜が集電体として機能する。導電材料としては、例えば、Cu、Ni、Fe、Cr、及びこれらの合金(例えば、ステンレスなど)から選択される1種が好適に利用できる。
(負極活物質層)
負極活物質層22は、電池反応の主体となる負極活物質粒子を含む粉末を加圧成形することで得られる層である。負極活物質としては、C、Si、Ge、Sn、Al、Li合金、またはLiTi12などのLiを含む酸化物を利用することができる。
上記負極活物質層22は、この層22のLiイオン伝導性を改善する電解質粒子を含有していても良い。その場合、加圧成形の原料である負極活物質粒子に電解質粒子を混合しておく。そうすることで、原料を加圧成形した際、負極活物質粒子と固体電解質粒子とを含む負極活物質層22を形成できる。上記電解質粒子としては、例えば、LiS−Pなどの硫化物を好適に利用することができる。その他、負極活物質層22は、導電助剤や結着剤を含んでいても良い。
加圧成形の条件は、適宜選択することができる。例えば、室温〜300℃の雰囲気下、面圧100〜400MPaで加圧成形すると良い。また、加圧成形される負極活物質粒子の平均粒径は、1〜20μmが好ましい。さらに電解質粒子を利用するのであれば、その電解質粒子の平均粒径は、0.5〜2μmが好ましい。これら平均粒径は、上述と同様にD50のことである。
(負極側固体電解質層)
負極側固体電解質層(NSE層)23は、上述したPSE層13と同様に、アモルファスのLiイオン伝導体である。このNSE層23も、次の工程Bを経て電池100を完成させた際、電池100のSE層40の一部となる層であり、上述したPSE層13と同様に、結晶化したときに高Liイオン伝導性で、かつ低電子伝導性であることが求められる。
このNSE層23の材質は、上述したように、PSE層13と共通する硫化物を複数種含み、これら共通する硫化物の構成比がPSE層13と異なっている。この材質としては、上述したようにLiS−P、LiS−SiS、LiS―Bなどが挙げられる。そして、NSE層23を構成する複数の硫化物の構成比は、上述したPSE層13と同じ範囲であることが好ましい。その範囲内において、NSE層23におけるPSE層13と共通する各硫化物の構成比が、PSE層13と異なるようにすることが好ましい。即ち、PSE層13におけるLiSの構成比とNSE層23におけるLiSの構成比との差が、モル%で、10%以下であり、LiS以外の硫化物同士の構成比の差が、モル%で、10%以下である。そうすれば、次の工程Bを経てPSE層13とNSE層23とが一層のSE層40となったときに、SE層40の厚み方向にLiイオン伝導性にバラツキが生じ難い。そして、PSE層13とNSE層23における同じ硫化物同士の構成比の差が、モル%で、5%以上であれば好ましい。そうすれば、次の工程B後のSE層40をより低抵抗にすることができる。NSE層23にも、PやLiPOが添加されてもよい。このNSE層23は、上述したPSE層13と同様の方法により形成できる。
〔工程B:接合工程〕
工程Bでは、上記工程Aで用意した正極体1と負極体2とを、それぞれPSE層13とNSE層23とが互いに対向するように積層して非水電解質電池100を作製する。その際、PSE層13とNSE層23とを圧接させつつ熱処理を施して、アモルファス状態にあるPSE層13とNSE層23を結晶化させ、これらPSE層13とNSE層23とを一体化させる。
工程Bにおける熱処理条件は、PSE層13とNSE層23を結晶化させることができるように選択する。具体的には、熱処理温度が150℃以下で、熱処理時間が30分未満とすることが挙げられる。上述したPSE層13とNSE層23を用いることで、PSE層13とNSE層23の接合面で相互拡散が進行し易くなるため、上記のように低い熱処理温度、短い熱処理時間でも結晶化が可能である。特に熱処理時間は、15分以下、更に短い時間、例えば10分程度でも十分である。熱処理温度の下限は、130℃程度とすることが好ましい。
また、工程Bでは熱処理時にPSE層13とNSE層23とを近づける方向に加圧する。これは、熱処理の際、PSE層13とNSE層23とを密着させておくことで、PSE層13とNSE層23との一体化を促進するためである。ここでは、圧力は、16MPa以下とすることが好ましい。そうすれば、粉末成形体である正極活物質層12や負極活物質層22が割れずに、PSE層13とNSE層23との一体化を促進できる。上述したようにPSE層13とNSE層23の接合面で相互拡散が進行し易いので、上記のように低い圧力でもPSE層13とNSE層23の一体化が可能である。この圧力の下限は、8MPa程度とすることが好ましい。
工程Bを行うことにより、結晶化された一層のSE層40を備える非水電解質電池100が形成される。この一層のSE層40は、上述したようにPSE層13とNSE層23とを一体化させることで形成されたものでありながら、PSE層13とNSE層23との界面がほとんど残らない。そのため、このSE層40は、当該界面に起因するLiイオン伝導性の低下がなく、高Liイオン伝導性で、かつ低電子伝導性のSE層40となる。
《非水電解質電池》
以上の工程により製造された非水電解質電池100は、正極活物質層12の側に設けられたPSE層13と負極活物質層22の側に設けられたNSE層23とを接合することで一体化された結晶質のSE層40を有する。つまり、このSE層40は、複数種の硫化物を含む結晶質の層で、各硫化物の構成比が正極活物質層12側と負極活物質層22側とで異なる。
《作用効果》
上述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上述した非水電解質電池の製造方法によれば、接合工程においてPSE層13とNSE層23とを接合して一層のSE層40を形成する際、両者の間に高抵抗層が形成されない。それは、PSE層13とNSE層23とが、互いに共通する硫化物を複数種含み、かつ各硫化物同士の構成比が互いに異なるため、PSE層13とNSE層23とで共通する硫化物同士の濃度に差が生じている。それにより、接合工程においてPSE層13とNSE層23とを接合する際、PSE層13とNSE層23の間で相互拡散が進行し易くなる。その結果、接合界面が形成され難くなるからである。
(2)PSE層13とNSE層23の間で相互拡散が進行し易くできるので、従来に比べ低い熱処理温度、短い熱処理時間、そして低い圧力で、PSE層13とNSE層23とを一体化することができる。また、熱処理時間が短くて済むので、非水電解質電池の生産性に優れる。
(3)上述した製造方法により得られた非水電解質電池100によれば、正極体1と負極体2とを高圧で圧接した従来の電池よりも優れた電池特性(放電容量や、放電出力)を発揮する。それは、SE層40において、PSE層13とNSE層23との接合界面に高抵抗層が形成されないからである。
《試験例》
図1を参照して説明した実施形態の非水電解質電池100を作製し、その電池100に備わるSE層40の抵抗値を測定することで、電池100の電池特性を評価した。
非水電解質電池100の作製にあたり、以下の構成を備える正極体1、負極体2を用意する。
〔正極体1〕
・正極集電体11…厚さ10μmのAl箔
・正極活物質層12…厚さ200μmのLiCoO粉末とLiS−P粉末との加圧成形体(LiCoO:LiS−P=70質量%:30質量%)
・PSE層13…厚さ5μmのアモルファスLiS−P膜(真空蒸着法)
〔負極体2〕
・負極集電体21…厚さ10μmのステンレス箔
・負極活物質層22…厚さ200μmのグラファイト粉末とLiS−P粉末との加圧成形体(グラファイト:LiS−P=50質量%:50質量%)
・NSE層23…厚さ5μmのアモルファスLiS−P膜(真空蒸着法)
ここでは、PSE層13とNSE層23の形成時、LiSとPの各蒸着源への投入電力を調整してLiSとPの蒸着速度を調整することで、PSE層13とNSE層23に含まれるLiSとPの構成比を表1に示すように種々変更して複数の正極体1と負極体2とを用意した。
次に、露点温度−40℃のドライ雰囲気下で、用意した正極体1と負極体2とをPSE層13とNSE層23同士が接触するように重ね合わせ、両電極体1,2を圧接しつつ熱処理を施した複数の非水電解質電池100を作製した。各電池100の作製の際の接合条件(圧力、熱処理温度、熱処理時間)を表1に示す。
以上のようにして作製した各非水電解質電池100をコインセルに仕込んで、これら非水電解質電池100におけるSE層40の抵抗値を交流インピーダンス法により測定した。測定条件は、電圧振幅5mV、周波数範囲0.01Hz〜10kHzとした。接合条件と抵抗値の測定結果を、次の表1に示す。
Figure 0005626654
《結果》
上記試験より、試料1〜4と試料6は、試料5と比較してSE層40の抵抗値が低かった。このような結果となった理由は、次のように考えられる。試料1〜4と試料6は、PSE層13とNSE層23とが結晶化されて十分に一体化できたため、PSE層13とNSE層23との間に高抵抗な接合界面が形成されなかったからである。特に、試料1〜4は、PSE層13とNSE層23とで共通する硫化物の構成比が異なることで、接合の際、両層13、23に共通する硫化物同士の濃度差に起因して両層13、23の接合面で相互拡散が進行し易くなった。その結果、短い熱処理時間でもPSE層13とNSE層23とを一体化できた。試料6は、PSE層13とNSE層23とで共通する硫化物同士に濃度差が生じないため、熱処理時間を長くすることで両層13、23の接合面で相互拡散させて、PSE層13とNSE層23とを一体化できた。一方、試料5は、PSE層13とNSE層23とで共通する硫化物同士に濃度差が生じないため相互拡散が進行し難く、短い熱処理時間では、PSE層13とNSE層23とを十分に一体化できなかった。
そして、試料1〜4は、試料6よりもSE層40の抵抗値が低かった。試料1〜4は、上述したように相互拡散が進行し易くなったため、熱処理時間の長い試料6よりもPSE層13とNSE層23とを素早くかつ十分に一体化できた。
<まとめ>
以上説明した試験結果から、正極体1のPSE層13と負極体2のNSE層23とをアモルファスとし、その正極体1と負極体2とを接合する際、PSE層13とNSE層23を結晶化させて十分に接合することで得られた電池100は、優れた電池特性を備えることがわかった。特に、PSE層13とNSE層23とで共通する硫化物の構成比が異なる正極体1と負極体2とを接合して得られた電池100は、従来に比べより短時間で低抵抗なSE層40を備える電池100を得られることがわかった。
なお、本発明は上述の実施の形態に何ら限定されることはない。即ち、上述した実施形態に記載の非水電解質電池の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
本発明非水電解質電池の製造方法は、充放電を繰り返すことを前提した電気機器の電源に利用される非水電解質電池の作製に好適である。
100 非水電解質電池
1 正極体
11 正極集電体
12 正極活物質層
13 正極側固体電解質層(PSE層)
2 負極体
21 負極集電体
22 負極活物質層
23 負極側固体電解質層(NSE層)
40 硫化物固体電解質層(SE層)

Claims (6)

  1. 正極活物質層、負極活物質層、及びこれら活物質層の間に配される固体電解質層を備える非水電解質電池を製造する非水電解質電池の製造方法であって、
    粉末成形体からなる正極活物質層、及びその正極活物質層上に形成されるアモルファスの正極側固体電解質層を有する正極体と、粉末成形体からなる負極活物質層、及びその負極活物質層上に形成されるアモルファスの負極側固体電解質層を有する負極体とを用意する準備工程と、
    前記正極体と負極体とを、両電極体の固体電解質層同士が接触するように重ね合わせた状態で加圧しながら熱処理し、前記正極側固体電解質層と負極側固体電解質層とを結晶化させることで接合させる接合工程とを具え、
    前記準備工程における両固体電解質層は、互いに共通する硫化物を複数種含み、かつ各硫化物同士の構成比が互いに異なることを特徴とする非水電解質電池の製造方法。
  2. 前記複数種の硫化物が、LiSとPであり、
    前記LiSとPの構成比LiS:Pが、モル%で、70%:30%〜80%:20%であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池の製造方法。
  3. 前記熱処理は、150℃以下×30分未満で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の非水電解質電池の製造方法。
  4. 前記加圧は、16MPa以下で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質電池の製造方法。
  5. 正極活物質層、負極活物質層、及びこれら活物質層の間に配される固体電解質層を備える非水電解質電池であって、
    前記正極活物質層と負極活物質層は、粉末成形体であり、
    前記固体電解質層は、複数種の硫化物を含む結晶質の層で、各硫化物の構成比が正極活物質層側と負極活物質層側とで異なることを特徴とする非水電解質電池。
  6. 前記複数種の硫化物が、LiSとPであり、
    前記LiSとPの構成比LiS:Pが、モル%で、70%:30%〜80%:20%であることを特徴とする請求項5に記載の非水電解質電池。
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