JP5625815B2 - エンジンの冷却制御装置 - Google Patents
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Description
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、エンジンの冷却水温の制御性を向上させつつ燃費を改善することである。
また、前記エンジンの目標水温と前記水温センサで検出された前記エンジン冷却水の水温との差に基づいて、前記ウォーターポンプの回転数を補正する補正回転数を設定する補正目標回転数設定部と、前記基本目標回転数と前記補正回転数とに基づいて前記ウォーターポンプの目標回転数を設定する回転数制御部と、を備える。
また、前記エンジンが、気筒内での燃焼をストイキ空燃比で行うストイキ燃焼と、前記燃焼をリーン空燃比で行うリーン燃焼との二種類の前記燃焼形態を有し、前記基本目標回転数設定部が、前記検出手段で検出された前記燃焼形態がストイキ燃焼からリーン燃焼へと変化したときに、前記基本目標回転数を減少させるとともに、前記エンジンが低負荷であるほど、前記基本目標回転数の減少量を増大させる。
本実施形態の冷却制御装置は、図1に示す水冷式のガソリンエンジン10(以下、単にエンジン10と呼ぶ)に適用される。ここでは、多気筒のエンジン10に設けられた各気筒(シリンダ)のうち、一つの気筒15を示す。気筒15内には、コンロッドを介してクランクシャフト17に接続されたピストン16が往復摺動自在にはめ込まれている。なお、コンロッドはピストン16の往復運動をクランクシャフト17の回転運動に変換するリンク部材である。
冷却水循環路3上には電動式のウォーターポンプ4及びラジエータ6が介装される。ウォーターポンプ4は、印加電圧に応じた回転数で駆動され、その回転数に応じた流量(単位時間あたりの流量)の冷却水を吐出する流量可変型のポンプである。ウォーターポンプ4は図示しないバッテリに接続され、バッテリからの電力供給を受けて作動する。また、ウォーターポンプ4に印加される電圧は、後述するECU1で制御される。本実施形態では、ECU1から伝達される制御信号に基づいて印加電圧が変更されるものとする。
燃焼室のシリンダヘッド側の頂面には、吸気ポート11及び排気ポート12が接続される。吸気ポート11の入口には吸気弁13が設けられ、排気ポート12の入口には排気弁14が設けられる。吸気弁13の開閉駆動により吸気ポート11と燃焼室とが連通又は閉鎖され、排気弁14の開閉駆動により排気ポート12と燃焼室とが連通又は遮断される。これらの吸気弁13及び排気弁14の上端部は、それぞれ図示しないロッカシャフトに接続され、ロッカシャフトの揺動によって個別に上下方向に往復駆動される。
また、冷却水循環路3上の任意の位置には、冷却水温Wを検出する水温センサ5が設けられる。水温センサ5で検出された冷却水温Wの情報はECU1に伝達される。
ECU1(Electronic Control Unit,電子制御装置)は、エンジン10のウォーターポンプ4の動作を統括管理する電子制御装置であり、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される。以下、エンジン10の燃焼形態と冷却水温Wとに基づいてウォーターポンプ4の動作を制御する冷却水流量制御について説明する。本実施形態の冷却水流量制御は、冷却水温Wに基づくフィードバック制御(PI制御)と、冷却水温Wを変動させうる外的要因に基づくフィードフォワード制御とを組み合わせた制御である。
燃焼形態判定部1a(検出手段)は、エンジン10の燃焼形態を検出し、その変化を検出又は判定するものである。ここでは、冷却水の温度変動の兆候としてエンジン10の燃焼形態を判別し、その燃焼形態の変化時にウォーターポンプ4の目標回転数を変更する。燃焼形態判定部1aは、エンジン回転数Neとエンジン10の負荷とに基づいて、エンジン10の運転状態がリーン運転であるか、それ以外のストイキ/リッチ運転であるかを判定する。なおこれは、任意の気筒での燃焼形態がリーン燃焼であるか、それ以外のストイキ/リッチ燃焼であるかを判定することと同じ意味である。
リーン運転時にはストイキ/リッチ運転時よりも各気筒15内で生じる熱量が小さいため、基本目標回転数Tpnもやや小さめに設定される。また、エンジン10が低負荷であるほど、燃焼形態による基本目標回転数Tpnの相違量(実線グラフと破線グラフとの縦方向の間隔)が増大するような設定とされている。
WPH=Kp・ΔWT+Ki・ΔWT(k) ・・・(式1)
ECU1で実施される冷却水流量制御に係るフローチャートを図4に例示する。このフローは、ECU1の内部において所定の周期で繰り返し実施される。
上記のエンジン10を搭載した車両において、燃焼形態がストイキ燃焼からリーン燃焼へと変化したときの冷却水温Wの変動及び冷却水の流量変動を図5に示す。
ここで仮に、燃焼形態の変化に応じた基本目標回転数Tpnの設定がなされない場合(つまり、冷却水温Wのみに基づいて目標回転数Tを設定する場合)の挙動を検討する。運転状態がリーン運転に移行すると、気筒15内で発生する熱量が減少する。一方、冷却水温Wは運転状態の変動直後にはまだ変化しないため、冷却水流量は図5中に破線で示すように変化せず、運転状態の変化前と同じ冷却性能が維持される。これにより、冷却水が過冷却された状態となり、図5中に破線で示すように冷却水温Wが大きく低下する。
このように、上述の冷却制御装置によれば、エンジン10の燃焼形態の変化に応じて冷却水の流量を制御することで、冷却水によるエンジン10からの持ち去り熱量を適切に管理することができる。これにより、冷却水温Wのオーバーシュートを防止することができ、冷却水温Wの制御性やエンジン10で発生する熱量に対する冷却水流量制御の応答性を向上させることができる。また、ストイキ/リッチ運転からリーン運転への移行時には、ウォーターポンプ4の目標回転数Tが即座に減少方向へと制御されるため、ウォーターポンプ4の駆動に係る電力の浪費を防止することができる。
また、上述の冷却制御装置では、前回の演算周期で演算された積分補正値ΔWT(k-1)と上記の水温差ΔWTとの平均値を今回の演算周期での積分補正値ΔWT(k)として演算している。これにより、上記の式1の積分項を過剰に大きくすることなく、適度に水温差ΔWTの履歴を実制御に反映させることができる。したがって、式1の比例項によって生じうる残留偏差を適切に減少させることができ、冷却水温Wを目標水温WTGTに収束させやすくすることができる。
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の冷却制御装置では、図2に示すように、エンジン10の燃焼形態として、ストイキ/リッチ燃焼の運転領域とリーン燃焼の運転領域との二種類の運転状態を判定するものを例示したが、燃焼形態判定部1aの判定対象はこれに限定されない。燃焼形態判定部1aは、少なくとも冷却水に与えられる熱量が変動しうる燃焼形態の変動を把握するものであればよい。例えば、エンジン10の燃焼形態として、エンジン10の全気筒が稼働している全筒運転であるか、それとも一部の気筒が休止した休筒運転であるかといった運転状態を判定してもよい。この場合、全筒運転から休筒運転へと運転状態が変化した時に、基本目標回転数Tpnを減少させることが考えられる。なお、ここでいう「運転状態の変化」は、概念的に「燃焼形態の変化」に包含されるものとする。
基本目標回転数Tpnの設定手法は、例えば図6(b)に示すように、ガソリン燃焼時の基本目標回転数Tpnがディーゼル燃焼時の基本目標回転数Tpnよりも小さくなるような設定とすればよい。この場合、図3のマップとは異なり、それぞれに燃焼形態で基本目標回転数Tpnが設定される充填効率Ecの範囲から制限を取り除くことも考えられる。つまり、それぞれの燃焼が実現する負荷範囲に応じてマップを設定すればよい。このように、ディーゼル燃焼やガソリン燃焼といった燃焼形態の変化を参照することで、冷却水に伝達される熱量の変化の兆候を迅速に把握することができる。これにより、上述の実施形態と同様に、エンジン10全体に与えられる熱量に応じて冷却水を制御でき、必要十分なウォーターポンプ4の駆動量で、効率的かつ適切に冷却水温Wを制御することができる。
1a 燃焼形態判定部(検出手段)
1b 目標回転数設定部
1c 基本目標回転数設定部(変更手段)
1d 補正目標回転数設定部
1e 回転数制御部
3 冷却水循環路
4 ウォーターポンプ
5 水温センサ
6 ラジエータ
7 エアフローセンサ
8 クランク角度センサ
9 スロットル弁
10 エンジン
15 気筒
19 ウォータージャケット
Claims (3)
- エンジンの燃焼形態の変化を検出する検出手段と、
電力供給を受けて作動しエンジン冷却水の流量を可変制御するウォーターポンプと、
前記エンジン冷却水の水温を検出する水温センサと、
前記検出手段で検出された前記燃焼形態の変化に応じて前記ウォーターポンプの基本目標回転数を設定する基本目標回転数設定部と、
前記エンジンの目標水温と前記水温センサで検出された前記エンジン冷却水の水温との差に基づいて、前記ウォーターポンプの回転数を補正する補正回転数を設定する補正目標回転数設定部と、
前記基本目標回転数と前記補正回転数とに基づいて前記ウォーターポンプの目標回転数を設定する回転数制御部と、を備え、
前記エンジンが、気筒内での燃焼をストイキ空燃比で行うストイキ燃焼と、前記燃焼をリーン空燃比で行うリーン燃焼との二種類の前記燃焼形態を有し、
前記基本目標回転数設定部は、前記検出手段で検出された前記燃焼形態がストイキ燃焼からリーン燃焼へと変化したときに、前記基本目標回転数を減少させるとともに、前記エンジンが低負荷であるほど、前記基本目標回転数の減少量を増大させる
ことを特徴とする、エンジンの冷却制御装置。 - 前記エンジンが、燃料及び空気の混合気を自己着火させるディーゼル燃焼方式と、前記混合気を点火プラグで強制着火するガソリン燃焼方式との二種類の前記燃焼形態を有し、
前記基本目標回転数設定部が、前記検出手段で検出された前記燃焼形態が前記ディーゼル燃焼方式から前記ガソリン燃焼方式へと変化したときに、前記基本目標回転数を減少させる
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの冷却制御装置。 - 前記エンジンが、複数の気筒の全てを稼働する全筒運転と一部の気筒を休止する休止運転との二種類の運転状態を有し、
前記検出手段が、前記運転状態として前記全筒運転及び前記休止運転を検出し、
前記基本目標回転数設定部が、前記検出手段で検出された前記運転状態が前記全筒運転から前記休止運転へと変化したときに、前記基本目標回転数を減少させる
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のエンジンの冷却制御装置。
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