JP5621697B2 - 薄鋼板及び厚鋼板の熱間圧延における形状測定方法、並びに、薄鋼板及び厚鋼板の熱間圧延方法 - Google Patents
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Description
また、この特許文献1には、厚鋼板の形状制御に、圧延機の後に設置された形状計からのデータをもとに伸び歪差を求め、予め形状不感帯を考慮した計算モデルで求めた伸び歪差の違いを逐次補正し、圧延形状を制御する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1で開示された技術では鋼板の幾何学的な波形状は測定できるが、波形状が発生しても、尚、鋼板に内在する残留歪及び残留応力が存在している情報については把握することが出来ない。
しかし、この形状不感帯の式がどの様に導きだされるのかについては特許文献2に記載されておらず、その定義は明確では無い。また仮に形状不感帯の定義が明らかとなっても、提示されている形状の制御手法では、形状不感帯の歪成分を取り除いたクラウン変化率が制御の対象となっており、非線形性を持つ為、制御が複雑となると言った問題を持っている。
一方、非特許文献1には、三角形の残留応力分布(歪)で定式化された座屈のモデルが示されている。特許文献3に開示される予測技術は、この非特許文献1に基づいてモデル化したものである。
特許文献3に示されるように、鋼板の板幅方向に分布する塑性歪は座屈し、波形状として幾何学的に変換される歪と座屈後も鋼板内部に内在する歪とに分かれることが知られている。このため、幾何学的な情報のみを得ることができる形状計を圧延機の後に設置し、当該形状計によって取得した形状データに基づいてフィードバック制御をして圧延形状を自在にコントロールしようとしても、鋼板内部に内在する残留歪や残留応力を考慮しない部分は誤差となってしまう為、精度の良い形状制御を実施することは不可能である。
また、この解析方法と測定値とを比較することで直接の測定値から補正して、鋼板内部に内在する歪の幅方向分布を得ることも可能となった。本発明の要旨は以下の通りである。
図1、2に本発明請求項1、2、3の好ましい実施形態を示す。厚鋼板圧延設備には種々の形式のものがあるが、少なくとも図1に示すリバース圧延を行う仕上リバース圧延機1或いは図2に示す仕上タンデム圧延機2を有する設備が本発明の対象となっている。
仕上リバース圧延機1或いは仕上タンデム圧延機2は、通常は一対の作業ロールを一対の補強ロールで支持する機構の4段圧延機が用いられる場合が多いが、2段圧延機や6段以上の多段圧延機であってもよい。また、通常は鋼板を通板する為の通板ロール4が設置される。
この演算装置5は形状計に持たせても良いし、圧延形状をコントロールするプロコン6に機能を持たせても良い。いずれにしてもこの演算装置5の結果より真の残留歪が判るのでこの結果を受け、所定の形状とする為に荷重、ベンダー、ワークロールシフト、ペアークロス等による形状制御アクチュエータ7を用いて所定の目標形状になるようにフィードバック制御等の公知の形状制御ロジックを用いてコントロールする。この演算装置5の詳細を図3に示す。以下に演算装置5の内容について説明する。
図4或いは5に示す形状計で計測された幾何学的な形状データは、例えば図6に示すような通板方向、板幅方向位置毎の高さ情報を持った形状データ(xを通板方向、yを幅方向、zを高さ方向と置く)として測定により収集される。
その後、線積分及び歪を定義した下記式(1)、(2)、(3)を使って幾何学的な形状から板幅センター部を原点(基準)とした伸び歪差が演算される。添え字のiは通板方向をN分割したときのi番目の位置を示す。また、添え字のjは板幅方向をM分割したときのj番目の位置を示す。
εj=(Σ(dsij)−Σ(dxi))/Σ(dxi) (1)
dsij=√(dxi 2+dzi 2) (2)
Δεj‘=εj−εCENTER (3)
ステップ2で求めた伸び歪においてエッジ部が正の値なら耳波、負の値なら中波と判断し、座屈後も鋼板に内在する残留歪を見積もる為に実施する固有座屈解析の境界条件を決定し、この情報をステップ4に送る。
ここでクォータ波は、基本的に耳波にエッジドロップによる最エッジ部の局所伸びが起因となって発生すると考えられるので固有歪は耳波として扱う。また、この時点で鋼板内部に内在する歪の境界条件は0と置いておく。
圧延操業で用いるプロコンより予め板厚、板幅、張力情報を収集し、ステップ3で予め求めた圧延形状の特性より、耳波であるのか中波であるのかの情報を元に、最大残留歪で無次元化された残留歪、拘束条件を決定する。おおよその波ピッチが計測できていれば当該ピッチを直接入力しても良い。
ここで、無次元化された残留歪分布は図4に示すようにセンター部を原点に、エッジ部を板の半幅位置とし、最大歪値を1と置く。実線は耳波の場合、破線は中波の条件である。残留歪の分布形状は1次から4次まで示しているが、これまでの本発明者らの鋭意検討によって4次以下でもモデル化で十分精度が良い事が確認されたものである。
なお、鋼板の圧延においては、エッジ部は圧延によってどうしても板幅方向に鋼板が押し出されると言ったエッジドロップ現象が発生するため、エッジドロップが発生している領域は圧延方向に歪が伸びない。その結果、板クラウンが無い場合、台形状の歪分布が発生していると考えられる。そこにロールクラウンや板クラウンが付いて結果として埋め込まれる残留歪を±2次関数分布として重ね合わせた歪分布を用いるとしたものを、台形に2次関数分布の重ね合わせを仮定した残留歪の幅方向分布として用いた。
ここで耳波条件の場合はセンター部を幅と高さ変位を拘束しエッジ部は拘束無し、中波条件の場合はセンター部を通板方向軸廻りの回転を拘束しエッジ部は高さ方向のみ拘束、クォータ条件の場合はセンター部を幅と高さ変位を拘束しエッジ部も高さ方向に拘束する。
ステップ4のデータを元にFEM或いは平板の固有座屈解析を実施する。具体的には、特許文献3に示す平板の固有座屈解析や有限要素法を用いた大たわみ解析を実施し、これ以上大きくなると弾性座屈をしてしまう限界の固有座屈歪を求める。そして、この固有歪を座屈後も形状に残留(内在)してしまう歪と決定する。
これらをベースにした座屈方程式により、予め無次元化された長手方向残留歪或いは長手方向残留応力の幅方向分布に対し、幅方向に一様に倍率を掛けて得られた分布で、波ピッチ毎の座屈を開始する応力或いは歪分布を求め、座屈応力或いは歪分布の値が最も低い波ピッチを座屈波ピッチとし、座屈発生の歪或いは応力のクライテリアと決定する。
この形状予測の場合、理論座屈よりも実際は短いピッチで波座屈が発生する場合がある。その場合は、形状計から波座屈ピッチを求め、その波座屈ピッチに対応した座屈発生の歪或いは応力のクライテリアと決定することも可能である。
ステップ2で求めた伸び歪差分布とステップ5で求めた固有座屈歪分布を重ね合わせし、圧延によって鋼板に加わった正味の残留歪分布(真の形状特徴量)を決定する。これをセンターを中心にWS及びDS毎に計算し実行する。
現在鋼板に加わった正味の残留歪分布(真の形状特徴量)を用いて、所定の圧延形状にする為にどの様に形状制御アクチュエータを動かすかについてPID制御等の制御ロジックを基に制御指令値を決定する。真の形状特徴量が残留歪分布の場合は、これを幅方向伸び率分布やクラウン比率の補正値として用いることができ、真の形状特徴量が残留応力分布の場合は、入側及び/又は出側の張力分布の補正値として用いることができる。
ステップ7で決定された制御指令値に基づきベンダー、荷重、張力、ペアークロス、CRS等の形状制御アクチュエータ7を動かし、所定の形状を作り込む。
以上のステップ(STEP)を正味の残留歪を求める演算を行いながら繰り返すループを実行することによって高精度な形状作り込みが可能となる。
ここで正味の残留歪分布を演算する装置は個別で持たせることも、図1、2破線や二重線のように形状計3や制御ロジックの一部としてプロコン6に持たせても良い。
リバース圧延では、まず、或る中間のパスの終了後直ちに形状計3で形状を測定し、この形状データに基づいて4次式で幅方向伸び歪み差分布を近似する。
次に、この波形状が中波、耳波、クォータ波いずれの波か判断する。その際、1つだけでなく中波と耳波とか耳波とクォータ波等複数の波の組み合わせが有っても良い。これに基づき演算装置5において座屈方程式を解き、この解である座屈限界を鋼板内部に内在する幅方向残留歪分布または残留応力分布とする。
この真の形状特徴量で形状制御アクチュエータ7であるワークロールベンダーのベンダー力を次パス以降で補正することにより、厚鋼板の形状的中率が従来の形状計の方式を使ったのに比べ、リバース圧延の厚鋼板で15%改善した。
次に、リバース圧延の時と同様にこの波形状が中波、耳波、クォータ波いずれの波か判断する。その際、1つだけでなく中波と耳波とか耳波とクォータ波等複数の波の組み合わせが有っても良い。これに基づき演算装置5において座屈方程式を解き、この解である座屈限界を鋼板内部に内在する幅方向残留歪分布または残留応力分布とする。
この真の形状特徴量で形状制御アクチュエータ7であるワークロールベンダーのベンダー力を最終スタンドでリアルタイムに補正することにより、薄鋼板の形状的中率が従来の形状計の方式を使ったのに比べ、熱延鋼板の形状的中率では20%改善した。
2 タンデム圧延機
3 形状計
4 通板ロール
5 演算装置
6 プロコン
7 形状制御アクチュエータ
Claims (3)
- 熱薄鋼板、厚鋼板の圧延終了時の板波形状を、幾何学的値として圧延機出側で板通板方向及び板幅方向位置と高さ方向変位を測定し、形状特徴量として伸び歪差を求める測定方法において、測定した形状特徴量に加え、測定時に鋼板に内在する残留歪ないし残留応力を解析によって求めて、前記形状特徴量と重ね合わせをすることによって、圧延機から付与された真の形状特徴量をも同時に求めることを特徴とする薄鋼板及び厚鋼板の熱間圧延における形状測定方法。
- 前記形状測定方法における測定時に鋼板に内在する前記残留歪ないし残留応力を求めるにあたっては、鋼板の板厚、板幅、張力と板センターで鋼板を左右に分割し、センター部を原点とした1次〜4次関数或いは台形に2次関数分布の重ね合わせを仮定した残留歪の幅方向分布を平板の座屈方程式またはFEMを用いて、決定される板の座屈歪ないし座屈応力を残留歪ないし残留応力とすることを特徴とする請求項1記載の薄鋼板及び厚鋼板の熱間圧延における形状測定方法。
- 請求項1または2で求めた真の形状特徴量に基づき、圧延機の形状作り込み機構を用い
て、フィードバック制御によって所定の波形状とする薄鋼板及び厚鋼板の熱間圧延方法。
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